特許第6286726号(P6286726)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社新川の特許一覧

特許6286726ボンディング装置およびボンディング方法
<>
  • 特許6286726-ボンディング装置およびボンディング方法 図000002
  • 特許6286726-ボンディング装置およびボンディング方法 図000003
  • 特許6286726-ボンディング装置およびボンディング方法 図000004
  • 特許6286726-ボンディング装置およびボンディング方法 図000005
  • 特許6286726-ボンディング装置およびボンディング方法 図000006
  • 特許6286726-ボンディング装置およびボンディング方法 図000007
  • 特許6286726-ボンディング装置およびボンディング方法 図000008
  • 特許6286726-ボンディング装置およびボンディング方法 図000009
  • 特許6286726-ボンディング装置およびボンディング方法 図000010
  • 特許6286726-ボンディング装置およびボンディング方法 図000011
  • 特許6286726-ボンディング装置およびボンディング方法 図000012
  • 特許6286726-ボンディング装置およびボンディング方法 図000013
  • 特許6286726-ボンディング装置およびボンディング方法 図000014
  • 特許6286726-ボンディング装置およびボンディング方法 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286726
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】ボンディング装置およびボンディング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
   H01L21/52 F
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-517881(P2016-517881)
(86)(22)【出願日】2015年4月28日
(86)【国際出願番号】JP2015062813
(87)【国際公開番号】WO2015170645
(87)【国際公開日】20151112
【審査請求日】2016年11月7日
(31)【優先権主張番号】特願2014-96338(P2014-96338)
(32)【優先日】2014年5月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000146722
【氏名又は名称】株式会社新川
(72)【発明者】
【氏名】早田 滋
(72)【発明者】
【氏名】安東 嶺
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 安
【審査官】 工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−153562(JP,A)
【文献】 特開2006−210785(JP,A)
【文献】 特開平7−7028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/52
H01L21/58
H01L21/60−21/607
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップを基板上にボンディングするボンディング装置であって、
ボンディング作業面に向かって配置された第一カメラと、前記第一カメラとオフセットを有して配置されるボンディングツールと、を一体的に保持しつつ移動するボンディングヘッドと、
前記ボンディングツールに保持されたチップのボンディングツールに対する位置を検出するべく、前記ボンディングツール側に向かって設けられた第二カメラと、
前記第一カメラ及び前記第二カメラで認識可能に配置されたリファレンスマークを有し、前記第二カメラに対して位置が固定されたリファレンス部材と、
前記ボンディングヘッドの移動を制御する制御部と、
を備え、前記制御部は、
前記第一カメラで認識されたリファレンスマークの位置に基づいて、前記ボンディングヘッドを移動させたあと、前記第二カメラで認識されたリファレンスマークに対する前記ボンディングツールの位置に基づいて、前記オフセットの値を算出する、
ことを特徴とするボンディング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のボンディング装置であって、
前記制御部は、前記オフセットの値の誤差量を算出するものであって、算出した前記誤差量に基づいて前記オフセットの値を補正して次のボンディング処理を行う、
ことを特徴とするボンディング装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のボンディング装置であって、
前記第一カメラまたは第二カメラは、前記ボンディングヘッドの移動に伴って撮像対象物がカメラの視野内を通過する撮像タイミングで、当該カメラに対応するストロボを発光させることで、前記ボンディングヘッドを停止させることなく前記撮像対象物を撮像し、
前記制御部は、前記ボンディングヘッドを停止させることなく得られた撮像画像に基づいて、前記オフセットの値を算出する、
ことを特徴とするボンディング装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のボンディング装置であって、
前記制御部は、前記リファレンスマークに対する前記ボンディングツールの位置を検出するための第二カメラにより撮像された画像に基づいて、前記チップのボンディングツールに対する位置を検出する、ことを特徴とするボンディング装置。
【請求項5】
請求項4に記載のボンディング装置であって、
