(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286586
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】中電圧及び高電圧のためのサージ抑制システム
(51)【国際特許分類】
H02H 9/04 20060101AFI20180215BHJP
H02H 7/04 20060101ALI20180215BHJP
H02H 5/00 20060101ALI20180215BHJP
H02J 3/26 20060101ALI20180215BHJP
H02J 3/01 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
H02H9/04
H02H7/04 B
H02H5/00 150
H02J3/26
H02J3/01
【請求項の数】19
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-576091(P2016-576091)
(86)(22)【出願日】2015年6月11日
(65)【公表番号】特表2017-518023(P2017-518023A)
(43)【公表日】2017年6月29日
(86)【国際出願番号】US2015035305
(87)【国際公開番号】WO2015191840
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2017年2月1日
(31)【優先権主張番号】62/010,746
(32)【優先日】2014年6月11日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516372239
【氏名又は名称】アサター グローバル テクノロジーズ リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100205969
【弁理士】
【氏名又は名称】氷室 詩乃
(72)【発明者】
【氏名】ダリル ムーア
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ヤルッソ
【審査官】
早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−503467(JP,A)
【文献】
特表2013−504297(JP,A)
【文献】
米国特許第04385338(US,A)
【文献】
米国特許第01932088(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0206391(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0309425(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H9/00−9/08
H02H7/00
H02H7/04−7/055
H02H7/10−7/20
H02H5/00−5/12
H02J3/00−5/00
H02B1/00−1/38
H02B1/46−7/08
H02G7/00−7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低電圧電力の消費者に電力を提供する電力網の配電システムのサージ抑制システムであって、
前記配電システムの少なくとも1つの三相システム変圧器であって、三相電力の各々の相をそれぞれ伝送する第1、第2及び第3の配電線を介して、電源から三相電力を受け取る一次側と、前記三相電力の複数の前記相のうちの各々1つをそれぞれ伝送する第4、第5及び第6の配電線を介して、三相電力を下流に供給する二次側と、を有し、前記一次側及び前記二次側は、前記三相電力を、前記一次側の第1電圧から、前記第1電圧とは異なる前記二次側の第2電圧に変換するための一次側及び二次側のコイルをそれぞれ含み、前記システム変圧器は、中電圧又は高電圧のうちの1つまで前記第1電圧を上昇させ、又は、中電圧又は高電圧のうちの1つから前記第1電圧を下降させる、
前記配電システムの少なくとも1つの三相システム変圧器と、
前記システム変圧器の前記一次側の前記第1、第2及び第3の配電線と並列に接続され、前記システム変圧器の前記一次側と物理的に間近に近接している、少なくとも第1のサージ抑制ユニットであって、前記サージ抑制ユニットは、正常な動作レベルの少なくとも10倍を超える電圧及び/又は電流の電磁波パルス(EMP)又は地磁気擾乱(GMD)による1又は複数のサージに起因する、前記第1、第2及び第3の配電線により運ばれる各々の相の電圧の不均衡を補正する第1、第2及び第3の変圧器バンクを備え、前記第1、第2及び第3の変圧器バンクは、前記第1電圧で前記第1、第2及び第3の配電線により運ばれる三相電力の各々の相と接続し、各々の相を受け取る、第1、第2及び第3の一次コイルをそれぞれ含み、前記第1、第2及び第3の変圧器バンクは、正常な動作レベルの少なくとも10倍を超える電圧及び/又は電流のEMP又はGMDによるサージからエネルギーを無害に排出するために、共に直列接続する第1、第2及び第3の二次コイルをそれぞれ含み及びそこに直列接続される抵抗器を有し、前記変圧器バンクは、前記第1電圧の前記三相電力を第3電圧の三相電力に変換し、前記二次コイルにおける前記三相のいずれか1つの電圧の不均衡が、前記配電システムの前記システム変圧器の前記一次側における電圧の不均衡を相殺する、前記二次コイルにおける残りの相により相殺される、
少なくとも第1のサージ抑制ユニットと、
を備える、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のサージ抑制システムであって、前記システム変圧器の二次側の前記第4、第5及び第6の配電線と並列に接続され、前記システム変圧器の前記二次側と物理的に間近に近接している、第2の前記サージ抑制ユニットを含み、
前記第2のサージ抑制ユニットは、前記第4、第5及び第6の配電線により運ばれる各々の相の電圧の不均衡を補正する第1、第2及び第3の変圧器バンクを含み、
前記第1、第2及び第3の変圧器バンクは、前記第2電圧で前記第4、第5及び第6の配電線により運ばれる三相電力の各々の相と接続し、各々の相を受け取る、第1、第2及び第3の一次コイルをそれぞれ含み、前記第1、第2及び第3の変圧器バンクは、共に直列接続する第1、第2及び第3の二次コイルをそれぞれ含み及びそこに直列接続される抵抗器を有し、前記変圧器バンクは、前記第2電圧の前記三相電力を第4電圧の三相電力に変換し、前記二次コイルにおける前記三相のいずれか1つの電圧の不均衡が、前記配電システムの前記システム変圧器の前記二次側における電圧の不均衡を相殺する、前記二次コイルにおける残りの相により相殺される、
システム。
【請求項3】
