【実施例1】
【0081】
以下、実施例を参照して本発明を更に詳細に説明するが、本発明が実施例に限定されることは意図しない。
【0082】
〔ヒト間葉系幹細胞の馴化培地(hMSC馴化培地)の作成〕
ヒト骨髄由来のヒト間葉系幹細胞を、5,000〜10,000 cells/cm2の密度となるように150mm細胞培養用プレート(コーニング社製)に播種し、10% FCS/DMEM培地を用いてサブコンフルエントになるまで培養した。細胞を、PBS(-)で2回洗浄した後、トリプシン処理して細胞を細胞培養用プレートから剥がし、次いで10% FCS/DMEM培地を添加して懸濁した後、遠心(1200rpm、5分)して細胞を回収した。細胞を10% FCS/DMEM培地で懸濁して、3,000〜5,000 cells/cm2の密度となるように150mm細胞培養用プレート(コーニング社製)に播種し、細胞密度が50〜70%になるまで培養した。培地を捨て、8% FCS、200μg/mL CaCl2・2H2O、0.08%(w/v) コンドロイチン硫酸Cナトリウム(WAKO)及び50μg/mL ゲンタマイシンを添加したOpti-MEM I Reduced-Serum Medium, Liquid(Gibco社製)培地を40mL加えて、約16時間培養した。培養後、培地を回収して遠心(1500rpm、5分)し、得られた上清を0.2μmメンブランフィルターで濾過した。プレートに新しい培地を40mL加えて更に細胞を培養し、以後12〜24時間毎に培地の回収と新しい培地の添加を3〜5日間の間隔で繰り返して行った。回収した培地は、遠心(1500rpm、5分)し、得られた上清を0.2μmメンブランフィルターで濾過した。濾過後の培地をヒト間葉系幹細胞の馴化培地(hMSC馴化培地)とした。hMSC馴化培地は、4℃又は凍結(-30℃)して保存し、4℃で保存する場合は、保存期限を10日間とした。
【0083】
〔ヒト角膜内皮細胞の初代培養〕
研究用ヒト角膜組織(シアトルアイバンク社製)から、鑷子を用いてヒト角膜内皮細胞を基底膜(デスメ膜)とともに剥離させた。剥離させたヒト角膜内皮細胞に、コラゲナーゼ溶液(コラゲナーゼを1mg/mLの濃度で添加したOpti-MEM I Reduced-Serum Medium)を添加して静置し、基底膜よりヒト角膜内皮細胞を剥離させた。次いで細胞を軽く振り混ぜて懸濁させ、これにヒト角膜内皮細胞培養用基本培地(8% FCS、200μg/mL CaCl2・2H2O、0.08%(w/v) コンドロイチン硫酸、20μg/mL アスコルビン酸、50μg/mL ゲンタマイシン、5ng/mL EGF及び1μmol/L SB431542(TOCRIS社製)を添加したOpti-MEM I Reduced-Serum Medium, Liquid培地、以下「基本培地」)を添加して遠心(1200rpm、5分)し、細胞を回収した。
【0084】
細胞を、hMSC馴化培地で懸濁し、細胞培養用プレート(コーニング社製)に、フラスコの底面の3分の1が細胞で占められる密度となるように播種し、37℃、5%CO2存在下で培養した。コントロール培養として、細胞を、基本培地を用いて同様にして培養した。なお、ヒト角膜内皮細胞培養用基本培地(基本培地)は、先行文献(Joyce NC. Et al., Cornea 23, S8-19 (2004))に開示されたヒト角膜内皮細胞培養用培地に、NGF及び下垂体抽出物を除く等の改変を加えたものである。初代培養は、細胞がコンフルエントに達するまで行い、この間、培地を2日毎に交換した。
【0085】
〔ヒト角膜内皮細胞の継代培養〕
上記初代培養で、コンフルエントになるまで培養したヒト角膜内皮細胞を、培地を除去してPBS(-)で2回洗浄した後、トリプシン処理して剥離した。細胞に基本培地を加えて懸濁させ、遠心して細胞を回収した。細胞を、hMSC馴化培地で懸濁させて、細胞培養用ディッシュに、ディッシュ底面の約3分の1が細胞で占められるように播種し、コンフルエントになるまで培養した。コントロール培養については、基本培地を用いて同様にして継代した。
