特許第6286547号(P6286547)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6286547低温ポリシリコン薄膜の予備洗浄方法及びその製造方法、製造システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286547
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】低温ポリシリコン薄膜の予備洗浄方法及びその製造方法、製造システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/20 20060101AFI20180215BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20180215BHJP
   B08B 3/10 20060101ALI20180215BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   H01L21/20
   B08B3/02 A
   B08B3/10 Z
   H01L21/304 643Z
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-532049(P2016-532049)
(86)(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公表番号】特表2017-511592(P2017-511592A)
(43)【公表日】2017年4月20日
(86)【国際出願番号】CN2013090627
(87)【国際公開番号】WO2015096113
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2016年6月20日
(31)【優先権主張番号】201310728592.4
(32)【優先日】2013年12月25日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515268009
【氏名又は名称】シェンツェン チャイナ スター オプトエレクトロニクス テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN CHINA STAR OPTOELECTRONICS TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】チャン ロンシエン
【審査官】 内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−162876(JP,A)
【文献】 特開平08−306646(JP,A)
【文献】 特開2006−332589(JP,A)
【文献】 特開2003−158135(JP,A)
【文献】 特開2013−207277(JP,A)
【文献】 特開2013−149942(JP,A)
【文献】 特開2005−349301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/20
B08B 3/02
B08B 3/10
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温ポリシリコン薄膜の材料であるアモルファスシリコン層の予備洗浄方法であって、
温度が室温より高くなるようにアモルファスシリコン層を加熱し、前記アモルファスシリコン層を予備洗浄すること、を含み、
前記アモルファスシリコン層は、厚さが相対的に厚い第1領域及び相対的に薄い第2領域を含み、前記第1領域の温度は前記第2領域より高いことを特徴とするアモルファスシリコン層の予備洗浄方法。
【請求項2】
温度が25〜40℃となるように前記アモルファスシリコン層を加熱することを特徴とする請求項1に記載のアモルファスシリコン層の予備洗浄方法。
【請求項3】
低温ポリシリコン薄膜の製造方法であって、
基板に下から上へバッファ層とアモルファスシリコン層を順に成長させるステップ1と、
温度が室温より高くなるように前記アモルファスシリコン層を加熱し、前記アモルファスシリコン層を予備洗浄するステップ2と、
前記アモルファスシリコンがポリシリコンに変換するように、ステップ2で予備洗浄後のアモルファスシリコン層をエキシマレーザビームで照射するステップ3と、を含み、
