【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成25年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
入力導波路、入力側スラブ導波路、入力側導波路構造体、異なる光路長を有する複数のチャネル導波路を含むアレイ導波路、出力側導波路構造体、出力側スラブ導波路及び出力導波路がこの順に接続されて構成され、
前記入力側スラブ導波路と前記入力側導波路構造体、及び、前記出力側スラブ導波路と前記出力側導波路構造体が、それぞれ請求項1〜6のいずれか一項に記載の光合分波素子である
ことを特徴とするアレイ導波路回折格子型光波長フィルタ。
【背景技術】
【0002】
近年、加入者系光アクセスシステムとして、1つの局側終端装置(OLT:Optical Line Terminal)と、複数の加入者側終端装置(ONU:Optical Network Unit)を、光ファイバ及びスターカプラを介して接続し、1つのOLTを複数のONUが共有する、受動光ネットワーク(PON:Passive Optical Network)通信システムが主流となっている。この通信システムでは、OLTからONUへ向けた下り通信とONUからOLTに向けた上り通信とが相互に干渉し合わないように、下り通信に使われる光信号波長と上り通信に使われる光信号波長とを違えている。
【0003】
加入者系光アクセスシステムについては、更に、通信に用いる波長の多重度を上げた波長分割多重方式PON(WDM−PON:Wavelength Division Multiplexed−PON)が検討されている。WDM−PONでは、OLTとONUに、複数の波長の光を合分波する光素子が必要となる。
【0004】
このような光素子の一例として、アレイ導波路回折格子(AWG:Arrayed Waveguid Grating)がある。AWGは、入力導波路、入力側スラブ導波路、異なる光路長を有する複数のチャネル導波路を含むアレイ導波路、出力側スラブ導波路及び出力導波路が、同一の基板上に平板光導波路回路(PLC:Planar Lightwave Circuit)として形成される。しかし、コアとクラッドの屈折率差が小さい石英系光導波路では、湾曲光導波路の曲率半径を小さくすることが難しく、AWGを小型化できない。
【0005】
そこで、シリコン(Si)を材料とするコアと、シリコンとの屈折率差が大きな酸化シリコン(SiO
2)を材料とするクラッドとを用いたシリコン細線導波路で、AWGを構成する例が報告されている(例えば、非特許文献1及び2参照)。シリコン細線導波路では、コアの屈折率がクラッドの屈折率よりも非常に大きい。このため、光の閉じ込めが強く、十分小さい曲率半径の湾曲光導波路を形成できる。また、シリコン電子デバイスの加工技術を利用して製造できるために、極めて微細なサブミクロンの断面構造を実現できる。これらのことから、シリコン細線導波路を用いることでAWGを小型化することができる。
【0006】
しかし、シリコン細線導波路を用いるAWGでは、AWGを構成する入力側及び出力側のスラブ導波路とチャネル導波路との接続部分で無視できない大きさの放射損失が生じることが知られている。この放射損失を低減する手法の一つとして、AWGを構成する導波路をリブ導波路構造にすることが試みられている。しかしながら、リブ導波路構造を採用すると、湾曲導波路部分の曲率半径を大きくしないと、この部分で無視できない放射損失が生じる。そこで、特殊なリブ導波路を利用して放射損失を低減する試みがなされている(非特許文献3参照)。
【0007】
また、特許文献1には、AWGを構成する入力側及び出力側のスラブ導波路とチャネル導波路の接続部分で発生する放射損失について、チャネル導波路を構成している複数のそれぞれの導波路で発生する放射損失を等しくするために、導波路モードカプラ(Waveguide mode coupler)を利用する構造が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係については、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。
