(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。第一実施形態では、反射器切替え装置を運搬車両の荷台の後面に設けた場合を例に挙げて説明する。本実施形態では、日本と中国との相互輸送を行う場合を想定している。
図1および
図2に示すように、反射器切替え装置1は、運搬車両2の壁面に設けられた反射器(本実施形態では、白色反射器10aと赤色反射器10bのうち、白色反射器10a)の露出状態と非露出状態とを切り替える装置である。複数の反射器10a,10bは、運搬車両2の荷台3の後面(壁面)の扉4に設けられている。
【0021】
本実施形態の扉4は、両開きの構造であって、2枚の扉本体4aを備えている。扉本体4aは、運搬車両2の後部ボディ3aの幅方向端部に、複数の丁番部材4b,4b・・を介して開閉可能に固定されている。扉本体4aの先端側には、扉本体4aを閉扉状態で後面ボディ3aに固定するロック機構4cが設けられている。
【0022】
反射器10a,10bは、扉4の外周縁部に貼り付けられている。反射器10a,10bは、長方形の再帰反射板にて構成されている。一方の反射器10aは、白色の反射器であり、他方の反射器10bは赤色の反射器である。以下、「白色反射器10a」と「赤色反射器10b」という。白色反射器10aと赤色反射器10bは、扉4の外周縁に沿って、交互に配置されている。なお、後面の四隅には、白色反射器10aが配置されている。扉4の外周縁部で、丁番部材4bやロック機構4cが位置する部分には、反射器10a,10bを設けていない。
【0023】
反射器切替え装置1は、2枚の扉本体4a,4aのそれぞれに設けられている。各反射器切替え装置1は、回転軸20と、板材30と、ストッパ手段40と、センサ50と、表示手段(図示せず)とを備えている。
【0024】
図1乃至
図3に示すように、回転軸20は、扉本体4aの下辺部、外側側辺部および上辺部にそれぞれ取り付けられている。すなわち、回転軸20には、扉本体4aの下辺部に設けられた下部回転軸20aと、基端側の側辺部に設けられた側部回転軸20bと、上辺部に設けられた上部回転軸20cとがある。下部回転軸20aと側部回転軸20bと上部回転軸20cとは、合わせてコ字状に配置されている。
【0025】
下部回転軸20aは、扉本体4aの下辺部に沿って並ぶ反射器10a,10bの上方で、水平方向に延在している。下部回転軸20aは、反射器10a,10bと重ならない位置に配置されている。下部回転軸20aの車幅方向中央側(扉本体4aの先端側)の端部は、扉本体4aの表面に設けられた軸受け21に回転可能に支持されている。下部回転軸20aの車幅方向外側(扉本体4aの基端側)の端部は、扉本体4aの表面に設けられた他の軸受け21に回転可能に支持されており、その端部が突出している。この突出した下部回転軸20aの端部には、後記する伝達部材22が設けられている。
【0026】
側部回転軸20bは、扉本体4aの側辺部に沿って並ぶ反射器10a,10bの内側で、上下方向に延在している。側部回転軸20bは、反射器10a,10bと重ならない位置に配置されている。側部回転軸20bは、下部回転軸20aに対して直交して配置されている。側部回転軸20bの上下両端部は、扉本体4aの表面に設けられた軸受け21,21にそれぞれ回転可能に支持されており、その端部がそれぞれ突出している。この突出した側部回転軸20bの上下両端部には、伝達部材22がそれぞれ設けられている。さらに、下側の伝達部材22からは下方に回転軸20bが突出するとともに、上側の側部の達部材22からは上方に回転軸20bが突出している(
図3では下側のみ図示)。上下に延出した回転軸20bの先端は、軸受け21,21にそれぞれ回転可能に支持されている。つまり、側部回転軸20bは、上下二か所ずつ、合計4つの軸受け21,21・・に支持され、安定化されている。
【0027】
