(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286568
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】薄膜型メタルフォーム及びカップを適用した熱活性化方式リザーブ型電池の負極製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/12 20060101AFI20180215BHJP
H01M 4/06 20060101ALI20180215BHJP
H01M 6/36 20060101ALI20180215BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20180215BHJP
H01M 4/80 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
H01M4/12 F
H01M4/06 V
H01M6/36 C
H01M4/66 A
H01M4/80 C
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-549779(P2016-549779)
(86)(22)【出願日】2014年7月28日
(65)【公表番号】特表2017-506411(P2017-506411A)
(43)【公表日】2017年3月2日
(86)【国際出願番号】KR2014006854
(87)【国際公開番号】WO2016013704
(87)【国際公開日】20160128
【審査請求日】2016年8月19日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0093194
(32)【優先日】2014年7月23日
(33)【優先権主張国】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 46th Power Sources Conference、平成26年6月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513242380
【氏名又は名称】エージェンシー フォー ディフェンス ディベロップメント
【氏名又は名称原語表記】AGENCY FOR DEFENSE DEVELOPMENT
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ユ ソン
(72)【発明者】
【氏名】ユ, ヘ−リョン
(72)【発明者】
【氏名】イ, ジョン ミン
(72)【発明者】
【氏名】チョン, へ ウォン
【審査官】
前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−101831(JP,A)
【文献】
特開2006−236990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/12
H01M 4/06
H01M 4/66
H01M 4/80
H01M 6/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)メタルフォームが圧延される段階と、
2)前記メタルフォームに溶融した共融塩がコートされる段階と、
3)前記メタルフォームに前記共融塩に由来するリチウムが含浸される段階と、
4)前記メタルフォームに電極カップとイオン伝導性分離膜が装着される段階とを含んでなる、薄膜型メタルフォーム及びカップを適用した熱活性化方式リザーブ型電池の負極製造方法であって、
前記メタルフォームは多孔性物質であり、
前記メタルフォームにリチウムを容易に含浸するために、前記メタルフォームの気孔率は前記メタルフォームの全体積比90%であり、
リチウム含浸の後にリチウムが気孔から抜け出ることを防止するために、気孔は平均800μmの直径を有するように形成されることを特徴とする、薄膜型メタルフォーム及びカップを適用した熱活性化方式リザーブ型電池の負極製造方法。
【請求項2】
前記メタルフォームは、ニッケル、鉄及び炭素材料からなるニッケル合金または鉄合金のいずれかから製作されることを特徴とする、請求項1に記載の薄膜型メタルフォーム及びカップを適用した熱活性化方式リザーブ型電池の負極製造方法。
【請求項3】