【0021】
(第1の光合分波素子)
図1を参照して、この発明の光合分波素子の第1の実施形態(以下、第1の光合分波素子と称する。)につき説明する。
図1(A)は、第1の光合分波素子を構成する導波路コアの平面パターンの概略的構成を示す図である。
図1(B)は、
図1(A)のI−Iで示す位置で導波方向に垂直な断面で切断した概略的断面図である。また、
図1(C)は、
図1(A)のII−IIで示す位置で導波方向に垂直な断面で切断した概略的断面図である。
【0022】
図1(A)に示すように、第1の光合分波素子は、スラブ導波路11と導波路構造体4を備えている。導波路構造体4は、スラブ導波路11との接続位置から、MMI(Multimode Interference)導波路カプラ14、幅狭導波路19、第1テーパ導波路15、幅広導波路16及び第2テーパ導波路17が、導波方向に沿ってこの順に接続されて構成されている。
【0023】
図1(A)及び(B)に示すように、幅狭導波路19、第1テーパ導波路15、幅広導波路16及び第2テーパ導波路17を構成する導波路コアはクラッド層2に囲まれて、基板1上に形成されている。そして、その導波方向に垂直に切断した断面形状は長方形である。
【0024】
また、
図1(A)及び(C)に示すように、MMI導波路カプラ14の導波方向に沿った両側の領域である左側導波路領域L及び右側導波路領域Rには、MMI導波路カプラ14の厚みより薄い厚さDのステップ部18が形成されている。MMI導波路カプラ14を構成する導波路コア及びステップ部18を構成する導波路コアは、クラッド層2に上下方向に挟まれて、基板1上に一体として形成されている。
【0025】
ステップ部18は、導波路構造体4の全体にわたっていても良いが、その場合には、導波路への光の閉じ込めが弱くなるため、導波路の曲率半径を大きくとる必要がある。その結果、素子サイズが大きくなってしまう。従って、ステップ部18は、MMI導波路カプラ14の両側の領域にのみ設けるのが良い。この構成例では、ステップ部18とMMI導波路カプラ14のスラブ導波路11との接続箇所からの距離を等しくしている。
【0026】
なお、ステップ部18は、幅狭導波路19の部分に設けられていなければ良い。MMI導波路カプラ14間の光の量が十分小さくなるのであれば、ステップ部18のスラブ導波路11との接続箇所からの距離が、MMI導波路カプラ14のスラブ導波路11との接続箇所からの距離よりも短くても良い。
【0027】
図1(B)及び(C)に示す基板1はシリコン基板を利用し、クラッド層2は酸化シリコンを材料とするのが好適である。また、導波路構造体4を構成する導波路コアは、シリコンを材料とするのが好適である。
【0028】
幅狭導波路19のMMI導波路カプラ14との接続位置における幅は、MMI導波路カプラ14を導波する光が集光する幅程度にするのが良く、例えば、800nmに設定される。また、幅狭導波路19の第1テーパ導波路15との接続位置における幅は、シングルモードとなる幅程度にするのが良く、例えば、300〜500nmに設定される。
【0029】
この光合分波素子をAWG型光波長フィルタに用いる場合、導波路構造体4は、一方の端部でスラブ導波路11に接続され、他方の端部でチャネル導波路に接続される。このチャネル導波路におけるモード変換が生じるのを防ぐためにチャネル導波路の幅は、シングルモードとなる幅程度にするのが良く、例えば、300〜500nmに設定される。
【0030】
また、この導波路構造体4において、幅誤差により生じる位相誤差を抑えるために、幅広導波路16が設けられている。幅広導波路16と幅狭導波路19との接続領域、及び、幅広導波路16とチャネル導波路との接続領域には、この領域での損失を抑えるために、それぞれ第1テーパ導波路15及び第2テーパ導波路17が設けられている。
【0031】
第1テーパ導波路15は、幅狭導波路19から幅広導波路16へ向かうにつれて幅が広くなるテーパ形状である。また、第2テーパ導波路17は、幅広導波路16からチャネル導波路へ向かうにつれて幅が狭くなるテーパ形状である。
【0032】
なお、導波路構造体4における位相誤差を考慮する必要が無い場合は、第1テーパ導波路15、幅広導波路16及び第2テーパ導波路17を備えない構成にしても良い。
