特許第6286492号(P6286492)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6286492ポリチオエーテル、湿分硬化型組成物ならびにそれらの製造及び使用のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286492
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】ポリチオエーテル、湿分硬化型組成物ならびにそれらの製造及び使用のための方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20180215BHJP
   C08L 81/02 20060101ALI20180215BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20180215BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20180215BHJP
   C08G 59/66 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   C09K3/10 Z
   C08L81/02
   C08L63/00 A
   C08K3/22
   C08G59/66
   C09K3/10 L
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-151303(P2016-151303)
(22)【出願日】2016年8月1日
(62)【分割の表示】特願2014-552288(P2014-552288)の分割
【原出願日】2013年1月10日
(65)【公開番号】特開2017-2313(P2017-2313A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2016年8月1日
(31)【優先権主張番号】13/348,718
(32)【優先日】2012年1月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502328466
【氏名又は名称】ピーアールシー−デソト インターナショナル,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ペイジェル、カリッサ
(72)【発明者】
【氏名】レイズ、ジュニア アルフレド エム.
(72)【発明者】
【氏名】ケルジアン、ラクエル エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ザブレッキー、ゴードン
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−156650(JP,A)
【文献】 特開昭62−089767(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/163202(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/10− 3/12
C09D 1/00−201/10
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空宇宙用シーラント組成物において、
(a)シリル官能性プレポリマーであって、以下の(A)及び(B)
(A)チオールを末端基に有する化学式(IIIa)のポリチオエーテルとチオールを末端基に有する化学式(VI)のポリチオエーテルとを含んでなる、チオールを末端基に有したポリチオエーテルプレポリマー
HS−R−[−S−(CH−O−[−R−O−]−(CH−S−R−SH (IIIa)
B(−A−SH) (VI)
(式中、
各Rが、独立して、C2〜10n−アルキレン基、C2〜6分枝鎖状アルキレン基、C6〜8シクロアルキレン基、C6〜10アルキルシクロアルキレン基、複素環式基、−[(−CH−)−X−]−(CH−基、及び、少なくとも1つの−CH−単位が、メチル基で置換されている−[(−CH−)−X−]−(CH−基から選択され、 各Rが、独立して、C2〜10n−アルキレン基、C2〜6分枝鎖状アルキレン基、C6〜8シクロアルキレン基、C6〜14アルキルシクロアルキレン基、複素環式基、及び−[(−CH−)−X−]−(CH−基から選択され、 各Xが、独立して、O、S、及び−NR−基から選択され、ここで、Rが、水素及びメチル基から選択され、 mが、1〜50の範囲にあり、 nが、1〜60の範囲の整数であり、 pが、2〜6の範囲の整数であり、 qが、1〜5の範囲の整数であり、 rが、2〜10の範囲の整数であり、
Aは化学式(I)の構造を示し、
−R−[−S−(CH−O−[−R−O−]−(CH−S−R− (I)
(m,n,R,Rは化学式(IIIа)で定義したものと同じ)
Bはポリ官能基剤のz価の残留物であり、
zは2.0を超える平均値を有する)と、
(B)化学式(R)(R)(R)SiXを有するハロシランであって、
XはCl,Br,Iから選択され、
,R,Rはそれぞれ独立して、C1〜6n−アルキル基、C1〜6分岐鎖状アルキル基、置換C1〜6n−アルキル基、及びフェニル基からなる群から選択される、ハロシランとからなる反応物の反応生成物からなる、シリル官能性プレポリマーと、
(b)化学量論量の95%〜125%の分量のポリエポキシドと、
(c)前記組成物の総重量に対して5重量%〜10重量%の塩基性酸化物とを含んでなる、航空宇宙用シーラント組成物。
【請求項2】
pは2であり、
XはOであり、
qは2であり、
rは2であり、
はエチレンであり、
mは2であり、
nは9であり、
B(−A)はシアヌル酸トリアリルであり、請求項1に記載の航空宇宙用シーラント組成物。
【請求項3】
前記塩基性酸化物は、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の航空宇宙用シーラント組成物。
【請求項4】
前記塩基性酸化物は、酸化カルシウムである、請求項1に記載の航空宇宙用シーラント組成物。
【請求項5】
前記チオールを末端基に有したポリチオエーテルプレポリマーは2.1〜2.6の平均チオール官能性を特徴とする、請求項1に記載の航空宇宙用シーラント組成物。
【請求項6】
,R,Rはそれぞれエチル基である、請求項1に記載の航空宇宙用シーラント組成物。
【請求項7】
は−[(−CH−)−X−]−(CH−であり、XはOであり、
それぞれのRはC2〜10n−アルキレン基であり、
mは1〜4である、請求項1に記載の航空宇宙用シーラント組成物。
【請求項8】
前記ポリエポキシドはヒダントインジエポキシド、ビスフェノール−Aのジグリシジルエーテル、ビスフェノール−Fのジグリシジルエーテル、ノボラック型エポキシド及びこれらの組泡エレクトロルミネセンスから選択される、請求項1に記載の航空宇宙用シーラント組成物。
【請求項9】
