特許第6286736号(P6286736)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6286736バックコンタクトタイプ太陽電池モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286736
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】バックコンタクトタイプ太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/05 20140101AFI20180226BHJP
   H01L 31/0747 20120101ALI20180226BHJP
   H01L 31/048 20140101ALI20180226BHJP
   H01L 31/068 20120101ALI20180226BHJP
【FI】
   H01L31/04 570
   H01L31/06 455
   H01L31/04 560
   H01L31/06 300
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-507731(P2014-507731)
(86)(22)【出願日】2013年3月18日
(86)【国際出願番号】JP2013057645
(87)【国際公開番号】WO2013146414
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2016年2月19日
(31)【優先権主張番号】特願2012-80915(P2012-80915)
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-258021(P2012-258021)
(32)【優先日】2012年11月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 実
(72)【発明者】
【氏名】松政 健司
(72)【発明者】
【氏名】工藤 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 真由美
(72)【発明者】
【氏名】明野 康剛
(72)【発明者】
【氏名】西澤 智
(72)【発明者】
【氏名】大久保 透
【審査官】 佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−061518(JP,A)
【文献】 特開平05−082820(JP,A)
【文献】 特開2012−059763(JP,A)
【文献】 特開2012−049221(JP,A)
【文献】 特開2009−021288(JP,A)
【文献】 特開2002−026362(JP,A)
【文献】 特開2002−016273(JP,A)
【文献】 特開2000−243996(JP,A)
【文献】 特開2008−130642(JP,A)
【文献】 特開2011−129850(JP,A)
【文献】 特表2011−521478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00−31/078、31/18−31/20、
51/42−51/48
H02S 10/00−10/40、30/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックシートと、
前記バックシート上に積層され、配線パターンを表面に有する回路シートと、
前記回路シート上に積層され、絶縁フィルムと前記絶縁フィルムの両面に設けられた一対の封止材層とで構成され、貫通孔を有する絶縁層付封止材と、
前記絶縁層付封止材の上に形成され、裏面にセル電極を有するバックコンタクトセルと、
前記絶縁層付封止材及び前記バックコンタクトセルを覆うように積層される透明封止材と、
前記透明封止材の上に積層される透明基材と、
前記貫通孔に設けられ、前記セル電極と前記配線パターンとを電気的及び物理的に繋ぐ導電性ペーストと、
を備え
前記絶縁フィルムが、ポリイミドフィルムであるか、又は、少なくとも封止材樹脂と熱融着可能なポリプロピレン(ホモ,ランダム,ブロック)、若しくはポリエチレンを含んでいることを特徴とする、バックコンタクトタイプ太陽電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールであって、
前記絶縁フィルムが、白色フィルム、黒色フィルム、または着色フィルムであることを特徴とするバックコンタクトタイプ太陽電池モジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールであって、
