特許第6286474号(P6286474)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286474
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】画像処理装置および領域追跡プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/20 20170101AFI20180215BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20180215BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   G06T7/20
   G06T7/00 300D
   H04N7/18 D
   H04N7/18 G
【請求項の数】11
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-83716(P2016-83716)
(22)【出願日】2016年4月19日
(65)【公開番号】特開2017-194787(P2017-194787A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2016年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220620
【氏名又は名称】東芝テリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 亮
【審査官】 佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−298591(JP,A)
【文献】 特許第4427052(JP,B2)
【文献】 特開2014−157388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/20
G06T 7/00
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周期で入力された撮影画像を入力順に順次差分処理して、変化した画素を含む矩形の領域を抽出し、抽出した矩形の領域を過去の複数の矩形の領域から生成した予測領域をもとに追跡する画像処理装置において、
前記矩形の領域内に複数の局所領域を設定するとともに、前記矩形の領域を構成する画素位置に画素単位でパターンマッチング判定用の閾値を設定する外部パラメータの設定手段と、
追跡している矩形の領域から前記局所領域それぞれの画像パターンを切り出す局所領域のパターン抽出手段と、
前記画像パターンをマッチング評価のためのテンプレートとして保持する局所領域のパターン保持手段と、
前記局所領域のパターン抽出手段が前記画像パターンを切り出す都度、切り出した画像パターンと前記局所領域のパターン保持手段に保持されている画像パターンとを照合し、前記閾値をもとにマッチング評価を実施して、前記追跡している矩形の領域の相関有無を判定する類似判定手段と、
前記類似判定手段が前記追跡している矩形の領域の相関有りを判定したとき、前記局所領域のパターン保持手段に保持されている画像パターンを前記局所領域のパターン抽出手段が切り出した最新の画像パターンに更新するテンプレート更新手段と、
を具備したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
所定の周期で入力した画面上の現在画像と過去画像を差分処理して、変化した画素を含む矩形の領域を抽出する領域抽出処理手段と、前記領域抽出処理手段が抽出した領域のうち、新たに抽出した領域を、追跡処理の対象となる新規オブジェクトとして登録する新規オブジェクトの登録処理手段と、前記新規オブジェクトの登録処理手段により登録されたオブジェクトを未確定オブジェクトとして、前記領域抽出処理手段が領域を抽出する都度、今回抽出した領域の位置および大きさを示す情報と前回抽出した領域の位置および大きさを示す情報とをもとに前記未確定オブジェクトを追跡する未確定オブジェクトの追跡処理手段と、前記未確定オブジェクトの追跡処理手段が所定時間継続して追跡した未確定オブジェクトについて、当該オブジェクトを確定オブジェクトとして、前記領域抽出処理手段が領域を抽出する都度、当該抽出した領域の位置および大きさを示す情報と、前記未確定オブジェクトの追跡時における時系列の位置情報に基づく最小自乗近似により求める予測方向に従い追跡の都度更新される予測領域の位置および大きさを示す情報と移動速度情報をもとに、前記確定オブジェクトを追跡する確定オブジェクトの追跡処理手段とを具備した画像処理装置において、
前記矩形の領域内に複数の局所領域を設定するとともに、前記矩形の領域を構成する画素位置に画素単位でパターンマッチング判定用の閾値を設定する外部パラメータの設定手段と、
前記未確定オブジェクトから確定オブジェクトになった新規確定オブジェクトを初回の処理対象として、前記確定オブジェクトが判定される都度、当該オブジェクトの矩形の領域から前記局所領域それぞれの画像パターンを切り出す局所領域のパターン抽出手段と、
前記画像パターンをマッチング評価のためのテンプレートとして保持する局所領域のパターン保持手段と、
前記局所領域のパターン抽出手段が前記画像パターンを切り出す都度、切り出した画像パターンと前記局所領域のパターン保持手段に保持されている画像パターンとを照合し、前記閾値をもとにマッチング評価を実施して、追跡している確定オブジェクトの相関有無を判定する追跡オブジェクトの類似判定手段と、
前記追跡オブジェクトの類似判定手段が前記追跡している確定オブジェクトの相関有りを判定したとき、現在追跡中の確定オブジェクトを同定して前記局所領域のパターン保持手段に保持されている画像パターンを前記局所領域のパターン抽出手段が切り出した最新の画像パターンに更新するテンプレート更新手段と、
を具備したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
前記局所領域は、前記矩形の領域内における底辺の予め定めた位置を前記矩形で囲われた追跡オブジェクトの存在位置として、この存在位置に対して前記矩形の領域内における位置が設定され、
前記追跡オブジェクトの類似判定手段は、前記入力した画面の画素を単位に前記閾値となるパターンマッチング評価のための相関係数が設定された相関判定テーブルを有し、前記存在位置における前記相関判定テーブル上の相関係数を用いて前記追跡オブジェクトの類似判定を行うことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記局所領域は、追跡対象となる動物体を想定したオブジェクトモデルを撮影した画像から抽出された矩形の領域内における変化画素の分布をもとに変化率の低い部分領域を対象に前記矩形の領域内の複数箇所に追跡オブジェクトの小画像切り出し窓として設定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記局所領域は、前記矩形の領域内に、前記存在位置からの高さHをもとに複数定義され、同領域内の各画像がオブジェクトモデルパターンとして前記マッチング評価の対象になることを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記追跡オブジェクトの類似判定手段には、算出方法を異にする複数組のパターンマッチングの評価式が用意され、前記外部パラメータには、前記複数組のパターンマッチングの評価式のいずれか一組を前記追跡オブジェクトの類似判定手段が実施するパターンマッチングの評価式として指定するパラメータが含まれる請求項2又は3に記載の画像処理装置。
【請求項7】
複数組のパターンマッチングの評価式の中から選択された評価式をもとに前記相関判定テーブルに前記相関係数が設定されることを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項8】
所定の周期で入力された撮影画像を入力順に順次差分処理して、変化した画素を含む矩形の領域を抽出し、抽出した矩形の領域を過去の複数の矩形の領域から生成した予測領域をもとに追跡する画像処理装置としてコンピュータを機能させるための領域追跡プログラムであって、
前記矩形の領域内に複数の局所領域を設定するとともに、前記矩形の領域を構成する画素位置に画素単位でパターンマッチング判定用の閾値を設定する外部パラメータの設定機能と、
