特許第6286415号(P6286415)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6286415排ガスの乾式浄化のためのアルカリ土類金属カーボネートおよびアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料の活性化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286415
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】排ガスの乾式浄化のためのアルカリ土類金属カーボネートおよびアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料の活性化
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/30 20060101AFI20180215BHJP
   B01J 20/04 20060101ALI20180215BHJP
   B01D 53/50 20060101ALI20180215BHJP
   B01D 53/68 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   B01J20/30
   B01J20/04 B
   B01D53/50 100
   B01D53/68 100
   B01D53/68 200
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-502380(P2015-502380)
(86)(22)【出願日】2013年4月2日
(65)【公表番号】特表2015-526263(P2015-526263A)
(43)【公表日】2015年9月10日
(86)【国際出願番号】EP2013056904
(87)【国際公開番号】WO2013144367
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2016年3月30日
(31)【優先権主張番号】12162517.2
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511295771
【氏名又は名称】ラインカルク ゲー エム ベー ハー
【氏名又は名称原語表記】Rheinkalk GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プスト, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ピックブレンナー, アルント
(72)【発明者】
【氏名】シンドラム, マルティン
【審査官】 松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/106878(WO,A1)
【文献】 特開平07−149580(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第0748766(EP,A1)
【文献】 国際公開第2011/039034(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/113301(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/034314(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0215616(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00−20/34
B01D 53/00−53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ土類金属カーボネートおよびアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料の硫黄酸化物(例えば二酸化硫黄(SO)および/または三酸化硫黄(SO))および/または塩化水素(HCl)および/またはフッ化水素(HF)の吸着性を向上させるための方法であって、
前記アルカリ土類金属カーボネートの割合は、上記材料の総重量の10重量%〜90重量%であり、
前記アルカリ土類金属カーボネートおよびアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料を、300℃〜500℃で、1分〜12時間の持続時間で加熱することにより活性化することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記アルカリ土類金属カーボネートおよびアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料は、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、および/または水酸化マグネシウムを含有する
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルカリ土類金属カーボネートおよびアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料は、石灰および/またはドロマイトを含有する
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルカリ土類金属カーボネートおよびアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料の加熱を、10分〜12時間の持続時間で行う
請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記アルカリ土類金属カーボネートおよびアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料は、粒子、顆粒またはペレット状である
請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記アルカリ土類金属カーボネートおよびアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料の平均粒子径は、0.1〜50mmである
