特許第6286645号(P6286645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286645
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】アクチュエータの駆動方法
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/06 20060101AFI20180226BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20180226BHJP
   G02B 7/04 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   H02N2/06
   H01L41/09
   G02B7/04 E
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-55004(P2014-55004)
(22)【出願日】2014年3月18日
(65)【公開番号】特開2015-177720(P2015-177720A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2017年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000240477
【氏名又は名称】アダマンド並木精密宝石株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502254796
【氏名又は名称】有限会社メカノトランスフォーマ
(72)【発明者】
【氏名】徐 世傑
(72)【発明者】
【氏名】矢野 健
(72)【発明者】
【氏名】久郷 智之
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−162577(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/023875(WO,A1)
【文献】 特開平03−065066(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0218027(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/06
G02B 7/04
H01L 41/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧が印加されて変形し、その変形を少なくとも一軸方向の変位として出力する圧電素子を備えるアクチュエータの駆動開始時に、印加電圧Vb2を圧電素子に印加し、Vb2が印加された時に圧電素子が示す静電容量値b2を検出すると共に、印加電圧Vb1を圧電素子に印加し、Vb1が印加された時に圧電素子が示す静電容量値b1を検出し、
次に、静電容量値の差分b1−b2を所望のビット数に置き換え、差分b1−b2をビット数分の指定値に割り振ると共に、目標静電容量値bBをb1からb2の範囲内で設定し、
更に、目標静電容量値bBを設定した時点で圧電素子が示している静電容量値bAを検出し、圧電素子が静電容量値bAを示す時に印加される電圧Vaを検出し、
以後、静電容量値bAを変更して目標静電容量値bBに一致させるか、
又は静電容量値bAを変更して(目標静電容量値bB±bBの5(%))内に入れるか、
もしくは規定回数nに到達するまで、検出される電圧Vaの変更を繰り返すことを特徴とする、アクチュエータの駆動方法。
【請求項2】
前記静電容量値bAの変更を、前記目標静電容量値bBが示す印加電圧VBに前記電圧Vaを近づけることで行い、
前記電圧Vaの変更を、ΔVを前記電圧Vaに加算又は減算することによって行い、
更に、前記目標静電容量値bBに対する前記静電容量値bAの大小関係が、前記bB>前記bAから前記bB<前記bAに変わるか、または、前記bB<前記bAから前記bB>前記bAに変わる度に、ΔVの値を次第に小さくすることを特徴とする、請求項1記載のアクチュエータの駆動方法。
【請求項3】
前記ΔVの値を、|前記印加電圧VB−前記電圧Va|と設定し、
次にそのΔVの値を加算又は減算して前記電圧Vaを検出し、
前記目標静電容量値bBに対する前記静電容量値bAの大小関係が変わる度に、検出した前記電圧Vaと前記印加電圧VBとの差分(前記印加電圧VB−前記電圧Va)の絶対値を新たな前記ΔVの値とし、そのΔVの値を加算又は減算して前記電圧Vaを検出し、
以後、前記電圧Vaが検出される度に、前記印加電圧VB−前記電圧Vaの絶対値を新たな前記ΔVの値と変更し、変更の度に前記ΔVの値を小さくし、そのΔVの値を加算又は減算して前記電圧Vaを検出することを特徴とする、請求項2記載のアクチュエータの駆動方法。
【請求項4】
前記ΔVの値を前記電圧Va未満に設定し、
前記目標静電容量値bBに対する前記静電容量値bAの大小関係が変わるまで、前記ΔVの値を保持して、そのΔVの値を前記電圧Vaに加算又は減算し続けて前記電圧Vaを検出し、
前記大小関係が変更した際にΔVの値を前記電圧Va未満の更に小さい値に設定し、
以後、前記目標静電容量値bBに対する前記静電容量値bAの大小関係が変わるまで、前記ΔVの値を保持して、そのΔVの値を前記電圧Vaに加算又は減算し続けて前記電圧Vaを検出することを特徴とする、請求項2記載のアクチュエータの駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータの駆動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、通常の電子カメラ(デジタルカメラ)と同様に、携帯電話機等の携帯端末機器に組み込まれるカメラモジュールにも、高速・高精度なオートフォーカス機能やズーム機能が求められている。これらの機能を実現するには、カメラモジュールのレンズを、そのレンズの光軸方向に高速・高精度に移動させるための機構と駆動手段が必要となる。特に最近の携帯端末機器は小型化・薄型化が進んでいるため、カメラモジュールや機構、駆動手段にも小型化・薄型化が求められている。
【0003】
カメラモジュールのレンズ移動機構としては、ネジ式の回転機構を備えたものが有る。しかしネジ式の機構は機械的摺動を伴うためにエネルギーロスが大きく、摩擦によって摩耗粉が生じやすいという欠点が有る。更に、小型化・薄型化が困難という構造上の制約も有る。このためネジ式の機構は、最近の携帯端末機器用のレンズ移動機構には不向きであった。
【0004】
そこで、特許文献1には、ガイド軸と駆動軸に沿ってレンズホルダを移動可能に備えたアクチュエータ(カメラモジュール)が示されている。レンズホルダの移動は、レンズ光軸と平行に配置されたガイド軸と駆動軸に沿ってレンズホルダを移動可能に設け、更にレンズホルダに搭載された圧電素子を励磁することで駆動軸に駆動力(曲げ振動による進行波)を与えることにより可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−106797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
圧電素子は、電極と圧電性セラミックスとが積層した積層構造であり、圧電性セラミックスの電界誘起歪みを利用している。圧電セラミックスは、圧電体のセラミック微粉末を成形,焼結した後、分極処理することによって得られる多結晶体なので、電圧の印加によって結晶軸の回転(分域回転と呼ばれる)が生じる。このため、圧電セラミックスに大きな歪みが発生し、応力が圧電セラミックスに加わることで分極が生じ、結晶軸の回転の影響で歪み変位量−電圧特性が非線形となる。
