特許第6286391号(P6286391)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286391
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】圧力調整装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20180215BHJP
   H02K 11/21 20160101ALI20180215BHJP
【FI】
   F16K31/04 K
   H02K11/21
【請求項の数】5
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2015-113617(P2015-113617)
(22)【出願日】2015年6月4日
(65)【公開番号】特開2016-223617(P2016-223617A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2017年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】栗林 廉
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−119983(JP,A)
【文献】 特開昭59−166483(JP,A)
【文献】 実開昭57−073834(JP,U)
【文献】 特開2003−297167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00−31/05
F16K 37/00
H02K 11/00−11/40
H01H 19/00−21/88
B41J 2/01;2/165−2/20;2/21−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダを持つ筐体と、
前記シリンダ内を軸方向へ移動するピストンと、
前記筐体に固定されたパルスモータと、
前記パルスモータの回転軸の回転運動を前記回転軸の軸方向への並進運動に変換し、前記ピストンに伝達する変換部材と、
前記シリンダにおける前記ピストンによる圧力調整室側とは反対の端部側の壁面に配置され、前記パルスモータの前記回転軸の前記軸方向の原点位置を検出する原点スイッチと、を具備し、
前記原点スイッチは、導体で形成され、固定側の接点部を有する第1の接点部材と、
前記パルスモータと前記シリンダとの間に介設され、前記第1の接点部材の前記接点部を露出させる開口部を有する位置決め部材と、
弾性変形可能な導体で形成され、一端側に前記位置決め部材に固定された固定端、他端側に前記開口部を通して前記第1の接点部材の前記接点部に離間対向状態で保持される可動接点部を有する第2の接点部材と、を具備し、
前記ピストンが前記原点位置以外の位置から前記原点位置側に移動する動作にともない前記ピストンによって前記可動接点部を前記固定側の接点部に当接させる方向に押圧させ、前記ピストンが前記原点位置に移動した時点で前記可動接点部を前記固定側の接点部に当接させて前記原点位置を検出する圧力調整装置。
【請求項2】
前記第1の接点部材は、前記位置決め部材の前記開口部より電気的接点の一部を突出し、前記位置決め部材と前記パルスモータとに挟まれることで前記電気的接点の一部に前記回転軸の移動方向への弾性力を発生している請求項1に記載の圧力調整装置。
【請求項3】
前記変換部材は、前記パルスモータの前記回転軸に設けられた雄ねじ部と、前記ピストンに設けられた雌ねじ部との螺合部と、
前記ピストンの軸部と前記筐体に固定され、前記軸部の軸回り方向の回転を防止する回転防止部を有する軸穴との嵌合部と、によって構成される請求項1に記載の圧力調整装置。
【請求項4】
前記位置決め部材は、前記第2の接点部材の前記固定端の固定部に前記可動接点部を前記第1の接点部材の前記接点部に対し、離間対向状態で保持する傾斜部を有する請求項1に記載の圧力調整装置。
【請求項5】
前記第1の接点部材および前記第2の接点部材は、リード線の固定部にハンダ付け部または前記リード線の接続端部を囲むように金属板を折り曲げる状態にカシメて固定するカシメ固定部のいずれかを有する請求項1に記載の圧力調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、圧力調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体吐出装置などに組み込まれる圧力調整装置の一例としてインクジェットヘッドのメニスカスの圧力を適正な範囲に維持する装置が知られている。このような圧力調整装置では、例えばシリンダ内に配置されたピストンの移動によるシリンダ内の空気の容積変化と、液体の流路を開閉する開閉部材の切り替え動作を組み合わせて液体の圧力を調整する。
【0003】
このような装置では、シリンダ内に配置されたピストンを軸方向に移動させ、ピストンの軸方向の移動位置に応じて開閉弁などを開閉駆動するようにしている。そのため、例えばパルスモータによってピストンを軸方向に移動させる際のピストンの軸方向の移動位置を正確に制御することが行われている。
【0004】
また、ステッピングモータを駆動源とし、このステッピングモータの回転運動を直線運動に変換して弁体を駆動し流路の開閉を行う遮断弁を備えた流体遮断装置がある。この装置は、磁気リードスイッチがONの状態となることによって、遮断弁の開閉状態を電気信号として検出する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−115254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ピストンの軸方向の移動位置を正確に制御する場合には、パルスモータの回転軸の原点位置を正確に検出することが必要になる。リードスイッチは感度にばらつきがあるため、開閉を検知するといった使い方には使用できるが、遮断弁の位置を正確に位置決めするために使うことは難しい。そのため、パルスモータの回転軸の原点位置を検出する手段として磁気リードスイッチを使用することは難しい。
【0007】
また、2つの電気接点を接離可能に配置し、2つの電気接点間の接触によって電気信号を検出するメカニカルスイッチをパルスモータの回転軸の原点位置を検出する手段として使用することも考えられている。しかしながら、シリンダ内のピストンの移動位置をメカニカルスイッチを使用して検出する場合には、信号線などを配線する電気配線構造が必要になる。そして、シリンダ内の密閉領域側にメカニカルスイッチを配置する場合には、信号線などをシールする必要があるので、構造が複雑化し、大型化する。そのため、シリンダ内の密閉領域ではない領域でメカニカルスイッチを使うことが望ましいが、密閉する必要がない側にはパルスモータがあるため、省スペースなスイッチが求められる。
【0008】
実施形態は、パルスモータの回転軸の原点位置を正確に検出することができ、省スペースなスイッチを使用することができる圧力調整装置を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の圧力調整装置は、シリンダを持つ筐体と、ピストンと、パルスモータと、変換部材と、原点スイッチと、を具備する。さらに、原点スイッチは、第1の接点部材と、位置決め部材と、第2の接点部材と、を具備する。第1の接点部材は、導体で形成され、固定側の接点部を有する。位置決め部材は、パルスモータとシリンダとの間に介設され、第1の接点部材の接点部を露出させる開口部を有する。第2の接点部材は、弾性変形可能な導体で形成され、一端側に位置決め部材に固定された固定端、他端側に開口部を通して第1の接点部材の接点部に離間対向状態で保持される可動接点部を有する。ピストンが原点位置以外の位置から原点位置側に移動する動作にともないピストンによって可動接点部を固定側の接点部に当接させる方向に押圧させ、ピストンが原点位置に移動した時点で可動接点部を固定側の接点部に当接させて原点位置を検出する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態のインクジェット記録装置の側面図である。
図2図2は、同インクジェット記録装置の上面図である。
図3図3は、第1実施形態のインクジェット記録部の斜視図である。
図4図4は、同インクジェット記録部の斜視図である。
図5図5は、同インクジェット記録部の説明図である。
図6図6は、第1実施形態のインクジェットヘッドの説明図である。
図7図7は、同インクジェットヘッドの説明図である。
図8図8は、同実施形態の圧力調整部の側面図である。
図9図9は、同実施形態の圧力調整部の斜視図である。
図10図10は、同実施形態の圧力調整部の内部構成の説明図である。
図11図11は、同実施形態の圧力調整部の内部構成を示す縦断面図である。
図12図12は、同実施形態の圧力調整部の分解斜視図である。
図13図13は、同実施形態の圧力調整部の説明図である。
図14図14は、ホームスイッチの斜視図である。
図15図15は、ホームスイッチの全体構成を示すもので、(A)はホームスイッチの平面図、(B)は側面図、(C)は(A)の裏面側の平面図である。
図16図16は、図15(A)のF16−F16線断面図である。
図17図17は、ホームスイッチの分解斜視図である。
図18図18は、図17とは反対側のホームスイッチの分解斜視図である。
図19図19は、ホームスイッチの第1の接点端子のハウジングへの組み付け方を説明するための平面図である。
図20図20は、ホームスイッチが動作する前の部分断面図である。
図21図21は、ホームスイッチが動作した後の部分断面図である。
図22図22は、ホームスイッチの原理を示した概略構成図である。