前記ポリエポキシドはノボラック型エポキシドである、請求項1に記載の航空宇宙用シーラント組成物。
【請求項10】
は−[(−CH−)−X−]−(CH−であり、XはOであり、
それぞれのRはC2〜10n−アルキレン基であり、
mは1〜4であり、
前記ポリエポキシドはノボラック型エポキシドからなり、
前記塩基性酸化物は酸化カルシウムからなる、請求項1に記載の航空宇宙用シーラント組成物。
【請求項11】
シーラントとして調剤される、請求項1に記載の航空宇宙用シーラント組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の航空宇宙用シーラント組成物から調整された、硬化されたシーラント。
【請求項13】
AS 5127/1の段落7.8に準拠して測定した際に1.38Mpa(200psi)を超える重ねせん断強度を有する、請求項12に記載の硬化されたシーラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空宇宙用途及び他の用途に使用するためのポリチオエーテル及びポリチオエーテルを含む組成物に関する。より詳細には、本発明は、ポリチオエーテルを含む一液湿分硬化型組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
航空宇宙用途及び他の用途に有用なシーラントは、予備混合凍結組成物(PMF:pre−mixed frozen composition)又は二液系であることが多い。二液系では、第1の成分は、ポリスルフィドポリマー及び/又はポリチオエーテルポリマーなどの主要なポリマーを、いくつかのさらなる材料とともに含有する。第1の成分は、硬化剤を含有せず、硬化剤は、代わりに第2の成分中に含まれる。2つの成分が製造され、別々に包装され、使用の直前に一緒に混合される。
【0003】
使用前に硬化ペースト及び基剤を混合することを必要とする2成分系と異なり、PMFは、温度などの外部要因によって硬化され得る。このため、PMFは、硬化反応を抑制するか又は遅らせるために、例えば、−40°F〜−80°Fで凍結されなければならない。PMFが、後に室温になると、硬化速度は著しく上昇する。PMFは、混合せずに使用できる状態になるという利便性を提供するため、特定の二液系よりコスト及び時間効率が高くなり得る。しかしながら、既存のPMFは、貯蔵寿命が限られ、−40°F〜−80°Fなどの非常に低い温度で貯蔵しなければならず、基剤成分及び活性剤を混合した後、直ぐに、硬化反応を遅らせるために凍結することを必要とする。使用前に低温でPMFを貯蔵する必要があることは、不便であり、及び/又はコストが高くなり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
結果として、周囲温度で長い貯蔵寿命を示すが、基材に適用され、(大気中湿分などの)湿分に曝された場合、硬化して、良好なせん断強度を含む許容できる特性を有する硬化されたシーラントを形成する一液型の航空宇宙用シーラント組成物を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様において、(a)式(I):
−R−[−S−(CH−O−[−R−O−]−(CH−S−R− (I)
(式中、(i)各Rが、独立して、C2〜10n−アルキレン基、C2〜6分枝鎖状アルキレン基、C6〜8シクロアルキレン基、C6〜10アルキルシクロアルキレン基、複素環式基、−[(−CH−)−X−]−(CH−基、及び−[(−CH−)−X−]−(CH−基から選択され、ここで、少なくとも1つの−CH−単位が、メチル基で置換され;(ii)各Rが、独立して、C2〜10n−アルキレン基、C2〜6分枝鎖状アルキレン基、C6〜8シクロアルキレン基、C6〜14アルキルシクロアルキレン基、複素環式基、及び[(−CH−)−X−]−(CH−基から選択され;(iii)各Xが、独立して、O、S、及びNR−基から選択され、ここで、Rが、H及びメチル基から選択され;(iv)mが、0〜50の範囲であり;(v)nが、1〜60の範囲の整数であり;(vi)pが、2〜6の範囲の整数であり;(vii)qが、1〜5の範囲の整数であり;(viii)rが、2〜10の範囲の整数である)
で表される構造を含む主鎖と;(b)式(II):
【0006】
【化1】
【0007】
(式中、R、R、及びRがそれぞれ、独立して、C1〜6n−アルキル基、C1〜6分枝鎖状アルキル基、置換C1〜6n−アルキル基、及びフェニル基から選択される)で表される、分子当たり少なくとも2つの基とを含むポリチオエーテルが開示される。上記のポリチオエーテルは、本明細書において「シリル官能性ポリチオエーテル」と呼ばれることがある。
【0008】
第2の態様において、シリル官能性ポリマーと、ポリエポキシドと、塩基性酸化物とを含む、一液シーラント組成物などの組成物が開示される。
第3の態様において、シリル官能性ポリチオエーテルを作製するための方法が開示される。特定の実施形態において、この方法は、チオール官能性ポリチオエーテルをハロシランと反応させる工程を含む。特定の方法において、チオール官能性ポリチオエーテルは、式(I):
−R−[−S−(CH−O−[−R−O−]−(CH−S−R− (I)
(式中、(i)各Rが、独立して、C2〜10n−アルキレン基、C2〜6分枝鎖状アルキレン基、C6〜8シクロアルキレン基、C6〜10アルキルシクロアルキレン基、複素環式基、−[(−CH−)−X−]−(CH−基、及び−[(−CH−)−X−]−(CH−基から選択され、ここで、少なくとも1つの−CH−単位が、メチル基で置換され;(ii)各Rが、独立して、C2〜10n−アルキレン基、C2〜6分枝鎖状アルキレン基、C6〜8シクロアルキレン基、C6〜14アルキルシクロアルキレン基、複素環式基、及び−[(−CH−)−X−]−(CH−基から選択され;(iii)各Xが、独立して、O、S、及び−NR−基から選択され、ここで、Rが、H及びメチル基から選択され;(iv)mが、0〜50の範囲であり;(v)nが、1〜60の範囲の整数であり;(vi)pが、2〜6の範囲の整数であり;(vii)qが、1〜5の範囲の整数であり;(viii)rが、2〜10の範囲の整数である)
で表される構造を含む。ハロシランは、一般式:(R)(R)RSiX(式中、Xがハロゲンであり、R、R、及びRがそれぞれ、独立して、C1〜6n−アルキル基、C1〜6分枝鎖状アルキル基、置換C1〜6n−アルキル基、及びフェニル基から選択される)によって表され得る。
【0009】
第4の態様において、一液湿分硬化型組成物を作製するための方法が開示される。これらの方法は、ポリエポキシドを、本開示によって提供される方法によって調製されるポリチオエーテルと組み合わせる工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な説明のために、本開示によって提供される実施形態が、矛盾する明示的な記載がある場合を除き、様々な代替的な変形例及び工程順序を想定し得ることが理解されるべきである。さらに、いずれかの実施例の中を除いて、又は特に示される場合を除いて、例えば、本明細書及び特許請求の範囲に使用される成分の量を表す全ての数値は、いず
