特許第6286562号(P6286562)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6286562表面処理された基材およびこのための基材の表面処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286562
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】表面処理された基材およびこのための基材の表面処理方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 28/00 20060101AFI20180215BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20180215BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20180215BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20180215BHJP
   C23C 22/60 20060101ALI20180215BHJP
   C01B 13/14 20060101ALI20180215BHJP
   C01D 1/04 20060101ALI20180215BHJP
   C01F 5/14 20060101ALI20180215BHJP
   C01F 11/02 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   C23C28/00 C
   B32B7/02 103
   B32B15/01 K
   B32B9/00 A
   C23C22/60
   C01B13/14 A
   C01D1/04 M
   C01F5/14
   C01F11/02 A
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-543199(P2016-543199)
(86)(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公表番号】特表2017-508070(P2017-508070A)
(43)【公表日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】KR2014012917
(87)【国際公開番号】WO2015099496
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2016年6月27日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0164044
(32)【優先日】2013年12月26日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2013-0164045
(32)【優先日】2013年12月26日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2013-0164046
(32)【優先日】2013年12月26日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2013-0164047
(32)【優先日】2013年12月26日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0190347
(32)【優先日】2014年12月26日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0190373
(32)【優先日】2014年12月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】チョン、 ヒョンジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ギョン−ボ
(72)【発明者】
【氏名】パク、 ハ ソン
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ム ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ギョン シク
(72)【発明者】
【氏名】イ、 ヒョン−ヨン
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0288046(US,A1)
【文献】 特開平07−034264(JP,A)
【文献】 特開2009−221507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 22/00−30/00
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材マトリックス;
前記金属材マトリックス上に形成され、下記の化学式1で表される化合物を含有する皮膜;
前記皮膜上に形成された波長変換層;および
前記波長変換層上に形成されたトップコートを含む、表面処理された基材であって、
前記波長変換層は、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、チタニウム(Ti)、金(Au)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、ジルコニウム(Zr)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、コバルト(Co)、カドミウム(Cd)、または銅(Cu)を含む金属、および前記金属のイオンからなる群から選択される1種以上を含み、
