(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6286517
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】焼却装置
(51)【国際特許分類】
F23J 7/00 20060101AFI20180215BHJP
F23G 5/00 20060101ALI20180215BHJP
F23G 5/24 20060101ALI20180215BHJP
F23G 5/50 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
F23J7/00ZAB
F23C99/00 317
F23G5/00 C
F23G5/00 D
F23G5/24 Z
F23G5/50 N
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-237283(P2016-237283)
(22)【出願日】2016年12月7日
【審査請求日】2016年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000136804
【氏名又は名称】株式会社プランテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 良二
(72)【発明者】
【氏名】桝本 貴史
【審査官】
宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−020159(JP,A)
【文献】
特開2013−142481(JP,A)
【文献】
特開2006−023052(JP,A)
【文献】
特開2001−263631(JP,A)
【文献】
米国特許第05058514(US,A)
【文献】
特許第2788997(JP,B2)
【文献】
特許第3097779(JP,B2)
【文献】
特開平05−272722(JP,A)
【文献】
特許第2567126(JP,B2)
【文献】
堅型ストーカ式焼却炉,株式会社プランテック 製品技術紹介,日本,株式会社プランテック,2011年 3月31日,71-73頁,URL:<http://www.jefma.or.jp/jefma/59/pdf/jefma59-18.pdf>
【文献】
鮫島良二,竪型ストーカ式焼却炉の安定運転性能,第26回廃棄物資源循環学会研究発表会C1−5,日本,株式会社プランテック,2015年 9月 4日,URL:<https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmcwm/26/0/26_297/_pdf>
【文献】
鮫島良二,竪型ストーカ式焼却炉の維持管理実績,第26回廃棄物資源循環学会研究発表会A7−4,日本,株式会社プランテック,2015年 9月 4日,URL:<https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmcwm/26/0/26_87/_pdf>
【文献】
鮫島良二,竪型ストーカ式焼却炉におけるごみ層の燃焼過程分析(第2報),第26回廃棄物資源循環学会研究発表会C3−5,日本,株式会社プランテック,2015年 9月 4日,URL:<https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmcwm/26/0/26_339/_pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 7/00
F23G 5/00
F23G 5/24
F23G 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体燃料または廃棄物等の被焼却物を焼却する竪型焼却炉と、前記竪型焼却炉の上方の排気口から排出される排ガスを冷却する冷却装置と、この冷却装置で冷却された排ガスを浄化する集塵装置と、この集塵装置で浄化された排ガスを大気放出する煙突と、を備え、当該竪型焼却炉からの塩化水素(HCl)、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)の発生を抑制する焼却装置であって、
前記竪型焼却炉の底部に設けられる火格子の下方から理論空気量以下の一次燃焼空気を供給する一次燃焼空気供給装置と、
前記竪型焼却炉内において前記被焼却物の燃焼に伴い前記火格子上に堆積される堆積層の上方の第1領域に、未燃焼ガスを再燃させるための二次燃焼空気を供給する二次燃焼空気供給装置と、
前記竪型焼却炉内において前記第1領域と前記堆積層との間の第2領域に、水酸化ナトリウム(NaOH)または水酸化カリウム(KOH)を噴霧供給する薬剤供給装置と、