前記配線パターンがアルミニウム箔または銅箔であることを特徴とするバックコンタクトタイプ太陽電池モジュール。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載のバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールであって、
前記透明基材がガラス板であることを特徴とするバックコンタクトタイプ太陽電池モジュール。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に記載のバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールであって、
前記バックシートが白色であることを特徴とするバックコンタクトタイプ太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックコンタクトタイプの太陽電池セルを用いた太陽電池モジュール(バックコンタクトタイプ太陽電池モジュール)に関し、特に、バックコンタクトタイプ太陽電池モジュールに使用する材料に関する。
本願は、2012年3月30日に、日本に出願された特願2012−080915号、及び2012年11月26日に、日本に出願された特願2012−258021に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、太陽光のエネルギーを直接電気に換える太陽光発電システムの心臓部を構成し、半導体で形成される。
また、太陽電池の使用においては、太陽電池素子(セル)単体をそのままの状態で使用するのではなく、太陽電池素子を長期間に亘って保護するために、一般的に直列あるいは並列に配線された数枚〜数十枚の太陽電池素子が種々のパッケージにパッケージングされたユニットを使用する。
【0003】
このパッケージに組み込まれたユニットを太陽電池モジュールと呼ぶ。一般的に太陽電池モジュールにおける太陽光が当たる面は、前面ガラスで覆われ、熱可塑性プラスチックで形成される充填材で間隙が埋められている。
そして、太陽電池モジュールの裏面が、耐熱性、耐湿性、耐水性、及び耐候性を有するプラスチック材料などで形成されたシート(バックシート)で保護されている。
太陽電池モジュールは屋外で使用されるため、構成部材及び構成部材の材質及び構造などにおいて、十分な耐熱性、耐候性、耐水性、防湿性、耐風圧性、耐光性、耐降雹性、耐薬品性、防湿性、防汚性、光反射性、及び光拡散性、並びに、その他の諸特性を有することが要求される。
【0004】
太陽電池素子としては、例えば、結晶シリコン太陽電池素子が使用される。太陽電池モジュールは、表面保護シート層、充填材層、光起電力素子としての太陽電池素子、充填材層、および、裏面保護シート層等の順に積層し、真空吸引して加熱圧着するラミネーション法(真空ラミネート)等を利用して製造される。
現在主流の太陽電池素子には、シリコン結晶が用いられている。
従来の太陽電池では、太陽光を受ける受光面にはn型電極が設けられ、裏面にはp型電極が設けられている。
受光面に設けられたn型電極は電流の取り出しのためには必要不可欠である。一方、n型電極の下に設けられた基板には太陽光が入射しない。このため、太陽光が入射しない部分では発電しない。したがって、受光面に設けられた電極の面積が大きい場合、太陽電池の光電変換効率が低下する。なお、このような受光面に設けられた電極による光の損失をシャドウロスという。
【0005】
受光面に電極がなく、p型電極及びn型電極が裏面に形成された太陽電池を裏面電極型太陽電池、または、バックコンタクトセルなどと呼ぶ。このタイプの太陽電池(バックコンタクトタイプ太陽電池)は、電極によるシャドウロスがなく、受光面に入射する太陽光を100%太陽電池に取り込むことができる。このため、原理的に高い光電交換効率を実現できる(特許文献1〜3)。
【0006】
一般的な構造を有するバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールにおける断面図の一例を図3に示した。
図3に示す太陽電池モジュール100では、受光面(表面)から順に前面ガラス8、透明封止材1、バックコンタクトセル9、透明封止材1’、電気絶縁層10、回路シート(ベースフィルム)3、バックシート4が積層されている。また、半田又は銀ペースト6がバックコンタクトセル9の裏面に配置されたセル電極5と回路シート3の表面にパターニングされた金属箔7との間を連結することで、電力を取り出すことができる。
【0007】
太陽電池モジュール100の代表的な製法として、前面ガラス8に順次に、透明封止材1、バックコンタクトセル9、透明封止材1’、電気絶縁層10、回路シート3、およびバックシート4を積層した後、真空吸引して加熱圧着するラミネーション法等の通常の成形法を利用して上記の各層を一体成形することにより太陽電池モジュールを製造する方法がある。
【0008】