追跡している矩形の領域から前記局所領域それぞれの画像パターンを切り出す局所領域のパターン抽出機能と、
前記画像パターンをマッチング評価のためのテンプレートとして保持する局所領域のパターン保持機能と、
前記局所領域のパターン抽出手段が前記画像パターンを切り出す都度、切り出した画像パターンと前記局所領域のパターン保持手段に保持されている画像パターンとを照合し、前記閾値をもとにマッチング評価を実施して、前記追跡している矩形の領域の相関有無を判定する類似判定機能と、
前記マッチング評価で相関有りと判定されたとき、前記保持されている画像パターンを前記切り出された最新の画像パターンに更新するテンプレート更新機能とをコンピュータに実現させるための領域追跡プログラム。
【請求項9】
カメラで撮影した撮像画面を所定の周期で入力し、今回入力した画面上の画像と前回入力した画面上の画像とを差分処理して画面上の変化した画素を含む矩形の領域を抽出する領域抽出機能と、前記領域抽出機能により抽出された領域が、前記画面上で新たに抽出された領域であるか否かを判定し、新たに抽出された領域であるとき、当該抽出した領域を、追跡処理の対象となる新規オブジェクトとして登録する新規オブジェクトの登録処理機能と、前記新規オブジェクトの登録処理機能により登録されたオブジェクトについて、当該オブジェクトを未確定オブジェクトとして、前記領域抽出機能が前記領域を抽出する都度、今回抽出した領域の位置および大きさを示す情報と前回抽出した領域の位置および大きさを示す情報とをもとに前記未確定オブジェクトを追跡する未確定オブジェクトの追跡処理機能と、前記未確定オブジェクトの追跡処理機能が所定時間継続して追跡した未確定オブジェクトについて、当該オブジェクトを確定オブジェクトとして、前記領域抽出機能が領域を抽出する都度、当該抽出した領域の位置および大きさを示す情報と、前記未確定オブジェクトの追跡時における時系列の位置情報に基づく最小自乗近似により求める予測方向に従い追跡の都度更新される予測領域の位置および大きさを示す情報と移動速度情報とをもとに、前記確定オブジェクトを追跡する確定オブジェクトの追跡処理機能とを有した画像処理装置としてコンピュータを機能させるための領域追跡プログラムであって、
前記矩形の領域内に複数の局所領域を設定するとともに、前記矩形の領域を構成する画素位置に画素単位でパターンマッチング判定用の閾値を設定する外部パラメータの設定機能と、
前記未確定オブジェクトから確定オブジェクトになった新規確定オブジェクトを初回の処理対象として、前記確定オブジェクトが判定される都度、当該オブジェクトの矩形の領域から前記局所領域それぞれの画像パターンを切り出す局所領域のパターン抽出機能と、
前記画像パターンをマッチング評価のためのテンプレートとして保持する局所領域のパターン保持機能と、
前記画像パターンが切り出される都度、切り出された画像パターンと前記保持された画像パターンとを照合し、前記閾値をもとにマッチング評価を実施して、追跡している確定オブジェクトの相関有無を判定する追跡オブジェクトの類似判定機能と、
前記マッチング評価で相関有りと判定されたとき、現在追跡中の確定オブジェクトを同定して前記保持されている画像パターンを前記切り出された最新の画像パターンに更新し次回のマッチング評価の実施に備えるテンプレート更新機能とをコンピュータに実現させるための領域追跡プログラム。
【請求項10】
前記局所領域は、前記矩形の領域内における底辺の予め定めた位置を前記矩形で囲われた追跡オブジェクトの存在位置として、この存在位置に対して前記矩形の領域内における位置が設定され、
前記追跡オブジェクトの類似判定機能は、前記入力した画面の画素を単位にパターンマッチング評価のための相関係数が設定された相関判定テーブルを有して、前記存在位置における前記相関判定テーブル上の相関係数を用い、前記追跡オブジェクトの類似判定を行うことを特徴とする請求項9に記載の領域追跡プログラム。
【請求項11】
前記追跡オブジェクトの類似判定機能には、算出方法を異にする複数組のパターンマッチングの評価式が用意され、これら評価式の中から選択された評価式をもとに前記相関判定テーブルに前記相関係数が設定されることを特徴とする請求項10に記載の領域追跡プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単眼カメラで撮影した特定画像の追跡処理に適用して好適な画像処理装置および領域追跡プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
単眼カメラで撮影した監視画像を処理対象とする画像処理装置として、所定の周期で入力した画面上の現在画像と過去画像から変化画素を含む矩形の領域を抽出し、抽出した矩形の領域を処理対象オブジェクトとして追跡する画像処理装置が知られている(特許第4427052号)。この画像処理装置は、上記抽出された領域が、画面上で新たに抽出された領域であるか否かを判定し、新たに抽出された領域であるとき、当該抽出した領域を追跡処理の対象となる新規オブジェクトとして登録し、登録されたオブジェクトを未確定オブジェクトとして、今回抽出した領域の位置および大きさを示す情報と前回抽出した領域の位置および大きさを示す情報とをもとに追跡し、さらに所定時間継続して追跡した未確定オブジェクトを確定オブジェクトとして未確定オブジェクトの追跡時における時系列の位置情報に基づく最小自乗近似により求める予測方向に従い追跡の都度更新される予測領域の位置および大きさを示す情報と移動速度情報とをもとに追跡する追跡処理機能を実現している。
【0003】
この画像処理装置は既に監視カメラシステムとして実用化されているが、追跡対象が一旦停止した場合の時間経過を伴う特定の監視パターンにおいて追跡対象を誤認識する追跡性能上の不具合な事象が認識され、追跡性能をより向上させた画像処理技術が要望された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−91439号公報
【特許文献2】特開平10−111946号公報
【特許文献3】特開平11−136664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した不具合な事象を、処理負荷の大幅増を招くことなく経済的に有利な構成で解消し、追跡性能をより向上させた画像処理装置および領域追跡プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、所定の周期で入力された撮影画像を入力順に順次差分処理して、変化した画素を含む矩形の領域を抽出し、抽出した矩形の領域を過去の複数の矩形の領域から生成した予測領域をもとに追跡する画像処理装置において、前記矩形の領域内に複数の局所領域を設定するとともに、前記矩形の領域を構成する画素位置に画素単位でパターンマッチング判定用の閾値を設定する外部パラメータの設定手段と、追跡している矩形の領域から前記局所領域それぞれの画像パターンを切り出す局所領域のパターン抽出手段と、前記画像パターンをマッチング評価のためのテンプレートとして保持する局所領域のパターン保持手段と、前記局所領域のパターン抽出手段が前記画像パターンを切り出す都度、切り出した画像パターンと前記局所領域のパターン保持手段に保持されている画像パターンとを照合し、前記閾値をもとにマッチング評価を実施して、前記追跡している矩形の領域の相関有無を判定する類似判定手段と、前記類似判定手段が前記追跡している矩形の領域の相関有りを判定したとき、前記局所領域のパターン保持手段に保持されている画像パターンを前記局所領域のパターン抽出手段が切り出した最新の画像パターンに更新するテンプレート更新手段とを具備した画像処理装置を提供する。
【0007】