請求項2に記載のサージ抑制システムであって、前記第1及び第2のサージ抑制ユニットは、前記第1電圧及び第2電圧とそれぞれ関連する電圧クラス及びkVAに合わせた大きさにされる、システム。
【請求項4】
請求項2に記載のサージ抑制システムであって、前記第1及び第2のサージ抑制ユニットの前記第1、第2及び第3の一次コイルは、地面と接続され、地面と物理的に間近に近接しており、前記第1及び第2のサージ抑制ユニットの前記第1、第2及び第3の二次コイルは、接地されない、システム。
【請求項5】
請求項1に記載のサージ抑制システムであって、前記第1のサージ抑制ユニットの前記第1、第2及び第3の一次コイルは、地面と接続される、システム。
【請求項6】
請求項5に記載のサージ抑制システムであって、前記第1のサージ抑制ユニットの前記第1、第2及び第3の二次コイルは、接地されない、システム。
【請求項7】
請求項1に記載のサージ抑制システムであって、前記第2電圧は、中電圧である、システム。
【請求項8】
請求項1に記載のサージ抑制システムであって、前記第1電圧は、高電圧である、システム。
【請求項9】
電源から三相電力を受け取り、前記三相電力を高電圧及び中電圧で伝送し及び前記三相電力を低電圧で変換し供給する、電力網の配電システムのサージ抑制システムであって、
前記配電システムの複数の三相システム変圧器であって、前記システム変圧器は、前記中電圧若しくは前記高電圧のうちの1つまで前記電力を上昇させ又は前記中電圧若しくは前記高電圧のうちの1つから前記電力を下降させ、前記システム変圧器のそれぞれは、三相電力の各々の相を伝送する第1、第2及び第3の配電線を介して、電源から三相電力を受け取る一次側と、前記三相電力の複数の前記相のうちの各々1つをそれぞれ伝送する第4、第5及び第6の配電線を介して、三相電力を下流に供給する二次側と、を有し、前記一次側及び前記二次側は、前記三相電力を、前記一次側の一次側電圧から、前記一次側電圧とは異なる前記二次側の二次側電圧に変換するための一次側及び二次側のコイルをそれぞれ含み、前記配電システムは、上流の前記システム変圧器の1つにより供給される前記二次側電圧を、低電圧電力消費者による使用のための前記低電圧までに下降させる、少なくとも1つの下降変圧器をさらに含む、
前記配電システムの複数の三相システム変圧器と、
複数のサージ抑制ユニットであって、少なくとも第1の前記サージ抑制ユニットは、前記システム変圧器のそれぞれの一次側の第1、第2及び第3の配電線と並列に接続され、前記システム変圧器のそれぞれの一次側と物理的に間近に近接しており、少なくとも第2の前記サージ抑制ユニットは、前記システム変圧器のそれぞれの二次側の前記第4、第5及び第6の配電線と並列に接続され、前記システム変圧器のそれぞれの二次側と物理的に間近に近接しており、前記サージ抑制ユニットのそれぞれは、前記第1、第2及び第3の配電線又は前記第4、第5及び第6の配電線を介して、正常な動作レベルの少なくとも10倍を超える電圧及び/又は電流の電磁波パルス(EMP)又は地磁気擾乱(GMD)による1又は複数のサージに起因する、前記配電システムにより運ばれる各々の相における電圧の不均衡を補正する第1、第2及び第3の変圧器バンクを備え、前記第1、第2及び第3の変圧器バンクは、前記配電システムから受け取った三相電力の各々の相と接続し、各々の相を受け取る、第1、第2及び第3の一次コイルをそれぞれ含み、前記第1、第2及び第3の変圧器バンクは、正常な動作レベルの少なくとも10倍を超える電圧及び/又は電流のEMP又はGMDによるサージからエネルギーを無害に排出するために、共に直列接続する第1、第2及び第3の二次コイルをそれぞれ含み及びそこに直列接続される抵抗器を有し、前記変圧器バンクは、前記三相電力を、前記システム変圧器の前記一次側電圧又は前記二次側電圧から、第3電圧の前記三相電力に変換し、前記二次コイルにおける前記三相のいずれか1つの電圧の不均衡が、前記配電システムの前記システム変圧器の前記一次側及び前記二次側における電圧の不均衡をそれぞれ相殺する、前記二次コイルにおける残りの相により相殺される、
複数のサージ抑制ユニットと、
を備える、システム。
【請求項10】
請求項9に記載のサージ抑制システムであって、前記第1及び第2のサージ抑制ユニットは、前記第1及び第2のサージ抑制ユニットが接続されている各々の前記システム変圧器の前記一次側電圧及び二次側電圧とそれぞれ関連する電圧クラス及びkVAに合わせた大きさにされる、システム。
【請求項11】
請求項9に記載のサージ抑制システムであって、前記サージ抑制ユニットのそれぞれの前記第1、第2及び第3の一次コイルは、地面と接続され、前記サージ抑制ユニットの前記第1、第2及び第3の二次コイルは、接地されない、システム。
【請求項12】
請求項9に記載のサージ抑制システムであって、前記システム変圧器は、前記三相電力を、前記低電圧よりも大きい中電圧又は高電圧のうちの1つから上昇させ、又は、中電圧又は高電圧のうちの1つまで下降させる、システム。
【請求項13】
請求項9に記載のサージ抑制システムであって、第1の前記システム変圧器の前記一次側電圧を、前記電力網の前記三相電力を生成する各々の電力生成器から受け取る、システム。
【請求項14】
請求項9によるサージ抑制システムであって、前記電圧の不均衡は、E1、E2及びE3のパルスコンポーネントのうち少なくとも1つを含むEMPにより生成され、前記サージ抑制ユニットは、前記電磁パルスの前記E1、E2及びE3のパルスコンポーネントのいずれかを相殺する、システム。
【請求項15】
低電圧電力の消費者に電力を提供する電力網の配電システムのサージ抑制システムであって、
前記配電システムの少なくとも1つの三相システム変圧器であって、三相電力の各々の相をそれぞれ伝送する第1、第2及び第3の配電線を介して、電源から三相電力を受け取る一次側と、前記三相電力の複数の前記相のうちの各々1つをそれぞれ伝送する第4、第5及び第6の配電線を介して、三相電力を下流に供給する二次側と、を有し、前記一次側及び前記二次側は、前記三相電力を、前記一次側の第1電圧から、前記第1電圧とは異なる前記二次側の第2電圧に変換するための一次側及び二次側のコイルをそれぞれ含み、前記システム変圧器は、中電圧又は高電圧のうちの1つまで前記第1電圧を上昇させ、又は、中電圧又は高電圧のうちの1つから前記第1電圧を下降させる、
前記配電システムの少なくとも1つの三相システム変圧器と、
前記システム変圧器の前記一次側及び二次側とそれぞれ並列に接続され、前記システム変圧器の前記一次側及び二次側とそれぞれ物理的に間近に近接している、少なくとも第1及び第2のサージ抑制ユニットであって、前記第1のサージ抑制ユニットは、前記システム変圧器の前記一次側の前記第1、第2及び第3の配電線と接続され、前記第2のサージ抑制ユニットは、前記システム変圧器の前記二次側の前記第4、第5及び第6の配電線と接続され、物理的に間近に近接している、
少なくとも第1及び第2のサージ抑制ユニットと、
