(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286392
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】水槽用底砂
(51)【国際特許分類】
A01K 63/00 20170101AFI20180215BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20180215BHJP
C02F 1/28 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
A01K63/00 B
B01D21/01 102
C02F1/28 EZAB
A01K63/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2015-115681(P2015-115681)
(22)【出願日】2015年6月8日
(65)【公開番号】特開2017-45(P2017-45A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2017年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】393022746
【氏名又は名称】ジェックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】吉田 恵史郎
【審査官】
門 良成
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−277541(JP,A)
【文献】
特開2007−000700(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0223818(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 63/00
B01D 21/01
C02F 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライト粒に凝集剤を配合してなり、前記ゼオライト粒100質量部に対して凝集剤0.01〜0.1質量部の割合で配合されていることを特徴とする水槽用底砂。
【請求項2】
前記凝集剤は鉱物由来の凝集剤である請求項1に記載の水槽用底砂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水棲生物飼育用の水槽の底に敷くゼオライト製底砂に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは骨格内に細孔を有する多孔体であり、高い吸着能力とイオン交換能力を示すことから、水を浄化する際の濾過剤として広く使用されている。また、水棲生物飼育用の水槽においては、ゼオライトを焼成する等して粒状体に加工して底砂として使用し、水を浄化して藻の繁殖の抑制効果が期待されている(特許文献1、非特許文献1参照)。
【0003】
ゼオライト製の底砂は工場で袋詰めに包装されて市場を流通する。ゼオライトは多孔体であるために脆いという特性があり、袋詰め作業時や輸送中に砂粒同士が擦れ合って表面が砕けて微粉末として脱落することは避けられない。そのため、新しい底砂を使用する際は包装袋から取り出して脱落した微粉末を洗い流してから水槽に入れる、というのが一般的な使用方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−252407号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】すごいんです砂利コケ防止、コトブキ[2015年5月27日検索]インターネット〈URL:http://store.shopping.yahoo.co.jp/chanet/170678.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、微粉末を完全に洗い流すことは難しく、微粉末が混じった底砂を水に投入することになる。微粉末が混じった底砂を水に投入すると微粉末が水中に浮遊して白濁する。しかも、ゼオライトは多孔体であり嵩比重が小さいので微粉末の沈降速度は極めて遅く、沈みきって白濁が解消されるまでに相当の時間がかかるという問題があった。
【0007】
ゼオライトを粒状体に加工する際に焼成温度を高くして焼き固めると微粉末の脱落を低減できるが、細孔構造が崩れて吸着能力やイオン交換能力が低下するので高温焼成は好ましくない。
【0008】
なお、特許文献1に記載された底砂はゼオライト底砂はパウダー状の天然ゼオライトをポバールで固形化した層でコーティングされている。前記コーティング層はポバールをバインダーとしてゼオライト粉末が固形化されているので、ゼオライト微粉末は脱落しにくいと考えられるが、表面を有機バインダーを含む層でコーティングすることでゼオライトと水との接触面積が減少して浄化能力も低下すると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した技術背景に鑑み、不可避的に発生するゼオライトの微粉末に対し、ゼオライトによる浄化能力を低下させることなく、短時間で白濁を解消できる水槽用底砂を提供することを目的とする。
【0010】
即ち、本発明は下記[1]〜[3]に記載の構成を有する。
【0011】
[1]ゼオライト粒に凝集剤を配合してなることを特徴とする水槽用底砂。
【0012】
[2]前記ゼオライト粒100質量部に対して凝集剤0.01〜0.1質量部の割合で配合されている前項1に記載の水槽用底砂。
【0013】
[3]前記凝集剤は鉱物由来の凝集剤である前1または2に記載の水槽用底砂。
【発明の効果】
【0014】