上部回転軸20cは、扉本体4aの上辺部に沿って並ぶ反射器10a,10bの下方で、水平方向に延在している。上部回転軸20cは、反射器10a,10bと重ならない位置に配置されている。上部回転軸20cは、側部回転軸20bに対して直交して配置されている。上部回転軸20cの車幅方向中央側の端部は、扉本体4aの表面に設けられた軸受け21に回転可能に支持されている。上部回転軸20cの車幅方向外側の端部は、扉本体4aの表面に設けられた他の軸受け21に回転可能に支持されており、その端部が突出している。この突出した上部回転軸20cの端部には、伝達部材22が設けられている。
【0028】
図3および
図4に示すように、伝達部材22は、隣り合う回転軸20,20同士の回転を同期しつつ、回転力を伝達する部材である。伝達部材22は、たとえば、隣り合う回転軸20,20の先端部にそれぞれ設けられた一対のかさ歯車(ベベルギヤ)22a,22aからなる。この伝達部材22によって、下部回転軸20aと側部回転軸20bと上部回転軸20cとが同期回転する。つまり、下部回転軸20aが90度回転すると、側部回転軸20bと上部回転軸20cも同じく90度回転する。なお、伝達部材22は、かさ歯車に限定されるものではなく、ユニバーサルジョイントや摩擦系の動力伝達手段であってもよい。同期させる性能を考慮すると、摩擦系の伝達動力手段よりも歯車を備えたものが好ましい。
【0029】
板材30は、回転軸20の軸方向に沿って延在するとともに、外周面の法線方向に沿って径方向外方に延出している。板材30の縁辺は、回転軸20の外周面に溶接されている。回転軸20を半回転させると、回転軸20を中心として、板材30が反転する。板材30は、白色反射器10aと同数設けられており、白色反射器10aに隣り合う位置の回転軸20の表面に溶接されている。板材30は、白色反射器10aよりも若干大きい矩形平面形状を備えており、白色反射器10aの後方に位置する(非露出状態にある)ときに、後方側から前方を見た状態で、白色反射器10aを覆うように構成されている。
【0030】
非露出状態とは、板材30が白色反射器10aの後方に位置して、白色反射器10aが隠れる状態をいう。非露出状態では、白色反射器10aは、後方から視認できない。一方、露出状態とは、非露出状態から回転軸20が180度回転して、板材30が反転した状態をいう。露出状態では、板材30が回転軸20を挟んで反対側に移動するので、白色反射器10aが後方から視認できる。
【0031】
なお、本実施形態の反射器切替え装置1は、運搬車両2の荷台3の後面(壁面)の扉4に設けられた白色反射器10aの露出状態と非露出状態とを切り替えるようになっているが、荷台3の前面や側面など他の壁面に設けられた反射器であっても、露出状態と非露出状態とを切り替えることができる。また、隠される反射器の色も白色に限定されるものではなく、適用される各国(日本と中国以外も含む)の法律に応じて種々の色の反射器を隠すことが可能である。さらに、反射器は再帰反射器に限定されるものではなく、電光式やシールタイプの反射器であってもよいのは勿論である。
【0032】
ストッパ手段40は、回転軸20を、露出状態の回転角度と、非露出状態の回転角度とで固定するものである。
図4に示すように、ストッパ手段40は、下部回転軸20aに設けられている。具体的には、下部回転軸20aに設けられた把持レバー41にストッパ手段40が設けられている。
【0033】
まず、把持レバー41の構成を説明する。
図4に示すように、把持レバー41は、下部回転軸20aの外周面に設けられている。把持レバー41は、下部回転軸20aと直交する方向に沿って延在している。把持レバー41は、支持部42と、支持部42から延出する把持部43とを備えている。支持部42は、金属プレートを門型に折り曲げて構成されており、一対の脚部と連結部とを備えている。一対の脚部は、下部回転軸20aの軸長方向に間をあけて配置されている。連結部は、一対の脚部の上端部同士を連結している。把持部43は、金属プレートからなり、支持部42の連結部に溶接されている。把持部43は、板材30,30を通る仮想平面に沿って支持部42から延出している。把持部43の両面には、スペーサ44がそれぞれ取り付けられている。スペーサ44は、把持部43が扉本体4aの表面に衝突しないようにするためのものであって、弾性樹脂にて構成されている。
【0034】