れの場合も「約」という用語によって修飾されることが理解されるべきである。したがって、矛盾する指示がない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、近似値であり、実施形態によって得られるべき所望の特性に応じて変化し得る。少なくとも、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限しようとするものとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数値を考慮して、通常の四捨五入法を用いて解釈されるべきである。
【0011】
実施形態の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、具体例で示される数値は、できる限り正確に報告される。しかしながら、いずれの数値も、そのそれぞれの試験測定に見られる標準偏差から必然的に生じる多少の誤差を本質的に含む。
【0012】
また、本明細書に記載されるいずれの数値範囲も、その中に含まれる全ての部分的な範囲を含むことが意図されることが理解されるべきである。例えば、「1〜10」の範囲は、記載される最小値の1と、記載される最大値の10との間の(及びそれらを含む)全ての部分的な範囲を含む、すなわち、1以上の最小値及び10以下の最大値を有することが意図される。
【0013】
上に示されるように、本開示によって提供される特定の実施形態は、(a)式(I):−R−[−S−(CH−O−[−R−O−]−(CH−S−R− (I)
(式中、(i)各Rが、独立して、C2〜10n−アルキレン基、C2〜6分枝鎖状アルキレン基、C6〜8シクロアルキレン基、C6〜10アルキルシクロアルキレン基、複素環式基、−[(−CH−)−X−]−(CH−基、及び−[(−CH−)−X−]−(CH−基から選択され、ここで、少なくとも1つの−CH−単位が、メチル基で置換され;(ii)各Rが、独立して、C2〜10n−アルキレン基、C2〜6分枝鎖状アルキレン基、C6〜8シクロアルキレン基、C6〜14アルキルシクロアルキレン基、複素環式基、及び−[(−CH−)−X−]−(CH−基から選択され;(iii)各Xが、独立して、O、S、及び−NR−基から選択され、ここで、Rが、H及びメチル基から選択され;(iv)mが、0〜50の範囲であり;(v)nが、1〜60の範囲の整数であり;(vi)pが、2〜6の範囲の整数であり;(vii)qが、1〜5の範囲の整数であり;(viii)rが、2〜10の範囲の整数である)
で表される構造を含む主鎖と;(b)式(II):
【0014】
【化2】
【0015】
(式中、R、R、及びRが、独立して、C1〜6n−アルキル基、C1〜6分枝鎖状アルキル基、置換C1〜6n−アルキル基、及びフェニル基から選択され、それぞれ、独立して、C1〜6アルキル基、フェニル基、及びC1〜6クロロアルキル基から選択される基である)
で表される、分子当たり少なくとも2つの基とを含むポリチオエーテルに関する。特定の実施形態において、R、R、及びRのそれぞれが、独立して、C1〜6アルキル基、フェニル基、及びC1〜6クロロアルキル基から選択される。式(II)の特定の実施
形態において、R、R、及びRのそれぞれが、独立して、C1〜6アルキル、及び特定の実施形態において、C1〜3アルキルから選択される。式(II)の特定の実施形態において、R、R、及びRのそれぞれが、同じであり、メチルであり、特定の実施形態において、エチルであり、及び特定の実施形態において、プロピルである。式(II)の特定の実施形態において、R、R、及びRのそれぞれが、独立して、エチル、メチル、及びプロピルから選択され;及び特定の実施形態において、エチル及びメチルから選択される。式(II)の特定の実施形態において、置換基は、ハロゲン、−OH、及び−NHから選択される。
【0016】
及び/又はRの特定の実施形態において、複素環式基は、O、S、及び−NR−から選択される1つ以上のヘテロ原子を含有する5員複素環式基又は6員複素環式基であり、ここで、Rが、水素及びC1〜3アルキルから選択される。
【0017】
様々な方法が、このようなポリチオエーテルを調製するのに使用され得る。特定の実施形態において、シリル官能性ポリチオエーテルは、チオール官能性ポリチオエーテルをハロシランと反応させることによって調製され得る。本明細書に開示される方法において使用するのに好適な、好適なチオール官能性ポリチオエーテルの例、及びその生成方法が、米国特許第6,172,179号明細書の第2欄第29行〜第4欄第22行;第6欄第39行〜第10欄第50行;及び第11欄第65行〜第12欄第22行に記載されており、これらの引用部分は、参照により本明細書に援用される。このようなチオール官能性ポリチオエーテルは、二官能性、すなわち、2つの末端基を有する直鎖状ポリマーであっても、又は多官能性、すなわち、3つ以上の末端基を有する分枝鎖状ポリマーであってもよい。好適なチオール官能性ポリチオエーテルは、カルフォルニア州シルマーのピーアールシー・デソト・インターナショナル・インコーポレーテッド(PRC−DeSoto International Inc.,Sylmar,CA)からパーマポール(PERMAPOL)P3.1Eとして市販されている。
【0018】
特定の実施形態において、チオール官能性ポリチオエーテルとしては、式(III):HS−R−[−S−(CH−O−[−R−O−]−(CH−S−R−SH (III)
(式中、R、R、m、及びnが、式(I)について定義されるとおりである)
のものが挙げられる。
【0019】
好適なチオール官能性ポリチオエーテルは、ジビニルエーテル又は複数のジビニルエーテルの混合物を、過剰のジチオール又は複数のジチオールの混合物と反応させることによって生成され得る。例えば、このようなチオール官能性ポリチオエーテルを調製するのに使用するのに好適なジチオールとしては、式(IV):
HS−R−SH (IV)
(式(IV)中のRが、C2〜10n−アルキレン基;C2〜6分枝鎖状アルキレン基(これは、例えば、ヒドロキシル基、メチル又はエチル基などのアルキル基、及び/又はアルコキシ基であり得る1つ以上の側基を有し得る);C6〜8シクロアルキレン基;C6〜10アルキルシクロアルキレン基;−[(−CH−)−X−]−(CH−基、又は−[(−CH−)−X−]−(CH−基(ここで、少なくとも1つの−CH−単位が、メチル基で置換され、ここで、pが、2〜6の範囲の値を有する整数であり、qが、1〜5の範囲の値を有する整数であり、rが、2〜10の範囲の値を有する整数であり、Xが、O、S又は別の二価ヘテロ原子ラジカルなどのヘテロ原子を含む);第二級又は第三級アミン基、すなわち、−NR−(ここで、Rが、水素及びメチルから選択される);又は別の置換された三価ヘテロ原子を表す)