前記サージ抑制ユニットのそれぞれであって、いずれか一つの側の電圧の不均衡から前記システム変圧器を保護するために、正常な動作レベルの少なくとも10倍を超える電圧及び/又は電流の電磁波パルス(EMP)又は地磁気擾乱(GMD)による1又は複数のサージに起因する、前記第1、第2及び第3の配電線又は前記第4、第5及び第6の配電線により運ばれる各々の相の電圧の不均衡を補正する第1、第2及び第3の変圧器バンクを備え、前記第1、第2及び第3の変圧器バンクは、前記配電システムにより運ばれた三相電力の各々の相と接続し、各々の相を受け取る、第1、第2及び第3の一次コイルをそれぞれ含み、前記第1、第2及び第3の変圧器バンクは、正常な動作レベルの少なくとも10倍を超える電圧及び/又は電流のEMP又はGMDによるサージからエネルギーを無害に排出するために、共に直列接続する第1、第2及び第3の二次コイルをそれぞれ含み及びそこに直列接続される抵抗器を有し、前記変圧器バンクは、前記配電システムから受け取った前記三相電力を、第3電圧の前記三相電力に変換し、前記二次コイルにおける前記三相のいずれか1つの電圧の不均衡が、前記配電システムの前記システム変圧器の前記一次側及び前記二次側の両方の電圧の不均衡を相殺する、前記二次コイルにおける残りの相により相殺される、
サージ抑制ユニットと、
を備える、システム。
【請求項16】
請求項15に記載のサージ抑制ユニットであって、前記第1及び第2のサージ抑制ユニットのそれぞれの前記第1、第2及び第3の一次コイルは、地面と接続され、前記第1及び第2のサージ抑制ユニットの前記第1、第2及び第3の二次コイルは、接地されない、システム。
【請求項17】
請求項16に記載のサージ抑制ユニットであって、前記システム変圧器は、前記三相電力を、中電圧又は高電圧のうちの1つから上昇させ、又は、中電圧又は高電圧のうちの1つまで下降させる、システム。
【請求項18】
請求項16に記載のサージ抑制システムであって、前記システム変圧器の前記一次側電圧を、前記電力網の前記三相電力を生成する各々の電力生成器から受け取る、システム。
【請求項19】
請求項16に記載のサージ抑制システムであって、前記電圧の不均衡は、E1、E2及びE3のパルスコンポーネントのうち少なくとも1つ又は全てを含む電磁パルスにより生成され、及び、前記サージ抑制ユニットは、前記電磁パルスの前記E1、E2及びE3のパルスコンポーネントのいずれかを相殺する、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2014年6月11日に出願された仮出願第62/010,746号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、電力網の中電圧及び高電圧システムのためのサージ抑制システムに関する。
【発明の概要】
【0003】
現在のサージ抑制システムは、プラント、工場又は他の大規模システムなどの工業的設定で使用される、三相の電力供給バスの1つの側での電圧過渡現象から設備を保護するように開発されている。公知の電圧サージ抑制器において、3個の単相変圧器にはターミナルが提供されており、これらのターミナルは、電力供給バス上の各単相電源にヒューズ遮断器を介してそれぞれ接続されている。このサージ抑制器は、影響を受ける三相回路と接続された設備に深刻な損害を与え、設備を破壊する可能性があり又はプラント全体に停電をもたらす可能性がある、電圧過渡現象から保護する。サージ抑制回路は、いかなる設備の電力バス上でサージ及び故障プロテクタとして動作する。サージ抑制システムは、一般に、約1から3アンペアのチャージ電流を有し、約1000フィート(約305メートル)のバスダクトに給電する2000から3000KVAの非接地のデルタ電力変圧器で動く480ボルトの配電システムとともに使用できる。このチャージ電流は、当分野の文書により決定される実際のアンペアよりも通常は2アンペアを超えるのみであって、この変動は、給電ケーブル及びバスダクトの長さ、電気モータの数及びサイズ、任意の一定時間で動作する力率補正コンデンサによるものである。より典型的には、抵抗接地回路は、接地問題を防止するのを助けるため、常にこのチャージを地面に流す。公知のサージ抑制器は、バスバーに接続され、このエネルギーを地面に流さないが、このチャージエネルギーを使用して地面に対する相電圧を安定化及び平衡化するのを助ける。
【0004】
この公知のサージ抑制器は、施設レベルで電力供給バスに接続されている設備内に設置され、設備を保護する。しかし、工業用バスバー電力供給システムの外部に離れて配置されているグリッド(網)上の中高電圧電気システム用のサージ抑制システムが必要とされている。
【0005】
電力網は、電力生成器、変圧器、送電線及び配電線及び制御器として総称される多くのコンポーネントから構成される。電力生成器は、石炭、天然ガス、核分裂、水力、太陽、風などの多くの形式のエネルギーによって駆動される。電力が約6,000ボルトの比較的低い電圧で生成されると、数マイルの高圧線(送電線)で電気をより効果的に配電することを可能にする、大電力トランス(LPT: Large Power Transformer)を使用して高電圧(多くの場合、数十万)に昇圧される。電気が使用される一般的な領域に達すると、サブ/ディストリビューションステーションで最終電圧に近づいて降下する。配電線は、使用する建物に配電する前に、路側電柱及び最終の変圧器の地下に近い低電圧の電気を運ぶ。
【0006】
本発明は、既存の位相加算回路製品を改良し、より高い電圧に耐えて、遠隔設定からの監視と通信を提供し、より堅牢な設置プラットフォームを提供することができるように、これらの構造に電力を送る前に住宅及び工業施設にグリッドレベルの保護を提供するように設計され、当該システムのサージ保護装置を並列に構成して電力を上げ下げする必要がある電力システムの両側のグリッドレベルのアプリケーションを保護する、サージ抑制システムである。
【0007】
中電圧又は高電圧のシステムでは、本発明は、大規模で急速なエネルギー「ドレインオフ」を処理し、高電圧/高磁束からの干渉を防ぎ、遠隔の性能管理を可能にし、物理的な攻撃及び重大な過電圧から必要に応じて保護を強化することを可能にする。本発明が重要なグリッドインフラストラクチャと並行して設置される場合、グリッドのコンポーネントは以下から保護される。
【0008】
過渡現象: インパルス性の過渡現象は、ほとんどの人々が、サージ又はスパイクを経験したと言ったときに言及しているものである。インパルス性の過渡現象を説明するために、バンプ、グリッチ、電力サージ、スパイクなど、さまざまな用語が使用されている。インパルス性の過渡現象の原因には、落雷、接地不良、誘導負荷の切替え、ユーティリティ障害解除、及び静電放電(ESD)が含まれる。その結果は、データの損失(又は破損)から設備の物理的損傷までの範囲に及ぶ可能性がある。これらの原因のうち、落雷がおそらく最も損害を与える。本発明のサージ抑制装置は、そのような過渡現象に対してグリッドレベルの保護を提供する。