前記皮膜の平均厚さは、50nm〜2μmであり、
前記波長変換層の平均厚さは、5nm〜200nmである、表面処理された基材
[化学式1]
M(OH)
前記化学式1において、
Mは、Na、K、Mg、Ca、およびBaからなる群から選択される1種以上を含み、
mは、1または2である。
【請求項2】
トップコート上に存在する任意の領域(横1cmおよび縦1cm)に含まれる任意の3点は、
各地点間の平均色座標偏差(ΔΔΔ)がΔL<0.5、Δa<0.7およびΔb<0.6の中の一つ以上の条件を満足する、請求項1に記載の表面処理された基材。
【請求項3】
金属材マトリックスはステンレス鋼またはチタニウム(Ti)をさらに含む、請求項1または2に記載の表面処理された基材。
【請求項4】
金属材マトリックスを水酸化溶液に浸漬することにより、金属材マトリックス上に、下記の化学式1で表される化合物を含有する皮膜を形成する段階;
前記皮膜上に波長変換層を形成する段階;および
前記波長変換層上にトップコートを形成する段階を含む、基材の表面処理方法であって、
前記波長変換層は、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、チタニウム(Ti)、金(Au)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、ジルコニウム(Zr)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、コバルト(Co)、カドミウム(Cd)、または銅(Cu)を含む金属、および前記金属のイオンからなる群から選択される1種以上を含み、
前記皮膜の平均厚さは、50nm〜2μmであり、
前記波長変換層の平均厚さは、5nm〜200nmであり、
前記水酸化溶液の温度が、95℃〜110℃である、基材の表面処理方法:
[化学式1]
M(OH)
前記化学式1において、
Mは、Na、K、Mg、Ca、およびBaからなる群から選択される1種以上を含み、
mは、1または2である
【請求項5】
水酸化溶液は、NaOH、KOH、Mg(OH)、Ca(OH)、およびBa(OH)からなる群から選択される1種以上を含む、請求項に記載の基材の表面処理方法。
【請求項6】
水酸化溶液の濃度は、1重量%〜40重量%である、請求項に記載の基材の表面処理方法。
【請求項7】
金属材マトリックス上に皮膜を形成する段階は、
金属材マトリックスをN濃度の水酸化溶液で浸漬する第1浸漬段階;および
金属材マトリックスをN濃度の水酸化溶液で浸漬する第n浸漬段階を含み、
第1浸漬段階および第n浸漬段階において、水酸化溶液の濃度はそれぞれ独立的に下記の数学式1および2の条件を満足し、nは2以上6以下の整数である、請求項4〜6のいずれか1項に記載の基材の表面処理方法:
[数学式1]
8≦N≦25
[数学式2]
|Nn−1−N| >3
前記数学式1および2において、
およびNは各段階別水酸化溶液の濃度を表し、単位は重量%である。
【請求項8】
波長変換層を形成する段階は、真空蒸着、スパッタリング、イオンメッキ、またはイオンビーム蒸着によって遂行される、請求項4〜7のいずれか1項に記載の基材の表面処理方法。
【請求項9】
金属材マトリックス上に皮膜を形成する段階の前に、表面を前処理する段階;および
金属材マトリックス上に皮膜を形成する段階の後に、リンシングする段階のうちいずれか一つ以上の段階をさらに含む、請求項4〜8のいずれか1項に記載の基材の表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は腐食抵抗性が優秀で、表面に色相を発色する表面処理された基材およびこのための基材の表面処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マグネシウムは実用金属のうち超軽量金属に属する金属で、耐摩耗性が優秀で、日光に強く、環境にやさしいが、多様な色相具現が難しいという問題がある。また、電気化学的に最も低く、きわめて活性的な金属であるため、発色処理がなされていない場合、大気中または溶液中での腐食が非常に早く進行されるため、産業への応用が非常に困難であるという問題がある。
【0003】
最近の産業全般にわたる軽量化の傾向によってマグネシウム産業が注目を浴びている中、モバイルフォンケース部品などの電気、電子部品材料分野で金属質感外装材がトレンドになり、マグネシウムのこのような問題点を改善しようとする研究が活発に行われている。
【0004】
その結果、大韓民国公開特許第2011−0016750号はマグネシウム合金からなる基材の表面に金属質感の具現および耐腐食性確保のために金属含有物質を乾式コーティングした後、ゾルゲルコーティングするPVD−ゾルゲル法を提示しており、大韓民国公開特許第2011−0134769号は化学研磨を利用してマグネシウムを含む基材の表面に光沢を付与し、顔料が溶解された塩基性電解液に前記基材を陽極酸化させて表面を発色させる陽極酸化法を提示している。
【0005】
しかし、前記PVD−ゾルゲル法の場合、基材表面に金属質感は具現されるものの、多様な色相の具現が難しいという問題がある。また、陽極酸化法を利用して発色処理する場合、基材表面には不透明な酸化膜が形成されるだけでなく、金属固有の金属質感の具現が困難であるという問題がある。
【0006】