前記各装置の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記堆積層が堆積された後で、前記薬剤供給装置によりNaOHまたはKOHを噴霧供給するとともに、前記二次燃焼空気供給装置により二次燃焼空気を供給するものであって、さらに前記NaOHまたはKOHの噴霧供給量については前記煙突内における排ガス中のHCl、SOx、NOxの各濃度の検出値を設定値以下にするようにフィードバック制御する、ことを特徴とする焼却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体燃料または廃棄物等の被焼却物を焼却する竪型焼却炉からの塩化水素(HCl)、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)の発生を抑制する焼却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、焼却炉で固体燃料または廃棄物等の被焼却物を焼却する際に発生するNOxを低減する方法として、炉内でNOxを低減する方法が知られているが、炉内でNOxの発生を低減する方法では50ppmが限界である。
【0003】
その他の方法として、例えば特許文献1には、火格子を階段状に並べたストーカ式焼却炉において、当該焼却炉内に二次燃焼空気を吹き込んで未燃ガスを完全燃焼させるが、水酸化ナトリウム水溶液とアンモニア水又は尿素水を配管内で混合してアンモニア水をストリッピングした状態で水酸化ナトリウム水溶液と共に、前記焼却炉内において前記二次燃焼空気の吹込み位置より上側位置に吹込む、ということが記載されている。
【0004】
また、非特許文献1には、前記ストーカ式焼却炉において、苛性ソーダを焼却炉内への炉内噴射水に注入することにより、HCl、SOxガスと同時にNOxガスの濃度が低下するということを発見したことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−142481号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】全国都市清掃会議(公社)発行、「都市清掃、第44巻、第184号の第51頁〜第59頁」の「炉内薬液噴霧によるNOx,SOx及びHClガス同時除去技術について」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1では、ストーカ式の焼却炉を用いる構成を前提としている関係より、階段状に並ぶ火格子において上側の火格子から下側の火格子へ向けて順に燃焼物が落とされるように移動するために、前記焼却炉内において領域毎に温度が不均一になるとともに、前記燃焼物から排出される排ガス中の成分が不均一になることは避けられない。そのため、燃料中に含まれる窒素は、前記焼却炉内での領域別に、一酸化窒素(NO)として排出されたり、シアン化水素(HCN)として排出されたりする。
【0008】
このように、上記特許文献1の場合、水酸化ナトリウム水溶液を吹き込む位置において、既にNOが発生していることがあるので、このNOを除去するためにアンモニア水又は尿素水を前記水酸化ナトリウムと混合して吹き込むようにしている。
【0009】
また、上記特許文献1の段落0026には、「水酸化ナトリウム水溶液とアンモニア水又は尿素水とを吹き込む位置は、前記焼却炉内において800〜950℃の温度領域が適正であり、それより低い温度領域ではNOの除去率が低くなり、また、1000℃以上の温度領域ではアンモニアが酸化分解してNOを発生する」ということが記載されている。
【0010】
このようなことから、上記特許文献1の場合には、薬品の複数化、装置構成や動作制御が複雑になるとともに、焼却炉で発生するNOxの大部分を占めるNOの除去効果が低いことが懸念される。
【0011】
一方、上記非特許文献1では、ストーカ式焼却炉において、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)を焼却炉内への炉内噴射水に注入することにより、HCl、SOxガスと同時にNOxガスの濃度が低下することを発見したことが記載されているものの、HCl、SOx、NOxを簡易な構成、制御で効率良く除去するという点については言及されていない。
【0012】
このような事情に鑑み、本発明は、固体燃料または廃棄物等の被焼却物を焼却する竪型焼却炉からのHCl、SOx、NOxの発生を抑制する焼却装置において、比較的簡易な構成、制御でHCl、SOx、NOxを効率良く除去することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、固体燃料または廃棄物等の被焼却物を焼却する竪型焼却炉