前記第二カメラは、赤外線を撮像する赤外線カメラであることを特徴とするボンディング装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のボンディング装置であって、
前記リファレンスマークは、前記第二カメラの被写界深度の端部に配置される、ことを特徴とするボンディング装置。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載のボンディング装置であって、
前記第二カメラは、視野内の焦点位置を部分的に異ならせる機構を備える、ことを特徴とするボンディング装置。
【請求項8】
ボンディング作業面に向かって配置された第一カメラおよび前記第一カメラとオフセットを有して配置されるボンディングツールを一体的に保持しつつ移動するボンディングヘッドと、前記ボンディングツールに保持されたチップのボンディングツールに対する位置を検出するべく前記ボンディングツール側に向かって設けられた第二カメラと、前記第一カメラ及び前記第二カメラで認識可能に配置されたリファレンスマークを有し、前記第二カメラに対して位置が固定されたリファレンス部材と、を備えたボンディング装置によるボンディング方法であって、
前記第一カメラで、前記第二カメラの視野内に設置された前記リファレンスマークの位置を認識するステップと、
前記認識されたリファレンスマークの位置に基づいて前記ボンディングヘッドを移動させた後、前記第二カメラで、前記リファレンスマークに対するボンディングツールの位置を認識するステップと、
前記認識されたリファレンスマークに対するボンディングツールの位置に基づいて、前記オフセットの値を算出するステップと、
を備えることを特徴とするボンディング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップを基板上にボンディングするボンディング装置およびボンディング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等のチップを、基板上にボンディングさせるボンディング装置として、従来からダイボンディング装置や、フリップチップボンディング装置等が知られている。かかるボンディング装置では、コレット等のボンディングツールでチップを保持、移動させ、基板上にボンディングしている。ここで、高精度にボンディングを行うためには、ボンディングツールによりピックアップされたチップのボンディングツールに対する位置や、当該チップの状況(クラックや汚れの有無等)を、ボンディング前に確認することが求められる。そこで、従来から、ダイボンディング装置等では、ボンディングツールの移動経路の真下位置に、チップをピックアップしたボンディングツールを撮像するボトムカメラを設けており、当該ボトムカメラで撮像された画像に基づいて、ボンディングツールに対するチップの位置やチップの状況を確認していた。
【0003】
また、高精度にボンディングを行うためには、基板上にあるチップの装着位置も正確に検出することが要求される。そこで、従来から、ボンディングツールの近傍に、作業面側に向いた位置検出用カメラを設け、当該位置検出用カメラで基板上のチップ装着部を撮像し、得られた画像に基づいてチップ装着部の位置を検出することも、従来から提案されている。一部では、この位置検出用カメラとボンディングツールを、規定のオフセット分だけ離してボンディングヘッドに配置することが提案されている。かかるボンディング装置では、ボンディングツールと位置検出用カメラのオフセット量が、温度変化や摩耗による経年変化等に起因して変化する。こうしたオフセット量の変化は、ボンディング位置の誤差を招く。
【0004】
そこで、オフセット量を検出するための技術が特許文献1〜6等に開示されている。例えば、特許文献1には、ボンディング部品の位置を検知する位置検知用カメラと、ボンディングを行うツールとがオフセットされたボンディング装置において、位置検知用カメラをリファレンス部材の上方に移動させてリファレンス部材と位置検知用カメラとの位置関係を測定し、また予め記憶されたオフセット量に従ってツールをリファレンス部材上に移動させ、リファレンス部材とツールとの位置関係をボトムカメラで測定し、これらの測定結果に基づいて正確なオフセット量を求める技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、リファレンス部材として、カメラ内の撮像素子を用いた技術が開示されている。また、特許文献3,4には、カメラ間距離のズレや、オフセット量を補正するために、位置検出用カメラやボトムカメラとは別に、専用のカメラを設ける技術が開示されている。さらに、特許文献5,6には、位置検出用カメラおよびボトムカメラで得られた画像に基づいて、カメラ間距離のズレやオフセット量を補正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2982000号公報
【特許文献2】特許第4105926号公報
【特許文献3】特許第4128540号公報
【特許文献4】特許第5344145号公報
【特許文献5】特許第2780000号公報
【特許文献6】特開2006−210785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1,2の技術は、基本的に、ワイヤボンディング装置に適用することを想定しており、ダイボンディング装置や、フリップチップボンディング装置のように、半導体素子等のチップを、基板上にボンディングさせるボンディング装置に適用することは想定されていなかった。また、特許文献1,2の技術は、いずれも、オフセット検出のために専用のカメラを設けることを前提としていた。
【0008】
特許文献3,4の技術は、チップを基板上にボンディングさせるボンディング装置を想定している。しかし、特許文献3,4の技術では、チップ装着位置を測定するための位置検出用カメラおよびボンディングツールに保持されたチップを測定するためのボトムカメラとは別に、さらに、オフセット量等の測定のために専用のカメラを設ける必要があった。特許文献5,6の技術は、専用のカメラを用いる構成ではないが、オフセット量等の測定のために複雑で時間のかかる処理を実行する必要があった。