【0086】
〔細胞の形態学的評価〕
上記ヒト角膜内皮細胞の初代培養において細胞がコンフルエントに達した時点で、位相差顕微鏡を用いて細胞の形態を観察した。その結果、hMSC馴化培地で培養した細胞では、線維芽細胞様の細胞は認められず、ほとんど全ての細胞が正常なヒト網膜内皮細胞と同様の一層の多角形の形状を示し、線維芽細胞様の存在比率は、顕微鏡下で観察した細胞(約500個)の全てが多角形の形状を示したことから、500分の1未満と推定された(
図1A)。一方、コントロール培養の細胞では、半数以上の細胞が紡錘形の線維芽細胞様の形態を示した(
図1B)。線維芽細胞様の細胞は、ヒト角膜内皮細胞として移植した場合、角膜の非透明化の原因となると考えられる。従って、かかる線維芽細胞様の細胞を含まないことは、ヒト角膜内皮細胞として移植する細胞の必須要件である。hMSC馴化培地で培養して得られた細胞は、この必須要件を満たすものといえる。
【0087】
また、コンフルエントに達した時点での細胞培養用プレート上での細胞密度を、角膜内皮細胞密度測定用ソフトウェア(Konan Medical Inc. KSS-400EB software)で測定したところ、コントロール培養した細胞では、フラスコの底面における細胞密度が、1202 個/mm2であったのに対して、hMSC馴化培地で培養した細胞では1845 個/mm2であった。角膜機能不全の患者では、角膜内皮の細胞密度が減少することを鑑みれば、高い細胞密度にまで増殖できるhMSC馴化培地で培養した細胞は、当該疾患への移植に用いる細胞として、高い臨床的効果が期待できる。
【0088】
〔リアルタイムPCR法によるTGF関連遺伝子発現量の測定〕
初代培養の開始240日後(継代回数は7回)の角膜内皮細胞から、RNeasy(QIAGEN社製)を用いて全mRNAを抽出し、抽出した全mRNAを鋳型として、ReverTra Ace(TOYOBO社製)を用いて逆転写反応(42°C, 60分間)を行い、オリゴdT法により一本鎖DNAを合成した。この一本鎖DNAをテンプレートとして、TaqManFastAdvanced Master Mix(Applied Biosystems社製)を用いたリアルタイムPCR法により、TGFβ1、TGFβ2、TGFβタイプI受容体(TGFβR1)、及びTGFβタイプII受容体(TGFβR2)の遺伝子発現量を、基本培地及びhMSC馴化培地のそれぞれを用いて培養した細胞間で比較した。なおリアルタイムPCR法における内部標準としては、GAPDH遺伝子を用いた。また、PCR反応は、40サイクル(95℃15秒+60℃30秒)を、StepOne(登録商標)real-time PCR system(Applied Biosystems社製)を用いて行った。また、PCR反応には下記に示すプライマー(TaqMan(登録商標)primers, Invitrogen社製)を用いた。すなわち、TGFβ1についてはHs99999918_m1を、TGFβ2についてはHs00234244_m1を、TGFβR1についてはHs00610320_m1を、TGFβR2についてはHs00234253_m1を用いた。GAPDHについてはHs00266705_g1を用いた。
【0089】
hMSC馴化培地を用いて培養した細胞では、基本培地を用いて培養(コントロール培養)した細胞と比較して、TGFβ1、TGFβ2、TGFβR1及びTGFβR2のいずれにおいても遺伝子発現量が少なかった(
図2)。TGFβ1及びTGFβ2は、受容体を介して角膜内皮細胞の分化を誘導することが知られている。従ってhMSC馴化培地を用いて培養した細胞は、コントロール培養した細胞と比較して、これらTGFを介した分化誘導が抑制されており、より幹細胞に近い性質を有するものと考えられる。
【0090】