で表されるものが挙げられる。特定の実施形態において、Xが、O及びSから選択され、ここで、式(IV)中のRは、−[(−CH−)−O−]−(CH−又は
−[(−CH−)−S−]−(CH−である。特定の実施形態において、p及びrが等しい(p及びrが両方とも2である場合など)。
【0020】
好適なジチオールの例としては、例えば、1,2−エタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,3−ブタンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,3−ペンタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,3−ジメルカプト−3−メチルブタン、ジペンテンジメルカプタン、エチルシクロヘキシルジチオール(ECHDT)、ジメルカプトジエチルスルフィド、メチル置換ジメルカプトジエチルスルフィド、ジメチル置換ジメルカプトジエチルスルフィド、ジメルカプトジオキサオクタン、1,5−ジメルカプト−3−オキサペンタン、及び上記のいずれかの組合せが挙げられる。ポリチオールは、低級(例えば、C1〜6)アルキル基、低級アルコキシ基、及びヒドロキシル基から選択される1つ以上の側基を有し得る。好適なアルキル側基としては、例えば、C1〜6直鎖状アルキル、C3〜6分枝鎖状アルキル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが挙げられる。
【0021】
好適なジチオールの他の例としては、ジメルカプトジエチルスルフィド(DMDS)(式(IV)中、Rが、−[(−CH−)−X−]−(CH−であり、ここで、pが2であり、rが2であり、qが1であり、XがSである);ジメルカプトジオキサオクタン(DMDO)(式(IV)中、Rが、−[(−CH−)−X−]−(CH−であり、ここで、pが2であり、qが2であり、rが2であり、XがOである);及び1,5−ジメルカプト−3−オキサペンタン(式(IV)中、Rが、−[(−CH−)−X−]−(CH−であり、ここで、pが2であり、rが2であり、qが1であり、XがOである)が挙げられる。炭素主鎖及びメチル基などのアルキル側基中に両方のヘテロ原子を含むジチオールを使用することも可能である。このような化合物としては、例えば、HS−CHCH(CH)−S−CHCH−SH、HS−CH(CH)CH−S−CHCH−SHなどのメチル置換DMDS及びHS−CHCH(CH)−S−CHCHCH−SH及びHS−CH(CH)CH−S−CHCH(CH)−SHなどのジメチル置換DMDSが挙げられる。
【0022】
式(IV)の2つ以上の異なるジチオールが、必要に応じて用いられてもよい。
好適なジビニルエーテルとしては、例えば、式(V):
CH=CH−O−(−R−O−)−CH=CH (V)
(式(V)中のRが、C2〜6n−アルキレン基、C2〜6分枝鎖状アルキレン基、C6〜8シクロアルキレン基、C6〜10アルキルシクロアルキレン基、及び−[(−CH−)−O−]−(−CH−)−から選択され、ここで、pが、2〜6の範囲の整数であり、qが、1〜5の範囲の整数であり、rが、2〜10の範囲の整数である)
で表されるジビニルエーテルが挙げられる。式(V)のジビニルエーテルの特定の実施形態において、Rが、C2〜6n−アルキレン基、C2〜6分枝鎖状アルキレン基、C6〜8シクロアルキレン基、C6〜10アルキルシクロアルキレン基、及び特定の実施形態において、−[(−CH−)−O−]−(−CH−)−)である。
【0023】
好適なジビニルエーテルとしては、例えば、1〜4つのオキシアルキレン基などの少なくとも1つのオキシアルキレン基を有する化合物、すなわち、式(V)中のmが、1〜4の範囲の整数である化合物が挙げられる。特定の実施形態において、式(V)中のmが、2〜4の範囲の整数である。分子当たりのオキシアルキレン単位の数の平均値が非整数であることを特徴とする市販のジビニルエーテル混合物を用いることも可能である。ここで、式(V)中のmが、1.0〜10.0、1.0〜4.0、又は2.0〜4.0などの、0〜10.0の範囲の有理数値も取り得る。
【0024】
好適なジビニルエーテルの例としては、例えば、ジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル(EG−DVE)(式(V)中のRがエチレンであり、mが1である)、ブタンジオールジビニルエーテル(BD−DVE)(式(V)中のRがブチレンであり、mが1である)、ヘキサンジオールジビニルエーテル(HD−DVE)(式(V)中のRがヘキシレンであり、mが1である)、ジエチレングリコールジビニルエーテル(DEG−DVE)(式(V)中のRがエチレンであり、mが2である)、トリエチレングリコールジビニルエーテル(式(V)中のRがエチレンであり、mが3である)、テトラエチレングリコールジビニルエーテル(式(V)中のRがエチレンであり、mが4である)、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ポリテトラヒドロフリルジビニルエーテル;トリメチロールプロパントリビニルエーテルなどのトリビニルエーテルモノマー;ペンタエリトリトールテトラビニルエーテルなどの四官能性エーテルモノマー;及び2つ以上のこのようなポリビニルエーテルモノマーの組合せが挙げられる。ポリビニルエーテルは、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、及びアミン基から選択される1つ以上の側基を有し得る。
【0025】
特定の実施形態において、式(V)中のRがC2〜6分枝鎖状アルキレンであるジビニルエーテルは、ポリヒドロキシ化合物をアセチレンと反応させることによって調製され得る。この種のジビニルエーテルの例としては、式(V)中のRが、−CH(CH)−などのアルキル置換メチレン基である化合物(例えば、プルリオール(PLURIOL)(登録商標)E−200ジビニルエーテルなどの「プルリオール(PLURIOL)(登録商標)」ブレンド(ニュージャージー州パーシッパニーのBASFコーポレーション(BASF Corp.,Parsippany,NJ))、これについては、式(V)中のRがエチレンであり、mが3.8である)又はアルキル置換エチレン(例えば、−CHCH(CH)−)である化合物(DPE−2及びDPE−3を含む「DPE」ポリマーブレンドなど(ニュージャージー州ウェインのインターナショナル・スペシャルティ・プロダクツ(International Specialty Products,Wayne,NJ)))が挙げられる。
【0026】
他の有用なジビニルエーテルとしては、式(V)中のRが、ポリテトラヒドロフリル(ポリ−THF)又はポリオキシアルキレンである化合物(平均約3つのモノマー単位を有する化合物など)が挙げられる。
【0027】