と、前記竪型焼却炉の上方の排気口から排出される排ガスを冷却する冷却装置と、この冷却装置で冷却された排ガスを浄化する集塵装置と、この集塵装置で浄化された排ガスを大気放出する煙突と、を備え、当該竪型焼却炉からの塩化水素(HCl)、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)の発生を抑制する焼却装置であって、前記竪型焼却炉の底部に設けられる火格子の下方から理論空気量以下の一次燃焼空気を供給する一次燃焼空気供給装置と、前記竪型焼却炉内において前記被焼却物の燃焼に伴い前記火格子上に堆積される堆積層の上方の第1領域に、未燃焼ガスを再燃させるための二次燃焼空気を供給する二次燃焼空気供給装置と、前記竪型焼却炉内において前記第1領域と前記堆積層との間の第2領域に、水酸化ナトリウム(NaOH)または水酸化カリウム(KOH)を噴霧供給する薬剤供給装置と、
前記各装置の動作を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記堆積層が堆積された後で、前記薬剤供給装置によりNaOHまたはKOHを噴霧供給するとともに、前記二次燃焼空気供給装置により二次燃焼空気を供給する
ものであって、さらに前記NaOHまたはKOHの噴霧供給量については前記煙突内における排ガス中のHCl、SOx、NOxの各濃度の検出値を設定値以下にするようにフィードバック制御する、ことを特徴としている。
【0014】
ところで、本発明に係る焼却装置は、廃棄物を焼却する焼却設備の他、固体燃料を燃焼させることにより発生する熱を回収する熱回収設備の両方に用いられる。これらいずれの場合にも、前記竪型焼却炉の火格子上に堆積される堆積層から上昇する熱分解ガスには、NO生成前の中間生成物であるシアン化水素(HCN)が含まれている。
【0015】
また、竪型焼却炉は、その底部に配置される単一の火格子上で被焼却物の燃焼を行うようにしている関係より、炉内温度が均一になるという点で優れている。
【0016】
この構成では、前記竪型焼却炉を用いることを前提としたうえで、炉内において前記堆積層寄りの前記第2領域にNaOHまたはKOHを噴霧供給しているから、当該NaOHまたはKOHによって、前記堆積層から上昇する熱分解ガス中の前記HCNが固体のNaCNまたはKCNに変換されることになる。
【0017】
このような固体のNaCNまたはKCNは、煤塵や排ガス等と共に前記竪型焼却炉の上側開口(排気口)から外側へ排出されて、集塵装置により捕捉される他、一部は前記竪型焼却炉の前記堆積層に落下して堆積されることになる。
【0018】
しかも、前記二次燃焼空気を前記第2領域より上方の前記第1領域に供給しているから、当該二次燃焼空気によって前記竪型焼却炉内の未燃焼ガスが完全燃焼させられることになる。これらのことの相乗作用により、前記竪型焼却炉内でのNOxの生成が抑制されることになる。
【0019】
しかも、本発明に係る焼却装置は、上記特許文献1のようなアンモニア水又は尿素水を用いていないから、装置構成ならびに動作制御を上記特許文献1に比べて簡易にすることが可能になる。
【0021】
さらに、上記構成では、前
記NaOHまたはKOHの噴霧供給量を制御する形態を特定している
から、前記NOxを効率良く抑制できるようになることが明らかになる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る焼却装置は、比較的簡易な構成、制御でHCl、SOx、NOxを効率良く除去することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図2に示す焼却装置に備える竪型焼却炉の一実施形態を示す図である。
【
図2】本発明に係る焼却装置の一実施形態の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
図1および
図2に、本発明の一実施形態を示している。
図1に示す焼却装置は、竪型焼却炉1、冷却装置2、バグフィルタ等のろ過式の集塵装置3、誘引通風機4、煙突5、一次燃焼空気供給装置6、二次燃焼空気供給装置7、薬剤供給装置8、制御装置10等を備えている。
【0026】
竪型焼却炉1は、例えば図示しない一般廃棄物、産業廃棄物や所定梱包に入れられた感染性医療廃棄物等の被焼却物Rを燃焼するものである。この竪型焼却炉1は、熱回収に利用することも可能であり、その場合には、被焼却物Rとして前記廃棄物の代わりに、バイオマス等の固体燃料とされる。
【0027】
具体的に、竪型焼却炉1は、竪型と呼ばれるものであって、その基本構造は公知のように、炉本体20、再燃焼室30、焼却灰排出機構40等が設けられている。