図23図23は、第1実施形態のインクジェット記録装置の制御基板の説明図。
図24図24は、ホームスイッチの変形例の斜視図である。
図25図25は、ホームスイッチの他の変形例を示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施の形態]
以下、第1実施形態にかかる圧力調整装置が組み込まれたインクジェット記録装置1について図1乃至図23を参照して説明する。各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小または省略して示している。なお、同じ構造または類似する構造には同じ番号を付している。
【0012】
図1はインクジェット記録装置1の側面図であり、図2はインクジェット記録装置1の平面図である。図1および図2に示すように、液体吐出装置であるインクジェット記録装置1は、画像形成部6、搬送部である記録媒体移動部7、およびメンテナンスユニット310を備える。
【0013】
画像形成部6は、インクジェット記録部4、インクジェット記録部4を支持するキャリッジ100、キャリッジ100を矢印A方向に往復移動させる搬送ベルト101、搬送ベルト101を駆動するキャリッジモータ102を備える。
【0014】
インクジェット記録部4は、液体吐出部であるインクジェットヘッド2と、循環部であるインク循環装置3と、圧力調整部(圧力調整装置)5と、を備える。
【0015】
インク循環装置3は、インクジェットヘッド2の上方にあって、インクジェットヘッド2と一体に形成される。インクジェット記録部4は、記録媒体Sにインクを吐出して、所望の画像を形成する。
【0016】
インクジェット記録部4は、例えばシアンインク、マゼンダインク、イエロインク、ブラックインク、ホワイトインクをそれぞれ吐出するインクジェット記録部4a、4b、4c、4d、4eを備える。インクジェット記録部4a、4b、4c、4d、4eがそれぞれ使用するインクの色あるいは特性は限定されない。たとえばインクジェット記録部4eは、ホワイトインクに換えて、透明光沢インク、赤外線または紫外線を照射したときに発色する特殊インク等を吐出可能である。インクジェット記録部4a、4b、4c、4d、4eは、それぞれ使用するインクが異なるものの同じ構成である。したがって共通の符号を用いて説明する。
【0017】
インクジェット記録部4は、インク循環装置3をインクジェットヘッド2の上方に積載することにより幅を狭められる。従って複数のインクジェット記録部4a〜4eを並列に支持するキャリッジ100の幅を狭めることができる。画像形成部6は、キャリッジ100の幅を狭めることにより、キャリッジ100の搬送距離を減少でき、インクジェット記録装置1の小型化を得られ且つ印字速度を高めることができる。
【0018】
画像形成部6は、インク循環装置3に新しいインクを補充するためのインクカートリッジ81を備える。インクカートリッジ81の81a、81b、81c、81d、81eは、それぞれシアンインク、マゼンダインク、イエロインク、ブラックインク、ホワイトインクを保有する。インクカートリッジ81a、81b、81c、81d、81eは、それぞれ保有するインクが異なるものの同じ構成である。したがって共通の符号を用いて説明する。インクカートリッジ81は、チューブ82を介してインクジェット記録部4のインク循環装置3に連通する。インクカートリッジ81は、重力方向においてインク循環装置3より相対的に下方に配置されている。
【0019】
記録媒体移動部7は、記録媒体Sを吸着固定するテーブル103を備える。テーブル103は、スライドレール105上に取り付けられて矢印B方向に往復移動する。テーブル103は、ポンプ104で内部を負圧にして上面の小径の穴から記録媒体Sを吸着して固定する。インクジェット記録部4が搬送ベルト101に沿って矢印A方向に往復移動する間、インクジェットヘッド2のノズルプレート52と記録媒体Sとの距離hは一定に維持される。インクジェットヘッド2は、ノズルプレート52の長手方向に300個の液体吐出部であるノズル51を備える。ノズルプレート52の長手方向は、記録媒体Sの搬送方向と同じとなる。
【0020】
画像形成部6は、記録媒体Sの搬送方向に対してインクジェットヘッド2を直交する方向に往復移動しながら、記録媒体Sに画像を形成する。インクジェットヘッド2は、画像形成信号に合わせてノズルプレート52に設けたノズル51からインクIを吐出して、記録媒体Sに画像を形成する。インクジェット記録部4は、記録媒体S上に例えば300のノズル51の幅で画像を形成する。
【0021】
メンテナンスユニット310は、インクジェット記録部4の矢印A方向の走査範囲であって、テーブル103の移動範囲より外側の位置に配置される。インクジェットヘッド2は、待機位置Qでメンテナンスユニット310に対峙する。メンテナンスユニット310は上方が開放したケースであって、上下(図1矢印C、D方向)に移動可能に設けられる。
【0022】
画像をプリントするためにキャリッジ100が矢印A方向に移動している場合、メンテナンスユニット310は下方(矢印C方向)に移動してノズルプレート52から離間する。プリント動作が終了した場合にメンテナンスユニット310は上方(矢印D方向)に移動する。プリント動作が終了してインクジェットヘッド2が待機位置Qに戻ると、メンテナンスユニット310は上方に移動して、インクジェットヘッド2のノズルプレート52を覆う。メンテナンスユニット310は、ノズルプレート52からのインクの蒸発を防止し、ノズルプレート52にほこりや紙粉が付着するのを防止する。メンテナンスユニット310は、ノズルプレート52のキャップ機能を備える。
【0023】
メンテナンスユニット310は、ゴム製のブレード120及び廃インク受け部130を備える。ゴム製のブレード120は、インクジェットヘッド2のノズルプレート52に付着したインク、ほこり、紙粉などを除去する。廃インク受け部130は、メンテナンス動作を行う間に発生する廃インク、ほこり、紙粉などを受ける。メンテナンスユニット310は、ブレード120を矢印B方向へ移動させる機構を備え、ブレード120でノズルプレート52表面を払拭する。
【0024】
インクジェットヘッド2は、ノズル近傍で劣化したインクを除去するため、ノズル51からインクを強制的に吐出させるメンテナンス(スピット機能)を行う。インクジェットヘッド2は、インクをノズル51から少し流出させてインクジェットヘッド2の表面に付着した紙粉やほこりを流出したインク膜内に取り込み、ブレード120で拭取るメンテナンス(パージ機能)を行う。廃インク受け部130はスピット機能あるいはパージ機能により発生した廃インクを回収する。
【0025】
インクジェット記録装置1は、記録媒体移動部7による記録媒体Sの搬送方向に対して、インクジェットヘッド2を直交する方向に往復移動しながら、ノズル51からインクを吐出して、記録媒体Sに画像を形成する、いわゆるシリアル型のインクジェット記録装置である。
【0026】
インクジェットヘッド2は、例えば図6および図7に示すように、ノズル51を備えるノズルプレート52と、アクチュエータ54を備える基板60と、基板60に接続されるマニフォルド61と、を備える。基板60は、ノズル51とアクチュエータ54の間に、インクを流すインク流路180を備える。アクチュエータ54はインク流路180に面し、かつ各ノズル51に対応してそれぞれ備えられる。
【0027】
基板60は、アクチュエータ54によってインク流路180内のインクに発生した圧力がノズル51に集中するように、隣接するノズル51間に境界壁190を備える。インク流路180の、ノズルプレート52、アクチュエータ54、および境界壁190で囲まれた部分がインク圧力室150となる。インク圧力室150は、第1ノズル列57aの各ノズル51a、及び第2ノズル列57bの各ノズル51bに対応して複数設けられる。第1ノズル列57a及び第2ノズル列57bはそれぞれノズル51a、51bを300個ずつ備える。
【0028】
基板60は複数の圧力室150にインクを供給する共通インク供給室58、複数のインク圧力室150からのインクを回収する共通インク室59を第1ノズル列57a側と第2ノズル列57b側にそれぞれ備える。
【0029】
マニフォルド61は、矢印F方向へインクを流入させる液体供給口であるインク供給口160と、インクを矢印G方向へ排出する液体排出口であるインク排出口170と、を備える。インク循環装置3からインク供給口160にインクIが供給され、インク排出口170からインク循環装置3にインクが還流する。マニフォルド61は、インク供給口160から共通インク供給室58に連通するインク分配通路62を有している。マニフォルド61は、共通インク室59からインク排出口170に連通するインク環流通路63を有している。
【0030】
すなわち、基板60、マニフォルド61、およびノズルプレート52によって、インクジェットヘッド2の内部に、インク流路180が形成される。インク流路180は、ノズル51a、51bに連通する複数のインク圧力室150と、マニフォルド61に形成されたインク供給口160aおよびインク排出口170と、複数のインク圧力室150に連通される共通インク供給室58と、複数のインク圧力室150からのインクを回収する共通インク室59と、インク供給口160から共通インク供給室58に連通するインク分配通路62と、共通インク室59からインク排出口170に連通するインク環流通路63と、を有する。
【0031】
インク分配通路62を矢印F方向に流れるインクIは、共通インク供給室58から複数のインク圧力室150に流入する。インク分岐部53は、矢印E方向に流れているインクが、ノズル51から吐出させるインクと、そのままインクジェットヘッド2内を流れてインク循環装置3に戻るインクに分岐する部分である。インクIは、インク圧力室150に一方の端部から流入し、インク分岐部53を通り、他方の端部から流出する。すなわち、インク圧力室150内のインク分岐部53でインクの一部はノズル51から吐出され、残りは他方の端部から流出する。インク圧力室150でノズル51から吐出されなかったインクIは、共通インク室59に流入し、インク環流通路63に還流する。