上記のように、従来のバックコンタクトセル用の回路シートにはパターニングされた金属箔の上に配置される電気絶縁層(ILD:Inter Layer Dielectrics)が必要である。このILDはソルダーレジストと呼ばれる。しかしながら、ILDの材料が高価であり、ILDはある程度の厚みを要することから、従来のバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールの製造コストは、受光面及び裏面の双方に電極を有する従来の太陽電池モジュールよりも高い。
【0009】
さらに、ILDの形成には、多くの場合、ILDの印刷後に熱架橋またはUV架橋の工程を要する。特に熱架橋の工程は、通常100℃から160℃で10分から60分行われる。
このため、この熱架橋の工程において、時間がかかるために生産効率が低下する、熱架橋のための加熱によって絶縁層以外の素材の熱劣化が促進される若しくはモジュールが反ってしまう、又は、熱収縮により寸法精度が悪くなる等の問題が起きる可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】日本国特開2005−11869号公報
【特許文献2】日本国特開2010−212630号公報
【特許文献3】日本国特開2011−159748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
高い光電効率を有する結晶系太陽電池におけるバックコンタクトタイプ太陽電池モジュール用の回路シートの上面に、一般的にプリント配線板において採用されている塗工印刷方式によって形成される電気絶縁層(ILD)を設けるのではなく、中間層として絶縁フィルムを設けることにより、ILD印刷後に必要な熱架橋の工程を省略し、バックコンタクトタイプ太陽電池モジュールの生産性を向上させること、及びバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールの絶縁性をより高めることが本発明の課題である。
また、これによって、太陽電池モジュールの各構成要素を保護するための諸特性を具備し、汎用の方法で成形及び加工でき、低コストで製造でき、安全性及び耐久性に優れ、特に安定した高い電力変換効率を有する太陽電池モジュールを提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題の解決手段として、本発明のバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールは以下の構成を有する。
また、これ以降の説明において、文言「表面(受光面)」は、太陽電池モジュール使用時に太陽の方向を向く面を意味し、文言「裏面」は、表面(受光面)と反対の方向を向く面を意味する。
【0013】
本発明の一態様に係るバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールは、バックシートと、前記バックシート上に積層され、配線パターンを表面に有する回路シートと、前記回路シート上に積層され、絶縁フィルムと前記絶縁フィルムの両面に設けられた一対の封止材層とで構成され、貫通孔を有する絶縁層付封止材と、前記絶縁層付封止材の上に形成され、裏面にセル電極を有するバックコンタクトセルと、前記絶縁層付封止材及び前記バックコンタクトセルを覆うように積層される透明封止材と、前記透明封止材の上に積層される透明基材と、前記貫通孔に設けられ、前記セル電極と前記配線パターンとを電気的及び物理的に繋ぐ導電性ペーストとを備える。
【0014】
前記絶縁フィルムが白色フィルム、黒色フィルム、または着色フィルムであってもよい。
【0015】
前記絶縁フィルムが、少なくとも封止材樹脂と熱融着可能なポリプロピレン(ホモ,ランダム,ブロック)、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドフィルム、又はポリエチレンを含んでいてもよい。
【0016】
前記配線パターンがアルミニウム箔または銅箔であってもよい。
【0017】
前記透明基材がガラス板であってもよい。
【0018】
前記バックシートが白色であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
上記本発明の一態様に係るバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールによれば、受光面に電極がなく裏面にp型電極及びn型電極が形成されたバックコンタクトタイプの単結晶シリコン型太陽電池セル、バックコンタクトタイプの多結晶シリコン型太陽電池セル、又はバックコンタクトタイプのヘテロ結合結晶(いわゆる三洋電機の「HIT」)シリコン型太陽電池セルを用いて太陽電池モジュールを形成する。このため、隣り合う太陽電池セルの裏面に設けられた電極同士を接続できる。したがって、複数の太陽電池セルを容易に直列接続できる。