【0009】
中断: 供給電圧又は負荷電流の完全な損失として中断が定義される。中断の原因はさまざまだが、大抵は電気供給グリッドの種々の損害、例えば、落雷、動物、樹木、車両事故、破壊的な天候(強風、ライン(線)上に大雪又は氷など)、設備障害又は基本回路ブレーカのトリップなどの結果によるものである。ユーティリティインフラストラクチャは、これらの多くの問題を自動的に補うように設計されているが、これは絶対確実というわけではない。
【0010】
サグ/過小電圧: サグは、0.5サイクル〜1分の時間の間隔の一定周波数でのAC電圧の低下である。サグは通常、システム障害によって引き起こされ、また、多くの場合、大きな起動電流で負荷をスイッチオンした結果である。
【0011】
スウェル/過電圧: スウェルは、サグの逆型であって、0.5サイクル〜1分間の間にAC電圧の上昇を有する。スウェルの場合、高インピーダンスのニュートラル接続、突然の(特に大きな)負荷低減及び三相システムでの1つの相の故障が一般的な原因である。
【0012】
周波数変動: オフセット、ノッチング、ハーモニクス(高調波)及びインターハーモニクス(次数間高調波)などのあらゆる種類の周波数問題がある。これらは、エンドユーザの電力システムで主に発生するすべての条件である。これらの変動は、負荷からのハーモニクスがより小さいY字型システムであることから起こる。大規模な相互接続されたグリッド障害につながる可能性のある高周波変動は、太陽や敵の攻撃からくるかもしれない。重要なインフラストラクチャコンポーネントの一部のみが損傷しても、停電が長期化したり、隣接装置に付随する損傷をもたらしたりする可能性がある。太陽フレアは、程度と方向が変化する自然現象である。この「太陽の天気」は、太陽の表面から太陽系全体にわたってあらゆる方向に送られる。これらのフレアは大量の磁気エネルギーを含んでおり、地球にどのように当たるかによって、表面にある部品が損傷したり、惑星の磁気コアの特性が一時的に変化したりすることがある。いずれにせよ、大きな割合の直接的な打撃は、設備の故障を引き起こし、地域全体を停電させる可能性がある。電磁波パルス(EMP)は同様の方法で使用することができるが、高度の核爆発の形で敵の戦闘員によって指示されることができる。オハイオ州シンシナティで起こる爆発は、米国世帯の70%を停電させる可能性がある。大電力変圧器又は電力生成器の損傷は、修理に数ヵ月かかることがある。核爆発の高周波擾乱は、オペラ歌手の声がガラスを壊すように、保護されていないコンポーネントを破壊する可能性がある。各擾乱の強度は、ソースに依存するが、本発明のような相電圧安定化システムを使用することによって、それぞれを効果的に緩和することができる。
【0013】
現在のサージ抑制技術は、配電システムの施設側でこれらの障害に対処して、施設内の設備を直接的に保護し、またグリッドレベルでも保護しようと試みるが、これらの技術はこれらの擾乱から保護する上で欠点を有する。
【0014】
公知のサージ抑制技術の一例として、コンデンサはより薄い絶縁層によって分離された薄い導体である。コンデンサは電流と電圧の設計定格を有する。この定格を超えていない場合は、通常10から15年間動作する。ある高電圧スパイクは、コンデンサの壊滅的な故障を引き起こす可能性がある(通常はそうなる)。4,000の力率補正コンデンサを有する工場では、高調波電流又は高電圧スパイクのために毎年300〜500個のコンデンサが故障することは珍しくない。
【0015】
別の例では、SPD(サージ保護装置)は、様々なサイズで構成された固体素子である。コンデンサのように、電流及び電圧が定格である。MOV(金属酸化物バリスタ)に多くの低レベル電圧スパイクがぶつかると劣化し、MOVが破壊されると「クランプ電圧」が上昇し、保護するために設置された設備を保護しなくなるまでクランプ電圧が上昇し続ける。電圧スパイクが定格電圧を超えてMOVに達すると、地面に数千アンペアの電流が流れ始め、地上システムにノイズが発生し、SPD内で非常に高い熱が発生する。事象が数百万分の1秒より長い場合、MOVは破壊される可能性があり、保護するために設置された設備を保護しなくなる。
【0016】
さらに、ファラデーケージは、何年もの間、工場内のコンピュータハードウェア及び機密データ並びにいくつかの政府及び軍用建物を収容し保護するために使用されてきた。それらは最近、太陽フレア、雷、EMPパルスの問題の解決策とうたわれてきた。しかし、ほとんどの建物は金属製の筐体内に建てられておらず、筐体を適切に設計して建設するのは困難で高価である。ほとんどの自動車、トラック、電車、飛行機は金属で完全に囲まれているが、これらいずれかの事象からの保護はない。設計上、金属製の筐体は、敏感な電気設備を包囲して遮蔽し、地面に排出することによってエネルギーを除去することに重きを置くので、適切で堅固な接地接続を有さなければならない。電力会社は、いくつかのグリッドタイ・サブステーションでファラデーケージ設計を使用する。それらは非常に大きく、高価である。
【0017】
グリッド/大電力トランスに対する最大の脅威は、電磁パルス(EMP: Electromagnetic Pulse)又は地磁気擾乱(GMD: Geomagnetic Disturbance)の存在であり、後者は太陽フレアとして発生し、前者は敵の兵器によるものである。どちらの脅威でも、オーバーワークの大電力トランスが電力で飽和し、変圧器が燃え尽きる原因となる可能性がある。EMPでは、飽和が1秒未満で発生する可能性があるため、検出システムは役に立たない。
【0018】
GMDは損害を発生させるのがより遅いので、検出システムが変圧器の負荷を低減することができ、それによってGMD事故を乗り越えることが可能となる。このブラウンアウト又は一時的なブラックアウト状態は、太陽風の程度に応じて数分、数時間又は数日間続く可能性がある。1869年のキャリントン事象の場合、地球は太陽磁気エネルギーで約1ヶ月たたきつけられた。グリッドは適切に管理されていれば、そのような事象を乗り切ることができるが、長い間電力なしになることは市民にとって受け入れがたいであろう。
【0019】
単純に、大電力トランスは、ファラデーケージのような古い技術を用いて保護されることはできない。大電力トランスをサブステーションに接続する何百マイルものワイヤーは、アンテナのような働きをし、ファラデーが役に立たないような効率でEMPを取り入れる。サージ保護装置は、数百万分の1秒で発生するEMPを阻止する程には十分速くなく、又は、伝送レベルで発生する大量の電子の流れを大電力トランスに電流を流すことなく処理して非保護のシステムと最終的には同じ効果を有するようにする程には、十分速くはない。接地システムは、余剰電流をEMPから地上の接地プローブ又はマットに送るよう試みるが、余分なエネルギーは接地バスを介して電力システムに戻る可能性があり、焼損の原因ともなる可能性が高い。
