特許第6286618号(P6286618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286618
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】伸縮ブームの取付構造
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/42 20060101AFI20180215BHJP
   B66C 23/687 20060101ALI20180215BHJP
   B66C 23/82 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   B66C23/42 A
   B66C23/687 Z
   B66C23/82 B
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-523628(P2017-523628)
(86)(22)【出願日】2016年6月6日
(86)【国際出願番号】JP2016066763
(87)【国際公開番号】WO2016199722
(87)【国際公開日】20161215
【審査請求日】2017年10月31日
(31)【優先権主張番号】特願2015-118618(P2015-118618)
(32)【優先日】2015年6月11日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】石井 正裕
(72)【発明者】
【氏名】樫原 征男
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−024419(JP,A)
【文献】 特開平09−249397(JP,A)
【文献】 特開平09−194183(JP,A)
【文献】 米国特許第5515654(US,A)
【文献】 米国特許第5158189(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00−23/94
B66F 9/00−11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機の旋回ポストに対して、ブラケットを介して、伸縮ブームを起伏可能に取り付ける伸縮ブームの取付構造であって、
前記ブラケットは、前記旋回ポストの相対向した一対の保持部に両側から保持されると共に、前記伸縮ブームの後部の両側壁部に接合される一対の当接板部を有し、
前記一対の当接板部それぞれに、前記伸縮ブームと接合される接合領域とは異なる第1所定領域を設定し、
前記一対の当接板部は、前記第1所定領域において、前記旋回ポストの保持部間に回転可能に取り付けられる第1軸部を有し、
前記第1所定領域における前記一対の当接板部の一方と他方の間の幅よりも、前記第1所定領域以外の領域における前記一対の当接板部の一方と他方の間の幅を大きく設定した、
伸縮ブームの取付構造。
【請求項2】
前記一対の当接板部は、それぞれ、前記第1所定領域と前記第1所定領域以外の領域との境界領域が傾斜形状を呈する、
請求項1に記載の伸縮ブームの取付構造。
【請求項3】
前記一対の当接板部は、それぞれ、前記伸縮ブームの後部の下面位置から下方に突出した突出片を更に有し、
前記一対の当接板部それぞれの前記突出片には、前記伸縮ブームの起伏用の起伏シリンダを保持する第2軸部が設けられた、
請求項1又は2に記載の伸縮ブームの取付構造。
【請求項4】
前記一対の当接板部それぞれの前記突出片に、前記第2軸部を含む第2所定領域をそれぞれ設定し、
前記第2所定領域における前記一対の当接板部の一方と他方の間の幅は、前記伸縮ブームの後部の幅よりも小さく設定した、
請求項3に記載の伸縮ブームの取付構造。
【請求項5】
前記一対の当接板部は、それぞれ、前記第1所定領域から前記突出片に至る境界領域において傾斜形状を呈する、
請求項4に記載の伸縮ブームの取付構造。
【請求項6】
前記第1所定領域は、前記一対の当接板部それぞれの後端部の下方側角部である、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の伸縮ブームの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、伸縮ブームを旋回ポストに起伏可能に取り付ける伸縮ブームの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、クレーンの基台に旋回自在に設けた旋回ポストに、ベースブームの内側に複数の中間ブームを入れ子状に重ねて伸縮可能にした伸縮ブームを起伏可能に取り付ける伸縮ブームの取付構造が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