【0007】
従って、圧電素子を電圧で駆動すると、この非線形な特性により大きなヒステリシスを示すので精密な変位駆動が困難となり、例えばカメラモジュールの場合ではレンズの精密な位置決め駆動が困難であった。
【0008】
そこで、位置検出センサで位置決め対象物(カメラモジュールの場合はレンズ)の現在位置を検出して目標位置との間の偏差量を検出し、この偏差量分を制御回路により圧電素子にフィードバックして、位置決め対象物が目標位置に位置決めされるまで圧電素子を駆動する方法が考えられる。しかし、このような偏差量のフォードバック制御でもヒステリシス量を減少させることは困難であった。
【0009】
更に、このようなヒステリシスを示す圧電素子を電圧印加により繰り返し起動させると、圧電素子に生じる歪みの蓄積により電気双極子モーメントの整列状態も残存していく。従って、起動回数の増加に伴い電気双極子モーメントの整列度合に徐々にばらつきが発生するため、圧電素子の分極状態が低下してしまう。よって、位相差のばらつきが増加する等、圧電素子の動作が不安定となる。
【0010】
また、携帯端末機器は小型化・薄型化、及び軽量化が要求される。しかし、圧電素子を備えたアクチュエータの外部に別途、位置決め対象物の位置検出センサを設けなければならなかった。このようにアクチュエータ外部に別途、センサを設けると、そのセンサの搭載により携帯端末機器の小型化・薄型化、及び軽量化が損なわれてしまう。
【0011】
本発明は上記各課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧電素子を搭載したアクチュエータの駆動対象物の制御上におけるヒステリシス量を低減して、駆動対象物の位置決め制御の簡略化・容易化を図ることである。及び、携帯端末機器の小型化・薄型化、及び軽量化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題は、以下の本発明により達成される。即ち、
本発明のアクチュエータの駆動方法は、電圧が印加されて変形し、その変形を少なくとも一軸方向の変位として出力する圧電素子を備えるアクチュエータの駆動開始時に、印加電圧Vb2を圧電素子に印加し、Vb2が印加された時に圧電素子が示す静電容量値b2を検出すると共に、印加電圧Vb1を圧電素子に印加し、Vb1が印加された時に圧電素子が示す静電容量値b1を検出し、
次に、静電容量値の差分b1−b2を所望のビット数に置き換え、差分b1−b2をビット数分の指定値に割り振ると共に、目標静電容量値bBをb1からb2の範囲内で設定し、
更に、目標静電容量値bBを設定した時点で圧電素子が示している静電容量値bAを検出し、圧電素子が静電容量値bAを示す時に印加される電圧Vaを検出し、
以後、静電容量値bAを変更して目標静電容量値bBに一致させるか、
又は静電容量値bAを変更して(目標静電容量値bB±bBの5(%))内に入れるか、
もしくは規定回数nに到達するまで、検出される電圧Vaの変更を繰り返すことを特徴とする。
【0013】
電圧Vaの検出後は、目標静電容量値bBと静電容量値bAを比較する。静電容量値bAと目標静電容量値bBが一致する場合かもしくは静電容量値bAが(目標静電容量値bB±bBの5(%))内に入る場合は、終了とする。
次に、変更した電圧Vaの印加時に圧電素子が示す新たな静電容量値bAを検出し、その静電容量値bAと目標静電容量値bBを比較し、
静電容量値bAと目標静電容量値bBが一致する場合かもしくは静電容量値bAが(目標静電容量値bB±bBの5(%))内に入る場合は、印加電圧Vaの変更を終了し、
一方、静電容量値bAと目標静電容量値bBが不一致の場合か、静電容量値bAが(目標静電容量値bB±bBの5(%))内に入らない場合は、静電容量値bAと目標静電容量値bBが一致するまでかもしくは静電容量値bAが(目標静電容量値bB±bBの5(%))内に入るまで印加電圧Vaの変更を繰り返すか、もしくは規定回数nに到達するまで印加電圧の変更を繰り返す。
【0014】
アクチュエータへの印加電圧(V)は、交流よりも直流の方が容易に使用出来る。従って、直流電圧が好ましい。
【0015】
本発明のアクチュエータの駆動方法の一実施形態は、静電容量値bAの変更を、目標静電容量値bBが示す印加電圧VBに電圧Vaを近づけることで行い、
電圧Vaの変更を、ΔVを電圧Vaに加算又は減算することによって行い、
更に、目標静電容量値bBに対する静電容量値bAの大小関係が、bB>bAからbB<bAに変わるか、または、bB<bAからbB>bAに変わる度に、ΔVの値を次第に小さくすることが好ましい。
【0016】
本発明のアクチュエータの駆動方法の他の実施形態は、ΔVの値を、|印加電圧VB−電圧Va|と設定し、
次にそのΔVの値を加算又は減算して電圧Vaを検出し、
目標静電容量値bBに対する静電容量値bAの大小関係が変わる度に、検出した電圧Vaと印加電圧VBとの差分(印加電圧VB−電圧Va)の絶対値を新たなΔVの値とし、そのΔVの値を加算又は減算して電圧Vaを検出し、
以後、電圧Vaが検出される度に、印加電圧VB−電圧Vaの絶対値を新たなΔVの値と変更し、変更の度にΔVの値を小さくし、そのΔVの値を加算又は減算して電圧Vaを検出することが好ましい。
【0017】
本発明のアクチュエータの駆動方法の他の実施形態は、ΔVの値を電圧Va未満に設定し、目標静電容量値bBに対する静電容量値bAの大小関係が変わるまで、ΔVの値を保持して、そのΔVの値を電圧Vaに加算又は減算し続けて電圧Vaを検出し、
大小関係が変更した際にΔVの値を前記電圧Va未満の更に小さい値に設定し、
以後、目標静電容量値bBに対する静電容量値bAの大小関係が変わるまで、ΔVの値を保持して、そのΔVの値を電圧Vaに加算又は減算し続けて電圧Vaを検出することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に依れば、静電容量値の変化に基づき圧電素子への印加電圧の変位量を制御することにより、アクチュエータの駆動対象物の制御上におけるヒステリシス量を減少させることが可能となる。従って、アクチュエータの動作を安定化させることが出来る。
【0019】
更に、アクチュエータの駆動対象物の制御上におけるヒステリシス量を低減して、駆動対象物の位置決め制御の簡略化・容易化を図ることが可能となる。
【0020】
更に、アクチュエータ外部に別途、センサを設ける必要が無くなるため、アクチュエータを備える携帯端末機器の小型化・薄型化、及び軽量化を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態にて用いるレンズアクチュエータの可動部材を除いた斜視図である。
図2図1に可動部材を加えたレンズアクチュエータの分解斜視図である。
図3図1及び図2で示した背面板の拡大図である。
図4図3で示した背面板と圧電素子の配置を示す説明図である。
図5図1及び図2で示した第2梃子部の斜視図である。
図6図1及び図2で示した第2梃子部の分解斜視図である。
図7図1のレンズアクチュエータに備えられる圧電素子への印加電圧に対する、圧電素子の変位グラフである。
図8】本発明に係るアクチュエータの駆動方法の基本原理を示す、静電容量値−印加電圧関係図である。
図9】本発明のアクチュエータの一実施形態である、レンズアクチュエータの駆動装置の接続状態を示すブロック図である。