また本発明の実施形態は、所定の周期で入力した画面上の現在画像と過去画像を差分処理して、変化した画素を含む矩形の領域を抽出する領域抽出処理手段と、前記領域抽出処理手段が抽出した領域のうち、新たに抽出した領域を、追跡処理の対象となる新規オブジェクトとして登録する新規オブジェクトの登録処理手段と、前記新規オブジェクトの登録処理手段により登録されたオブジェクトを未確定オブジェクトとして、前記領域抽出処理手段が領域を抽出する都度、今回抽出した領域の位置および大きさを示す情報と前回抽出した領域の位置および大きさを示す情報とをもとに前記未確定オブジェクトを追跡する未確定オブジェクトの追跡処理手段と、前記未確定オブジェクトの追跡処理手段が所定時間継続して追跡した未確定オブジェクトについて、当該オブジェクトを確定オブジェクトとして、前記領域抽出処理手段が領域を抽出する都度、当該抽出した領域の位置および大きさを示す情報と、前記未確定オブジェクトの追跡時における時系列の位置情報に基づく最小自乗近似により求める予測方向に従い追跡の都度更新される予測領域の位置および大きさを示す情報と移動速度情報をもとに、前記確定オブジェクトを追跡する確定オブジェクトの追跡処理手段とを具備した画像処理装置において、前記矩形の領域内に複数の局所領域を設定するとともに、前記矩形の領域を構成する画素位置に画素単位でパターンマッチング判定用の閾値を設定する外部パラメータの設定手段と、前記未確定オブジェクトから確定オブジェクトになった新規確定オブジェクトを初回の処理対象として、前記確定オブジェクトが判定される都度、当該オブジェクトの矩形の領域から前記局所領域それぞれの画像パターンを切り出す局所領域のパターン抽出手段と、前記画像パターンをマッチング評価のためのテンプレートとして保持する局所領域のパターン保持手段と、前記局所領域のパターン抽出手段が前記画像パターンを切り出す都度、切り出した画像パターンと前記局所領域のパターン保持手段に保持されている画像パターンとを照合し、前記閾値をもとにマッチング評価を実施して、追跡している確定オブジェクトの相関有無を判定する追跡オブジェクトの類似判定手段と、前記追跡オブジェクトの類似判定手段が前記追跡している確定オブジェクトの相関有りを判定したとき、現在追跡中の確定オブジェクトを同定して前記局所領域のパターン保持手段に保持されている画像パターンを前記局所領域のパターン抽出手段が切り出した最新の画像パターンに更新するテンプレート更新手段とを具備した画像処理装置を提供する。
【0008】
また本発明の実施形態は、所定の周期で入力された撮影画像を入力順に順次差分処理して、変化した画素を含む矩形の領域を抽出し、抽出した矩形の領域を過去の複数の矩形の領域から生成した予測領域をもとに追跡する画像処理装置としてコンピュータを機能させるための領域追跡プログラムであって、前記矩形の領域内に複数の局所領域を設定するとともに、前記矩形の領域を構成する画素位置に画素単位でパターンマッチング判定用の閾値を設定する外部パラメータの設定機能と、追跡している矩形の領域から前記局所領域それぞれの画像パターンを切り出す局所領域のパターン抽出機能と、前記画像パターンをマッチング評価のためのテンプレートとして保持する局所領域のパターン保持機能と、前記局所領域のパターン抽出手段が前記画像パターンを切り出す都度、切り出した画像パターンと前記局所領域のパターン保持手段に保持されている画像パターンとを照合し、前記閾値をもとにマッチング評価を実施して、前記追跡している矩形の領域の相関有無を判定する類似判定機能と、前記マッチング評価で相関有りと判定されたとき、前記保持されている画像パターンを前記切り出された最新の画像パターンに更新するテンプレート更新機能とをコンピュータに実現させるための領域追跡プログラムを提供する。
【0009】
また本発明の実施形態は、カメラで撮影した撮像画面を所定の周期で入力し、今回入力した画面上の画像と前回入力した画面上の画像とを差分処理して画面上の変化した画素を含む矩形の領域を抽出する領域抽出機能と、前記領域抽出機能により抽出された領域が、前記画面上で新たに抽出された領域であるか否かを判定し、新たに抽出された領域であるとき、当該抽出した領域を、追跡処理の対象となる新規オブジェクトとして登録する新規オブジェクトの登録処理機能と、前記新規オブジェクトの登録処理機能により登録されたオブジェクトについて、当該オブジェクトを未確定オブジェクトとして、前記領域抽出機能が前記領域を抽出する都度、今回抽出した領域の位置および大きさを示す情報と前回抽出した領域の位置および大きさを示す情報とをもとに前記未確定オブジェクトを追跡する未確定オブジェクトの追跡処理機能と、前記未確定オブジェクトの追跡処理機能が所定時間継続して追跡した未確定オブジェクトについて、当該オブジェクトを確定オブジェクトとして、前記領域抽出処理機能が領域を抽出する都度、当該抽出した領域の位置および大きさを示す情報と、前記未確定オブジェクトの追跡時における時系列の位置情報に基づく最小自乗近似により求める予測方向に従い追跡の都度更新される予測領域の位置および大きさを示す情報と移動速度情報とをもとに、前記確定オブジェクトを追跡する確定オブジェクトの追跡処理機能とを有した画像処理装置としてコンピュータを機能させるための領域追跡プログラムであって、前記矩形の領域内に複数の局所領域を設定するとともに、前記矩形の領域を構成する画素位置に画素単位でパターンマッチング判定用の閾値を設定する外部パラメータの設定機能と、前記未確定オブジェクトから確定オブジェクトになった新規確定オブジェクトを初回の処理対象として、前記確定オブジェクトが判定される都度、当該オブジェクトの矩形の領域から前記局所領域それぞれの画像パターンを切り出す局所領域のパターン抽出機能と、前記画像パターンをマッチング評価のためのテンプレートとして保持する局所領域のパターン保持機能と、前記画像パターンが切り出される都度、切り出された画像パターンと前記保持された画像パターンとを照合し、前記閾値をもとにマッチング評価を実施して、追跡している確定オブジェクトの相関有無を判定する追跡オブジェクトの類似判定機能と、前記マッチング評価で相関有りと判定されたとき、現在追跡中の確定オブジェクトを同定して前記保持されている画像パターンを前記切り出された最新の画像パターンに更新し次回のマッチング評価の実施に備えるテンプレート更新機能とをコンピュータに実現させるための領域追跡プログラムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る画像処理装置の構成を示すブロック図。
図2】上記実施形態に係る画像処理装置の処理手順を示すフローチャート。
図3】上記実施形態に係る未確定オブジェクト追跡部の処理動作を説明するための動作説明図。
図4】上記実施形態に係る未確定オブジェクト追跡部の処理動作を説明するための動作説明図。
図5】上記実施形態に係る確定オブジェクト追跡部の処理動作を説明するための動作説明図。
図6】上記実施形態に係る確定オブジェクト追跡部の処理動作を説明するための動作説明図。
図7】上記実施形態に係る確定オブジェクト追跡部の処理動作を説明するための動作説明図。
図8】上記実施形態に係る確定オブジェクトの同定処理機能を実現する要部の構成要素を示す機能ブロック図。
図9】上記実施形態に係る確定オブジェクトの追跡処理手順を示すフローチャート。
図10】上記確定オブジェクトの追跡処理において実施されるパターンマッチングによる類似判定処理手順を示すフローチャート。
図11】上記パターンマッチングによる類似判定処理動作を説明するための相関判定用パラメータテーブルと追跡オブジェクトの存在位置(例えば、矩形下端中央位置とする場合は、オブジェクトの足元位置)との関係を示す図。
図12】上記パターンマッチングが実施される局所領域の設定例を示す図。
図13】上記パターンマッチングが実施される局所領域の設定例を示す図。
図14】上記パターンマッチングが実施される局所領域の設定例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0012】
この実施形態は、単眼カメラ(1台のカメラ)の画像処理において、画像を取り込む毎に、過去画像と現在画像との差から画像中の変化画素領域を矩形の領域として抽出し、時系列に得られた抽出領域の情報から現在の領域の対応付けを行い、領域の移動を追跡する。この領域追跡処理を実現するため、画面上の変化画素領域を矩形の領域として抽出し、この領域を追跡する二種の領域追跡処理手段を有して、これら各領域追跡処理手段により段階的に継続して領域追跡を行うことで、処理負荷の軽減と処理速度の高速化を図った効率の良い領域追跡を可能にしている。この二種の領域追跡処理手段として、未確定オブジェクトの追跡処理手段と、確定オブジェクトの追跡処理手段とを備える。未確定オブジェクトの追跡手段は、時系列に抽出した領域の領域情報をもとに前回抽出した矩形の領域を拡大した予測領域を一時的に生成し、当該予測領域に、今回抽出した矩形の領域が交差するとき、今回抽出した矩形の領域を未確定オブジェクトとしてオブジェクトの追跡を行う。確定オブジェクトの追跡手段は、抽出した領域の領域情報と、未確定オブジェクトの追跡に伴う時系列の位置情報に基づく最小自乗(二乗)近似により求め、追跡の都度更新される予測方向に従い生成した予測領域情報と移動速度情報をもとに、確定オブジェクトの追跡を行う。
