【実施例】
【0010】
まず、実施例に係る車両用シートおよび比較例に係る車両用シートの構造について
図1〜3を用いて説明する。
図1は実施例に係る車両用シートを説明する側面図である。
図2は比較例に係る車両用シートを説明する側面図である。
図3(A)は
図1のサイドカバー部分の上面図であり、
図3(B)は
図2のサイドカバー部分の上面図である。
【0011】
実施例に係る車両用シート1は、昇降可能なシートクッション10と、シートクッション10に対して傾動可能なシートバック20と、シートバック20に接続されるヘッドレスト30と、サイドカバー40と、を備える。
【0012】
サイドカバー40はシートクッション10の前部の側方からシートクッション10の後部の側面を覆うとともに、シートバック20の側方からシートバック20の下部の側面を覆う。さらに、図示しないリクライニング機構およびリフタ機構もサイドカバー40によって覆われている。サイドカバー40は樹脂成型品である。サイドカバー40は後部、前部および下部にそれぞれ側方(外側)に隆起する凸部41、42、43を、その間に内側に凹む凹部44を有する。
【0013】
サイドカバー40の凹部44には、操作者が把持可能な第一操作レバー51および第二操作レバー52が設けられている。第一操作レバー51および第二操作レバー52は樹脂を用いて形成されている。より具体的には、第一操作レバー51はシートバック20の傾きを調整する際に使用するリクライニング操作レバーであり、第二操作レバー52はシートクッション10の高さを調整するために使用するリフタ操作レバーである。第一操作レバー51は、フレームに取り付けられたリクライニング機構に連結されており、第二操作レバー52は、フレームに取り付けられたリフタ機構に連結されている。第一操作レバー51は第二操作レバー52よりも短く、第一操作レバー51は第二操作レバー52より外側に配置される。これにより、第一操作レバー51の取手部と第二操作レバー52の取手部は、前後に縦列するように配置され、第一操作レバー51の取手部は第二操作レバー52の取手部より後方に配置される。
【0014】
また、本実施例の車両用シートが搭載される車両はシートベルト6を備えており、シートベルト6には布状のウェビング61と、取付金具であるタング(不図示)と、ウェビング61を所定の状態に巻き取るように作用するリトラクタ(不図示)と、ウェビング61を固定するウェビング固定部(不図示)と、当該タングを挿入固定可能なバックル(不図示)と、が設けられる。
【0015】
第一操作レバー51および第二操作レバー52を配置する側(
図1では左側)にはシートクッション10の支持面より下方に、ウェビング61を固定するウェビング固定部が設けられ、着座者のシートベルト着用時(通常使用時)ではバックルとウェビング固定部との間に掛け渡されるウェビング61により着座者の腰周り付近の部位が移動することを抑制可能としている。
【0016】
通常使用時ではウェビング61の一部は、第一操作レバー51の高さ付近において、サイドカバー40の後方側の凸部41の外側(X軸負方向側)に、他の一部は第一操作レバー51の外側に、かつ第一操作レバー51の後部付近に当接(位置)するように構成されている。前突が生じた際にはプリテショナーによりウェビング61がやや後方に移動してサイドカバー40の後方側の凸部14の外側にすべてが位置した後、着座者から荷重がかかることによりやや前方に移動して第一操作レバー51の前部側に移動しうる構成となっている。この際、着座者は車両用シート1の中央付近に着座しているため、車両用シート1の中央付近で引っ張るようにウェビング61に荷重がかかる。このため、車両用シート1の側部に備えられている第一操作レバー51近傍においては、ウェビング61は斜め前方に向けて移動しようとする。第一操作レバー51の後方側に位置していたウェビング61の一部は前方、かつ、車両用シート1の中央側に移動しようとすることにより第一操作レバー51に隣接するように移動する。なお、ウェビング61の前端は第一操作レバー51の前端よりも前に移動することはない。
【0017】
比較例に係る車両用シート1Rは、
図3の破線円で囲った箇所のサイドカバー40R、第一操作レバー51Rの形状を除いて実施例と同様である。
【0018】
構造上、サイドカバー40と第一操作レバー51との間(サイドカバー40Rと第一操作レバー51Rの間)に一定の隙間を設けることが必要であるが、比較例では前突の実験においてシートベルト6がその隙間に落ち込んで、第一操作レバー51Rがレバー脱落方向へ荷重が入るおそれがあった。
【0019】
