(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
波長変換層はアルミニウム(Al)、クロム(Cr)、チタニウム(Ti)、金(Au)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、ジルコニウム(Zr)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、コバルト(Co)、カドミウム(Cd)、または銅(Cu)を含む金属、および前記金属のイオンからなる群から選択される1種以上を含む、請求項4に記載の発色処理された基材。
マグネシウムを含むマトリックスを水酸化溶液に浸漬することにより、マグネシウムを含むマトリックス上に、下記化学式1で表される化合物を含有する皮膜を形成する段階を含む、基材の発色処理方法であって、
水酸化溶液に浸漬された前記マトリックスは、
第1温度(T1)を有する領域;および
第2温度(T2)を有する領域を含み、
第1温度(T1)と第2温度(T2)の差は5℃以上であり、
第1温度(T1)および第2温度(T2)は互いに独立的に95℃以上であり、
皮膜の平均厚さは50nm〜2μmであり、
マグネシウムを含むマトリックス上に存在する皮膜の任意の地点Aの皮膜平均厚さと、第1軸線と75°〜105°の平均偏差を有する第2軸線上に存在する皮膜の地点Cの皮膜平均厚さとの偏差は、下記の数学式3の条件を満足する、基材の発色処理方法:
[化学式1]
M(OH)m
前記化学式1において、
Mは、Na、K、Mg、Ca、およびBaからなる群から選択される1種以上を含み、
mは1または2であり、
[数学式3]
10nm≦|d1−d2|
前記数学式3で、
d1は皮膜の地点Aの皮膜平均厚さであり、
d2は皮膜の地点Cの皮膜平均厚さである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な実施例を有することができるところ、特定実施例を図面に例示して詳細に説明する。
【0014】
しかし、これは本発明を特定の実施形態に限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されるべきである。
【0015】
本発明において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加可能性をあらかじめ排除しないものと理解されるべきである。
【0016】
また、本発明で添付された図面は説明の便宜のために拡大または縮小して図示されたものと理解されるべきである。
【0017】
以下、本発明について図面を参照して詳細に説明するが、図面符号にかかわらず同一であるか対応する構成要素に対しては同じ参照番号を付与し、これに対する重複する説明は省略する。
【0018】
本発明において、「色座標」とは、CIE(国際照明委員会、Commossion International de l「Eclairage)で規定した色相値であるCIE色空間での座標を意味し、CIE色空間での任意の位置はL色空間、a色空間、b色空間の三つの座標値で表現され得る。
【0019】
ここで、L
*値は明度を表すもので、L
*=0であれば黒色(black)を表わし、L
*=100であれば白色(white)を表わす。また、a
*値は該当色座標を有する色が純粋な赤色(pure magenta)と純粋な緑色(pure green)のうちいずれに偏ったかを表わし、b
*値は該当色座標を有する色が純粋な黄色(pure yellow)と純粋な青色(pure blue)のうちいずれに偏ったかを表わす。
【0020】
具体的に、前記a
*値は、−a〜+aの範囲を有し、a
*の最大値(a
*max)は純粋な赤色(pure magenta)を表わし、a
*の最小値(a
*min)は純粋な緑色(pure green)を表わす。例えば、a
*値が負数であれば純粋な緑色に偏った色相であり、正数であれば純粋な赤色に偏った色相を意味する。a
*=80とa
*=50を比較した時、a
*=80がa
*=50より純粋な赤色に近く位置することを意味する。これとともに、前記b