【0013】
この未確定オブジェクトから確定オブジェクトに移行した追跡中のオブジェクトについて、予測領域に存在する確定オブジェクトが現在追跡中の確定オブジェクトであることを確認する追跡オブジェクト確認処理を実施する。すなわち追跡中の確定オブジェクトを同定する確定オブジェクトの同定処理を実施する。この現在追跡中の確定オブジェクトの同定処理はパターンマッチングによる相関チェックにより実施される。
【0014】
この実施形態に係る確定オブジェクトの同定処理機構は、図8に示すように、上記矩形の領域内に複数の局所領域を設定するとともに、上記矩形の領域を構成する画素位置に画素単位でパターンマッチング判定用の閾値を設定する外部パラメータの設定手段Paと、上記未確定オブジェクトから確定オブジェクトになった新規確定オブジェクトの矩形の領域から上記局所領域それぞれの画像パターンを切り出す局所領域のパターン抽出手段Pbと、上記画像パターンをマッチング評価のためのテンプレートとして保持する局所領域のパターン保持手段Pcと、上記局所領域のパターン保持手段Pcにテンプレートが保持された状態で上記確定オブジェクトが判定される都度、当該オブジェクトの矩形の領域から上記局所領域それぞれの画像パターンを切り出す局所領域のパターン抽出手段Pdと、上記局所領域のパターン抽出手段Pdが上記画像パターンを切り出す都度、切り出した画像パターンと上記局所領域のパターン保持手段Pcに保持されている画像パターンとを照合し、上記閾値をもとにマッチング評価を実施して、追跡している確定オブジェクトの相関有無を判定する追跡オブジェクトの類似判定手段Peと、上記追跡オブジェクトの類似判定手段Peが上記追跡している確定オブジェクトの相関有りを判定したとき、現在追跡中の確定オブジェクトを同定して上記局所領域のパターン保持手段Pcに保持されている画像パターンを上記局所領域のパターン抽出手段Pdが切り出した最新の画像パターンに更新するテンプレート更新手段Pfとを具備している。上記局所領域のパターン抽出手段Pbは後述する未確定オブジェクト追跡部157bに付加機能部として設けられ、上記局所領域のパターン抽出手段Pdと類似判定手段Peとテンプレート更新手段Pfは後述する確定オブジェクト追跡部157aに付加機能部として設けられる。
【0015】
このようにパターンマッチングによる相関チェックは、変化画素領域を矩形で囲った画像領域を対象に行うのではなく、上記矩形で囲った画像領域内に設定された複数箇所の局所領域から切り出した画像パターンの相関チェックによるマッチング評価により実施される。
【0016】
この局所領域の画像パターンの相関チェックによるマッチング評価により、変化画素領域を矩形で囲った画像領域全体を相関チェックの対象とする場合に比し、マッチング評価のための処理負荷を大幅に低減できる。これにより既存の画像処理システムにおいて実時間処理機能に影響を及ぼすことなく確定オブジェクトの同定処理が実施可能となり、追跡性能をより向上させた画像処理システムを構築することができる。
【0017】
この図8に示す確定オブジェクトの同定処理機構の詳細については図9乃至図14を参照して後述する。
【0018】
上記実施形態にかかる画像処理装置の構成を図1に示す。なお、この実施形態では、カメラから取り込んだ1フレーム分の画像データを、単に画像若しくは画面上の画像若しくは一画面分の画像と称している。
【0019】
本発明の実施形態に係る画像処理装置は、図1に示すように、カメラ11と、キャプチャ部12と、画像処理記憶部13と、画像処理部15と、表示部16とを具備して構成される。
【0020】
カメラ11は、レンズユニットとレンズユニットの結像位置に設けられた撮像素子(例えばCCD固体撮像素子、若しくはCMOSイメージセンサ)とを具備して、屋外若しくは屋内の動きを伴う被写体(動物体)を対象に、撮像した一画面分の画像を所定の画素単位(例えば1フレーム320×240画素=QVGA)で出力する。
【0021】
キャプチャ部12は、カメラ11が撮像したフレーム単位の画像を画像処理部15の処理対象画像(入力画像)として取り込み、画像処理記憶部13内の画像バッファ14に保持する処理機能をもつ。この画像バッファ14に取り込む画面上の入力画像は、ここでは原画像とするが、エッジ画像であってもよい。
【0022】
画像処理記憶部13は、画像処理部15の処理に供される、キャプチャ部12が取り込んだ入力画像および処理中の各画像を含む各種データを記憶する。この画像処理記憶部13には、画像処理部15の制御の下に、キャプチャ部12が取り込んだフレーム単位の画像のうち、今回取り込んだ一画面分の画像(現在画像)と、前回取り込んだ一画面分の画像(過去画像)をそれぞれ処理対象画像として保持する画像バッファ14を構成する領域が確保されるとともに、画像処理部15の処理に用いられる画像領域が確保される。さらに画像処理記憶部13には、画像処理部15の処理に供される各種のパラメータおよび制御データを記憶する記憶領域、確定および未確定オブジェクトの登録並びに追跡処理に於いて生成若しくは取得される各種情報の記憶領域等も確保される。
【0023】
この記憶領域には、上記した画像バッファ14を含むワーク領域に加え、後述する確定オブジェクトの同定処理を実施するための各種領域が確保される。この確定オブジェクトの同定処理には、図11に示すように、入力画像の1フレームに相当する画素構成(320×240画素)のパターンマッチング判定用の閾値(相関係数)を設定する相関判定用パラメータテーブル(CC−TBL)、およびこの相関判定用パラメータテーブル(CC−TBL)に設定された閾値(相関係数)を参照してマッチング評価を行う、算出方法を異にする複数組のパターンマッチングの評価式(後述する)が予め用意される。さらに上記記憶領域には、後述する画像処理部15の領域抽出処理機能により抽出された矩形の領域(AS)内の複数箇所に、追跡オブジェクトの存在位置(例えば、矩形下端中央位置とする場合は、オブジェクトの足元位置)(PF)の位置座標、およびこの存在位置(PF)をもとに設定された追跡オブジェクトの小画像切り出し窓となる局所領域(A1〜A3)を設定する位置座標を保持するパラメータ領域や、この局所領域(A1〜A3)をもとに上記矩形の領域の画像から切り出された小画面の画像パターン(P1〜P3)をテンプレートとして保持するバッファ領域や、マッチング評価の結果(相関あり/なし)を保持するフラグ領域など、確定オブジェクトの同定処理に供される種々のワーク領域が確保される。ここでは局所領域から切り出された画像パターン(テンプレート)を保持するバッファをパターンモデル保持部と呼称する。またマッチング評価の結果を保持するフラグ領域を類似判定フラグと呼称する。
【0024】
画像処理部15は、画像バッファ14に保持された過去画像と現在画像を差分処理して二値化した差分二値化画像を生成し、この差分二値化画像に含まれるノイズを除去して、この差分二値化画像から、変化画素を含む矩形の領域を抽出し、当該矩形の領域を処理対象に、領域を追跡する一連の画像処理を行うもので、前処理部151、差分処理部152、二値化処理部153、ノイズ除去フィルタ154、領域化処理部156、領域追跡処理部157等を具備して構成される。
【0025】
これら画像処理部15の構成要素のうち、前処理部151、差分処理部152、二値化処理部153、ノイズ除去フィルタ154、および領域化処理部156は、カメラ11から所定の周期で取り込んだ画面上の現在画像(今回取り込んだ画面上の画像)と過去画像(前回取り込んだ画面上の画像)とを差分処理して、変化した画素を含む矩形の領域を抽出する領域抽出処理機能を実現する。さらに上記した画像処理部15の構成要素のうち、前処理部151、差分処理部152、および二値化処理部153は、今回取り込んだ現在画像と前回取り込んだ過去画像とを差分処理して二値化した差分二値化画像を生成する差分二値化画像生成手段を実現する。
【0026】
上記した画像処理部15の各構成要素のうち、前処理部151は、画像バッファ13に貯えた過去画像と現在画像との比較(変化画素領域を抽出するための差分処理)に際し、キャプチャ部12が取り込んだ一画面分の入力画像に対して予め定められた前処理(平滑化処理、エッジ処理等)を実行する。差分処理部152は前処理部151を介した過去画像と現在画像とを画素単位で比較して差分領域を抽出する。
【0027】