【0033】
(第2の光合分波素子)
図2を参照して、この発明の光合分波素子の第2の実施形態(以下、第2の光合分波素子と称する。)につき説明する。
図2は、第2の光合分波素子を構成する導波路コアの平面パターンの概略的構成を示す図である。
【0034】
第2の光合分波素子は、MMI導波路カプラ14と、幅狭導波路19の間に、MMI幅変化部14pとして、第1MMIテーパ部14p1及び第2MMIテーパ部14p2が導波方向に沿ってこの順に接続されて構成されている点が、第1の光合分波素子と異なっている。その他の部分は、
図1を参照して説明した第1の光合分波素子と同様に構成できるので、重複する説明を省略することもある。なお、MMI幅変化部14pを含めてMMI導波路カプラと称することもある。
【0035】
シミュレーションによると、MMI導波路カプラ14の厚さを200nm、ステップ部18の厚さを130nmとしたとき、1dB以下の過剰損失を得るためには、第1の光合分波素子では、MMI導波路カプラ14の幅は、1.5μmが最大である。これに対し、第2の光合分波素子では、MMI導波路カプラ14の幅を3μm程度にしても、1dB以下の過剰損失が得られる。
【0036】
第2MMIテーパ部14p2のテーパ角は、第1MMIテーパ部14p1のテーパ角よりも大きい。また、第2MMIテーパ部14p2と幅狭導波路19の接続位置における、両者の幅は等しい。なお、
図2では、MMI導波路カプラ14と第1MMIテーパ部14p1の接続位置における両者の幅は、等しく示されているが、必ずしも同一である必要はない。
【0037】
ここで、第1MMIテーパ部14p1及び第2MMIテーパ部14p2のテーパ角や長さについては、シミュレーション等により、より良い特性を得られる設計にすればよい。また、ステップ部18を第1MMIテーパ部14p1の途中まで設けても良い。
【0038】
ここでは、MMI導波路カプラ14と幅狭導波路19の間に、MMI幅変化部14pとして、第1MMIテーパ部14p1及び第2MMIテーパ部14p2を備える構成例を説明したが、これに限定されない。MMI幅変化部14pをパラボラ型の構造にするなど、曲線的に幅が変化する構造にしても良い。
【0039】
(光合分波素子の製造方法)
図1及び
図2に示す光合分波素子を構成する導波路コアパターン構造体は、例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板を入手して、以下の工程によって形成できる。
【0040】
先ず、SOI基板の酸化シリコン層上に形成されているシリコン層に対して、導波路コアとなる部分(導波路コアパターン構造体)を残してドライエッチング等を行い、他の部分のシリコン層を取り除く。MMI導波路カプラ14を構成する導波路コアの段差構造であるステップ部18については、2回のエッチング工程で形成することができる。
【0041】
次に、ドライエッチング等の処理で残された導波路コアパターン構造体を取り囲む酸化シリコン層を、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法等によって形成する。このようにして、光合分波素子を構成する導波路コアと、その周囲のクラッド層とが形成される。
【0042】
このように、この発明の光合分波素子は、SOI基板を用いて周知のエッチング処理、CVD法等によって形成することが可能であるので、量産性に優れ低コストで簡便に形成することが可能である。
【0043】
(光合分波素子の動作)
図3を参照して、MMI導波路カプラ14と幅狭導波路19における導波光の伝搬形態について説明する。
図3(A)は、MMI導波路カプラ14及び幅狭導波路19にステップ部18が形成されていない構造における導波光の伝搬の様子を示している。また、
図3(B)は、MMI導波路カプラ14にステップ部18が形成された第1の光合分波素子の構造における導波光の伝搬の様子を示している。
【0044】