*値は、−b〜+bの範囲を有する。b
*の最大値(b
*max)は純粋な黄色(pure yellow)を表わし、b
*の最小値(b
*min)は純粋な青色(pure blue)を表わす。例えば、b
*値が負数であれば純粋な黄色に偏った色相であり、正数であれば純粋な青色に偏った色相を意味する。b
*=50とb
*=20を比較した時、b
*=80がb
*=50より純粋な黄色に近く位置することを意味する。
【0021】
また、本発明において、「色偏差」または「色座標偏差」とは、CIE色空間における二色間の距離を意味する。すなわち、距離が遠いと色相差が大きく、距離が近いほど色相差が殆どないことを意味し、これは下記の数学式6で表されるΔE
*で表示することができる:
【0023】
これとともに、本発明において、「波長変換層」とは、光の反射、屈折、散乱、回折などを調節して入射される光の波長を制御する層であって、皮膜で屈折および/または散乱された光のトップコートで追加的に屈折および散乱することを最小化するとともに反射させる役割を有する。
【0024】
さらに、本発明において、単位「T」は、マグネシウムを含む基材の厚さを表わすものであって、単位「mm」と同一であり得る。
【0025】
本発明は表面に複数の色相が具現される発色処理された基材およびこのための基材の発色処理方法を提供する。
【0026】
従来、マグネシウム素材に色相を具現する方法としては、金属含有物質や顔料などを利用してマグネシウム表面をコーティングするPVD−ゾルゲル法、陽極酸化法などが知られている。しかし、前記方法はマグネシウム固有の金属質感が具現されないか、マグネシウムの耐久性が低下され得る。また、多様な色相を具現することが難しく、コーティングされる皮膜層が容易に剥離されて信頼性を満足させない問題点がある。
【0027】
このような問題点を克服するために、本発明は複数の色相が具現されるように発色処理された基材およびこのための基材の発色処理方法を提案する。本発明に係る発色処理された基材はマトリックス表面に皮膜形成時、表面に温度が相異なる領域を造成して皮膜の平均厚さ偏差を誘導することによって1回の発色処理で基材表面に虹のような複数の色相を具現することができる利点がある。
【0029】
本発明は、一つの実施例において、
マグネシウムを含むマトリックス;および前記マトリックス上に形成され、下記の化学式1で表される化合物を含有する皮膜を含み、
[化学式1]
M(OH)
m
前記化学式1において、
Mは、Na、K、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される1種以上を含み、
mは1または2であり、
前記マトリックス上に存在する任意の地点Aに対し、
下記の数学式1および2の条件を満足する発色処理された基材を提供する:
[数学式1]
ΔE
1*<1.0
[数学式2]
ΔE
2*>2.0
前記数学式1および2において、
ΔE
1*は地点Aの平均色座標と同一軸線上に存在する任意の地点Bの平均色座標間の偏差を表わし、
ΔE
2*は地点Aの平均色座標と、第1軸線と75°〜105°の平均偏差を有する第2軸線上に存在し、地点Aの平均色座標と同一軸線上に存在し、地点Aとの距離が3cm以上である地点Cの平均色座標間の偏差を表わす。
【0030】
図1は一つの実施例において、発色処理された基材を示したイメージである。
【0031】
図1を参照すると、マグネシウムを含むマトリックス上に存在する任意の地点Aに対し、第1軸線上に存在する任意の地点BはΔE
1*<1.0の条件を満足することができる。ここで、ΔE
1*が1.0未満であるということは地点Aと地点Bは同じ色相を均一に発色するということを意味する。
【0032】
また、第1軸線と75°〜105°の偏差(α)をなす第2軸線上に存在し、地点Aの色座標と同一軸線上に存在し、地点Aとの距離が3cm以上である地点に存在する地点Cの平均色座標偏差はΔE
2*>2.0の条件を満足することができる。具体的には、ΔE
2*>2.5の条件を満足することができる。このとき、前記ΔE
