特許第6286490号(P6286490)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286490
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】モータの放熱構造
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/06 20060101AFI20180215BHJP
   H02K 5/20 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   H02K9/06 F
   H02K5/20
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-146153(P2016-146153)
(22)【出願日】2016年7月26日
(65)【公開番号】特開2017-34985(P2017-34985A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2016年7月26日
(31)【優先権主張番号】104124412
(32)【優先日】2015年7月28日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501164676
【氏名又は名称】周 文三
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】周 文三
【審査官】 津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3206833(JP,U)
【文献】 実開昭58−022848(JP,U)
【文献】 実開昭64−050669(JP,U)
【文献】 実開昭54−077904(JP,U)
【文献】 実開昭55−062161(JP,U)
【文献】 米国特許第03021442(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02071710(EP,A1)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング、回転軸、前カバー及び放熱ファンを備えたモータの放熱構造であって、
前記ハウジングは、内部空間を有し、一端に形成された前面開口部と、他端に閉止した後壁と、を有し、前記後壁には、複数の排風口が間隔をあけて形成され、
前記回転軸は、前記ハウジング内に回転可能に取付けられ、前記後壁から延びた前記回転軸は、一端に設けられた出力端と、他端に設けられた連結端と、を有し、
前記前カバーは、前記回転軸が挿設される軸孔を有する中心ハブが中央部に形成され、
前記回転軸の前記連結端が前記中心ハブの前記軸孔から延び、前記中心ハブ内で軸受が覆われ、
前記放熱ファンは、前記回転軸の前記連結端に嵌着されて前記回転軸と同期で回転し、
3つの周縁部がプレス成形により前記ハウジングから分離されることにより、突出フィン、および前記突出フィンに対応する吸気口が複数形成され、前記突出フィンは、前記ハウジング上に立設し、前記ハウジングの直径の水平断面Cを基準とし、前記突出フィンの前記回転軸側の立設角度θ2は、θ2>90度であり、
2つの隆起した前記突出フィン間には、前後が貫通されて空気流が抵抗なく流れ込みやすいように通風路が形成され、
前記放熱ファンが回転して発生した円形状に回る空気流は、前記突出フィンにより遮られ、前記吸気口を介して前記ハウジングの内部空間へ誘引されることを特徴とする、モータの放熱構造。
【請求項2】
前記前カバーの前記軸孔の外周には、流通口が間隔をおいて複数形成され、
前記前カバーには、完全に貫通した貫通孔が形成され、前記ハウジングの前記前面開口部に前記前カバーが結合されると、導電用途の導電挿入片が前記前カバーの前記貫通孔に挿通されて前記貫通孔から外部へ延びて固定状態が形成され、
前記前カバーの内表面には、装着筒が設けられ、前記ハウジング内に設けたダボロッドは、前記装着筒に嵌合され、前記ハウジングの前記前面開口部には、前記前カバーが固定され、
前記前カバーには、装着円孔が形成され、前記ハウジング内に設けた位置決め部には、
