(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記センサは、薄肉板全体が磁歪材からなる構成であるため、圧力センサを製造するにあたり使用される磁歪材の量が必然的に多くなる。そのため、磁歪材の使用量を低減する観点からは、なお改善の余地を残すこととなっていた。
【0005】
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、磁歪材の使用量を低減することができる圧力センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する本発明の一態様の圧力センサは、内側を流れる流体の圧力で変形する筒体と、前記筒体と接触し前記筒体の変形に伴い押圧される弾性体の一部、又は前記筒体の一部に設けられ、前記筒体の変形に伴って歪む磁歪材と、を備えることを要旨とする。
【0007】
上記構成によれば、筒体の一部、又は筒体と接触する弾性体の一部に磁歪材が設けられるため、弾性体を磁歪材から構成するセンサに比べ、磁歪材の使用量の低減を図ることができる。
【0008】
上記圧力センサについて、前記筒体の変形に伴い押圧される弾性体は、当該弾性体に形成された孔部の内周面において前記筒体の外周面と接触するとともに、前記磁歪材は、前記弾性体のうち、前記筒体の径方向に沿った面、すなわち筒体の軸線と直交する面の一部に設けられることが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、筒体の内側を流れる流体の圧力で筒体の外径が変化することによって、筒体と接触する弾性体が歪むと、弾性体のうち筒体の径方向に沿った面に設けられた磁歪材は、引っ張り応力と径方向に平行な方向の応力とを受ける。このため、磁歪材の応力に伴う磁界の変化に基づき圧力の変化を検出することが可能となる。また、弾性体のうち、筒体の径方向に沿った面の一部に磁歪材が設けられるため、弾性体全体を磁歪材から形成するセンサに比べ、磁歪材の使用量の低減を図ることができる。
【0010】
上記圧力センサについて、前記弾性体のうち、前記磁歪材が設けられた領域と、当該領域を除く領域とは、前記弾性体に設けられたスリットによって一部分離されていることが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、弾性体の磁歪材が設けられた領域とその領域を除く領域、すなわち磁歪材が設けられていない弾性体の領域とは、スリットによって一部分離されているので、磁歪材が設けられていない領域からの応力が、磁歪材が設けられた領域に直接影響することを抑制しつつ、磁歪材が設けられた領域の歪みを磁歪材に伝えることができる。
【0012】
上記圧力センサについて、前記磁歪材が設けられた領域と当該領域を除く領域とを一部分離する前記スリットは、長孔であることが好ましい。
上記構成によれば、磁歪材が設けられた領域と、当該領域とを除く領域とを一部分離するスリットの加工を容易に行うことができる。
【0013】
上記圧力センサについて、前記磁歪材は、前記筒体の外周面のうち、前記筒体の軸方向における一部の範囲に巻かれる線材であることが好ましい。
上記構成によれば、流体の圧力が変化すると、筒体の外径が変化することによって、筒体の外周面に巻かれた線材も歪む。このため、磁歪材の歪みに伴う磁場の変化に基づき流体の圧力の変化を検出することが可能となる。また、筒体の軸方向における一部の範囲に磁歪材からなる線材が巻かれるため、磁歪材の使用量の低減を図ることができる。
【0014】
上記圧力センサについて、前記磁歪材は、前記筒体の外周面に形成された薄膜であることが好ましい。
上記構成によれば、流体の圧力が変化すると、筒体の外径が変化することによって、筒体の外周面に設けられた薄膜状の磁歪材も歪む。このため、磁歪材の歪みに伴う磁場の変化に基づき流体の圧力の変化を検出することが可能となる。また、磁歪材は外周面に形成された薄膜であって、磁歪材が金属板などである場合に比べ薄膜化することが可能であるため、磁歪材の使用量の低減を図ることができる。
【0015】
上記圧力センサについて、前記磁歪材は、前記筒体の外周面に沿って湾曲するとともに当該外周面の周方向における一部に設けられることが好ましい。