係る伸縮ブームの取付構造は、旋回ポストに相対向した一対の保持板部を設け、伸縮ブームのベースブームの後部を前記保持板部間に軸部材を介して取り付け、この軸部材によってベースブームを旋回ポストに対して起伏可能にしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−97673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、伸縮ブームは、ブーム段数を増加させる場合や横方向の剛性を高める場合、ベースブームの幅を大きくする必要がある。しかし、ベースブームの幅は旋回ポストの保持板部間の幅に合わせて設定されているため、ベースブームの幅を大きくしようとすると、旋回ポストの一対の保持板部間の幅を大きくした旋回ポストに変更しなければならない。このことから、既存の旋回ポストや伸縮ブームの起伏中心として用いられる既存の軸部材等が使用できなくなってしまう問題がある。
【0006】
この発明の目的は、ベースブームの幅を大きくしても、既存の旋回ポストや既存の軸部材等が使用できるブーム構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、作業機の伸縮ブームのベースブームの後部をブラケットによって保持するとともに、該ブラケットによって前記ベースブームを旋回ポストに対して起伏可能に取り付ける伸縮ブームの取付構造であって、
前記ブラケットは、前記ベースブームの後部の両側壁部に接合されるとともに、前記旋回ポストの相対向した一対の保持部間に保持される一対の当接板部を有し、
前記各当接板部は、前記旋回ポストの保持部に起伏可能に取り付ける第1軸部を有し、
前記各当接板部に第1軸部を含む第1所定領域をそれぞれ設定し、
前記第1所定領域間の幅に対して、第1所定領域以外のブラケットの幅を大きく設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、ベースブームの幅を大きくしても、旋回ポストの保持板部間の幅を変更する必要がないことから既存の旋回ポストと起伏用の既存の軸部材が使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明に係る伸縮ブームの取付構造を適用したトラッククレーンの外観を示した側面図である。
図2】この発明に係る伸縮ブームの取付構造のブラケットとベースブームを示す側面図である。
図2A】この発明に係る伸縮ブームの取付構造を示した斜視図である。
図3図2に示すブラケットの斜視図である。
図4】第2実施例の伸縮ブームの取付構造を示す側面図である。
図5】第3実施例の伸縮ブームの取付構造を示す側面図である。
図6】第4実施例の伸縮ブームの取付構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明に係る伸縮ブームの取付構造の実施の形態である実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0011】
[第1実施例]
図1は、伸縮ブームの取付構造を適用した作業機としてトラッククレーン(クレーン)10を示す。
【0012】
このトラッククレーン10は、前後方向に延び且つ前輪11と第1,第2後輪12,13を設けたメインフレーム14と、このメインフレーム14の上に旋回可能に設けた旋回ポスト20と、この旋回ポスト20の上部に起伏可能に設けた伸縮ブーム200と、この伸縮ブーム200を起伏させる起伏用シリンダ15と、メインフレーム14の両サイド側に旋回ポストの位置(前後方向に対する位置)の近傍に設けた一対のアウトリガ装置30(一方のみを図示)と、メインフレーム14上に旋回ポスト20の前側に設けたキャビン16と、その旋回ポスト20の後側に設けた荷台17等とを備えている。
[旋回ポスト]
旋回ポスト20は、伸縮ブーム200を起伏可能に保持する相対向した一対の保持板部(保持部)21(片方のみ図示)を有している。また、旋回ポスト20には、図示しないウインチ及び減速機が配置されており、吊荷を吊るワイヤ(図示せず)を巻き上げたり繰り出したりするようになっている。
[伸縮ブーム]
伸縮ブーム200は、ベースブーム210と中間ブーム220,230と先端ブーム240とを有し、この順序でベースブーム210内に外側から内側に入れ子式に組み合わされて構成されている。また、伸縮ブーム200は伸縮シリンダ(図示せず)によって伸縮するようになっている。