ネジが螺着され、前記ハウジングに前記前カバーが結合されると、前記回転軸の最外端に前記連結端が設けられることを特徴とする、請求項1に記載のモータの放熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの放熱構造に関し、特に、モータに設けられた複数の放熱経路により効果的に放熱を行い、モータのハウジング内に熱が溜まることを防いで、モータ運転の最高出力パワーを得て、モータの運転効率を高めるとともに、モータの使用寿命を延ばす、モータの放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の科学技術分野においてモータは広く利用されている動力機器である。しかし高パワーの大型モータ又は低パワーの小型モータであっても、モータのロータが回転すると、モータのハウジング内に熱が溜まり易く、モータが運転する際に発生する熱を適時排出させる放熱構造が足りない場合、モータ内部に溜まった熱により磁石の磁力が低下し、それに伴ってモータの運転効率が次第に低下する上、一定の温度に達すると、電機子中のエナメル線などの絶縁物が損壊したり、エナメル線に短絡が起きてモータ全体が焼損したりするなどの虞があった。このような欠点を改善するために、現在よく利用されている技術は、モータの中心部に設けられた回転軸の一端に有する放熱ファンにより、モータの運転中に上昇する温度を抑制する技術であるが、このような技術は、放熱ファンが空気流をモータのハウジング外周表面に吹き付けるだけであり、モータのハウジング内へ空気流を直接送りこんでモータ内部の熱を適時放出させることはできなかった。そのため、従来技術では、使用するモータのハウジング内に熱が溜まり易いという欠点を改善することはできなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の第1の目的は、モータが有する複数の放熱経路により効果的に放熱を行うモータの放熱構造を提供することにある。
本発明の第2の目的は、モータのハウジングの円周縁上に、プレス成形により、間隔をあけて形成された複数の突出フィンと、突出フィンに対応するように形成された吸気口と、が形成され、円形状に回る空気流が突出フィンにより遮られ、吸気口を介してモータのハウジングの内部空間に空気流が誘引され、モータの運転によりハウジングの内部空間に発生した熱を適時放出する、複数の放熱経路を有するモータの放熱構造を提供することにある。
本発明の第3の目的は、ハウジングの周面上に形成された隆起した2つの突出フィン間に、前後が貫通されて空気流が抵抗なく流れ込みやすいように通風路が形成され、ハウジング内に誘引されない空気流は、2つの突出フィン間の通風路を介してハウジングの外側も同時に放熱される、モータの放熱構造を提供することにある。
本発明の第4の目的は、高温環境下で放熱モータを運転する場合でも、放熱モータが焼損することを防ぎ、放熱モータを70℃の密閉空間で長時間連続運転するテストでも焼損することがなかった、モータの放熱構造を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るモータを示す分解斜視図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係るモータを示す斜視図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係るモータの別の角度からの斜視図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係るモータの前カバーの内側を示す斜視図である。
図5図5は、本発明の一実施形態に係るモータの放熱構造を示す平面図である。
図6図6は、本発明の一実施形態に係るモータに、空気流を誘引してモータのハウジング内に溜まった熱を放出する使用状態を示す図5の線E−Eに沿った断面図である。
図7図7は、本発明の一実施形態に係るモータに、空気流を誘引してモータのハウジング内に溜まった熱を放出する使用状態を示す図5の線F−Fに沿った断面図である。
図8図8は、本発明の一実施形態に係るモータのハウジング内の高温の空気流を、ハウジングの後壁の排風口を介して放出する使用状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
図1図3を参照する。図1図3に示すように、本発明の一実施形態に係る複数の放熱経路を有するモータの放熱構造は、内部空間15を有するハウジング1を含む。ハウジング1の一端には、前面開口部10が形成される。ハウジング1の他端には、閉止した後壁11が形成される。後壁11には、複数の排風口14が間隔をあけて形成され、ハウジング1上にはプレス成形によりハウジング1から一部分離された突出フィン12と、突出フィン12に対応する吸気口13と、が間隔をおいて複数形成される。突出フィン12は、ハウジング1上に立設し、ハウジング1の直径の水平断面Cを基準とする。突出フィン12の回転軸8側の立設角度θ2は、θ2>90度である(図5を参照する)。2つの隆起した突出フィン12間には、前後が貫通されて空気流が抵抗なく流れ込みやすいように通風路16が形成される。ハウジング1の内部空間15内には、モータ構造に必要な部品(例えば、ロータ2、コイル3及び磁石4)が設置され、ハウジング1の後壁11及び前面開口部10の軸線上には回転軸8が配設される。後壁11から延びた回転軸8は、一端に出力端80が設けられる。出力端80には、関連した伝動部材が接続される。回転軸8が回転するとそれに伴いモータが作動する(図7を参照する)。前述したモータのハウジング1の外周には、金属からなる電導コイル9が外嵌され、電導コイル9が導磁作用を有するため、モータが作動するときの運転効率が向上する。