【0020】
また、太陽電池セルの形状が角部が切り欠かれた四角形である場合、縦横に並設された4つの太陽電池セルに囲まれた部分に、隙間が形成される。この隙間が緩衝スペースの役割を果たすため、太陽電池セルの熱膨張収縮などによる太陽電池モジュールの疲労破壊を防ぐことができる。
【0021】
また、絶縁フィルムが白色フィルム、黒色フィルム、または着色フィルムである場合、太陽電池モジュールの内部に設けられた回路シートの配線を不可視化出来る。
さらに、異なる色を着色して異なる外観を得るためだけでなく、隣り合う太陽電池セル同士の間隔を通り抜けて太陽電池セルの表面(受光面)に吸収されなかった光が着色フィルムで反射して太陽電池セルの表面(受光面)に吸収されることで、太陽電池モジュールの発電効率が向上するように、着色フィルムとして高反射シート又はプリズムシートを用いることも可能である。
【0022】
また、配線パターンがアルミニウム箔または銅箔である場合、導電性プラスチックフィルム又は導電性ペースト等と対比して、加工が容易である。このため、低コストで太陽電池モジュールを製造できる。
【0023】
また、透明基材がガラス板である場合、ガラス板はフィルム又は板状の透光性樹脂と対比して剛性が高いため、太陽電池モジュールの表面を保護できるとともに太陽電池モジュールの剛性を高めることができる。
また、ガラス板はフィルム又は板状の透光性樹脂と対比して光の透過率が高いため、効率的に太陽光を利用できる。
また、ガラス板はフィルム又は板状の透光性樹脂と対比して熱膨張率が低いため、透明基材の熱膨張及び熱収縮等による太陽電池セル及びインターコネクタの疲労が小さい。
【0024】
また、バックシートが白色である場合、隣接する太陽電池セルの隙間に入射した太陽光が、白色のバックシートで反射し、太陽電池モジュール表面で反射することにより、太陽電池セルに入射できる。この結果、太陽光の損失が抑えられる。すなわち、太陽光を有効に利用できる。したがって、太陽電池モジュールの発電効率を向上できる。
ここで、白色のバックシートの白色部分は、白色フィルムによって形成されてもよいし、白色に塗装されることで形成されてもよいし、フィルムの上面に白色のフィルムを積層することによって形成されてもよいし、又は白色のガラス又は白色の樹脂板によって形成されてもよい。さらに、白色のバックシートと同様の効果を得るために、配線側封止材は、白い顔料を含んでもよい。一方、セル側封止材に白い顔料を入れるとセル前面に着色樹脂がまわり込んで光をさえぎる可能性があるので望ましくない。
【0025】
以上のように、上記本発明の一態様に係るバックコンタクトタイプの太陽電池モジュールによれば、様々な物性に優れ、かつ高い生産性及びコストパフォーマンスを有する、太陽電池モジュールを得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係るバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールの構成の一例を示す断面図である。
図2図1に示すバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールにおける絶縁層付封止材の断面図である。
図3】一般的な構造を有する従来型のバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールにおける断面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態について図を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールの構成の一例を示す断面図である。図2は、図1に示すバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールにおける絶縁層付封止材の断面図である。
【0028】
図1および図2に示すように本発明の一実施形態に係るバックコンタクトタイプ太陽電池モジュール101は、バックシート4と、バックシート4上に積層され、金属箔等の配線パターン7を表面に有する回路シート3と、回路シート3上に積層され、絶縁フィルム2cと絶縁フィルム2cの表面に設けられたセル側封止剤2aと絶縁フィルム2cの裏面に設けられた回路シート側封止材2bとで構成され、貫通孔11を有する絶縁層付封止材2と、絶縁層付封止材2の上に形成され、裏面に設置されているp型電極及びn型電極から電子を取り出すセル電極5を裏面に有するバックコンタクトセル9と、絶縁層付封止材2及びバックコンタクトセル9を覆うように積層される透明封止材1と、透明封止材1の上に積層される前面ガラスのような透明基材8と、貫通孔11に設けられ、セル電極5と配線パターン7とを電気的及び物理的に繋ぐ半田又は銀ペースト等の導電性ペースト6と、で構成される。
【0029】
