【実施例】
【0011】
[第1実施例]
図1は、伸縮ブームの取付構造を適用した作業機としてトラッククレーン(クレーン)10を示す。
【0012】
このトラッククレーン10は、前後方向に延び且つ前輪11と第1,第2後輪12,13を設けたメインフレーム14と、このメインフレーム14の上に旋回可能に設けた旋回ポスト20と、この旋回ポスト20の上部に起伏可能に設けた伸縮ブーム200と、この伸縮ブーム200を起伏させる起伏用シリンダ15と、メインフレーム14の両サイド側に旋回ポストの位置(前後方向に対する位置)の近傍に設けた一対のアウトリガ装置30(一方のみを図示)と、メインフレーム14上に旋回ポスト20の前側に設けたキャビン16と、その旋回ポスト20の後側に設けた荷台17等とを備えている。
[旋回ポスト]
旋回ポスト20は、伸縮ブーム200を起伏可能に保持する相対向した一対の保持板部(保持部)21(片方のみ図示)を有している。また、旋回ポスト20には、図示しないウインチ及び減速機が配置されており、吊荷を吊るワイヤ(図示せず)を巻き上げたり繰り出したりするようになっている。
[伸縮ブーム]
伸縮ブーム200は、ベースブーム210と中間ブーム220,230と先端ブーム240とを有し、この順序でベースブーム210内に外側から内側に入れ子式に組み合わされて構成されている。また、伸縮ブーム200は伸縮シリンダ(図示せず)によって伸縮するようになっている。
【0013】
図2及び
図2Aは、伸縮ブーム200を旋回ポスト20へ取り付けるための伸縮ブーム200の取付構造を示す。
【0014】
図2及び
図2Aに示すように、ベースブーム210の後部にブラケット300が取り付けられており、このブラケット300を介してベースブーム210が旋回ポスト20に対して起伏可能に取り付けられる。
【0015】
ベースブーム210の後端210Aは、ベースブームの前方側から後方側に向かって突出するように傾斜されている。中間ブーム220,230及び先端ブーム240もその後端は同様に傾斜されている。
[ブラケット]
ブラケット300は、
図3に示すように、ベースブーム210(
図2参照)の両側壁部211に接合される一対の当接板部310,310と、この一対の当接板部310,310の後部上方から後端間に配置され、各当接板部310を接続する端板320とを有している。
【0016】
各当接板部310は、
図2及び
図2Aに示すように、ベースブーム210の側壁部211に溶接された溶接領域部311と、この溶接領域部311の後部に設けれるとともにベースブーム210の後端210Aの位置から後方(
図2において左方)へ突出した基部片312と、ベースブーム210の下面210Bの位置から下方へ突出したV字形の突出片313とを有している。突出片313は、最下端部を裾部313Aとするほぼ三角形状に形成されている。
【0017】
基部片312には、伸縮ブーム200を旋回ポスト20の保持板部21に起伏自在に装着するための軸穴314Aと、伸縮ブーム200を伸縮させる伸縮シリンダの一端を連結する軸部材(図示せず)を装着するための軸穴317とが設けられている。旋回ポスト20の保持板部21間に設けた起伏用の軸部材132(
図1参照)をその軸部314の軸穴314Aに装着させることによって、軸部材132を中心にしてブラケット300及び伸縮ブーム200が起伏するようになっている。
【0018】
また、各当接板部310の基部片312には、軸部314を含む所定領域(第1所定領域)315が設定されている。所定領域315の境界(前縁部)315Kは、段部となっており、ブラケット300の後方側から前方側に向かって傾斜し、所定領域315が三角形状となっている。
【0019】
ブラケット300の一方の当接板部310の所定領域315と他方の当接板部310の所定領域315との間の幅W1は、
図3に示すように、所定領域315以外の他の部分の幅W2より狭く設定されている。すなわち所定領域315におけるブラケット300の幅W1に対して、所定領域315以外のブラケット300の幅W2が大きく設定されている。
【0020】
突出片313には、軸穴316Aを有する軸部(第2軸部)316が設けられており、相対向する一対の突出片313,313の軸穴316A,316Aには軸部材(図示せず)が装着され、この軸部材が起伏用シリンダ15(
図1参照)の一端をブラケット300に連結する。
【0021】
また、当接板部310の突出片313の裾部313Aから溶接領域部311の先端部311Aまでの下縁部に沿って補強用のフランジ310F1が形成され、突出片313の裾部313A近傍から基部片312に亘って補強用のフランジ310F2が形成されている。また、溶接領域部311には、溶接強度を確保するための開口部311Kが形成されている。なお、この開口部311Kは
図2には省略してある。
【0022】
[伸縮ブームの取り付け]
伸縮ブーム200のベースブーム210の後部の両側壁部211,211にブラケット300の溶接領域部311を溶接し、ベースブーム210の上壁部210Cにはブラケット300の上板部321を溶接して、
