特許第6286411号(P6286411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286411
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】車両骨格部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 29/04 20060101AFI20180215BHJP
【FI】
   B62D29/04 Z
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-242979(P2015-242979)
(22)【出願日】2015年12月14日
(62)【分割の表示】特願2012-556006(P2012-556006)の分割
【原出願日】2012年2月1日
(65)【公開番号】特開2016-55867(P2016-55867A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2015年12月14日
(31)【優先権主張番号】特願2011-21650(P2011-21650)
(32)【優先日】2011年2月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100115107
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100151194
【弁理士】
【氏名又は名称】尾澤 俊之
(72)【発明者】
【氏名】山路 正
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康司
(72)【発明者】
【氏名】八木 穣
(72)【発明者】
【氏名】手島 雅智
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−235779(JP,A)
【文献】 特開2008−143358(JP,A)
【文献】 特開2005−225393(JP,A)
【文献】 特開平08−132528(JP,A)
【文献】 特開昭64−032982(JP,A)
【文献】 特開昭63−232083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と、二次元ランダム配向したチョップド繊維とを含む二次元ランダム繊維強化複合材料を有する複数の部材を、車体前後方向および/または車体左右方向に対して平行な軸方向に振動させて振動溶着することにより、前記複数の部材が振動溶着された締結面で締結され、且つ該締結面の割合が締結部面積の50〜100%であり、更に複数の締結面を有し、同一の方向にある締結面の全締結面積に対する割合が50〜100%である車両骨格部材を製造する、車両骨格部材の製造方法。
【請求項2】
前記複数の部材が熱可塑性樹脂をマトリクスとする複合材料のみからなる請求項1に記載の車両骨格部材の製造方法。
【請求項3】
前記車両骨格部材が複数の締結面を有し、同一の方向にある締結面の全締結面積に対する割合が80〜100%である請求項1又は2に記載の車両骨格部材の製造方法。
【請求項4】
前記複数の部材を同時に振動溶着する請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両骨格部材の製造方法。
【請求項5】
前記締結面が平面および/または等断面形状を有する曲面である請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両骨格部材の製造方法。
【請求項6】
前記複数の部材を締結する振動溶着の振動方向が、車体前後方向及び車体左右方向である請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両骨格部材の製造方法。
【請求項7】
前記車両骨格部材がフロア構造部品である請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両骨格部材の製造方法。
【請求項8】
前記車両骨格部材がサイドシル構造部品である請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両骨格部材の製造方法。
【請求項9】
前記車両骨格部材が車体上部構造部品である請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両骨格部材の製造方法。
【請求項10】
強化繊維が炭素繊維である請求項1〜9のいずれか1項に記載の車両骨格部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂と強化繊維の複合材料から構成される部材を含む車両骨格部材に関し、なかでも軽量かつ強度に優れた車両骨格部材に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の車両骨格部材はスチールを板金加工し、スポット溶接で組み合わせた構造が一般的である。