前記アモルファスシリコン層は、厚さが相対的に厚い第1領域及び相対的に薄い第2領域を含み、前記第1領域の温度は前記第2領域より高いことを特徴とする低温ポリシリコン薄膜の製造方法。
【請求項4】
前記ステップ2における前記アモルファスシリコン層の温度は25〜40℃であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記予備洗浄に用いられる洗浄剤は質量濃度1〜3%のフッ化水素の水溶液であり、該フッ化水素の水溶液による予備洗浄の時間は45〜60sであり、使用量は40〜60L/minであることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項3に記載の低温ポリシリコン薄膜の製造システムであって、
試料台と、
前記試料台において前記アモルファスシリコン層を成長させる、前記試料台の上方に対向するように設置されたエピタキシャル成長装置と、
前記アモルファスシリコン層を前記ポリシリコン変換させる、前記試料台の上方に対向するように設置されたエキシマレーザービーム照射装置と、
を含み、
さらに、
前記アモルファスシリコン層を予備洗浄する、前記試料台の上方に対向するように設置された予備洗浄装置と、
前記アモルファスシリコン層を加熱する、前記試料台に取り付けられた温度制御装置と、
を含む、
ことを特徴とする低温ポリシリコン薄膜の製造システム。
【請求項7】
前記予備洗浄装置は複数の均一に配設された噴霧ノズルを含むことを特徴とする請求項に記載の低温ポリシリコン薄膜の製造システム。
【請求項8】
前記温度制御装置は複数の均一に配設された発熱体を含み、それぞれの発熱体は独立した温度調節器及び温度監視器を有することを特徴とする請求項に記載の低温ポリシリコン薄膜の製造システム。
【請求項9】
前記発熱体は抵抗ブロック又は抵抗線であることを特徴とする請求項に記載の低温ポリシリコン薄膜の製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶ディスプレイ技術分野に属し、低温ポリシリコン薄膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ(flat panel display,FPD)の発展に伴い、高解像度、低消費電力の表示パネルに対する需要は絶えず増加し、表示パネルの制作材料に対する要求も日増しに高まっている。そのうち、低温ポリシリコン材料に対する研究が幅広く行われている。このような材料はアモルファスシリコン材料を使用して低い反応温度にて獲得することができ、高い電子移動度を有し、C−MOS回路の製造に用いることによって、高解像度、低消費電力の表示パネルに対する需要を満たすことができる。
【0003】
現在、低温ポリシリコンを製造する方法は固相結晶化(SPC)、金属誘起結晶化(MIC)及びエキシマレーザアニール(ELA)などのいくつかを含み、そのうち、エキシマレーザアニール(ELA)は現在最も広く使われている方法である。
【0004】
ELAによる低温ポリシリコンの製造方法は、ガラス基板にバッファ層を成長させ、その後該バッファ層にアモルファスシリコン層を成長させ、最後にELAのレーザでアモルファスシリコン層を走査し、アモルファスシリコンを高温熔融させ、再結晶によりポリシリコン層を形成させることである。但し、アモルファスシリコン膜の厚さは実際に不均一であるため、形成されたポリシリコン層の均一性に直接影響を与える。低温ポリシリコンの均一性はその電気特性に直接影響を与える。如何に低コスト、高効率の方法で均一なポリシリコン薄膜を得るかは早急に解決しなければならない課題である。
【発明の概要】
【0005】
上記問題を解決するために、本発明は、温度が室温より高くなるようにアモルファスシリコン層を加熱し、前記アモルファスシリコン層を予備洗浄する低温ポリシリコン薄膜の予備洗浄方法を提供する。
【0006】
温度が25〜40℃となるように前記アモルファスシリコン層を加熱する。
【0007】
低温ポリシリコン薄膜の製造に用いられる上記予備洗浄方法は、
基板に下から上へバッファ層とアモルファスシリコン層を順に成長させるステップ1と、
温度が室温より高くなるように前記アモルファスシリコン層を加熱し、前記アモルファ スシリコン層を予備洗浄するステップ2と、
前記アモルファスシリコンがポリシリコンに変換するように、ステップ2で予備洗浄後のアモルファスシリコン層をエキシマレーザビームで照射するステップ3と、を含む。
さらに、前記ステップ2における前記アモルファスシリコン層の温度は25〜40℃である。
【0008】