ストッパ手段40は、支持部42に取り付けられたピン45と、扉本体4aの表面に取り付けられた受け部材46とを備えてなる。
【0035】
ピン45は、下部回転軸20aの軸長方向に沿って配置されており、支持部42の一対の脚部間に架け渡されている。ピン45は、長手方向に移動可能に支持部42に支持されている。ピン45の軸長方向の両端部は、一対の脚部の外側に突出している。脚部間には、ピン45を覆うバネ部材47が設けられている。ピン45は、バネ部材47によって、先端側(
図4の(a)の図中右側)に向かって付勢されている。
【0036】
受け部材46は、断面L字のアングル材からなる。受け部材46は、扉本体4aの表面に当接する当接部と、支持部42の側方に立ち上がる立上り部とを備えている。受け部材46は、上下方向に延在しており、下部回転軸20aに対して直交している。
【0037】
受け部材46の当接部は、扉本体4aに固定されている。受け部材46の立上り部は、脚部の側方(ピン45の先端側)に配置されている。立上り部には、ピン孔48(
図4の(b)および(c)参照)が形成されている。ピン孔48には、ピン45の先端が挿入されて、ピン45が受け部材46に係止される。ピン45を基端側(
図4の(a)の図中左側)に引っ張ることで、受け部材46のピン孔48から離脱し、係止が解除される。ピン孔48は、立上り部の上端部と下端部の両方に設けられている。上側のピン孔48は、板材30が露出状態にあるときのピン45の先端部の位置に形成されている。下側のピン孔48は、板材30が非露出状態にあるときのピン45の先端部の位置に形成されている。立上り部の上下方向中間部には、切欠部49が設けられている。切欠部49には、下部回転軸20aが通過している。
【0038】
図3に示すように、センサ50は、白色反射器10aが露出状態または非露出状態のいずれの状態にあるかを検知するものである。具体的には、センサ50は、インジケータスイッチにて構成されており、下部回転軸20aの下方で、荷台3の壁面に設けられている。センサ50は、把持レバー41の把持部43の先端部に設けられたロッド51が当接する位置に設けられている。ロッド51は、把持部43の表面に直交する方向に延出しており、把持部43の厚さ方向に突出している。ロッド51は、把持レバー41が下部回転軸20aの下方に位置したときに車両前方に突出して、その先端がセンサ50に当接してセンサ50を押す(
図4の(b)の下部の仮想線部分参照)。要するに、センサ50は、ロッド51の先端に押されたことを検知することで、白色反射器10aが露出状態または非露出状態のいずれの状態にあるかを検知する。具体的には、センサ50がロッド51に押されていることを検知しているときは、板材30が下部回転軸20aの下方で白色反射器10aを覆っており、白色反射器10aが非露出状態となっている。そして、センサ50がロッド51に押されていないときは、板材30が下部回転軸20aの上方に反転しており、白色反射器10aが露出状態となっている。なお、センサ50の種類は、前記構成に限定されるものではなく、種々のセンサを適宜適用することができる。
【0039】
表示手段(図示せず)は、センサ50に電気的に接続されている。表示手段は運転席から目視できるランプにて構成されており、たとえばセンサ50が押されたとき(インジケータスイッチがONになったとき)に、ランプが点灯するようになっている。つまり、ランプが点灯しているときは、白色反射器10aが非露出状態で、ランプが点灯していないときは、白色反射器10aが露出状態であると運転者が判断することができる。
【0040】
以上のような構成の反射器切替え装置1によれば、運搬車両2が日本で走行する際には、
図2に示すように、把持レバー41を下側に倒して、ストッパ手段40のピン45を受け部材46の下側のピン孔48に係止させる。このとき、伝達部材22を介してそれぞれ接続された下部回転軸20aと側部回転軸20bと上部回転軸20cとが互いに同期回転する。すると、下部回転軸20aの板材30が、下側に回転して白色反射器10aを覆うとともに、側部回転軸20bの板材30が、外側に回転して白色反射器10aを覆う。さらに、上部回転軸20cの板材30が、上側に回転して白色反射器10aを覆う。これによって、運搬車両2の後面の白色反射器10aが非露出状態となるので、日本で走行可能となる。