図3(A)及び(B)では、スラブ導波路11、MMI導波路カプラ14及び幅狭導波路19における導波光の伝搬形態を、光電場強度の分布を示す曲線21〜24によって示している。これらの曲線21〜24は、光電場強度0を底辺(L−0)にして、光電場強度の大きさに比例してL−0から離れるように描いてある。曲線21は、スラブ導波路11を伝搬する導波光の強度分布を示している。スラブ導波路11を伝搬する導波光は球面波であるが局所的にみると平面波とみなせるので、曲線21はほぼ直線で示されている。このため、曲線21に対しては、光電場強度の最小値を示す底辺(L−0)を省略してある。
【0045】
ステップ部18が形成されていない場合は、
図3(A)に示すように、MMI導波路カプラ14を伝搬する導波光は、曲線22で示す形態の伝搬光となる。
【0046】
MMI導波路カプラ14を伝搬光が伝搬している間に伝搬モードが変換され、幅狭導波路19に等強度曲線23に示す形態の伝搬モードで入力される。等強度曲線23で示される導波光は、幅狭導波路19を基本伝搬モードで伝搬する。
【0047】
MMI導波路カプラ14は、スラブ導波路11の出力端に並列されて複数設置される。この隣接するMMI導波路カプラ14の隙間Gの部分を隣接間ギャップ14gとする。
【0048】
スラブ導波路11の伝搬光はMMI導波路カプラ14に入力されると、隣接間ギャップ14gから漏れ出し放射損失となる。MMI導波路カプラ14の導波光は、伝搬モードが変換されて幅狭導波路19に入力されるが、幅狭導波路19に入力される伝搬光のエネルギーには、MMI導波路カプラ14を伝搬中に隣接間ギャップ14gに漏れ出るエネルギー成分も一部含まれる。
【0049】
隣接間ギャップ14gでは光電場強度が弱くなっているため、隣接間ギャップ14gにおける曲線22gは、底辺(L−0)に近い位置にある。これは、スラブ伝搬光21とモード形状のミスマッチが大きくなり、隣接間ギャップ14gに漏れ出る伝搬光が多く、ここで発生する放射損失が大きいことを意味している。
【0050】
一方、ステップ部18が形成されている場合は、
図3(B)に示すように、MMI導波路カプラ14を伝搬する固有の導波光は、曲線24で示す形態の伝搬光となる。
【0051】
ここで、隣接間ギャップ14gにおける固有の光電場強度を、ステップ部18が形成されていない場合(曲線22g)と形成されている場合(曲線24g)とで比較すると、ステップ部18が形成されている場合の方が強いことがわかる。
【0052】
MMI導波路カプラ14の導波光が、伝搬モードが変換されて幅狭導波路19に入力されるとき、隣接間ギャップ14gにおける光電場強度が強いほど、スラブ伝搬光21とモードマッチングする割合が大きくなり、幅狭導波路19に入力される伝搬光のエネルギーも大きくなる。すなわち、ステップ部18が形成されている場合、隣接間ギャップ14gにおける光電場強度が、ステップ部18が形成されていない場合より強い。この隣接間ギャップ14gにおける光は、
図3(B)に矢印25で示すように、伝播中にMMI導波路カプラ14に吸い込まれる。その結果、ステップ部18を設けることにより、幅狭導波路19に入力される伝搬光の光電場強度が強くなる。
【0053】
以上、スラブ導波路11からMMI導波路カプラ14に向けて導波光が進行し、スラブ導波路11に入力された導波光が、複数のMMI導波路カプラ14に分波される場合(光分波器として利用される場合)を説明した。逆に、複数のMMI導波路カプラ14を伝搬して、スラブ導波路11に合波される場合(光合波器として利用される場合)は、分波される場合とは逆の過程が起き、幅狭導波路19を伝搬する基本伝搬モードの伝搬光がMMI導波路カプラ14とスラブ導波路11の接続位置で、等強度曲線24で表される伝搬モードに変換されて、スラブ導波路11を伝搬する等強度曲線21で表される伝搬モードとカップリングする。したがって、光合波器として利用される場合にも、ステップ部18を備える構成のほうが好ましいことがわかる。
【0054】
(動作特性のシミュレーション)
図4〜6を参照して、3次元FDTD法(Finite−Difference Time−Domain method)を使用して光合分波素子の動作をシミュレーションした結果について説明する。
【0055】
図4は、第1の光合分波素子についてのシミュレーション結果を説明するための図である。
図4(A)は、第1の光合分波素子の模式図である。