2*が超過するということは地点Aと地点Cは同一ではない、相異なる色相を発色することを意味し、このとき、地点Aと地点Cの間の距離が大きいほど平均色座標の偏差は大きくなり得る(実験例3参照)。
【0033】
また、本発明に係る発色処理された基材はマグネシウムを含むマトリックス上に存在する任意の地点Aの皮膜平均厚さと第2軸線上に存在する地点Cの皮膜平均厚さの偏差は下記の数学式3の条件を満足することができる:
【0034】
[数学式3]
10nm≦|d
1−d
2|
前記数学式3で、
d
1は地点Aの皮膜平均厚さであり、
d
2は地点Cの皮膜平均厚さである。
【0035】
図2は一つの実施例において、発色処理された基材の構造を図示したイメージである。
【0036】
図2を参照すると、マグネシウムを含むマトリックス上に皮膜が形成されるが、形成された皮膜は一定の厚さを有する構造ではなく、漸層的に厚さが増加するかまたは減少する構造を有し、任意の二地点の位置および距離により厚さ偏差を有し得る。すなわち、マトリックス上の任意の地点Aの皮膜平均厚さ(d
1)は第2軸線上に存在する地点Cの皮膜平均厚さ(d
2)との厚さ偏差を有し得る。前記二地点は厚さ偏差が大きいほど平均色座標偏差が大きくなり得、このとき、平均厚さ偏差は10nm以上であり得る。
【0037】
このとき、前記皮膜の平均厚さは特に制限されないが、具体的には50nm〜2μm、より具体的には100nm〜1μmであり得る。
【0038】
また、前記皮膜は、表面に入射される光を散乱および屈折させることができるものであれば特に制限されない。具体的に前記皮膜としては、ナトリウム水酸化物(NaOH)、カリウム水酸化物(KOH)、マグネシウム水酸化物(Mg(OH)
2)、カルシウム水酸化物(Ca(OH)
2)およびバリウム水酸化物(Ba(OH)
2)の中のいずれか一つ以上を含むことができ、より具体的にはマグネシウム水酸化物(Mg(OH)
2)を含むことができる。
【0039】
一つの実施例において、前記発色処理された基材に含まれた皮膜のX線回折分析を遂行した。その結果、基材表面に形成された皮膜は2θで表示される18.5±1.0°、38.0±1.0°、50.5±1.0°、58.5±1.0°、62.0±1.0°および68.5±1.0°の回折ピーク値を有するものと確認された。これは基材表面に形成された皮膜がブル−サイト(brucite)結晶型を有するマグネシウム水酸化物(Mg(OH)
2)で構成されることを意味する。このような結果から、本発明に係る発色処理された基材はマグネシウム水酸化物(Mg(OH)
2)を含むことが分かる(実験例2参照)。
【0040】
さらに、前記マトリックスは、発色処理された基材が発色処理される以前の基材と同一であり得、前記マトリックスとしては、マグネシウムを含み、電気・電子製品素材分野においてフレームとして使用できるものであれば、その種類や形態は特に制限されない。一つの例として、マグネシウムで構成されるマグネシウム基材を用いることができ、それ以外に表面にマグネシウムが分散された形態のステンレス鋼またはチタニウム(Ti)基材などを用いることができる。
【0041】
一方、本発明に係る発色処理された基材は、皮膜上に形成された波長変換層;および前記波長変換層上に形成されたトップコートをさらに含むことができる。
【0042】
このとき、前記波長変換層としては、皮膜で屈折および/または散乱された光が追加的にトップコートで屈折および散乱することを最小化させ、光反射を誘導することによって、皮膜によって発色された色相を維持できるものであれば、その種類や形態は特に制限なく用いることができる。具体的に前記波長変換層は、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、チタニウム(Ti)、金(Au)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、ジルコニウム(Zr)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、コバルト(Co)、カドミウム(Cd)または銅(Cu)を含む金属、および前記金属のイオンからなる群から選択される1種以上を含むことができ、具体的には金属であるクロム(Cr)を含むことができる。また、前記金属は、金属粒子の形態を有することができ、波長変換層形成過程にて窒素ガス、エタンガス、酸素ガスなどと反応して金属窒化物、金属酸化物、金属炭化物などの多様な形態を含むことができる。さらに、前記波長変換層は金属が皮膜上稠密に積層されて表面をすべて覆う連続層、または皮膜上に金属が散開された形態の不連続層であり得る。
