【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は本発明の方法、すなわち、硫黄酸化物および/または他の汚染物質、特に排ガス中の硫黄酸化物および/または他の汚染物質について、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料の吸収能力を向上させるための方法によってその目的は達成できる。この方法においては、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を約200℃〜約850℃に加熱することによって活性化する。
【0013】
本発明において、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料とは、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を1種以上含む全ての材料、あるいは、これらの物質のうち1種からなる全ての材料を意味する。特に、本発明によれば、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料とは、石灰岩由来の材料及びドロマイト由来の材料の両方を意味する。本発明の好ましい実施形態によれば、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する上記材料は、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、および/または、水酸化マグネシウムを含有するか、これらの物質のうち1種からなる。
【0014】
本発明によれば、アルカリ土類金属カーボネートとは、炭酸塩及び炭酸エステル全てを意味する。すなわち、特に、アルカリ土類金属塩を含有する、二次炭酸塩又はエステル、炭酸水素塩又はエステル、オルト炭酸塩又はエステル、及び、炭酸エステルを意味する。上記アルカリ土類金属としては、とりわけマグネシウム、カルシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられる。本発明の好ましい実施形態によれば、上記アルカリ土類金属カーボネートは、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、又は、その混合物である。本発明において特に好適なアルカリ土類金属カーボネートは、石灰および/またはドロマイト由来の製品に含まれる。本発明の好ましい実施形態によると、石灰岩および/またはドロマイトを原料とする材料が、アルカリ土類金属カーボネートを含有する材料として用いられる。例えば、不焼成のおよび/または部分的に焼成した石灰が、本発明によれば好ましいことが分かった。さらに、不焼成のおよび/または部分的に焼成したドロマイトも本発明によれば好ましいことが分かった。焼成石灰および/または焼成したドロマイトも同様に好ましい。
【0015】
本発明によれば、アルカリ土類金属水酸化物とは、アルカリ土類金属原子及び1価の基として−OH又はイオンを含む全ての化合物を意味する。アルカリ土類金属としては、とりわけマグネシウム、カルシウム、ベリリウム、ストロンチウム、及びバリウムが挙げられる。本発明の好ましい実施形態によれば、上記アルカリ土類金属は、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、又は、その混合物である。本発明において特に好適なアルカリ土類金属水酸化物は、石灰および/またはドロマイト由来の製品に含まれる。本発明の好ましい実施形態によると、消石灰(消和した石灰)および/または含水ドロマイトを原料とする材料が、アルカリ土類金属水酸化物を含有する材料として用いられる。例えば、消和した、および/または、部分的に消和した石灰が、本発明によれば適していることが分かった。さらに消和した、および/または、部分的に消和したドロマイトも本発明によれば適していることが分かった。
【0016】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記材料は、アルカリ土類金属カーボネートとアルカリ土類金属水酸化物の両方を含んでいる。
【0017】
驚くべきことに、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料の、排ガス中の酸性ガス成分、特に二酸化硫黄の捕集能力は、その材料を約200℃〜約850℃の温度に加熱すると向上することがわかった。化学的理論によって結び付けられているわけではないが、加熱すればアルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する吸収材の活性化が起こるようである。したがって、約200℃〜約850℃の間の温度でただ加熱するだけで、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料(吸収材)の吸収力が顕著に向上する。
【0018】
本発明の方法により、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料の吸収力、特に硫黄酸化物(例えば二酸化硫黄(SO
2)および/または三酸化硫黄(SO
3))および/または他の汚染物質、特に塩化水素(HCl)および/またはフッ化水素(HF)についての吸収力を増加させることができる。
【0019】
このように、本発明の方法によってより効果的に汚染物質を捕集することができ、そのため乾式排ガス浄化においてアルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料(吸収材)の必要量を最小限にすることができる。
【0020】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、上記材料はアルカリ土類金属カーボネートとアルカリ土類金属水酸化物の両方を含有する。アルカリ土類金属カーボネートおよびアルカリ土類金属水酸化物の割合は幅広い範囲で変えることができる。上記材料中におけるアルカリ土類金属カーボネートの割合は、好ましくは上記材料の総重量の10重量%〜90重量%であり、より好ましくは20重量%〜60重量%であり、特に好ましくは25重量%〜30重量%である。