前記炭素材料は、前記リチウムを取り込むことが可能な純粋な炭素であるカーボンブラック、炭素繊維、炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブ、グラフェン及び黒鉛のいずれかであることを特徴とする、請求項2に記載の薄膜型メタルフォーム及びカップを適用した熱活性化方式リザーブ型電池の負極製造方法。
【請求項4】
前記メタルフォームを圧延する圧力は5,000kgf〜20,000kgfであることを特徴とする、請求項1に記載の薄膜型メタルフォーム及びカップを適用した熱活性化方式リザーブ型電池の負極製造方法。
【請求項5】
前記共融塩はLiCl−KCl系リチウム共融塩またはLiCl−LiBr−LiF系リチウム共融塩を含むことを特徴とする、請求項1に記載の薄膜型メタルフォーム及びカップを適用した熱活性化方式リザーブ型電池の負極製造方法。
【請求項6】
前記共融塩にメタルフォームを1秒〜5秒浸してから取り出した後、常温で急冷することにより、前記メタルフォームに前記共融塩がコートされることを特徴とする、請求項1に記載の薄膜型メタルフォーム及びカップを適用した熱活性化方式リザーブ型電池の負極製造方法。
【請求項7】
前記リチウムは、前記メタルフォームへの含浸のために、前記メタルフォームに形成された気孔の全体積比1〜1.5倍となるように用意されることを特徴とする、請求項1に記載の薄膜型メタルフォーム及びカップを適用した熱活性化方式リザーブ型電池の負極製造方法。
【請求項8】
前記リチウムは、持続的に不活性ガスが注入されて1気圧〜1.2気圧に維持される真空炉の内部で前記メタルフォームに含浸されるが、
前記真空炉内部の温度は5℃/min〜10℃/minで昇温し、
前記リチウムは、前記真空炉の内部温度が400℃〜600℃の状態で、30分〜2時間相変化して前記メタルフォームに含浸されることを特徴とする、請求項1に記載の薄膜型メタルフォーム及びカップを適用した熱活性化方式リザーブ型電池の負極製造方法。
【請求項9】
前記電極カップに蓋が備えられ、
前記電極カップの厚さは50μm〜100μmであり、
前記電極カップは、伝導性を有し且つ集電体として使用される金属または該金属を含有した合金で製作されたことを特徴とする、請求項1に記載の薄膜型メタルフォーム及びカップを適用した熱活性化方式リザーブ型電池の負極製造方法。
【請求項10】
前記イオン伝導性分離膜は、
金属、炭素材料、または前記金属と前記炭素材料との組み合わせがメッシュ状に形成されるが、
前記メタルフォームを覆い且つ前記電極カップに備えられた蓋に固定されるように形成され、
前記メッシュの網目は負極と電解質のイオン直径に比べて1〜3倍大きく形成されたことを特徴とする、請求項1に記載の薄膜型メタルフォーム及びカップを適用した熱活性化方式リザーブ型電池の負極製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リザーブ型電池の負極製造方法に係り、さらに詳しくは、容量及び出力特性に非常に優れたリチウムの漏洩を防止するために、リチウムの含浸された負極支持体であるメタルフォームに電極カップと伝導性分離膜が装着された、薄膜型メタルフォーム及びカップを適用した熱活性化方式リザーブ型電池の負極製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱活性化方式のリザーブ型電池(熱電池)は、常温で電池としての性能を発揮しておらず、電気的信号が電池内の着火器に加わって着火器が点火すると、着火器から発生する熱によって電極同士の間の熱源が発火し、熱源から生成される熱によって固体電解質が溶融することにより作動する電池である。
【0003】
このような熱活性化方式のリザーブ型電池は、構造的安定性、信頼性及び長期保管性に優れている。
【0004】
このような特徴により、熱活性化方式のリザーブ型電池は、民需用には非常用電源として使用されており、軍需用には誘導兵器や航空宇宙分野の主電源又は補助電源として使用されている。
【0005】
熱活性化方式のリザーブ型電池は、常温で電解液が伝導性を有しないため、もともと持っていたエネルギーの損失なく長期間保管が可能であり、長期間の保管後も性能の減退なしに使用できるという利点がある。
【0006】
電池を使用する機器は、電池の体積減少と電池の容量及び出力の増加を要求する方向に発展している。
【0007】
これにより、電池の形態も小型集積化される方向に発展しており、特に、熱活性化方式のリザーブ型電池についてはエネルギー密度及び高出力化に関する研究が集中している。
【0008】