【0009】
そこで、本発明では、チップを基板上にボンディングさせるボンディング装置であって、オフセット検出のために専用のカメラを設けることなく、ボンディングツールと位置検出用カメラのオフセットを容易に検出できるボンディング装置およびボンディング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のボンディング装置は、チップを基板上にボンディングするボンディング装置であって、ボンディング作業面に向かって配置された第一カメラと、第一カメラとオフセットを有して配置されるボンディングツールと、を一体的に保持しつつ移動するボンディングヘッドと、ボンディングツールに保持されたチップのボンディングツールに対する位置を検出するべく、ボンディングツール側に向かって設けられた第二カメラと、第二カメラの視野内に配置されたリファレンスマークと、ボンディングヘッドの移動を制御する制御部と、を備え、制御部は、第一カメラで認識されたリファレンスマークの位置に基づいて、ボンディングヘッドを移動させたあと、第二カメラで認識されたリファレンスマークに対するボンディングツールの位置に基づいて、オフセットの値を算出する、ことを特徴とする。
【0011】
他の好適な態様では、制御部で算出したオフセットの値を次のボンディング処理にフィードバックしてボンディングする。他の好適な態様では、第一カメラまたは第二カメラは、ボンディングヘッドの移動に伴って撮像対象物がカメラの視野内を通過する撮像タイミングで、当該カメラに対応するストロボを発光させることで、ボンディングヘッドを停止させることなく撮像対象物を撮像し、制御部は、ボンディングヘッドを停止させることなく得られた撮像画像に基づいて、オフセットの値を算出する。
【0012】
他の好適な態様では、制御部は、リファレンスマークに対するボンディングツールの位置を検出するための第二カメラにより撮像された画像に基づいて、チップのボンディングツールに対する位置を検出する。
【0013】
他の好適な態様では、第二カメラは、赤外線を撮像する赤外線カメラである。また、別の好適な態様では、リファレンスマークは、第二カメラの被写界深度の端部に配置される。他の好適な態様では、第二カメラは、視野内の焦点位置を部分的に異ならせる機構を備える。
【0014】
他の本発明であるボンディング方法は、ボンディング作業面に向かって配置された第一カメラおよび第一カメラとオフセットを有して配置されるボンディングツールを一体的に保持しつつ移動するボンディングヘッドと、ボンディングツールに保持されたチップのボンディングツールに対する位置を検出するべくボンディングツール側に向かって設けられた第二カメラと、を備えたボンディング装置によるボンディング方法であって、第一カメラで、第二カメラの視野内に設置されたリファレンスマークの位置を認識するステップと、認識されたリファレンスマークの位置に基づいてボンディングヘッドを移動させた後、第二カメラで、リファレンスマークに対するボンディングツールの位置を認識するステップと、認識されたリファレンスマークに対するボンディングツールの位置に基づいて、オフセットの値を算出するステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来のボンディング装置でも設けられていたボンディング作業面に向かって配置された第一カメラとボンディングツール側に向かって設けられた第二カメラで、オフセットを容易に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態であるボンディング装置の構成を示す図である。
図2】ボトムカメラ周辺の構成を示す図である。
図3】リファレンス部材の一例を示す図である。
図4】オフセット測定の原理を説明する図である。
図5】オフセット測定の原理を説明する図である。
図6】オフセット測定の原理を説明する図である。
図7】オフセット測定の原理を説明する図である。
図8】ボンディング処理の流れを説明するフローチャートである。
図9】他のボンディング処理の流れを説明するフローチャートである。
図10】他のボンディング装置の構成を示す図である。
図11】他のボトムカメラ周辺の構成を示す図である。
図12】他のボトムカメラの構成を示す図である。
図13】他のボトムカメラ周辺の構成を示す図である。
図14】他のボトムカメラに用いられる光学部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態であるボンディング装置10について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態であるボンディング装置10の構成を示す図である。このボンディング装置10は、電子部品である半導体チップ100(ダイ)を基板104の装着部に位置合わせをしてボンディングするダイボンディング装置である。
【0018】
ボンディング装置10は、チップ供給部12、チップを載置する中間ステージ14、基板104を支持するボンディングステージ部16、ボンディングヘッド18、当該ボンディングヘッド18にZ軸駆動機構23を介して取り付けられたコレット22および第一カメラとしてのトップカメラ24、第二カメラとしてのボトムカメラ28、ボトムカメラ28近傍に設置されたリファレンス部材30、ボンディングヘッド18を移動させるXYテーブル26、および、ボンディング装置10全体の駆動を制御する制御部40を備えている。
【0019】
チップ供給部12には、碁盤目状にダイシングされ細かく切断された半導体チップ100が裏面のフィルムに貼り付いた状態のウェーハ102がステージ20上に載置されている。この半導体チップ100は、図示しない移送ヘッドにより、中間ステージ14に移送され、載置される。
【0020】
ボンディングステージ部16は、基板104の装着部に半導体チップ100をボンディングするステージである。このボンディングステージ部16には、基板104を水平方向に移動させる移動機構17や、当該基板104を加熱するヒータ(図示せず)等が設けられており、これらは、制御部40により駆動制御されている。