【0041】
このとき、回転軸20は、ストッパ手段40によって係止されているので、走行時の振動などが作用しても、回転軸20が回転することなく、非露出状態を確実に保持することができる。
【0042】
また、センサ50をロッド51が押しているので、センサ50は非露出状態であることを検知する。そして、運転席では表示手段が点灯するので、運転者は、いちいち運搬車両2の後部まで行って目視することなく、白色反射器10aが非露出状態であることを確認することができる。また、運転中であっても非露出状態であることを確認できる。
【0043】
さらに、下部回転軸20aと側部回転軸20bと上部回転軸20cとが互いに同期回転するので、下部回転軸20aに設けられた把持レバー41を移動させるだけで、回転軸20全体を回転させることができる。したがって、反射器の切替え作業は手の届く位置で行えるとともに、側部回転軸20bと上部回転軸20cを回転させる作業は行わなくて済むので、作業が容易である。
【0044】
運搬車両2が中国で走行する際には、
図1に示すように、把持レバー41を上側に倒して、ストッパ手段40のピン45を受け部材46の上側のピン孔48に係止させる。すると、下部回転軸20aの板材30が、上側に回転(反転)して白色反射器10aから離れるとともに、側部回転軸20bの板材30が、内側に回転(反転)して白色反射器10aから離れる。さらに、上部回転軸20cの板材30が、下側に回転(反転)して白色反射器10aから離れる。これによって、運搬車両2の後面の白色反射器10aが露出状態となるので、白色反射器10aと赤色反射器10bが交互に並び、中国で走行可能となる。
【0045】
このとき、ロッド51はセンサ50から離れているので、センサ50は非露出状態であることを検知する。そして、運転席では表示手段が消灯するので、運転者は、いちいち運搬車両2の後部まで行って目視することなく、白色反射器10aが露出状態であることを確認することができる。また、運転中であっても露出状態であることを確認できる。
【0046】
以上のように、反射器切替え装置1によれば、回転軸20を回転させるだけで、白色反射器10aの露出状態と非露出状態を切り替えることができる。これによって、日本と中国との相互輸送を行うことができる運搬車両を提供できる。さらに、露出状態と非露出状態を切り替える反射器の色や種類を適宜変更すれば、中国以外の外国の法規に適応することも可能となる。
【0047】
また、反射器切替え装置1は、回転可能な回転軸20と板材30とで形成されるので、構造が単純で、容易に製造することができる。さらに、反射器切替え装置1全体が扉4に設けられているので、扉4の開閉が可能である。
【0048】
次に、
図5および
図6を参照しながら第二実施形態の反射器切替え装置1aについて説明する。反射器切替え装置1aでは、板材31の形状が前記実施形態の板材30と異なる。具体的には、前記実施形態では、板材30が白色反射器10aのみを覆う構成となっていたが、他の実施形態に係る反射器切替え装置1aでは、回転軸20に設けられた板材31が白色反射器10aと赤色反射器10bの両方を覆う構成となっている。つまり、板材31は、白色反射器10aと赤色反射器10bに隣り合う位置の回転軸20に溶接されている。なお、その他の構成は、前記実施形態と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0049】
このような構成によれば、反射器10が非露出状態のときは、
図6に示すように、白色反射器10aと赤色反射器10b(
図5参照)の両方が覆われて露出されないので、日本での走行が可能になる。一方、反射器10が露出状態のときは、
図5に示すように、板材31が反転して白色反射器10aと赤色反射器10bの両方が露出されるので、中国での走行が可能になる。