したがって、エネルギー密度及び高出力化に関する研究は、新しい高価な電極材料を利用し、或いは特殊な工程及び関連装備が使用されるが、経済的損失及び工程上の複雑化を伴う場合がほとんどであり、従来から使われている電極材料では、高エネルギー密度の向上及び高出力化の要求条件を画期的に満たしていない。
【0009】
現在熱電池として最も多く使われているものは、負極電極材料としてLiSi、正極電極材料としてFeS
2、電解質としてはLiCl−KCl及びLiBr−LiCl−LiFが主として用いられている。
【0010】
しかし、LiSi/FeS
2熱電池の場合、負極として使用されるLiSi(1,747A.s/g)の重量がFeS
2(1,206A.s/g)に比べて軽量であるので、容量を増加させるためにはLiSiの体積を増加させなければならないが、電気化学反応の際にLiSiのFeS
2に対する相変化により、実際に使用可能な利用率はこれよりも相当低くなって、大容量及び高出力特性を要求する熱電池用負極材料として限界を示している。
【0011】
このようなLiSiの欠点を改善するために、CRC(Catalyst Research Center)で発表したLAN(Lithium anode)技術関連の特許によれば、容量及び出力特性が現在まで最も優れた純粋リチウムに、リチウムの溶融温度(180℃)以上でリチウムの溶融性を減少させるために鉄(Fe)粉末バインダーを添加して熱電池用負極として使用する製造方法を開発したが、一部の先進国ではこの技術を活用して高エネルギー密度及び高出力密度の熱電池を開発した。
【0012】
ところが、上記の技術では、純粋リチウムの溶融性を減少させるために、リチウムに約80重量%に相当する鉄粉末を混合して使用しなければならないので、理論的なリチウムのエネルギー密度と比較して相当減少する。
【0013】
また、メタルフォームにリチウムを含浸させることに関する研究は、一部進んだが、実際の適用の際にメタルフォーム内に均一にリチウムを含浸させ難い欠点があるなど、様々な困難さが伴っている。
【0014】
これと共に、メタルフォーム内のリチウムを含浸しても、単位電池適用の際にリチウムの漏洩により電池短絡が発生することも問題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、従来から使用されている負極材料と比較してエネルギー及び出力特性を画期的に向上させることができる、薄膜型メタルフォーム及びカップを適用した熱活性化方式リザーブ型電池の負極製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明によれば、メタルフォームが圧延される段階と、メタルフォームに溶融した共融塩がコートされる段階と、メタルフォームにリチウムが含浸される段階と、メタルフォームに電極カップ及び伝導性分離膜が装着される段階とを含んでなる、薄膜型メタルフォーム及びカップを適用した熱活性化方式リザーブ型電池の負極製造方法を提供する。
【0017】
本発明の一つの側面によれば、メタルフォームは電気的伝導性に非常に優れた多孔性物質であってもよく、メタルフォームの気孔率はメタルフォームの全体積比60%〜98%であり、気孔は平均850μm以下の直径を有するように形成でき、メタルフォームは、ニッケル、鉄及び炭素材料からなるニッケル合金または鉄合金のいずれかから製作でき、炭素材料は、カーボンブラック、炭素繊維、炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブ、グラフェン及び黒鉛など、リチウムを取り込むことが可能な純粋な炭素のいずれかであってもよい。
【0018】
本発明の他の側面によれば、メタルフォームを圧延する圧力は5,000kgf〜20,000kgfであってもよく、共融塩はLiCl−KCl系リチウム共融塩またはLiCl−LiBr−LiF系リチウム共融塩を含むことができ、共融塩にメタルフォームを1秒〜5秒浸してから取り出した後、常温で急冷することにより、メタルフォームに共融塩がコートできる。
【0019】
本発明の別の側面によれば、リチウムは、メタルフォームに含浸されるために、メタルフォームに形成された気孔の全体積比1〜1.5倍の体積となるように準備でき、リチウムはアルゴンガスが持続的に注入されて1気圧〜1.2気圧に維持される真空炉の内部でメタルフォームに含浸されるが、真空炉の内部温度は5℃/min〜10℃/minで昇温し、リチウムは真空炉の内部温度が400℃〜600℃の状態で30分〜2時間相変化してメタルフォームに含浸できる。