請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記アルカリ土類金属カーボネートおよびアルカリ土類金属水酸化物を含有する、活性化された材料は、さらに別のステップで室温まで冷却される
請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記アルカリ土類金属カーボネートおよびアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料は、フィルター内に配置されている
請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載の方法によって製造された、硫黄酸化物および/または塩化水素(HCl)および/またはフッ化水素(HF)を吸収するための、アルカリ土類金属カーボネートおよびアルカリ土類金属水酸化物を含有する活性化された材料。
【請求項10】
硫黄酸化物および/または塩化水素(HCl)および/またはフッ化水素(HF)を吸収するための、請求項に記載のアルカリ土類金属カーボネートおよびアルカリ土類金属水酸化物を含有する活性化された材料の使用。
【請求項11】
前記アルカリ土類金属カーボネートおよびアルカリ土類金属水酸化物を含有する活性化された材料は、濾床内の充填材として使用されるものである
請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記アルカリ土類金属カーボネートおよびアルカリ土類金属水酸化物を含有する活性化された材料は、濾床中で該材料を加熱することによって製造される
請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記アルカリ土類金属カーボネートおよびアルカリ土類金属水酸化物を含有する活性化された材料は、流動層または流動床内で使用されるものである
請求項10に記載の使用。
【請求項14】
前記アルカリ土類金属カーボネートおよびアルカリ土類金属水酸化物を含有する活性化された材料は、噴流式プロセスにおいて使用されるものである
請求項10に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄酸化物および/または他の汚染物質、特に排ガス中の硫黄酸化物および/または他の汚染物質について、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料の吸収性を向上させるための方法に関する。さらに本発明は、この方法で得られた、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する活性化された材料、および排ガスを浄化するための、特に排ガスの乾式浄化のための上記材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガス浄化の分野においては、非常に多くの方法が用いられている。湿式排ガス浄化のみならず、乾式排ガス浄化も利用されている。アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属を含有する材料、特に石灰製品は、酸形成性の排気成分を捕集するための吸収材として、幅広い温度範囲で、種々の乾式排ガス浄化工程において用いられている。
【0003】
目的とするのは、二酸化硫黄、塩化水素及びフッ化水素などの、排ガス流に含まれる酸性の汚染物質を中和し、生じる中和塩を適切な分離装置に捕集することである。この場合において、例えば濾床(bed filter)や噴流式プロセス(entrained−flow process)などを、電子フィルターや繊維フィルターと共に用いてもよい。
【0004】
乾式排ガス浄化は様々に形を変えて用いられている。その使用が最も必要とされている分野は、石炭や褐炭を用いる火力発電所や廃棄物焼却炉、有害廃棄物焼却炉、熱エンジン、種々の燃料を燃やす炉などの排ガスの浄化に関する分野である。
【0005】
概ね約200℃までの温度範囲で使用される汎用の技術の一つが濾床を用いる技術である。この場合において、石灰岩(CaCO)を主材とする吸収材、特に石灰岩(CaCO)および/または消石灰(Ca(OH))を主材とする、粒状の又はペレット状の物質、および/または対応のドロマイト質の物質を主材とする吸収材が使用される。これらのフィルター内では、浄化される排ガスは、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料からなる粒床フィルターを通過する。ここで、酸性の排ガス成分が、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料(吸収材)上に捕集される。
【0006】
排ガスの浄化によって、汚染物質を含む排ガスを十分きれいにすることができる。しかしながら、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する吸収材を非常に大量に消費するという欠点がある。乾式排ガス浄化の効率がそれほど高くならないのは、吸収材が完全に反応しきらないからである。吸収材の上には反応生成物の層が形成され、これによって捕集されるはずの酸性汚染物質の通過が難しくなる。
【0007】
濾床法の欠点は、硫黄酸化物(SOやSO)の捕集や、形成された反応生成物、例えば亜硫酸カルシウム(CaSO)や硫酸カルシウム(CaSO)などによって吸収材の反応表面が覆われてしまうことから、吸収材の消費量が比較的大きいことである。
【0008】
吸収材の高い消費量を減らそうとする試みは繰り返し行われてきた。ある方法では排ガス浄化処理の後、捕集体(未反応の吸収材と形成された反応生成物とからなる)を機械的に再処理する。機械的に処理する意図及び目的は、反応性のない外側の層を分離することである。他の方法では1〜2日間反応生成物を一時的に保存した後、再使用する。
【0009】
しかしながら、これらの方法は全て吸収材の吸収能力を高める観点からは効力が不十分であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