上記構成によれば、流体の圧力が変化すると、筒体の外径が変化することによって、筒体の外周面に湾曲した状態で設けられた磁歪材が歪む。このため、磁歪材の歪みに伴う磁場の変化などに基づき流体の圧力の変化を検出することが可能となる。また、筒体の周方向における一部に磁歪材が設けられるため、磁歪材の使用量の低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、磁歪材の使用量を低減することができる。
本発明の他の態様及び利点は、本発明の技術的思想の例を示す図面と共に以下の記載から明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、
図1〜
図4を参照して、本発明の第1の実施形態の圧力センサについて説明する。本実施形態の圧力センサは、エンジンの排気通路内の圧力を検出するセンサとして用いられる。圧力センサは、排気通路に設けられるか、又は排気通路に接続する流路に設けられる。
【0019】
図1に示すように、圧力センサは、筒体11を備えている。筒体11は、その一方の端部に、排気通路内の排気ガスが導入される導入口12を備えている。導入口12から導入された排気ガスは、筒体11の内側を流れる。筒体11の他方の端部は、閉塞されているか、又は別の配管に接続されている。筒体11が別の配管に接続される場合は、当該配管のうち、筒体11と接続される端部とは反対側の端部が閉塞される。排気通路内の圧力が上昇した場合には、筒体11内の圧力も上昇し、排気通路内の圧力が低下した場合には、筒体11内の圧力も低下する。
【0020】
筒体11の周壁部13は、筒体11の内側の半径よりも小さい厚さを有している。また、筒体11を構成する材料は、弾性を有するとともに、測定対象の流体(ここでは排気ガス)に対する耐熱性および耐食性を有する材料であればよい。筒体11は、排気通路内の圧力変化に伴い、その径方向Rと平行な方向、すなわち筒体11の軸線と直交する方向に変形する。すなわち、排気通路内の圧力が上昇すると、筒体11は径方向Rに膨張する。また、排気通路内の圧力が上昇から下降に転じると、膨張した筒体11は収縮して標準状態に戻る。なお、筒体11の径方向Rとは、筒体11の中心軸から周壁部13に放射状に向かう方向であり、中心軸から周壁部13の内周面の一点に向かう一つの方向を指すものではない。
【0021】
図2に示すように、筒体11は、径方向Rと平行な断面の外形形状が楕円形である。筒体11は、弾性体であるプレート15に貫挿されている。プレート15は、円盤状に形成されるとともに、筒体11から伝わる排気ガス由来の熱に対する耐熱性を備える材料からなる弾性体であり、例えば金属から形成される。プレート15の中央部には、円形状又は楕円形状の貫通孔16が形成されている。プレート15の外側の縁から貫通孔16の縁までの幅Wは、プレート15の厚さよりも大きい。
【0022】
筒体11は、その外周面の2箇所においてプレート15の貫通孔16の内周面と接触している。筒体11が貫通孔16の内周面と接触する接触部17は、筒体11の楕円状の断面の長軸上にあり、各接触部17は筒体11の中心軸に対して対称である。筒体11の接触部17の間の外径D1は、貫通孔16の内径d1と同じか、それよりもわずかに大きい。排気通路内の圧力の上昇に伴い筒体11が膨張するとき、筒体11は接触部17を介してプレート15を押圧する。
【0023】
プレート15のうち、筒体11の径方向Rと平行な面、すなわち筒体11の軸線と直交する面である第1の面18には、1対の積層体20が設けられている。積層体20は、磁歪層を含む複数の層が積層されて形成されている。積層体20は、第1の面18のうち、貫通孔16を挟んだ両側であって、筒体11の接触部17を結んだ直線L1上に設けられている。積層体20は、第1の面18側からみて円形状又は楕円形状に形成されているが、矩形状であってもよい。また、プレート15には、各積層体20に対して1対の長孔19が貫通形成されている。1対の長孔19は、直線L1を挟んだ両側にそれぞれ設けられている。
【0024】
次に、
図3を参照して積層体20について説明する。積層体20は、磁歪層21、検出層22、およびヨーク層23を備え、これらの層はプレート15側から順に積層されている。なお、
図3では、プレート15、磁歪層21、検出層22およびヨーク層23の厚さの比率を簡易的に図示しており、実際の厚さの比率はこれに限定されない。
【0025】