【0032】
インクジェットヘッド2のアクチュエータ54は、例えば圧電素子55と振動板56を積層したユニモルフ式の圧電振動板で構成される。圧電素子55は例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電セラミック材料等で構成される。振動板56は例えばSiN(窒化ケイ素)等で形成される。
【0033】
図7に示すように圧電素子55は上下に電極55a、55bを備える。電極55a、55bに電圧がかからない場合は、圧電素子55が変形しないことから、アクチュエータ54は変形しない。アクチュエータ54が変形しない場合、インクの表面張力によって、ノズル51内にはインクIと空気の界面であるメニスカス290が形成される。メニスカス290によりインク圧力室150内のインクIは、ノズル51内に留まる。
【0034】
電極55a、55bに電圧(V)がかかると、圧電素子55が変形して、アクチュエータ54が変形する。アクチュエータ54の変形により、メニスカス290にかかる圧力が空気圧より高くなり(陽圧)、インクIはメニスカス290を破ってインク滴IDとなりノズル51から吐出する。
【0035】
インクジェットヘッドは、インク圧力室内のインクに圧力変動を生じるものであるが、構造は限定されない。インクジェットヘッドは、例えば静電気で振動板を変形してインク滴を吐出する構造、あるいはヒータ等の熱エネルギーを利用してノズルからインク滴を吐出する構造等でもよい。またインクは温度により粘性が変わり、ノズルからの吐出特性が変わることから、インク吐出を良好に制御するために、インクジェットヘッドに温度センサを備えても良い。
【0036】
インク分配通路62には、インクジェットヘッド2へ供給するインク温度を検出するためにヘッド内温度センサ(上流)280が取り付けられている。インク環流通路63には、インクジェットヘッド2から排出されるインク温度を検出するヘッド内温度センサ(下流)281が取り付けられている。ヘッド内温度センサ280、281で、インクジェットヘッド2内へ供給またはインクジェットヘッド2から排出されるインク温度を検出する。インクジェットヘッド2内のインク温度によるインク粘度の変化を考慮してインク循環装置3を制御する。
【0037】
インク供給口160、インク分配通路62、共通インク供給室58、インク圧力室150、共通インク室59、インク環流通路63、インク排出口170の順に、インクIはインクジェットヘッド2内を移動する。このインクIの一部は画像信号に従いノズル51から吐出され、残ったインクIは移動してインク排出口170からインク循環装置3へ環流する。
【0038】
図3乃至図5に示すように、インク循環装置3は、インクケーシング200と、インクを循環させるインク循環ポンプ201と、インクカートリッジ81からインクケーシング200にインクを補給するインク供給ポンプ202と、を備えている。
【0039】
インクケーシング200は、アルミニウムで成形され、空室を形成する枠部に、ポリイミド樹脂で構成される樹脂プレート300、301が接着剤で固定されて構成される。インクケーシング200は、インク供給管208を介してインクジェットヘッド2内に連通する供給側インク室210と、インク戻し管209を介してインクジェットヘッド2内に連通する回収側インク室211とが、共通壁245を介して隣接して一体的に形成されている。インクケーシング200は、回収側インク室211からインクを吸引するための吸引孔212と、供給側インク室210にインクを送液するための排出孔213を備えている。
【0040】
図5に示すようにインクケーシング200の上部には2つの凹部353、363が形成されている。この凹部353,363には、図8図13に示される圧力調整部5のベース板5aの下面に下向きに突出させた2つの凸部(凸部372と、凸部370)が係合するようになっている。
【0041】
回収側インク室211と供給側インク室210の並び方向は、インクジェットヘッド2のノズル配列方向(インクジェットヘッド2の長手方向(B方向))と同じである。すなわち、回収側インク室211と供給側インク室210の並び方向はキャリッジ100の走査方向と略直交する方向になっている。回収側インク室211のインク液面bの上側は圧力調整部5を構成する第1気体室350になっている。供給側インク室210のインク液面aの上側は圧力調整部5を構成する第2気体室360になっている。
【0042】
インク循環ポンプ201は、図3に示すように、第1プレート300および第2プレート301とは反対側の面において、隣接している回収側インク室211と供給側インク室210に跨って設けられている。インク循環ポンプ201は吸引孔212からインクを吸引し、排出孔213を通して供給側インク室210へインクを送液する。インク循環ポンプ201は、インク供給ポンプ202と同様な圧電ポンプであり、圧電素子と金属板を貼り合わせた圧電振動板がたわむことでポンプ内の容積(ポンプ室)を周期的に変化させてインクを送液し、2つの逆止弁によってインク送液方向を一方向にさせている。インク循環ポンプ201の一方の逆止弁は吸引孔212とポンプ室との間に設けられ、他方の逆止弁はポンプ室と排出孔213との間に設けられている。ポンプ室にインクが流入するときは一方の逆止弁が開き、他方の逆止弁が閉じる。ポンプ室からインクが流出するときは一方の逆止弁が閉じ、他方の逆止弁が開く。これを繰り返して回収側インク室から供給側インク室へインクを送液する。
【0043】
インク供給ポンプ202は、インクケーシング200の外壁面に設けられている。供給ポンプ202は圧電ポンプであり、印刷やメンテナンス動作等で消費した量のインクをインク補給口221からインク循環装置3内の回収側インク室211へ供給する。インク供給ポンプ202へインクを流入させるインクの流入口であるインク補給口221には、インクカートリッジ81からインク循環装置3へインクを送液するチューブ82が接続されている。
【0044】
インク供給ポンプ202は、圧電素子と金属板を貼り合わせた圧電振動板がたわむことでポンプ内の容積(ポンプ室240)を周期的に変化させてインクを搬送し、2つの逆止弁によってインク搬送方向を一方向にさせている。インク供給ポンプ202の一方の逆止弁242はインク補給口221とポンプ室240との間に設けられ、他方の逆止弁243はポンプ室240とインクの出口241との間に設けられている。圧電振動板がたわみポンプ室240が拡張すると、逆止弁242が開きポンプ室240にインクが流入し、逆止弁243が閉じる。圧電振動板が逆方向にたわみポンプ室240が収縮すると、逆止弁242が閉じ逆止弁243が開きポンプ室240からインクが流出する。これを繰り返してインクを送液する。
【0045】
制御基板500はインク循環ポンプ201を覆うようにインクジェット記録部4に保持されている。制御基板500は、インク循環ポンプ201、インク供給ポンプ202、圧力調整部5を制御するようになっている。
【0046】
第1プレート300にはインクケーシング200内のインク量を計測するインク量計測センサ205Aが取り付けられている。第2プレート301にはインク量計測センサ205Bが取り付けられている。インク量計測センサ205Cは、圧電振動板がインクケーシング200に貼り付けられて構成され、圧電振動板を交流電圧で振動させインクケーシング200内のインクを振動させる。インク量計測センサ205Cによるインクケーシング200内を伝わるインクの振動をインク量計測センサ205A、205Bで検出し、インク量を計測している。
【0047】
インクケーシング200の外部には、インクケーシング200内のインク粘度を調整するためにインクを加熱するヒータ207が備えられている。ヒータ207はインクケーシング200に熱伝導性の高い接着剤で貼り付けられている。インクケーシング200のヒータ207の近傍にインク温度センサ282が取り付けられている。インク温度センサ282およびヒータ207は後述する制御基板500に接続され、印刷時に所望のインク粘度になるようにヒータ207が制御されている。
【0048】
インク循環ポンプ201を動作させると、インクは回収側インク室211から吸引孔212を通して吸い込まれ、インク循環ポンプ201、排出孔213を通って供給側インク室210に搬送される。密閉されている供給側インク室210の内圧はインク量の増加で高くなり、インク供給管208を通ってインクジェットヘッド2にインクが流入する。
【0049】
回収側インク室211へインクを供給するインクカートリッジ81は、インク循環装置3より重力方向(C方向)において相対的に下方に配置されている。カートリッジ81を下方に配置することで、カートリッジ81内のインクの水頭圧が、回収側インク室211の設定圧力より低く保たれる。この構成により、インク供給ポンプ202が駆動している時だけ回収側インク室211へインクIを供給するようになっている。
【0050】
インク循環装置3は、インクジェットヘッド2へインクIを供給し、ノズル51から吐出せずに残ったインクIを回収し、再度インクジェットヘッド2へ回収したインクを供給してインクを循環させる。インク循環装置3はインク供給管208を通して下方へ(重力方向である矢印C)インクを送液し、インクジェットヘッド2はさらに下方へインクを吐出する。
【0051】