吸収材の吸収能力を高めるとは、酸性汚染物質の捕集量がある特定の程度に到達するよう吸収材の量を減らすことを意味する。この場合において、吸収能力が高いと化学量論因子が減少する。
【0011】
排ガス中の硫黄酸化物および/または他の汚染物質についてより高い吸収能力を有する、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する活性材料の製造については大きな関心がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は本発明の方法、すなわち、硫黄酸化物および/または他の汚染物質、特に排ガス中の硫黄酸化物および/または他の汚染物質について、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料の吸収能力を向上させるための方法によってその目的は達成できる。この方法においては、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を約200℃〜約850℃に加熱することによって活性化する。
【0013】
本発明において、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料とは、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を1種以上含む全ての材料、あるいは、これらの物質のうち1種からなる全ての材料を意味する。特に、本発明によれば、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料とは、石灰岩由来の材料及びドロマイト由来の材料の両方を意味する。本発明の好ましい実施形態によれば、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する上記材料は、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、および/または、水酸化マグネシウムを含有するか、これらの物質のうち1種からなる。
【0014】
本発明によれば、アルカリ土類金属カーボネートとは、炭酸塩及び炭酸エステル全てを意味する。すなわち、特に、アルカリ土類金属塩を含有する、二次炭酸塩又はエステル、炭酸水素塩又はエステル、オルト炭酸塩又はエステル、及び、炭酸エステルを意味する。上記アルカリ土類金属としては、とりわけマグネシウム、カルシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられる。本発明の好ましい実施形態によれば、上記アルカリ土類金属カーボネートは、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、又は、その混合物である。本発明において特に好適なアルカリ土類金属カーボネートは、石灰および/またはドロマイト由来の製品に含まれる。本発明の好ましい実施形態によると、石灰岩および/またはドロマイトを原料とする材料が、アルカリ土類金属カーボネートを含有する材料として用いられる。例えば、不焼成のおよび/または部分的に焼成した石灰が、本発明によれば好ましいことが分かった。さらに、不焼成のおよび/または部分的に焼成したドロマイトも本発明によれば好ましいことが分かった。焼成石灰および/または焼成したドロマイトも同様に好ましい。
【0015】
本発明によれば、アルカリ土類金属水酸化物とは、アルカリ土類金属原子及び1価の基として−OH又はイオンを含む全ての化合物を意味する。アルカリ土類金属としては、とりわけマグネシウム、カルシウム、ベリリウム、ストロンチウム、及びバリウムが挙げられる。本発明の好ましい実施形態によれば、上記アルカリ土類金属は、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、又は、その混合物である。本発明において特に好適なアルカリ土類金属水酸化物は、石灰および/またはドロマイト由来の製品に含まれる。本発明の好ましい実施形態によると、消石灰(消和した石灰)および/または含水ドロマイトを原料とする材料が、アルカリ土類金属水酸化物を含有する材料として用いられる。例えば、消和した、および/または、部分的に消和した石灰が、本発明によれば適していることが分かった。さらに消和した、および/または、部分的に消和したドロマイトも本発明によれば適していることが分かった。
【0016】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記材料は、アルカリ土類金属カーボネートとアルカリ土類金属水酸化物の両方を含んでいる。
【0017】
驚くべきことに、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料の、排ガス中の酸性ガス成分、特に二酸化硫黄の捕集能力は、その材料を約200℃〜約850℃の温度に加熱すると向上することがわかった。化学的理論によって結び付けられているわけではないが、加熱すればアルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する吸収材の活性化が起こるようである。したがって、約200℃〜約850℃の間の温度でただ加熱するだけで、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料(吸収材)の吸収力が顕著に向上する。
【0018】
本発明の方法により、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料の吸収力、特に硫黄酸化物(例えば二酸化硫黄(SO)および/または三酸化硫黄(SO))および/または他の汚染物質、特に塩化水素(HCl)および/またはフッ化水素(HF)についての吸収力を増加させることができる。
【0019】
このように、本発明の方法によってより効果的に汚染物質を捕集することができ、そのため乾式排ガス浄化においてアルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料(吸収材)の必要量を最小限にすることができる。