式(V)の2種以上のポリビニルエーテルモノマーが使用されてもよい。ここで、特定の実施形態において、式(IV)の2つのポリチオール及び式(V)の1つのポリビニルエーテルモノマー、式(IV)の1つのポリチオール及び式(V)の2つのポリビニルエーテルモノマー、式(IV)の2つのポリチオール及び式(V)の2つのポリビニルエーテルモノマー、及び一方又は両方の式の3つ以上の化合物が、様々なチオール官能性ポリチオエーテルを生成するのに使用されてもよい。
【0028】
特定の実施形態において、ポリビニルエーテルモノマーが、チオール官能性ポリチオエーテルを調製するのに使用される反応剤の20〜50モルパーセント未満、及び、特定の実施形態において、30〜50モルパーセント未満を占める。
【0029】
本開示によって提供される特定の実施形態において、ジチオール及びジビニルエーテルの相対量は、末端チオール基を得るように選択される。ここで、式(IV)で表されるジチオール又は式(IV)で表される少なくとも2つの異なるジチオールの混合物が、式(V)で表されるジビニルエーテル又は式(V)で表される少なくとも2つの異なるジビニルエーテルの混合物と、チオール基対ビニル基のモル比が、1.1〜2.0:1.0など、1:1を超えるような相対量で反応される。
【0030】
式(IV)の化合物と式(V)の化合物との間の反応は、フリーラジカル触媒によって触媒され得る。好適なフリーラジカル触媒としては、例えば、アゾ化合物、例えば、アゾ(ビス)イソブチロニトリル(AIBN)などのアゾビスニトリル;過酸化ベンゾイル及び過酸化t−ブチルなどの有機過酸化物;及び過酸化水素などの無機過酸化物が挙げられる。反応はまた、カチオン性光開始部分を用いて又は用いずに、紫外光の照射によって行われ得る。また、無機又は有機塩基、例えば、トリエチルアミンを用いた、イオン性触媒作用法により、有用な材料が得られる。
【0031】
本開示によって提供されるシリル官能性ポリチオエーテルを調製するのに使用するのに好適なチオール官能性ポリチオエーテルは、式(IV)の少なくとも1つの化合物及び式(V)の少なくとも1つの化合物を組み合わせた後、適切な触媒を加え、70℃〜90℃などの30℃〜120℃の温度で、2〜6時間などの2〜24時間にわたって、反応を行うことによって調製され得る。
【0032】
特定の実施形態において、チオール官能性ポリチオエーテルが、式(III):
HS−R−[−S−(CH−O−[−R−O−]−(CH−S−R−]−SH (III)
(式(III)中の各Rが、独立して、C2〜10n−アルキレン基、C2〜6分枝鎖状アルキレン基、C6〜8シクロアルキレン基、C6〜10アルキルシクロアルキレン基、複素環式基、−[(−CH−)−X−]−(−CH−)−基、及び−[(−CH−)−X−]−(−CH−)−基を表し、ここで、少なくとも1つの−CH−単位が、メチル基で置換され、ここで、pが、2〜6の範囲の整数であり、qが、1〜5の範囲の整数であり、rが、2〜10の範囲の整数であり、Xが、O、S、又は−NHR−を表し、ここで、Rが、H又はメチル基を表し;式(III)中の各Rが、独立して、メチレン、C2〜10n−アルキレン基、C2〜6分枝鎖状アルキレン基、C6〜8シクロアルキレン基、C6〜14アルキルシクロアルキレン、複素環式基、又は−[(−CH−)−X−]−(−CH−)−を表し;ここで、pが、2〜6の範囲の整数であり、qが、1〜5の範囲の整数であり、rが、2〜10の範囲の整数であり、Xが、O、S、及び−NHR−から選択され、ここで、Rが、H又はメチル基を表し;式(III)中のmが、0〜50の範囲の値を有する有理数であり;式(III)中のnが、1〜60の範囲の整数であり;式(III)中のpが、2〜6の範囲の整数である)
の構造を有する。
【0033】
ここで、特定の実施形態において、本開示によって提供されるポリチオエーテルを調製するのに使用されるチオール官能性ポリチオエーテルが、式(IIIa):
HS−R−[−S−(CH−O−[−R−O−]−(CH−S−R−]−SH (IIIa)
(式中、R、R、m、及びnが、式(III)に関して上述されるとおりである)
の構造を有する。特定の実施形態において、式(IIIa)中のRが、−[(−CH−)−X−]−(CH−であり、ここで、pが2であり、XがOであり、qが2であり、rが2であり、Rがエチレンであり、mが2であり、nが9である。
【0034】
本明細書に開示される際、本開示によって提供されるポリチオエーテルを調製するのに使用するのに好適なチオール官能性ポリチオエーテルはまた、多官能性であってもよく、すなわち、2.0を超える平均官能性を有し得る。好適な多官能性チオール官能性ポリチオエーテルとしては、例えば、構造(VI):
B(−A−SH) (VI)
(式中:(i)Aが、式(I)の構造を表し、(ii)Bが、多官能性化剤(polyfunctionalizing agent)のz価の残基を表し;(iii)zが、2.0を超える平均値、及び、特定の実施形態において、2〜3の値、2〜4の値、3〜6
の値を有し、及び特定の実施形態において、3〜6の整数である)
を有するものが挙げられる。
【0035】
このような多官能性チオール官能性ポリマーを調製するのに使用するのに好適な多官能性化剤としては、三官能性化剤(trifunctionalizing agent)、すなわち、zが3である化合物が挙げられる。好適な三官能性化剤としては、米国特許出願公開第2010/0010133号明細書の段落[0102]〜[0105](この引用部分は、参照により本明細書に援用される)に開示されているように、例えば、シアヌル酸トリアリル(TAC)、1,2,3−プロパントリチオール、イソシアネート含有トリチオール、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0036】
結果として、本開示によって提供される実施形態に使用するのに好適なチオール官能性ポリチオエーテルは、様々な平均官能性を有し得る。例えば、三官能性化剤により、2.1〜2.6などの2.05〜3.0の平均官能性が得られる。より広い範囲の平均官能性が、四官能性又はより高い官能性の多官能性化剤を用いて得られる。官能性はまた、当業者によって理解されるように、化学量論などの要因によって影響され得る。
【0037】
2.0を超える官能性を有する本開示によって提供されるチオール官能性ポリチオエーテルは、本明細書に記載される二官能性チオール官能性ポリチオエーテルと同様の方法で調製され得る。特定の実施形態において、このようなポリチオエーテルは、(i)本明細書に記載される1つ以上のジチオールを、(ii)本明細書に記載される1つ以上のジビニルエーテル、及び(iii)1つ以上の多官能性化剤と組み合わせることによって調製され得る。次に、混合物は、任意に、本明細書に記載される好適な触媒の存在下で反応されて、2.0を超える官能性を有するチオール官能性ポリチオエーテルが得られる。
【0038】