本発明の一実施形態に係るバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールに用いる透明基材8は、光線透過率が良いこと、長期(約20年)にわたり優れた耐候性を持ち光線透過率の減少が少ないこと、埃などが付着しにくいこと、傷が付きにくいこと、及び水蒸気透過率が極めて少ないこと等の諸機能を有する必要がある。透明基材8の材質としては、ガラスが一般的であるが、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコン樹脂、フッ素系樹脂、またはそれらの樹脂フィルムを構成物として含む複合フィルムなどであってもよい。
【0030】
本発明の一実施態様に係るバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールに用いる透明封止材1は、太陽光線の透過率が高いこと、長期の屋外放置などにより光線透過率が低下するなどのように透明封止材1の物性が変化しないこと、絶縁耐性が高いこと、他の材料を腐食しないこと、及び急激な外気条件の変化などにより樹脂の亀裂、及び界面剥離などが発生しないこと等の諸機能を有する必要がある。透明封止材1の材質は、たとえばポリビニルブチラール(PVB)樹脂、シリコン樹脂、塩化ビニル樹脂、又はポリウレタン樹脂などであることが好ましい。
【0031】
透明封止材1の材質として、具体的にはEMMA、EAA、アイオノマー、又はポリプロピレン等のオレフィンタイプ等の透明タイプ樹脂、とくにエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂を用いることが好ましい。
透明封止材1の厚みは、100μm以上1000μm以下の範囲が好適である。透明封止材1の厚みが100μm未満の場合、太陽電池セルが割れてしまうことがあり、透明封止材1の厚みが1000μmを超える場合、生産コストが高騰する。
【0032】
絶縁層付封止材2は、基本的にセル側の封止材層2a/絶縁フィルム2c/回路シート側の封止材層2bの3層から構成される。
封止材層と絶縁フィルムとの間にはアンカーコート又は接着剤層を設けることも出来る。
また、絶縁層付封止材2の総厚は100μm以上1000μm以下の範囲が好適である。絶縁層付封止材2の総厚が100μm未満の場合、十分な隠蔽姓又は発電効率向上の十分な効果が得られず、また、太陽電池セルが割れてしまう可能性が高い。
絶縁層付封止材2の総厚が1000μmを超える場合、生産コストが高騰する。
【0033】
また、ラミネートを実施する前に、後工程においてセル電極と回路シートの配線パターンとを半田又は銀ペースト等でつなげるために、絶縁層付封止材2におけるセル電極の接点部分に導通のための穴(貫通孔)を開ける必要がある。
セル側の封止材層2aは透明封止材1と強固に密着すること、回路シート側の封止材層2bは回路シート3に用いるベースフィルムと強固に密着することが必要である。セル側の封止材層2a及び回路シート側の封止材層2bは、これらの条件を満たす組み合わせの中から適宜選定される。
【0034】
セル側の封止材層2aの素材として、従来のEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)系封止材、EMMA(エチレン−メチルメタアクリレート共重合体)、EAA(エチレン−アクリレート共重合体)、アイオノマー、ポリプロピレン等のオレフィンタイプ、PVB(ポリビニルブチラール)、又はシリコン樹脂等の透明タイプを使用出来る。
セル側の封止材層2aの厚みは、10μm以上500μm以下の範囲が好適である。セル側の封止材層2aの厚みが10μm未満の場合、セル等の段差を埋められず、充填材としての機能を果たさない。また、セル側の封止材層2aの厚みが500μmを超える場合、生産コストが高騰する。
【0035】
回路シート3側の封止材層2bの素材は、従来のEVA系封止材、EMMA、EAA、アイオノマー、ポリプロピレン等のオレフィンタイプ、PVB(ポリビニルブチラール)、シリコン樹脂等のほか、回路シート3を用いるベースフィルムと強固に密着する熱溶着可能な熱可塑性樹脂又はヒートシール材であってもよい。
回路シート側の封止材層2bの厚みは、1μm以上500μm以下の範囲が好適である。回路シート側の封止材層2bの厚みが1μm未満の場合、配線パターンの段差を埋められない。また、回路シート側の封止材層2bの厚みが500μmを超える場合、生産コストが高騰する。
【0036】
絶縁フィルム2cとして、延伸ポリエステルフィルム、延伸ポリアミドフィルム、フッ素フィルム、又はポリイミドフィルムを用いることが出来る。
また、絶縁フィルム2cとして、封止材樹脂と熱融着可能なポリプロピレン(ホモ,ランダム,ブロック)、又はポリエチレン(高密度,中密度)等で形成される比較的融点の高いオレフィン系フィルムを用いることも可能である。また、そのフィルムは、前述の樹脂を単体または2つ以上含んでもよい。フィルムと封止剤とが熱溶融可能であれば、フィルムにアンカーコート又は接着剤が不要でコストダウンを図ることができる。