【0013】
図2及び図2Aは、伸縮ブーム200を旋回ポスト20へ取り付けるための伸縮ブーム200の取付構造を示す。
【0014】
図2及び図2Aに示すように、ベースブーム210の後部にブラケット300が取り付けられており、このブラケット300を介してベースブーム210が旋回ポスト20に対して起伏可能に取り付けられる。
【0015】
ベースブーム210の後端210Aは、ベースブームの前方側から後方側に向かって突出するように傾斜されている。中間ブーム220,230及び先端ブーム240もその後端は同様に傾斜されている。
[ブラケット]
ブラケット300は、図3に示すように、ベースブーム210(図2参照)の両側壁部211に接合される一対の当接板部310,310と、この一対の当接板部310,310の後部上方から後端間に配置され、各当接板部310を接続する端板320とを有している。
【0016】
各当接板部310は、図2及び図2Aに示すように、ベースブーム210の側壁部211に溶接された溶接領域部311と、この溶接領域部311の後部に設けれるとともにベースブーム210の後端210Aの位置から後方(図2において左方)へ突出した基部片312と、ベースブーム210の下面210Bの位置から下方へ突出したV字形の突出片313とを有している。突出片313は、最下端部を裾部313Aとするほぼ三角形状に形成されている。
【0017】
基部片312には、伸縮ブーム200を旋回ポスト20の保持板部21に起伏自在に装着するための軸穴314Aと、伸縮ブーム200を伸縮させる伸縮シリンダの一端を連結する軸部材(図示せず)を装着するための軸穴317とが設けられている。旋回ポスト20の保持板部21間に設けた起伏用の軸部材132(図1参照)をその軸部314の軸穴314Aに装着させることによって、軸部材132を中心にしてブラケット300及び伸縮ブーム200が起伏するようになっている。
【0018】
また、各当接板部310の基部片312には、軸部314を含む所定領域(第1所定領域)315が設定されている。所定領域315の境界(前縁部)315Kは、段部となっており、ブラケット300の後方側から前方側に向かって傾斜し、所定領域315が三角形状となっている。
【0019】
ブラケット300の一方の当接板部310の所定領域315と他方の当接板部310の所定領域315との間の幅W1は、図3に示すように、所定領域315以外の他の部分の幅W2より狭く設定されている。すなわち所定領域315におけるブラケット300の幅W1に対して、所定領域315以外のブラケット300の幅W2が大きく設定されている。
【0020】
突出片313には、軸穴316Aを有する軸部(第2軸部)316が設けられており、相対向する一対の突出片313,313の軸穴316A,316Aには軸部材(図示せず)が装着され、この軸部材が起伏用シリンダ15(図1参照)の一端をブラケット300に連結する。
【0021】
また、当接板部310の突出片313の裾部313Aから溶接領域部311の先端部311Aまでの下縁部に沿って補強用のフランジ310F1が形成され、突出片313の裾部313A近傍から基部片312に亘って補強用のフランジ310F2が形成されている。また、溶接領域部311には、溶接強度を確保するための開口部311Kが形成されている。なお、この開口部311Kは図2には省略してある。
【0022】
[伸縮ブームの取り付け]
伸縮ブーム200のベースブーム210の後部の両側壁部211,211にブラケット300の溶接領域部311を溶接し、ベースブーム210の上壁部210Cにはブラケット300の上板部321を溶接して、図2に示すように、ベースブーム210の後部にブラケット300を取り付ける。
【0023】
この後、図2Aに示すように、ブラケット300の一対の基部片312,312の所定領域315,315を旋回ポスト20の保持板部21,21間に挿入させるとともに、所定領域315,315の軸穴314A,314Aに旋回ポスト20の軸部材132を挿入させて、ブラケット300を旋回ポスト20に取り付ける。また、軸穴316Aに挿入される軸部材によって、起伏用シリンダの一端をブラケット300に連結する。これにより、伸縮ブーム200は起伏用シリンダ15の伸縮動作によって軸部材132を中心にして起伏することになる。
【0024】
ところで、幅W1を従来の旋回ポスト20の保持板部21間の幅と同一に設定することにより、既存の旋回ポスト20と、既存の起伏用の軸部材132を使用することができる。さらに、ベースブーム210の横方向の幅を大きくとることができることにより、伸縮ブーム200の横方向の剛性を高めることができる。また、ベースブーム210の横方向の幅を大きくとることができることにより、多段ブームが構成し易いものとなる。