インクジェットヘッド2のノズル51にはメニスカス290が形成される。ノズル51からインクが吐出する場合、インクと空気の界面であるメニスカス290を破って、インク滴となり吐出する。メニスカス290にかかる圧力が空気圧より高ければ(陽圧)、インクはノズル51から漏れ出る。メニスカス290にかかる圧力が空気圧より低ければ(負圧)、インクはメニスカス290を維持しノズル51内に留まっている。そのため、インク吐出をしない場合、インク圧力室150内のインクの圧力は−0.5〜−4.0kPa(ゲージ圧)に調整され、メニスカス290を維持している。ノズル51はインクが重力方向下向きに吐出するように配置されているので、この範囲より大きい(陽圧側)場合、わずかな振動などでインクがノズルから漏れ出してしまう。また、より小さい(負圧側)場合、ノズルから空気を吸引してしまい、吐出不良が発生する。通常インク圧力室150内は負圧に保たれていて、アクチュエータ54を動作させるとインク圧力室内のインクは陽圧になり、ノズル51からインクが吐出する。それぞれの供給側インク室210および回収側インク室211からインクジェットヘッド2のノズル51までのインク流路抵抗はほぼ同じになっている。インク流路抵抗がほぼ同じなので、第2気体室360の圧力と第1気体室350の圧力の平均値にノズル面と両インク室のインク面の水頭差による圧力の平均値を加えたものがノズル51の圧力となる。圧力調整部5においてノズル51の圧力が所定の圧力になるように圧力を調整することで良好なインク吐出を維持する。
【0052】
圧力調整部5について、図8乃至図13に基づいて説明する。図8は圧力調整部5の側面図、図9は圧力調整部5の斜視図、図10は圧力調整部5の内部構成の説明図、図11は圧力調整部5の内部構成を示す縦断面図、図12は圧力調整部5の分解斜視図、図13は圧力調整部5の説明図である。
【0053】
圧力調整部5は、循環装置3のインクケーシング200上に設けられている。圧力調整部5は、インクジェットヘッド2のノズル51内のインク圧力を適正に保つためにインクケーシング200の内部の圧力を調整する。圧力調整部5は、2つの圧力調整室(第1圧力調整室261および第2圧力調整室262)を備えている。
【0054】
第1圧力調整室261は、シリンダ250と、ピストン252と、パルスモータ254とを備えている。シリンダ250は、第4気体室270を形成する。ピストン252は、シリンダ250の内部に収納された第1の可動体である。パルスモータ254は、ピストン252をたとえば図10中でH方向に進退動させることでシリンダ250の容積を変化させる第1の容積可変部である。
【0055】
シリンダ250内に形成される第4気体室270は、図13に示すように連通管路256を介して供給側インク室210に連通するとともに、連通管路400を通じて大気に対して開閉可能になっている。連通管路256の内部には、ばね257aと、第2開閉部としての第2開閉部材257が取り付けられている。第2開閉部材257は、ばね257aの付勢によりシリンダ250と供給側インク室210内の第2気体室360との連通管路256(通路)を閉じ、ピストン252で押圧されることによってこの連通管路256を開く。
【0056】
連通管路400の内部には、ばね401aと、第3開閉部としての開閉部材401が取り付けられている。開閉部材401はばね401aの付勢により大気との連通管路400(通路)を閉じ、ピストン252で押圧されることにより大気との連通管路400を開く。連通管路400への大気取り入れ口にはフィルタFが設けられている。
【0057】
ピストン252は、円板状のピストン本体252aと、軸部252bと、雌ねじ252cとを有する。ピストン本体252aは、シリンダ250内を図10中でH方向に摺動する。ピストン本体252aの外周面にはゴム製のシール材314が装着されており、シリンダ250内を気密に保っている。軸部252bは、ピストン本体252aの中心部の一面側(パルスモータ254とは反対側の面)に突出されている。軸部252bの外周面には、平面部252dが形成されている。雌ねじ252cは、ピストン252の中心部に形成されている。
【0058】
シリンダ250は、円筒状のシリンダ本体250aの一端側が圧力調整部5のベース板5aに固定されている。シリンダ本体250aの他端側には、パルスモータ254が固定されている。パルスモータ254の回転軸254aには雄ねじ254bが固定されている。この雄ねじ254bは、ピストン252の雌ねじ252cに螺挿されている。
【0059】
また、圧力調整部5のベース板5aには、円筒形状の軸穴318が形成されている。この軸穴318には、ピストン252の軸部252bの平面部252dと対応する形状の平面部318aが形成されている。そして、ピストン252の軸部252bは、この軸穴318に摺動可能に嵌合し、ピストン252の回転を防止している。これにより、パルスモータ254の回転によって、雄ねじ254bが回転する。この雄ねじ254bの回転は、雌ねじ252cとの螺合部を介してピストン252側に伝達される。このとき、ピストン252の軸部252bは、軸穴318との嵌合により、ピストン252の回転を防止している。そのため、パルスモータ254の回転時には、雄ねじ254bと雌ねじ252cとの螺合部を介してピストン252は、シリンダ250内を上下に摺動する。そして、雄ねじ254bと雌ねじ252cとの螺合部およびピストン252の軸部252bと軸穴318との嵌合部によってパルスモータ254の回転運動をピストン252の軸方向への並進運動に変換する変換部材が形成されている。このピストン252の軸方向への並進運動により、シリンダ250とピストン252によって囲まれた第4気体室270の容積を変化させ圧力を変化させる。
【0060】
第2圧力調整室262は、シリンダ251と、ピストン253と、パルスモータ255と、を備えている。シリンダ251は、回収側インク室211と連通している。ピストン253は、シリンダ251の内部に収納された第2の可動体である。パルスモータ255は、ピストン253をたとえばH方向に進退動作させることでシリンダ251の容積を変化させる第2の容積可変部である。
【0061】
シリンダ251、ピストン253、パルスモータ255の構成は第1圧力調整室261と同じ構成になっている。シリンダ251とピストン253によって囲まれた第3気体室272の容積を変化させ、圧力を変化させる。
【0062】
シリンダ251は、回収側インク室211と連通する連通管路258を有している。連通管路258の内部には、ばね259aと、第1開閉部である開閉部材259が取り付けられている。開閉部材259は、ばね259aの付勢によりシリンダ251と回収側インク室211内の第1気体室350を連通させる連通孔を閉じ、ピストン253で押圧されると開く。
【0063】
ピストン253は、パルスモータ255の回転によって、シリンダ251内を上下に摺動し、シリンダ251とピストン253によって囲まれた第3気体室272の容積を変化させ圧力を変化させる。
【0064】
図5に示すように回収側インク室211の第1気体室350は、ベース板5aの下面に下向きに突出させた一方の凸部372に設けられた通路と開口351を通して第1気体室350より上部にある第5気体室352に連通している。第5気体室352には、圧力センサ204の検出部に繋がる連通路223が設けられている。供給側インク室210の液面aに接する空気を含む第2気体室360は、凸部370に設けられた通路と開口361を通して、第6気体室362に連通している。第6気体室362には、圧力センサ204の検出部に繋がる連通路222が設けられている。
【0065】
圧力センサ204は、供給側インク室210内の第2気体室360、回収側インク室211内の第1気体室350のそれぞれの圧力を検出している。圧力センサ204は1チップで2つの圧力検知ポートを有し、第1気体室350と第2気体室360に連通し、二つの第1気体室350、360内の圧力を計測するようになっている。圧力センサ204は、制御基板500に接続され、供給側インク室210上部と回収側インク室211上部の空気圧を電気信号として出力する。
【0066】
図13に示すように圧力調整部5の2つのシリンダ250とシリンダ251の間には両者を常時連通させる連通経路260が設けられている。すなわち、圧力調整部5は、第3気体室272と、第1開閉部である開閉部材259と、第4気体室270と、第2開閉部である開閉部材257と、連通経路260と、第3開閉部である開閉部材401と、第1の容積可変部であるピストン253と、第2の容積可変部であるピストン252と、を備えている。
【0067】
圧力調整部5は、2つのピストン252、253をそれぞれ上下移動させて、シリンダ250、251の空気の容積を変化させ、3つの開閉部材259、257、401を切り替えて流路を開閉する。これにより、インクケーシング200の内部の圧力を調整し、インクジェットヘッド2のメニスカス290の圧力を適正な範囲に維持する。
【0068】
本実施形態の圧力調整部5は、第1圧力調整室261および第2圧力調整室262にそれぞれメカニカルスイッチであるホームスイッチ700が組み込まれている。以下、図14図22を用いてホームスイッチ700を説明する。なお、第1圧力調整室261および第2圧力調整室262にそれぞれ組み込まれている2つのホームスイッチ700は、同一構造である。そのため、ここでは第1圧力調整室261のホームスイッチ700の構造を説明し、第2圧力調整室262のホームスイッチ700の同一部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0069】