また、絶縁フィルム2cとして、太陽電池モジュールの内側に配置された回路シートの配線を不可視化するために白色又は黒色等の着色フィルムを用いることも可能である。また、隣接する太陽電池セルの隙間を通り抜けた光が絶縁フィルム2cで反射して太陽電池電池セルの表面に吸収されることで太陽電池の発電効率が向上するように、絶縁フィルム2cとして、高反射フィルム又はプリズムシートを用いることも可能である。
絶縁フィルム2cの厚みは、3μm以上200μm以下の範囲が好適である。絶縁フィルム2cの厚みが3μm未満の場合十分な絶縁性能が得られない。また、絶縁フィルム2cの厚みが200μmを超える場合、生産コストが高騰する。
絶縁フィルム2cの絶縁性能として、JIS−Z−3197において、1×1010Ω・cm以上の絶縁体積抵抗値が求められる。
【0037】
また、絶縁層付封止材2は、成分とする樹脂の少なくとも1つの融点が120℃以下の低融点であるセル側の封止材層2aと、成分とする樹脂の少なくとも1つの融点が130℃以上の高融点である絶縁フィルム2cと、成分とする樹脂の少なくとも1つの融点が120℃以下の低融点である回路シート側の封止材層2bと、の3層により構成されてもよい。
一般的な真空ラミネートの条件である130℃以上160℃以下の温度で真空ラミネートを実施した場合、低融点であるセル側の封止材層2a及び回路シート側の封止材層2bは各々溶解する。一方、高融点である絶縁フィルム2cは溶解しない。よって、異物が絶縁層付封止材2にめり込んだとしても絶縁フィルム2cの膜厚は保たれ(つまり、絶縁フィルム2cの膜厚が薄くなることはないので)、絶縁層付封止材2絶縁性が確保される。
【0038】
従って、真空ラミネート時に、セル側の封止材層2a及び回路シート側の封止材層2bに異物が存在しても、絶縁層付封止材2の絶縁性の低下又はセル電極5と配線パターン7との短絡不良の発生を低減できる。また、絶縁性確保のための電気絶縁層(ILD)を形成する必要がないため、電気絶縁層(ILD層)を形成した従来技術と比較して、生産コストの高騰を防止できる。
また、絶縁層付封止材2は、押し出しラミネーション方式で形成された積層体であってもよい。
【0039】
金属箔等の配線パターン7を表面に有する回路シート3として、延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム若しくは延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等の延伸ポリエステルフィルム又はポリイミドフィルム等の耐熱フィルムをベースフィルムとして表面に金属箔等で回路パターンが形成されたシートを用いる。
配線パターン7を形成する導電性材料として、加工し易く低コストであるため、金属箔とくに銅箔又はアルミニウム箔等がよく使用されるが、配線パターン7を形成する導電性材料として、導電性プラスチックフィルム又は導電ペースト等も使用出来る。
配線パターン7のパターニングの方式として、金属箔のエッチングによる方法、金属ペーストの印刷による方法、又は金属箔の打ち抜き加工による方法等を用いることが出来る。
【0040】
本発明の一実施態様に係るバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールは裏面保護等の目的でプラスチックフィルム等のバックシート4を備えてもよい。
本発明の一実施態様に係るバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールのバックシート4に使用するプラスチックフィルムの素材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィンフィルム、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド等のフィルム、又はポリフッ化ビニル(PVF)等から適宜選択できる。
【0041】
バックシート4として、これらのプラスチックフィルムを単層で用いても良いが、一般的なバックシートとして、フッ素樹脂/PET/フッ素樹脂の3層から構成されるバックシート、及び耐加水分解PET/PET/アンカーコートの3層から構成されるバックシートが挙げられる。
必要に応じて、要求される品質に応じて、たとえば防湿のためのアルミニウム箔又は蒸着フィルム等がバックシート4に加わってもよい。
なお、バックシート4は、回路シート3と一体として形成されても良いし、回路シートとは別に形成されてもよい。
【0042】
半田又は銀ペースト等の導電性ペースト6は、セル電極5と金属箔等の配線パターン7との間に設けられ、両者を電気的および物理的に繋ぐ。