磁歪層21は、応力を受けることによって磁化の方向が変化する磁歪材からなる。磁歪材の例としては、例えば、希土類元素と遷移金属元素とを含む希土類‐遷移金属系合金、複数の遷移金属元素を含む遷移金属系合金などが挙げられるが、磁歪材の組成は特に限定されない。また、磁歪層21は、プレート15の第1の面18に各種の成膜プロセスによって形成されている。成膜プロセスは、成膜源の種類に応じて決定すればよく、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、イオンブレーティング法などを用いることができる。
【0026】
排気通路内の圧力の上昇に伴い筒体11が膨張し、筒体11が接触部17を介してプレート15を押圧するとき、プレート15の歪みに伴い、磁歪層21は、プレート15の周方向に沿った引っ張り応力と、プレート15の径方向に沿った圧縮応力とを受ける。各積層体20の両側には長孔19が形成されているため、プレート15のうち長孔19によって挟まれた小領域25(
図2参照)には、小領域25を除く領域からの応力が伝わりにくい。このため、小領域25を除く領域からの応力の影響を極力排除しつつ、長孔19によって挟まれた小領域25の歪みを磁歪層21に伝えることができる。尚、小領域25と小領域25を除く領域とが長孔19によって一部分離されている例を示したが、長孔19の代わりに矩形や楕円その他の形状のスリットであってもよく、小領域25を除く領域からの応力の影響が直接小領域25に影響するのを極力排除しつつ、小領域25の歪みを磁歪層21に伝えることができれば、どの様な形状のスリットであっても構わない。
【0027】
検出層22は、磁歪層21の歪みにより発生する磁化の方向の変化を検出する層であって、例えば検出コイルを備える。検出コイルは、例えば、基板の表面に金属パターンを成膜したもの、又は、エッチングなどによって基板の表面に金属パターンを露出させたものである。また、検出コイルは、検出コイルから出力された電気信号を入力する検出回路に接続されている。磁歪層21が応力を受けて磁化(磁束)の方向が変化すると、検出コイルに電圧が誘起され、検出コイルから誘起電圧に応じた電気信号が検出回路に出力される。検出回路は、例えば誘起電圧の大きさを圧力の変化量として検出する。ヨーク層23は、磁歪層21の磁束を励磁するためのものである。
【0028】
次に、
図4を参照して、圧力センサの作用について説明する。排気通路内の圧力が上昇するに伴い筒体11内の圧力が上昇すると、筒体11の内周面に
図4中の実線の矢印で示す方向に圧力が加わり、筒体11が径方向Rに等方的に膨張する。膨張した筒体11は、接触部17を介してプレート15を押圧する。筒体11によってプレート15が押圧されると、プレート15のうち、積層体20が設けられた小領域25は、周方向θ(
図2参照)に沿った引っ張り応力を受けるとともに、径方向Rに沿った圧縮応力を受けるため、小領域25に設けられた磁歪層21も周方向θの引っ張り応力および径方向Rの圧縮応力を受ける。これにより、磁歪層21の磁化(磁束)の方向が変化して、検出層22に電圧が誘起される。検出層22は、誘起電圧に応じた電気信号を検出回路に出力する。検出回路は、積層体20から入力した電気信号に基づき、筒体11内の圧力を演算する。
【0029】
筒体11を膨張させる程度に排気通路内の圧力が上昇した後に、排気通路内の圧力が低下すると、筒体11が収縮する。これにより、磁歪層21が受ける周方向θの引っ張り応力および径方向Rの圧縮応力が小さくなるため、筒体11が膨張したときとは逆に磁歪層21の磁化(磁束)の方向が変化する。検出回路は、積層体20から入力した電気信号に基づき、筒体11内の圧力を演算する。
【0030】
このように、磁歪層21は、プレート15のうち筒体11の径方向Rと平行な面、すなわち筒体11の軸線と直交する面に設けられるため、筒体11の膨張および収縮によって、磁歪層21は周方向θに沿った引っ張り応力および径方向Rに沿った圧縮応力を受ける。このため、例えば径方向Rと平行な方向(すなわち筒体11の軸線に直交する方向)の応力が極めて小さく、主に磁歪層21に引っ張り応力のみが作用する場合に比べ、磁化の方向の変化を検出しやすくすることができる。また、弾性体からなるプレート15の一部に磁歪層21を設けたので、磁歪材を、圧力を検出するために要する必要最小限の量とすることができる。
【0031】
さらに、圧力センサは、平面である第1の面18に磁歪層21が形成される構成であるため、製造プロセスの自由度も高めることができる。プレート15の材料は、少なくとも弾性および耐熱性を有する材料であればよいため、材料の自由度を高めることもできる。