〔リアルタイムPCR法による線維芽細胞関連遺伝子発現量の測定〕
次いで、リアルタイムPCR法により、コラーゲンタイプI、フィブロネクチン、コラーゲンタイプIV遺伝子発現量を、基本培地及びhMSC馴化培地のそれぞれを用いて培養したヒト角膜内皮細胞間で比較した。なおリアルタイムPCR法における内部標準としてはGAPDH遺伝子を用いた。このときのPCR反応には下記に示すプライマー(TaqMan(登録商標)primers, Invitrogen社製)を用いた。すなわち、コラーゲンタイプIについてはHs00164004_m1を、フィブロネクチンについてはHs01549976_m1を、コラーゲンタイプIVついてはHs00266237_m1を、GAPDHについてはHs00266705_g1を用いた。
【0091】
hMSC馴化培地を用いて培養した細胞では、基本培地を用いて培養(コントロール培養)した細胞と比較して、コラーゲンタイプI、フィブロネクチンの遺伝子発現量が顕著に低かった(
図3A、B)。コラーゲンタイプI及びフィブロネクチンは、線維芽細胞で強発現する一方、正常なヒト角膜内皮細胞での発現量が低い分子である。
図1(A)で示したとおり、hMSC馴化培地を用いて培養した細胞は、ほとんど全ての細胞が形態学的に正常なヒト網膜内皮細胞と同様の一層の多角形の形状を示し、線維芽細胞様の細胞の存在は認められなかったが、これら遺伝子の発現量が顕著に低いことは、hMSC馴化培地を用いてヒト角膜内皮細胞を培養した場合、線維芽細胞様の細胞がほとんど生じないことを遺伝子レベルで示すものである。なお、コラーゲンタイプIV遺伝子発現量は、両細胞間で顕著な相違はなかった(
図3C)。
【0092】
〔角膜内皮細胞の機能性マーカーの発現量の測定〕
上記コントロール培養及びhMSC馴化培地で培養した、初代培養開始210日後(継代回数は4回)のヒト角膜内皮細胞を、トリプシン処理して培養フラスコから剥離させ、剥離させた細胞を遠心して回収した後、それぞれ基礎培地及びhMSC馴化培地に懸濁し、48ウェルプレート(コーニング社製)に300 個/mm2の密度で播種して一晩培養した。細胞を、培地を新しい同一の培地に交換してさらに6日間培養した後、4%パラホルムアルデヒドに室温で10分間浸して固定し、酸アルコール溶液により浸透化処理をした。次いで、細胞をブロッキング液(10%ウシ胎児血清を含有するPBS)で1時間、室温で静置し、次いで、抗ヒトNa+/K+-ATPase抗体又は抗ヒトZO-1抗体を添加して1時間、室温で静置した。抗体液を除去し、細胞をPBS(-)で3回洗浄した後、二次抗体としてALEXA488抗体(Molecular Probes社製)又はALEXA594ヤギ抗マウスIgG抗体(Molecular Probes社製)を添加して1時間、室温で静置した。抗体液を除去し、細胞をPBS(-)で3回洗浄した後、細胞を蛍光顕微鏡(TCS SP2 AOBS, Leica Microsystems社製)により撮影した。その結果、hMSC馴化培地を用いて培養した細胞では、ほとんど全ての細胞(少なくとも80%以上の細胞)がNa+/K+-ATPase及びZO-1陽性であった。
【0093】
Na+/K+-ATPaseは、角膜内皮細胞の機能の一つである角膜内の水分量を調節するポンプ機能を担うタンパク質の一つである。また、ZO-1は角膜内皮細胞の密着結合(tight junction)を形成するタンパク質の一つであり、角膜内皮細胞のバリア機能に関連する。従って、hMSC馴化培地を用いて培養して得られた細胞は、Na+/K+-ATPaseとZO-1を共に発現していることから、内皮細胞の主要な機能であるポンプ機能とバリア機能を共に有しているといえるので、角膜機能不全の患者に移植することにより、角膜内皮の機能を改善できることが期待できる。
【0094】
〔BrdU取り込み率による細胞増殖測定〕