【0021】
ボンディングヘッド18には、コレット22およびトップカメラ24が、規定のオフセット距離分だけ離れて取り付けられている。コレット22は、中間ステージ14に載置された半導体チップ100を、吸着保持してボンディングステージ部16まで搬送し、ボンディングステージ部16に設けられた基板104にボンディングするボンディングツールである。コレット22は、直方体形状または円錐台形状で、その中心軸は、中間ステージ14やボンディングステージ部16が設置された作業面に対して垂直な鉛直方向に配置されている。コレット22は、ボンディングヘッド18の移動により、少なくとも中間ステージ14の真上からボンディングステージ部16の真上までは移動できるようになっている。また、このコレット22は、上下動を司るZ軸駆動機構23及び回転動を司るθ軸駆動機構(図示せず)を介してボンディングヘッド18に取り付けられており、ボンディングヘッド18に対して、Z軸への直線移動およびZ軸回りの回動が可能となっている。
【0022】
トップカメラ24は、ボンディングステージ部16に支持された基板104の装着部の位置を測定するためのカメラである。トップカメラ24は、鉛直方向下向きの光軸を有しており、基板104等が載置される作業面側を撮像できる。このトップカメラ24は、後に詳説するように、オフセット距離の測定にも用いられる。コレット22およびトップカメラ24が取り付けられたボンディングヘッド18は、XYテーブル26に取り付けられており、XY方向に移動可能となっている。
【0023】
ボトムカメラ28は、コレット22の移動経路の真下、すなわち、中間ステージ14とボンディングステージ部16との間に固定設置されている。このボトムカメラ28は、鉛直上向きの光軸を有している。換言すれば、ボトムカメラ28は、コレット22およびトップカメラ24と対向して配置されており、コレット22の先端面(底面)を撮像できる。
【0024】
ボトムカメラ28の近傍には、リファレンス部材30が固定設置されている。リファレンス部材30は、後に詳説するように、コレット22およびトップカメラ24のオフセット距離を測定する際に基準となる部材で、表裏両面の同一位置に同形状のリファレンスマーク32を設けたものである。リファレンス部材30は、当該リファレンス部材30がボトムカメラ28によるコレット22の撮像を阻害せず、また、リファレンスマーク32がボトムカメラ28の視野内に位置するような位置に設置されている。
【0025】
より具体的には、リファレンス部材30は、図2に示すように、そのリファレンスマーク32がボトムカメラ28の被写界深度の下側端部(ボトムカメラ28側端部)に位置するように設置される。かかる位置に設置するのは、コレット22との干渉を防止するためである。すなわち、本実施形態では、コレット22に対する半導体チップ100の位置測定およびオフセット距離測定のために、ボトムカメラ28でコレット22を撮影する。このとき、コレット22は、ボトムカメラ28の被写界深度の中央高さ付近まで下降する。この下降するコレット22との干渉を避けつつも、ボトムカメラ28によるリファレンスマーク32の認識を可能にするために、本実施形態では、リファレンスマーク32を、ボトムカメラ28の被写界深度の下側端部に位置させている。ここで、一般に、ボトムカメラ28は、低倍率であり、被写界深度が広いため、深度内におけるコレット22とリファレンス部材30との干渉を防止できる。また、リファレンスマーク32を被写界深度から多少外れたところに設置した場合であっても、フォーカスがあっていないボケた画像で基準となるリファレンスマーク32の画像を登録しておけば、後述するオフセット距離の測定精度の劣化は抑制できる。
【0026】
リファレンスマーク32の形状は、カメラ視野内での位置および姿勢をカメラで認識できるのであれば、特に限定されない。したがって、リファレンスマーク32は、図3(a)に示すような矩形ブロックで構成される矩形状マークでも良く、図3(b)に示すように矩形ブロック内に形成された十文字状の貫通孔で構成される十文字状マークでも良い。また、ガラスにクロムメッキ等で十文字状のパターンを付けたマークであっても良い。さらに、ボトムカメラのレンズ自体にクロムメッキ等で十文字状のパターンを付けたマークであっても良い。なお図3において、符号54は、ボトムカメラ28でコレット22を撮像した際に得られる画像(以下「第二画像54」という)の模式図である。
【0027】
また、良好なボンディング処理のためには、リファレンス部材30がボトムカメラ28によるコレット22の認識を阻害せず、かつ、リファレンスマーク32がボトムカメラ28の視野内に位置する必要がある。そのため、リファレンスマーク32は、図3に示すようにボトムカメラ28の視野の端部近傍に位置することが望ましい。
【0028】
こうしたボンディング装置10では、中間ステージ14に載置された半導体チップ100をコレット22で吸引保持し、基板104の装着部にボンディングする。このとき、装着の位置精度を担保するために、ボンディングに先だって、コレット22に吸引保持された半導体チップ100のコレット22に対する位置をボトムカメラ28で、また、基板104上の装着部の位置をトップカメラ24で、それぞれ認識する。そして、それぞれのカメラ24,28で認識した位置に基づいて、コレット22や基板104を移動させて位置合わせしたうえで、半導体チップ100を基板104の装着部にボンディングする。
【0029】
ここで、従来、こうしたコレット22と基板104との位置合わせは、コレット22とトップカメラ24とのオフセット距離が、常に一定であるとの前提で行われていた。しかし、実際には、オフセット距離は、温度変化や経年変化により微妙に変化する。そして、オフセット距離が予め規定されたオフセット基準距離Dから変化すると、当該変化量分の誤差が生じることになり、ボンディングの位置精度悪化を招いていた。
【0030】