図2に示すように、ベースブーム210の後部にブラケット300を取り付ける。
【0023】
この後、
図2Aに示すように、ブラケット300の一対の基部片312,312の所定領域315,315を旋回ポスト20の保持板部21,21間に挿入させるとともに、所定領域315,315の軸穴314A,314Aに旋回ポスト20の軸部材132を挿入させて、ブラケット300を旋回ポスト20に取り付ける。また、軸穴316Aに挿入される軸部材によって、起伏用シリンダの一端をブラケット300に連結する。これにより、伸縮ブーム200は起伏用シリンダ15の伸縮動作によって軸部材132を中心にして起伏することになる。
【0024】
ところで、幅W1を従来の旋回ポスト20の保持板部21間の幅と同一に設定することにより、既存の旋回ポスト20と、既存の起伏用の軸部材132を使用することができる。さらに、ベースブーム210の横方向の幅を大きくとることができることにより、伸縮ブーム200の横方向の剛性を高めることができる。また、ベースブーム210の横方向の幅を大きくとることができることにより、多段ブームが構成し易いものとなる。
【0025】
しかも、
図3に示すように、所定領域315,315間の幅W1よりも所定領域315以外の幅W2が大きく設定されていることにより、ベースブーム210の横方向の幅を大きくとることができ、ベースブーム210の側壁部211,211と中間ブーム220の側壁部(図示せず)との間の隙間を広くとることができる。このため、ベースブーム210及び中間ブーム220の側壁部に溶接等の熱による歪が発生していても、ベースブーム210と中間ブーム220との干渉を防止することができる。このため、厳密な歪取り処理を行わなくてもよいことになる。
【0026】
また、ブラケット300の軸部314を含む所定領域315部分の幅W1を狭くし、その段部315Kである前縁部を傾斜させることにより、
図2に示すように、ベースブーム210の後端部を傾斜させることができる。このことから、ベースブーム210に対して中間ブーム220,230を深く挿入することが可能となり、伸縮ブーム200を伸長した際には、外側ブーム210,220に対して内側ブーム220,230の後端部の差し込み量(ラップ量)が増加し、外側ブーム210,220に対する内側ブーム220,230の取付強度を確保することができる。
【0027】
なお、ブラケット300の各当接板部310は、1枚の板材からプレス成形により形成するが、2枚の板材を溶接して形成するようにしてもよい。
[第2実施例]
図4は、第2実施例の伸縮ブームの取付構造を示す。
図4に示すブラケット400は、基部片312の軸部314と突出片313の軸部316を含む所定領域(第3所定領域)401を基部片312から突出片313に亘って設定したものである。この所定領域401,401間の幅は第1実施例と同様にW1に設定され、他の部分の幅はW2に設定されており、W1に対してW2が大きく設定されている。また、各所定領域401の境界である前縁部401Kは、第1実施例と同じ方向すなわち後方側から前方側に向かって伸縮ブーム先端側へ傾斜されている。
【0028】
この第2実施例の伸縮ブームの取付構造によれば、ブラケット400の軸穴316Aに装着する軸部材を既存のものが使用できる他、第1実施例と同様な効果を得ることができる。
【0029】
また、起伏用シリンダ15の一端を取り付けるための軸穴316Aを含む所定領域401が絞られていることにより、伸縮ブーム200の旋回時に(例えば90度旋回したとき)、この所定領域401と鳥居9(
図1参照)との間の隙間を十分に確保することができる。
[第3実施例]
図5は第3実施例の伸縮ブームの取付構造を示す。
図5に示すブラケット500は、第1実施例と同様の所定領域(第1所定領域)315と、突出片313に軸部316を含む所定領域(第2所定領域)501を設定したものである。この所定領域501,501間の幅はベースブーム210の幅より狭く設定され、必ずしも所定領域501,501間の幅はW1である必要はない。他の構成は第1実施例と同様な構成なので、その説明は省略する。
【0030】
このブラケット500によれば、第2実施例と同様な効果を得ることができる。
[第4実施例]
図6は第4実施例の伸縮ブームの取付構造を示す。
図6に示すブラケット600は、基部片312と突出片313の全体をそれぞれ所定領域(第1所定領域)601と所定領域(第2所定領域)600に設定したものであり、既存の旋回ポストと軸部材などを使用することができる。
【0031】
上記実施例は、伸縮ブームの取付構造をトラッククレーン10の伸縮ブーム200に適用した場合について説明したが、これに限らず、例えば高所作業車等の作業車または作業機の伸縮ブームに適用することもできる。
【0032】
上記実施例は、上述のものに限定されるものではない。また、この発明は、発明を逸脱しない範囲で設計変更することは可能である。
【0033】
[関連出願への相互参照]
本出願は、2015年6月11日に日本国特許庁に出願された特願2015−118618号に基づいて優先権を主張し、その全ての開示は完全に本明細書で参照により組み込まれる。