上記コントロール培養およびhMSC馴化培地で培養した、初代培養開始240日後(継代回数は5回)のヒト角膜内皮細胞を、トリプシン処理して培養フラスコから剥離させ、剥離させた細胞を遠心して回収した後、それぞれ基礎培地及びhMSC馴化培地に懸濁し、96ウェル培養プレートに、5,000個/ウェルの播種密度で播種し一晩培養した。細胞を、培地を新しい同一の培地に交換してさらに5日間培養した後、培地に5-ブロモ-2’-デオキシウリジン(BrdU)を添加し、一晩培養した。培地を除去し、固定溶液(Amersham cell proliferation biotrak ELISA system, ver2, GE社製)を加えて30分間室温でインキュベートした。次いで、固定溶液を除去し、ブロッキング溶液(Amersham cell proliferation biotrak ELISA system, ver2, GE社製)を加えて30分間、室温で静置した。次いで、ブロッキング溶液を除去し、ペルオキシダーゼ結合抗BrdU抗体を添加し、室温で2時間静置した。洗浄バッファーで3回プレートを洗浄し、TMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)基質(Amersham cell proliferation biotrak ELISA system, ver2, GE社製)を加えて5〜30分間静置した。1M 硫酸で反応を停止し、プレートリーダーで450nmにおける吸光度を測定した。結果は5回の測定の平均値±SEMとして示した。
【0095】
その結果、hMSC馴化培地で培養した細胞は、基礎培地で培養した細胞と比較して、約1.5倍のBrdU取り込み率を示し、細胞増殖が活発であることがわかった(
図4)。
【0096】
〔Ki-67タンパク質の発現量の測定〕
上記コントロール培養及びhMSC馴化培地で培養した、初代培養開始240日後(継代回数は5回)のヒト角膜内皮細胞を、トリプシン処理して培養フラスコから剥離させ、剥離させた細胞を遠心して回収した後、それぞれ基礎培地及びhMSC馴化培地に懸濁し、96ウェル培養プレートに、5,000細胞/ウェルの播種密度で播種し一晩培養した。細胞を、培地を新しい同一の培地に交換して更に5日間培養した後、4%パラホルムアルデヒド中に室温で10分間浸して固定し、酸アルコール溶液により浸透化処理をした。次いで、細胞を、ブロッキング液(10%ウシ胎児血清を含有するPBS)を添加して1時間、室温で静置した後、ブロッキング液を除去し、次いで抗ヒトKi-67抗体(DAKO社製)を添加して1時間、室温で静置した。抗体液を除去し、細胞をPBS(-)で3回洗浄した後、二次抗体としてALEXA488抗体(Molecular Probe社製)を添加して室温で1時間静置した。抗体液を除去し、細胞をPBS(-)で3回洗浄した後、DAPI核染色を含むベクターシールド(Vector Laboratories社製)に浸して、Ki-67陽性細胞を染色した。染色後の細胞を蛍光顕微鏡(BZ−9000, KEYENCE社製)により撮影し、約300個の細胞を観察してKi-67陽性細胞の割合を算出した(n=3)。
【0097】
その結果、hMSC馴化培地で培養した細胞では、Ki-67陽性細胞の比率が15.8%であり、基礎培地で培養した細胞の当該比率(10.8%)と比較して、有意に高かった(
図5)。Ki-67タンパク質は、リソソームRNAの合成に関与し、細胞増殖を促進する核蛋白質である。従って、この結果は、hMSC馴化培地で培養した細胞の増殖が活発であることを、遺伝子レベルで示すものである。
【0098】
上記のリアルタイムPCR法によるTGF関連遺伝子発現量及びBrdU取り込み率の測定結果とあわせて考えると、hMSC馴化培地で培養した細胞は、コントロール培養した細胞に比較して、より幹細胞に近い性質を有し、且つ増殖が活発な細胞であるといえる。従って、hMSC馴化培地を用いて培養して得られた細胞は、角膜内皮細胞の密度が減少した角膜内皮機能不全の患者に移植した場合に、移植先の組織内でより長期的にその性質を維持し、臨床上最も重要な角膜内皮の指標である角膜内皮細胞の密度を高値に維持し、角膜内皮の機能を改善することが期待できる。