【0025】
しかも、図3に示すように、所定領域315,315間の幅W1よりも所定領域315以外の幅W2が大きく設定されていることにより、ベースブーム210の横方向の幅を大きくとることができ、ベースブーム210の側壁部211,211と中間ブーム220の側壁部(図示せず)との間の隙間を広くとることができる。このため、ベースブーム210及び中間ブーム220の側壁部に溶接等の熱による歪が発生していても、ベースブーム210と中間ブーム220との干渉を防止することができる。このため、厳密な歪取り処理を行わなくてもよいことになる。
【0026】
また、ブラケット300の軸部314を含む所定領域315部分の幅W1を狭くし、その段部315Kである前縁部を傾斜させることにより、図2に示すように、ベースブーム210の後端部を傾斜させることができる。このことから、ベースブーム210に対して中間ブーム220,230を深く挿入することが可能となり、伸縮ブーム200を伸長した際には、外側ブーム210,220に対して内側ブーム220,230の後端部の差し込み量(ラップ量)が増加し、外側ブーム210,220に対する内側ブーム220,230の取付強度を確保することができる。
【0027】
なお、ブラケット300の各当接板部310は、1枚の板材からプレス成形により形成するが、2枚の板材を溶接して形成するようにしてもよい。
[第2実施例]
図4は、第2実施例の伸縮ブームの取付構造を示す。図4に示すブラケット400は、基部片312の軸部314と突出片313の軸部316を含む所定領域(第3所定領域)401を基部片312から突出片313に亘って設定したものである。この所定領域401,401間の幅は第1実施例と同様にW1に設定され、他の部分の幅はW2に設定されており、W1に対してW2が大きく設定されている。また、各所定領域401の境界である前縁部401Kは、第1実施例と同じ方向すなわち後方側から前方側に向かって伸縮ブーム先端側へ傾斜されている。
【0028】
この第2実施例の伸縮ブームの取付構造によれば、ブラケット400の軸穴316Aに装着する軸部材を既存のものが使用できる他、第1実施例と同様な効果を得ることができる。
【0029】
また、起伏用シリンダ15の一端を取り付けるための軸穴316Aを含む所定領域401が絞られていることにより、伸縮ブーム200の旋回時に(例えば90度旋回したとき)、この所定領域401と鳥居9(図1参照)との間の隙間を十分に確保することができる。
[第3実施例]
図5は第3実施例の伸縮ブームの取付構造を示す。図5に示すブラケット500は、第1実施例と同様の所定領域(第1所定領域)315と、突出片313に軸部316を含む所定領域(第2所定領域)501を設定したものである。この所定領域501,501間の幅はベースブーム210の幅より狭く設定され、必ずしも所定領域501,501間の幅はW1である必要はない。他の構成は第1実施例と同様な構成なので、その説明は省略する。
【0030】
このブラケット500によれば、第2実施例と同様な効果を得ることができる。
[第4実施例]
図6は第4実施例の伸縮ブームの取付構造を示す。図6に示すブラケット600は、基部片312と突出片313の全体をそれぞれ所定領域(第1所定領域)601と所定領域(第2所定領域)600に設定したものであり、既存の旋回ポストと軸部材などを使用することができる。
【0031】
上記実施例は、伸縮ブームの取付構造をトラッククレーン10の伸縮ブーム200に適用した場合について説明したが、これに限らず、例えば高所作業車等の作業車または作業機の伸縮ブームに適用することもできる。
【0032】
上記実施例は、上述のものに限定されるものではない。また、この発明は、発明を逸脱しない範囲で設計変更することは可能である。
【0033】
[関連出願への相互参照]
本出願は、2015年6月11日に日本国特許庁に出願された特願2015−118618号に基づいて優先権を主張し、その全ての開示は完全に本明細書で参照により組み込まれる。
【符号の説明】
【0034】
10 トラッククレーン(作業機)
20 旋回ポスト
21 保持板部(保持部)
200 伸縮ブーム
210 ベースブーム
300 ブラケット
310 当接板部
312 基部片
314 軸部(第1軸部)
313 突出片
315 所定領域(第1所定領域)
315K 境界(前縁部)
316 軸部(第2軸部)
400 ブラケット
401 所定領域(第3所定領域)
500 ブラケット
501 所定領域(第2所定領域)
図1
図2
図2A
図3
図4
図5
図6