二値化処理部153は、差分処理部152で差分処理した画像を画像記憶部13に保持されている予め設定された閾値に従い二値化して、差分二値化画像を生成する。この差分二値化画像は、画像処理記憶部13に予め確保した領域(差分二値化画像領域)に記憶される。
【0028】
ノイズ除去フィルタ154は、拡散フィルタ154aと収縮フィルタ154bとを有して構成され、上記差分二値化画像から動物体領域の抽出に不要なノイズ(ごま塩状の変化画素)を除去する。このノイズ除去フィルタ154の構成要素をなす拡散フィルタ154aは、上記差分二値化画像の最外周を除く各画素に対して注目画素を順次設定し、設定した注目画素に隣接する斜め方向の画素中(4画素中)に変化画素が存在するとき、上記注目画素を変化画素とする拡散フィルタリング処理を行う。収縮フィルタ154bは、上記拡散フィルタ154aで処理した画像に対して注目画素に隣接する周囲8画素若しくは4画素をもとに収縮フィルタリング処理を行う。このノイズ除去フィルタ154でノイズ除去した各フレーム(画面)毎の差分二値化画像は画像処理記憶部13の画像領域に記憶される。
【0029】
領域化処理部156は、上記ノイズ除去フィルタ154でノイズ除去した差分二値化画像を画面上の矩形の領域に領域化する処理を行う。この領域化処理では、差分二値化画像として抽出された画面上の変化画素領域を矩形で囲い、画面上からこの矩形の領域を抽出することによって、差分二値化画像を画面上の矩形の領域に領域化する。領域化処理部156は、この矩形の領域を示す、画面上に於ける位置及び大きさを示す左上(x0,y0)および右下(x1,y1)の座標データを矩形の領域情報として領域追跡処理部157に送出する。
【0030】
領域追跡処理部157は、領域化処理部156から受けた矩形の領域情報をもとに、領域化処理部156が抽出した矩形の領域を追跡する処理を行う。領域追跡処理部157は、領域化処理部156が矩形の領域を抽出する都度、画面上の動きを伴う画像(動物体画像)の比較により抽出された差分二値化画像に代わって、領域化処理部156が抽出した矩形の領域を追跡処理対象オブジェクトとして追跡処理する。この領域追跡処理部157は、確定オブジェクト追跡部157aと、未確定オブジェクト追跡部157bと、新規オブジェクト登録部157cと、不要オブジェクト除去部157dとを具備して構成される。
【0031】
未確定オブジェクト追跡部157bは、確定オブジェクト追跡部157aが追跡しているオブジェクト(確定オブジェクト)を除く画面上の領域を対象に、オブジェクト(未確定オブジェクト)の追跡を行う。
【0032】
新規オブジェクト登録部157cは、確定オブジェクト追跡部157aが追跡しているオブジェクト、および未確定オブジェクト追跡部157bが追跡しているオブジェクトを除く画面上の領域を対象に、新規オブジェクトの登録処理を行う。
【0033】
未確定オブジェクト追跡部157bは、領域追跡の都度、追跡している領域について、確定オブジェクト追跡部157aが領域予測に用いる所定の情報を生成し蓄積する処理機能をもつ。また、確定オブジェクト追跡部157aは、領域追跡の都度、未確定オブジェクト追跡部157bが生成した領域情報を用いて追跡オブジェクトを確定(確定オブジェクトとする)し、追跡を継続するとともに、追跡に用いた領域情報を用いて、領域予測に用いる所定の情報を更新する処理機能をもつ。
【0034】
確定オブジェクト追跡部157aは、未確定オブジェクト追跡部157bが複数回に亘り連続して追跡した(追跡に成功した)未確定オブジェクトを、確定オブジェクトとし、継続してオブジェクトを追跡処理するもので、領域化処理部156が矩形の領域を抽出する都度、領域化処理部156が抽出した矩形の領域の情報と、未確定オブジェクト追跡部157bが未確定オブジェクトの追跡時において生成した時系列の位置情報に基づく最小自乗近似により求めた予測方向に従う予測位置および予測領域の情報とをもとに、オブジェクト(確定オブジェクト)の追跡を行う。確定オブジェクト追跡部157aは、未確定オブジェクト追跡部157bが一定の期間に亘るオブジェクトの追跡処理で取得した情報(後述する、領域の幅、高さの平均値と標準偏差、および連続する画面相互の対応付けによって得られた画面上を移動する矩形の領域の速度の平均値と標準偏差等)を用いて、追跡に利用する領域(近傍領域)の妥当性をチェックする(図9ステップS25〜S27参照)。領域が不適当な場合は、予測情報を利用して追跡を継続する。さらに上記未確定オブジェクトの追跡処理で取得した領域の位置および速度の情報をもとに最小自乗(二乗)近似式により求めた予測移動方向情報を用いて現在領域の位置を予測し、その位置付近に出現した領域との対応付けを実施する。この確定オブジェクトの追跡処理は、設定されたパラメータの値に従う予測情報による連続追跡回数(例えば5回)又は総追跡回数(例えば300回)をもって終了する。さらに確定オブジェクト追跡部157aは、オブジェクトの追跡処理に於いて、未確定オブジェクト追跡部157bが生成した、オブジェクト情報を含む領域情報および移動速度情報、予測方向を更新する。これら各情報の具体例については後述する。
【0035】
未確定オブジェクト追跡部157bは、新規オブジェクト登録部157cが登録した新規オブジェクトを未確定オブジェクトとして追跡処理するもので、領域化処理部156が矩形の領域を抽出する都度、前回抽出した矩形の領域(領域の幅及び高さ)を拡大した予測領域を一時的に生成し、当該予測領域に、今回抽出した矩形の領域が交差するとき、今回抽出した矩形の領域を未確定オブジェクトとして、オブジェクトの追跡を行う。
【0036】
未確定オブジェクト追跡部157bは、領域化処理部156が矩形の領域を抽出する都度、前回抽出した矩形の領域について、領域の幅(x方向)及び高さ(y方向)を拡大し、この拡大した領域を予測領域として、この予測領域に、今回抽出した矩形の領域が交差するとき、今回抽出した矩形の領域を未確定オブジェクトとして、オブジェクトの追跡を行う。この実施形態では、予め設定したパラメータの値(ew/eh)に従い領域の幅と高さを拡げた予測領域を生成することによって、追跡処理のより簡素化並びに高速化を図っているが、追跡の都度、時系列に変化する領域の情報をもとに予測領域の幅と高さを設定し、予測領域の拡げる幅および高さを可変にすることも可能である。
【0037】
さらに、未確定オブジェクト追跡部157bは、オブジェクトの追跡処理に於いて、時系列に変化する領域の情報をもとに、確定オブジェクト追跡部157aが継続してオブジェクトを追跡する際に必要とする情報を生成する。ここでは、オブジェクトの追跡処理に於いて、時系列に変化する領域の情報をもとに、オブジェクト情報を含む領域情報と、移動速度情報とを含む所定の情報を生成する。オブジェクト情報には、領域を特定する矩形および面積の情報、および領域切出画像(領域追跡には必要としない)が含まれ、領域情報には、領域幅情報(領域幅、領域幅二乗値)、領域高さ情報(領域高さ、領域高さ二乗値)、領域幅統計情報(平均値、標準偏差、変動率、総和、二乗総和(平均値と変動率は予測情報生成時に利用))、領域高さ統計情報(平均値、標準偏差、変動率、総和、二乗総和等(平均値と変動率は予測情報生成時に利用))等が含まれる。移動速度情報には、移動速度情報(移動速度、移動速度二乗値)、移動速度統計情報(平均値、標準偏差、変動率、総和、二乗総和(平均値と変動率は予測情報生成時に利用))等が含まれる。
【0038】
確定オブジェクト追跡部157aは、未確定オブジェクト追跡部157bの追跡処理で生成した、これらの情報を使用し、更新しながら確定オブジェクトの追跡処理を行う。
【0039】
上記した確定オブジェクト追跡部157aおよび未確定オブジェクト追跡部157bにおいて、追跡中の確定オブジェクトを同定する、確定オブジェクトの同定処理が付加機能として設けられる。
【0040】
この付加機能の概要を図8機能ブロックで示している。
【0041】
また、上記未確定オブジェクト追跡部157bは、複数回に亘り連続して追跡した(追跡に成功した)未確定オブジェクトを、確定オブジェクトとして引き続き確定オブジェクト追跡部157aに追跡させる際に、確定オブジェクトの同定処理を実施するため、上記確定オブジェクトとなる未確定オブジェクトについて、当該オブジェクトの矩形の領域から上記局所領域(A1〜A3)の画像パターン(P1〜P3)を切り出し、この切り出した画像パターン(P1〜P3)をマッチング評価の対象となる初回のパターンモデル(テンプレート)として画像処理記憶部13に設けられたパターンモデル保持部に保持する局所領域のパターン抽出処理機能を備えている。
【0042】