したがって、マグネシウムを含む基材の実用化のためには前記基材の表面を化学的、電気化学的または物理的に処理して腐食抵抗性を向上させるとともに、表面に所望の色相を具現できる技術が切に求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は腐食抵抗性が優秀で、表面に色相を発色する表面処理された基材を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は前記基材を製造するための基材の表面処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、
本発明は、一つの実施例において、
金属材マトリックス;
前記金属材マトリックス上に形成され、下記の化学式1で表される化合物を含有する皮膜;
前記皮膜上に形成された波長変換層;および
前記波長変換層上に形成されたトップコートを含む表面処理された基材を提供する:
[化学式1]
M(OH)
前記化学式1において、
Mは、Na、K、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される1種以上を含み、
mは、1または2である。
また、本発明は他の一つの実施例において、
金属材マトリックス上に皮膜を形成する段階;
前記皮膜上に波長変換層を形成する段階;および
前記波長変換層上にトップコートを形成する段階を含む基材の表面処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る表面処理された基材は、金属材マトリックス上に均一な厚さの皮膜を含んで耐食性を向上させることができるだけでなく、表面に均一に具現することができる。また、前記皮膜上に波長変換層およびトップコートを順次含むことによって、皮膜によって具現された色相が変色することなく基材の耐スクラッチ性および耐久性を向上させることができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一つの実施例において、透過電子顕微鏡を利用して浸漬時間による皮膜の厚さを測定したイメージである:このとき、Aは浸漬時間が10分である基材で、Bは浸漬時間が170分である基材、Cは浸漬時間が240分である基材である。
図2図2は、一つの実施例において、透過電子顕微鏡を利用してクロム(Cr)層を含む表面処理された基材を撮影したイメージである:このとき、D1はクロム層の厚さで、その値は約10nmである。
図3図3は、一つの実施例において、透過電子顕微鏡を利用してアルミニウム(Al)層を含む表面処理された基材を撮影したイメージである:このとき、D2はアルミニウム層の厚さで、その値は約13nmである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な実施例を有することができるところ、特定実施例を図面に例示して詳細に説明する。
【0013】
しかし、これは本発明を特定の実施形態に限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されるべきである。
【0014】
本発明において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加可能性をあらかじめ排除しないものと理解されるべきである。
【0015】
また、本発明で添付された図面は説明の便宜のために拡大または縮小して図示されたものと理解されるべきである。
【0016】
以下、本発明について図面を参照して詳細に説明するが、図面符号にかかわらず同一であるか対応する構成要素に対しては同じ参照番号を付与し、これに対する重複する説明は省略する。
【0017】
本発明において、「色座標」とは、CIE(国際照明委員会、Commossion International de l「Eclairage)で規定した色相値であるCIE色空間での座標を意味し、CIE色空間での任意の位置は、L*、a*、b*の三つの座標値で表現され得る。
【0018】
ここで、L値は明度を表すもので、L=0であれば黒色(black)を表わし、L=100であれば白色(white)を表わす。また、a値は該当色座標を有する色が純粋な赤色(pure magenta)と純粋な緑色(pure green)のうちいずれに偏ったかを表わし、b値は該当色座標を有する色が純粋な黄色(pure yellow)と純粋な青色(pure blue)のうちいずれに偏ったかを表わす。
【0019】
具体的に、前記a値は、−a〜+aの範囲を有し、aの最大値(amax)は純粋な赤色(pure magenta)を表わし、aの最小値(amin)は純粋な緑色(pure green)を表わす。例えば、a値が負数であれば純粋な緑色に偏った色相であり、正数であれば純粋な赤色に偏った色相を意味する。a=80とa=50を比較した時、a=80がa=50より純粋な赤色に近く位置することを意味する。また、前記b値は、−b〜+bの範囲を有する。bの最大値(bmax)は純粋な黄色(pure yellow)を表わし、bの最小値(bmin)は純粋な青色(pure blue)を表わす。例えば、b値が負数であれば純粋な黄色に偏った色相であり、正数であれば純粋な青色に偏った色相を意味する。b=50とb=20を比較した時、b=80がb=50より純粋な黄色に近く位置することを意味する。
【0020】
さらに、本発明において、「色偏差」または「色座標偏差」とは、CIE色空間における二色間の距離を意味する。すなわち、距離が遠いと色相差が大きく、距離が近いほど色相差が殆どないことを意味し、これは下記の数学式3で表されるΔEで表示することができる:
【0021】
【数1】
【0022】
これとともに、本発明において、「波長変換層」とは、光の反射、屈折、散乱、回折などを調節して入射される光の波長を制御する層であって、皮膜で屈折および/または散乱された光のトップコートで追加的に屈折および散乱することを最小化するとともに反射させる役割を有する。