図10】本発明のアクチュエータの一実施形態である、レンズアクチュエータの駆動方法をアルゴリズムとしたフローチャート図である。
図11】本発明の実施例、及び比較例のレンズアクチュエータに於ける可動部材が示す、印加電圧又は静電容量値に対する変位特性グラフの一例である。
図12】本発明の実施例、及び比較例のレンズアクチュエータに於ける可動部材が示す、印加電圧に対する変位特性グラフの他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1図6は、本発明のアクチュエータの一実施形態を示すもので、携帯端末機器のカメラモジュールに組み込まれるレンズアクチュエータを示している。図1に本実施形態で用いるレンズアクチュエータのレンズホルダを除いた斜視図を、図2図1に可動部材を加えたレンズアクチュエータの分解斜視図を、図3図1及び図2で示した背面板の拡大図を、図4図3で示した背面板と圧電素子との配置を示す説明図を、図5図1及び図2で示した第2梃子部を内側から見た斜視図を、そして図6図1及び図2で示した第2梃子部を内側から見た分解斜視図を、それぞれ示す。
【0023】
レンズアクチュエータは、駆動部材1と変位拡大機構とを備えている。駆動部材1は、印加される電圧に応じた変位量で変形し、その変形を少なくとも一軸方向の変位として出力する。変位拡大機構は、この駆動部材1から出力された変位量を拡大させつつ、可動部材7まで伝達し、可動部材7を変位動作させる。
【0024】
本実施形態では、レンズアクチュエータをできるだけ薄型化するために、駆動部材1と変位拡大機構が平面的に可動部材7を囲む構造としている。換言すると、可動部材7の外周部に駆動部材1と変位拡大機構を配置した構造としている。このような構造により、中央のスペースを可動部材7の収容スペースにしてレンズアクチュエータの小径化が図れる。更に、変位拡大機構を構成する第1梃子部3の長さを十分に確保することが出来るので、大きな変位拡大量を得る上で有利であり、薄型化した際のレンズ駆動距離を大きく設定することが可能となる。
【0025】
また、可動部材7の外周部に駆動部材1と変位拡大機構を配置することにより、例えば変位拡大機構をレンズアクチュエータに適用した場合、可動部材7のレンズホルダに搭載されるレンズの光軸を邪魔する部材が存在しない。従って、レンズアクチュエータの小型化・薄型化に特に有利である。更に、可動部材7の外周部に駆動部材1と変位拡大機構を配置することにより、搭載するレンズ径を最大限拡大した状態で、レンズの駆動を行うことが可能となる。
【0026】
駆動部材1は、印加される電圧に応じた変位量で変形し、この変形を少なくとも図3中の矢印J方向で示す一軸方向の変位として出力できるもので、特に圧電素子が好ましい。圧電素子とは、印加電圧に応じて歪みを発生する素子で、レンズアクチュエータに搭載される圧電素子としては、電極と圧電性セラミックスとが積層した積層構造が挙げられ、圧電性セラミックスの電界誘起歪みが利用される。
【0027】
駆動部材1に圧電素子を適用することは、電気から直接、変位を取り出す駆動構造を形成することが出来るという点で好ましい。更に磁歪素子に代表される電磁系の駆動源を用いないので、レンズアクチュエータをリフロー工程により基板に取り付けた後に、所定の電圧を圧電素子に印加することでレンズアクチュエータを使用可能な状態にすることが可能となる。従って、基板に対するレンズアクチュエータの組込工数を削減することが可能となる。
【0028】
本実施形態の駆動部材1は四角柱状の外形形状を有し、その長手方向(図3の矢印J方向)で寸法歪みにより変形し、この寸法歪みを駆動部材1である圧電素子の伸縮方向の両端に取り付けた温度補償用ブロック2から、背面板4を介して一軸方向(矢印J方向)に出力する。背面板4はベース部8によって支持されている。
【0029】
携帯端末機器のカメラモジュールに適用するような、極小型の圧電素子から出力可能な一軸方向の変位量は、積層型で通常数百(ppm)程度である。本実施形態のレンズアクチュエータでは数百(ppm)程度の変位量を、数十〜百倍程度に拡大して可動部材7に伝達し、可動部材7を200〜300(μm)程の変位量で変位動作させる。
【0030】
前記変位拡大機構は、平行に配置される複数の第1梃子部3と、この第1梃子部3を支持する背面板4、及び第2梃子部5とを備える。第1梃子部3と背面板4は別部品として接続される。水平方向において、駆動部材1の変位出力部である両端に温度補償用ブロック2が取り付けられて駆動部を構成し、更に駆動部の長さ方向の両端面に90°の関係で取り付けられた板状の各第1梃子部3端面を、インバー材又はスーパーインバー材からなる背面板4によって連結されている。駆動部の両端がそれぞれ力点となる。また、背面板4は各第1梃子部3の片側端部同士を繋ぎ、各第1梃子部3との固定部分が支点となり、変位拡大部を構成する。
【0031】
更に、この複数の第1梃子部3の先端に、複数の第1梃子部3の長手方向に対して90°の関係で第2梃子部5が接続されている。各第1梃子部の作用点となる各他端部に、他端部間に生じる変位を駆動部の伸縮方向と直交する方向の変位に変える第2梃子部5が取り付けられている。従って、可動部材7は、駆動部材1と第1梃子部3及び第2梃子部5により、四方を囲まれている。
【0032】
本実施形態では背面板4の材料として、インバー材又はスーパーインバー材を用いている。本実施形態記載のレンズアクチュエータは、温度補償用ブロック2の熱膨張によって圧電素子の熱収縮を吸収しつつ、インバー材又はスーパーインバー材を用いた背面板4によって第1梃子部3及び第2梃子部5の変位量を一定に保つことができる。
【0033】
温度補償用ブロック2は、線膨張係数が大きい方が小さい寸法でも温度補償の効果は大きい。線膨張係数が大きい温度補償用ブロック2の材料としてアルミもしくはアルミ系合金、黄銅、錫、マグネシウム合金、ガラス繊維強化樹脂が有効である。このような材料を温度補償用ブロック2に用いることにより、温度補償用ブロック2の線膨張係数を大きく設定することが可能となり、圧電素子の熱収縮を温度補償用ブロック2にて吸収すると同時に、各第1梃子部3を介して背面板4が温度補償用ブロック2及び圧電素子を保持することで、使用温度によって生じる特性変化の更なる抑制を可能にしている。
【0034】
以上により、温度補償用ブロック2は、温度変化に伴う駆動部材1の変位量増減を補償すると共に、駆動部材1から第1梃子部3側面への応力集中及び応力集中による第1梃子部3の撓みを防いでいる。この為、本実施形態の構造では第1梃子部3の変形による機械的な損失を低減した状態で駆動部材1の変位を拡大することが可能となった。更に、温度補償用ブロック2に面取り部Aを設けたことで、アクチュエータに搭載するレンズを避ける構造となる為、レンズ径を保ったまま前記効果を付与することが出来る。
【0035】
レンズ位置に影響を与える可動部材7の位置変化は、温度補償用ブロック2の熱膨張と圧電素子の熱膨張の和の熱膨張と、背面板4の熱膨張の差より生じる。この中で、圧電素子は線膨張について負熱膨張材料、つまり温度が上がるに従って全体の長さが収縮するという性質を持っている。従って、背面板4についても負熱膨張材料で構成することが望ましいが、金属では負の線膨張係数を持つ材料は一般的には存在しない。
【0036】