さらに、前記ステップ2におけるアモルファスシリコン層は、厚さが相対的に厚い第1部分及び厚さが相対的に薄い第2部分を含み、前記第1部分の加熱温度が第2部分より高い。
【0009】
さらに、前記予備洗浄に用いられる洗浄剤は質量濃度1〜3%のフッ化水素の水溶液である。
【0010】
さらに、前記フッ化水素酸による予備洗浄の時間は45〜60sであり、使用量は40〜60L/minである。
【0011】
本発明は、さらに、
試料台と、
前記試料台においてアモルファスシリコン層を成長させる、前記試料台の上方に対向するように設置されたエピタキシャル成長装置と、
前記アモルファスシリコン層をポリシリコン層に変換させる、前記試料台の上方に対向するように設置されたエキシマレーザービーム照射装置と、を含み、
さらに、
前記アモルファスシリコン層を予備洗浄する、前記試料台の上方に対向するように設置された予備洗浄装置と、
前記アモルファスシリコン層を加熱する、前記試料台に取り付けられた温度制御装置と、を含む、上記製造方法を実現するための低温ポリシリコン薄膜の製造システムを提供する。
【0012】
さらに、前記予備洗浄装置は複数の均一に配置された噴霧ノズルを含む。
【0013】
さらに、前記温度制御装置は複数の均一に配置された発熱体を含み、それぞれの発熱体は独立した温度調節器及び温度監視器を有する。
【0014】
さらに、前記発熱体は抵抗ブロック又は抵抗線である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は低温ポリシリコン薄膜の製造装置、予備洗浄方法を改良することによって、アモルファスシリコン層の均一性を向上させる。本発明の低温ポリシリコン薄膜の製造システムは、温度制御装置を導入し、予備洗浄装置と組み合わせ、アモルファスシリコン層の異なる領域の厚みの差に基づいて、該当領域の温度の高低を制御することにより、厚い領域と薄い領域を制御して異なる腐食速度を実現し、最終的に異なる領域の厚みの差を縮小させ、アモルファスシリコン層の厚さが不均一である状態を改善し、よって後続ステップにおいてELAを照射することにより変換し形成されるポリシリコン薄膜の均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の低温ポリシリコン薄膜の製造システムの構造を示す図である。
図2】(a)(b)は本発明の温度制御装置の発熱体の試料台における配列構造を示す図である。
図3】(a)(b)(c)は本発明の低温ポリシリコン薄膜を製造するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に合わせて本発明の実施例を詳細に説明する。
【0018】
本発明は、図1に示すように、少なくとも試料台10、エピタキシャル成長装置20、エキシマレーザービーム照射装置30と予備洗浄装置40、及び温度制御装置50を含む低温ポリシリコン薄膜の製造システム100を提供する。
【0019】
エピタキシャル成長装置20は、前記試料台10の上方に対応的に設置され、前記試料台10においてアモルファスシリコン層(図示せず)、及びポリシリコン薄膜を形成するその他の必要な材料層を成長させるのに用いられる。
【0020】
予備洗浄装置40は、前記試料台10の上方に対応的に設置され、複数の均一に配置された噴霧ノズル41を含み、これらの噴霧ノズル41を介して洗浄剤を制御可能に噴射し、前記アモルファスシリコン材料を予備洗浄するのに用いられる。
【0021】
温度制御装置50は、前記試料台10に取り付けられ、前記アモルファスシリコン材料を加熱するのに用いられる。一般的に、アモルファスシリコン層は基板(図示せず)に形成されたものであり、そのため、温度制御装置50は基板を直接加熱し、基板を介して熱をアモルファスシリコン層に伝達する。温度制御装置50には複数の均一に配置された発熱体51が配設され、それぞれの発熱体51は独立した温度調節器53と温度監視器52を有する。温度監視器52によって各発熱体51の現在の温度を表示し、温度調節器53と組み合わせて各発熱体51のリアルタイムの温度をそれぞれ制御且つ調節することができ、同一アモルファスシリコン層の異なる領域に対して個別に昇温又は降温を行い、同一アモルファスシリコン層における各領域の温度に対する個別処理を実現する。具体的に、それぞれの発熱体51は、例えば、図2(a)に示すように、試料台10に点状に分布された抵抗ブロック51A又は直列接続された抵抗ブロック(図示せず)であってもよく、また、例えば、図2(b)に示すように、発熱体51は試料台10に環状に巻き付けられた抵抗線51Aであってもよい。