【0050】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施の形態に限定する趣旨ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。たとえば、前記実施形態では、反射器切替え装置は荷台の後面に設けられているが、これに限定されるものではない。反射器切替え装置の設置位置は、荷台の側面や前面であってもよい。
【0051】
さらに、前記実施形態では、白色反射器10aを、扉4の外周縁部に貼り付けした場合を例示したが、
図7および
図8に示すように、白色反射器10aを板材30の片面に設けてもよい(変形例)。白色反射器10aは、板材30が外周側に位置したときに後方から視認できる面に貼り付ける(
図7参照)。この場合、扉4の表面には、白色反射器10aは設けられず、赤色反射器10bのみ設けられている。なお、その他の構成は、前記実施形態と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0052】
このような構成にすれば、板材30が外周側にあるときは、白色反射器10aは、赤色反射器10bの間に位置して後方から視認できる。一方、板材30が内周側に反転したときには、白色反射器10aは、扉側に対向するので、後方から見ると板材30に隠されて、白色反射器10aは非露出状態となる(
図8参照)。
【0053】
以上のように、前記構成においても、回転軸20および板材30を回転させるだけで、白色反射器10aの露出状態と非露出状態を容易に切り替えることができる。
【0054】
なお、
図5および
図6の板材31と同形状の板材31の片面に、白色反射器と赤色反射器の両方を貼り付けてもよい。このような構成にすれば、板材が外周側に位置したときには、白色反射器と赤色反射器の両方が露出状態となり、板材が内周側に反転したときには、白色反射器と赤色反射器の両方が非露出状態となる。
【0055】
次に、
図9乃至
図13を参照しながら第三実施形態の反射器切替え装置1bについて説明する。本実施形態に係る反射器切替え装置1bは、例えば、日本と中国などの、交通法規の異なる二国間で走行可能なダブルナンバー取得トレーラに取り付けられる。このトレーラは、日本モードと中国モードの二系統の電気信号ラインを有している。
【0056】
図9に示すように、反射器切替え装置1bでは、反射器10が板材31の片面に固定されている。具体的には、下部回転軸20aと側部回転軸20bと上部回転軸20cに設けられた三枚の板材30のぞれぞれに、白色反射器10aおよび赤色反射器10bの両方が設けられている。白色反射器10aと赤色反射器10bは、各板材30の長手方向に沿って交互に貼り付けられている。各反射器10は、板材30が回転軸20よりも外側に位置するときに後方を向く面(一方の面)に貼り付けられている。つまり、板材30が回転軸20よりも外周側に位置するときには、板材30の他方の面が壁面に対向する一方で、反射器10(白色反射器10aと赤色反射器10b)が後方に向かって露出状態となり、後方から視認できる状態となる。板材30が回転軸20よりも内周側に位置するときには、反射器10が壁面に対向して非露出状態となり、後方から視認できない状態となる(
図10参照)。
【0057】
図10にも示すように、本実施形態に係る反射器切替え装置1bは、回転軸20と板材30と表示手段(図示せず)の他に、一対のアクチュエータ70,70をさらに備えている。アクチュエータ70は、左右の扉本体4a,4aにそれぞれ設けられている。アクチュエータ70は、回転軸20を回転させるものである。本実施形態のアクチュエータ70は、上部回転軸20cを回転させる。上部回転軸20cが回転すると、伝達部材22を介して側部回転軸20bと下部回転軸20aも連動して回転する。
【0058】
アクチュエータ70は、伸縮機構71とギヤ機構72と動力源(図示せず)と制御装置73(
図11参照)とを備えている。伸縮機構71は、扉本体4aの上部に設けられており、例えばエアシリンダにて構成されている。伸縮機構71は、エアシリンダに限定されるものではなく、油圧シリンダなど他のものであってもよい。伸縮機構71は、扉本体4aに上下方向に延在して設けられている。伸縮機構71は、扉本体4aの表面に設けられた凹部60内に収容されている。凹部60は、後方に向かって開口し、縦長に形成されている。伸縮機構71は、凹部60の下部に収容されている。伸縮機構71のピストンロッド74bは、シリンダチューブ74aから上下方向に進退する。