図14は、ホームスイッチ700の斜視図である。図15は、ホームスイッチ700の全体構成を示すもので、(A)はホームスイッチ700の平面図、(B)は側面図、(C)は(A)の裏面側の平面図である。図16は、図15(A)のF16−F16線断面図である。図17は、ホームスイッチ700の分解斜視図である。図18は、図17とは反対側のホームスイッチ700の分解斜視図である。図19は、ホームスイッチ700の第1の接点端子702をハウジング701へ組み付ける組み付け方を説明するための平面図である。図20は、ホームスイッチ700が動作する前の部分断面図である。図21は、ホームスイッチ700が動作した後の部分断面図である。図22は、ホームスイッチ700の原理を示した概略構成図である。
【0070】
圧力調整部5の2つの第1圧力調整室261および第2圧力調整室262には、それぞれホームスイッチ700の取付け部705、706が設けられている。ここで、第1圧力調整室261のシリンダ250におけるパルスモータ254との接合端部側の端縁部には、図10に示すように内周面側に円環状の凹部(嵌合穴部)705aが形成されている。この凹部705aの直径は、シリンダ本体250aの内径の直径よりも大きく設定されている。さらに、この凹部705aの下側には、凹部705aよりも小径な小径凹部705bが形成されている。そして、シリンダ250におけるパルスモータ254との接合端部側の端縁部には、これら凹部705aと小径凹部705bとによって2段の段部が形成されている。シリンダ250の凹部705aによって第1圧力調整室261の取付け部705が形成されている。パルスモータ254には、回転軸254aの基端部に大径な同軸の位置決め軸部707が形成されている。
【0071】
第2圧力調整室262の取付け部706も同様に形成されている。すなわち、シリンダ251におけるパルスモータ255との接合端部側の端縁部内周面側に円環状の凹部(嵌合穴部)706aと小径凹部706bとが形成され、凹部706aによって第2圧力調整室262の取付け部706が形成されている。
【0072】
ホームスイッチ700は、位置決め部材を兼ねるハウジング701と、第1の接点端子702と、第2の接点端子703と、キャップ部材704とで構成される。ハウジング701は、リング状の第1保持部701a1と、直線状の第2保持部701a2とを有する。第2保持部701a2の一端部(内端部)は、第1保持部701a1の外周部の一部に連結されている。
【0073】
第1保持部701a1は、表面側にリング状溝701a3が形成されている。同様に、第2保持部701a2の表面側には、直線状溝701a4が形成されている。リング状溝701a3と直線状溝701a4とは溝深さが同じである。そして、直線状溝701a4の一端部(内端部)は、リング状溝701a3に連結されている。そして、リング状溝701a3と直線状溝701a4の溝底面によって第1の接点端子702の取付け位置を決める基準平面部701dが形成されている。
【0074】
ハウジング701の第1保持部701a1の外周面は、圧力調整部5のシリンダ250の取付け部705の凹部(嵌合穴部)705aと嵌合する嵌合軸部701aとなっている。第1保持部701a1の内周面は、パルスモータ254の位置決め軸部707と嵌合する嵌合穴部701bとなっている。ホームスイッチ700を第1圧力調整室261に組み付ける場合には、ハウジング701の第1保持部701a1の外周面の嵌合軸部701aをシリンダ250の取付け部705の凹部(嵌合穴部)705aに嵌合させる。さらに、第1保持部701a1の内周面の嵌合穴部701bをパルスモータ254の位置決め軸部707と嵌合させる。これにより、シリンダ250とパルスモータ254の軸の位置決めが精度よく行うことができる。なお、シリンダ251とパルスモータ255の軸の位置決め構造も同じであり、シリンダ251とパルスモータ255の軸の位置決めも同様に精度よく行うことができる。
【0075】
ハウジング701には、第1保持部701a1における第2保持部701a2との連結部の近傍に開口部701cが形成されている。この開口部701cは、第1保持部701a1のリング状溝701a3の内周部側に配置された直線状の貫通穴部701c1と、リング状溝701a3の外周部側に配置されたほぼ半円形状の貫通穴部701c2とを有する。貫通穴部701c1と貫通穴部701c2とは、連通されて一体化されている。
【0076】
さらに、ハウジング701の第1保持部701a1は、リング状溝701a3の内周壁部によって形成される嵌合軸部701eを有する。この嵌合軸部701eには、後述する第1の接点端子702の嵌合穴部702cが嵌合するようになっている。また、ハウジング701には、第1保持部701a1のリング状溝701a3の外周壁部における開口部側の端縁部内周面に複数、本実施形態では3つの突起部701fが形成されている。
【0077】
ハウジング701の第2保持部701a2には、第1保持部701a1との連結部とは反対側の端部に直線状溝701a4と直交する方向に延設された左右の延設部701gが設けられている。これらの延設部701gの一方には、図17に示すように第1保持部701a1が低く、第1保持部701a1と反対側が高くなる傾斜部701hが形成されている。
【0078】
また、図18に示すように左右の延設部701gの裏面側には、ハウジング701の他の部分よりも裏面側に突出する裏面突出部701jが形成されている。この裏面突出部701jの表面は、前側(第1保持部701a1側)の突出高さが後ろ側の突出高さよりも高くなる状態に傾斜させた傾斜面701j1が形成されている。さらに、裏面突出部701jの傾斜面701j1には、第2の接点端子703の取付け位置を位置決めする左右一対の円柱状の位置決めボス701iが設けられている。
【0079】
第1の接点端子702は、リング状プレート部702a1と、直線状プレート部702a2とを有する。直線状プレート部702a2の一端部(内端部)は、リング状プレート部702a1の外周部の一部に連結されて一体化されている。第1の接点端子702のリング状プレート部702a1は、ハウジング701の第1保持部701a1のリング状溝701a3と対応する大きさに形成されている。直線状プレート部702a2は、ハウジング701の第2保持部701a2の直線状溝701a4と対応する大きさに形成されている。
【0080】
リング状プレート部702a1には、直線状プレート部702a2との連結部の近傍にリング状プレート部702a1の裏面側に突出する円錐形状の接点部702bが形成されている。この接点部702bは、ハウジング701の貫通穴部701c2と対応する位置に配置されている。
【0081】
そして、第1の接点端子702は、リング状プレート部702a1がハウジング701のリング状溝701a3に、また直線状プレート部702a2が直線状溝701a4にそれぞれ挿入される状態でハウジング701に組み付けられる。このとき、ハウジング701の嵌合軸部701eには、第1の接点端子702のリング状プレート部702a1の嵌合穴部702cが嵌合する。さらに、リング状プレート部702a1の裏面と直線状プレート部702a2の裏面とによってハウジング701の基準平面部701dと接触する基準平面部702gが形成されている。
【0082】
また、リング状プレート部702a1には、外周縁部にリング状溝701a3の3つの突起部701fとそれぞれ対応する3つの切欠き702dが形成されている。ここで、3つの切欠き702dは、図19に示すようにハウジング701と第1の接点端子702とが正しく組み付けられる前の状態で3つの突起部701fと位置(位相)が合わされるように形成されている。すなわち、リング状プレート部702a1の3つの切欠き702dと、ハウジング701の3つの突起部701fとが位置合わせされ、位相を合わせた状態では、ハウジング701のリング状溝701a3にリング状プレート部702a1が嵌め込まれているが、直線状プレート部702a2は、ハウジング701の直線状溝701a4に嵌め込まれていない状態(一定角度回動させた状態)に設定されている。そして、図19の位置から第1の接点端子702を図19中で反時計回り方向に回動させる。この回動動作時には、第1の接点端子702の直線状プレート部702a2を弾性変形させて傾斜部701hを乗り越えてハウジング701の直線状溝701a4に嵌合させる。このとき、リング状プレート部702a1の3つの切欠き702dの周縁部位は、3つの突起部701fの下側に押し込まれ、係合されるように弾性変形される。これにより、図14図15(A)などに示す正規の組み付け位置にセットされるようになっている。この正規の組み付け位置にセットされた状態では、ハウジング701と第1の接点端子702とが一体化された仮止め状態に組み付けられる。そのため、ホームスイッチ700を第1圧力調整室261の取付け部705に組み込む前にハウジング701と第1の接点端子702とが分離することを防ぐことができる。このとき、第1の接点端子702の突起状の接点部702bは、ハウジング701の開口部701cの貫通穴部701c2からハウジング701の下面側に露出するようになっている。
【0083】
また、図14図15(A)などに示す正規の組み付け位置から第1の接点端子702を図15中で時計回り方向に回動させて直線状プレート部702a2を一定角傾けると、図19に示すようにリング状プレート部702a1の3つの切欠き702dと、ハウジング701の3つの突起部701fとが位置合わせされ、位相が合ってハウジング701から第1の接点端子702を取外すことができるようになっている。
【0084】
さらに、リング状プレート部702a1の表面側には、バネ力発生部である複数、本実施形態では4つの舌片状の突起部702fが形成されている。これらの突起部702fは、リング状プレート部702a1にほぼU字状の切り込み702f1を形成し、この切り込み702f1の内側部分を上向きに立設させる状態に折り曲げることで形成されている。
【0085】