【0020】
本発明の別の側面によれば、電極カップには蓋が備えられ、電極カップの厚さは50μm〜100μmであり、電極カップは、伝導性を有し且つ集電体として使用される金属または金属含有合金で製作でき、伝導性分離膜は、伝導性のある金属、炭素材料、または金属と炭素材料との組み合わせがメッシュ状に形成されるが、メタルフォームを覆い且つ電極カップに備えられた蓋に固定されるように形成され、メッシュの網目はイオンサイズ(イオン直径)に比べて1〜3倍大きく形成できる。
【0021】
また、本発明の薄膜型メタルフォーム及びカップを適用した熱活性化方式リザーブ型電池の負極製造方法によって製造されたリザーブ型電池の負極を提供する。
【発明の効果】
【0022】
このような本発明に係る薄膜型メタルフォーム及びカップを適用した熱活性化方式リザーブ型電池の負極製造方法によれば、電気伝導性及び気孔率に優れたメタルフォームに純粋リチウムを含浸して熱活性化方式のリザーブ型電池の電極として使用することにより、電極の漏洩が防止されて電池短絡が発生せず、容量及び出力に非常に優れた純粋リチウムが高温作動環境で使用可能となることにより、電池のエネルギー密度及び高出力特性が画期的に向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施例及び比較例によって製造された電極の放電特性の結果を示すグラフである。
【
図2】本発明の実施例によって製造された圧延メタルフォーム適用リチウム含浸負極の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の薄膜型メタルフォーム及びカップを適用した熱活性化方式リザーブ型電池の負極製造方法は、メタルフォームが圧延される段階と、圧延されたメタルフォームに溶融した共融塩がコートされる段階と、メタルフォームにリチウムが含浸される段階と、メタルフォームに電極カップと伝導性分離膜が装着される段階とを含んでなる。
【0025】
より具体的に、本発明の薄膜型メタルフォーム及びカップを適用した熱活性化方式リザーブ型電池の負極製造方法は、負極支持体として、電気的伝導性に非常に優れた多孔性のメタルフォームを使用することを特徴とする。
【0026】
メタルフォーム材料としては、伝導性に優れ且つ全体積の60%〜98%の気孔率を有するものであれば特別な制限なく使用可能であるが、通常、負極活物質(active material)の一例であるリチウムに相対的に安定的な材料を使用することがさらに好ましい。
【0027】
より詳しくは、本発明で使用されるメタルフォームは、ニッケル、鉄
及び炭素材料
からなるニッケル合金
または鉄合金の
いずれかから製作されることが好ましい。
【0028】
炭素材料としては、カーボンブラック、炭素繊維、炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブ、グラフェン及び黒鉛などのいずれかが使用可能であり、純粋な炭素のうち、リチウムを取り込むことが可能ないずれのものを使用してもよい。
【0029】
また、メタルフォームは、気孔率が全体積比60%〜98%の範囲を有することが好ましい。
【0030】
気孔率が全体積比60%未満の場合は、リチウムの含浸量が減少して電気化学的特性が減少し、気孔率が全体積比98%超過の場合は、圧延を行ったときにリチウム含浸がうまく進まないので、好ましくない。
【0031】
また、メタルフォームの気孔は、平均850μm以下の直径を有することが好ましいが、この範囲を超える場合、リチウム含浸の後、リチウムが気孔の間から容易に抜け出て電池の短絡を発生させるから、メタルフォームがリチウムの支持体としての役割をうまく果たせないので好ましくない。
【0032】
メタルフォームの圧延圧力は、5,000kgf〜20,000kgf程度であることが好ましいが、5,000kgf未満の場合には、圧延圧力があまり弱くて圧延がうまく行われず、20,000kgf超過の場合には、圧延効果が20,000kgfの場合と差を示さない。
【0033】
本発明では、メタルフォームにリチウムを高温で含浸させる過程で、リチウムがメタルフォーム内に容易に含浸できるようにする濡れ性改善剤(wetting agent)として共融塩を使用することができ、初期共融塩をコートする過程で、熱電池電解質として使われる共融塩を使用することができるが、LiCl−KCl系リチウム共融塩またはLiCl−LiBr−LiF系リチウム共融塩を添加してメタルフォームをコートすることが好ましい。さらに好ましくは、LiCl−KCl系リチウム共融塩を使用することができる。