図4(B)及び(C)は、それぞれ、TE波のEx成分及びHy成分を示している。また、
図4(D)は、過剰損失の波長依存性を示す図であって、横軸に波長(単位:μm)で取り、縦軸に、過剰損失(単位:dB)で取って示している。
【0056】
ここでは、MMI導波路カプラ14の幅W14及び長さL14をそれぞれ1.5μm及び2.712μm、隣接間ギャップ14gの幅Gを500nmとした。また、MMI導波路カプラ14の厚さを200nm、ステップ部18の厚さを130nmとした。
【0057】
幅狭導波路19については、一端側であるMMI導波路カプラ14との接続幅W19aを800nmとし、他端側の幅W19bをシングルモード幅の500nmとし、幅狭導波路19の長さL19を13.5μmとした。
【0058】
図4(B)及び(C)に示されるように、波長1.6μmのTE波を伝播させると、スラブ導波路11を伝播する平面波は、隣接間ギャップ14gをしばらく伝播するが、伝播中にMMI導波路カプラ14中に移行する。その結果、MMI導波路カプラ14と幅狭導波路19との接続位置、すなわち、MMI導波路カプラ14の終端部では、隣接間ギャップ14gを伝播する光の量が少なくなる。
【0059】
また、
図4(D)に示されるように、過剰損失は、1.45〜1.7μmの波長範囲で、0.65〜0.82dB程度に抑えられている。
【0060】
なお、ステップ部18を備えない構成で同様のシミュレーションを行うと、過剰損失は、2.5〜3dBの大きな値となる。また、ステップ部18を備えない構成では、MMI導波路カプラ14に多数のモードが励起され、きれいに集光しないことも判明した。
【0061】
図5は、第2の光合分波素子についてのシミュレーション結果を説明するための図である。
図5(A)は、第2の光合分波素子の模式図である。
図5(B)及び(C)は、それぞれ、TE波のEx成分及びHy成分を示している。また、
図5(D)は、過剰損失の波長依存性を示す図であって、横軸に波長(単位:μm)で取り、縦軸に、過剰損失(単位:dB)で取って示している。
【0062】
ここでは、MMI導波路カプラ14の幅W14及び長さL14をそれぞれ3μm及び2.8516μm、隣接間ギャップ14gの幅Gを500nmとした。また、MMI導波路カプラ14の厚さを200nm、ステップ部18の厚さを130nmとした。
【0063】
幅狭導波路19については、幅W19を460nmの一定値とし、長さL19を13.5μmとした。
【0064】
第1MMIテーパ部14p1及び第2MMIテーパ部14p2の接続幅W14pは、MMI導波路カプラ14の幅W14と、幅狭導波路19の幅W19の中間値である1.73μmとした。第1MMIテーパ部14p1の長さL14p1を、MMI導波路カプラ14の長さL14と同じ長さとし、第2MMIテーパ部14p2の長さL14p2を、MMI導波路カプラ14の長さL14の2/3とした。
【0065】
図5(B)及び(C)に示されるように、スラブ導波路11を伝播する平面波は、隣接間ギャップ14gをしばらく伝播するが、伝播中にMMI導波路カプラ14中に移行する。その結果、MMI導波路カプラ14と幅狭導波路19との接続位置、すなわち、MMI導波路カプラ14の終端部では、隣接間ギャップ14gを伝播する光の量が少なくなり、ステップ部18の終端部では、隣接間ギャップ14gを伝播する光が存在していない。
【0066】
また、
図5(D)に示されるように、過剰損失は、1.45〜1.7μmの波長範囲で、0.59〜0.77dB程度に抑えられている。
【0067】
図6は、第2の光合分波素子についての他の条件におけるシミュレーション結果を説明するための図である。
図6は、過剰損失の波長依存性を示す図であって、横軸に波長(単位:μm)で取り、縦軸に、過剰損失(単位:dB)で取って示している。
【0068】
ここでは、MMI導波路カプラ14の幅W14及び長さL14をそれぞれ5μm及び6.93μm、隣接間ギャップ14gの幅Gを500nmとした。また、MMI導波路カプラ14の厚さを200nm、ステップ部18の厚さを130nmとした。
【0069】
幅狭導波路19については、幅W19を460nmの一定値とし、長さL19を13.5μmとした。
【0070】