導電性ペースト6が熱溶融性の導電性金属でなければならないことを除いて、導電性ペースト6について格別の制約はないが、低価格であり且つ使用しやすいため、導電性ペースト6として半田又は銀ペーストを用いることが好ましい。
【0043】
つぎに、本発明の一実施態様に係るバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールの製造方法の一例を図1および図2を参照しながら説明する。
まず、バックシート4としてPVFフィルム(25μm)と、回路シート3用のベースフィルムとしてPETフィルム(250μm)と、配線パターン7を形成する金属箔として電解銅箔(35μm)と、を、ウレタン系接着剤を用いてドライラミネート法で貼り合せる。
さらに電解銅箔の上面にエッチング法によりパターニングを行い、配線パターン7を有する回路付きバックシートを形成する。
【0044】
回路付きバックシートとは別に、透明PETフィルム2c(50μm)の両面に押出しラミネート法によりEVA系封止材を各々75μmで押出して、絶縁層付封止材2を作製する。
次に、絶縁層付封止材2における太陽電池セルの裏面に設けられた電極5と接する部分に穴を開ける。
次に、上記回路付きバックシートに重ねて、さらにバックコンタクトセル9、透明封止材1、及び透明基材8をこの順に配置してモジュールラミネータによりモジュールラミネートを行ない、バックコンタクトタイプ太陽電池モジュールを作製する。
上記回路付きバックシートとバックコンタクトセル9と透明封止材1と透明基材8とを重ね合わせる際には、モジュールラミネートの加熱でこれらが接合するように、太陽電池セルの裏面と回路シート接点部分との間に銀ペーストを塗布する。
【0045】
以上説明したように、本発明の一実施態様に係るバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールは、裏面に設置されているp型電極及びn型電極から電子を取り出すセル電極5を裏面に有するバックコンタクトセル9を備える。
これにより、上記実施態様に係るバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールでは、隣接する太陽電池セルの裏面に設けられた電極同士を接続できるため、インターコネクタを湾曲させる必要が無い。したがって、インターコネクタの断線を防ぐことができる。
一方、従来の太陽電池モジュールでは、隣接する太陽電池セルの間にインターコネクタを湾曲させて配線することにより、隣接する2つの太陽電池セルのうち一方の受光面に設けられた電極と他方の裏面に設けられた電極とを接続する必要がある。このため、太陽電池セルを構成する保護部材又は封止材等の熱膨張収縮によりインターコネクタの湾曲部分が疲労断線することがあった。
また、上記実施態様に係るバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールでは、受光面に電極がないため、受光面面の全面で太陽光を受光することができる。このため、太陽光の損失が少なく効率的に太陽光を利用することができ、太陽電池モジュールの外観も好ましい。
【0046】
また、上記実施態様に係るバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールでは、上述のように太陽電池セルの裏面にp型電極及びn型電極が形成され裏面に設けられた電極同士を接続できるバックコンタクトタイプの太陽電池セルを用いることにより、隣り合うセル同士の間隔を小さく形成できる。このため、太陽電池セルを密に並設できる。したがって、総体的な太陽電池モジュールの発電効率を向上できる。
一方、従来の太陽電池モジュールでは、インターコネクタを湾曲させて隣接する太陽電池セルの間に配線することにより、隣接する2つの太陽電池セルのうち一方の表面に設けられた電極と他方の裏面に設けられた電極とを接続する必要があった。このため、隣り合うセル同士の間隔を大きく形成する必要があった。
【0047】
また、上記実施態様に係るバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールでは、上述のように太陽電池セルの裏面にp型電極及びn型電極が形成され裏面に設けられた電極同士を接続できるバックコンタクトタイプの太陽電池セルを用いることにより、隣接する太陽電池セルの間のインターコネクタの湾曲配線が不要である。このため、太陽電池セルの表面及び裏面に設ける封止材層がインターコネクタを保護及び緩衝する必要が無い。よって、太陽電池セルの封止材層を薄く形成できる。したがって、太陽電池モジュールを薄型化、及び軽量化できる。
【0048】