また、確定オブジェクト追跡部157aは、確定オブジェクトの同定処理を実施するため、確定オブジェクトを判定する都度、当該新規確定オブジェクトの矩形の領域から上記局所領域(A1〜A3)の画像パターン(P1〜P3)を切り出し、この切り出した新規確定オブジェクトの画像パターン(P1〜P3)と、パターンモデル保持部にテンプレートとして保持された既確定オブジェクトの画像パターン(P1〜P3)とを照合し、上記相関判定用パラメータテーブル(CC−TBL)に設定された追跡オブジェクトの存在位置(例えば、矩形下端中央位置とする場合は、オブジェクトの足元位置)(PF)の相関係数をもとにマッチング評価を実施して、追跡している確定オブジェクトの相関有無を判定する追跡オブジェクトの類似判定処理機能、および当該類似判定処理で、追跡している確定オブジェクトの相関有りを判定したとき、現在追跡中の確定オブジェクトを同定して(最新の確定オブジェクトが現在追跡中の確定オブジェクトであることを確認して)パターンモデル保持部に保持されている画像パターン(P1〜P3)を新規確定オブジェクトから切り出した最新の画像パターン(P1〜P3)に更新し(テンプレートとなる画像を更新し)、次回のマッチング評価の実施に備える画像パターンの更新処理機能を備えている。
【0043】
この追跡中の確定オブジェクトを同定する確定オブジェクトの同定処理については図9乃至図14を参照して後述する。
【0044】
新規オブジェクト登録部157cは、上記確定オブジェクト追跡部157a、および未確定オブジェクト追跡部157bが追跡処理しているオブジェクトの追跡領域を除く画面上の領域に新たに出現した矩形の領域を新規オブジェクトとして認識し登録する処理を行う。この新規オブジェクトの登録処理では、領域化処理部156から受けた領域情報をもとに、矩形の領域の位置(座標)および面積を示すオブジェクト情報を生成し、このオブジェクト情報を画像処理記憶部13の予め定められた記憶領域に格納する。
【0045】
不要オブジェクト除去部157dは、不要なオブジェクト(確定オブジェクトおよび不確定オブジェクト)を削除する処理を行う。不要オブジェクト除去部157dは、例えば未確定オブジェクト若しくは確定オブジェクトとして追跡しているオブジェクトが終了となった場合に、当該未確定オブジェクト若しくは確定オブジェクトを削除する(不要オブジェクトを画像処理記憶部13から消去する)。
【0046】
表示部16は上記画像処理部15で画像処理された動物体領域を表示出力する。
【0047】
ここで、図2乃至図7を参照して上記画像処理部15に於けるオブジェクトの追跡処理動作を説明する。
【0048】
上記した画像処理部15に於けるオブジェクトの追跡処理手順を図2に示す。
【0049】
画像処理部15において、差分処理部152は、画像バッファ14に保持された過去画像と現在画像とを画素単位で比較し、変化した画素単位の領域を差分領域として抽出する(ステップS11)。この差分処理部152で差分処理した画像は、二値化処理部153により二値化され、領域化処理部156により画面上の矩形の領域に領域化される(ステップS12)。
【0050】
領域追跡処理部157は、領域化処理部156が領域化した矩形の領域情報を入力すると、当該入力した矩形の領域情報を追跡対象オブジェクトとして追跡処理する。
【0051】
初期動作時においては、追跡処理の対象となるオブジェクト(未確定オブジェクトおよび確定オブジェクト)が存在しないので、領域化処理部156から入力された矩形の領域が新規オブジェクト登録部157cにおいて、新規オブジェクトとして登録される(ステップS15)。
【0052】
新規オブジェクト登録部157cにおいて、新規オブジェクトが登録されると、領域化処理部156が再び矩形の領域を抽出する、次の処理サイクル以降において、未確定オブジェクト追跡部157bは、新規オブジェクト登録部157cが登録した新規オブジェクトを未確定オブジェクトとして追跡処理を開始する(ステップS14)。
【0053】
この未確定オブジェクト追跡部157bにおける未確定オブジェクトの追跡は、新規オブジェクト登録部157cの登録処理にてエントリーされているオブジェクトに対して、前回抽出されたオブジェクトの位置と領域情報を利用して、現在の出現領域位置(以下予測領域と呼ぶ)を以下のように予測する。
【0054】
未確定オブジェクト追跡部157bは、領域化処理部156が矩形の領域を抽出する都度、図3に示すように、前回抽出した矩形の領域301を拡大した予測領域302を生成し、この予測領域302に、今回抽出した矩形の領域303が交差するとき、今回抽出した矩形の領域303を未確定オブジェクトとして、オブジェクトの追跡を行う。
【0055】
未確定オブジェクト追跡部157bは、領域化処理部156が矩形の領域を抽出する都度、前回抽出した矩形の領域301に対して、当該領域の位置座標(x0,y0),(x1,y1)、およびこの座標値をもとに生成された領域の幅および高さの情報から求まる中心座標(重心位置)cp(mid X,mid Y)と、設定されたパラメータの値(ex/eh)をもとに、領域幅をexピクセル分、領域高さをehピクセル分、それぞれ両方向に拡大した、予測領域302を生成し、この予測領域302に、今回抽出した矩形の領域303が交差するとき、今回抽出した矩形の領域303を未確定オブジェクトとして、オブジェクトの追跡を続行する。なお、予測領域302は、今回の追跡処理の終了に伴い消滅する一時的な領域である。
【0056】
この際、今回抽出した矩形の領域が1つも予測領域に交差しないときは、不要オブジェクト除去部157dにより、当該未確定オブジェクトを不要オブジェクトであるとして、削除する(ステップS16)。
【0057】
さらに未確定オブジェクト追跡部157bは、領域化処理部156が抽出した矩形の領域が追跡対象領域であるとき、当該領域の位置座標(x0,y0)、(x1,y1)と、この位置座標をもとに生成した、領域の幅(x1−x0)および高さ(y1−y0)、面積、中心座標cp(mid X,mid Y)等の各情報を画像処理記憶部13の予め定められた記憶領域に格納する。
【0058】
上記した未確定オブジェクト追跡部157bの追跡処理により、ある未確定オブジェクトが連続して複数回追跡され、その追跡処理の回数が、予め設定されたパラメータの値に従う追跡回数(例えば5回)になったとき、この未確定オブジェクトを確定オブジェクトにするか否かの判定を行う。この判定処理は、確定オブジェクト追跡部157a、未確定オブジェクト追跡部157bのいずれで行ってもよいが、ここでは未確定オブジェクト追跡部157bが行うものとする。
【0059】
未確定オブジェクト追跡部157bは、未確定オブジェクトを所定回数(ここでは5回)連続して追跡したとき、未確定オブジェクトを連続して追跡した際に生成し採取した各領域の情報をもとに、領域幅、領域高さ、移動速度の各標準偏差を求め、この各標準偏差をパラメータにより予め設定した図4に示す許容標準偏差(s)(領域幅、領域高さ、移動速度にそれぞれで許容標準偏差は異なるパラメータで設定する)と比較することにより行う。ここで、未確定オブジェクトの情報をもとに生成した、領域幅、領域高さ、移動速度の各標準偏差が、それぞれパラメータにより設定された許容標準偏差(s)以内であるとき、その未確定オブジェクトを確定オブジェクトとする。未確定オブジェクトの情報をもとに生成した、領域幅、領域高さ、移動速度の各標準偏差のうち、少なくとも一つの標準偏差が、パラメータにより設定された許容標準偏差(s)より大きいとき、出現領域のばらつきが大きいとして、この未確定オブジェクトの追跡を終了する。不要オブジェクト除去部157dによりこの未確定オブジェクトを削除する。
【0060】
この未確定オブジェクトの追跡処理において、確定オブジェクトとなる未確定オブジェクトについて、当該オブジェクトの矩形の領域から局所領域(A1〜A3)の画像(P1〜P3)を切り出し、この切り出した画像パターン(P1〜P3)をマッチング評価の対象となる初回のパターンモデル(テンプレート)として画像処理記憶部13に設けられたパターンモデル保持部に保持する局所領域のパターン抽出処理が実施される。
【0061】
この判定で、確定オブジェクトと判定されたオブジェクトに対して、確定オブジェクト追跡部157aは、予測方向と領域幅、領域高さ、移動速度の変動率を算出し、これらの情報を用いて領域予測を行い、上記確定オブジェクトと判定されたオブジェクトについて継続して追跡処理を行う(ステップS13)。
【0062】