【0028】
炉本体20は、燃焼室となる円筒部21と、その下部に連接される漏斗部22とを備えている。再燃焼室30は、及び炉本体20の上部に連接されている。
【0029】
炉本体20と再燃焼室30との間には排ガス混合手段23が設けられている。円筒部21の側面には、被焼却物Rを炉内に投入するための投入口24が設けられている。漏斗部22の下側開口(焼却灰排出口)には、火格子25が設けられている。この竪型焼却炉1内に投入された被焼却物Rは火格子25上で燃焼されることにより漏斗部22において火格子25上に堆積されて堆積層cを形成する。
【0030】
焼却灰排出機構40は、漏斗部22の下部に設けられており、ごみ支持手段41、焼却灰排出板42、灰搬出装置43等を備えている。
【0031】
ごみ支持手段41は、対向する一対のスライド板からなり、通常時は開放状態にされているが、焼却完結後の焼却灰Aを排出する時に閉塞状態にされる。焼却灰排出板42は、対向する一対の揺動板からなり、通常時は閉塞状態にされているが、焼却完結後の焼却灰Aを排出する時に開放状態にされる。灰搬出装置43は、漏斗部22から排出された焼却灰Aを貯留、搬送する。ごみ支持手段41および焼却灰排出板42には、図示していないが、空気が流入できる開口が設けられており、火格子25の下方から一次燃焼空気aを供給可能とするようになっている。
【0032】
冷却装置2は、詳細に図示していないが、竪型焼却炉1の上側開口(排気口)から排出される高温の排ガスを冷却するものであって、例えばボイラ、ガス冷却室等の少なくともいずれか一方を有している。
【0033】
集塵装置3は、冷却装置2で減温された排ガス中の煤塵や有害ガス成分を中和、濾過して浄化するものである。
【0034】
誘引通風機4は、集塵装置3内の排ガスを吸引して、煙突5から大気中に放出させるものである。
【0035】
一次燃焼空気供給装置6は、竪型焼却炉1内に投入される被焼却物Rを燃焼させるために、漏斗部22の下側開口(焼却灰排出口)から一次燃焼空気aを供給するものであって、一次燃焼空気供給路6a、押込送風機6b、開閉弁(ダンパ)6c等を備えている。
【0036】
二次燃焼空気供給装置7は、竪型焼却炉1の円筒部21内の未燃焼ガスを再燃させるために、堆積層cより上方でかつ排ガス混合手段23より下側領域(円筒部21内の火炎層の上方の領域で、第1領域と言う)に二次燃焼空気bを供給するものであって、二次燃焼空気供給路7a、押込送風機7b、開閉弁(ダンパ)7c等を備えている。
【0037】
薬剤供給装置8は、竪型焼却炉1内において二次燃焼空気bの供給領域(前記第1領域)と堆積層cとの間の領域(第2領域と言う)に、水酸化ナトリウム(NaOH)の水溶液を噴霧供給するものである。
【0038】
制御装置10は、上記各装置、各機構、各手段の動作を制御することにより、被焼却物Rの焼却処理ならびに薬剤供給処理を実行する。
【0039】
このNaOH水溶液の噴霧供給は、一定量を連続供給する形態にすることができる。但し、NaOH水溶液の噴霧供給量は、煙突5内における排ガス中のHCl、SOx、NOxの各濃度を適宜の検出手段により検出し、当該各検出値を設定値以下にするようにフィードバック制御することができる。この他、煙突5内における排ガス中のHCl、SOx、NOxのいずれかの濃度のみを適宜の検出手段により検出して、この検出値を設定値以下にするようにNaOH水溶液の噴霧供給量をフィードバック制御することも可能である。また、NaOH水溶液を一定量ずつ間欠的に供給する形態にすることも可能である。
【0040】
次に、上記焼却装置による動作を説明する。
【0041】
そもそも、竪型焼却炉1は、炉本体20の底部つまり漏斗部22の下側開口(焼却灰排出口)に配置される単一の火格子25上で被焼却物Rの燃焼を行うようにしている関係より、炉本体20内の温度(炉内温度)が均一になるという点で優れている。
【0042】
ここで、焼却装置の稼働に伴い一次燃焼空気供給装置6の押込送風機6bを駆動することにより、一次燃焼空気供給路6aに理論空気量以下の一次燃焼空気aを導入させる。この一次燃焼空気aは、再燃焼室30内に設けた空気予熱器26で昇温された後、火格子25の下方から上向きに供給されることにより、炉本体20内に投入される被焼却物Rを部分燃焼して熱分解させる。この燃焼された被焼却物Rは、火格子25上に堆積されて堆積層cとなる。
【0043】
この堆積層cからは熱分解ガスdが排出されるが、薬剤供給装置8により炉本体20内の前記第2領域に噴霧供給されるNaOHによって、前記堆積層cから上昇する熱分解ガスd中に存在するHCl、SOxと反応して、これらを除去する。
【0044】