【0043】
また、前記波長変換層の平均厚さは、皮膜によって発色される色相の変色を防止できれば、特に制限されない。具体的に前記平均厚さは5nm〜200nmの条件を満足することができる。より具体的には、5nm〜150nm、10nm〜100nm、5nm〜20nm、10nm〜15nm、20nm〜40nm、10nm〜30nm、または30nm〜50nmであり得る。
【0044】
さらに、前記トップコートは、マグネシウムを含む基材表面の耐スクラッチ性および耐久性を向上させるためにさらに含まれ得る。このとき、前記トップコートを形成するクリアコーティング剤は、金属、金属酸化物または金属水酸化物上のコーティングに適用可能なクリアコーティング剤であれば特に制限されない。より具体的には、金属コーティングに適用可能な艶消しクリアコーティング剤または艶有り/艶消しクリアコーティング剤などが挙げられる。
【0045】
また、トップコートを含む発色処理された基材は、35℃、5重量%塩水噴霧72時間経過後密着性評価時、5%以下のトップコート剥離率を有し得る。
【0046】
一つの実施例において、艶消しまたは艶有り/艶消しトップコートを含む発色処理された基材を対象に、35℃、5重量%塩水を噴霧し、72時間が経過した後、クロス−カットテープテスト方法を遂行した。その結果、剥離されたトップコートの面積は試片全体面積を基準として5%以下であることを確認することができる。このような結果から、本発明に係るトップコートが形成された前記基材は発色処理された基材とトップコートの間の密着力が優秀であることが分かる(実験例4参照)。
【0047】
本発明は他の一つの実施例において、
マグネシウムを含むマトリックスを水酸化溶液に浸漬する段階を含むものの、
水酸化溶液に浸漬された前記マトリックスは、
第1温度(T
1)を有する領域;および
第2温度(T
2)を有する領域を含み、
第1温度(T
1)と第2温度(T
2)の差は5℃以上である基材の発色処理方法を提供する。
【0048】
本発明に係る基材の発色処理方法は、マグネシウムを含むマトリックスを水酸化溶液に浸漬して表面に皮膜を形成することによって遂行され得、前記皮膜の平均厚さ偏差が誘導されるように、水酸化溶液に浸漬時にマトリックス表面に温度が互いに異なる領域を作ることができる。すなわち、互いに異なる温度を有する第1温度(T
1)および第2温度(T
2)の平均温度差である5℃以上、具体的には10℃以上であり得る。例えば、前記温度差である60℃以下であり得る。
【0049】
例えば、100℃、10重量%NaOH水溶液が入っている容器を表面が150℃に加熱された加熱反応器に設置し、容器の底が加熱反応器の熱線によって150℃になるように調節することができる。その後、マトリックスであるマグネシウムを含む試片(横4cm×縦7cm)が容器底に接するように80分間、1回浸漬することによって遂行され得る。ここで、前記マトリックス表面はNaOH水溶液に浸漬されて最小100℃の表面温度を維持しつつ容器底と最も距離が離れた地点から容器底と触れ合う地点に少しずつ表面温度が昇温する様相の温度領域を有することができる。
【0050】
また、前記第1温度(T
1)および第2温度(T
2)は互いに独立的に95℃以上であり得る。具体的に、水酸化溶液の平均温度は100℃以下に制御しながら、マトリックスの一側に100℃以上の熱源を隣接させた状態で発色を進める方法を適用することができる。
【0051】
ここで、前記第1温度(T
1)および第2温度(T
2)は、温度差を通じて多様な発色を具現することができる場合であれば特に制限されるものではない。具体的に、第1温度(T
1)は95〜100℃、98〜105℃または100〜115℃範囲であり得る。また、第2温度(T