【0003】
車両骨格部材は車体の剛性を高めるための補強構造や、居住空間を設けるため、非常に複雑な形状となっているが、ロボット化されたスポット溶接技術により接合部の形状に大きな制限を必要としないため高い生産性を可能としている。
【0004】
一方、近年では自動車の環境負荷を下げるために、車体重量の軽減が強く望まれるようになり、炭素繊維複合材料を車両骨格部材に適用する試みがなされている。これらの炭素繊維複合材料製車両骨格部材は、既存のスチールによる車両骨格部材よりも大幅な軽量化がなされているが、既存のスチール製車両骨格部材の複雑な形状を踏襲するため、高価な炭素繊維織物を用い、かつ生産性の低いハンドレイアップやオートクレーブ法を使って成形されている。したがって、経済性の面からその普及は極めて限定的である。最近では、RTM法(レジントランスファーモールディング法)などを用いることで生産性を改善する試みもなされているが(特許文献1参照)、マトリクスとして用いる熱硬化性樹脂の硬化反応時間が律速となり、汎用車両に適用可能な技術とは言いがたい。
【0005】
また、繊維強化複合材料を車両骨格部材に適用するにあたっては、繊維強化複合材料同士の接合、および繊維強化複合材料と金属などの他材料との接合が課題となっている。繊維強化複合材料は軽量高強度な反面、ボルト締結などの局所的な荷重を作用させるのは好ましくないため、締結部の荷重を分散させるための構造が数多く提案されている。特許文献2に繊維強化複合材料の取り付け構造の例を示す。これらの構造により締結部分の応力集中を回避することは可能となるが、構造が複雑となるため生産性の改善には限界がある。
【0006】
一方で繊維強化複合材料の生産性を向上するための手段として、マトリクスに熱可塑樹脂を用いた熱可塑性繊維強化複合材料が開発されている。熱可塑性繊維強化複合材料は加熱して可塑化させた後に、スタンピング成形により短タクトで形状を付与することが可能であり、スタンピング時に必要なプレス圧力がスチールのスタンピング成形よりも低いため、車両用フロア程度の大きさであれば、一体成形することが可能である。また、熱可塑性繊維強化複合材料は再加熱により軟化させることが可能なため、溶着による接合が可能であることも特徴の一つである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−68720号公報
【特許文献2】特開2006−64010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、熱可塑性樹脂と強化繊維との複合材料から構成される部材を含む車両骨格部材において、複合材料の締結部位に高い接合強度を持たせ、車両構造としての十分な強度を備えた車両骨格部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、熱可塑性樹脂と強化繊維との複合材料から車両骨格部材を構成し、複合材料を振動溶着により締結すること、さらには振動溶着により締結するのに好適な締結面、車両構造の設計とすることにより標記課題を解決できることを見出した。
すなわち本発明の一態様の車両骨格部材の製造方法は、熱可塑性樹脂と、二次元ランダム配向したチョップド繊維とを含む二次元ランダム繊維強化複合材料を有する複数の部材を、車体前後方向および/または車体左右方向に対して平行な軸方向に振動させて振動溶着することにより、前記複数の部材が振動溶着された締結面で締結され、且つ該締結面の割合が締結部面積の50〜100%であり、更に複数の締結面を有し、同一の方向にある締結面の全締結面積に対する割合が50〜100%である車両骨格部材を製造するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両骨格部材は熱可塑性樹脂と強化繊維との複合材料を有する複数の部材を締結した部位を含み、その締結面内に車体前後方向および/または車体左右方向に対して平行な軸が含まれ、さらに締結面をその軸を含む平面および/または等断面形状を有する曲面とすることによって、締結部位ごとに振動溶着装置や治具を設置することなく、複数の部材を同時に振動溶着によって締結することが可能となる。また、振動溶着による締結は通常の接着剤による接合よりも短時間で高い接合強度を得ることが可能であり、かつ接着剤や金属締結部材をほとんど必要としないため軽量化に優れた車両構造を高い生産性で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】平面状の締結面と振動方向の模式図である。
図2】等断面形状の締結面と振動方向の模式図である。
図3】本発明の車両骨格部材の実施例を示す模式図である。
図4】本発明の車両骨格部材の構成を示す模式図である。
図5】車両骨格部材がアンダーフロア構造部品である場合の組立方法を示す模式図である。
図6】車両骨格部材がアンダーフロア構造部品である場合の組立方法を示す模式図である。