【0023】
最後に、本発明で単位「T」は、マグネシウムを含む基材の厚さを表わすものであって、単位「mm」と同一であり得る。
【0024】
本発明は表面処理された基材およびこのための基材の表面処理方法を提供する。
【0025】
従来、金属材に色相を具現する方法としては、金属含有物質や顔料などを利用してマグネシウム表面をコーティングするPVD−ゾルゲル法、陽極酸化法などが知られている。しかし、前記方法はマグネシウムの耐久性が低下する恐れがあり、多様な色相を具現し難い。また、コーティングされる皮膜層が容易に剥離されて信頼性を満足させない問題点がある。
【0026】
このような問題点を克服するために、本発明は水酸化溶液に金属材マトリックスを浸漬した後、波長変換層およびトップコートを順次積層させて製造される表面処理された基材を提案する。本発明に係る前記基材は金属材マトリックス上に皮膜、波長変換層およびトップコートを順次含んで基材表面に色相を均一に発色させるとともに、基材の耐スクラッチ性および耐久性を向上させることができる利点がある。
【0027】
以下、本発明をより具体的に説明する。
本発明は、一つの実施例において、
金属材マトリックス;
前記金属材マトリックス上に形成され、下記の化学式1で表される化合物を含有する皮膜;
前記皮膜上に形成された波長変換層;および
前記波長変換層上に形成されたトップコートを含む表面処理された基材を提供する:
[化学式1]
M(OH)
前記化学式1において、
Mは、Na、K、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される1種以上を含み、
mは、1または2である。
【0028】
本発明に係る表面処理された基材は、金属材マトリックス上に皮膜を含み、前記皮膜上に波長変換層およびトップコートを順次積層した構造を有することができ、このような積層構造は金属材マトリックスの一面または両面に形成され得る。このとき、前記皮膜は金属材マトリックス上に位置して色相を具現する役割を遂行し、前記最外郭層であるトップコートは基材の耐スクラッチ性および耐久性を向上させる役割を遂行することができるが、金属材マトリックス上に皮膜とトップコートだけを形成する場合、皮膜によって具現された色相がトップコートによって変色する問題がある。しかし、本発明に係る表面処理された基材は、皮膜とトップコートの間に波長変換層を形成することによって、トップコートによる変色を防止することができる。
【0029】
このとき、前記波長変換層としては、皮膜で屈折および/または散乱された光が追加的にトップコートで屈折および散乱することを最小化させ、光反射を誘導することによって、皮膜によって発色された色相を維持できるものであれば、その種類や形態は特に制限なく用いることができる。具体的に前記波長変換層は、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、チタニウム(Ti)、金(Au)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、ジルコニウム(Zr)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、コバルト(Co)、カドミウム(Cd)または銅(Cu)を含む金属、および前記金属のイオンからなる群から選択される1種以上を含むことができ、具体的には金属であるクロム(Cr)を含むことができる。また、前記金属は、金属粒子の形態を有することができ、波長変換層形成過程にて窒素ガス、エタンガス、酸素ガスなどと反応して金属窒化物、金属酸化物、金属炭化物などの多様な形態を含むことができる。さらに、前記波長変換層は金属が皮膜上稠密に積層されて表面をすべて覆う連続層、または皮膜上に金属が散開された形態の不連続層であり得る。
【0030】
また、前記波長変換層の平均厚さは、皮膜によって発色される色相の変色を防止できれば、特に制限されない。具体的に前記平均厚さは5nm〜200nmの条件を満足することができる。より具体的には、5nm〜150nm、10nm〜100nm、5nm〜20nm、10nm〜15nm、20nm〜40nm、10nm〜30nm、または30nm〜50nmであり得る。
【0031】
図2および図3を参照すると、金属材マトリックス上に皮膜、波長変換層およびトップコートが順次積層された構造を有し、前記波長変換層はクロム(Cr)またはアルミニウム(Al)を含む本発明に係る表面処理された基材を透過電子顕微鏡撮影した結果、各波長変換層の平均厚さはそれぞれ約10nmおよび13nmであることを確認することができる。
【0032】
さらに、本発明に係る表面処理された基材において、トップコート上に存在する任意の領域(横1cmおよび縦1cm)に含まれる任意の3点は、各点間の平均色座標偏差(ΔL、Δa、Δb)が、ΔL<0.5、Δa<0.7およびΔb<0.6の中の一つ以上の条件を満足することができる。
【0033】
具体的には本発明に係る表面処理された基材は、前記条件のうち2以上を満足させることができ、より具体的には前記条件をすべて満足させることができる。
【0034】
一つの実施例において、金属材マトリックスである1cm×1cmの試片を100℃、10重量%NaOH水溶液で85分間浸漬し、波長変換層およびトップコートを順次形成した後、試片上に存在する任意の3地点に対してCIE色空間での色座標を測定した。その結果、試片の平均色座標偏差は0.14≦ΔL<0.34、0.02≦Δa<0.34および0.34≦Δb<0.40で、前記条件をすべて満足した。また、測定値から導き出されるΔEは0.424≦ΔE<0.578で、色座標の平均偏差が顕著に小さいことを確認することができる。これは本発明に係る表面処理された基材の色相が均一であることを意味する(実験例3参照)。