2)は100〜115℃、105〜120℃、または105〜150℃範囲であり得る。
【0052】
さらに、前記水酸化溶液としては、水酸化基(−OH基)を含む溶液であれば特に制限なく用いることができる。具体的には、前記水酸化溶液は、NaOH、KOH、Mg(OH)
2、Ca(OH)
2およびBa(OH)
2からなる群から選択される1種以上が溶解された水溶液を用いることができる。
【0053】
一つの実施例において、マグネシウムを含むマトリックスを対象に、水酸化溶液による発色速度、発色力および色相均一度を評価した。その結果、水酸化溶液にNaOHが溶解された水溶液を用いた場合、蒸留水を用いた場合と対比して発色速度が4倍以上早いことが確認された。また、表面に発色される色相の発色力が優秀で、具現される色相が均一であった。このような結果から、NaOHなどの金属水酸化物が溶解された溶液を水酸化溶液として用いる場合、マトリックス表面に皮膜を迅速かつ均一に形成し、優れた発色力で色相を均一に具現することができることが分かる(実験例1参照)。
【0054】
また、本発明に係る製造方法は、浸漬条件によりマトリックス表面に形成される皮膜の厚さを制御することができる。ここで、前記マトリックスは厚さによって熱伝導量が異なるため、マトリックスの厚さが異なる場合、同じ条件下で浸漬されたマトリックスであっても表面に形成される皮膜の厚さが異なり得る。したがって、マグネシウムを含むマトリックスの厚さにより浸漬条件を調節して皮膜の厚さを制御することが好ましい。
【0055】
一つの例として、マグネシウムを含むマトリックスの厚さが0.4〜0.7Tである場合、前記水酸化溶液の濃度は、1重量%〜80重量%、より具体的には1重量%〜70重量%;5重量%〜50重量%;10重量%〜20重量%;1重量%〜40重量%;30重量%〜60重量%;15重量%〜45重量%または5重量%〜20重量%であり得る。合わせて、浸漬時間は1分〜500分、具体的には10分〜90分の間遂行され得る。本発明は、前記条件範囲で基材表面に経済的に多様な色相を具現することができ、皮膜厚さの過度な増加による基材固有の光沢度減少を防止することができる。
【0056】
図3を参照すると、マトリックスの浸漬時間が増加するにつれて表面に形成される皮膜の平均厚さが増加し、発色される色相が転換されることを確認することができる。これは表面に具現される色相が皮膜の厚さにより転換されることを意味する。したがって、基材表面に具現される色相は、マトリックスを浸漬させる水酸化溶液の濃度、温度および浸漬時間の調節を通じて皮膜の形成速度および平均厚さを制御することによって調節可能であることが分かる(実験例2参照)。
【0057】
さらに、本発明に係る基材の発色処理方法において、前記水酸化溶液に浸漬する段階は、
N
1濃度の水酸化溶液で浸漬する第1浸漬段階;および
N
n濃度の水酸化溶液で浸漬する第n浸漬段階を含み、
第1および第n浸漬段階で、水酸化溶液の濃度はそれぞれ独立的に下記の数学式4および5の条件を満足し、nは2以上6以下の整数である方法で遂行され得る:
[数学式4]
8≦N
1≦25
[数学式5]
|N
n−1−N
n|>3
前記数学式4および5において、
N
1およびN
nは各段階別水酸化溶液の濃度を表わし、単位は重量%である。
【0058】
前述した通り、前記水酸化溶液に浸漬する段階はマグネシウムを含む基材の表面に色相を具現する段階であって、形成される皮膜の厚さ調節を通じて表面に発色する色を調節することができる。このとき、前記皮膜の厚さは水酸化溶液の濃度により制御が可能であるため、マトリックスを浸漬させる水酸化溶液の濃度を N
1〜N
n、具体的にN
1〜N
6;N
1〜N
5;N
1〜N
4;N
1〜N
3;またはN
1〜N
2;に細分化して順次浸漬する場合、表面に具現される色相の微細な色相差を調節することができる。
【0059】
一方、本発明に係る基材の発色処理方法は、
水酸化溶液に浸漬する段階の前に、表面を前処理する段階;
水酸化溶液に浸漬する段階の後で、リンシングする段階;および
水酸化溶液に浸漬する段階の後で、波長変換層を形成する段階のうちいずれか一つ以上の段階をさらに含むことができる。
【0060】