そこで背面板4の材質に、可能な限り負熱膨張材料に近いものとして、ゼロ温度係数を持つインバー材又はスーパーインバー材を採用することが好ましい。また、温度補償用ブロック2の熱膨張と圧電素子の熱膨張の和の熱膨張を、インバー材又はスーパーインバー材の熱膨張に合わせるために、温度補償用ブロック2の温度係数は、圧電素子の温度係数の負を補う意味で、正の大きな線膨張を採用する。この様にして、圧電素子の熱収縮を温度補償用ブロック2で吸収すると同時に、各第1梃子部3を介して背面板4が温度補償用ブロック2及び圧電素子を保持することで、アクチュエータの使用温度によって生じるレンズ駆動距離の変動特性が平坦になり、特性変化の抑制が可能となると共に、温度変化に対する安定したレンズ駆動を行うことが出来る。
【0037】
これは、本実施形態のレンズアクチュエータが駆動源である圧電素子の変位を、梃子部によって順次拡大する連結梃子型の構造を用いていることによる効果となっている。より具体的には、梃子部を用いて駆動源の変位を拡大する際に、温度変化に起因する熱膨張の影響を梃子部全体に吸収させることで前記効果を得ている。加えて、各梃子部の部品を個別に構成することができる為、部品毎に材料を変更し、レンズアクチュエータの使用条件に合わせた駆動特性とすることもできる。
【0038】
また、図3及び図4から分かるように、本実施形態では温度補償用ブロック2を用いた第1梃子部3の端面を、インバー材又はスーパーインバー材からなる背面板4で固定している。この背面板について、本実施形態では駆動部材1の伸縮方向に沿った屈曲部Dを形成した構造としている。この為、引張方向Jの力だけではなく、曲げ方向Kの応力に対しても背面板4の剛性を高めることができ、第1梃子部3での効果に加えて、背面板4での機械的損失もまた、低減することが可能となった。
【0039】
更に図4に示す背面板4の配置について、本実施例記載の構造では、駆動源である圧電素子と背面板4端面を同一線上Lに接して配置した構造となっている。この為、第1梃子部3上で力点となる圧電素子両端と、支点となる背面板4の両端との距離が最小となり、第1梃子部3に於ける変位拡大率を最大に設定することが可能となる。加えて、屈曲部Dを用いた構造としたことで、背面板4全体の厚みを薄くしつつ、駆動時の強度を維持することが可能となった。
【0040】
背面板4の強度向上と共に、第1梃子部3に於ける支点−力点間の距離短縮という効果も得ることが出来る。より具体的には、駆動時の応力に起因する背面板4の撓みを屈曲部Dによって抑制し、第1梃子部3表面に於いて駆動部と背面板4とを隣接して配置することが可能となる。この為、第1梃子部3表面上での支点となる背面板4固定部と、力点となる駆動部固定部との距離を縮小し、第1梃子部3での駆動時に於ける拡大率を最大限に設定しつつ、背面板4の強度を向上させることができる。また、背面板4を薄型の構造としても強度を維持することが可能となる為、レンズアクチュエータ全体に於ける駆動部分の搭載スペースを小さく構成することができる。
【0041】
本実施形態では、変位拡大機構を構成する各第1梃子部3は、弾性変形可能な平板状部材である。また図1及び図4から分かるように、本実施形態では左右の第1梃子部3について、部分的に貫通孔Cを設けて軽量化した構造を用いている。この為、駆動時に強度が必要とされる駆動部付近の強度を維持した状態で第1梃子部3の重量を減らし、全体的な即応性と耐衝撃性を高めることが可能となった。
【0042】
また貫通孔を設けることにより、アクチュエータ落下時の衝撃を緩和することが可能となる。更に、第1梃子部3に貫通孔Cを設けることでアクチュエータの重量を軽減すると共に、第2梃子部5によって第1梃子部3の変位を光軸方向Iの変位に変換する際、第1及び第2梃子部に掛かるレンズ以外の重量負荷が低減され、レンズ駆動時の即応性を高めることができる。なお、第1梃子部3に貫通孔Cを設けないアクチュエータ構造としても良い。
【0043】
また、本実施形態のアクチュエータでは、図5及び図6に示した第2梃子部5を用いて、第1梃子部3によって拡大した駆動部の変位を光軸方向Iの変位に変えている。第2梃子部5は、第1梃子部3の先端側部分にそれぞれ平板材を介して結合されている。更に各第1梃子部3の長手方向に対し、第2梃子部5の長手方向が90°となるように結合されている。
【0044】
第2梃子部5は第1梃子部3と異なり、一枚板に曲げ加工を加えて構成されている。この為、第1梃子部3によって拡大された変位を光軸方向Iに変える際に第2梃子部5の動作が滑らかになり、且つ第2梃子部5に生じる捻れ方向の応力を板材自体の弾性によって光軸方向Iの駆動力に加えることが可能となった。加えて、曲げ加工によって構成している為、光軸方向Iの寸法を変更することによって容易に小型、薄型の構造とすることができる。
【0045】
更に、本実施形態のアクチュエータ構造では、第2梃子部5を光軸方向Iに重ねて並べて配置した構造を用いている。この為、駆動部側だけでなく第2梃子部5側も省スペース化が可能になると共に、駆動部側と第2梃子部5側の両方に於いて、搭載するレンズ径の拡大という効果を得ることができる。また、本実施形態では第2梃子部5自体に切り欠き部Bを設けることでレンズ径拡大の効果を強めている。
【0046】
第1梃子部3の略長手方向に形成された第2梃子部5の腕部は、可動部材7に接続され、第2梃子部5の変位により可動部材7が変位動作される。可動部材である可動部材7は、リング状の本体から下側に延伸するように張出部が一体形成されており、更にリング状の本体から水平方向(前記矢印J方向)に突出するように鍔部が一体形成されている。リング状の本体が第2梃子部5の腕部に接続されている。
【0047】
温度補償用ブロック2や背面板4以外の変位拡大機構は、金属(例えば、ステンレス鋼)又は/及び樹脂からなる成形体、又は/及び、積層体で構成される。この積層体とは、薄板を積層させたものである。変位拡大機構は、全体を一体成形された成形体や積層体で構成しても良い。また、第2梃子部5は、変位伝達方向(前記矢印C方向)に沿って、補強用ブロック6を3つ以上設けても良い。
【0048】
駆動部材1である圧電素子に所定の電圧が印加されると、寸法歪により矢印J方向に圧電素子が伸長し、駆動部材1両端の温度補償用ブロック2から一軸方向Jの変位が背面板4を通じて第1梃子部3,3に出力される(即ち基端側部分で、第1梃子部3,3が押される)。駆動部の両端を力点、背面板4両端の各第1梃子部3との固定部分を支点として、駆動部材1の変位が第1梃子部3,3に出力される。この出力の押しにより、第1梃子部3,3は変形されつつ背面板4結合部を支点として矢印J方向に変位する。
【0049】
この第1梃子部3,3の変位により、第2梃子部5の第1梃子部3,3との結合部が矢印J方向に引っ張られ、この引っ張りにより第2梃子部5は変形され、第1梃子部3,3との結合部を作用点として矢印 I方向の上側(図1又は図2の上側)に変位する。従って、第2梃子部5の腕部に接続された可動部材7も上方に変位する。
【0050】
当然、駆動部材1である圧電素子が矢印J方向で縮小すれば、上記と逆の動作によって可動部材7が下方に変位する。そして、以上のような変位拡大機構による変位伝達の過程で、駆動部材1から出力された変位が増幅され、駆動部材1の出力変位量の数十倍以上(場合によっては百倍以上)の変位量が可動部材7に伝達される。
【0051】
図1図2及び図3から分かるように、本実施形態のレンズアクチュエータは、ベース部8上で、駆動部材1である圧電素子の両端を力点、背面板4両端の各第1梃子部3との固定部分を支点としている。そして圧電素子が発生する矢印J方向の変位によって第1梃子部3の先端部を矢印J方向に動かす。更に、第1梃子部3,3に連結された第2梃子部5によって第1梃子部3,3の矢印J方向の変位をレンズの光軸方向(矢印I方向)に変換し、第2梃子部5に取り付けられた可動部材7を光軸方向に動かす連結梃子型の駆動構造をレンズアクチュエータは用いている。