【0035】
一方、前記表面処理された基材の皮膜は、表面に入射される光を散乱および屈折させることができるものであれば特に制限されない。具体的に前記皮膜は、ナトリウム水酸化物(NaOH)、カリウム水酸化物(KOH)、マグネシウム水酸化物(Mg(OH))、カルシウム水酸化物(Ca(OH))およびバリウム水酸化物(Ba(OH))の中のいずれか一つ以上を含むことができ、より具体的にはマグネシウム水酸化物(Mg(OH))を含むことができる(実験例2参照)。
【0036】
また、前記皮膜の平均厚さは特に制限されないが、具体的には50nm〜2μm、より具体的には100nm〜1μmであり得る。本発明に係る表面処理された基材に具現される色相は、基材表面に入射される光の性質を利用したものであって、基材表面に入射光を散乱および屈折させる皮膜を均一に形成することによって均一な色相を具現することができる。このとき、本発明は、前記厚さ範囲内で基材が有する金属固有の質感を損失することなく色相を具現することができる。
【0037】
さらに、前記表面処理された基材の金属材マトリックスはその種類や形態は特に制限されない。具体的には例えば、マグネシウムで構成されるマグネシウム基材を用いることができ、それ以外に表面にマグネシウムが分散された形態のステンレス鋼またはチタニウム(Ti)基材などを用いることができる。
【0038】
また、前記表面処理された基材のトップコートとしては、金属、金属酸化物または金属水酸化物上のコーティングに適用可能なクリアコーティング剤であれば特に制限なく用いることができる。より具体的には、前記クリアコーティング剤としては、金属コーティングに適用可能な艶消しクリアコーティング剤または艶有り/艶消しクリアコーティング剤などが挙げられる。
【0039】
本発明は他の一つの実施例において、
金属材マトリックス上に皮膜を形成する段階;
前記皮膜上に波長変換層を形成する段階;および
前記波長変換層上にトップコートを形成する段階を含む基材の表面処理方法を提供する。
【0040】
以下、本発明に係る前記表面処理方法を各段階別により詳細に説明する。
【0041】
まず、金属材マトリックス上に皮膜を形成する段階は、金属材マトリックス上に色相を具現する段階であって、前記色相は金属材マトリックス上に形成された皮膜によって具現され、前記皮膜は金属材マトリックスを水酸化溶液に浸漬することによって均一に形成され得る。
【0042】
このとき、前記水酸化溶液としては、水酸化基(−OH基)を含む溶液であれば特に制限なく用いることができる。具体的には、前記水酸化溶液は、NaOH、KOH、Mg(OH)、Ca(OH)およびBa(OH)からなる群から選択される1種以上が溶解された水溶液を用いることができる。
【0043】
一つの実施例において、マグネシウムを含む金属材マトリックスを対象に、水酸化溶液による発色速度、発色力および色相均一度を評価した。その結果、水酸化溶液にNaOHが溶解された水溶液を用いた場合、蒸留水を用いた場合と対比して発色速度が4倍以上早いことが確認された。また、表面に発色される色相の発色力が優秀で、具現される色相が均一であった。このような結果から、NaOHなどの金属水酸化物が溶解された溶液を水酸化溶液として用いる場合、金属材マトリックス上に皮膜を迅速かつ均一に形成し、優れた発色力で色相を均一に具現することができることが分かる(実験例1参照)。
【0044】
また、本発明に係る製造方法は、浸漬条件によりマトリックス表面に形成される皮膜の厚さを制御することができる。ここで、前記マトリックスは厚さによって熱伝導量が異なるため、マトリックスの厚さが異なる場合、同じ条件下で浸漬されたマトリックスであっても表面に形成される皮膜の厚さが異なり得る。したがって、マグネシウムを含むマトリックスの厚さにより浸漬条件を調節して皮膜の厚さを制御することが好ましい。
【0045】
一つの例として、マグネシウムを含むマトリックスの厚さが0.4〜0.7Tである場合、前記水酸化溶液の濃度は、1重量%〜80重量%、より具体的には1重量%〜70重量%;5重量%〜50重量%;10重量%〜20重量%;1重量%〜40重量%;30重量%〜60重量%;15重量%〜45重量%または5重量%〜20重量%であり得る。これとともに、前記水酸化溶液の温度は90℃〜200℃、より具体的には、100℃〜150℃、より具体的に95℃〜110℃であり得る。合わせて、浸漬時間は1分〜500分、具体的には10分〜90分の間遂行され得る。本発明は、前記条件範囲で基材表面に経済的に多様な色相を具現することができる。
【0046】
図1を参照すると、同じ条件下で金属材マトリックスの浸漬時間が経過するにつれて表面に形成される皮膜の平均厚さが増加し、発色される色相が転換されることを確認することができる。これは表面に具現される色相が皮膜の厚さにより転換されることを意味する。したがって、基材表面に具現される色相は、金属材マトリックスを浸漬させる水酸化溶液の濃度、温度および浸漬時間の調節を通じて皮膜の形成速度および平均厚さを制御することによって調節可能であることが分かる(実験例2参照)。
【0047】
さらに、本発明に係る基材の表面処理方法において、
金属材マトリックス上に皮膜を形成する段階は、
金属材マトリックスをN濃度の水酸化溶液で浸漬する第1浸漬段階;および
金属材マトリックスをN濃度の水酸化溶液で浸漬する第n浸漬段階を含み、
第1および第n浸漬段階で、水酸化溶液の濃度はそれぞれ独立的に下記の数学式1および2の条件を満足し、nは2以上6以下の整数である方法で遂行され得る:
[数学式1]
8≦N≦25
[数学式2]