このとき、前記表面を前処理する段階は、マグネシウムを含むマトリックスを水酸化溶液に浸漬する前に表面をアルカリ洗浄液で処理して表面に残留する汚染物質を除去するか、研磨を遂行する段階である。このとき、前記アルカリ洗浄液としては、金属、金属酸化物または金属水酸化物の表面を洗浄のために当業界で通常的に用いられるものであれば、特に制限されない。また、前記研磨はバフィング(buffing)、ポリッシング(polishing)、ブラスティング(blasting)または電解研磨などによって遂行され得るがこれに制限されるものではない。本段階では、マグネシウムを含むマトリックス表面に存在する汚染物質やスケールなどを除去できるだけでなく、表面の表面エネルギーおよび/または表面状態、具体的に表面の微細構造変化を通じて皮膜形成速度を制御することができる。すなわち、研磨が遂行されたマトリックスに形成された皮膜の厚さは同じ条件下で形成された研磨が遂行されなかったマトリックスの皮膜厚さと異なり得、これに伴い、表面に発色される色相が互いに異なり得る。
【0061】
また、前記リンシングする段階は、マトリックスを水酸化溶液に浸漬する段階の後で、マトリックス表面をリンシングすることによって、表面に残留する水酸化溶液を除去する段階である。この段階ではマトリックス表面に残留する水酸化溶液を除去することによって残留水酸化溶液による追加的な皮膜形成を防止することができる。
【0062】
さらに、前記波長変換層を形成する段階は、マグネシウムを含む基材表面の耐スクラッチ性および耐久性を向上させるためにトップコートを形成する場合、皮膜上に波長変換層を形成することによって皮膜によって具現された色相がトップコートによって変色することを防止する段階である。このとき、前記波長変換層は波長変換層を形成するために当業界で通常的に用いられる方法によって形成され得る。具体的には真空蒸着、スパッタリング、イオンメッキまたはイオンビーム蒸着などの方法によって形成され得る。これとともに、前記波長変換層としてはトップコートによる発色光の再屈折および散乱を最小化し、波長を反射することによって、皮膜によって発色される色相を維持できるものであれば、特に制限なく用いることができる。一つの例として、前記波長変換層は、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、チタニウム(Ti)、金(Au)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、ジルコニウム(Zr)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、コバルト(Co)、カドミウム(Cd)または銅(Cu)を含む金属、および前記金属のイオンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例および実験例によってより詳細に説明する。
【0064】
ただし、下記の実施例および実験例は本発明を例示するだけのもので、本発明の内容は下記の実施例および実験例に限定されるものではない。
【0065】
実施例1.
マグネシウムを含むマトリックスとして準備された試片(横4cm×縦7cm×0.4T)をアルカリ洗浄液に浸漬して脱脂した。その後、100℃、10重量%NaOH水溶液が入っている容器を表面が150℃に加熱された加熱反応器に設置し、容器底の温度が加熱反応器熱線によって150℃に近くなるように調節した。試片の横面が容器底に当たるように脱脂された試片を容器に浸漬させて80分間、1回浸漬し、試片を蒸溜水でリンシングした後、乾燥オーブンで乾燥させて発色処理された試片を製造した。
【0066】
前記試片を目視で観察する場合、前記試片の表面は虹のように赤色、黄色、緑色などが順次発色することを確認することができた。
【0067】
実施例2.
前記実施例1と同じ方法で遂行して発色処理された試片を製造した。その後、前記試片の上に艶消しクリアコーティングを遂行して艶消しトップコートが形成された発色処理された試片を製造した。このとき、コーティングされた艶消しクリアの厚さは約5μm以下である。
【0068】
実施例3.