図7】アンダーフロア構造部品の振動溶着部分の断面形状を示す模式図である。
図8】車両骨格部材がアッパーフロア構造部品である場合の組立方法を示す模式図である。
図9】車両骨格部材がアッパーフロア構造部品である場合の組立方法を示す模式図である。
図10】アッパーフロア構造部品の振動溶着部分の断面形状を示す模式図である。
図11】車両骨格部材がサイドシル構造部品である場合の組立方法を示す模式図である。
図12】サイドシル構造部品の振動溶着部分の断面形状を示す模式図である。
図13】車両骨格部材が車体上部構造部品である場合の組立方法を示す模式図である。
図14】車両骨格部材が車体上部構造部品である場合の組立方法を示す模式図である。
図15】車体上部構造部品の振動溶着部分の断面形状を示す模式図である。
図16】各構造部品を一体化して車両骨格部材を構成する場合の組立方法を示す模式図である。
図17】一体化された車両骨格部材の振動溶着部分の断面形状を示す模式図である。
【符号の説明】
【0012】
1 車両骨格部材
2 アンダーフロア構造部品
(2a、2b、2c、2d 部品)
3 アッパーフロア構造部品
(3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g 部品)
4 サイドシル構造部品
(4a、4b、4c 部品)
5 サイドシル構造部品
(5a、5b、5c 部品)
6 車体上部構造部品(ピラー・ルーフ)
(6a、6b、6c、6d、6e、6f 部品)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について順次説明する。
[車両骨格部材]
本発明の車両骨格部材は、自動車の車体を構成する部材であり、具体例としてはフロア構造部品、サイドシル構造部品、ピラー・ルーフレール等を含む車体上部構造部品、およびそれらの複合体が挙げられる。車両骨格部材は、熱可塑性樹脂と強化繊維との複合材料から構成される部材を含み、これら複数の複合材料からなる部材を締結した部位を有している。車両骨格部材には、熱可塑性樹脂と強化繊維との複合材料から構成される部材以外に、金属やセラミクスといった複合材料以外の材質で構成される部材、マトリクスが熱硬化性樹脂である複合材料などを有していても良い。車体の軽量化といった観点からは、車両骨格部材における複合材料から構成される部材の比率が高いことが好ましい。具体的には車両骨格部材における複合材料から構成される部材の重量比率は50%以上、より好ましくは80%以上100%以下である。
【0014】
[振動溶着、および締結面]
振動溶着とは2つの部材(樹脂部品など)を加圧により接触させた状態で、周期的に振動させることにより2部材間に発生する摩擦熱により樹脂を溶融させて接合する方法であり、公知の振動溶着機を用いて行うことができる。本発明の車両骨格部材においては、複合材料のマトリクスである熱可塑性樹脂が振動により溶融されて締結される。
【0015】
本発明の車両骨格部材は、車体前後方向および/または車体左右方向に対して平行な軸が、振動溶着を施す締結面内に含まれるように車両骨格部材を設計したことを特徴とする。すなわち、本発明の車両骨格部材は締結部位を締結面内に車体前後方向および/または車体左右方向に対して平行な軸が含まれるように配置し、振動溶着により締結された部位を有することを特徴とする。ここでの平行とは、完全に平行である必要はなく、実質プラスマイナス10度程度のずれは寛容できる。この場合も、複数の締結面が一定の角度でずれていることが好ましい。
【0016】
車両骨格部材中、車体前後方向および/または車体左右方向に対して平行な軸を含まない締結面があっても良いが、車体前後方向および/または車体左右方向に対して平行な軸を含む締結面の割合が締結部面積の50〜100%であることが好ましい。さらには平行な軸を含む締結面の割合が締結部面積の80〜100%であることが好ましい。
【0017】
本発明において締結面積とは複数の部品同士や部材同士、または部品と部材の締結部の強度設計を行う時に、締結方法の種類によって個別に設定する設計上の締結面積をいい、締結部の全体の面積とは異なる。例えば、図7図10図12図15図17においては、断面図中の矢印で示す箇所が振動溶着部分であり、これらの箇所の合計面積が締結面積である。車両骨格部材において全締結部の締結面積の総和を全締結面積とする。
【0018】
車両骨格部材を商業レベルで生産する場合、車両骨格部材中、車体前後方向および/または車体左右方向に対して平行な軸を含む締結面の割合が高いことが好ましい。具体的には全締結箇所の50%以上が車体前後方向および/または車体左右方向に対して平行な軸を含むことが好ましい。さらには全締結箇所の80%以上が車体前後方向および/または車体左右方向に対して平行な軸を含むことが好ましい。
【0019】
車両骨格部材において車体前後方向および/または車体左右方向に対して平行な軸を含まない締結面は、振動溶着装置や治具の方向を都度調節することにより振動溶着で締結することも可能であるが、振動溶着以外の方法で適宜締結することも可能である。