【0032】
さらに検出層22は、磁歪層21とヨーク層23との間に積層されるため、例えば磁歪材に検出用コイルを巻く構成に比べて、組み立てが容易である。
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0033】
(1)筒体11と接触する弾性体であるプレート15の一部に磁歪材からなる磁歪層21が設けられるため、プレート15を磁歪材から構成するセンサに比べ、磁歪材の使用量の低減を図ることができる。
【0034】
(2)排気通路内の圧力の変化に伴い筒体11の外径が変化することによって、筒体11と接触するプレート15が歪むと、プレート15のうち筒体11の径方向に沿った第1の面18に設けられた磁歪層21は、プレート15の周方向θに沿った引っ張り応力と径方向Rに沿った圧縮応力とを受ける。このため、磁歪層21の応力に伴う磁化の方向の変化に基づき排気通路内の圧力の変化を検出することが可能となる。また、プレート15のうち、筒体11の径方向に沿った第1の面18の一部に磁歪層21が設けられるため、プレート15全体を磁歪材から形成するセンサに比べ、磁歪材の使用量の低減を図ることができる。
【0035】
(第2の実施形態)
次に、
図5〜
図7を参照して、本発明の第2の実施形態の圧力センサを説明する。なお、本実施形態にかかる圧力センサも、その基本的な構成は第1の実施形態と同等であり、重複する説明は割愛する。
【0036】
図5に示すように、圧力センサに設けられた筒体30は、第1の実施形態と同様の構成であるが、断面の外形の形状が円形状である点で第1の実施形態の筒体11と異なる。筒体30の導入口33から流入した排気ガスは、筒体30の内側を流れる。また、筒体30には、磁歪材からなる線材31が巻き付けられている。筒体30のうち線材31が巻き付けられた領域32は、筒体30の外周面の軸方向Zにおける一部であって、線材31は、間隔を設けて螺旋状に巻き付けられている。
【0037】
図6に示すように、線材31は、筒体30の外周面に接触させて巻き付けられており、筒体30の径方向の変形(歪み)に伴い、筒体30と同じ方向に変形する。例えば、筒体30が径方向Rに膨張すると、線材31が少なくとも筒体30の周方向θに引っ張り応力を受けて、線材31の磁化の方向が変化する。
【0038】
図7に示すように、筒体30の外側であって、その外周面の近傍には、検出部35が設けられている。検出部35は、例えば、基板の表面に金属パターンを成膜したもの、又は、エッチングなどによって基板の表面に金属パターンを露出させたものであり、第1の実施形態の検出層22に相当する。又は、検出部35は、ホール素子や、ホール素子を用いたガウスメータや、ピックアップコイル等を用いてもよい。検出部35は、検出部35からの出力電圧の大きさなどを検出する検出回路に接続されている。
【0039】
次に、
図7を参照して圧力センサの作用について説明する。排気通路内の圧力の上昇に伴い、筒体30の内周面が
図7中の実線の矢印で示す方向の圧力を受けて、筒体30が径方向Rに膨張すると、線材31も同方向に歪む。線材31に磁化(磁束)の方向の変化が生じると、検出部35には電圧が誘起され、検出回路に誘起電圧に応じた電気信号が出力される。検出回路は、検出部35から入力した電気信号に基づき、筒体30内の圧力を演算する。
【0040】
筒体30を膨張させる程度に排気通路内の圧力が上昇した後に、排気通路内の圧力が低下すると、筒体30が収縮する。これにより、線材31が受ける周方向θ(
図6参照)の引っ張り応力が小さくなるため、筒体30が膨張したときとは逆に磁歪層21の磁歪層21の磁化(磁束)の方向が変化する。検出回路は、検出部35から入力した電気信号に基づき、筒体30内の圧力を演算する。
【0041】
このように、筒体30の外表面のうち軸方向Zの一部に、間隔を設けて線材31を螺旋状に巻きつけたので、線材31の巻き数や間隔などを調整することで、磁歪材が使用される量を必要最小限の量とすることができる。
【0042】