|Nn−1−N|>3
前記数学式1および2において、
およびNは各段階別水酸化溶液の濃度を表わし、単位は重量%である。
【0048】
前述した通り、金属材マトリックス上に皮膜を形成する段階は金属材マトリックスの表面に色相を具現する段階であって、形成される皮膜の厚さ調節を通じて発色される色相を調節することができる。このとき、前記皮膜の厚さは水酸化溶液の濃度により制御が可能であるため、金属材マトリックスを浸漬させる水酸化溶液の濃度を N〜N、具体的にN〜N;N〜N;N〜N;N〜N;またはN〜N;に細分化して順次浸漬する場合、表面に具現される色相の微細な色相差を調節することができる。
【0049】
また、本発明に係る基材の表面処理方法は、金属材マトリックス上に皮膜を形成する段階の前に、表面を前処理する段階;および金属材マトリックス上に皮膜を形成する段階の後で、リンシングする段階のうちいずれか一つ以上の段階をさらに含むことができる。このとき、前記表面を前処理する段階は、金属材マトリックスを水酸化溶液に浸漬する前に表面をアルカリ洗浄液で処理して表面に残留する汚染物質を除去するか、研磨を遂行する段階である。このとき、前記アルカリ洗浄液としては、金属、金属酸化物または金属水酸化物の表面を洗浄のために当業界で通常的に用いられるものであれば、特に制限されない。また、前記研磨はバフィング(buffing)、ポリッシング(polishing)、ブラスティング(blasting)または電解研磨などによって遂行され得るがこれに制限されるものではない。本段階では、マグネシウムを含むマトリックス表面に存在する汚染物質やスケールなどを除去できるだけでなく、表面の表面エネルギーおよび/または表面状態、具体的に表面の微細構造変化を通じて皮膜形成速度を制御することができる。すなわち、研磨が遂行されたマトリックスに形成された皮膜の厚さは同じ条件下で形成された研磨が遂行されなかったマトリックスの皮膜厚さと異なり得、これに伴い、表面に発色される色相が互いに異なり得る。
【0050】
これとともに、前記リンシングする段階は、金属材マトリックスを水酸化溶液に浸漬する段階の後で、表面をリンシングすることによって、表面に残留する水酸化溶液を除去する段階である。この段階ではマトリックス表面に残留する水酸化溶液を除去することによって残留水酸化溶液による追加的な皮膜形成を防止することができる。
【0051】
次に、皮膜上に波長変換層を形成する段階は皮膜によって具現された色相がトップコートによって変色することを防止できる波長変換層を形成する段階である。
【0052】
金属材マトリックス上に皮膜およびトップコートだけを順次形成する場合、色相を発する発色光がトップコートで再屈折および散乱され得るため、表面に具現された色相が変色する恐れがあり、変色する程度はトップコートの平均厚さにより異なり得る。例えば、トップコートが5μm〜20μmの平均厚さを有する場合、茶色に変色され得、30μm以上の平均厚さを有する場合、黒色に変色され得る。しかし、本発明により皮膜とトップコートの間に波長変換層を導入する場合、波長変換層がトップコートによる発色光の屈折および散乱を最小化し、光反射を誘導して皮膜によって具現された色相の変色を防止することができる。
【0053】
このとき、前記波長変換層は波長変換層を形成するために当業界で通常的に用いられる方法によって形成され得る。具体的には真空蒸着、スパッタリング、イオンメッキまたはイオンビーム蒸着などの方法によって形成され得る。
【0054】
また、前記波長変換層としてはトップコートによる発色光の再屈折および散乱を最小化し、波長を反射することによって、皮膜によって発色される色相を維持できるものであれば、特に制限なく用いることができる。一つの例として、前記波長変換層は、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、チタニウム(Ti)、金(Au)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、ジルコニウム(Zr)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、コバルト(Co)、カドミウム(Cd)または銅(Cu)を含む金属、および前記金属のイオンからなる群から選択される1種以上の金属を含むことができる。
【0055】
次に、波長変換層上にトップコートを形成する段階は基材の耐スクラッチおよび耐久性を向上させるために、波長変換層上に艶消しまたは艶有り/艶消しクリアコーティング剤を利用してトップコートを導入する段階である。
【0056】
このとき、前記トップコートは、波長変換層上にトップコートを形成するために当業界で通常的に用いられる方法によって形成され得る。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例および実験例によってより詳細に説明する。
【0058】
ただし、下記の実施例および実験例は本発明を例示するだけのもので、本発明の内容は下記の実施例および実験例に限定されるものではない。
【0059】
実施例1.
金属材マトリックスであるマグネシウムを含む試片(横1cm×縦1cm×0.4T)をアルカリ洗浄液に浸漬して脱脂し、脱脂された試片を100℃、10重量%NaOH水溶液に50分間浸漬した。その後、前記試片を蒸溜水でリンシングし、乾燥オーブンで乾燥させた後、スパッタ法を利用して10nm〜20nm厚さでクロム(Cr)層を形成した。前記クロム(Cr)層上に液相の艶消しクリア塗料を塗布し120℃−150℃オーブン乾燥して赤色の表面処理された試片を製造した。このとき、コーティングされた艶消しクリアの平均厚さは25μmである。
【0060】
実施例2.