【0034】
より具体的には、濡れ性改善剤がメタルフォームの表面によくコートできるように、メタルフォームを溶融した共融塩に入れてメタルフォームの表面を濡れ性改善共融塩でコートさせるのである。
【0035】
共融塩をコートさせる過程で、共融塩は融解した状態で圧延メタルフォームを1秒〜5秒間浸してから取り出して常温で急冷する方式で製造できる。
【0036】
共融塩にメタルフォームを下限である1秒未満で浸す場合には、まともに共融塩コーティングが行われず、上限である5秒超過で浸す場合には、過度にコートされ、共融塩溶液の熱によってメタルフォームに損傷が生じるので、好ましくない。
【0037】
また、本発明の薄膜型メタルフォーム及びカップを適用した熱活性化方式リザーブ型電池の負極製造方法で製作されたリザーブ型電池は、正極材料と負極材料に特別な制限なしに通常の正極材料及び負極材料を使用することができるが、好ましい正極活物質(activated material)の例としては、FeS
2化合物、CoS
2化合物、FeS
2とCoS
2との混合物などを挙げることができ、好ましい負極活物質としては、Li、LiSi、LiAl及びこれらの混合物のいずれかを選択して使用することができ、さらに好ましくはLiを使用することができる。
【0038】
リチウムをメタルフォームに含浸させる段階でグラフォイルの上部にスペーサを置き、スペーサの上部に共融塩のコートされたメタルフォームを位置させた後、リチウムを取り込む。
【0039】
メタルフォームにリチウムが含浸されるとき、使用されるリチウムの量は、メタルフォームの気孔率を考慮して、メタルフォームに形成された総気孔の体積比1倍〜1.5倍の体積を有するリチウムが用意されることが好ましい。
【0040】
リチウムの量が気孔の総体積に比べて小さい場合、すなわち、1倍未満で用意される場合には、メタルフォーム内にリチウムが十分に満たされないため、完成した電池の性能が100%作用するのではなく、リチウムの量が気孔の総体積に比べて1.5倍を超えて用意された場合には、含浸の後、過量に含浸されていないリチウムにより電極がまともに形態を備えなくなるので、好ましくない。
【0041】
含浸とは、メタルフォームに形成された気孔にリチウムが相変化して染み込むことを意味する。
【0042】
また、リチウムが込められたメタルフォームは、真空炉に収容された後で含浸が行われるが、真空炉には1気圧〜1.2気圧が維持されるように不活性ガスが持続的に注入される。
【0043】
また、真空炉の内部温度が5℃/min〜10℃/minで昇温し、真空炉の内部温度が400℃〜600℃の状態で30分〜2時間反応して含浸されることが好ましい。
【0044】
また、不活性ガスは、アルゴンガスが望ましく、その他のガスは高温でリチウムと反応してメタルフォームへのリチウム含浸が良好に行われないので好ましくない。
【0045】
真空炉の内部気圧が下限たる1気圧未満の場合には、外部の空気が真空炉の内部に流入して副反応が起こる可能性があって好ましくなく、上限たる1.2気圧を超える場合には、1.2気圧の場合とその効果があまり差を示さない。
【0046】
また、含浸時の昇温速度が下限たる5℃/min未満の場合には、その効果は5℃/minとあまり異ならず、上限たる10℃/minを超えた場合には、リチウムが溶ける時間が十分ではないため、良好に含浸が行われないことがあるので、好ましくない。
【0047】
反応温度は、下限たる400℃未満の場合には、リチウムの溶融がまともに行われないか、或いはその粘度が非常に高いため含浸がうまく行われず、上限たる600℃を超えた場合には、リチウムが高熱により分解または変形するので、好ましくない。
【0048】
リチウム含浸時間が30分未満の場合には、含浸が十分に行われず、リチウム含浸時間が2時間超過の場合には、その効果が2時間の場合とあまり異ならない。
【0049】
30分〜2時間400℃〜600℃の温度を維持させた後、真空炉を自然冷却させて常温に降温する。
【0050】
この時、真空炉が常温に降温する前に真空炉を開放しないように注意する必要がある。冷却中にもアルゴンガスを継続的に真空炉内に供給することが好ましい。
【0051】