直線状プレート部702a2には、バネ力発生部である1つの舌片状の突起部702fが形成されている。この突起部702fは、直線状プレート部702a2にほぼU字状の切り込み702f1を形成し、この切り込み702f1の内側部分を上向きに立設させる状態に折り曲げることで形成されている。直線状プレート部702a2の末端部には、斜めに折り曲げられた折り曲げ部702h1が形成されている。この折り曲げ部702h1には、リード線接続穴702h2が設けられている。このリード線接続穴702h2には、図14に示すようにリード線711が接続されている。このリード線711は、リード線接続穴702h2に通したのちハンダ712で第1の接点端子702に固定される。
【0086】
第2の接点端子703は、ほぼT字状の接点プレート703aを有する。接点プレート703aの基端部には、ハウジング701の裏面突出部701jと対応する位置に配置される長板状の固定部703a1が形成されている。この固定部703a1には、位置決め用の円孔部703bと、長穴部703cと、リード線接続穴703dとが形成されている。位置決め用の円孔部703bと、長穴部703cは、ハウジング701の2つの位置決めボス701iと対応する位置に配置されている。第2の接点端子703のリード線接続穴703dには、図14に示すようにリード線711が接続されている。このリード線711は、リード線接続穴703dに通したのちハンダ712で第2の接点端子703に固定される。
【0087】
接点プレート703aの先端部には、幅広部703eが形成されている。この幅広部703eは、ハウジング701の開口部701cの直線状の貫通穴部701c1と対応する位置に配置されている。ここで、図15(C)に示すように貫通穴部701c1は、幅広部703eよりも大きく形成されている。これにより、ホームスイッチ700の動作時に第2の接点端子703が弾性変形した際に幅広部703eが貫通穴部701c1内に挿入されることで、幅広部703eがハウジング701の壁面と干渉することを防止する逃げ部が形成されている。第1の接点端子702、第2の接点端子703の材料としては、バネ用ステンレス鋼板に電気抵抗を下げるためにニッケルメッキ処理したものや、バネ用リン青銅板に電気抵抗を下げるためにニッケルメッキ処理したものなどが考えられる。
【0088】
キャップ部材704は、ハウジング701の裏面側の裏面突出部701jと対応する位置に配置されるブロック状の固定部704aを有する。この固定部704aには、2つの位置決め穴704b、704cが形成されている。2つの位置決め穴704b、704cは、ハウジング701の2つの位置決めボス701iと対応する位置に配置されている。
【0089】
そして、第2の接点端子703をハウジング701に固定する場合には、ハウジング701の裏面突出部701jの2つの位置決めボス701iが第2の接点端子703の位置決め用の円孔部703b及び長穴部703cに差し込まれる。続いて、2つの位置決めボス701iがキャップ部材704の2つの位置決め穴704b、704cに差し込まれ、接着固定される。これにより、接点プレート703aの基端部の固定部703a1がハウジング701の裏面突出部701jの傾斜面701j1に固定される。このとき、裏面突出部701jの傾斜面701j1は、前側(第1保持部701a1側)の突出高さが後ろ側の突出高さよりも高くなる状態に傾斜させている。これにより、ホームスイッチ700の初期状態において、第2の接点端子703は、図16図20に示すように第1の接点端子702の突起状の接点部702bと接しない角度となるように設定されている。
【0090】
図11は、ホームスイッチ700が圧力調整部5に組込まれた状態を示す図である。ホームスイッチ700は、シリンダ250におけるパルスモータ254との接合端部側の端縁部の凹部705aにハウジング701のリング状の第1保持部701a1の嵌合軸部701aが嵌合される状態で取り付けられる。このとき、シリンダ250の凹部705aによってハウジング701の高さ方向の位置が規定される。さらに、第1の接点端子702は、ハウジング701の基準平面部701dと、第1の接点端子702の基準平面部702gとが接触することで高さ方向の位置が決まる。
【0091】
第1の接点端子702にはバネ力発生部である複数の舌片状の突起部702fが設けられている。ホームスイッチ700が圧力調整部5に組込まれた状態では、ハウジング701の基準平面部701dとパルスモータ254の平面部709との間にホームスイッチ700が挟まれることで、複数の舌片状の突起部702fが弾性変形する。このとき、ハウジング701の平面部701dと第1の接点端子702の平面部702gとの間に押圧力が働く。これにより、第2の接点端子703が弾性変形し、第1の接点端子702の突起状の接点部702bに接した後も元の位置に戻ることができ、精度のよい位置決めを行うことができる。
【0092】
なお、第1の接点端子702は導電体でできており、パルスモータ254の平面部709が導電体でグラウンドに落ちている場合は正しくセンシングできない。そのため、パルスモータ254の平面部709と、第1の接点端子702との間には、絶縁シート708を間に挟むことで絶縁している。
【0093】
図11に示すように圧力調整部5の2つのピストン(ピストン252と、ピストン253)の天面部には、それぞれ平面710が設けられている。パルスモータ254、255を駆動することでピストン252、253が図11中で上下方向に移動する。そして、各ピストン252、253の平面710に第2の接点端子703が接触することで第2の接点端子703が弾性変形し、第1の接点端子702の突起状の接点部702bに接触することでメカニカルなスイッチとしての役割を果たす。このとき、パルスモータ254の回転軸254aの軸方向の原点位置x0と、パルスモータ255の回転軸255aの軸方向の原点位置y0とが検出される。
【0094】
図20は、ホームスイッチ700が動作する前の部分断面図、図21はホームスイッチ700が動作した後の部分断面図をそれぞれ示している。図22は、ホームスイッチ700の原理を示す。図22中で、実線は、ホームスイッチ700が動作する前の状態を示す。この状態では、第2の接点端子703が第1の接点端子702の突起状の接点部702bに当接していない非接触な状態で保持されている。この場合は、制御入力ポート721側に電流が流れる。
【0095】
図22中で、点線は、第2の接点端子703が第1の接点端子702の突起状の接点部702bに当接した状態を示す。この状態では、ホームスイッチ700を通してグラントにつながるので、制御入力ポート721側に電流は流れない。
【0096】
次に、図13を参照して、圧力調整部5の動作について説明する。x0は、パルスモータ254の回転軸254aの軸方向の原点位置を示す。y0は、パルスモータ255の回転軸255aの軸方向の原点位置を示す。x1,y1はピストン252、ピストン253のホーム位置である。ホーム位置x1はピストン253が開閉部材259の先端306に当接せず、連通管路258は閉状態となる位置に設定されている。また、ホーム位置y1は、ピストン252が開閉部材257の先端305を押圧せず、連通管路256が閉状態となる位置に設定されている。
【0097】
位置x2は、ピストン253が開閉部材259の先端306を押圧し、開閉部材259を開く位置である。x1からx2まではストロークh1だけ離れており、ピストン253が開閉部材259に当接してその後押圧できる距離に設定されている。
【0098】
ピストン252がホーム位置y1の時に、第3気体室272と第4気体室270の容積の和を一定に保つようH方向の上にh2動かした位置をy1’とする。ピストン253をストロークh1だけ動かした容積V1とピストン252をストロークh2だけ動かした容積V2が等しくなるように設定している。シリンダ251とシリンダ250の断面積が等しい場合はh1=h2となる。
【0099】
位置y2’は圧力調整を行うことによってピストン252が動ける上限の位置である。ピストン252の位置が上限y2’にあるときに、第3気体室272と第4気体室270の容積の和を一定に保つようH方向の下にh2動かした位置をy2とする。
【0100】
位置y3’は圧力調整を行うことによってピストン252が動ける下限の位置である。ピストン252の位置が下限の位置y3’にあるときに、第3気体室272と第4気体室270の容積の和を一定に保つようH方向の下にh2動かした位置をy3とする。y3にピストン252があるとき、開閉部材401の先端307に当接しないように距離を開けて設定される。位置y4はピストン252が開閉部材401を開く位置であり、位置y5はピストン252が開閉部材257を開く位置である。
【0101】
第1気体室350を大気開放する際の手順を示す。まずピストン253が開閉部材259を開く位置x2にある場合には、それぞれ、開閉部材259を閉じる位置x1の状態とし、第1気体室350に圧力調整部5の圧力変動が及ばないようにする。
【0102】
次に、ピストン252を位置y4まで移動し、開閉部材401を開ける。この時、第4気体室270の容積は圧縮され、第4気体室270とそれに連通する第3気体室272内の圧力は上昇するが、開閉部材259を閉じているので、第1気体室350には圧力変動は及ばない。ピストン252が開閉部材401を開くと、第4気体室270とそれに連通する第3気体室272内の圧力は大気圧となる。
【0103】
次に、開閉部材259を開く位置x2までピストン253を移動する。この時、開閉部材259の先端306に接するまで、第3気体室272の容積は圧縮されるが、開閉部材401が開となっており、大気開放状態のため圧力は大気圧のままである。開閉部材259の先端306に接し押圧する位置x2まで移動すると、第1気体室350は、第3気体室272、それに連通する第4気体室270を経て、大気開放状態となる。
【0104】