【0020】
本発明は、グリッド上の複数の場所に接続されたサージ抑制ユニットのシステムであって、そのような擾乱が施設レベルの設備に到達する前に様々な擾乱に対してグリッドレベルの保護を提供するシステムに関する。本発明の効果は、グリッドレベルのアプリケーションを保護する上で重要である。本願の独特なアプリケーション及び設計によって、本発明のサージ抑制ユニットは、大きな電圧及び電流スパイクがグリッドに影響を与えることを効果的に防止する。さらに、サージ抑制ユニットには、ほとんどのユーティリティ操作で必要とされる診断機能及び遠隔報告機能を提供するさまざまな統合機能が含まれる。そのため、サージ抑制ユニットは、自然地磁気障害(太陽フレア)、極端な電気事象(雷)、人為的事象(EMP)及び電力網上のカスケード障害などの主要な事象からグリッドレベルのコンポーネントを保護する。本発明はまた、アーク放電に対し重要な保護を提供し、「通常の」グリッド動作に存在する電圧ハーモニクスを低減する。
【0021】
本発明のサージ抑制ユニットの報告機能は、しばしば遠隔又は隔離された設定にある媒体及び高圧システムを保護するために特有である。地方の低電圧設備及びインフラストラクチャを保護するために設計された装置とは異なり、サージ抑制ユニットからのリアルタイム診断報告は、それが効果的に動作し、そして米国の電力網のような電力システムを保護するために必要とされる継続的な保護を提供していることを保証するために、重要である。
【0022】
説明したように、様々な既知の技術(例えば、MOV、ファラデーケージ、ヒューズ切断を用いて設計された類似の装置でさえも)は、電圧不均衡を補正しようとする。これらの装置は、かなりの電圧が印加されたときのグリッドレベルでの電圧要件又は「バーンアウト」する電圧要件に対してスケーラビリティを提供しない。これらの技術は、報告、遠隔診断、アーク放電及び局所的な電圧超過などの付随的な危険からの保護を提供しない。本発明のサージ抑制システムは、これらの利点の各々を提供し、様々なグリッドレベルのアプリケーションについても完全に拡張性がある。
【0023】
本発明の他のオブジェクト及び目的、及びそれらの変形は、以下の明細書を読み、添付の図面を確かめることによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】電力供給網の様々な場所で電力網インターフェースに接続されたサージ抑制ユニットのシステムを有する電力網インターフェースの概略図。
【
図3】グリッドレベルにおけるグリッドレベルコンポーネント(例えばサブステーション)の保護シナリオ(20)を図式的に示す図。
【
図4】
図3の完全なユニット(21、22及び23)として参照されるシャント接続された三相変圧器バンクを構成するサージ抑制ユニット(30)を示す図。
【
図6】E1 EMPパルス成分を受けた場合の三相回路に設置されたサージ抑制ユニットのテスト結果を示すグラフ。
【
図7】E2 EMPパルス成分を受けた場合の三相回路に設置されたサージ抑制ユニットのテスト結果を示すグラフ。
【
図8】E3 EMPパルス成分を受けた場合の三相回路に設置されたサージ抑制ユニットのテスト結果を示すグラフ。
【
図9】脅威パルスを除去したE3 EMPパルス成分を受けた場合の三相回路に設置されたサージ抑制ユニットのテスト結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
特定の用語は、以下の説明において便宜及び参照のみのために使用され、限定するものではない。例えば、「上向き」、「下向き」、「右向き」及び「左向き」という単語は、参照される図面の方向を指す。「内向き」及び「外向き」という単語は、配置の幾何学的中心及びその指定された部分に向かう方向及び離れる方向をそれぞれ指す。前記用語は、具体的に言及された単語、その派生語、同様の意味の単語を含む。
【0026】
図1A〜1Cを参照すると、汎用配電システム10が示される。汎用配電システム10は、個々の消費者に施設レベルで電力を供給するグリッドレベルの様々な電力システムのコンポーネントを開示する。本開示の目的において、施設レベルは、住宅及びアパートメント等の住宅施設、及び、工業用施設及び工場施設等を含む。これらの構造は、様々な種類の電力消費装置又は電力消費者を含み、例えば、様々な種類の設備、モータ及び電気器具を含む。また、スタンドアローン型電力消費装置、例えば道路の信号機及び他の電力消費者は、電力網によって電力が供給される。
【0027】
より詳細には、配電システム10は、高電圧及び超高電圧レベルの送電網11と、中電圧の配電網12とを含み、次に施設レベルでより低い電圧を住宅、工場等に供給する。
図1Bは、超高電圧で電力を生成する様々な電力供給源、例えば、石炭プラント、原子力プラント及び水力発電プラントを示す。これらは、昇圧変圧器13を介して超高電圧送電網14に電力を供給してもよい。超高電圧送電網14は、変圧器16のネットワークを介して高電圧網15に接続してもよく、高電圧網15は、変圧器17のネットワークのそれぞれを介して、工業用発電所、工場又は中規模の発電所等の様々なグリッド施設に接続される。一般に、中電圧は、典型的には配電網に運ばれる10kV〜25kVの範囲又はそれ以上を指し、生成電圧を含めてもよく、高電圧は、送電網に存在し得る132kV〜475kVの範囲を指し、また、超高電圧は、典型的には送電網に運ばれる500kV〜800kVの範囲にある。これらのグリッドレベル電圧は、施設又は他の同様の構造に存在する低電圧よりもはるかに高い。
【0028】
次に、送電網11は、変圧器18のネットワークを介して中電圧の配電網12(
図1C)に接続してもよい。次に、住居向けの配電網12は、都市電力プラント、工業用消費者、太陽光発電所、風力発電所、農業農地、地方の住宅ネットワーク又は都市住宅向けネットワーク等の様々な施設を含めてもよい。様々な変圧器18は、配電システム10のこれらのコンポーネントを相互接続するように提供される。一般に、本発明は、配電システム10の様々な場所に設置されるサージ抑制システムに関する。サージ抑制システムは、グリッドレベルのサージ抑制を提供することにより、配電システム10から電力が供給される様々な施設を保護する。これらの様々な変圧器は、様々な種類及び構成のものでもよく、例えば、昇圧変圧器、降圧変圧器、サブステーションに設置されたサブステーション変圧器又は個々の顧客に供給するための配電変圧器等である。
【0029】
本発明は、電圧サージ抑制ユニット20のシステムに関し、この電圧サージ抑制ユニット20は配電網10上の様々な場所に設置されて種々の設備に三相でグリッドレベルの保護を提供し、この種々の設備はこのような配電網10から電力を受信し又は配電網10へ電力を供給するものである。