【0022】
エキシマレーザービーム30は、前記試料台10の上方に対向するように設置され、前記試料台10に配置されたアモルファスシリコン材料をポリシリコン材料に変換させるのに用いられる。一般的に、エピタキシャル成長装置20、エキシマレーザービーム照射装置30及び予備洗浄装置40は移動可能に取り付けら、製造工程の必要に応じてそれらと試料台10と対向した位置を適時調整することができる。
【0023】
以下、上記低温ポリシリコン薄膜製造システム100を利用してポリシリコン薄膜を製造する方法は、
図3(a)に示すように、試料台10にガラス基板60を載置し、その後エピタキシャル成長装置20を用いてガラス基板60にて材料が酸化シリコンであるバッファ層70を成長させ、その後、バッファ層70に継続してアモルファスシリコン層80を成長させ、該アモルファスシリコン層80の表面は不均一且つ平坦であり、少なくとも厚さが相対的に厚い第1領域及び相対的に薄い第2領域を含み、一般的に、中央領域(第1領域)が厚く、周縁領域(第2領域)が薄い(図3(a)に示す)又は中央領域(第2領域)が薄く、周縁領域(第1領域)が厚い形状(図示せず)、又は非均一に分布されたその他の形状を呈するステップ1と、
ステップ1において得られたアモルファスシリコン層80を洗浄室へ送り込み、高温による脱水素処理を行い、その後、前記温度制御装置50を作動して前記ガラス基板60を加熱し、よってアモルファスシリコン層80を昇温させ、前記アモルファスシリコン層80の表面と一致するように、予備洗浄装置40の位置を調整し、予備洗浄を準備するステップ2と、
ステップ2における予備洗浄後の均一且つ平坦な表面を有するアモルファスシリコン層81を、図3(b)に示すように、エキシマレーザービーム走査照射し、前記アモルファスシリコンをポリシリコンに変換させ、よって、図3(c)に示すように、均一且つ平坦なポリシリコン薄膜90を獲得するステップ3と、を含む。
【0024】
一般的に、本実施例の予備洗浄操作は室温23±2℃の雰囲気下で行う。中央領域が厚く、周縁領域が薄いアモルファスシリコン層80に対し、温度制御装置50の各発熱体51をリアルタイムに温度調節することにより、中央領域に対応する発熱体51の加熱温度を室温より高く(25〜40℃)し、周縁領域の発熱体51は加熱する必要なく、その温度を室温より低くさせることができる。この場合、予備洗浄装置40の噴霧ノズル41を開放し、洗浄剤を噴射してアモルファスシリコン層80の全表面を洗浄する。本実施例に用いられる洗浄剤はフッ化水素の水溶液であり、フッ化水素酸の質量濃度は1〜3%であり、噴霧ノズル41の管路総流量は40〜60L/minに設定され、噴霧ノズル41の噴射モードで45〜60S噴射する。中央が薄く周縁が厚いアモルファスシリコン層に対して局所領域の加熱温度を調整することを参照することもできる。
【0025】
フッ化水素酸の役割は、アモルファスシリコンの表面薄層をエッチングし、表層の不純物を除去し、表面の平坦性を向上させることである。また、フッ化水素酸によるエッチングの反応速度は温度に関わり、温度が高い場合、エッチング反応が速く、温度が低い場合は、エッチング反応が遅い。この点を利用し、温度制御装置によりアモルファスシリコン層の異なる領域の温度制御をすることによって、アモルファスシリコン層の表面平坦性の改善ができる。例えば、アモルファスシリコン層の相対的に厚い第1領域において発熱体を調節して加熱温度を上昇させ、アモルファスシリコン層の相対的に薄い第2領域においては発熱体の加熱温度を降下又は加熱を停止させ、アモルファスシリコン層の実際の形状に応じて即時にマッチングすることができ、即ち、加熱温度の高低はアモルファスシリコン層の各領域の厚さに正比例する。このように、アモルファスシリコン層の厚さが厚い第1領域はエッチング速度が速く、厚さが薄い第2領域はエッチング速度が遅く、異なる領域の厚さの差を絶えず縮小させることにより、アモルファスシリコン層の厚さが不均一である状態を改善し、アモルファスシリコン層の表面平坦性を向上させる目的を達成し、よって後続のステップにおいて平坦且つ均一なポリシリコン層を獲得することができる。
本発明により提供される低温ポリシリコン薄膜の製造システムは、装置を簡単に改装し制御することができ、該システムを利用してポリシリコン薄膜を製造することは、方法が簡単且つ便利であり、ポリシリコン薄膜の平坦性を効果的に向上させ、製造された部品の品質と性能を保証している。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図3