そこで、一部では、オフセット測定のために専用のカメラを設けたり、複雑な工程を設けたりして、オフセット距離を測定することが提案されている。しかし、こうした従来の技術では、専用のカメラ追加に伴うコスト増加や、複雑で時間のかかる工程追加に伴う処理時間の長期化等の問題があった。
【0031】
そこで、本実施形態では、従来のボンディング装置10でも搭載されていたトップカメラ24およびボトムカメラ28で得られる画像に基づいてオフセット距離の測定を行う。また、こうしたオフセット距離測定を通常のボンディング工程と並行して行うことで処理時間の長期化防止も図っている。このオフセット距離測定のフロー説明の前に、本実施形態におけるオフセット距離測定の原理について図4図5等を参照して簡単に説明する。
【0032】
まず、オフセット距離を測定するために、制御部40は、予め、オフセット基準距離Dと、第一基準位置と、第二基準位置とを記憶している。オフセット基準距離Dは、コレット22とトップカメラ24との設計上または現在のオフセット距離である。本来であれば、オフセット距離は、この基準距離Dとなるべきであるが、実際は、温度変化や経年変化により若干の誤差Δoが生じる。
【0033】
第一基準位置は、図4(a)に示すように、トップカメラ24をボトムカメラ28の真上に位置させた状態、すなわち、トップカメラ24の光軸とボトムカメラ28の光軸が一致する状態で、トップカメラ24により得られる画像内におけるリファレンスマーク32の位置である。なお、以下では、このトップカメラ24でボトムカメラ28側を撮像した際に得られる画像を第一画像52と呼ぶ。この第一画像52は、トップカメラ24の照明を用いて反射型の照明(同軸照明等)方式で撮像してもよいし、ボトムカメラ28の同軸照明を用いてバックライト方式で撮像してもよい。
【0034】
第二基準位置は、図4(b)に示すように、コレット22をボトムカメラ28の真上に位置させた状態、すなわち、コレット22の中心軸とボトムカメラ28の光軸が一致する状態で、ボトムカメラ28により得られる第二画像54内におけるコレット22のリファレンスマーク32に対する位置である。第二画像54は、ボトムカメラ28の照明を用いて反射型の照明(同軸照明等)方式で撮像してもよい。
【0035】
次に、図5に示すように、コレット22とトップカメラ24のオフセット距離がD+Δoの場合を考える。この場合において、図5(a)に示すように、トップカメラ24をボトムカメラ28の略真上に移動させ、第一画像52を取得する。このとき、トップカメラ24の光軸とボトムカメラ28の光軸との間にズレ量Δaがある場合、第一画像52内におけるリファレンスマーク32は、第一基準位置からΔaだけズレることになる。この第一画像52内でのリファレンスマーク32のズレ量Δaは、第一画像52を解析することで取得できる。
【0036】
次に、この状態から、図5(b)に示すように、トップカメラ24およびコレット22を、オフセット基準距離Dだけ移動させたとする。このとき、トップカメラ24およびコレット22のオフセット距離が、オフセット基準距離Dであれば(すなわち誤差Δoが無ければ)、第二画像54内におけるコレット22のリファレンスマーク32に対する位置も、第二基準位置からみてΔaだけズレ、第二画像54内において、コレット22は、破線の矩形22_1のように見えるはずである。しかし、オフセット距離に誤差量Δoが生じている場合、第二画像54内におけるコレット22のリファレンスマーク32に対する位置は、第二基準位置からみてΔb=Δo−Δaだけズレることになる。このコレット22のズレ量Δbは、第二画像54を解析することで取得できる。そして、第一画像52および第二画像54から得られるΔaおよびΔbを加算することでオフセット距離の誤差量Δoが得られる(Δo=Δa+Δb)。
【0037】
なお、図5に例示した例では、第一画像52内でのリファレンスマーク32のズレ量Δaを解消しない状態のままボンディングヘッド18を、オフセット基準距離Dだけ移動させているため、オフセット距離の誤差量Δoは、Δo=Δa+Δbとなる。しかし、図6(b)に示すように、オフセット基準距離D分の移動に先立って、第一画像52内でのリファレンスマーク32のズレ量Δaがゼロになるように、すなわち、第一画像52内におけるリファレンスマーク32が、第一基準位置に位置するように、ボンディングヘッド18を移動させた後、ボンディングヘッド18をオフセット基準距離Dだけ移動させてもよい。この場合、第二画像54内におけるコレット22のリファレンスマーク32に対する位置ズレ量Δbが、そのまま、誤差量Δoとなる。
【0038】
また、図7に示すように、第一画像52取得後のボンディングヘッド18の移動量をオフセット基準距離Dとするのではなく、第一画像52内におけるリファレンスマーク32のズレ量Δaを考慮した距離、すなわち、D−Δaとしてもよい。この場合も、距離D−Δaだけ移動した後に、得られる第二画像54内におけるコレット22のリファレンスマーク32に対する位置ズレ量Δbが、そのまま、誤差量Δoとなる。
【0039】
ここで、これまでの説明で明らかな通り、本実施形態では、オフセット距離測定にあたって、必ず、ボトムカメラ28でコレット22を撮像し、第二画像54を得ている。本実施形態では、この第二画像54の取得を、コレット22による半導体チップ100のピックアップ後、かつ、半導体チップ100の基板104へのボンディング前、すなわち、コレット22が半導体チップ100を吸引保持している間に行う。そして、得られた第二画像54に基づいて、オフセット距離だけでなく、コレット22に対する半導体チップ100の位置も測定する。換言すれば、本実施形態では、一度の撮像処理で、オフセット距離の測定と半導体チップ100の位置測定を同時に行う。これにより、オフセット距離測定のために追加される特別な工程を減らすことができ、処理時間の長期化を防止できる。
【0040】
次に、このボンディング装置10によるボンディングの流れについて図8を参照して説明する。図8は、本実施形態のボンディング装置10によるボンディングの流れを示すフローチャートである。図8は、図6で説明した原理を利用してオフセット距離を取得する場合のボンディング処理の流れである。