図3は、参照番号21、22及び23により、
図3において互いに区別される複数のサージ抑制ユニット20のシステムを概略的に示す。これらのサージ抑制ユニット21、22及び23は、特定の設置場所及びそれらの場所で配電システム10内に存在する電圧レベルに合わせた大きさにされる。一般に電力網は、上述した様々な変圧器を使用し、
図3の代表的なグリッド変圧器24は、送電網11又は配電網12で使用される様々な変圧器のうちの1つである。変圧器24は、例えば生成プラントから又はグリッド変圧器24への電力を供給する3つの電力線25A、25B及び25Cと接続される一次側コイル24Pを含む。変圧器24は、電力網の下流のコンポーネントに電力を供給するための送電線26A、26B及び26Cと接続する二次側コイル24Sを含む。例示的な実施形態において、変圧器24は、生成側の電力線25A、25B及び25Cから受け取った6kVから、グリッド電力線26A、26B及び26Cに供給される300kVまでに電力を上げる。一次側及び二次側の変圧器24の電圧は、電力網内の場所によって変化させることができ、電圧レベルが中電圧又は高電圧となり得ることが理解されるだろう。
【0030】
サージ抑制ユニット21は、生成電力線25A、25B及び25Cと、一次側コイル24Pとに接続し、上述した様々な過渡状態から保護することにより、一次コイル24Pと、上流の電力生成器と、任意の上流のグリッドコンポーネント及び設備とを保護する。次に、サージ抑制ユニット22は、グリッド又は送電線26A、26B及び26Cと、二次側コイル24Sとに接続し、上述した様々な過渡状態から保護することにより、二次コイル24Sと、下流の送電線26A、26B及び26Cと、接続された任意のグリッド設備及びコンポーネントとを保護する。また、サージ抑制ユニット23は、480Vユニット又はシステム回路及びロジックを保護するのに適した他の電圧レベルであってもよい。
【0031】
図4を参照すると、サージ抑制ユニット21、22及び23の各々は、一般に、直列でシャント接続された三相変圧器バンク31、32及び33を備えるサージ抑制ユニット設計20(
図4)の設計を使用することができる。三相変圧器バンク31、32及び33は、相中性電圧の不均衡を自身に送り返すことにより、及び/又は、
図4に示すシステムの二次側に配線された集積抵抗器バンクの不均衡を排除することにより、相中性電圧の不均衡を補正するように設計されている。変圧器バンク31、32及び33は、電力網内に存在し得る中電圧又は高電圧で、システムの送電線L1、L2及びL3のうちの1つとそれぞれ接続し電力を受け取る一次コイル31P、32P及び33Pを含む。また、一次コイル31P、32P及び33Pは、地面34と接続(接地)している。送電線L1、L2及びL3は、例えば、送電線26A、26B、26C(
図3)と接続され及び
図4に示す電力生成器及びメガ変圧器により供給されてもよく、又は、
図3の例で送電線25A、25B、25Cと接続されてもよい。
【0032】
また、変圧器バンク31、32及び33は、共に直列接続する二次コイル31S、32S及び33Sをそれぞれ含み及びそこに直列接続される抵抗器35を有する。直列接続された抵抗器35は、意図的又は自然発生的に生じた電力ダウンの間のノイズフィルタリング及びエネルギーの放電路の両方を提供する。また、抵抗器35は、アーク放電はシリーズ現象なので、アーク放電を防止するためにシステムエネルギーを排出するのに役立つ。故障中に残りの相を保持することにより、電圧の蓄積が形成されず、放電事象を発生させることなく単に回路を開けることで回路を保護することができる。この向上した安定性は、よりクリーンな電子の流れを確保し、コンポーネント及び人員等にとって流れをより安全にする。言い換えれば、サージ抑制ユニット30は、「負荷」側の電圧を平衡化する。放電は本来「ソース」側にあるので、アークの向こう側の電圧が最小であり、アークは抑制されるだろう。
【0033】
サージ抑制ユニット20の各々は、送電線L1、L2及びL3の各々からの電力を調節する回路遮断器36を使用する。回路遮断器36は、瞬時にリセットするようにプログラムされることができ、中電圧及び高電圧の要件を拡張することができる。また、回路遮断器36は、サージ抑制ユニット20の設置及び交換のために手動で操作してもよく、又は、サージ抑制ユニット20の手動切換を提供する別のスイッチ装置が含まれ得る。ユーティリティ団体の要件によっては、重大な過電圧が発生すると、追加の保護が、金属酸化物バリスタ(MOV)の形で二次回路として直列に接続することができる。
【0034】
この構成により、サージ抑制ユニット20は、クリーンに相シフトされた電流を最も低い相電圧を有する相に押し込むことで、地面に対する相電圧を平衡化する。コンポーネントは、単相変圧器31、32及び33であることが好ましく、恒久的な解決において、使用される特定のサージ抑制ユニット20の電圧クラス及びkVAに合わせた大きさにされる。電圧の仕様は、サージ抑制ユニット30の各々をその設置場所にとって適切な大きさにするために必要とされる適切な巻数比を決定する。3つの変圧器31、32及び33の全ては、各相間でのアーク発生又は磁束を防止するため、IEEE規格により互いに間隔が空けられている。特定の要件によって、本発明のサージ抑制ユニット20は、オイル/冷媒に浸漬した抵抗器バンク35及びオイル冷却した変圧器31、32、33を備える地下設置を活用してもよい。これらのオプションは、より狭い間隔(より小さなフットプリント)を許容し、より機械的ではないこと又は自由な空気冷却を要求する。また、これらのオプションは、戦闘地のラインから設備を除外することもある。
【0035】
設置の際、サージ制約ユニット20の各々は、例えば、
図3に示すように、電力システムと並列に配線される。さらに、サージ抑制ユニット20、例えば
図3のユニット22は、サージ抑制ユニット20からそれと接続した他の電力コンポーネントまでに拡張する拡張した保護を提供するために、電力変圧器24の二次側24Sから下流の変圧器の一次側までを保護する。例えば、サージ抑制ユニット20は、大電力トランスの二次側から次の降圧変圧器の一次巻線までを保護する。追加的なサージ抑制ユニット20は、配電変圧器の二次側から始まり次の変圧器等の一次側に至るまでの降圧型電力システムの次の部分に設置されることもある。サージ抑制ユニット20の各々は、変圧器のフックアップ電圧及びVAレートで動作するように設計され及び構成され、異なる大きさ及びレートのサージ抑制ユニット20が、設置場所に応じて電力網に設置されることで保護するように設計される。また、この拡張した保護は、生成ソースから、
図3のサージ抑制ユニット21により保護される一次変圧器24の一次側24Pまでに当てはまる。全ての接続されたコンポーネントは、保護され、本発明のサージ抑制ユニット20は、下流のアクティビティ又はライン上で直接的に引き起こされた不均衡を安定化させるだろう。