【0020】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、上記材料はアルカリ土類金属カーボネートとアルカリ土類金属水酸化物の両方を含有する。アルカリ土類金属カーボネートおよびアルカリ土類金属水酸化物の割合は幅広い範囲で変えることができる。上記材料中におけるアルカリ土類金属カーボネートの割合は、好ましくは上記材料の総重量の10重量%〜90重量%であり、より好ましくは20重量%〜60重量%であり、特に好ましくは25重量%〜30重量%である。
【0021】
アルカリ土類金属カーボネート及びアルカリ土類金属水酸化物の両方を含有する材料の場合、その材料中のアルカリ土類金属水酸化物の割合は、好ましくは上記材料の総重量の10重量%〜90重量%であり、より好ましくは40重量%〜80重量%であり、特に好ましくは70重量%〜75重量%である。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によると、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料の活性化、特にアルカリ土類金属カーボネートおよびアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料の活性化は大気中で行うのが好ましい。
【0023】
実際に試験を行ったところ、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料を約250℃〜約750℃、好ましくは約250℃〜約700℃、特に約300℃〜約500℃にまで加熱した場合に、吸収材の吸収能力が特に大きく増加することが分かった。本発明によれば、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料は、約250℃〜約750℃にまで加熱するのが好ましい。約850℃よりも高い温度では本発明の活性化効果はもはや起こらない。この理由はおそらくこの温度では吸収性が低い焼成物が形成されるからではないかと考えられる。例えば石灰由来の材料を使用すると、約850℃を超える活性化温度においては吸収性が低い酸化カルシウムが形成されることが観察されている。同様に、加熱温度が200℃を下回ると、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物の有意な活性化は見られない。
【0024】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、活性化温度は、上記材料中に含まれるアルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物の割合に応じて選択することができる。
【0025】
上記材料中のアルカリ土類金属カーボネートの割合が50重量%を超える場合、好ましくは55〜90重量%、特に60〜70重量%の場合、活性化温度を350℃以上、好ましくは350〜700℃、より好ましくは400〜600℃に設定するのが好適であることが分かった。
【0026】
上記材料中のアルカリ土類金属水酸化物の割合が50重量%を超える場合、好ましくは50〜90重量%、特に70〜75重量%の場合、活性化温度を600℃以下、好ましくは250〜550℃、より好ましくは350〜450℃に設定するのが好適であることが分かった。
【0027】
アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物の加熱は、当業者に公知の種々の方法によって行うことができる。例えば、窯の中で加熱したり、流動層(fluidised bed)や流動床(fluid bed)または濾床内において熱排ガスを通過させることなどによって加熱することができる。
【0028】
アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料を加熱する時間、すなわち活性化する時間は、幅広い範囲で変更することができる。特に、最適な活性化時間は使用する材料と選択した活性化温度に依存することがわかっている。当業者であれば特定の材料に対して試運転をすることにより、最適な活性化パラメータ、特に活性化時間や活性化温度を決定することができる。
【0029】
エネルギー上の理由から、加熱時間は制限するのが有利である。特にアルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料を1分〜12時間、好ましくは10分〜12時間、特に好ましくは1〜6時間、さらに好ましくは2〜5時間加熱するのが特に好適である。本発明によると、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料は1分〜12時間の間の時間で加熱するのが好ましい。ごく微細な粒状材料を用いた場合、および/または、好適な活性化温度と最適な加熱方法を選択した場合には、加熱時間をより短くしてもよい。
【0030】
本発明のある実施形態によると、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料は、吸収材として使用する前に、本発明に従った方法によって別のステップで活性化してもよい。
【0031】
実験によると、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料を活性化した後に冷却した場合でも、熱的に活性化された状態が持続することが分かっている。したがって、本発明の別の実施形態によると、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する活性化された材料は、さらに別のステップにおいて室温に冷却される。
【0032】
本発明の更に別の実施形態によると、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料は、乾式排ガス浄化での使用範囲内で、約200℃〜約850℃、好ましくは約250℃〜約750℃、特に好ましくは約300℃〜約500℃の温度まで、一度に又は連続的に加熱してもよい。別の態様によれば、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料は、加熱時に、排ガス浄化用としてすぐに使える状態の(ready for use)フィルター、特に濾床やフィルターカートリッジ内に予め含まれていていもよい。