【0052】
このような構造を用いた事で、本実施形態記載のレンズアクチュエータは、圧電素子を駆動部材としたことによる即応性と、連結梃子型の変位拡大機構を用いたことによる高い変位拡大率が可能となった。
【0053】
また、前記第2梃子部5を光軸方向Iに重ねた構造とすることで、本実施例記載のレンズアクチュエータではレンズ駆動時に於ける可動部材7の安定性を向上させることができた。これは、本実施形態記載のレンズアクチュエータが、第2梃子部−第1梃子部間を直接繋いで接続部を構成した構造を用いていることによる効果である。即ち、本実施例記載の構造は力点となる駆動部材1端部から作用点となる前記接続部までの平面距離が等しくなっている。この為、本実施形態では第2梃子部5に対して、両端から偏り無く梃子部変位方向(前記矢印J方向)の力を加えることができ、上述した可動部材7の安定性を向上させることが出来る。
【0054】
また、光軸方向Iに第2梃子部5を重ねて配置したことで、落下等の衝撃を受けた際に第2梃子部5が互いに衝撃を吸収することが可能となった。これは、該配置に加えて、本実施形態に於いて用いた第2梃子部5が、板材の曲げ加工で構成されていることによる。即ち、光軸方向Iに重ねて配置した第2梃子部5に用いられている板材がバネとして機能することで第2梃子部5全体がダンパとして働き、落下等によって可動部材7に加わる衝撃を緩和すると共に第2梃子部5が受ける衝撃を第2梃子部5内で分散することが可能となっている。
【0055】
また、板材によって第2梃子部5を構成したことで、第1梃子部3から伝達される変位を直交する光軸方向Iの変位に変換する際に発生する捻れ応力を各第2梃子部5全体で吸収し、光軸方向Iに対して滑らかなレンズ駆動を行うことが可能となる。
【0056】
加えて図2図5より、本実施形態では第1梃子部3と背面板4を別体に成形し、第2梃子部5を前記板材とした上で、第2梃子部5に補強用ブロック6を設けた構造を用いている。この為、前述した衝撃吸収効果を第2梃子部5の板材部分で維持しつつ、梃子部として機能する第1梃子部3及び第2梃子部5の一部について選択的に強度を向上させ、駆動時に於ける変位損失の低減と前記耐衝撃性の維持とを両立している。
【0057】
また、本実施形態では上述した光軸方向Iに重ねた第2梃子部5の配置によって、第2梃子部5間での接触による破損及び動作不良を防ぐことが可能となっている。即ち、本実施形態記載の構造で光軸方向Iと直交する平面方向の振動を受ける場合、第2梃子部5の重ねた方向と振動方向とが直交している為、互いの動作を妨げることなく駆動させることが可能となる。
【0058】
以上、本実施例記載のアクチュエータ構造を用いることで、搭載するレンズ径の拡大によって小型、薄型化が容易で、使用温度による特性の変化を抑え、広い温度範囲での安定した動作が可能なレンズアクチュエータを提供することができた。
【0059】
以上のような圧電素子を備えて動作するレンズアクチュエータの、圧電素子への入力電圧(印加電圧)に対する、圧電素子の変形量(変位)の関係グラフを、図7に模式的に示す。圧電素子は図7に示すように、印加電圧と変位の関係が非線形となるヒステリシス特性を持つ。図7より圧電素子の変位が、同一の印加電圧値であっても印加電圧の増加時と減少時で異なることが分かる。よって、圧電素子により駆動されるレンズアクチュエータの印加電圧に対するレンズ変位特性も、図7に示すようなヒステリシス特性を示す。
【0060】
従って、圧電素子の変位と印加電圧の関係が線形と仮定して圧電素子に印加する電圧を計算すると、目標変位と実際の変位が異なる場合が生じる。よって、圧電素子の変位を目標とする値に変化させるために、本発明では圧電素子の端子に、同一経路で動作可能な静電容量センサを駆動回路内部に組み込み、センサ出力を圧電素子にフィードバックして、駆動対象物(レンズアクチュエータの場合は可動部材7)が所望の位置に位置決めされるような、フィードバック制御を行う。静電容量センサを駆動回路内部に組み込むため、アクチュエータの外部に別途、センサを設ける必要が無くなる。従って、アクチュエータを備える携帯端末機器の小型化・薄型化、及び軽量化を図ることが出来る。
【0061】
次に、前記レンズアクチュエータの駆動方法の実施形態を、図8を参照して説明する。最初にレンズアクチュエータの駆動開始時に、圧電素子にVb2(V)の電圧を印加し、Vb2(V)印加時に圧電素子が示す静電容量値b2(nF)を静電容量センサにより検出すると共に、圧電素子にVb1(V)の電圧を印加し、Vb1(V)印加時に圧電素子が示す静電容量値b1(nF)を静電容量センサにより検出する。
【0062】
図8より、圧電素子に印加する電圧が大きくなるほど静電容量は小さくなり、印加電圧が小さくなるほど静電容量は大きくなる。
【0063】
図8に示すように、Vb1(V)及びVb2(V)共に0(V)超であり、Vb1<Vb2と設定される。静電容量センサによる静電容量値b1(nF)及びb2(nF)の検出は、レンズアクチュエータの駆動開始時の印加電圧Vb1(V)及びVb2 (V)が、圧電素子に印加された時とした。
【0064】
本実施形態では、圧電素子への印加電圧はVb1〜Vb2(V)の範囲内で変化させるため、各電圧印加時に圧電素子が示す変位量の最大値はVb2(V)印加時であり、変位量の最小値はVb1(V)印加時となる。従って、可動部材7の最大変位量はVb2(V)印加時であると共に、最小変位量はVb1(V)印加時となる。
【0065】
静電容量センサにより検出されたb1(nF)とb2(nF)を、図9に示すようにPC(Personal Computer:パーソナルコンピュータ)に入力して、静電容量値範囲を所望のビット数に置き換える。本実施形態に於ける静電容量値範囲は、b1(nF)とb2(nF)の差分であるb1−b2(nF)となるので、PCにより静電容量値範囲b1−b2(nF)を計算すると共に、b1−b2(nF)を所望のビット数に置き換える。なお、所望のビット数とは所望の分解能を指す。
【0066】
一例として所望のビット数を1024に設定した場合、b1−b2(nF)は0〜1023の指定値に割り振られ、図8に示すb2(nF)とb1(nF)間の傾きが導出される。0〜1023に割り振られた各指定値から後述する目標静電容量値が導出される。
【0067】
次に、目標とする静電容量値(目標静電容量値)bB(nF)を、b1(nF)からb2(nF)の範囲内で設定すると共に、目標静電容量値を設定した時点で圧電素子が示している静電容量値bA(nF)を静電容量センサにより検出し、PCに入力する。また、圧電素子が静電容量値bA(nF)を示す時に印加される電圧を検出する。図8より、圧電素子が静電容量値bA(nF)を示す時に印加される電圧はVa(V)である。更に、図8では一例として目標静電容量値bB(nF)を、Vb2(V)印加時のb2(nF)と設定している(以下、bB(nF)=b2(nF)との設定で説明を続ける)。
【0068】
次に、目標静電容量値b2(nF)と静電容量値bA(nF)をPCで比較する。静電容量値bA(nF)と目標静電容量値b2(nF)が一致する場合か、もしくは静電容量値bA(nF)が(目標静電容量値b2±b2の5(%)(nF))内に入る場合は、終了とする。
【0069】
しかし静電容量値bA(nF)と目標静電容量値b2(nF)が一致せず、静電容量値bA(nF)が(目標静電容量値b2±b2の5(%)(nF))内に入らない場合は、以下のような制御を行う。
【0070】