【0021】
アルカリ土類金属カーボネート及びアルカリ土類金属水酸化物の両方を含有する材料の場合、その材料中のアルカリ土類金属水酸化物の割合は、好ましくは上記材料の総重量の10重量%〜90重量%であり、より好ましくは40重量%〜80重量%であり、特に好ましくは70重量%〜75重量%である。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によると、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料の活性化、特にアルカリ土類金属カーボネートおよびアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料の活性化は大気中で行うのが好ましい。
【0023】
実際に試験を行ったところ、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料を約250℃〜約750℃、好ましくは約250℃〜約700℃、特に約300℃〜約500℃にまで加熱した場合に、吸収材の吸収能力が特に大きく増加することが分かった。本発明によれば、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料は、約250℃〜約750℃にまで加熱するのが好ましい。約850℃よりも高い温度では本発明の活性化効果はもはや起こらない。この理由はおそらくこの温度では吸収性が低い焼成物が形成されるからではないかと考えられる。例えば石灰由来の材料を使用すると、約850℃を超える活性化温度においては吸収性が低い酸化カルシウムが形成されることが観察されている。同様に、加熱温度が200℃を下回ると、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物の有意な活性化は見られない。
【0024】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、活性化温度は、上記材料中に含まれるアルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物の割合に応じて選択することができる。
【0025】
上記材料中のアルカリ土類金属カーボネートの割合が50重量%を超える場合、好ましくは55〜90重量%、特に60〜70重量%の場合、活性化温度を350℃以上、好ましくは350〜700℃、より好ましくは400〜600℃に設定するのが好適であることが分かった。
【0026】
上記材料中のアルカリ土類金属水酸化物の割合が50重量%を超える場合、好ましくは50〜90重量%、特に70〜75重量%の場合、活性化温度を600℃以下、好ましくは250〜550℃、より好ましくは350〜450℃に設定するのが好適であることが分かった。
【0027】
アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物の加熱は、当業者に公知の種々の方法によって行うことができる。例えば、窯の中で加熱したり、流動層(fluidised bed)や流動床(fluid bed)または濾床内において熱排ガスを通過させることなどによって加熱することができる。
【0028】
アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料を加熱する時間、すなわち活性化する時間は、幅広い範囲で変更することができる。特に、最適な活性化時間は使用する材料と選択した活性化温度に依存することがわかっている。当業者であれば特定の材料に対して試運転をすることにより、最適な活性化パラメータ、特に活性化時間や活性化温度を決定することができる。
【0029】
エネルギー上の理由から、加熱時間は制限するのが有利である。特にアルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料を1分〜12時間、好ましくは10分〜12時間、特に好ましくは1〜6時間、さらに好ましくは2〜5時間加熱するのが特に好適である。本発明によると、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料は1分〜12時間の間の時間で加熱するのが好ましい。ごく微細な粒状材料を用いた場合、および/または、好適な活性化温度と最適な加熱方法を選択した場合には、加熱時間をより短くしてもよい。
【0030】
本発明のある実施形態によると、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料は、吸収材として使用する前に、本発明に従った方法によって別のステップで活性化してもよい。
【0031】
実験によると、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料を活性化した後に冷却した場合でも、熱的に活性化された状態が持続することが分かっている。したがって、本発明の別の実施形態によると、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する活性化された材料は、さらに別のステップにおいて室温に冷却される。
【0032】
本発明の更に別の実施形態によると、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料は、乾式排ガス浄化での使用範囲内で、約200℃〜約850℃、好ましくは約250℃〜約750℃、特に好ましくは約300℃〜約500℃の温度まで、一度に又は連続的に加熱してもよい。別の態様によれば、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料は、加熱時に、排ガス浄化用としてすぐに使える状態の(ready for use)フィルター、特に濾床やフィルターカートリッジ内に予め含まれていていもよい。
【0033】