第2気体室360を大気開放する手順を示す。ピストン253が開閉部材259を開く位置x2にある場合には、それぞれに示すように、開閉部材259を閉じる位置x1の状態とし、第1気体室350に圧力調整部5の圧力変動が及ばないようにする。
【0105】
次に開閉部材257を押圧して開ける位置y5までピストン252を移動する。この時、開閉部材401の先端307に接するまで、第4気体室270の容積は圧縮され、第4気体室270とそれに連通する第3気体室272内の圧力は上昇する。しかしながら、開閉部材259を閉じているので、第1気体室350には圧力変動は及ばない。
【0106】
ピストン252に押されて開閉部材401が開くと、第4気体室270とそれに連通する第3気体室272内の圧力は大気圧となる。この時、先に開閉部材257の先端305を押圧した後に、開閉部材401の先端307を押圧するような位置関係にすると、圧縮された空気が第2気体室360に流れ込み圧力変動を及ぼしてしまうので、ピストン252と開閉部材401の先端307が先に当接し、その後開閉部材257の先端305に当接するように、距離Gを設定している。
【0107】
開閉部材257の先端305に接し押圧する位置y5まで移動すると、第2気体室360は第4気体室270を経て、大気開放状態となる。開閉部材259を閉としているので、第1気体室350は大気開放されない。
【0108】
第1気体室350と第2気体室360を大気開放する手順を示す。上記、第2気体室360を大気開放した状態で開閉部材259を押圧して開く位置x2までピストン253を移動する。この時、開閉部材259の先端306に接するまで、第3気体室272の容積は圧縮されるが、開閉部材401が開いており大気開放状態であるため圧力は大気圧のままである。開閉部材259の先端306を押圧して開ける位置x2までピストン253が移動すると、第1気体室350は、第3気体室272、それに連通する第4気体室270を経て、大気開放状態となる。第2気体室360も第4気体室270を経て、大気開放状態となる。
【0109】
次に、ピストン252が開閉部材401を開く位置y4から、開閉部材401を閉じて、ピストン252をホーム位置y1に戻す手順を示す。
【0110】
第1気体室350を大気開放している状態においては、ピストン252の位置は位置y4としたまま、ピストン253の位置を位置x1まで移動する。
【0111】
第2気体室360を大気開放している状態においては、ピストン252の位置を位置y4まで移動する。
【0112】
第1気体室350と第2気体室360を大気開放している状態においては、ピストン253の位置を位置x1まで移動したのち、ピストン252の位置をy4まで移動する。その後、ピストン252を開閉部材401の先端307に接する位置y6まで移動すると、開閉部材401は閉じる。
【0113】
開閉部材401が閉じると、第4気体室270とそれに連通する第3気体室272は密閉状態となるため、y6からホームポジションであるy1までのストロークh3だけ動かした容積V3分だけ、第4気体室270とそれに連通する第3気体室272は減圧される。よって、このままピストン253の位置を位置x1から位置x2に移動すると、減圧された空気が第1気体室350に供給されるため、急激な圧力変動を及ぼしてしまう可能性がある。この急激な圧力変動を回避するため、ピストン252が位置y4にある時、つまり第4気体室270とそれに連通する第3気体室272を大気開放している時に、ピストン253の位置を位置x1から位置x3まで距離h4移動する。
【0114】
その後、ピストン252の位置を位置y4から位置y6を経て位置y1まで移動する。この時、第4気体室270とそれに連通する第3気体室272は位置y6から位置y1までの移動距離h3だけ動かした容積V3分だけ減圧される。
【0115】
その後、ピストン253の位置を位置x3から位置x1まで移動する。この時、第4気体室270とそれに連通する第3気体室272は位置x3から位置x1までの移動距離h4だけ動かした容積V4分だけ加圧される。
【0116】
V3=V4とした場合は、第4気体室270とそれに連通する第3気体室272の容積の和はピストン253が位置x3の位置、ピストン252が位置y6の位置にある時と、ピストン253が位置x1の位置、ピストン252が位置y1の位置にある時では同じである。
【0117】
ピストン252がy6の位置にある時、つまり開閉部材401を閉じたときは、第4気体室270とそれに連通する第3気体室272の圧力は大気圧であるため、ピストン253、ピストン252がそれぞれ位置x1,位置y1の位置にあっても大気圧となる。
【0118】
V3>V4とした場合は、第4気体室270とそれに連通する第3気体室272の容積の和はピストン253が位置x3の位置で、ピストン252が位置y6の位置にある時より、ピストン253が位置x1、ピストン252が位置y1の位置にある時の方が大きい。つまりは(V3−V4)の体積分だけ減圧されることとなる。この量を調節することによって、第1気体室350の圧力を大気開放する前の圧力に揃えてから圧力調整を再開することもできる。
【0119】
V3<V4とした場合は、第4気体室270とそれに連通する第3気体室272の容積の和はピストン253がx3の位置で、ピストン252が位置y6の位置にある時より、ピストン253がx1の位置、ピストン252が位置y1の位置にある時の方が小さい。つまりは(V4−V3)の体積分だけ加圧されることとなる。
【0120】
ピストン252の位置が圧力調整を行うことによって、ピストン252が動ける上限位置y2’、下限位置y3’に至った場合においては、ピストン252は圧力調整のために動くことはできない。
【0121】
しかしながら、ピストン252が位置y2’、位置y3’にある場合においても、第1気体室の圧力変動を及ぼさないように、ピストン253を位置x2から位置x1に動かすことができる。したがって、まずピストン253を位置x2から位置x1に動かし、同時にピストン252をそれぞれ位置y2’から位置y2へ、位置y3’から位置y3へ移動し、この状態からピストン252を位置y4に移動し、開閉部材401を開き、大気開放状態とする。その後、ピストン252が開閉部材401を押圧して開く位置y4から、開閉部材401を閉じて、ピストン252をホーム位置y1に戻す手順を行うことで、圧力調整を行う前の圧力にした状態で、ピストン252を位置y1に戻すことができる。
【0122】
図23はインクジェット記録装置1の動作を制御する制御基板500のブロック図である。制御基板500には、電源550と、インクジェット記録装置1の状況を表示する表示装置560と、入力装置としてキーボード570が接続されている。制御基板500は、動作を制御する制御部であるマイコン510と、プログラムを格納するメモリ520と、圧力センサ204や温度センサ280,281,282の出力電圧を取り込むAD変換部530を備える。さらに、制御基板500は駆動回路540を有し、インクジェット記録部4、インクジェット記録部4を記録媒体Sに対して相対移動させるキャリッジモータ102、ピストン252,253を動作させるパルスモータ254、255、スライドレール105、ポンプ104、201、202、ヒータ207などを動作させている。
<印刷動作>
インクジェット記録装置1の印刷動作について説明する。インクジェット記録装置1を最初に印刷動作させる場合には、インクカートリッジ81からインク循環装置3とインクジェットヘッド2にインクを充填する。マイコン510は、キーボードから初期充填動作が指示されると、インクジェット記録部4を待機位置に戻し、メンテナンスユニット310を上昇させてノズルプレート52を覆う。
【0123】
マイコン510は、圧力調整部5を制御し図13に示すようにピストン252,253をホーム位置x1,y1に位置させる。インク供給ポンプ202を駆動させ、チューブ82内の空気とともにインクカートリッジ81からインクケーシング200の回収側インク室211にインクを送液する。このとき、インクジェットヘッド2の内部の流路抵抗が大きいので、インクジェットヘッド2、および、供給側インク室210へは、短時間ではインクは流れ込まない。
【0124】
回収側インク室211のインク量計測センサ205Bが吸引孔212までインクが流入したことを検知すると、マイコン510は、圧力調整部5を制御してインクケーシング200内の圧力の調整を開始すると同時にインク循環ポンプ201を所定時間駆動する。インクは回収側インク室211からインク循環ポンプ201を経て供給側インク室210に送液される。インク量計測センサ205A、205Bによる回収側インク室211と供給側インク室210の液量検出結果が、それぞれ循環ポンプ201の吸引孔212と排出孔213に到達していればインクの充填は終了である。回収側インク室211のインク量が未達の場合は、インク供給ポンプ202を駆動させ、インクカートリッジ81からインクケーシング200の回収側インク室211にインクを送液する。
【0125】
この動作を繰り返すことで、回収側インク室211、供給側インク室210のインク量が適正になり、初期充填動作が完了する。なお、圧力調整部5が動作し、インクケーシング200は密閉状態なので、電源が切れてもノズル51のメニスカス290の圧力は負圧に維持され、インクが漏れることはない。
【0126】