まずbA(nF)<b2(nF)の場合は、Va値に対して小さな電圧幅であるΔV(V)を、電圧Vaから減算して、ΔV(V)が減算された新たなVaに印加電圧を変更する。一方bA(nF)>b2(nF)の場合は、電圧VaにΔV(V)を加算して、ΔV(V)が加算された新たなVaに印加電圧を変更する。
【0071】
次に、変更された新たな印加電圧Va(V)印加時に、圧電素子が示す静電容量値bA(nF)を静電容量センサにより検出し、その静電容量値bA(nF)と目標静電容量値b2(nF)を比較する。比較の結果、2つの静電容量値bA(nF)とb2(nF)が一致する場合か、もしくは静電容量値bA (nF)が(目標静電容量値b2±b2の5(%)(nF))内に入る場合は、圧電素子が示す静電容量値が目標静電容量値に達したと判断し、印加電圧Va(V)及び静電容量値bA(nF)の制御をここで終了する。
【0072】
2つの静電容量値bA(nF)とb2(nF)が不一致の場合か、静電容量値bA (nF)が(目標静電容量値b2±b2の5(%)(nF))内に入らない場合は、再度、目標静電容量値b2(nF)と静電容量値bA(nF)をPCで比較する。bA(nF)<b2(nF)の場合は電圧VaからΔV(V)を減算して、ΔV(V)が減算された新たなVaに印加電圧を変更する。一方bA(nF)>b2(nF)の場合は、電圧VaにΔV(V)を加算して、ΔV(V)が加算された新たなVaに印加電圧を変更する。
【0073】
そして、前述した過程と同様に印加電圧Va(V)を新たな値に変更し、その新たな電圧値の印加時に圧電素子が示す静電容量値(nF)と目標静電容量値b2(nF)を比較する。この2つの静電容量値(nF)が一致するかもしくは静電容量値bA (nF)が(目標静電容量値b2±b2の5(%)(nF))内に入るまで上記過程を繰り返すか、もしくは規定した回数nに到達するまで印加電圧(Va(V)から新たな電圧値に変更された電圧)の変更を繰り返す。その後、圧電素子の印加電圧及び静電容量の制御を終了する。
【0074】
以上のように、印加電圧Va (V)へのΔV(V)の加算または減算を繰り返すことにより、目標静電容量値b2(nF)が示す印加電圧Vb2(=VB(V))に、印加電圧Va(V)を漸次近づけていく。印加電圧Vb2(=VB(V))に印加電圧Va(V)を近づけていくことによって、静電容量値bAの変更を行っていく。
【0075】
なお印加電圧Va(V)にΔV(V)を加算又は減算していく制御の繰り返し過程で、目標静電容量値b2(=bB)(nF)に対する静電容量値bA(nF)の大小関係が変わる度に、ΔV(V)の値を次第に小さくしていくものとする。
【0076】
具体的には、印加電圧Va(V)へのΔV(V)の加算によって、b2(nF)>bA(nF)からb2(nF)<bA(nF)に大小関係が変わった場合は、bA(nF)がb2(nF)を追い越してしまったことになる。従ってΔV(V)の値を小さくして、そのΔV(V)を印加電圧Va(V)から減算することで、静電容量値bA(nF)をb2(nF)に近づけて行く。
【0077】
または、印加電圧Va(V)からのΔV(V)の減算によって、b2(nF)<bA(nF)からb2(nF)>bA(nF)に大小関係が変わった場合は、bA(nF)がb2(nF)を下回ってしまったことになる。従ってΔV(V)の値を小さくして、そのΔV(V)を印加電圧Va(V)に加算することで、静電容量値bA(nF)をb2(nF)に近づけて行く。
【0078】
このように、目標静電容量値b2(nF)に対する静電容量値bA(nF)の大小関係が変わる度に、ΔV(V)の値を次第に小さくし、そのΔV(V)を印加電圧Va(V)に加算又は減算することで、静電容量値bA(nF)がb2(nF)の値の前後で振れつつも、bA(nF)をb2(nF)の値に確実に収束させて近づけていくことが可能となる。
【0079】
なお、ΔV(V)の値は任意に設定すれば良いが、静電容量値bA(nF)をなるべく速く目標静電容量値b2(nF)に一致させたいか、もしくは(目標静電容量値b2±b2の5(%)(nF))内に入れたい場合は、ΔV(V)の値を、|印加電圧Vb2(=VB)(V)−印加電圧Va(V)|と設定する。そして、そのΔV(V)の値を印加電圧Va(V)に加算又は減算して、新たな印加電圧Vaを検出すれば良い。
【0080】
そして、目標静電容量値b2(nF)に対する静電容量値bA(nF)の大小関係が変わる度に、新たに検出した印加電圧Va(V)と印加電圧V2(V)との差分(印加電圧V2(V)−印加電圧Va(V))の絶対値を、新たなΔV(V)の値とする。次に、そのΔV(V)の値を加算又は減算して新たな印加電圧Vaを検出していく。
【0081】
以後、新たに印加電圧Va(V)が検出される度に、印加電圧V2(V)−印加電圧Va(V)の絶対値を新たなΔV(V)の値と変更し、変更の度にΔV(V)の値を小さくし、そのΔV(V)の値を加算又は減算して新たな印加電圧Va(V)を検出する。
【0082】
このようにΔV(V)の値を、印加電圧V2(V)−印加電圧Va(V)の絶対値に設定することにより、目標静電容量値b2(nF)に対する静電容量値bA(nF)の差分を理想上、1回の印加電圧Va(V)に対するΔV(V)の加算又は減算によって達成することが可能となる。従って、静電容量値bA(nF)を速く目標静電容量値b2(nF)に一致、もしくは(目標静電容量値b2±b2の5(%)(nF))内に入れることが出来る為、素早く圧電素子の印加電圧及び静電容量の制御を終了させることが可能となる。
【0083】
また、ΔV(V)の値を印加電圧Va(V)未満に設定し、目標静電容量値b2(nF)に対する静電容量値bA(nF)の大小関係が変わるまで、ΔV(V)の値を変更せずそのまま保持して、その一定値のΔV(V)の値を印加電圧Va(V)に加算又は減算し続けて、加算又は減算の度に新たな印加電圧Va(V)を検出するような制御を行っても良い。
【0084】
目標静電容量値b2(nF)に対する静電容量値bA(nF)の大小関係が変更した際に、ΔV(V)の値を、新たに検出されている印加電圧Va(V)未満の更に小さい値に設定し直す。以後、目標静電容量値b2(nF)に対する静電容量値bA(nF)の大小関係が変わるまで、ΔVの値を一定値に保持し、そのΔV(V)の値を印加電圧Va(V)に加算又は減算し続けて、加算又は減算の度に新たな印加電圧Va(V)を検出する。
【0085】
このようにΔV(V)の値を印加電圧Va(V)未満に設定し、b2(nF)に対するbA(nF)の大小関係が変わるまで、ΔV(V)の値を保持することにより、ΔV(V)の値を1ステップとしてbA(nF)をb2(nF)に確実に近づけていくことが出来る。
【0086】
一定値における具体的なΔV(V)の値は、前述の0〜1023に割り振られた指定値に基づいて設定されれば良く、一例として印加電圧V2(V)−印加電圧Va(V)の絶対値を、任意の値mで除算した値等に設定すれば良い。この場合、b2(nF)に対するbA(nF)の大小関係が変わる度に、値mを大きく設定して行けば良い。
【0087】
以上のように、静電容量値のbA(nF)の変化に基づき、圧電素子への印加電圧の変位量を制御することにより、アクチュエータの駆動対象物(レンズアクチュエータの場合は、可動部材7)の制御上におけるヒステリシス量を減少させることが可能となる。従って、アクチュエータ(本実施形態ではレンズアクチュエータ)の動作を安定化させることが出来る。更に、アクチュエータの駆動対象物の制御上におけるヒステリシス量を低減して、駆動対象物の位置決め制御の簡略化・容易化を図ることが可能となる。
【0088】