図11に示すように、伸縮機構71には、ピストン側空気室75aに作動エアを供給するエアパイプ76aと、ロッド側空気室75bに作動エアを供給するエアパイプ76bが接続されている。エアパイプ76aおよびエアパイプ76bには、ぞれぞれ、伸縮機構71に供給するエアの流速を一定に制御するスピードコントローラ85が介在されている。なお、
図12および
図13中の符号「76」は、扉本体4a上でエアパイプ76aとエアパイプ76bとを覆うカバーである。
【0059】
図12および
図13に示すように、ギヤ機構72は、扉本体4aの上部に設けられており、例えばラック77aとピニオン77bにて構成されている。ラック77aは、上下方向に延在して、凹部60の上部に配置されている。ラック77aは、ピストンロッド74bの上端部に取り付けられており、伸縮機構71の伸縮に伴って上下動する。ラック77aの幅方向両端部には、ガイドローラ83が設けられている。ガイドローラ83は、凹部60の幅方向両端部に設けられたガイドレール61に沿って回動する。
【0060】
ピニオン77bは、ラック77aに噛合し、ラック77aが上昇あるいは下降することで回転する。ピニオン77bは、上部回転軸20cの端部に取り付けられている。なお、ピニオン77bと上部回転軸20cとの間に、別途のギヤを介設してもよい。ラック77aが上下動すると、ピニオン77bとともに上部回転軸20cが回転する。凹部60の開口端には、カバー体(図示せず)が設けられている。カバー体は、伸縮機構71、ラック77aおよびピニオン77bを覆う。
【0061】
図11に示すように、制御装置73は、エア供給ライン78からの作動エアの供給先を切り換える電磁切換弁79を備えている。電磁切換弁79は、非作動ポジション(
図11の(a)参照)と伸長ポジション(
図11の(b)参照)と縮退ポジション(
図11の(c)参照)との3ポジションを切換可能になっている。電磁切換弁79は、2つのソレノイドを備えたダブルソレノイドからなる。電磁切換弁79の一方のソレノイドには日本モード電気信号ライン80aが接続され、他方のソレノイドには中国モード電気信号ライン80bが接続されている。電磁切換弁79は、通常時は、非作動ポジションになっている。なお、エア供給ライン78には、フィルターレギュレターユニット84が設けられており、エアを安定して供給することができる。
【0062】
制御装置73は、運転席またはその周辺に設けられており、運転席から操作可能となっている。制御装置73は、日本モード側端子と、中国モード側端子と、これら各端子に選択的に接続される電気カップリング(接続部)とを運転席に備えている。電気カップリングを日本モード側端子に接続すると、日本モード電気信号ライン80aが作動可能となり、電気カップリングを中国モード側端子に接続すると、中国モード電気信号ライン80bが作動可能となる。
【0063】
以下に、露出状態と非露出状態との切替え手順を説明する。露出状態(中国モード)から非露出状態(日本モード)に切り替える際には、運転席で、電気カップリング(図示せず)を日本モード側端子に繋いで、ブレーキペダルを約3秒間踏む。ブレーキペダルは、動力源を作動させるスイッチの役目を果たす。なお、スイッチは、ブレーキペダルに限定されるものではなく、運転者が誤って接触して切り換わることのない位置(運転時に触れない位置)に設けられていれば、他のものであってもよい。
【0064】
ブレーキペダルを約3秒間踏むと日本モード電気信号ライン80aから電磁切換弁79に電流が流れ、一方のソレノイドが作動して、電磁切換弁79が伸長ポジション(
図11の(b)参照)へと切り換わる。これによって、エア供給ライン78とエアパイプ76aとが繋がり、シリンダ側空気室75aに作動エアが供給される。これに伴って、