【0020】
生産ラインは車両の前後方向および/または左右方向に対して平行な軸に配置することが好ましいので、車両骨格部材を構成する複合材料の締結面を、車両の前後方向および/または左右方向に対して平行な軸を含むように設計することが好ましい。
【0021】
車両骨格部材を商業レベルで生産する場合、車両骨格部材の複数の締結面は同一の方向にあることが生産の効率の点で好ましい。具体的には同一の方向にある締結面の全締結面積に対する割合が、好ましくは50〜100%、より好ましく80〜100%である。ここで締結面積の定義は上記に示したとおりである。
具体的には締結面の数について、全締結箇所の50%以上が同一の方向であること、さらには80%以上が同一の方向であることが好ましい。
【0022】
振動溶着により締結するためには、車両骨格部材中の複合材料同士の締結面は、平面および/または等断面形状を有する曲面であることが好ましい。等断面形状を有する曲面とは、曲線を有する平面を平行に押し出した形状のものである。断面形状としては円、楕円、半円、かまぼこ形などが挙げられる。図1に平面状の締結面と振動方向の関係を示すが、振動方向は面内で任意に選択可である。図2に等断面形状の締結面と振動方向の関係を示すが、この場合振動方向は等断面の押し出し方向に限定されている。なお、締結面が、平面および/または等断面形状を有する曲面以外の場合は、振動溶着以外の方法で適宜締結することができる。
【0023】
本発明の車両骨格部材は、複合材料の全締結面積の50%〜100%が振動溶着による締結であることが好ましい。ここで締結面積の定義は上記に示したとおりである。車両骨格部材中には振動溶着によらない締結部が含まれていても良いが、軽量化という観点からは振動溶着による締結の割合を高めることが好ましい。より好ましくは全締結面積の70〜100%が振動溶着による締結であることが好ましい。また締結面について、全締結箇所の50%以上が振動溶着による締結であること、さらには80%以上が振動溶着による締結であることが好ましい。
【0024】
複合材料における振動溶着以外の締結方法としては接着剤を用いる方法、ボルト・ナットなどによる機械的に締結する方法、マトリクス樹脂の熱可塑性樹脂を振動以外の方法で加熱溶解させて接着させるなどの公知の方法が用いられる。
【0025】
振動溶着においては、締結面を振動させて摩擦溶融させるためのクリアランスが必要である。例えば公知の振動溶着装置においては振動方向に2ミリ程度のクリアランスが必要なので、ルーフレールにクリアランスを設けられるような部材形状にするとともに、クリアランスが確保しにくい部位においては振動溶着以外の方法を併用することも可能である。
【0026】
[複合材料]
複合材料を構成する強化繊維としては、締結構造の用途に応じた各種の繊維を使用できるが、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、炭素繊維、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、ボロン繊維、アゾール繊維、アルミナ繊維等からなる群から選択された少なくとも1種が好ましいものとして挙げられ、特に好ましくは比強度と比弾性に優れる炭素繊維である。
【0027】
複合材料中の強化繊維の形態は、不連続繊維でも、連続繊維でも良く、これらのうち2種類以上を組み合わせて用いても良い。不連続繊維は、具体的には繊維長が0.1〜10mm未満の短繊維もしくは、繊維長が10mm〜100mmの長繊維であり、連続繊維は、もちろん部材の大きさや形状などにより不連続となるので、繊維長100mm超のものを連続繊維とする。不連続繊維の場合は、チョップドストランド等を用いて、抄紙されたペーパーや、二次元ランダムマットの形態が好ましい。連続繊維の場合は、織編物、ストランドの一方向配列シート状物及び多軸織物等のシート状、または不織布状の形態が好ましい。なお、多軸織物とは、一般に、一方向に引き揃えた繊維強化材の束をシート状にして角度を変えて積層したもの(多軸織物基材)を、ナイロン糸、ポリエステル糸、ガラス繊維糸等のステッチ糸で、この積層体を厚さ方向に貫通して、積層体の表面と裏面の間を表面方向に沿って往復しステッチした織物をいう。該繊維強化複合材料成形体を構成する繊維強化材料は、強化繊維がランダムに分散したものあるいは特定の繊維配向をしたものでもよく、強化繊維が面配向したものあるいは一軸配向したもの、あるいはそれらの組み合わせ、あるいはそれらの積層体であることが好ましい。
なかでも、繊維強化複合材料としては、熱可塑性樹脂にチョップド繊維がランダム配向しているランダム繊維強化複合材料であると好ましい。更に、熱可塑性樹脂にチョップド繊維が二次元ランダム配向している二次元ランダム繊維強化複合材料であると、極めて成形性に優れ、単なる平面形状だけではなく曲部を含めた複雑形状を有する車両骨格部材とすることもでき好ましい。これらランダム繊維強化複合材料を、他の種類の繊維強化複合材料と組み合わせたものや、積層体としたものについても、本発明の車両骨格部材に好適に用いることができる。