特定の実施形態において、本開示によって提供されるポリチオエーテルを調製するのに使用されるチオール官能性ポリチオエーテルは、スルホン結合、エステル結合及び/又はジスルフィド結合を本質的に含まないか、又は含まない。本明細書において使用される際、「スルホン結合、エステル結合、及び/又はジスルフィド結合を本質的に含まない」は、チオール官能性ポリマー中の結合の2モルパーセント未満が、スルホン結合、エステル結合、及び/又はジスルフィド結合であることを意味する。結果として、特定の実施形態において、得られたシリル官能性ポリチオエーテルも、スルホン結合、エステル結合、及び/又はジスルフィド結合を本質的に含まないか、又は含まない。
【0039】
本開示によって提供されるシリル官能性ポリチオエーテルは、本明細書に開示されるチオール官能性ポリチオエーテルのいずれかを、一般式(R)(R)RSiX(式中、Xが、Cl、Br、又はIなどのハロゲン原子を表し、R、R、及びRがそれぞれ、独立して、C1〜6n−アルキル基、C1〜6分枝鎖状アルキル基、置換C1〜6n−アルキル基、及びフェニル基から選択される)によって表されるハロシランと反応させることによって調製され得る。
【0040】
好適なハロシランの例としては、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、トリプロピルクロロシラン、トリブチルクロロシラン、トリメチルブロモシラン、トリエチルブロモシラン、トリイソプロピルブロモシラン、トリブチルブロモシラン、トリメチルヨードシラン、トリエチルヨードシラン、トリプロピルヨードシラン、トリブチルヨードシラン、トリメチルフルオロシラン、トリエチルフルオロシラン、トリプロピルフルオロシラン、トリブチルフルオロシラン、ジメチルフェニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、及び上記のいずれかの組合せが挙げられる。
【0041】
特定の実施形態において、ハロシランは、式(II)で表される少なくとも2つの基を
含むシリル官能性ポリチオエーテルを得るのに十分な量でチオール官能性ポリチオエーテルと反応され得る。特定の実施形態において、ハロシラン対チオール基のモル比は、1.05〜2.5:1、1.05〜2.0:1、1.5〜3.0:1、2〜3.5:1、及び特定の実施形態において、2.5〜3.5:1など、少なくとも1:1である。
【0042】
本開示によって提供されるポリチオエーテルは、任意に、トルエンなどの溶媒、及び/又は生成物によるハロゲン酸反応を中和する物質(式RN(式中、各Rが、同じであっても又は異なっていてもよく、C1〜6アルキルである)で表されるものを含む第三級アルキルアミンなど)の存在下で、1つ以上のチオール官能性ポリチオエーテル及び1つ以上のハロシランを組み合わせて、25℃〜120℃の温度で、2〜24時間にわたって反応を行うことによって調製され得る。特定の実施形態において、反応は、70℃〜90℃の温度で、2〜6時間にわたって行われ得る。本明細書の実施例は、この反応を行うのに好適な反応の例示である。
【0043】
結果として、本開示によって提供される特定の実施形態は、シリル官能性ポリチオエーテルを作製するための方法に関する。特定の方法は、チオール官能性ポリチオエーテルをハロシランと反応させる工程を含む。これらの方法では、チオール官能性ポリチオエーテルは、式(I):
−R−[−S−(CH−O−[−R−O−]−(CH−S−R− (I)
(式中、(i)各Rが、独立して、C2〜10n−アルキレン基、C2〜6分枝鎖状アルキレン基、C6〜8シクロアルキレン基、C6〜10アルキルシクロアルキレン基、複素環式基、−[(−CH−)−X−]−(CH−基、及び−[(−CH−)−X−]−(CH−基から選択され、ここで、少なくとも1つの−CH−単位が、メチル基で置換され;(ii)各Rが、独立して、C2〜10n−アルキレン基、C2〜6分枝鎖状アルキレン基、C6〜8シクロアルキレン基、C6〜14アルキルシクロアルキレン基、複素環式基、及び−[(−CH−)−X−]−(CH−基から選択され;(iii)各Xが、独立して、O、S、及び−NR−基から選択され、ここで、Rが、H及びメチル基から選択され;(iv)mが、0〜50の範囲であり;(v)nが、1〜60の範囲の整数であり;(vi)pが、2〜6の範囲の整数であり;(vii)qが、1〜5の範囲の整数であり;(viii)rが、2〜10の範囲の整数である)
で表される構造を含む。
【0044】
さらに、ハロシランは、一般式(R)(R)RSiX(式中、Xが、Cl、Br、又はIなどのハロゲン原子を表し、R、R、及びRがそれぞれ、独立して、C1〜6n−アルキル基、C1〜6分枝鎖状アルキル基、置換C1〜6n−アルキル基、及びフェニル基から選択される基である)によって表される。式(R)(R)RSiXの特定の実施形態において、R、R、及びRのそれぞれが、同じであり、メチルであり、特定の実施形態において、エチルであり、及び特定の実施形態において、プロピルである。式(R)(R)RSiXの特定の実施形態において、R、R、及びRのそれぞれが、独立して、エチル、メチル、及びプロピルから選択され;及び特定の実施形態において、エチル及びメチルから選択される。式(R)(R)RSiXの特定の実施形態において、XがClであり、特定の実施形態において、Brであり、特定の実施形態において、Iである。
【0045】
本開示によって提供されるシリル官能性ポリチオエーテルは、航空宇宙用シーラントとして及び燃料タンク用のライニングとして用いられ得るものを含む、コーティング及びシーラント組成物などの組成物に有用である。結果として、本開示によって提供される特定の実施形態は、シリル官能性ポリチオエーテル及び硬化剤を含む、一液組成物などの組成
物に関する。これらの一液組成物では、シリル官能性ポリチオエーテル及び硬化剤は、任意に、他の組成物成分とともに、組み合わされて、使用前の硬化を実質的に防ぐために単一の防湿シールされた(moisture−sealed)容器中に包装される。この組成物は、湿分を実質的に含まない条件下及び周囲温度で安定している。本明細書において使用される際、「湿分を含まない」及び「実質的に湿分を含まない」は、組成物がいくらかの湿分を含有し得るが、湿分の量が、組成物の硬化を実質的に行うのに十分でないことを意味する。組成物が、十分な湿分に曝されると、組成物の硬化が促進されて、例えば、航空宇宙用途及び同様の用途を含む多くの用途に有用なシーラントが形成される。
【0046】