【0033】
本発明によると、排ガス中の酸性成分、なかでも二酸化硫黄を捕集するのに適していることから、石灰岩および/またはドロマイトを原料とする物質の全てが、特にアルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料として好適である。石灰またはドロマイト由来の物質で、排ガス浄化のために特別に開発された、表面積の特に大きい物質を用いると特に良い結果が得られた。好ましい実施形態において、水酸化カルシウムおよび/または炭酸カルシウムに加えて、水酸化カルシウムおよび/または炭酸カルシウムを一部含む物質が、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料として用いられる。
【0034】
実際に試験を行ったところ、本発明による熱的活性化は、少なくとも一部にアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料に対して特に効果があった。上記材料のアルカリ土類金属水酸化物の含有量が1〜100重量%、例えば約5〜約25重量%または約10〜約15重量%の場合に特に良好に活性化が行われた。上記アルカリ土類金属水酸化物の含有量は、具体的には約5重量%超、約15重量%超、約25重量%超、および約50重量%超から選択することができる。実際の試験を行ったところ、アルカリ土類金属水酸化物の含有量が約60〜約90重量%の場合に同様に非常に良好な熱活性化が行われることが確認された。
【0035】
アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料の粒子径は、幅広い範囲で変更することができる。粒子、並びに、顆粒若しくはペレット状の材料を用いれば、特に良好な除去能力が発揮される。粒子または顆粒若しくはペレット状の材料の粒子径は、好ましくは約0.1〜約50mm、特に好ましくは約1〜約10mm、更に好ましくは約2〜約6mmである。
【0036】
本発明の方法によって製造された、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する活性化された製品は、乾式排ガス浄化において硫黄酸化物、特に二酸化硫黄(SO)および/または三酸化硫黄(SO)、および/または他の汚染物質を捕集するための吸収材として非常に適している。さらに本発明は、本発明の方法によって製造された、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料、並びに、排ガス浄化、特に乾式排ガス浄化におけるその使用にも関する。
【0037】
実際に試験を行ったところ、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料を濾床内のフィルター材料として用いることにより、特に良好な除去能力を発揮することが分かった。本発明のこの実施形態においては、浄化されるガスは、フィルター媒体として用いられる、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料の、疎な顆粒層を通過する。アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料の粒子径の範囲は、好ましくは約0.1mm〜約10mm、より好ましくは約2mm〜約6mm、特に好ましくは約3mm〜約5mmである。この場合において、濾床の操作の間に本発明の活性化を行ってもよいし、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料を事前に活性化、すなわち濾床内の吸収材として使用する前に活性化しておいてもよい。
【0038】
濾床の流速は幅広い範囲で変更することができる。例えば0.1m/s〜5m/sの間の速度に設定してもよい。必要な捕集率と圧力損失に応じて、層の高さは2〜3m程度にまで高くしてもよい。好ましい層厚みは約100mm〜約500mm、特に約200mm〜約400mmである。
【0039】
濾床内での粒子の捕集は、本発明によれば、固定床(静止床)、流動床、移動床、及び流動層(ガス流によって運ばれる層)において行ってもよい。静止床を備えた濾床が特に好適である。
【0040】
本発明の好ましい実施形態によると、濾床内の操作温度は200℃超にまで昇温され、これによりアルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料の吸収性を高めることができる。多くのアルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料に対しては、活性化温度を約400℃にすると最も効果が高い。
【0041】
濾床内での操作温度の昇温は、上記材料の活性化と、同時に汚染物質、特にSOの高い捕集率が確保されるように構成するのが好適である。そのようなことから、130℃〜150℃、好ましくは280℃〜370℃に濾床内の操作温度を設定するのが特に好適であることが分かった。
【0042】
また、材料の活性化と、同時に活性化時間の最短化が最適になるように、濾床内の操作温度を設定することも考えられる。そのようにして、捕集率がおそらく最適ではない持続時間を最小にすることができる。上述のように、最適な活性化温度は材料の組成に左右され、SOを捕集する際の最適温度は280℃〜370℃という事実を考慮すると、当業者であれば活性化温度と活性化時間の最適な関係について容易に決定することができる。
【0043】
図1に示すように、活性化温度を上昇させ、続いて活性化した材料を濾床のフィルター材料として使用する場合、捕集能力にかなりの向上が見られる。この場合において最も効果が高かったのは活性化温度が約400℃の場合であった。
【0044】
しかしながら、本発明の別の実施形態によれば、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料を、濾床内で直接加熱することも可能である。操作温度は、約200℃〜約500℃、好ましくは約220℃〜約400℃、特に好ましくは約250℃〜約380℃であればこの用途に好適であることが分かった。
【0045】