【0041】
半導体チップ100を基板104上にボンディングする際には、まず、制御部40は、ボンディングヘッド18を移動させて、コレット22を中間ステージ14の真上に位置させる(S10)。その状態で、コレット22を下降させ、当該コレット22の先端で半導体チップ100を吸引保持し、ピックアップする(S12)。そして、半導体チップ100を吸引保持できれば、干渉防止のために、コレット22を規定の高さまで上昇させる。
【0042】
次に、制御部40は、ボンディングヘッド18を移動させてトップカメラ24をボトムカメラ28の真上、すなわち、リファレンス部材30の上に位置させる(S14)。そして、この状態で、トップカメラ24でボトムカメラ28側を撮像し、第一画像52を取得する(S16)。制御部40は、この第一画像52に基づいて、第一画像52内におけるリファレンスマーク32のズレ量Δaを演算する。そして、この得られたΔaに基づいて、第一画像52内におけるリファレンスマーク32が、第一基準位置に位置するように、すなわち、図7(b)の状態になるように、ボンディングヘッド18を移動させる(S18)。
【0043】
第一画像52内におけるリファレンスマーク32のズレ量Δaがゼロになれば、続いて、制御部40は、ボンディングヘッド18を規定のオフセット基準距離Dだけ移動させる(S20)。この移動により、コレット22が、ボトムカメラ28のほぼ真上に位置することになる。この状態になれば、ボトムカメラ28によりコレット22を撮像し、第二画像54を取得する(S22)。なお、この撮像の際には、コレット22を、ボトムカメラ28の被写界深度の略中央高さまで下降させる。制御部40は、この第二画像54に基づいて、オフセット距離の誤差量Δoおよびコレット22に対する半導体チップ100の位置ズレ量等を算出する(S24)。この場合、オフセット距離の誤差量Δoは、図7を参照して説明した通り、得られた第二画像54内におけるコレット22のリファレンスマーク32に対する位置ズレ量Δbとなる(Δo=Δb)。また、制御部40は、従来技術と同様に、得られた第二画像54に基づいて、コレット22に対する半導体チップ100の位置ズレ量の演算や、半導体チップ100の良否判断等も行う。画像解析の結果、半導体チップ100にクラック等の欠陥が生じていると判断できた場合には、当該半導体チップ100のボンディング処理を中止する。半導体チップ100に欠陥が無い場合、制御部40は、このとき得られたオフセット距離の誤差量Δoおよび半導体チップ100の位置ズレ量等を記憶しておく。
【0044】
続いて、制御部40は、トップカメラ24を基板104の装着部上に移動させる(S26)。そして、トップカメラ24で得られた画像に基づいて、装着部の正確な位置を算出する。続いて、制御部40は、ボンディングヘッド18を移動させて、コレット22を装着部の真上まで移動させる(S28)。この移動制御に際しては、ステップS24で得られたオフセット距離の誤差量Δoおよび半導体チップ100の位置ズレ量を考慮し、コレット22が装着部の真上に位置するように補正する。そして最終的に、コレット22を基板104近傍まで下降させて、半導体チップ100を基板104の装着部にボンディングする(S30)。一つの半導体チップ100のボンディングが完了すれば、ステップS10に戻り、次の半導体チップ100のボンディングを行う。なお、次のボンディング処理では、測定により得られた真のオフセット距離、すなわち、規定のオフセット距離Dに、誤差量Δoを加算したD+Δoを、新たなオフセット距離(D=D+Δo)としてフィードバックさせることが望ましい。
【0045】
以上の説明から明らかな通り、本実施形態では、ボンディング装置10に従来から設けられているトップカメラ24およびボトムカメラ28で撮像された画像に基づいてオフセット距離の誤差量Δoを算出している。したがって、オフセット測定のために専用のカメラを設ける必要がなく、ボンディング装置10のコストアップを効果的に防止できる。また、本実施形態では、コレット22に対する半導体チップ100の位置ズレ等の演算のために必須となるボトムカメラ28によるコレット22の撮像工程が、そのまま、オフセット距離の誤差量Δoの演算のために必須となるボトムカメラ28によるコレット22の撮像工程となっている。換言すれば、もともと必須の工程を利用してオフセット距離の誤差量Δoの測定を行っているため、処理時間の長期化も効果的に防止できる。
【0046】
次に、他のボンディング処理の流れについて図9を参照して説明する。図9は、図7で説明した原理を利用してオフセット距離を取得する場合のボンディング処理の流れを示すフローチャートである。
【0047】
このボンディング処理では、トップカメラ24で第一画像52を取得(S16)した後、トップカメラ24を第一基準位置に位置させる微調整工程(S18)はなく、第一画像52内におけるリファレンスマーク32のズレ量Δaを演算(S32)すれば、即座に、ボンディングヘッドをD−Δaだけ移動させている(S34)。そして、その後得られる第二画像54内におけるコレット22のリファレンスマーク32に対する位置ズレ量Δbを、オフセットの誤差量Δoとして算出している。
【0048】
かかる構成とすることにより、トップカメラの位置を微調整する工程(S18)を省略でき、処理時間をより短縮できる。特に、トップカメラ24の位置を微調整する工程が不要なこの構成によれば、コレット22による半導体チップ100のピックアップ(S12)と、トップカメラ24による第一画像52の取得(S16)とを並行して行うことも可能となる。すなわち、第一画像52を取得する際には、当然、ボンディングヘッド18は静止していなければならない。このように、第一画像52取得のためだけに、ボンディングヘッド18を静止させることは、処理時間の長期化を招く。一方、半導体をピックアップさせる際には、ボンディングヘッド18は、必ず静止させなければならない。このボンディングヘッド18を必ず静止させるピックアップ期間に、トップカメラ24による第一画像52の取得を行えば無駄な処理時間がかかることはなく、処理時間の長期化を効果的に防止できる。そこで、コレット22を中間ステージ14の真上に位置させた際、トップカメラ24の真下にボトムカメラ28が位置するようにトップカメラ24およびボトムカメラ28の位置を設定し、半導体チップ100のピックアップと第一画像52の取得を並行して行ってもよい。かかる構成とすれば、ボンディングヘッド18は、従来のボンディング処理と同様の動きをするだけであり、オフセット測定のために専用の処理時間は不要となる。