【0028】
繊維強化複合材料は、例えば繊維強化複合材料層と樹脂のみの層あるいは強化繊維の種類を変えた繊維強化複合材料層を有する積層体やサンドイッチ構造にすることもできる。サンドイッチ構造の場合は、コア部材が複合材料であって表皮部材が樹脂であっても良く、逆にコア部材が樹脂のみの部分であって、表皮部材が複合材料であっても良い。
【0029】
繊維強化複合材料における強化繊維/熱可塑性樹脂の重量比が、20/80〜80/20であることが好ましい。より好ましくは30/70〜70/30である。
【0030】
熱可塑性樹脂として、具体的には、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリ乳酸、ポリアミド樹脂、ASA樹脂、ABS樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミドイミド樹脂およびこれらの樹脂から選ばれる2種類以上の混合物(樹脂組成物)が挙げられるが特に制限はない。
【実施例】
【0031】
本発明の実施形態の具体例について図3図17を用いて説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0032】
図3は本発明の実施例である車両骨格部材を示した模式図である。本実施例における車両骨格部材1は、図4に示すようにアンダーフロア構造部品2と、アッパーフロア構造部品3と、左右のサイドシル構造部品4・5と、ピラー・ルーフレールを含む車体上部構造部品6から構成される。本実施例のように、アンダーフロア構造部品2、アッパーフロア構造部品3、サイドシル構造部品4・5、車体上部構造部品6の全てを組み合わせて車両骨格部材としてもよく、それぞれの構造部品および/または2つ以上の構造部品の複合体を車両骨格部材としても良い。
【0033】
図5図6に車両骨格部材がアンダーフロア構造部品2である場合の組立方法を示す。部品2aと部品2bとを振動溶着し部品2cを製作し、部品2cを部品2dの下面に振動溶着することで、アンダーフロア構造部品2を製作することができる。ここで部品2cは部品2aと部品2bに分割して製作されても良く、一体成形されたものであっても良い。部品2cと部品2dを振動溶着する場合には、前後方向にクリアランスが必要になるともに、部品2cの立ち上がり部が振動溶着できないため、振動溶着以外の方法を併用するのが望ましい。
【0034】
図7にアンダーフロア構造部品2の振動溶着部位の断面形状を示すが、断面図中の矢印箇所が振動溶着部分である。
【0035】
図8図9に車両骨格部材がアッパーフロア構造部品3である場合の組立方法を示す。部品3aと部品3bとを振動溶着し部品3cを製作し、部品3dと部品3eを振動溶着してから部品3cに振動溶着するとともに、部品3fを部品3cに振動溶着する。部品3gはフロア内にバッテリーを格納する場合のカバーとして取り外し可能な構造としてもよく、振動溶着によって部品3cに接合しても良い。ここで、部品3a、部品3b、部品3eは分割して製作したのちに振動溶着で接合してもよく、型内で一体成形しても良い。図10にアッパーフロア構造部品3の振動溶着部位の断面形状を示すが、断面図中の矢印箇所が振動溶着部分である。
【0036】
図11に車両骨格部材がサイドシル構造部品4・5である場合の組立方法を示す。部品4aと部品4b、および部品5aと部品5bを振動溶着し、その後、部品4cと部品5cをそれぞれ振動溶着することでサイドシル構造部品4・5を製作可能である。図12にサイドシル構造部品4の振動溶着部位の断面形状を示すが、断面図中の矢印箇所が振動溶着部分である。
【0037】
図13図14に車両骨格部材が車体上部構造部品6である場合の組立方法を示す。部品6aと部品6bを振動溶着し、左右一対のピラー6cを製作する。ここで部品6aと部品6bは分割して製作しても良く、中空一体成形されても良い。その後、部品6eで部品6dを挟み込むように振動溶着してルーフレール6fを製作し、ピラー6cとルーフレール6fを振動溶着で接合する。ここで部品6dは部品6eは分割して製作しても良く、一体成形されてもよい。図15に車体上部構造部品6の振動溶着部位の断面形状を示すが、断面図中の矢印箇所が振動溶着部分である。
【0038】
図16にアンダーフロア構造部品2、アッパーフロア構造部品3、左右のサイドシル構造部品4・5、ピラー・ルーフレールを含む車体上部構造部品6を一体化して車体骨格部材とする場合の組立方法を示す。
【0039】
アンダーフロア構造部品2と、サイドシル構造部品4・5を振動溶着し、その後、アッパーフロア構造部品3を振動溶着し、さらに車体上部構造部品5を振動溶着することにより一体化された車体骨格部材1を製作する。図17に一体化された車体骨格部材1の振動溶着部位の断面形状を示すが、断面図中の矢印箇所が振動溶着部分である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17