また、前記熱分解ガスdは酸素不足であるため、NOは生成されず、NOxの中間生成物であるシアン化水素(HCN)として存在するため、前記NaOHと反応して、固体のNaCNを生成することにより、前記HCNを除去する。
【0045】
前記固体のNaCNは、煤塵や排ガス等と共に竪型焼却炉1の上側開口(排気口)から外側へ排出されて、集塵装置3により捕捉される他、竪型焼却炉1内の堆積層c上に堆積される。このようにしてHCNを除去できるので、NOxの生成が抑制されることになる。
【0046】
そして、二次燃焼空気供給装置7から炉本体20内の前記第1領域に供給される常温の二次燃焼空気bと、二次燃焼用バーナ51による火炎とによって、円筒部21内の未燃焼ガスが完全燃焼される。
【0047】
この燃焼後の燃焼ガスwは、排ガス混合手段23を通過して再燃焼室30に入り、再燃焼用バーナ52の加熱により未反応ガスや浮遊炭素粒子の完全焼却とダイオキシン類等の微量有機化合物の熱分解及び燃焼がなされる。この後、竪型焼却炉1の上側開口(排気口)から排ガスおよび煤塵等が排出される。
【0048】
上記のようにして、HCl、SOx、NOx、HCNが除去された排ガスは、冷却装置2、集塵装置3を経て、煙突5から大気に放出される。
【0049】
以上説明したように、本発明を適用した実施形態の焼却装置によれば、竪型焼却炉1を用いることを前提としたうえで、竪型焼却炉1に対するNaOHの噴霧供給領域を工夫することにより、既知の通りHCl、SOxを除去できるとともに、NaOHによるHCNの除去に伴いNOxの生成を抑制することができる。
【0050】
しかも、この実施形態の焼却装置は、上記特許文献1のようなアンモニア水又は尿素水を用いていないから、装置構成ならびに動作制御を上記特許文献1に比べて簡易にすることが可能になる。
【0051】
これらの結果として、この実施形態の焼却装置は、比較的簡易な構成、制御を採用しながら、HCl、SOx、NOxを効率良く除去し、さらにはHClが除去されるためダイオキシン類の再合成を抑制することが可能になる。
【0052】
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内および当該範囲と均等の範囲内で適宜に変更することが可能である。
【0053】
上記実施形態では、薬剤供給装置8によりNaOHの水溶液を竪型焼却炉1内に噴霧供給する形態にした例を挙げているが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、例えば薬剤供給装置8により水酸化カリウム(KOH)の水溶液を竪型焼却炉1内に噴霧供給する形態にすることが可能である。
【0054】
この場合も、上記実施形態と遜色のない効果が得られる。つまり、前記KOHは、堆積層cから上昇する熱分解ガスd中に存在するHCl、SOxと反応して、これらを除去する。また、KOHは、NOxの中間生成物であるHCNとも反応して、固体のKCNを生成することにより、前記HCNを除去する。この固体のKCNは上記実施形態と同様に竪型焼却炉1の下流に接続される集塵装置3により捕捉される。このように、この実施形態の焼却装置によっても、比較的簡易な構成、制御を採用しながら、HCl、SOx、NOxを効率良く除去することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、固体燃料または廃棄物等の被焼却物を焼却する竪型焼却炉からのHCl、SOx、NOxの発生を抑制する焼却装置に好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 竪型焼却炉
2 冷却装置
3 集塵装置
4 誘引通風機
5 煙突
6 一次燃焼空気供給装置
7 二次燃焼空気供給装置
8 薬剤供給装置
10 制御装置
20 炉本体
24 投入口
25 火格子
a 一次燃焼空気
b 二次燃焼空気
c 堆積層
【要約】
【課題】焼却装置において、比較的簡易な構成、制御でHCl、SOx、NOxを効率良く除去する。
【解決手段】焼却装置は、竪型焼却炉1の底部に設けられる火格子25の下方から理論空気量以下の一次燃焼空気aを供給する一次燃焼空気供給装置6と、竪型焼却炉1内において被焼却物Rの燃焼に伴い火格子25上に堆積される堆積層cの上方の第1領域に、未燃焼ガスを再燃させるための二次燃焼空気bを供給する二次燃焼空気供給装置7と、竪型焼却炉1内において前記第1領域と堆積層cとの間の第2領域に、NaOHまたはKOHを噴霧供給する薬剤供給装置8と、各装置6〜8の動作を制御する制御装置10と、を備える。制御装置10は、堆積層cが堆積された後で、薬剤供給装置8によりNaOHまたはKOHを噴霧供給するとともに、二次燃焼空気供給装置7により二次燃焼空気bを供給する。
【選択図】
図1