また、筒体30の径方向Rにおける変形により線材31が歪むため、筒体30と線材31との間に弾性体からなる別の部材を介在させる構成の圧力センサに比べ、筒体30の圧力変化を線材31に直接的に伝えることが可能となる。筒体30の圧力変化が間接的に磁歪材に伝えられると、各部材の製造上の誤差などが累積的に加味された状態で圧力が測定されることとなるが、筒体30の圧力が線材31に直接的に伝わることで、誤差が大きくなることを抑制することができる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(3)筒体30の一部に磁歪材が設けられるため、筒体30の変形に伴い押圧される弾性体を磁歪材から構成するセンサに比べ、磁歪材の使用量の低減を図ることができる。
【0044】
(4)排気通路内の圧力変化に伴い筒体30の外径が変化することによって、筒体30の外周面に巻かれた線材31も歪む。このため、線材31の歪みに伴う磁化の方向の変化に基づき圧力の変化を検出することが可能となる。また、筒体30の軸方向Zにおける一部の範囲に線材31が巻かれるため、磁歪材の使用量の低減を図ることができる。
【0045】
(第3の実施形態)
次に、
図8〜
図10を参照して、圧力センサの第3の実施形態を説明する。なお、本実施の形態にかかる圧力センサも、その基本的な構成は第1の実施形態および第2の実施形態と同等であり、重複する説明は割愛する。
【0046】
図8に示すように、圧力センサの筒体30は、第2の実施形態と同様の構成である。筒体30の外周面には、磁歪材からなる薄膜40が形成されている。筒体30のうち薄膜40が形成された領域41は、筒体30の外周面のうち軸方向Zにおける一部である。
【0047】
図9に示すように、薄膜40は、筒体30の外周面の周方向における全周に設けられている。薄膜40は、筒体30に成形される前の平板状の基材に各種の成膜プロセスによって形成されるものであってもよく、予め筒状にされた筒体30に各種の成膜プロセスによって形成されるものであってもよい。成膜プロセスは、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、イオンブレーティング法などを用いることができる。
【0048】
図10に示すように、筒体30の外側であって、その外周面の近傍には、検出部35が設けられている。検出部35は、第2の実施形態の検出部35と同じ構成のものである。
次に、
図10を参照して圧力センサの作用について説明する。排気通路内の圧力の上昇に伴い、筒体30の内周面が
図10中の実線の矢印で示す方向の圧力を受けて、筒体30が径方向Rと平行な方向に膨張すると、薄膜40も同じ方向に膨張して歪み、薄膜40には筒体30の周方向θ(
図9参照)に沿った引っ張り応力が発生する。薄膜40に磁化(磁束)の方向の変化が生じると、検出部35には電圧が誘起され、検出回路に誘起電圧に応じた電気信号が出力される。検出回路は、検出部35から入力した電気信号に基づき、筒体30内の圧力を演算する。
【0049】
筒体30を膨張させる程度に排気通路内の圧力が上昇した後に、排気通路内の圧力が低下すると、筒体30が径方向Rにおいて収縮する。これにより、薄膜40が受ける周方向θに沿った引っ張り応力が小さくなるため、筒体30が膨張したときとは逆に磁歪層21の磁歪層21の磁化(磁束)の方向が変化する。検出回路は、検出部35から入力した電気信号に基づき、筒体30内の圧力を演算する。
【0050】
このように、筒体30の外表面に薄膜40を形成したので、磁歪材の厚さを好適な厚さに調整することが容易である。このため、例えば板金からなる磁歪材を使用するよりも磁歪材が使用される量を必要最小限とすることが可能となる。また、薄膜40は、筒体30の外表面のうち、軸方向Zの一部に形成したので、軸方向Zの全域に形成する場合に比べ、使用される量を少なくすることができる。
【0051】
また、筒体30の径方向Rにおける変形により薄膜40が歪むため、筒体30と薄膜40との間に弾性体からなる別の部材を介在させる構成に比べ、筒体30の圧力変化を薄膜40に直接的に伝えることが可能となる。筒体30の圧力変化が間接的に磁歪材に伝えられると、各部材の製造上の誤差などが累積的に加味された状態で圧力が測定されることとなるが、筒体30の圧力が薄膜40に直接的に伝わることで、誤差が大きくなることを抑制することができる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、上記(3)の効果が得られるとともに、さらに以下の効果が得られるようになる。