次に、第一操作レバーについて
図4〜6を用いて説明する。
図4(A)は実施例に係る第一操作レバー付近の上面図であり、
図4(B)は比較例に係る第一操作レバー付近の上面図である。
図5(A)は実施例に係るサイドカバーの後方側の凸部と第一操作レバーとの境目からの正面図であり、
図5(B)は比較例に係るサイドカバーの後方側の凸部と第一操作レバーとの境目からの正面図である。
図6(A)は実施例に係る第一操作レバー付近の側方からの斜視図であり、
図6(B)は比較例に係る第一操作レバー付近の側方からの斜視図である。
【0020】
実施例では、
図4(A)の「D」で示すように、サイドカバー(リクライナカバー)40の凸部41の側面を第一操作レバー(リクライング操作レバー)51よりも幅方向で広くする。第一操作レバー51の端部と凸部41の端部との側面方向の段差を設けることにより、シートベルト6のウェビング61の前部端が第一操作レバー51の端部に引っかかりにくくなり、ウェビング61が第一操作レバー51と凸部41との間の隙間に落ちづらくなる。一方、比較例では、
図4(B)に示すように、サイドカバー40Rの凸部41Rの側面を第一操作レバー51Rと幅方向で同じである。
【0021】
実施例では、
図4(A)の「A」で示すように、第一操作レバー51の後部側端部をサイドカバー40の凸部41との境目付近で幅方向を狭くする。これにより、第一操作レバー51の端部と凸部41の端部との側面方向の段差がより大きくすることができる。一方、比較例では、
図4(B)に示すように、第一操作レバー51Rの後部側端部とサイドカバー40Rの凸部41Rとの境目付近での幅方向は同じである。
【0022】
実施例では、
図5(A)の「E」で示すように、第一操作レバー51の後部側端部の上部をサイドカバー40の凸部41との境目付近で幅方向を狭くする。第一操作レバー51の端部と凸部41の端部との上面方向の段差を設けることにより、シートベルト6のウェビング61の前部端が第一操作レバー51の端部に引っかかりにくくなり、ウェビング61が第一操作レバー51と凸部41との間の隙間に落ちづらくなる。一方、比較例では、
図4(B)に示すように、第一操作レバー51Rの後部側端部の上部とサイドカバー40Rの凸部41Rとの境目付近での幅方向は同じである。
【0023】
実施例では、
図6(A)の「C」で示すように、第一操作レバー51の上部後端を延長して、シートベルトのウェビング61に近づける。これにより、ウェビング61の前部端部の延在方向と同じ方向に延在する第一操作レバー51の部分を少なくすることができ、ウェビング61が第一操作レバー51と凸部41との間の隙間に落ちづらくなる。一方、比較例では、
図6(B)に示すように、第一操作レバー51Rの上部後端は実施例よりも前に位置する。
図6(A)のCの実線は実施例の位置であり、破線は比較例の位置である。
【0024】
実施例では、
図4(A)の「B」で示すように、サイドカバー40と第二操作レバー52との段差の位置と、第一操作レバー51とサイドカバー40の隙間位置をずらし、サイドカバー40と第二操作レバー52との段差を第一操作レバー51とサイドカバー40の隙間よりも前に配置する。一方、比較例では、
図4(B)に示すように、第一操作レバー51Rとサイドカバー40Rの隙間の延在方向にサイドカバー40Rと第二操作レバー52Rとの段差が位置する。
図4(A)の破線は比較例のサイドカバー40Rと第二操作レバー52Rとの段差の位置である。
【0025】
実施例は、シートベルトが当接している第一部品(サイドカバーの凸部)の面がシートベルトの移動方向にある第二部品(第一操作レバー)の面よりも高い(外側にある)。これにり、プリテショナーによりシートベルトのウェビングが後方に引かれた後、着座者が慣性で前方移動することによりシートベルトのウェビングが移動しても、サイドカバーと第一操作レバーの間にウェビングが入り込むことを防止することができる。また、リクライニング操作レバーがレバー脱落方向へ荷重が入るおそれがなくなり安全性を向上させることができる。また、シートベルトのウェビングの傷付きを防止することができる。通常使用時にシートベルトのウェビングの前方端部が第一操作レバーより後方のサイドカバーの凸部に位置していても同様の効果が得られる。
【0026】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【0027】
例えば、実施例ではサイドカバー、第一操作レバーおよび第二操作レバーはシートクッションンの左側に設けられているが、シートクッションンの右側に設けてもよい。