【0036】
さらに、電力システムは、サージ抑制ユニット20に接続するため、スイッチを切る必要はないだろう。回路遮断器36又は他の適切な切断装置36aは、ユーティリティの架線作業員がシステムに入れるサージ抑制装置20をホットタップして、次に、切断スイッチ36aを使用して各々のサージ抑制ユニット30を取り扱うように、手動で操作されることができる。
【0037】
サージ抑制ユニット20のシステムは、エネルギーをより効率的にする電力電流を合理化するため、電力調整製品(例、コンデンサ37)をオプションとして導入することにより、力率補正(PFC: Power Factor Correction)を提供する。
【0038】
また、好ましくは、サージ制約ユニット20(
図4)は、好ましくは電力センサを含む1又は複数の適切なセンサ38を含む。センサ38は、センサ38を検出し監視するための制御システム39と接続する。また、制御システム39は、
図5のデータディスプレイ40に示すように、遠隔(ウェブベース)診断機能及び報告機能を含めてもよい。データディスプレイ40は、コンピュータターミナルなどを介して、ユーティリティの要員が監視するため、様々なサージ制約ユニット40から離れて配置されてもよい。データディスプレイ40は、好ましくは、事前に通信されオフサイトの場所から監視され得る障害(不均衡)に関する情報を示す。データディスプレイ40は、様々な種類のデータを表示することができるいくつかのディスプレイグラフ41、42、43及び44を含む。このリアルタイムのステータス報告は、以下に限定されないが、これらを含む有意な情報及びデータを提供する。
【0043】
接地故障インジケータ(相及び各発生の重要度ごと)
【0044】
制御システム39は、複数の遠隔地に対応するユーティリティを動作させるようにカスタマイズ可能なアラームであって、各データポイントのアラームを含めてもよい。これは、無人及び/又は遠隔設定におけるグリッドレベルの電力サブステーションにとって重要である。過去の傾向分析及び特定の検索能力の両方を可能にするように、過去の追跡及び参照のために制御システム39内のデータ記憶手段を用いて、各データポイントがキャプチャされ、記憶され、及び、維持されることができる。
【0045】
本発明は、電圧に着目して、上記の5つの共通の電力問題のそれぞれについて説明する。過渡は、定期的に発生する短時間の電圧スパイクであり、ほんの数回のサイクル続くことがある。本発明のシステムは、同じ波形の余剰電圧を取って、変圧器31、32及び33を介して、電磁的に同じ強度で自身に戻してもよい。電力分析器を用いてでも、ラインに直接配置された擾乱が、完全に軽減されることが分かるだろう。
【0046】
中断には多くの原因があるが、システムが電力を失うと損害は短時間に発生し、モータは接続した負荷に不適切な電圧を送る小さな生成器に変化して徐々に縮小していく。本発明のシステムは、持続的な電力損失を阻止することができないが、変圧器31、32及び33及び抵抗器35の相互作用が原因で停電が発生した場合には、ソフトランディングすることにより、負荷に対する損害を防止する。
【0047】
本発明は、電圧の不安定性の悪影響、例えば、サグ、スウェル又はグリッドレベルの過小/過電圧を軽減させるだろう。変圧器31、32及び33の一次側31P、32P及び33Pと、隣接する二次側31S、32S及び33Sとは、常に電圧の差異を安定させる。持続的なスウェルがある場合、余剰電力は、害を及ぼさずに、システムの二次側に直列接続された統合抵抗器バンク35に排出される。
【0048】
波形及び周波数の変化は、巨大な磁力からのライン上のノイズとして最もよく説明されるかもしれない。これらの磁力がグリッドにヒットすることは、生成器、変圧器、自動タッピング装置及び接続された負荷の至る所に害を及ぼし得る。敵対的なEMPからの高周波ノイズは、通常は60Hzの電子の流れを、インフラに大混乱をもたらす電子の流れに変化させる。このような敵対性の重要度又は近接度によって、損害は、エンドユーザの電子機器の損失から、ユーティリティ生成プラント又は電力変圧器の固定子の加熱までの範囲に及ぶ可能性がある。本発明のサージ抑制ユニット20は、60Hz範囲を上回る又は下回る任意の周波数を抑制する、ゲートキーパーとして動作し得る。本発明のシステムがない場合においてグリッドコンポーネントへの損害が瞬間的に発生しうるが、このシステムは60Hzの波形上でのみ動作するので、違反の正確な速度で、不適切な波形を統合抵抗器バンク35へ一掃する。したがって、本発明は、仕様外の擾乱を正し、毎日のアクティビティを調和させる。
【0049】
本発明のシステムは、従来のサージ抑制装置よりも有意な利点を提供する。例えば、本発明のシステムは、グリッドシステム保護の対象アプリケーションを用いて、中レベル及び高レベルの電圧用に設計される。多くの従来のサージ抑制装置は、例えば、懸念される「カスケード」問題又は追加的なソースが存在しない自己完結型の工業用又は住居用設定などの低電圧システム用に設計されていた。本発明は、電力網の固有の要求に対応することができる。
【0050】
さらに、サージ抑制ユニット20の各々は、単一の装置を保護するだけではない。サージ抑制ユニット20の各々は、電力網の適切な場所に並列に接続されてグリッドレベルのサブステーション、配電システム及び生成プラントの両側を保護する。
図3は、個々のサージ抑制ユニットにより拡張された保護の典型的な図示を提供する。
【0051】
さらに、サージ抑制ユニット20の回路遮断器36及び切断器36aの提供は、本発明が、中電圧網及び高電圧網のシステム及び施設に拡張され、設置又は交換時に各ユニット20をホットタッピングすることを容易にする。また、サージ抑制ユニット20は、重大な過電圧に特定のグリッドレベルの保護を加えるため、二次回路として直列接続可能な金属酸化物バリスタを含めることができる。
【0052】
より詳細には、この設計によるサージ抑制装置は、注入を介して直接的にライン上の波長/形状及び周波数を変化させるEMPを表す条件の下において、定義された電圧レベルでテストされてきた。このテストは、グリッドレベルの保護を表すためにMil−spec 188−125−1及びMil−Std−2169テスト規格と設備とを使用して、抵抗性及び誘電性の負荷で実施された。数千ボルトは、上記のサージ抑制ユニット20により設計されたサージ抑制ユニットと、接続された電力システムであって、複数の個々のテスト事象ごとに脅威パルスが特定され、固定され、急激に減少される、電力システムとに注入された。
図6は、そのようなテストからのテストデータを表す。
【0053】