(5)排気通路内の圧力の変化に伴い筒体30の外径が変化することによって、筒体30の外周面に設けられた薄膜40も歪む。このため、薄膜40の歪みに伴う磁化の方向の変化に基づき圧力の変化を検出することが可能となる。また、薄膜40は、圧力を検出するための好適な厚さに容易に調整することが可能であるため、極力薄くすることによって磁歪材の使用量の低減を図ることができる。
【0053】
(他の実施の形態)
なお、上記各実施の形態は、以下のような形態をもって実施することもできる。
・第3の実施形態における薄膜40に代えて、
図11に示すように、筒体30の周方向の一部に形成された薄膜50としてもよい。薄膜50は、筒体30の外周面に沿って湾曲している。この態様においても、筒体30が膨張するとき、薄膜50も周方向の引っ張り応力を受けるため、薄膜50の磁化の方向が変化する。この態様によれば、薄膜50が形成される面積を筒体30の軸方向および周方向に小さくすることができるので、磁歪材の使用量の低減を図ることができる。なお、この態様において、薄膜50は、各種の成膜プロセスによって形成される代わりに、磁歪材からなる板金であってもよい。
【0054】
・
図12に示すように、筒体11をプレート15の貫通孔16に挿通する第1の実施形態の圧力センサにおいて、貫通孔16に代えて、矩形状の貫通孔60としてもよい。また、筒体11は、その4箇所において、貫通孔60の内周面と接触するようにしてもよい。例えば、筒体11の断面の外形形状が円形状であって貫通孔60が正方形状であるとき、筒体11の外径D2は、正方形の一辺の長さである貫通孔60の内径d2と同じか、それよりも僅かに大きい。
【0055】
・第1の実施形態では、プレート15に磁歪層21を、真空蒸着法やスパッタ法などの各種の成膜プロセスにより形成したが、その他の方法により形成してもよい。例えば、
図13に示すように、積層体20の磁歪層21および検出層22を加締め用の台座63に形成してもよい。台座63には、外側に突出した突片64が設けられている。プレート15には、突片64を含めた台座63を収容可能な凹部61が形成され、凹部61には、台座63の脱落を防止する爪部62が設けられている。積層体20をプレート15に固定する際には、爪部62を外側に開いてプレート15の凹部61に台座63を嵌合した上で、爪部62を内側に倒して台座63を加締める。なお、積層体20は、これ以外の方法によってプレート15に加締めるようにしてもよい。
【0056】
・第1の実施形態では、積層体20の両側に1対の長孔19を形成したが、積層体20が形成された小領域25において応力を受けやすくなればよく、長孔以外のスリットであってもよい。また、長孔19がないプレート15であっても、引っ張り応力を受けた磁歪層21の磁化の変化を検出可能である場合には、長孔19を省略してもよい。
【0057】
・
図14に示すように、筒体30の外周面に線材31を巻き付けた圧力センサ、または筒体30の外周面に磁歪材からなる薄膜40が形成された圧力センサにおいて、検出部35の代わりに、筒体30を内側に挿通する検出コイル65を用いてもよい。なお、
図14では、筒体30の外周面に薄膜40が形成された圧力センサに検出コイル65を設けた例を示している。検出コイル65を用いる場合、磁歪材からなる薄膜40(又は線材31)の変形に伴う透磁率の変化を、検出コイル65のインダクタンスの変化として検出することもできる。
【0058】
・
図15に示すように、筒体30に薄膜40を形成した第3の実施形態の圧力センサにおいて、薄膜40の上にヨーク層70を積層してもよい。
・第1の実施形態の積層体20は、ヨーク層23を省略した構成であってもよい。また、検出部35を別に設けることによって、積層体20から検出層22を省略してもよい。
【0059】
・筒体30に線材31を巻き付けた第2の実施形態の圧力センサにおいて、線材31の外側に励磁用のヨークを設けてもよい。
・上記実施形態では、圧力センサを排気通路内の圧力を検出するセンサとして用いたが、圧力センサの用途や測定対象は特に限定されない。例えば、測定対象は、流体であればよく、例えば、液体や、ゾル、固体の溶融体であってもよい。また、圧力センサは、車両や船舶などの移動体内に設けられてもよいし、所定の場所に設置された装置内に設けられてもよく、持ち運び可能なものであってもよい。
【0060】
本発明は、例示したものに限定されるものではない。例えば、開示した特定の実施形態の全ての特徴が本発明にとって必須であると解釈されるべきでなく、本発明の主題は、開示した特定の実施形態のすべての特徴よりも少ない特徴に存在することがある。