特定の実施形態において、このような組成物は、上述されるシリル官能性ポリチオエーテルに加えて、他のシリル官能性ポリマーを含み得る。例えば、特定の実施形態において、本開示によって提供される組成物は、例えば、米国特許第7,786,226号明細書の第1欄第57行〜第2欄第18行(この引用部分は、参照により本明細書に援用される)に記載されるタイプのポリスルフィドから誘導されるシリル官能性ポリスルフィドなどのシリル官能性ポリスルフィドを含み得る。特定の実施形態において、このような組成物は、米国特許第4,623,711号明細書の第4欄第18行〜第8欄第35行(この引用部分は、参照により本明細書に援用される)に記載されているものなどの、式HS(RSS)RSH(式中、Rが、−C−O−CH−O−C−であり、nは、ポリマーの分子量が、1,000〜2,500などの1,000〜4,000であるような値である)のメルカプタン官能性ポリスルフィドポリマーから誘導されるシリル官能性ポリマーをさらに含み得る。このようなチオール官能性ポリマーは、シリル官能性ポリチオエーテルに関して本明細書に記載されるように、ハロシランとの反応によって、シリル官能性にされ得る。
【0047】
特定の実施形態において、本開示によって提供されるシリル官能性ポリチオエーテルは、組成物の全ての不揮発性成分の総重量を基準にして、40〜80重量パーセント、又は、特定の実施形態において、45〜75重量パーセントなどの、30〜90重量パーセントの量で組成物中に存在し得る。
【0048】
本開示によって提供される組成物に有用な硬化剤としては、例えば、ヒダントインジエポキシド、ビスフェノール−Aのジグリシジルエーテル、ビスフェノール−Fのジグリシジルエーテル、ノボラック型エポキシド、及びエポキシ化不飽和フェノール樹脂のいずれかなどのポリエポキシド樹脂が挙げられる。
【0049】
特定の実施形態において、組成物は、95%〜125%の化学量論量などの、90%〜150%の化学量論量の硬化剤を含有する。
本開示によって提供される組成物は、周囲空気に曝されると硬化可能である。空気中の湿分に曝されると、式(II)のシリル基が加水分解し、それによって、チオール基に転化される。得られたチオール基は、硬化剤の存在下で硬化され得る。
【0050】
特定の実施形態において、本開示によって提供される組成物は、充填剤を含む。好適な充填剤の例としては、カーボンブラック、炭酸カルシウム、シリカ、ポリマー粉末、及び上記のいずれかの組合せが挙げられる。特定の実施形態において、1つ以上の充填剤が、組成物の総重量を基準にして、5重量%〜60重量%、10重量%〜60重量%、20重量%〜60重量%、及び特定の実施形態において、30重量%〜60重量%の範囲の量で、組成物中に存在する。
【0051】
特定の実施形態において、本開示によって提供される組成物は、軽量充填剤粒子を含む。本明細書において使用される際、このような粒子に関して使用される際の「軽量」という用語は、粒子が、0.7以下、特定の実施形態において、0.25以下、特定の実施形
態において、0.1以下の比重を有することを意味する。好適な軽量充填剤粒子は、微小球及び非晶質粒子の2つのカテゴリーに入ることが多い。微小球の比重は、0.1〜0.7の範囲であってもよく、例えば、ポリスチレン発泡体、ポリアクリレート及びポリオレフィンの微小球、ならびに5〜100μmの範囲の粒度及び0.25の比重を有するシリカ微小球(エコスフィア(ECCOSPHERES)(登録商標)、W.R.グレース・アンド・カンパニー(W.R.Grace & Co.))を含む。他の例としては、5〜300μmの範囲の粒度及び0.7の比重を有するアルミナ/シリカ微小球(フィライト(FILLITE)(登録商標)、プルース・シュタウファー・インターナショナル(Pluess−Stauffer International))、約0.45〜約0.7の比重を有するケイ酸アルミニウム微小球(Z−ライト(Z−LIGHT)(登録商標))、及び0.13の比重を有する炭酸カルシウムで被覆されたポリビニリデンコポリマー微小球(デュアライト(DUALITE)6001 AE(登録商標)、ピアース・アンド・スティーブンス・コーポレーション(Pierce & Stevens Corp.))が挙げられる。特定の実施形態において、本開示によって提供される組成物は、米国特許出願公開第2010/0041839号明細書の段落[0016]〜[0052](この引用部分は、参照により本明細書に援用される)に記載されているものなどの、薄膜コーティングで被覆された外面を備えた軽量充填剤粒子を含む。
【0052】
組成物は、必要に応じて、何種類かの添加剤も含み得る。好適な添加剤の例としては、可塑剤、顔料、界面活性剤、接着促進剤、チキソトロープ剤、難燃剤、マスキング剤、及び促進剤(1,4−ジアザ−ビシクロ[2.2.2]オクタンを含むアミンなど)、及び上記のいずれかの組合せが挙げられる。使用される場合、添加剤は、例えば、約0重量%〜60重量%の範囲の量で組成物中に存在し得る。特定の実施形態において、添加剤は、約25重量%〜60重量%の範囲の量で組成物中に存在し得る。
【0053】
特定の実施形態において、本開示によって提供される組成物は、塩基性酸化物を含む。実際に、このような化合物は、脱水剤として働き、それによって、組成物の早期の硬化を防ぐが、硬化が必要とされる場合、生成される塩基が、本明細書に記載される組成物中で硬化触媒として働くため、本明細書に記載される組成物において特に望ましいことが発見された。結果として、本開示によって提供される組成物中に、より少ない硬化促進剤(アミンなど)を使用することができ、それにより、組成物の貯蔵寿命がさらに延長され得ることが発見された。本開示によって提供される組成物に使用するのに好適な塩基性酸化物の例としては、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、又は上記のいずれかの組合せが挙げられる。本開示によって提供される組成物の特定の実施形態において、塩基性酸化物は、組成物の総重量を基準にして、1〜10重量パーセント、又は、特定の実施形態において、5〜10重量パーセントなどの、0.1〜10重量パーセントの量で存在する。
【0054】
結果として、本開示によって提供される特定の実施形態は、(a)シリル官能性ポリマーと;(b)本明細書に開示されるポリエポキシドのいずれかなどのポリエポキシドと;(c)塩基性酸化物とを含む組成物に関する。本明細書において使用される際、「シリル官能性ポリマー」という用語は、式(II):
【0055】
【化3】
【0056】
(式中、R、R、及びRがそれぞれ、独立して、C1〜6n−アルキル基、C1〜6分枝鎖状アルキル基、置換C1〜6n−アルキル基、及びフェニル基から選択される基である)
で表される、分子当たり少なくとも1つ、特定の実施形態において、少なくとも2つ、又は、特定の実施形態において、少なくとも3つの基を含むポリマーを指す。特定の実施形態において、シリル官能性ポリマーは、本明細書に記載されるシリル官能性ポリチオエーテル及びポリスルフィドポリマー、すなわち、ポリマー主鎖中に複数の−S−S−結合を含むポリマーの場合のように、ポリマー主鎖中に硫黄含有結合をさらに含む。特定の実施形態において、シリル官能性ポリマーは、本明細書に開示されるシリル官能性ポリチオエーテル、本明細書に開示されるシリル官能性ポリスルフィド、及び特定の実施形態において、それらの組合せを含む。特定の実施形態において、シリル官能性ポリマーは、(a)式(I)で表される構造を含む主鎖と;(b)式(II)で表される、分子当たり少なくとも2つの基とを含むシリル官能性ポリチオエーテルを含む。