図13に示すように、伸縮機構71が伸長するとともにラック77aが上昇して、ピニオン77bと回転軸20と板材30が回転する。ラック77aが凹部60の上端部まで上昇して、反射器10が板材30の車体側に隠れて非露出状態となる。反射器10が非露出状態になったところで電磁切換弁79は非作動ポジションに戻る。電磁切換弁79が非動作ポジションに戻るタイミングは、日本モード電気信号ライン80aに設けられたタイマー81aによって制御される。つまり、タイマー81aによって、電磁切換弁79が伸長ポジションになる時間を一定時間に保つことで、ラック77aの上昇量が一定になり、ラック77aが所定の位置(非露出状態に対応する位置)に上昇した時点で、電磁切換弁79が非動作ポジションに戻る。これによって、ラック77aは上昇した位置で固定され、非露出状態が保持される。なお、本実施形態ではタイマー81aを用いているが、タイマー不要のソレノイドを備えた電磁切換弁を用いた場合には、タイマーを省略することができる。
【0065】
非露出状態(日本モード)から露出状態(中国モード)に切り替える際には、運転席で、電気カップリング(図示せず)を中国モード側端子に繋いで、ブレーキペダルを約3秒間踏む。すると、中国モード電気信号ライン80bから電磁切換弁79に電流が流れ、他方のソレノイドが作動して、電磁切換弁79が縮退ポジション(
図11の(c)参照)へと切り換わる。これによって、エア供給ライン78とエアパイプ77bとが繋がり、ロッド側空気室75bに作動エアが供給される。これに伴って、
図12に示すように、伸縮機構71が縮退するとともにラック77aが下降して、ピニオン77bと回転軸20と板材30が回転する。ラック77aが凹部60の伸縮機構71側に下降して、反射器10が板材30の後面に位置して露出状態となる。反射器10が露出状態になったところで電磁切換弁79は非作動ポジションに戻る。電磁切換弁79が非動作ポジションに戻るタイミングは、中国モード電気信号ライン80bに設けられたタイマー81bによって制御される。つまり、タイマー81bによって、電磁切換弁79が縮退ポジションになる時間を一定時間に保つことで、ラック77aの下降量が一定になり、ラック77aが所定の位置(露出状態に対応する位置)に下降した時点で、電磁切換弁79が非動作ポジションに戻る。これによって、ラック77aは下降した位置で固定され、露出状態が保持される。
【0066】
本実施形態に係る反射器切替え装置1bによれば、反射器10の露出状態と非露出状態を自動で容易に切り替えることができる。切替え装置70は、運転席から操作可能であるので、車外へ出なくとも容易に切替え作業を行える。また、運転席から露出状態か非露出状態のいずれであるかを確認できる。
【0067】
特に本実施形態では、電気カップリングを日本モード側端子あるいは中国モード側端子に繋いで、切替えを行っているので、それぞれの国内で自動的且つ確実に国内法規ポジションを保持できる。つまり、電気カップリングが一方のモード側端子に接続されているときは、他方のモード側端子は確実に切断された状態となる。よって、運転手が明確な切替えの意思を持って作業しない限り、各モードが切り替わることはない。さらに、電磁切換弁79の一方のソレノイドには日本モード電気信号ライン80aが接続され、他方のソレノイドには中国モード電気信号ライン80bが接続されているので、電磁切換弁79は、各モードにおいて一方向にのみ移動する。よって、伸縮機構71が誤作動で逆方向に移動することはない(回転軸20が逆方向に回転しない)。さらに、人が勝手に回転軸20を回転させることもできない。したがって、車両走行状態では、回路上も人為的(手動によって)にも、他国のモードへ変動できない構造となっている。
【0068】
なお、本実施形態では、運転席から非露出状態(日本モード)と露出状態(中国モード)との切替えを行っているので、白色反射器10aが露出状態または非露出状態のいずれの状態にあるかを検知するセンサと、検知した結果を運転席に表示する表示手段は設けていないが、センサと表示手段をさらに設けてもよい。これら機構を設ければ、実際の回転軸20の回転状態を把握できるので、モード選択の確実性をより一層高めることができる。