【0006】
前カバー6は、軸孔61を有する中心ハブ60が中央部に形成される。軸孔61の外周には、流通口64が間隔をおいて複数形成される。前カバー6の内表面には、装着筒68,69と、完全に貫通した貫通孔66,67とが形成される(図4を参照する)。ハウジング1の前面開口部10に前カバー6が結合されると、導電用途の導電挿入片81,82が前カバー6の貫通孔66,67に挿通されて貫通孔66,67から外部へ延び、ハウジング1内に設けたダボロッド83,84が装着筒68,69に嵌着されるため、ハウジング1の前面開口部10に前カバー6が固定される。勿論、前カバー6に装着円孔65が形成され、ハウジング1内に設けた位置決め部(図示せず)にネジ(図示せず)が螺着され、ハウジング1に前カバー6が結合されると、回転軸8の最外端(即ち連結端89)が中心ハブ60の軸孔61から延び、中心ハブ60内で軸受(図示せず)が覆われるため、回転軸8が円滑に回転することができる。
【0007】
放熱ファン7は、軸孔70を有する。放熱ファン7は、軸孔70を介して回転軸8の連結端89に嵌着される。
【0008】
図2及び図3は、ハウジング1、前カバー6及び放熱ファン7を組み合わせた状態を示す。図5に示すように、モータの回転軸8が動作すると、放熱ファン7が同期で回転して円形状に回る空気流が発生し、放熱ファン7の右側(図5で示された方向で見て右側)の気流が吸引されて放熱ファン7の左側へ案内され、複数の放熱経路を介してハウジング1の内部空間15に空気流が誘引され、モータの運転によりハウジング1の内部空間15に発生する熱を適時、効率良く放出することができる。本発明の複数の放熱経路の構造設計及びその効果を図5図6図7及び図8に示す。前カバー6及び放熱ファン7に発生する空気流は、両者がモータの回転軸8の軸線方向で互いに対向しているため、円形状に回る空気流が、前カバー6の流通口64からモータのハウジング1の内部空間15に誘引される上、円形状に回る空気流の大部分が、図6及び図7の経路Bに沿って、前カバー6の円形面積範囲の外側部分より大きい円形状に回る空気流の部分が突出フィン12により遮られ、吸気口13を介してモータのハウジング1の内部空間15に空気流が誘引され、ハウジング1内に設けたロータ2、コイル3及び磁石4の温度が上昇することを防ぎ、モータの運転によりハウジング1の内部空間15に発生する高温の空気流をハウジング1の後壁11の排風口14から適時、放出する(図7を参照する)。また、図5の経路Dに示すように、ハウジング1内に誘引されない空気流は、2つの突出フィン12間の通風路16を介してハウジング1の外表面に吹き付けられ、ハウジング1の外側も同時に放熱される。
【0009】
上述したことから分かるように、本発明のモータのハウジング1上に設けた複数の突出フィン12及び吸気口13の構造により放熱経路Bが形成される。モータのハウジング1の周面上に隆起した2つの突出フィン12間には、前後が貫通されて空気流が抵抗なく流れ込みやすいように通風路16が形成されている。この通風路16により放熱経路Dが形成され、ハウジング1内に誘引されない空気流が2つの突出フィン12間に形成された通風路16を介してハウジング1の外表面に吹き付けられ、ハウジング1の外側も同時に放熱される。このように複数の放熱経路を形成して効率良く放熱を行い、モータのハウジング1内に熱が溜まることを防ぎ、モータ運転の最高出力パワーを得て、モータの運転効率を高めるとともに、モータの使用寿命を延ばす。このように本発明は、高温環境下で放熱モータを運転しても、放熱モータが焼損することを防ぐことができるため、実用的で進歩性を有する。
【符号の説明】
【0010】
1 ハウジング
2 ロータ
3 コイル
4 磁石
6 前カバー
7 放熱ファン
8 回転軸
9 電導コイル
10 前面開口部
11 後壁
12 突出フィン
13 吸気口
14 排風口
15 内部空間
16 通風路
61 軸孔
64 流通口
65 装着円孔
66 貫通孔
67 貫通孔
68 装着筒
69 装着筒
70 軸孔
80 出力端
81 導電挿入片
82 導電挿入片
83 ダボロッド
84 ダボロッド
89 連結端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8