【0049】
なお、これまでの説明では、チップ供給部12から供給される半導体チップ100を一時的に中間ステージ14に載置する中間ステージ14方式のボンディング装置10のみを例に挙げたが、本実施形態の技術は、ウェーハ102からピックアップした半導体チップ100を直接基板104にボンディングするダイレクトピックアップ方式のボンディング装置10に適用してもよい。また、これまでの説明では、ダイボンディング装置を例示しているが、本実施形態の技術は、チップ状の部品を取り扱うボンディング装置であれば、他のボンディング装置、例えば、フリップチップボンディング装置に適用してもよい。また、半導体チップだけでなくMEMSデバイス、バイオデバイス、半導体パッケージ等のある個片を別の物に配設する同様のプロセスにおいても適用することができる。
【0050】
図10は、本実施形態の技術を適用したダイレクトピックアップ方式のダイボンディング装置10の概略構成図である。このダイボンディング装置10は、図1のボンディング装置10と異なり、中間ステージ14が省略されている。ウェーハ102は、ダイシングテープ等の設置されており、このダイシングテープの裏面には、突き上げユニット60が設けられている。コレット22は、この突き上げユニット60によって上方に突き上げられた半導体チップ100を吸引保持し、基板104上へ搬送する。このウェーハ102から基板104への移動の途中に、ボトムカメラ28およびリファレンス部材30を設けておくようにしてもよい。
【0051】
また、これまでの説明では、第一画像、第二画像を取得するために、コレット22およびトップカメラ24をそれぞれ、ボトムカメラ28の真上で一時停止させる例を説明した。しかし、トップカメラ24およびボトムカメラ28の照明をストロボ発光させることで、コレット22およびトップカメラ24を静止させることなく、第一画像、第二画像を取得するようにしてもよい。
【0052】
例えば、トップカメラ24が、ボトムカメラ28の真上を通過するタイミング(すなわち撮像対象物であるリファレンス部材30がトップカメラ24の視野内を通過する撮像タイミング)で、トップカメラ24に内蔵された照明をストロボ発光させるとともに、トップカメラ24で撮像して、第一画像を取得する。また、コレット22が、ボトムカメラ28の真上を通過するタイミング(すなわち撮像対象物であるコレット22がボトムカメラ28の視野内を通過する撮像タイミング)で、ボトムカメラ28に内蔵された照明をストロボ発光させるとともに、ボトムカメラ28で撮像して、第二画像を取得する。このとき、ストロボ発光時間t1は、1μs以下とすることが望ましく、また、こうした短時間での発光を行うために、カメラ24,28の照明として、LED照明を用いることが望ましい。さらに、カメラ24,28の露光時間t2を、ストロボ発光時間t1よりも長くしておけば、ストロボ発光されている時間t1の間だけ、実質的な露光されるようになる。換言すれば、ストロボ発光のタイミングさえ調整することで、第一画像および第二画像の取得タイミングを調整できる。
【0053】
また、第一画像及び第二画像を取得する際にトップカメラ24及びボトムカメラ28に内蔵された各照明をストロボ発光させるトリガとして、制御部40は、XYテーブルに取り付けられたエンコーダからボンディングヘッド18のコレット22の位置を検出することにより、コレット22及びトップカメラ24がボトムカメラ28の真上を各々通過するタイミングを取得している。これにより、装置の通常のボンディングシーケンスおいてタクトタイムに影響を与えること無く、コレット22とトップカメラ24とのオフセット量の変化を取得し補正することができる。
【0054】
ここで、トップカメラ24およびコレット22の移動速度をv、トップカメラ24およびボトムカメラ28の倍率をβとした場合、カメラ24,28の撮像素子における画像のぶれ量Δaは、Δa=β×v×t1となる。ぶれ量Δaが1画素未満となるように、移動速度vやストロボ発光時間t1を調整すれば、コレット22およびトップカメラ24を静止させた場合と同等の画像が得られる。また、例え、ぶれ量Δaが1画素以上であったとしても、各種パラメータ(β,v,t1)の値が既知であれば、そのぶれ量Δaの平均値をとることによって、そのぶれを補正し、真値を求めることは容易に可能になる。その結果、コレット22およびトップカメラ24を停止させることなく、第一画像および第二画像を取得することができるため、装置の処理時間をより短縮させることができる。
【0055】
また、これまでの説明では、一つの半導体チップ100のボンディング処理の度にオフセット測定を行っている例を挙げたが、オフセット測定は、毎回行わなくてもよく、特定のタイミングでのみ行ってもよい。例えば、オフセット測定は、規定の時間が経過した際や、規定の個数分のチップのボンディングが終了した際、ボンディング装置の起動の際、ウェーハ102の交換の際にのみ行うようにしてもよい。
【0056】
また、これまでの説明では、コレット22よりも半導体チップ100のほうが小さい場合のみを例示したが、半導体チップ100がコレット22の底面よりも大きく、コレット22の底面全体が半導体チップ100で覆われる場合もある。かかる場合には、コレット22に対する半導体チップ100の位置ズレ量や、リファレンスマーク32に対するコレット22の位置ズレ量Δbを検出することができない。そこで、こうした問題を避けるために、ボトムカメラ28を赤外線カメラ(特に近赤外線カメラ)とし、赤外光源でコレット22を認識するようにしてもよい。近赤外線は、半導体チップ100の素材であるシリコンをある程度、透過するため、赤外線カメラを用いることで、半導体チップ100で覆われたコレット22の形状も認識できる。また、赤外線カメラを用いることで、半導体チップ100の表面のクラックだけでなく、チップ内部のクラックも検出することが可能となる。