電圧Vb1及びVb2(V)が圧電素子に印加されると、圧電素子は分極して少なくとも前記一軸方向(図3の矢印J方向)に伸縮する。圧電素子への電圧の印加は、図9のブロック図から分かるように、PCからファンクションジュネレータに制御信号を入力してファンクションジュネレータからピエゾアンプに所望の電圧を出力させ、更にその電圧をピエゾアンプにより増幅させることにより行う。圧電素子に印加する電圧(V)は、交流よりも直流の方が、容易に使用出来るため、直流電圧が好ましい。
【0089】
なお、圧電素子の分極状態は、直流電圧の印加時間に伴って変化する。しかし、印加時間が所定時間を超えると、直流電圧の印加時間が増加しても分極状態が変化しなくなる。換言すれば、直流電圧の印加時間に対して分極状態が飽和する。従って、レンズアクチュエータに使用される極小型の圧電素子の場合は、圧電素子が伸びていれば良いので、圧電素子への直流電圧の印加時間の目安は、圧電素子の共振周波数をf(Hz)とすると、1/f 秒である。
【0090】
以上のような、レンズアクチュエータの一連の駆動方法を、アルゴリズムとしたフローチャートを図10に示す。
【0091】
図10より、フローチャートの流れとしては、最初に(1)レンズアクチュエータの駆動開始に伴い、PCからファンクションジュネレータ及びピエゾアンプを介して、レンズアクチュエータの圧電素子にVb2(V)の電圧を印加する。
(2)電圧Vb2(V)印加に伴い、圧電素子が示す静電容量値b2(nF)を静電容量センサにより検出する。
(3)次に電圧Vb1(V)を、PCからファンクションジュネレータ及びピエゾアンプを介して、レンズアクチュエータの圧電素子に印加する。
(4)電圧Vb1(V)印加に伴い、圧電素子が示す静電容量値b1(nF)を静電容量センサにより検出する。
(5)次に、圧電素子の静電容量値の差分b1−b2(nF)をPCにより計算し、計算された静電容量値範囲をPCにより所望のビット数に置き換える。
(6)b1−b2(nF)をビット数分の指定値に割り振る。
(7)次に目標静電容量値bB(nF)を、b1(nF)からb2(nF)の範囲内で設定する。(一例として、目標静電容量値bB=b2(nF)と設定(Vb2(V)印加時の静電容量値)。)
(8)更に、目標静電容量値b2(nF)を設定した時点で圧電素子が示している静電容量値bA(nF)を静電容量センサにより検出し、PCに入力する。
(9)圧電素子が静電容量値bA(nF)を示す時に印加される電圧Va(V)を検出する。
【0092】
(10)次に、目標静電容量値b2(nF)と静電容量値bA(nF)をPCで比較する。静電容量値bA(nF)と目標静電容量値b2(nF)が一致する場合か、もしくは静電容量値bA(nF)が(目標静電容量値b2±b2の5(%)(nF))内に入る場合は、終了とする。
【0093】
(11)bA(nF)<b2(nF)の場合は、カウンターtdが0かどうか判断する。bA(nF)>b2(nF)の場合の処理を経ず、最初にbA(nF)<b2(nF)の処理を行う場合tdは0なので、Va値に対して小さな電圧幅で且つ予め設定された任意のΔV(V)を電圧Vaから減算して、ΔV(V)が減算された新たなVaに印加電圧を変更する。カウンターtdが0では無い場合(td>0)は、カウンターtdを0に再設定後、Va値に対して小さな電圧幅であるΔV(V)を設定し、設定したΔV(V)を電圧Vaから減算して、ΔV(V)が減算された新たなVaに印加電圧を変更する。
(12)電圧Vaの減算の度に、カウンターtuに1を加える。
(13)変更された新たな印加電圧Va(V)印加時に、圧電素子が示す静電容量値bA(nF)を静電容量センサにより検出し、その静電容量値bA(nF)と目標静電容量値b2(nF)を比較する。比較の結果、2つの静電容量値bA(nF)とb2(nF)が一致するか、もしくは静電容量値bA (nF)が(目標静電容量値b2±b2の5(%)(nF))内に入る場合は、印加電圧Va(V)及び静電容量値bA(nF)の制御を終了する。
【0094】
(14)2つの静電容量値bA(nF)とb2(nF)が不一致の場合か、静電容量値bA (nF)が(目標静電容量値b2±b2の5(%)(nF))内に入らない場合は、再度、目標静電容量値b2(nF)と静電容量値bA(nF)をPCで比較する。
(15)比較の結果、再度bA(nF)<b2(nF)の場合は、前述した過程と同様に印加電圧Va (V)を新たな値に変更し、カウンターtuに1を加えながら新たな電圧値の印加時に圧電素子が示す静電容量値bA(nF)と目標静電容量値b2(nF)を比較する。この2つの静電容量値(nF)が一致するかもしくは静電容量値bA (nF)が(目標静電容量値b2±b2の5(%)(nF))内に入るまで上記過程を繰り返すか、又はカウンターtuが規定した回数nに到達するまで印加電圧(Va(V)から新たな電圧値に変更された電圧)の変更を繰り返す。その後、圧電素子の印加電圧及び静電容量の制御を終了する。
【0095】
(16)一方、目標静電容量値b2(nF)と静電容量値bA(nF)を比較した結果、bA(nF)>b2(nF)の場合は、カウンターtuが0かどうか判断する。事前にbA(nF)<b2(nF)の処理を複数回ループしている場合は、カウンターtuは0では無い(tu>0)のでカウンターtuを0に再設定後、Va値に対して小さな電圧幅であるΔV(V)を設定する。tu>0の場合のΔV(V)を設定は、目標静電容量値b2(nF)に対する静電容量値bA(nF)の大小関係が、bA(nF)<b2(nF)からbA(nF)>b2(nF)に変化した場合である。従って、bA(nF)>b2(nF)の場合におけるΔV(V)を設定は、bA(nF)<b2(nF)で設定していたΔV(V)よりも小さくする。そして、設定したΔV(V)を電圧Vaに加算して、ΔV(V)が加算された新たなVaに印加電圧を変更する。
(17)bA(nF)<b2(nF)の場合の処理を経ず、最初にbA(nF)>b2(nF)の処理を行う場合、tuは0なので、Va値に対して小さな電圧幅で且つ予め設定された任意のΔV(V)を電圧Vaに加算して、ΔV(V)が加算された新たなVaに印加電圧を変更する。
(18)電圧Vaの加算の度に、カウンターtdに1を加える。
(19)変更された新たな印加電圧Va(V)印加時に、圧電素子が示す静電容量値bA(nF)を静電容量センサにより検出し、その静電容量値bA(nF)と目標静電容量値b2(nF)を比較する。比較の結果、2つの静電容量値bA(nF)とb2(nF)が一致するか、もしくは静電容量値bA (nF)が(目標静電容量値b2±b2の5(%)(nF))内に入る場合は、印加電圧Va(V)及び静電容量値bA(nF)の制御を終了する。
【0096】
(20)2つの静電容量値bA(nF)とb2(nF)が不一致の場合か、静電容量値bA (nF)が(目標静電容量値b2±b2の5(%)(nF))内に入らない場合は、再度、目標静電容量値b2(nF)と静電容量値bA(nF)をPCで比較する。
(21)比較の結果、再度bA(nF)>b2(nF)の場合は、前述した過程と同様に印加電圧Va (V)を新たな値に変更し、カウンターtdに1を加えながら新たな電圧値の印加時に圧電素子が示す静電容量値bA(nF)と目標静電容量値b2(nF)を比較する。この2つの静電容量値(nF)が一致するかもしくは静電容量値bA (nF)が(目標静電容量値b2±b2の5(%)(nF))内に入るまで上記過程を繰り返すか、又はカウンターtdが規定した回数nに到達するまで印加電圧(Va(V)から新たな電圧値に変更された電圧)の変更を繰り返す。その後、圧電素子の印加電圧及び静電容量の制御を終了する。