前記実施例1と同じ方法で遂行して発色処理された試片を製造した。その後、前記試片の上に艶有り/艶消しクリアコーティングを遂行して艶有り/艶消しトップコートが形成された発色処理された試片を製造した。このとき、コーティングされた艶有り/艶消しクリアの厚さは約5μm以下である。
【0069】
実験例1.水酸化溶液の種類による基材の発色効率評価
水酸化溶液の種類による発色処理された基材の発色速度および発色力を評価するために下記のような実験を遂行した。
【0070】
マグネシウムを含む試片(横1cm×縦1cm×0.4T)をアルカリ洗浄液に浸漬して脱脂し、脱脂された試片を100℃、10重量%NaOH水溶液または蒸溜水に40分、1時間および2時間の間それぞれ浸漬させた。その後、試片を蒸溜水でリンシングし、乾燥オーブンで乾燥させて表面に具現された色相を目視で評価した。
【0071】
その結果、10重量%NaOH水溶液に浸漬された試片は蒸溜水に浸漬された試片と対比して、発色速度が早かった。より具体的には、10重量%NaOH水溶液に浸漬された試片は浸漬10分が経過した時点で銀色に発色し、その後黄色を経て40分以内に橙色に発色した。しかし、蒸溜水に40分間浸漬された試片の場合、表面の色相変化量が微小であり、発色未処理された基材と比較して色相差が小さく、1時間の間浸漬された試片は徐々に黄色に発色された。また、2時間の間浸漬された試片は黄色に発色されるものの、10重量%NaOH水溶液に浸漬された試片と対比して発色力が顕著に落ちるものと示された。
【0072】
このような結果から、基材の表面処理はNaOH、KOH、Mg(OH)
2、Ca(OH)
2、Ba(OH)
2などを含む水酸化溶液で遂行した方が工程効率が優れるだけでなく、発色される色相の発色力が優秀であることが分かる。
【0073】
実験例2.水酸化溶液浸漬時間による基材の発色評価
マグネシウムを含むマトリックスの浸漬時間による発色度を評価するために下記のような実験を遂行した。
【0074】
横1cm×縦1cm×0.4Tのマグネシウムを含む試片をアルカリ洗浄液に浸漬して脱脂し、脱脂された試片を100℃、10重量%NaOH水溶液に240分間浸漬した。このとき、前記試片をNaOH水溶液に浸漬した直後、5〜10分間隔で発色される色相を目視で評価した。また、試片の表面に生成された皮膜の成分および厚さを確認するために、浸漬10分、170分および240分が経過した時点の試片を対象に、皮膜のX線回折分析および透過電子顕微鏡(TEM)撮影を遂行した。前記結果は
図3に示した。
【0075】
本発明に係る発色処理された基材は水酸化溶液に浸漬する時間により発色される色相が互いに異なるものと示された。より具体的には、発色処理されていない銀色の試片を水酸化溶液に浸漬すると、30分が経過した後、黄色、橙色、赤色、紫色、藍色および緑色に順次発色され、このような色相変化は時間が経過するにつれて一定の周期を有して繰り返されるものと示された。
【0076】
また、10重量%NaOH水溶液に浸漬した後、10分、170分および240分が経過した試片の皮膜に対するX線回折結果、三つの試片の皮膜すべてが、2θで表示される18.5±1.0°、38.0±1.0°、50.5±1.0°、58.5±1.0°、62.0±1.0°および68.5±1.0°の回折ピーク値を有してブル−サイト(brucite)結晶型のマグネシウム水酸化物(Mg(OH)
2)を含むことが確認された。
【0077】
さらに、
図3を詳察すると、前記皮膜の平均厚さは浸漬された時間が経過するにつれてそれぞれ約200nm、600nmおよび900nmに増加することが分かる。
【0078】
このような結果から、本発明に係る発色処理された基材はマグネシウム水酸化物(Mg(OH)
2)を含有する皮膜を含むことによって発色されることが分かる。また、マグネシウムを含む基材の浸漬時間により表面に形成される皮膜の厚さを制御することができ、これを通じて発色される色相も調節できることが分かる。
【0079】
実験例3.発色処理された基材の発色色相評価
本発明に係る発色処理された基材の発色される色相の均一性および多様性を評価するために下記のような実験を遂行した。
【0080】