本発明によると、排ガス中の酸性成分、なかでも二酸化硫黄を捕集するのに適していることから、石灰岩および/またはドロマイトを原料とする物質の全てが、特にアルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料として好適である。石灰またはドロマイト由来の物質で、排ガス浄化のために特別に開発された、表面積の特に大きい物質を用いると特に良い結果が得られた。好ましい実施形態において、水酸化カルシウムおよび/または炭酸カルシウムに加えて、水酸化カルシウムおよび/または炭酸カルシウムを一部含む物質が、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料として用いられる。
【0034】
実際に試験を行ったところ、本発明による熱的活性化は、少なくとも一部にアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料に対して特に効果があった。上記材料のアルカリ土類金属水酸化物の含有量が1〜100重量%、例えば約5〜約25重量%または約10〜約15重量%の場合に特に良好に活性化が行われた。上記アルカリ土類金属水酸化物の含有量は、具体的には約5重量%超、約15重量%超、約25重量%超、および約50重量%超から選択することができる。実際の試験を行ったところ、アルカリ土類金属水酸化物の含有量が約60〜約90重量%の場合に同様に非常に良好な熱活性化が行われることが確認された。
【0035】
アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料の粒子径は、幅広い範囲で変更することができる。粒子、並びに、顆粒若しくはペレット状の材料を用いれば、特に良好な除去能力が発揮される。粒子または顆粒若しくはペレット状の材料の粒子径は、好ましくは約0.1〜約50mm、特に好ましくは約1〜約10mm、更に好ましくは約2〜約6mmである。
【0036】
本発明の方法によって製造された、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する活性化された製品は、乾式排ガス浄化において硫黄酸化物、特に二酸化硫黄(SO
2)および/または三酸化硫黄(SO
3)、および/または他の汚染物質を捕集するための吸収材として非常に適している。さらに本発明は、本発明の方法によって製造された、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料、並びに、排ガス浄化、特に乾式排ガス浄化におけるその使用にも関する。
【0037】
実際に試験を行ったところ、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料を濾床内のフィルター材料として用いることにより、特に良好な除去能力を発揮することが分かった。本発明のこの実施形態においては、浄化されるガスは、フィルター媒体として用いられる、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料の、疎な顆粒層を通過する。アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料の粒子径の範囲は、好ましくは約0.1mm〜約10mm、より好ましくは約2mm〜約6mm、特に好ましくは約3mm〜約5mmである。この場合において、濾床の操作の間に本発明の活性化を行ってもよいし、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料を事前に活性化、すなわち濾床内の吸収材として使用する前に活性化しておいてもよい。
【0038】
濾床の流速は幅広い範囲で変更することができる。例えば0.1m/s〜5m/sの間の速度に設定してもよい。必要な捕集率と圧力損失に応じて、層の高さは2〜3m程度にまで高くしてもよい。好ましい層厚みは約100mm〜約500mm、特に約200mm〜約400mmである。
【0039】
濾床内での粒子の捕集は、本発明によれば、固定床(静止床)、流動床、移動床、及び流動層(ガス流によって運ばれる層)において行ってもよい。静止床を備えた濾床が特に好適である。
【0040】
本発明の好ましい実施形態によると、濾床内の操作温度は200℃超にまで昇温され、これによりアルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料の吸収性を高めることができる。多くのアルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料に対しては、活性化温度を約400℃にすると最も効果が高い。
【0041】
濾床内での操作温度の昇温は、上記材料の活性化と、同時に汚染物質、特にSO
2の高い捕集率が確保されるように構成するのが好適である。そのようなことから、130℃〜150℃、好ましくは280℃〜370℃に濾床内の操作温度を設定するのが特に好適であることが分かった。
【0042】
また、材料の活性化と、同時に活性化時間の最短化が最適になるように、濾床内の操作温度を設定することも考えられる。そのようにして、捕集率がおそらく最適ではない持続時間を最小にすることができる。上述のように、最適な活性化温度は材料の組成に左右され、SO
2を捕集する際の最適温度は280℃〜370℃という事実を考慮すると、当業者であれば活性化温度と活性化時間の最適な関係について容易に決定することができる。
【0043】
図1に示すように、活性化温度を上昇させ、続いて活性化した材料を濾床のフィルター材料として使用する場合、捕集能力にかなりの向上が見られる。この場合において最も効果が高かったのは活性化温度が約400℃の場合であった。
【0044】
しかしながら、本発明の別の実施形態によれば、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料を、濾床内で直接加熱することも可能である。操作温度は、約200℃〜約500℃、好ましくは約220℃〜約400℃、特に好ましくは約250℃〜約380℃であればこの用途に好適であることが分かった。
【0045】
しかしながら、エネルギー上の理由から、本発明によると、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料は、それを使用する前に、例えば1度、約200℃〜約850℃の間の温度に加熱しておくのが好ましい。