電極カップは、集電体としての役割を果たし且つリチウム漏洩を防止するためのものであって、厚さが50μm〜100μmとなるように製作することが好ましい。電極カップの厚さが下限たる50μm未満の場合には、厚さがあまり薄くてカップの形をまともに維持することが難しく、上限たる100μmを超える場合には、電子伝達が難しいため、集電体の役割を果たす上での困難さがある。
【0052】
図2には電極カップが示されているが、さらに正確には、電極カップ2に内挿されたメタルフォーム1と、該メタルフォーム1を覆い且つ電極カップ2に取り付けられた蓋3を介して固定された伝導性分離膜4が示されている。
【0053】
電極カップは、伝導性を有し且つ集電体として使用される金属またはこれら金属の合金であれば、いずれのものを使用してもよい。
【0054】
また、伝導性分離膜は、負極と電解質のイオンの移動通路であって、均一な電気化学反応のために必要なもので、電極カップの蓋と電極との間に位置する。
【0055】
このような伝導性分離膜は、イオン伝導が可能なメッシュ状であって、網目のサイズはイオンサイズの1倍〜3倍であることが望ましい。
【0056】
下限であるイオンサイズの1倍未満で網目が形成された場合にはイオンの伝導がなされず、上限であるイオンサイズの3倍を超えて網目が形成された場合にはイオンの伝導が過度になされて好ましくない。
【0057】
また、このような伝導性分離膜は、伝導性を有し且つ網目状からなる金属または炭素材料、及びこれら材料の組み合わせからなるいずれのものを使用してもよい。
【0058】
このため、使用される金属は、金、銀、銅、鉄、ニッケル及びこれらの合金など、伝導性が高く熱安定性があるものが好ましい。
【0059】
また、伝導性分離膜を形成する炭素材料としては、シート状の網目を有するグラフェン、黒鉛、炭素ナノチューブ、炭素繊維などの伝導性のある炭素材料、及びこれらの混合物からなるいずれのものを使用してもよい。
【0060】
また、本発明は、リチウムが含浸されたメタルフォーム負極を用いた熱活性化方式リザーブ型電池を提供することができる。
【0061】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、下記に開示される本発明の実施の形態は一つの例示に過ぎず、本発明の範囲はこれらの実施形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲に表示されており、しかも特許請求の範囲の記載と均等な意味及び範囲内でのすべての変更も含んでいる。
【0062】
実施例は次の方法で製造された。ニッケルからなるメタルフォームは、気孔径800μm及び気孔率90%のものを使用した。
【0063】
このようなメタルフォームを10,000kgfで圧延して直径35mm、厚さ0.5mmにした。
【0064】
このように圧延されたメタルフォームにLiCl−KCl塩をコートした。メタルフォームに形成された気孔の総体積と同じ体積、すなわち、気孔体積比1倍のリチウムをメタルフォームの上に位置させた。
【0065】
その後、用意されたメタルフォーム容器を真空炉に入れ、−1気圧に減圧して真空状態化させた後、アルゴンガスを真空炉に注入した。このような過程を3回にわたって行って真空炉内の空気を完全に除去し、アルゴンガス雰囲気にした。
【0066】
アルゴンガスは、流量100cc/minに一定に維持しながら、10℃/minで真空炉の内部温度を上昇させ、500℃で4時間維持することによりリチウムをメタルフォームに含浸し、しかる後に、常温で自然冷却させた。
【0067】
冷却の後、真空炉からリチウムの含浸されたメタルフォームを取り出して電極カップに入れた後、その上に伝導性分離膜を載せ、その上に電極カップの蓋を覆って実施例の負極を製造した。
【0068】
実施例の比較例として、従来のLiSi負極をペレット状に製造した。実施例と比較例の負極を用いた単位電池を製造して放電試験を行った。その結果は
図1のとおりである。
【0069】
放電は、500℃で、4Aで1秒、2Aで4秒、0Aで1秒の平均2Aのパルスで実施した。
【0070】
実施例の初期OCV(開回路電圧)は、約2.1Vであって、既存の比較例OCVである1.9Vよりも高いことが分かる。
【0071】
また、放電時、電圧減少幅が比較例に比べて非常に低いことを確認することができる。
【0072】
このような放電結果に基づいて電極容量を次の数式1で計算し、表1に示した。
[数1]
電極容量=平均電流×(放電時間/電極重量)
【0074】
図1及び表1の結果より、既存の負極に比べて約2倍以上の電極性能を示すことが分かる。