【0057】
特定の実施形態において、本開示によって提供される組成物は、AS 5127/1の段落7.8に準拠して測定した際に、少なくとも1.52MPa(220psi)、又は、特定の実施形態において、少なくとも1.72Mpa(250psi)などの1.38Mpa(200psi)を超える重ねせん断強度を有する硬化されたシーラントを提供する。
【0058】
特定の実施形態において、貯蔵及び輸送のために、シリル官能性ポリチオエーテル及び硬化剤を含む組成物成分は、容器中で組み合わされて、湿分から密閉される。容器中で湿分から密閉される一方、組成物は安定しており、長期間にわたって実質的に硬化されないままである。
【0059】
本発明の特定の実施形態の例示が、以下の実施例であり、これらは、その詳細について本発明を限定するものとみなされない。実施例中ならびに本明細書全体を通して、全ての部及びパーセンテージは、特に示されない限り、重量基準である。
(実施例1)
シリル官能性ポリチオエーテルポリマーの合成
1402.00gのパーマポール(PERMAPOL)P3.1E(メルカプタン末端ポリチオエーテルポリマー、カルフォルニア州シルマーのピーアールシー・デソト・インターナショナル・インコーポレーテッド(PRC−DeSoto International Inc.,Sylmar,CA)から入手可能)、511.85mLのトルエン、及び152.35gのトリエチルアミンを、熱電対及び添加漏斗を備えた2リットルの3つ口丸底に加えた。反応混合物を、約30分間撹拌した。166.86gのトリエチルクロロシランを、添加漏斗に加え、温度を30℃未満に維持しながら、室温で30分間かけてゆっくりと反応混合物に滴下して加えた。トリエチルクロロシランの完全な添加の後、反応物を、2〜16時間撹拌した。この後、反応混合物を、トルエンで希釈し、40〜60μmのフリット漏斗(fritted funnel)上でろ過し、防湿容器中に貯蔵した。
(実施例2)
湿分硬化型シーラント配合物の組成物
表1に記載される成分を組み合わせることによって、湿分硬化型シーラント組成物を作製した。100gの実施例1のシリル官能性ポリチオエーテルポリマーを、3.30gのT−3917、3.00gのT−3920、及び0.75gのT−3921(カルフォルニア州シルマーのピーアールシー・デソト・インターナショナル・インコーポレーテッド(PRC−DeSoto International Inc.,Sylmar,CA))と最初に混合した。次に、10.00gの酸化カルシウム、7.25gのシリカ及び
5.25gのカーボンブラックを混合物に加え、十分に混合した。次に、17.06gのエポキシ樹脂(DEN 431,ダウ・ケミカル(Dow Chemical))及び1.25gのシルクエスト(Silquest)A−187を混合物に加え、十分に混合した。最後に、混合物を、15分間真空脱気した。
【0060】
重ねせん断試料を、AS5127/1の段落7.8に準拠して調製した。試料を、75°F/50%の相対湿度で14日間にわたって硬化させた。重ねせん断値が、表4中に報告される。
【0061】
【表1】
【0062】
(比較例3)
シリル官能性ポリスルフィドポリマーの合成
シリル官能性ポリスルフィドポリマーを、米国特許第4,902,736号明細書にしたがって作製した。118.00gのポリスルフィドポリマー(チオプラスト(Thioplast)G−1、アクゾノーベル(Akzo Nobel)から入手可能)、64.38mLのトルエン、及び13.04gのトリエチルアミンを、熱電対、及び添加漏斗を備えた500mLの3つ口丸底に加えた。反応混合物を、約30分間撹拌した。13.99gのトリエチルクロロシランを、添加漏斗に加え、温度を30℃未満に維持しながら、室温で30分間かけてゆっくりと反応混合物に滴下して加えた。トリエチルクロロシランの完全な添加の後、反応物を、2〜16時間撹拌させた。この後、反応混合物を、トルエンで希釈し、40〜60μmのフリット漏斗上でろ過し、防湿容器中に貯蔵した。
(比較例4)
湿分硬化型シーラント配合物の組成物
表2に記載される成分を組み合わせることによって、湿分硬化型シーラント組成物を作製した。100gの比較例3のシリル官能性ポリスルフィドポリマーを、3.30gのT−3917、3.00gのT−3920及び0.75gのT−3921(カルフォルニア州シルマーのピーアールシー・デソト・インターナショナル・インコーポレーテッド(PRC−DeSoto International Inc.,Sylmar,CA))と最初に混合した。次に、10.00gの酸化カルシウム、7.25gのシリカ、及び5.25gのカーボンブラックを混合物に加え、十分に混合した。次に、17.06gのエポキシ樹脂(DEN 431、ダウ・ケミカル(Dow Chemical)から入手可能)及び1.25gのシルクエスト(Silquest)A−187を混合物に加え、十分に混合した。最後に、混合物を、15分間真空脱気した。
【0063】
重ねせん断試料を、AS5127/1の段落7.8に準拠して調製した。試料を、75°F/50%の相対湿度で14日間にわたって硬化させた。重ねせん断値が、表4中に報告される。
【0064】
【表2】
【0065】
(比較例5)
比較例のシーラント組成物
表3に記載される成分を組み合わせることによって、組成物を作製した。100gのシリル官能性ポリスルフィド(STP−2000、日本の東レ・ファインケミカル)を、3.75gの可塑剤、3.30gのT−3917、3.00gのT−3920、0.75gのT−3921、及び0.15gのT−5143(カルフォルニア州シルマーのピーアールシー・デソト・インターナショナル・インコーポレーテッド(PRC−DeSoto International Inc.,Sylmar,CA))と最初に混合した。次に、8.00gの酸化カルシウム、7.20gのシリカ、及び2.24gのカーボンブラックを混合物に加え、十分に混合した。次に、17.06gのエポキシ樹脂(DEN 431、ダウ・ケミカル(Dow Chemical))及び1.26gのシルクエスト(Silquest)(登録商標)A−187を混合物に加え、十分に混合した。最後に、混合物を、15分間真空脱気した。
【0066】
重ねせん断試料を、AS5127/1の段落7.8に準拠して調製した。試料を、75°F/50%の相対湿度で14日間にわたって硬化させた。重ねせん断値が、表4中に報告される。
【0067】
【表3】
【0068】
結果
【0069】
【表4】
【0070】
当業者は、本発明の広い概念から逸脱せずに、本明細書に記載される実施形態に対して変形が加えられ得ることを理解するであろう。したがって、本発明は、開示される特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨及び範囲内の変更を包含することが意図されることが理解される。