【0099】
〔hMSC馴化培地濃縮液の添加試験〕
研究用ヒト角膜(シアトルアイバンク社製)を機械的に処理して、ヒト角膜内皮細胞を基底膜(デスメ膜)とともに角膜から剥離させた。剥離させたヒト角膜内皮細胞にコラゲナーゼ溶液を添加して静置し、基底膜よりヒト角膜内皮細胞を剥離させた。次いで細胞を軽く振り混ぜて懸濁させ、これに基本培地(8% FCS、200μg/mL CaCl2・2H2O、0.08%(w/v) コンドロイチン硫酸、20μg/mL アスコルビン酸、50μg/mL ゲンタマイシン、5ng/mL EGF及び1μmol/L SB431542(TOCRIS社)を添加したOpti-MEM I Reduced-Serum Medium, Liquid培地)を添加して遠心(1200rpm、5分)し、細胞を回収した。
【0100】
細胞を、細胞培養用ディッシュに、ディッシュの底面の3分の1が細胞で占められる密度となるように播種し、下記の手法により作製したhMSC馴化培地濃縮液を添加した基本培地を用いて培養した。基本培地へのhMSC馴化培地濃縮液の添加量は、基本培地に対して1%(v/v)、3%(v/v)及び10%(v/v)とした。
【0101】
細胞増殖を上記のBrdU取り込み率により測定した。その結果、細胞のBrdU取り込み率は、添加したhMSC馴化培地濃縮液の濃度依存的に上昇し、hMSC馴化培地濃縮液が、ヒト角膜内皮細胞の増殖を促進する効果を有することがわかった(
図6)。また、hMSC馴化培地濃縮液を10%(v/v)加えた培地で培養した細胞は、hMSC馴化培地で培養した細胞と同等のBrdU取り込み率を示した(
図6)。
【0102】
〔ヒト間葉系幹細胞の馴化培地濃縮液(hMSC馴化培地濃縮液)の作製〕
150mm細胞培養用ディシュに2×106個のヒト間葉系幹細胞を播種し、8% FCS、200μg/mL CaCl2・2H2O、0.08%(w/v) コンドロイチン硫酸及び50μg/mL ゲンタマイシンを添加したOpti-MEM I Reduced-Serum Medium, Liquid培地を加えて、一晩培養した。次いで、培地を血清非添加培地(200μg/mL CaCl2・2H2O、0.08%(w/v) コンドロイチン硫酸及び50μg/mL ゲンタマイシンを添加したOpti-MEM I Reduced-Serum Medium, Liquid培地)に交換し、48時間培養した。培養後、培養液を遠心(1500rpm、5分)して培養上清を回収した。回収した培養上清を限外濾過ユニット(3kDaカットオフ, Amicon Ultra-PL 3, Millipore社製)を用いて約17倍に濃縮し、これをhMSC馴化培地濃縮液とした。
【0103】
〔ヒト角膜内皮細胞の継代培養による大量製造〕
上記初代培養で、ヒト角膜内皮細胞をコンフルエントになるまで培養した。ヒト角膜内皮細胞をPBS(-)で2回洗浄した後、トリプシン処理して剥離した。細胞に基本培地を加えて懸濁させ、遠心して細胞を回収した。細胞を、hMSC馴化培地で懸濁させて、細胞培養用ディッシュに、ディッシュ底面の約3分の1が細胞で占められるように播種し、37℃でコンフルエントになるまで培養した。この継代培養を5回繰り返して行った。その結果、hMSC馴化培地で培養した細胞は、少なくとも5回の継代培養をすることができ、継代培養により細胞数を少なくとも270倍に増やすことができることがわかった。すなわち、hMSC馴化培地を用いたヒト角膜内皮細胞の培養法は、移植用の角膜内皮細胞を大量に製造する有効な手段といえる。かかる培養法を用いることにより十分量の移植用の角膜内皮細胞を医療機関に供給すること可能となるので、角膜内皮機能不全の患者の治療におけるドナー不足の解消が期待できる。