第1MMIテーパ部14p1及び第2MMIテーパ部14p2の接続幅W14pは、MMI導波路カプラ14の幅W14と、幅狭導波路19の幅W19の中間値である2.73μmとした。第1MMIテーパ部14p1の長さL14p1は、MMI導波路カプラ14の長さL14と同じ長さとし、第2MMIテーパ部14p2の長さL14p2は、MMI導波路カプラ14の長さL14の1/2.7の長さとした。
【0071】
図6に示されるように、過剰損失は、1.45〜1.7μmの波長範囲で、0.75〜1.15dB程度に抑えられている。
【0072】
(アレイ導波路回折格子型光波長フィルタ)
図7を参照して、この発明のAWG型光波長フィルタの実施形態につき説明する。この発明のAWG型光波長フィルタは、入力導波路12、入力側スラブ導波路11a、入力側導波路構造体4a、異なる光路長を有する複数のチャネル導波路で構成されるアレイ導波路30、出力側導波路構造体4b、出力側スラブ導波路11b及び出力導波路13を備え、この順に接続されて構成されている。
【0073】
出力導波路13は複数本の導波路をアレイ状にして構成されている。すなわち、
図7に示すAWG型光波長フィルタは、入力導波路12に入力された入力光が波長ごとに分波されて出力導波路13から出力される構成の光波長フィルタである。入力側スラブ導波路11aと入力側導波路構造体4a、及び、出力側スラブ導波路11bと出力側導波路構造体4bは、上述の第1又は第2の光合分波素子を用いて形成されている。
【0074】
アレイ導波路30を構成する複数のチャネル導波路のそれぞれは、入力側曲線導波路5a、第1直線導波路6、第1曲線導波路7、第2直線導波路8、第2曲線導波路9、第3直線導波路10、出力側曲線導波路5bがこの順に接続されている。なお、以下の説明において、入力側導波路構造体4a及び出力側導波路構造体4bをアレイ導波路30に含めることもある。
【0075】
入力光は、入力導波路12から入力側スラブ導波路11aに入力され、出力光は出力側スラブ導波路11bから出力導波路13を介して外部に出力される。入力側スラブ導波路11aと出力側スラブ導波路11bは、入力側スラブ導波路11aの対称中心軸S1と出力側スラブ導波路11bの対称中心軸S2とが互いに平行となるように配置されている。
【0076】
アレイ導波路30を構成する複数のチャネル導波路のそれぞれにおいて、入力側導波路構造体4aの全長と出力側導波路構造体4bの全長の和は、互いに等しく設定されている。また、対となる入力側曲線導波路5aと出力側曲線導波路5bの互いの曲げ部分の曲率半径は等しく設定されている。これは曲率半径が異なると等価屈折率も異なり、位相誤差が発生する原因となるからである。
【0077】
アレイ導波路30を構成する複数のチャネル導波路ごとに、第1曲線導波路7及び第2曲線導波路9は同一構造にして、この曲線導波路部分で位相誤差が発生しないように考慮されている。また、第1直線導波路6、第2直線導波路8、第3直線導波路10は、この直線導波路部分で発生する位相誤差がAWG型光波長フィルタの特性に与える効果を小さくするため、導波路幅を0.7〜1μmの範囲に設定する。
【0078】
一方、入力側曲線導波路5a、出力側曲線導波路5b、第1曲線導波路7及び第2曲線導波路9の導波路幅は、この導波路部分で伝搬モードの変換が生じないように、基本伝搬モードが保証される300〜500nmに設定する。なお、直線導波路部分と曲線導波路部分を接合する結合領域は、両者の導波路幅の差を滑らかに解消するように幅テーパ導波路を用いる。
【0079】
また、第2直線導波路8はアレイ導波路30の中心に配置され、第1直線導波路6と第3直線導波路10は、第2直線導波路8に対して対称の関係となる位置に配置される。第1曲線導波路7と第2曲線導波路9も、第2直線導波路8に対して対称の関係となる位置に配置される。
【0080】
図7に示すAWG型光波長フィルタによれば、入力側スラブ導波路11aと入力側導波路構造体4a、及び、出力側スラブ導波路11bと出力側導波路構造体4bに、
図1又は
図2を参照して説明した第1又は第2の光合分波素子を用いている。このため、両接続領域において発生する放射損失が低減されるので、全体として放射損失が低減されたAWG型光波長フィルタが実現される。