前記実施例1で製造された試片上に存在する任意の地点Aを設定し、地点Aに対してCIE色空間での色座標(L
*、a
*、b
*)を測定した。また、
図1に示した通り、地点Aに対する第1軸線上に存在する任意の地点Bを設定し、地点Bの色座標を測定した。その後、前記第1軸線と75°〜105°の平均偏差(α)をなす第2軸線上に存在し、地点Aの色座標と同一軸線上に存在し、地点Aとの距離が3cmである地点に存在する地点Cを設定し、地点Cの色座標を測定した。前記で測定された3点の平均色座標の偏差を求めて基材表面に発色される色相の均一性および多様性を評価し、その結果を下記の表1に表わした。
【0081】
【表1】
【0082】
表1に示された通り、本発明に係る発色処理された基材は1回の発色処理でマグネシウム表面に複数の色相を具現することができ、同一色相に対する色相均一性が優秀であることが分かる。
【0083】
より具体的には、実施例1で発色処理されたマグネシウム試片上に存在する地点Aと地点Aに対する第1軸線上に存在する任意の地点Bの平均色座標偏差(ΔE
1*)は0.585であり、ΔE
1*<1.0の条件を満足するものと示された。また、第1軸線と75°〜105°の平均偏差(α)をなす第2軸線上に存在し、地点Aの色座標と同一軸線上に存在し、地点Aとの距離が3cmである地点に存在する地点Cの平均色座標偏差(ΔE
2*)は20.523で、ΔE
2*>2.0の条件を満足するものと示された。これは地点Bは地点Aと同じ色相に均一に発色し、地点Cは地点Aとは完全に相異なる色相が発色されることを意味する。
【0084】
前記実施例1の試片を図示した
図1を詳察すると、前記試片は横面が150℃の容器底に触れ合うように浸漬され、容器底と触れ合った試片領域を基準として色が変色して発色した。すなわち、マグネシウムを含むマトリックス上で同じ温度下で皮膜が形成された地点Aおよび地点Bは発色皮膜である皮膜の平均厚さ偏差が顕著に低いため、ΔE
1*<1.0の条件を満足する同じ色相を発色することができる。反面、地点Aとの皮膜が形成される温度差が5℃以上であった地点Cの場合、約10nm以上の皮膜の平均厚さ偏差によってΔE
2*>2.0の条件を満足する完全に相異なる色相が発色することを確認することができる。
【0085】
これから、本発明に係る発色処理された基材は皮膜形成時、マトリックス表面に相異なる温度領域を造成して皮膜の平均厚さ偏差を誘導することによって1回の発色処理でマグネシウム表面に複数の色相を具現することが分かる。
【0086】
実験例4.トップコートが形成された発色処理された基材の物性評価
トップコートが形成された発色処理された基材の耐腐食性および密着力を評価するために下記のような実験を遂行した。
【0087】
塩水噴霧試験機(SST、Salt SprayTester)を利用して、35℃で実施例2でトップコートが形成された発色処理された試片に5重量%の塩水を均一に噴射し、塩水噴霧72時間が経過すると、試片の表面耐腐食性;および発色処理された基材と表面に形成されたトップコートの密着力を評価した。このとき、前記密着力はクロス−カットテープテスト方法で評価した。より詳細に、コーティングされたトップコートにナイフを利用して1mm間隔の横6線と縦6線が互いに交差するようにカッティングした後、横線と縦線の交差点にテープを堅固に付着させ、素早く剥がす時の試片全体面積に対する剥離されたトップコートの面積を測定する方法で密着力を評価した。
【0088】
その結果、本発明に係るトップコートが形成された発色処理された基材は耐腐食性が優秀で、発色処理された基材とトップコートの間の密着力が優秀であることが分かる。より具体的には、艶消しトップコートが形成された実施例2の試片は塩無噴水72時間経過後にも腐食による表面変形が発生しないものと示された。また、耐腐食性試験が遂行された試片に対する密着力評価結果、テープによって剥離されるトップコートの面積はトップコート全体面積の5%以下であることが確認された。
【0089】
このような結果から、本発明に係るトップコートが形成された発色処理された基材は優秀な耐腐食性を有するだけでなく、発色処理された基材とトップコート間の優秀な密着力を有することが分かる。