一般に、核生成EMPなどのEMPに関して、このようなパルスには、共通に指定される3つのパルスコンポーネント、E1、E2及びE3を含むことが考えられる。E1コンポーネントは、最短と考えられ、電気システムに高電圧を誘導することができる。E2コンポーネントは、電磁的パルスの開始後に短時間で始まり、その後すぐに終了する中間パルスである。このパルスは、落雷と同様であるが、より小さな強度であると考えられる。E3パルスコンポーネントは、より長く及びより遅く、太陽フレアと最も類似すると考えられる。E3パルスコンポーネントは、核EMP又は太陽フレアのいずれによって生成されるにせよ、扱いが最も厄介なコンポーネントであり、現行の技術は、E3パルスコンポーネントを対処せず、グリッドシステムを適切に保護しない。
【0054】
本発明のEMPテストにおいて、サージ抑制ユニット20は、全ての3つのパルスコンポーネント、即ち、E1、E2及びE3を対処し、これらから保護することが示されている。サージ抑制は、EMPパルス脅威を百万分の1秒以内に瞬時にクランプし、脅威の重要度を安全レベルまで軽減させる。例えば、ユニットは、E1パルスを瞬間的に軽減し、1.3マイクロ秒以内に脅威を除去し、ユニットは、E2パルスを瞬間的に軽減し、0.002秒以内に相を「正常」に戻し、また、ユニットは、E3パルスを瞬間的に軽減し、0.002秒以内に相を「正常」に戻した。当該装置は、全てのテストを通じて動作し続け、何の損害も受けなかったので、複数のEMP事象の間中、設置され、実行することができる。
【0055】
図6は、パルスコンポーネントなどを再作成してテスト条件の下で注入された注入E1パルスに対する3つの相とこれらの反応のテスト結果の図的表現を表す。このグラフは、マイクロ秒で計測された時間におけるシステムの相で検出されたキロアンペア(kAmp)を、時間0のパルス開始時と比較する。
図6は、時間−1.0から3.5マイクロ秒までのE1パルス注入テストを示す。このサージ抑制ユニットは、三相回路と接続され、正常な動作条件の下でのシステムは、負荷6000ワットで480ボルトのオペレーティングシステムであった。このテストは、E1波形をシミュレートするために、1500アンペアで20,000ボルトを注入した。脅威パルス80の波高は、単相で1500アンペア(1.5kA)近くに達し、1.9マイクロ秒間持続した。脅威パルス80は、オペレーティングシステムに注入され、突然のスパイクと減衰するテイルとを有するパルスが示されている。より暗い色の相A負荷81及びより明るい色の相B負荷82は、不均衡及び相C負荷83の合成E1スパイクの補正を助けるために、直ちにディップを生成する。相Cは、注入された負荷からの波を伝搬したが、相A及び相Bに負荷を送り返すことによりその影響を軽減した。サージ抑制ユニットの相A、相B及び相Cは、自身に対する波を補正することにより脅威パルスの埋め合わせをするが、言い換えれば、グラフに示されるリアルタイム補正を作成する他の2つの相に対するパルスを平衡化する。結果として、サージ抑制ユニットは、直ちにサージを軽減し、0.1マイクロ秒以内に強度及び幅を小さくし始める。脅威がピーク時に500アンペアより低くなるように保持され、脅威は、0.2マイクロ秒以内に250アンペアを下回るまで小さくなっていく(振幅の70%減)。波高(強度/振幅)及び幅、例えば広い幅(持続時間)が小さくなることにより、サージ抑制は、グリッドコンポーネントに対するE1脅威を無害化する。この脅威は、1.3マイクロ秒で完全に除去される。
【0056】
図7は、注入されたE2脅威に対応するサージ抑制ユニットのグラフィカルな結果を示す。脅威パルスは、脅威パルスが、6kw負荷を有する約5kVで、ライン91により示される相Cに注入される、グラフライン90として示される。このパルスは、減衰するテイルを有する突然のスパイクとして示される。相A負荷92と相B負荷93は、スパイクを示す相C負荷91の不均衡の補正を助けるために、直ちにディップを作成する。相C91は、負荷を相A91及び相B92に送り返すことにより、すでに影響を軽減している。脅威90のピーク260アンペアと比較すると、相C91は、109アンペアでピークに達する。3つの相の全ては、ラインに注入された最初の脅威から0.002秒以内に補正されて相に戻る。3つの相91、92及び93の全ては、時間0で注入される脅威90の前は整列している。3つの相の全ては、ラインに注入される最初のE2脅威から非常に早く相に戻る。したがって、サージ抑制ユニットは、E2パルスコンポーネント又はパルスが同様の特徴を容易に示すことができる。
【0057】
また、サージ抑制ユニットは、
図8及び
図9に示すE3パルスコンポーネントの下でテストされた。
図8は、相C101に注入された約2kVで6kw負荷の脅威パルス100を用いたグラフィカルな結果を示す。脅威パルスは、突然のスパイク及び対応する波形を用いて
図8に明確に示す。
図8のグラフの縮尺によっては、相の反応が全体的に明確ではない。そのようなものとして、
図9は、除去された脅威パルス100が与えられ、システム相の縮尺が明瞭性のために拡大されることができる。
図9に見られるように、相C101は直ちにスパイクを有する。しかし、相A負荷102及び相B負荷103は、相C負荷101の不均衡の補正を助けるため、直ちにディップを作成する。相Cは、負荷を相A102及び相B103を送り返すことにより、すでに脅威パルス100の影響を軽減している。相C101は、脅威パルス100のピーク1710Ampと比較すると、109アンペアでピークに達する。3つの相101、102及び103の全ては、ラインに注入される最初の脅威パルス100から0.002秒以内に補正されて相に戻る。サージ抑制は、3つの相の全ては、時間0で脅威パルス100の前は整列しており、0.002秒以内に整列し直すので、E3パルスコンポーネントを容易に対処することができる。
【0058】
このように、本発明のサージ抑制システムは、AC波形の平坦化を補正することにより、グリッド上のE3のアクティビティ又は太陽フレアのアクティビティの存在による負荷制限の必要性を防止する。ベクトルが120度の位相差である、完璧に平衡化された三相を維持することにより、サージ抑制は、半サイクルの飽和による過熱及び損害を防止するために大電力トランス負荷を減らす必要性を除去する。
【0059】
好ましくは、サージ抑制ユニットは、これらの電磁力からの余剰エネルギーを地面に排出しないが、代わりに、当該エネルギーは、違反の速度で入ってくるサージに対して廃棄される。光ビームを瞬時に跳ね返す鏡のように、サージ抑制システムは、強度にかかわらず電力の突入を軽減するために、パルス脅威を跳ね返す。
【0060】
サージ抑制システムは、配電網内のほとんどの場所どこにでも設置されることができ、回路の全部分を依然として保護する。これは、サージ抑制ユニットは、大電力トランスと、次の降圧変圧器との中間に設置され、既に電源が密集している空間において新たな設備の必要性を除去することを意味する。
【0061】
本発明の特定の好適な実施形態は、説明の目的で詳細に開示されてきたが、部品の再配置を含む開示された装置の変形又は修正は、本発明の範囲内にあることが認識されるだろう。