【0057】
また、本実施形態では、コレット22とリファレンス部材30との干渉防止のために、リファレンスマーク32をボトムカメラ28の被写界深度の端部に配置している。しかし、カメラによっては、十分な被写界深度が得られず、リファレンス部材30とコレット22との間の距離を十分に確保できない場合もある。かかる問題を避けるために、ボトムカメラ28を、二つのワーキングディスタンス(焦点位置)を有するダブルフォーカス構成にしてもよい。ダブルフォーカス構成とするためには、例えば、ボトムカメラ28の撮像素子と被写体との間に、ワーキングディスタンス(焦点位置)を変化させる光学部材を部分的に配置または除去すればよい。
【0058】
例えば、図11に示すように、ボトムカメラ28のカバーガラス55の一部に孔または切欠を設け、リファレンスマーク32に対向する部分のカバーガラス55を除去してもよい。ここで、ワーキングディスタンス(焦点位置)は、カバーガラス55を透過した場合のほうが、カバーガラス55を透過しない場合に比べて長くなる。そのため、図11のような構成とした場合、ボトムカメラ28の視野のうち、カバーガラス55が設けられた大部分は、カバーガラス55が設けられていない部分(リファレンスマーク32の対向部分)に比べて焦点位置を、ボトムカメラ28から離すことができる。具体的には、カバーガラス55の厚さをd、屈折率nとした場合、ワーキングディスタンス(焦点位置)の延びる量aは、a≒d(1−1/n)となる。したがって、例えば、カバーガラス55の厚みd=1.5mm、屈折率n=1.52であれば、ワーキングディスタンス(焦点位置)は、a≒0.5mm延びる。つまり、カバーガラス55の影響を受けないリファレンスマーク32と、カバーガラス55の影響を受けるコレット22と、をそれぞれワーキングディスタンス(焦点位置)に設置したとしても、両者は距離aだけ離れることになる。その結果、両者の干渉を防止しつつも、リファレンスマーク32およびコレット22の両者にフォーカスを合わせることが可能となる。
【0059】
また、別の形態として、図12に示すように、撮像素子56の前面を部分的に覆うカバーガラス55を設けてもよい。この場合、レンズの後側主平面から撮像素子(像面)までの距離Sは、b≒d(1−1/n)だけ短くなったことに等しい。この場合、物体面の位置の変化量aは、倍率をβとすると、a≒b/βとなる。したがって、例えば、倍率β=0.7、カバーガラスの厚みd=1mm、屈折率n=1.52とすれば、a≒0.69となる。よって、この場合でも、カバーガラス55の影響を受けないリファレンスマーク32と、カバーガラス55の影響を受けるコレット22と、をそれぞれワーキングディスタンス(焦点位置)に設置したとしても、両者は距離aだけ離すことができ、両者の干渉を防止することができる。
【0060】
また、ワーキングディスタンス(焦点位置)を変化させるのではなく、リファレンスマーク32までの光路を屈曲させる光学部材をリファレンス部材30として配置してもよい。図13は、この場合におけるボトムカメラ28の構成図であり、図14は、当該ボトムカメラ28に配置される光学部材58の斜視図である。この例の光学部材58は、ボトムカメラ28の光軸に対して45°の反射面を有したプリズムまたはミラー58aと、内部にリファレンスマーク32が形成されたガラスブロック58bと、を有している。ガラスブロック58bの内部には、リファレンスマーク32として機能する点状マークが、鉛直方向に等間隔で複数並んでいる。この点状マークは、例えば、フェムト秒レーザなどの超短パルスレーザを用いることでガラスブロック58b内に形成できる。この光学部材58を、ボトムカメラ28の視野端部に配置すると、撮像素子からリファレンスマーク32までの光路が屈曲する。そして、これにより、リファレンス部材30を、本来のワーキングディスタンス(焦点位置)からずらして配置することが可能となり、コレット22とリファレンス部材30との干渉を防止することができる。また、図14に示すように、リファレンスマーク32である点状マークを鉛直方向に並べて配置すれば、トップカメラ24のフォーカス位置が変化しても、いずれかの点状マークにフォーカスを合わせることができる。
【0061】
また、干渉を防止するためには、リファレンス部材30を稼働式としてもよい。この場合は、例えば、リファレンス部材30を予め、退避位置に退避させた状態で、コレット22をボトムカメラ28のワーキングディスタンス(焦点位置)まで下降させて画像撮像を行い、その後、コレット22を上昇させた状態でリファレンス部材30を退避前の基準位置まで移動させて画像撮像を行う。そして、得られた二つの画像を合成し、リファレンス部材30のリファレンスマーク32に対するコレット22の位置を特定するようにしてもよい。
【0062】
いずれにしても、本実施形態によれば、新規なカメラを追加することなく、また、別途複雑で時間のかかる工程を追加することなく、コレット22とトップカメラ24とのオフセット量の変化を取得できる。
【符号の説明】
【0063】
10 ボンディング装置、12 チップ供給部、14 中間ステージ、16 ボンディングステージ部、17 移動機構、18 ボンディングヘッド、20 ステージ、22 コレット、23 Z軸駆動機構、24 トップカメラ、26 XYテーブル、28 ボトムカメラ、30 リファレンス部材、32 リファレンスマーク、40 制御部、52 第一画像、54 第二画像、55 カバーガラス、56 撮像素子、58 光学部材、60 突き上げユニット、100 半導体チップ、102 ウェーハ、104 基板。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14