しかしながら、エネルギー上の理由から、本発明によると、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料は、それを使用する前に、例えば1度、約200℃〜約850℃の間の温度に加熱しておくのが好ましい。
【発明の効果】
【0046】
本発明のこうした手法の主な長所は以下の通りである。
1.フィルターを高温で定常的に運転する必要がないことから、この方法はエネルギー効率がよい。吸収材の組成に応じて活性化温度と活性化時間を適宜設定することにより、エネルギーバランスを最適化することができる。
2.このフィルターは、これまでと同様に従来の200℃未満の低温でも用いることができ、そのためよりコスト効率がよい。
3.加熱による活性化を、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料(吸収材)の製造者が行ってもよいし、また濾過工程中に、一回または周期的な加熱により行ってもよい。
4.より効果的な捕集により、アルカリ土類金属カーボネートおよび/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する材料の需要を最小限にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】活性化温度を上昇させて、その後活性化した材料を濾床のフィルター材料として使用する場合の捕集能力を調べた結果である。
図2】異なる時間、異なる温度で活性化した材料のSO吸収力を調べた結果である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0048】
本発明の方法を実施例を参照して下記により詳細に説明する。
【0049】
実施例1
実験室における実験において、乾式排ガス処理のための吸収材の吸収力に対する熱的活性化の効果を調べた。約90重量%の炭酸カルシウム及び約10重量%の消石灰を含有する顆粒からなる吸収材を使用した。最初にその吸収材を200gずつ7バッチに分けた。最初の1バッチは参照試料とし、処理を行わなかった。バッチ2〜7は、200℃、300℃、400℃、500℃、600℃、及び900℃にそれぞれ温度制御した窯に6時間入れた。異なる条件で活性化した上記吸収材を次に室温まで冷却し、吸収材毎にそれぞれ準備した160ml容実験用濾床のカートリッジにその吸収材を充填した。次にそれぞれの材料に対し、実験用濾床内でのSO透過曲線を記録することにより、参照材料と比較した吸収力を測定した。この目的のために、160〜170℃で、それぞれ異なる温度で活性化した材料または参照材料を充填した濾床に、同様の温度に制御したSO濃度が2000ppmのN/SO試験用混合気体を通した。このとき、フィルター内に通した気体の流速は0.1m/s、気圧は30〜60mmWC(滞留時間が約2秒)であった。フィルターの下流側には、コンピュータ化された連続ガス分析ユニット(MSI社、タイプMSI2000)が備え付けられ、フィルターを通過した気流中のSO濃度を記録した。フィルター通過前のSO濃度(2000ppm)とフィルター通過後のSO濃度の差を捕集率として計算した。0時間では、全てのケースにおいて捕集率が100%であった。すなわち、フィルター材は通過する試験用気体中のSOを完全に保持することができた。しかしながら、ある時間を超えると捕集率の低下が見られた。すなわち、気流中のSOがフィルターをすり抜けるようになった。これはおそらく吸収材がSOで徐々に飽和したことによるものと考えられる。吸収材の吸収力が大きくなればなるほど、試験用気体中のSOはより長くフィルター内に保持され、捕集率の値の減少がより遅くなるか、SOのすり抜けの発生がより遅くなる。試験開始後、捕集率が90%、70%または50%を下回る時点を特徴的な値とする。図1に、処理を行わなかった参照材料、及び、異なる温度で活性化させた各試験材料の値をプロットした。驚くべきことに、一度吸収材を熱的に活性化するだけでも著しく吸収力が増加することが分かった。このように、400℃で活性化した材料はSOの吸収力が、参照材料と比較して約200%向上した。活性化温度が200℃の場合でさえも、活性化した吸収材の吸収力がわずかに向上することがわかった。これに対し、活性化温度が900℃の場合、吸収力は減少した。最も良い結果は活性化温度が200℃〜600℃、特に300℃〜500℃の場合に得られた。
【0050】
実施例2
第二の試験においては、活性化時間の、材料の吸収力への影響について調べた。この目的のために、実施例1における実験の実施内容に対応する手順を採用し、活性化時間(窯内
での滞留時間)のみを変更した。実施例1に従い、異なる時間、異なる温度で活性化した材料のSO吸収力を調べた。その結果と活性化条件を図2に示す。この場合において、活性化温度が400℃に近づくほど、比較的良好な吸収率を達成するために必要な活性時間は短くなることがわかった。例えば、400℃で30分活性化すると、吸収率の改善は300℃で12時間活性化した場合と概ね同じになる。さらに、この試験は、最適な活性化温度の場合、短い活性化時間(図2参照、400℃で5分活性化)でも、参照材料と比較して吸収力が顕著に改善することを示している。多くの活性化温度において、活性化時間を長くするとさらに吸収力が改善することが確認できる(図2参照、300℃及び400℃)。これに対し、活性化温度が500℃の場合には、1時間の活性化の方が6時間の活性化よりもよい結果が得られている。実施例1と同様に、900℃で材料を活性化すると参照材料よりも吸収力は悪くなった。
【0051】
実施例3
火力発電所内のアルカリ土類金属カーボネートおよびアルカリ土類金属水酸化物を含有する吸収材を充填した濾床を、400℃の温度でガスを2時間流して一度活性化した。その後、その濾床を、通常の運転温度である200℃未満の温度で運転した。熱的な活性化により濾床の汚染物質の吸収力は300%にまで向上した。
【0052】
実施例4
工業的規模の流動床プロセスにおいて、CaCOとCa(OH)の顆粒に270℃の温度の気体を流した。これにより顆粒は乾燥し、硬化した。滞留時間を長くすることにより、材料は乾燥点を超えて高温気体の温度にまで加熱され、それにより活性化された。このようにして、汚染物質の吸収材を50%向上させることができた。
図1
図2