なお、圧力センサ204は、圧力を電圧として出力する。圧力センサ204を長期間使用する、または環境(温度)条件が変化すると、圧力と出力電圧に差異が発生する。そこで、大気圧の出力電圧値を保存しておき、圧力検知時の出力電圧値との差分で圧力(ゲージ圧)を求めることで、圧力を正確に検知することができる。大気圧の出力電圧を保存するタイミングになると、圧力調整室261,262を大気に連通させる。回収側インク室211の圧力は大気圧になるので、その時の出力電圧値を制御基板500のメモリ520に格納する。インクケーシング200内の圧力が大気圧になると、インクジェットヘッド2のノズル51のメニスカスは正圧になりインクがノズル51から漏れる可能性が有る。しかし、インクケーシング200内の圧力を大気圧にする動作は短時間で終了するので、大気圧の出力電圧値を保存後、回収側インク室211を所定の圧力に調整すれば、ノズル51からインクが漏れ出ることはない。大気圧の出力電圧値をメモリ520に格納するタイミングは、装置の電源を入れた時に行っている。なお、大気圧の出力電圧値をメモリに保存する他のタイミングとして、装置が内蔵しているタイマーで一定時間ごとに行うこともできる。一定時間ごとに出力電圧値をメモリ520に保存する場合、インクジェット記録部4で印刷している間にそのタイミングが発生すると、印刷動作を停止することになる。印刷動作を停止させないために、タイマーで一定時間が経過しても大気圧の出力電圧値を保存するタイミングをずらして印刷終了後に、出力電圧値をメモリ520に保存する。
【0127】
プリントを開始すると、マイコン510は、メンテナンスユニット310を制御してノズルプレート52から離間させる。マイコン510は圧力調整部5を制御し、ピストン253を位置x2,ピストン252を位置y1’に位置させ、回収側インク室211内の圧力を調整する。マイコン510は、インク循環ポンプ201を駆動し、回収側インク室211からインク循環ポンプ201、供給側インク室210、インクジェットヘッド2、回収側インク室211、の順にインクを循環させる。供給側インク室210と回収側インク室211のインク量計測センサ205A,205Bが検知したインク液面a、の高さが所望のインク液面高さでない場合は、マイコン510は、インク供給ポンプ202を駆動し、所望のインク液面高さになるまでインクカートリッジ81から回収側インク室211にインクを供給する。マイコン510は、インクケーシング200に貼り付けられたヒータ207に通電し、インクが所望の温度になるまで加熱を行う。所望の温度に到達すると、インク温度が一定の範囲に収まるようにヒータの通電を制御する。
【0128】
次に、マイコン510は、インクジェットヘッド2を制御し、キャリッジ100の走査に同期して印刷する画像データに応じたインクを記録媒体Sに対して吐出する。マイコン510は、記録媒体移動部7を制御して、記録媒体Sをスライドレール105で所定距離移動させ、キャリッジ100の走査に同期させインクを吐出する動作を繰り返して、記録媒体Sに画像を形成する。インクジェットヘッド2からインクを吐出するとインクケーシング200内のインクの量が瞬間的に減少し、回収側インク室211内の圧力が低下する。圧力センサ204が回収側インク室211内の圧力が低下したことを検知すると、マイコン510は圧力調整部5を制御し、ピストン253を位置X2,ピストン252を位置Y1’に位置させ、回収側インク室211内の圧力を調整するとともに、インク供給ポンプ202を駆動して吐出したインク量相当のインクを回収側インク室211へ送液する。
【0129】
ここで、インクジェットヘッド2から吐出されるインク滴の体積は一定であり、画像データから吐出したインク滴の個数も算出できるので、それらの積でインクの使用量を見積もっている。このため、印刷動作中のインクケーシング200内のインク量はすぐに所定の量に戻る。
【0130】
インクカートリッジ81内のインクが無くなった場合、インク供給ポンプ202を所定時間駆動しても、回収側インク室211のインク液面が所望の高さにならない。回収側インク室211のインク液面が所望の高さにならない場合、インクカートリッジ81が空になったことを示す表示を表示装置560に実行させる。
【0131】
ノズル51の圧力が所定の圧力になるように第1気体室350と連通した圧力調整室261のピストン252を移動させることで良好なインク吐出が維持できる。
【0132】
インクジェット記録装置1はインクジェット記録部4a〜4bを記録媒体Sの搬送方向に対して直交するように往復移動させながら、画像を形成する。なお、ノズル配列された長手方向と記録媒体Sの搬送方向が同じとなり、インクジェット記録装置1は記録媒体S上に300個のノズルの幅で画像を形成する。
【0133】
本実施形態の圧力調整装置によれば、圧力調整部5の2つの第1圧力調整室261および第2圧力調整室262には、それぞれホームスイッチ700の取付け部705、706を設けている。ここで、第1圧力調整室261のシリンダ250におけるパルスモータ254との接合端部側の端縁部には、図10に示すように内周面側に円環状の凹部705aを形成し、この凹部705aによってホームスイッチ700の取付け部705を形成している。第2圧力調整室262にも同様に、パルスモータ255との接合端部側の端縁部には、円環状の凹部706aを形成し、この凹部706aによってホームスイッチ700の取付け部706を形成している。そして、各凹部705a、706aにホームスイッチ700を取り付けることで、密閉する必要がないパルスモータ254、255との接合端部側でホームスイッチ700を使うことができる。そのため、ホームスイッチ700のリード線711などは格別にシールする必要はなく、省スペースなホームスイッチ700を設けることができ、圧力調整部5の2つの第1圧力調整室261および第2圧力調整室262の密閉性を阻害することがない。
【0134】
また、圧力調整装置の使用時には、パルスモータ254、255を駆動することでピストン252、253が図11中で上下方向に移動する。そして、各ピストン252、253の平面710に第2の接点端子703が接触することで第2の接点端子703が弾性変形し、第1の接点端子702の突起状の接点部702bに接触することでメカニカルなスイッチとしての役割を果たす。このとき、パルスモータ254の回転軸254aの軸方向の原点位置x0と、パルスモータ255の回転軸255aの軸方向の原点位置y0とが検出される。これにより、パルスモータ254、255の回転軸254a、255aの原点位置を正確に検出することができ、高精度の位置決めをすることができ、かつ圧力調整機構の移動量を阻害することのない省スペースなホームスイッチ700を使用することができる圧力調整装置を提供することができる。
【0135】
[第2の実施の形態]
図24は、第2の実施の形態を示す。本実施の形態は、第1の実施の形態(図1乃至図23参照)のホームスイッチ700の構成を次の通り変更した変形例である。すなわち、本実施の形態のホームスイッチ700は、リード線711の固定方法を変更したものである。
【0136】
リード線711の固定方法はハンダ712に限定されず、図24に示すように、第1の接点端子702、第2の接点端子703にそれぞれリード線711の接続端部を囲むように折り曲げる状態にカシメて固定する金属板731を設けてもよい。
【0137】
また、図24は、複数(2個以上)のホームスイッチ700を1つの制御入力ポート721を共有して使用する場合を示している。複数のパルスモータ254、255の回転軸254a、255aの原点位置検出を同時に行う場合はホームスイッチ700が個別に必要となる。しかしながら、複数、たとえば2つのパルスモータ254、255の回転軸254a、255aの原点位置検出を別々に行う場合は図24のように2つのホームスイッチ700を並列に接続する。これにより、1つの制御入力ポート721にて別々の複数のパルスモータ254、255の回転軸254a、255aの原点位置を検出することができる。
【0138】
これらの実施形態によれば、パルスモータの回転軸の原点位置を正確に検出することができ、省スペースなスイッチを使用することができる圧力調整装置を提供することができる。
【0139】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0140】
1…インクジェット記録装置(液体吐出装置)、2…インクジェットヘッド、3…インク循環装置(インク循環部)、4…インクジェット記録部、5…圧力調整部、6…画像形成部、7…記録媒体移動部、210…供給側インク室、211…回収側インク室、261…圧力調整室、262…圧力調整室、350…第1気体室、360…第2気体室、272…第3気体室、270…第4気体室、257…開閉部材(第2開閉部)、401…開閉部材(第3開閉部)、259…開閉部材(第1開閉部)、252…ピストン(第1の可動体、第1の容積可変部)、253…ピストン(第2の可動体、第2の容積可変部)、254…パルスモータ、255…パルスモータ、500…制御基板、510…マイコン(制御部)、700…ホームスイッチ、701…ハウジング、701a…嵌合軸部、701a1…第1保持部、701a2…第2保持部、701a3…リング状溝、701a4…直線状溝、701b…嵌合穴部、701c…開口部、701c1…貫通穴部、701c2…貫通穴部、701d…平面部、701e…嵌合軸部、701f…突起部、701g…延設部、701h…傾斜部、701i…位置決めボス、701j…裏面突出部、701j1…傾斜面、702…第1の接点端子、702a1…リング状プレート部、702a2…直線状プレート部、702b…接点部、702c…嵌合穴部、702d…切欠き、702f…突起部、702f1…切り込み、702g…平面部、702h1…折り曲げ部、702h2…リード線接続穴、703…第2の接点端子、703a…接点プレート、703a1…固定部、703b…円孔部、703c…長穴部、703d…リード線接続穴、703e…幅広部、704…キャップ部材、704a…固定部、704b…位置決め穴、704c…位置決め穴、705…取付け部、705a…凹部、705b…小径凹部、706…取付け部、706a…凹部、706b…小径凹部、707…位置決め軸部。
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