確定オブジェクト追跡部157aは、領域化処理部156が矩形の領域を抽出する都度、この領域化処理部156が抽出した矩形の領域に対し、未確定オブジェクト追跡部157bが未確定オブジェクトの追跡時において生成した時系列の位置情報に基づく最小自乗近似により求めた予測方向に従う予測位置に予測領域を生成し、この予測領域を用いて確定オブジェクトの追跡を開始する。
【0063】
この確定オブジェクトの追跡処理は、図5に示すように、前回抽出した矩形の領域(過去の領域)501の位置及び領域と、当該領域の重心位置cp(mid X,mid Y)と、予測方向(d)から求まる予測移動方向Pd(角度θb)と、移動速度とをもとに予測領域502を生成し、この予測領域502に、今回抽出した矩形の領域(現在の領域)503が交差するとき、今回抽出した矩形の領域503を確定オブジェクトとして、オブジェクトの追跡を続行する。この際の予測移動方向Pd(角度θb)の算出は、図6に示すように、位置統計情報から、最小二乗法による係数Aと係数Bを求め、相関係数を算出する。そして、現在位置情報(x)と最も古い位置情報(x)を利用して、近似直線の相関係数が高い場合は、最新、最古の位置情報xに対する近似直線上のYを求め、それぞれの位置情報から予測移動方向Pd(角度θa)を求める。相関が低い場合には最新、最古の座標情報yから予測移動方向(角度θb)を求め利用する。
【0064】
この確定オブジェクトの追跡処理において、予測領域502に、複数の領域(近傍領域)が交差するときは、この複数の近傍領域をそれぞれ候補領域として、交差面積が最も大きい候補領域から、順に、領域の妥当性判断を行い、妥当性の高い候補の領域を追跡対象領域(追跡する確定オブジェクト)とする。この際の妥当性の判定は、図7の領域幅、領域高さ、移動速度、それぞれの統計情報における各標準偏差×3(3σ)を用いて、領域幅、領域高さ、移動速度の各妥当性を判断し、(3σ)よりも差が大きいとき、妥当でないと判断する。領域幅、領域高さ、移動速度の少なくともいずれか2つの妥当性が確認されたとき、その候補領域を追跡対象領域(追跡する確定オブジェクト)とする。上記の妥当性が確認されないときは次の候補領域に対して上記同様の判定処理を行う。追跡対象領域が確定した時、その領域情報を追加して、領域幅統計情報、領域高さ統計情報、移動速度統計情報、予測方向の更新を行う。追跡対象領域が確定できなかった場合は、予測領域を現在領域としてこれら統計情報、予測方向の更新を行う。この確定オブジェクトの追跡処理は、予測領域上に1つも交差する領域が存在しない状態が連続して発生し、設定されたパラメータ値に従う予測情報による連続追跡回数(例えば5回)に達した場合、又は総追跡回数(例えば300回)に達した場合をもって終了する。
【0065】
この確定オブジェクトの追跡処理において、追跡する確定オブジェクトであると判定され、妥当性が確認された追跡対象領域(近傍領域)に対して、すなわち妥当性ありと判定された確定オブジェクト(候補)に対して、追跡中の確定オブジェクトを同定する確定オブジェクトの同定処理が実施される。この同定処理を含めた確定オブジェクトの追跡処理手順を図9に示している。同図において、上記した確定オブジェクトの追跡処理手順をステップS21〜S27に示し、確定オブジェクトを同定する確定オブジェクトの同定処理手順をステップS30(S31〜S34)に示している。また図9に示すステップS31の詳細を図10に示している。
【0066】
上記した、新規オブジェクトの登録処理(ステップS15)と、未確定オブジェクトの追跡処理(ステップS14)と、確定オブジェクトの追跡処理(ステップS13)とを繰り返し実行することによって、カメラ11で撮影した画面上の変化領域の追跡処理を効率よく実行することができる。また、上記した領域追跡処理部157の各処理機能をプログラムパッケージ化して提供することにより、既存の画像処理システムにおいて、未確定オブジェクト追跡処理機能と、確定オブジェクト追跡処理機能とを組み合わせた、簡素で高速な処理を可能にした画像追跡処理システムを容易に構築することができる。
【0067】
次に図9乃至図14を参照して、追跡中の確定オブジェクトを同定する確定オブジェクトの同定処理動作を説明する。確定オブジェクトの追跡処理手順を図9に示し、この図9に示す確定オブジェクトの追跡処理において実施されるパターンマッチングによる類似判定処理手順を図10に示し、このパターンマッチングによる類似判定処理動作を説明するための相関判定用パラメータテーブル(CC−TBL)と追跡オブジェクトの存在位置(PF)との関係を図11に示し、このパターンマッチングが実施される局所領域(A1〜A3)の設定例を図12乃至図14に示している。なお、ここでは一例として追跡オブジェクトの存在位置(PF)を、足元位置(矩形下端中央位置)としている。
【0068】
また、追跡中の確定オブジェクトを同定する確定オブジェクトの同定処理に用いられるマッチング評価式として、ここでは、(1)式に示されるSSD(輝度値の差の二乗和)と、(2)式に示されるSAD(輝度値の差の絶対値和)と、(3)式に示されるNCC(Normalized Cross-Correlation:正規化相互相関)と、(4)式に示されるZNCC(Zero-means Normalized Cross-Correlationゼロ平均正規化相互相関)の4種の評価式が用意され、その1種の評価式が外部パラメータにより選択される(式中のIm及びTmは、入力画像、テンプレート画像のそれぞれ平均値を表す)。(1)式に示されるSSDと(2)式に示されるSADは、それぞれ値が小さいほど類似性が高く、(3)式に示されるNCCと(4)式および(5)式に示されるZNCCは、それぞれ1(上限)に近いほど類似性が高くなることから、確定オブジェクトを同定する確定オブジェクトの同定処理に参照される相関判定用パラメータテーブル(CC−TBL)には、選択された評価式に固有の値をもつ閾値(相関係数)が設定される。
【数1】
【0069】
【数2】
【0070】
【数3】
【0071】
【数4】
【0072】
【数5】
【0073】
追跡中の確定オブジェクトを同定する確定オブジェクトの同定処理を実施するに際し、初期設定の段階で、追跡中の確定オブジェクトを同定するためのマッチング評価式が選択されるとともに、この評価式に適合したパターンマッチング判定用の閾値となる相関係数が相関判定用パラメータテーブル(CC−TBL)に設定される。またオブジェクトの追跡時に抽出される矩形の領域(AS)に対して、追跡オブジェクトの足元位置(PF)、およびこの足元位置(PF)を基準位置とした局所領域(A1〜A3)がそれぞれ外部パラメータとして設定される。
【0074】
追跡中の確定オブジェクトを同定する確定オブジェクトの同定処理では、上述した未確定オブジェクトの追跡処理(図2に示すステップS14の追跡処理)において、未確定オブジェクトから確定オブジェクトとなる追跡中のオブジェクトが存在すると、当該オブジェクトの矩形の領域(AS)から局所領域(A1〜A3)の画像(P1〜P3)を切り出し、この切り出した画像パターン(P1〜P3)をマッチング評価の対象となる初回のパターンモデル(テンプレート)として画像処理記憶部13に設けられたパターンモデル保持部に保持する局所領域のパターン抽出処理が実施される。
【0075】
確定オブジェクト追跡部157aは、すでに図2に示すステップS13の処理で説明したように、未確定オブジェクト追跡部157bが複数回に亘り連続して追跡に成功した未確定オブジェクトを、確定オブジェクトとし、継続してオブジェクトを追跡処理する。ここでは、領域化処理部156が矩形の領域を抽出する都度、領域化処理部156が抽出した矩形の領域の情報と、未確定オブジェクト追跡部157bが未確定オブジェクトの追跡時において生成した時系列の位置情報に基づく最小自乗近似により求めた予測方向に従う予測位置および予測領域の情報とをもとに、確定オブジェクトの追跡を行う。この追跡過程において未確定オブジェクト追跡部157bが一定の期間に亘るオブジェクトの追跡処理で取得した、領域の幅、高さの平均値と標準偏差、および連続する画面相互の対応付けによって得られた画面上を移動する矩形の領域の速度の平均値と標準偏差などの情報を用いて、追跡に利用する領域(近傍領域)の妥当性をチェックする(図9ステップS21〜S27)。領域が不適当な場合は、上記予測情報を利用して追跡を継続する。領域が妥当であると判定されると(図9ステップS27 Yes)、この妥当性ありと判定された確定オブジェクトについて、現在追跡中の確定オブジェクトの同定処理が実施される(図9ステップS30)。この同定処理は矩形の領域(AS)内に設定された3領域(A1〜A3)の画像集合(P1〜P3)を判定対象に実施される。