上記[1][2]に記載の水槽用底砂によれば、ゼオライト粒から脱落した微粉末が凝集剤によって速やかにフロックを形成し、短時間で沈降する。このため、ゼオライト微粉末による白濁を短時間で解消できる。
【0015】
上記[3]に記載の水槽用底砂は鉱物系凝集剤を使用しているので、水棲生物に影響を及ぼさない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の水槽用底砂はゼオライト粒に凝集剤が配合されている。
【0017】
ゼオライト粒は粒状体である。例えば、ゼオライト粉末を焼成して造粒したものが用いられ、なかでも700〜850℃で焼成したゼオライト粒は細孔構造を維持して水の浄化能力が優れている。粒の形状は球形、不定形等任意形状のものを使用できる。粒の大きさも限定されず、観賞魚用水槽では直径1〜5mmのものが好まれる。また、ゼオライトの種類も限定されず、天然、人工の別も問わない。
【0018】
凝集剤は、ゼオライト粒から脱落した微粉末を水中で凝集させてフロックを形成するために配合される。微粉末が凝集してフロックを形成すると沈降速度が早くなるので、水中を浮遊する微粉末による白濁を短時間で解消することができる。前記凝集剤の種類は水棲生物の生息環境を悪化させない限り限定されないが、鉱物由来の凝集剤が好ましい。特に火山性土壌のシラスは凝集能力が高く、かつ水棲生物に影響を及ぼさない点で推奨できる。前記凝集剤は粉末状に加工したものが使用され、ゼオライトの微粉末と均一に混合できる微粉末が好ましく、粒径150〜200μmの微粉末が好ましい。
【0019】
前記ゼオライト粒と凝集剤の配合割合は、ゼオライト粒100質量部に対して凝集剤0.01〜0.1質量部が好ましい。ゼオライト微粉末の量は水槽用底砂の製造工程や輸送状況によって変動するが、凝集剤が0.01質量部未満では不足するおそれがある。一方、0.1質量を配合すれば十分であるからそれを超える配合はコスト高となる。また、凝集剤量の増大に伴ってフロックの発生量も増えるので、観賞魚用水槽の美観を損なうおそれがある。特に好ましい配合割合はゼオライト粒100質量部に対して凝集剤0.01〜0.04質量部である。上記のゼオライト粒の100質量部には粒状体から脱落した微粉末も含まれている。上記の配合割合はゼオライト粒と凝集剤とを混合する際の計量質量である。
【0020】
前記水槽用底砂はゼオライト粒と凝集剤は均一に混合されていることが好ましい。凝集反応は凝集剤が水に接触すると瞬時に開始するので、凝集剤が偏在していると凝集剤同士でフロックを形成してしまい、ゼオライト微粉末を凝集させるために必要な凝集剤量が不足するおそれがある。従って、ゼオライト微粉末を少量の凝集剤で効率良く凝集させるためには両者が均一に混合されていることが好ましい。凝集剤によってフロックとなったゼオライト微粉末は沈降速度を速めて短時間で槽底に沈んでいく。また、ゼオライト微粉末に対して過剰量の凝集剤は水中を浮遊したままではなく、凝集剤同士でフロックを形成して短時間で槽底に沈んでいく。水槽内は自然環境よりも生物の存在密度が高いので、たとえ鉱物由来の凝集剤であっても微粉末が浮遊していない状態が好ましい。こうしてゼオライトの微粉末および凝集剤が短時間で槽底に沈み、水が透明になる。
【0021】
前記水槽用底砂は、水槽内の水でフロックを形成して槽底に沈めても良いし、水槽に投入する前に水洗してフロックを形成させ、フロックを洗い流した後に水槽に投入しても良い。いずれの場合も、水槽用底砂を水に接触させた後は速やかに攪拌し、ゼオライト微粉末の凝集する前に凝集剤同士の凝集で凝集剤が消費され尽くさないようににすることが好ましい。
【0022】
本発明の水槽用底砂は、ゼオライト粒および凝集剤以外にも石、砂、ソイルなどを配合することができる。これらを配合しても凝集剤によるフロック形成効果は損なわれることはなく、水の濁りを短時間で解消できる。
【実施例】
【0023】
〈実施例〉
ゼオライト粒は、ゼオライト粉末を800℃で焼成して造粒し、直径3〜5mmの粒状体を選別した。
【0024】
凝集剤として、比重0.9530、平均粒径180μmの天然シラスを用いた。前記天然シラスは、無臭で水に不溶の淡灰色粉末であり、フロックを形成して沈殿しても底砂として違和感の無い色彩である。前記シラスの組成はNa
2O
3:30.88%、CaO:21.90%、SO
3:19.42%、Al
2O
3:13.77%、SiO
2:10.83%、Fe
2O
3:1.39%、MgO:0.97%、K
2O:0.59%、P
2O
5:0.25%であり、0.1%液はpH6.1である。前記成分中のP
2O
5はシラス由来の酸化成分であり、溶出試験において水に溶出しないことを確認した。
【0025】
水槽用底砂は、前記ゼオライト粒100質量部に対して凝集剤0.04質量部を配合し、攪拌混合して作製した。さらに、トラックで大阪−東京間を往復輸送し、ゼオライト粒の表面を砕いてゼオライト微粉末を生じせた。
〈比較例〉
上記ゼオライト粒のみで水槽用底砂を作製し、実施例と同じ条件でゼオライト粒の表面を砕いてゼオライト微粉末を生じせた。
〈評価〉
実施例および比較例の水槽用底砂1200gをそれぞれ12Lの水道水を入れた水槽に投入し静置した。また、各水槽には、観賞魚飼育で使用する外掛け式フィルターを取り付けて水を循環濾過した。
【0026】
静置開始から24時間経過後に、濁度計にて水の濁度をを比較したところ、実施例は0.27NTUであり、比較例は4.81NTUであった。底砂投入前の水槽内の水道水の濁度は0.34でNTUであり、実施例は24時間で水道水と同等以上に透明になったことを示している。さらに、比較例の底砂を投入した水槽が実施例と同等の透明度になるまで静置を続けたところ、要した時間は14日であった。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は観賞魚飼育用の水槽の底砂として好適に利用できる。