前記実施例1で試片を50分間水酸化溶液浸漬する代わりに85分間浸漬することを除いては、前記実施例1と同じ方法で遂行して緑色の表面処理された試片を製造した。
【0061】
実施例3.
前記実施例1で試片を50分間水酸化溶液浸漬する代わりに10分間浸漬することを除いては、前記実施例1と同じ方法で遂行して銀色の表面処理された試片を製造した。製造された試片に対して透過電子顕微鏡撮影を遂行し、その結果を図2に示した。図2に示した通り、前記試片に形成されたクロム層の平均厚さ(D1)は約10nmであることが確認された。
【0062】
実施例4.
前記実施例1で試片を50分間水酸化溶液浸漬する代わりに10分間浸漬し、クロム(Cr)層の代わりにアルミニウム(Al)層を形成することを除いては、前記実施例1と同じ方法で遂行して銀色の表面処理された試片を製造した。製造された試片に対して透過電子顕微鏡撮影を遂行し、その結果を図3に示した。図3に示した通り、前記試片に形成されたアルミニウム層の平均厚さ(D2)は約13nmであることが確認された。
【0063】
比較例1.
金属材マトリックスであるマグネシウムを含む試片(横1cm×縦1cm×0.4T)をアルカリ洗浄液に浸漬して脱脂し、脱脂された試片を100℃、10重量%NaOH水溶液に85分間浸漬した。その後、前記試片を蒸溜水でリンシングし、乾燥オーブンで乾燥させた後、液相の艶消しクリア塗料を塗布し120℃−150℃オーブン乾燥して表面処理された試片を製造した。このとき、コーティングされた艶消しクリアの平均厚さは5μmである。
【0064】
比較例2.
前記比較例1でコーティングされた艶消しクリアの平均厚さが5μmになるようにコーティングする代わりに30μm以上になるようにコーティングすることを除いては前記比較例1と同じ方法で遂行して表面処理された試片を製造した。
【0065】
実験例1.水酸化溶液の種類による基材の発色効率評価
水酸化溶液の種類によった発色処理された基材の発色速度および発色力を評価するために下記のような実験を遂行した。
【0066】
金属材マトリックスであるマグネシウムを含む試片(横1cm×縦1cm×0.4T)をアルカリ洗浄液に浸漬して脱脂し、脱脂された試片を100℃、10重量%NaOH水溶液または蒸溜水に40分、1時間および2時間の間それぞれ浸漬させた。その後、試片を蒸溜水でリンシングし、乾燥オーブンで乾燥させて表面に具現される色相を目視で評価した。
【0067】
その結果、10重量%NaOH水溶液に浸漬された試片は蒸溜水に浸漬された試片と対比して、発色速度が早かった。より具体的には、10重量%NaOH水溶液に浸漬された試片は浸漬10分が経過した時点で銀色に発色し、その後黄色を経て40分以内に橙色に発色した。しかし、蒸溜水に40分間浸漬された試片の場合、表面の色相変化量が微小であり、発色未処理された基材と比較して色相差が小さく、1時間の間浸漬された試片は徐々に黄色に発色された。また、2時間の間浸漬された試片は黄色に発色されるものの、10重量%NaOH水溶液に浸漬された試片と対比して発色力が顕著に落ちるものと示された。
【0068】
このような結果から、基材の表面処理はNaOH、KOH、Mg(OH)、Ca(OH)、Ba(OH)などを含む水酸化溶液で遂行した方が工程効率が優れるだけでなく、発色される色相の発色力が優秀であることが分かる。
【0069】
実験例2.水酸化溶液浸漬時間による基材の発色評価
金属材マトリックスの水酸化溶液浸漬時間による発色程度を評価するために下記のような実験を遂行した。
【0070】
金属材マトリックスであるマグネシウムを含む試片(横1cm×縦1cm×0.4T)をアルカリ洗浄液に浸漬して脱脂し、脱脂された試片を100℃、10重量%NaOH溶液に240分間浸漬した。このとき、前記試片をNaOH水溶液に浸漬した直後、5〜10分間隔で発色される色相を目視で評価した。また、試片の表面に生成された皮膜の成分および厚さを確認するために、浸漬10分、170分および240分が経過した時点の試片を対象に、皮膜のX線回折分析および透過電子顕微鏡(TEM)撮影を遂行した。前記結果は図1に示した。
【0071】
本発明に係る表面処理された基材は、水酸化溶液に浸漬する時間により発色される色相が互いに異なるものと示された。より具体的には、発色処理されていない銀色の試片を水酸化溶液に浸漬すると、30分が経過した後、黄色、橙色、赤色、紫色、藍色および緑色に順次発色され、このような色相変化は時間が経過するにつれて一定の周期を有して繰り返されるものと示された。
【0072】