【0076】
この同定処理は、確定オブジェクトの妥当性ありを判定する都度、当該オブジェクトの矩形の領域(AS)から局所領域(A1〜A3)の画像(P1〜P3)を切り出して、この切り出した確定オブジェクトの画像パターン(P1〜P3)と、パターンモデル保持部にテンプレートとして保持された既確定オブジェクトの画像パターン(P1〜P3)とを照合し、相関判定用パラメータテーブル(CC−TBL)に設定された追跡オブジェクトの足元位置(PF)の相関係数をもとにマッチング評価を実施して、追跡している確定オブジェクトの相関有無を判定し、妥当性ありを判定された確定オブジェクトが現在追跡中の確定オブジェクトであるか否かの類似判定を行う(図9ステップS31)。
【0077】
この類似判定処理で、追跡している確定オブジェクトの相関有りを判定すると(図9ステップS32 Yes)、画像処理記憶部13に設けられた類似判定フラグに相関ありのフラグを立て、現在追跡中の確定オブジェクトを同定して(最新の確定オブジェクトが現在追跡中の確定オブジェクトであることを確認して)、パターンモデル保持部にテンプレートとして保持されている画像パターン(P1〜P3)を新規確定オブジェクトから切り出した最新の画像パターン(P1〜P3)に更新し(テンプレートを更新し)、次回のマッチング評価の実施に備える(図9ステップS33)。
【0078】
また、上記妥当性の判定で、妥当性なしと判定された場合(図9ステップS27 No)、若しくは相関有無の判定で相関なしと判定された場合(図9ステップS32 No)は、近傍領域が存在しない、すなわち予測位置の近傍に領域が存在しないと判定された場合(図9ステップS25 No)と同様に、今回判定の対象となった確定オブジェクトを追跡中のオブジェクトから除外した予測扱いとし、上記したテンプレートの更新を行わずに次回のマッチング評価の実施に備える(図9ステップS34)。
【0079】
上記した、妥当性ありを判定された確定オブジェクトが現在追跡中の確定オブジェクトであるか否かの類似判定(図9ステップS31)における処理手順を図10に示している。
【0080】
この類似判定処理では、画像処理記憶部13に設けられた類似判定フラグに相関ありが初期設定された後(図10ステップS311)、相関判定用パラメータテーブル(CC−TBL)を参照して、妥当性ありと判定された確定オブジェクトの矩形の領域(AS)の足元位置(PF)の相関係数を取得する(図10ステップS312)。
【0081】
ここで足元位置(PF)の相関関数が未使用を示すoffであるときは、相関有無の判定処理を行わず、一意に相関ありと判定して次回の類似判定(マッチング評価の判定)に移行する(図10ステップS313 Yes)。
【0082】
また、相関判定用パラメータテーブル(CC−TBL)から取得した足元位置(PF)の相関関数が1以下の小数であるときは、
妥当性ありと判定された確定オブジェクトの矩形の領域(AS)から局所領域(A1〜A3)の画像(P1〜P3)を現在確定領域のオブジェクトパターンモデルとして取得し(図10ステップS314)、取得した新規確定オブジェクトの画像パターン(P1〜P3)と、パターンモデル保持部にテンプレート(既存オブジェクトパターンモデル)として保持された既確定オブジェクトの画像パターン(P1〜P3)とを照合して、相関判定用パラメータテーブル(CC−TBL)に設定された足元位置(PF)の相関係数をもとにマッチング評価を実施する(図10ステップS315〜S316)。
【0083】
ここで相関ありと判定されたときは、類似判定フラグに相関ありのフラグを立てた状態のまま今回の類似判定(マッチング評価の判定)を終える(図10ステップS316 Yes)。
【0084】
また相関なしと判定されたときは(図10ステップS316 No)、類似判定フラグに相関なしのフラグを立て次回の類似判定(マッチング評価の判定)に移行する(図10ステップS317)。
【0085】
このように、確定オブジェクトの追跡処理の都度、追跡中の確定オブジェクトを同定する確定オブジェクトの同定処理が実施されることから、追跡性能をより向上させた信頼性の高い動物体領域の移動監視が可能となる。
【0086】
この追跡対象となる、動物体を矩形で囲った確定オブジェクトの矩形の領域(AS)に、局所領域(A1〜A3)を設定する場合の具体例を図12乃至図14に示している。追跡対象となる動物体が人物である場合の局所領域(A1〜A3)の設定例を図12に示し、追跡対象となる動物体が車両である場合の局所領域(A1〜A3)の設定例を図13および図14に示している。道路上の斜め上方から車両を撮影した例を図13に示し、道路上の斜め上側方から車両を撮影した例を図14に示している。ここではいずれの場合も矩形の領域(AS)内において、局所領域を符号A1,A2,A3で示す3箇所に設定した例を示している。この局所領域(A1〜A3)は、各領域がそれぞれ8画素×8画素のドットマトリクスにより構成され、領域(AS)の高さサイズをHとし、幅をWとしたとき、領域(AS)の底辺の1/2位置を追跡オブジェクトの足元位置(PF)とし、この足元位置(PF)を鉛直方向下端として、領域(AS)の鉛直方向上端から下端に向けて3部位にそれぞれ係数(P1,P2,P3=外部パラメータ)を乗じた8画素×8画素の矩形画素集合(ブロック画像)を設定する。ここでは、いずれの場合も、1/2H以上の高さ位置を下限に、P1=11/12、P2=3/4、P3=1/2の3領域がデフォルト値として与えられ、それぞれテンプレートとして用いられる。
【0087】
因みにこの3領域は、図12に示す人物である場合、人物の生体計測から人体の身長を用いて人体寸法の概算値が求められ、急激な変化が激しい下半身を除き、急激な変化が少ない、頭部、胸部、腰部をテンプレートとして利用している。また図13および図14に示す車両の場合も、車両間隔や影部分やカメラの設置位置などを考慮して1/2H以上の高さ位置を下限に、P1=11/12、P2=3/4、P3=1/2の3領域がデフォルト値として与えられている。この領域(AS)内の3部位をテンプレートの抽出領域となる局所領域(A1〜A3)としたことで、最も効果の高い追跡性能が得られた。この局所領域(A1〜A3)によるピンポイントのパターンマッチング評価による確定オブジェクトの同定処理により、実時間処理機能に影響を及ぼすことのない軽度の処理負荷の増加で、追跡性能をより向上させた画像処理システムが構築可能である。
【0088】
なお、上記した実施形態では、確定オブジェクトの矩形の領域(AS)内に、3部位の局所領域(A1〜A3)を設定しているが、これに限らず、システムの処理性能や処理能力を考慮して2部位以上の任意の部位の局所領域の設定が可能である。また、上記実施形態では、追跡中の確定オブジェクトを同定する確定オブジェクトの同定処理に用いられるマッチング評価式として、ここでは、(1)式に示されるSSD(輝度値の差の二乗和)と、(2)式に示されるSAD(輝度値の差の絶対値和)と、(3)式に示されるNCC(Normalized Cross-Correlation:正規化相互相関)と、(4)式に示されるZNCC(Zero-means Normalized Cross-Correlationゼロ平均正規化相互相関)の4種の評価式を用意した例を示したが、これに限らず、例えば1種の評価式のみを用いた機能設計であってもよい。要はこの発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更や処理手順の変更が可能である。
【符号の説明】
【0089】
11…カメラ、12…キャプチャ部、13…画像処理記憶部、15…画像処理部、16…表示部、151…前処理部、152…差分処理部、153…二値化処理部、154…ノイズ除去フィルタ、156…領域化処理部、157…領域追跡処理部、157a…確定オブジェクト追跡部、157b…未確定オブジェクト追跡部、157c…新規オブジェクト登録部、157d…不要オブジェクト除去部、CC−TBL…相関判定用パラメータテーブル、AS…矩形領域、PF…追跡オブジェクトの存在位置(例えば、矩形下端中央位置とする場合は、オブジェクトの足元位置)、A1〜A3…局所領域、P1〜P3…画像パターン。
図1
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