【0097】
(22)目標静電容量値b2(nF)と静電容量値bA(nF)を比較した結果、bA(nF)>b2(nF)からbA(nF)<b2(nF)に大小関係が変わった場合は、bA(nF)<b2(nF)の処理の前に事前にbA(nF)>b2(nF)の処理を複数回ループしていることになる。従って、カウンターtdは0では無い(td>0)のでカウンターtdを0に再設定後、Va値に対して小さな電圧幅であるΔV(V)を設定する。td>0の場合のΔV(V)を設定は、目標静電容量値b2(nF)に対する静電容量値bA(nF)の大小関係が、bA(nF)>b2(nF)からbA(nF)<b2(nF)に変化した場合である。従って、bA(nF)<b2(nF)の場合におけるΔV(V)を設定は、bA(nF)>b2(nF)で設定していたΔV(V)よりも小さくする。
【0098】
以上のように、印加電圧Va(V)にΔV(V)を加算又は減算していく制御の繰り返し過程で、目標静電容量値b2(=bB)(nF)に対する静電容量値bA(nF)の大小関係が変わる度に、ΔV(V)の値を次第に小さくしていくものとする。なお、図10のフローチャートではΔV(V)の値の詳細な設定に関しては省略している。
【0099】
なお、本発明に係る圧電素子を備えたアクチュエータは、本実施形態のレンズアクチュエータに限定されず、触感アクチュエータやX-Y-Zステージ、若しくはデジタルカメラの手振れ防止機構のアクチュエータ等でも良い。X-Y-Zステージの場合は、静電容量センサにより検出する静電容量値の誤差は±10(%)程が許容され、静電容量値はnFオーダに限定されない。
【実施例】
【0100】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明は以下に説明する実施例にのみ限定されるものではない。
【0101】
本実施例に係るアクチュエータは、図1図6に示すレンズアクチュエータであり、そのレンズアクチュエータの駆動部材1である圧電素子は、電極と圧電性セラミックスとが積層した積層構造である。
【0102】
次に、レンズアクチュエータの駆動を開始する。その駆動開始に伴い、圧電素子にVb2(V)として30(V)を1/f秒間印加する。なお前述より、fは圧電素子の共振周波数(Hz)である。30(V)印加時に圧電素子が示す静電容量値b2(nF)を静電容量センサにより検出する。
【0103】
次に、圧電素子にVb1(V)として5(V)を1/f秒間印加し、5(V)印加時に圧電素子が示す静電容量値b1(nF)を静電容量センサにより検出する。なお、印加電圧Vb1=5(V)及びVb2=30(V)は直流電圧とする。
【0104】
5(V)及び30(V)の印加は図9より、PCからファンクションジュネレータに制御信号を入力してファンクションジュネレータからピエゾアンプに0〜2(V)の電圧を出力させ、その0〜2(V)の電圧をピエゾアンプにより0〜30(V)まで増幅させることにより行う。
【0105】
次に、b1(nF)とb2(nF)をPCに入力し、静電容量値範囲b1−b2(nF)を所望のビット数1024に置き換え、b1−b2(nF)をビット数分の指定値0〜1023に割り振る。
【0106】
次に目標静電容量値bB(nF)を、b1(nF)からb2(nF)の範囲内で設定する。本実施例では、目標静電容量値として、Vb2(V)印加時の静電容量値であるb2(nF)と設定する。更に、目標静電容量値b2(nF)を設定した時点で圧電素子が示している静電容量値bA(nF)を静電容量センサにより検出し、PCに入力する。また、圧電素子が静電容量値bA(nF)を示す時に印加される電圧Va(V)を検出する。
【0107】
次に、目標静電容量値b2(nF)と静電容量値bA(nF)をPCで比較する。静電容量値bA(nF)と目標静電容量値b2(nF)が一致する場合か、もしくは静電容量値bA(nF)が(目標静電容量値b2±b2の5(%)(nF))内に入る場合は、印加電圧Va(V)及び静電容量値bA(nF)の制御を終了した。
【0108】
静電容量値bA(nF)と目標静電容量値b2(nF)が一致せず、静電容量値bA(nF)が(目標静電容量値b2±b2の5(%)(nF))内に入らない場合は、2つの静電容量値bA(nF)とb2(nF)が一致する場合か、もしくは静電容量値bA (nF)が(目標静電容量値b2±b2の5(%)(nF))内に入るまで印加電圧Va(V)の変更を繰り返すか、規定回数に到達するまで印加電圧Va(V)の変更を繰り返した後、印加電圧Va(V)及び静電容量値bA(nF)の制御を終了した。
【0109】
以上のように印加電圧を変更し、この印加電圧をレンズアクチュエータの圧電素子に印加した時に圧電素子が示す、印加電圧に対する変位特性を2回測定し、その測定結果のグラフを図11及び図12に示す。図11及び図12に示すように印加電圧の増加時と減少時とで異なる経路を辿って、ヒステリシス特性を示した。
【0110】
レンズアクチュエータの圧電素子が示す変位量の最大値は、静電容量値検出を行った場合は、図11及び図12中に実線で示すグラフより1回目が213.0(μm)、2回目が222.1(μm)であった。
【0111】
また、ヒステリシス量の最大値は1回目が8.5(μm)、2回目が12.1(μm)であった。なおヒステリシス量とは、同一の印加電圧値において、印加電圧の増加時と減少時での変位差のうち、最大値を指すものとした。
【0112】
図11及び図12のグラフの縦軸は、レンズアクチュエータの圧電素子が示す変位量(μm)であり、横軸は本実施例においては圧電素子が示す静電容量値(nF)であり、横軸数値の0が75(nF)に対応し、1000が46(nF)に対応する。
【比較例】
【0113】
次に、比較例について説明する。比較例に係るアクチュエータも、前記実施例と同じく図1図6に示すレンズアクチュエータ及び圧電素子を用いた。
【0114】
比較例では、圧電素子の静電容量値は検出せず、圧電素子に印加する印加電圧を変更し、この電圧を圧電素子に印加した時に圧電素子が示す、印加電圧に対する変位特性を2回測定し、その測定結果のグラフを図11及び図12に比較例として破線で示した。なお、印加電圧は直流電圧とし、fを圧電素子の共振周波数(Hz)とすると、圧電素子への印加時間は1/f秒間とした。
【0115】
レンズアクチュエータの圧電素子が示す変位量の最大値は、静電容量値検出を行わなかった場合は、1回目が245.9(μm)、2回目が253.8(μm)であった。またヒステリシス量の最大値は、1回目が23.4(μm)、2回目が24.3(μm)であった。なお比較例においてもヒステリシス量とは、同一の印加電圧値における印加電圧の増加時と減少時での変位差のうち、最大値を指すものとした。
【0116】
図11及び図12のグラフの縦軸は、レンズアクチュエータの圧電素子が示す変位量(μm)であり、横軸は比較例においては圧電素子に印加する印加電圧(V)であり、横軸数値の0が5(V)に対応し、1000が30(V)に対応する。
【0117】
以上の実施例及び比較例の結果から、静電容量値の変化に基づき圧電素子への印加電圧を変位させて制御することにより、レンズアクチュエータの可動部材の制御上における前記変位量のヒステリシス量を減少させることが可能であることが実証された。
【符号の説明】
【0118】
1 駆動部材
2 温度補償ブロック
3 第1梃子部
4 背面板
5 第2梃子部
6 補強用ブロック
7 可動部材
8 ベース部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12