また、皮膜に対するX線回折分析を遂行した結果、三つの試片の皮膜すべてが、2θで表示される18.5±1.0°、38.0±1.0°、50.5±1.0°、58.5±1.0°、62.0±1.0°および68.5±1.0°の回折ピーク値を示し、ブル−サイト(brucite)結晶型のマグネシウム水酸化物(Mg(OH))を含むことが確認された。
【0073】
さらに、図1に示した通り、皮膜の平均厚さは浸漬された時間が経過するにつれてそれぞれ約200nm、600nmおよび900nmに増加することが確認された。
【0074】
このような結果から、本発明に係る表面処理された基材は、マグネシウム水酸化物(Mg(OH))を含有する皮膜を含むことによって発色されることが分かる。また、マグネシウムを含む金属材マトリックスの浸漬時間により表面に形成される皮膜の厚さを制御することができ、これを通じて発色される色相も調節できることが分かる。
【0075】
実験例3.表面処理された基材の色相および色相均一度評価
本発明に係る表面処理された基材の色相および色相均一度を評価するために下記のような実験を遂行した。
【0076】
実施例1、実施例2、比較例1および比較例2で表面処理された試片の色相を目視で評価した。また、実施例2で製造された試片上の任意の3地点A〜Cを選定し、選定された地点に対してCIE色空間での色座標を測定し、測定された色座標から色座標偏差を求めて下記の表1に表わした。このとき、色座標偏差(ΔE)は下記の数学式3を利用して導き出した。
【0077】
【数1】
【0078】
【表1】
【0079】
その結果、本発明に係る表面処理された基材は、波長変換層を含んで皮膜によって具現される色相がトップコート形成後にも維持されることが分かる。より具体的には、実施例1および実施例2で波長変換層を形成する前、皮膜によって表面に具現された色相はそれぞれ赤色および緑色であり、その後皮膜上に波長変換層およびトップコートを順次形成しても表面の色が変色されないことが確認された。これに反し、比較例1および比較例2の場合、トップコートを形成する前に表面に具現された色相はそれぞれ赤色および緑色であったが、皮膜上にトップコートが形成されると表面に具現された色相は変色するものと示された。このとき、変色する色相はトップコートの厚さにより茶色または黒色に変色した。
【0080】
これは金属材マトリックス表面に入射される光は皮膜によって屈折および散乱されて発色光に転換されるが、比較例の試片の場合、前記発色光が再びトップコートを通過しながら再屈折および散乱を起こして変色が発色する反面、実施例の試片のように皮膜とトップコートの間に波長変換層が形成された場合、波長変換層が発色光の再屈折および散乱を最小化し、光反射を遂行することによって色相の変色を防止することを意味する。
【0081】
また、表1に示された通り、本発明に係る表面処理された基材は、発色される色相が均一であることが分かる。より具体的には、波長変換層を含む実施例2の試片は試片上に存在する任意の3地点に対する平均色座標偏差が0.14≦ΔL<0.34、0.02≦Δa<0.34および0.34≦Δb<0.40および0.424≦ΔE<0.578であるものと示された。これは本発明に係る発色処理されたマグネシウムの色相が均一に発色されることを意味する。
【0082】
このような結果から基材の耐スクラッチ性および耐久性を向上させるために皮膜上にトップコートを形成する場合、色相の変色を防止できる波長変換層を皮膜とトップコートの間に形成しなければならず、波長変換層を含む表面処理された基材は色相が均一に具現されることが分かる。
【0083】
したがって、本発明に係る表面処理された基材は、金属材マトリックス上に均一な厚さの皮膜を含んで色相を均一に具現することができる。また、前記皮膜上に波長変換層およびトップコートを順次含むことによって、皮膜によって具現された色相が変色することなく基材の耐スクラッチ性および耐久性を向上させることができる利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明に係る表面処理された基材は、金属材マトリックス上に均一な厚さの皮膜を含んで耐食性を向上させることができるだけでなく、表面に色相を均一に具現することができる。また、前記皮膜上に波長変換層およびトップコートを順次含むことによって、皮膜によって具現された色相が変色することなく基材の耐スクラッチ性および耐久性を向上させることができるため、マグネシウム素材が使われる建築外装材、自動車インテリア、特にモバイルフォンケース部品などの電気、電子部品材料分野において有用に使用され得る。
図1
図2
図3