また、上記実施態様に係るバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールでは、上述のように太陽電池セルの裏面にp型電極及びn型電極が形成され裏面に設けられた電極同士を接続できるバックコンタクトタイプの太陽電池セルを用いることにより、発電に寄与しない部分が少ない最密状態で、複数の太陽電池セルが縦横に並設される。したがって、太陽電池の発電有効面積を最大にできる。
また、並設された太陽電池セル同士の間隔は、絶縁部分として離間させておくとよいが、この離間部は極力小さいほうがよく、発電に寄与しない部分を減らすことができる。
【0049】
また、本発明の一実施態様に係るバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールは、配線パターン7を表面に有する回路シート3と、回路シート3上に積層され、絶縁フィルム2cと絶縁フィルム2cの表面に設けられたセル側封止剤2aと絶縁フィルム2cの裏面に設けられた回路シート側封止材2bとで構成される絶縁層付封止材2と、絶縁層付封止材2の上に形成され、裏面に設置されているp型電極及びn型電極から電子を取り出すセル電極5を裏面に有するバックコンタクトセル9と、を備える。すなわち、本発明の一実施態様に係るバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールでは、バックコンタクトタイプの太陽電池セルの裏面に配置されたセル電極と回路シートの表面に設けられた配線パターンとの間に絶縁フィルムと絶縁フィルムの両面に設けられた一対の封止材層とを有する絶縁層付封止材が設けられている。
これにより、絶縁層付封止材が封止材としての機能と電気絶縁層としての機能との両方を備える。このため、電気絶縁層を別途設ける必要が無い。よって、加熱硬化の工程を要する塗工印刷方式により封止材とは別にILDを設ける場合と比較して、高い絶縁性を備えた太陽電池モジュールをより簡単に設けることが出来る。
【実施例】
【0050】
本発明の一実施態様に係るバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールの具体的な実施例を図1および図2を参照して説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0051】
<実施例1>
まず、実施例1として、バックシート4としてデュポン社PVFフィルム「PV2111」(25μm)と、回路シート3用のベースフィルムとして東レ製一般PETフィルム「S10」(250μm)と、配線パターン7を形成する金属箔として電解銅箔(35μm)と、を、接着剤乾燥後に厚み5g/mの接着層が形成されるように、三井化学製二液硬化型ウレタン系接着剤「A511/A50」を用いてドライラミネート法で貼り合せた。
さらに電解銅箔の上面にエッチング法によりパターニングを行い、配線パターン7を有する回路付きバックシートを形成した。
【0052】
回路付きバックシートとは別に、透明PETフィルム2c帝人製「G2」(50μm)の両面に押出しラミネート法により凸版印刷製EVA系封止材「EF1001」を各々75μmで押出して、絶縁層付封止材2「EVA封止材(75μm)/透明PET(50μm)/EVA封止材(75μm)」を作製した。
【0053】
次に、絶縁層付封止材2における太陽電池セルの裏面に設けられた電極5と接する部分に穴を開ける。
次に、上記回路付きバックシートに重ねて、さらにバックコンタクトセル9、透明EVA系封止材1(400μm)、及び前面ガラス8をこの順に配置してモジュールラミネータによりモジュールラミネートを行ない、バックコンタクトタイプ太陽電池モジュールを作製した。
上記回路付きバックシートとバックコンタクトセル9と透明EVA系封止材1(400μm)と前面ガラス8とを重ね合わせる際には、モジュールラミネートの加熱でこれらが接合するように、太陽電池セルの裏面と回路シート接点部分との間に銀ペーストを塗布する。
モジュールラミネートにおいて、真空引きを145℃において3分行ったのち、加圧プレスを150℃において1分行い、加熱架橋を150℃で15分行った。
【0054】
<実施例2>
実施例2として、絶縁層付封止材2の素材が異なる点を除いて、実施例1と同一構成で同一工法によりバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールを作製した。
絶縁層付封止材として、白PET「帝人デュポンフィルムVW(50μm)」の両面に三井化学アンカーコート剤「タケラックA3210」を、乾燥後塗布量が1g/mとなるようにアンカーコートした後、EMAA樹脂三井デュポンポリケミカル「ニュクレルN0908C」をエクストルーダにより50μmで押出しして絶縁層付封止材2「EMAA(50μm)/アンカーコート(AC)層/白PET(50μm)/アンカーコート(AC)層/EMAA(50μm)」を作製した。
【0055】
<実施例3>
実施例3として、絶縁層付封止材2の素材が異なる点を除いて、実施例1と同一構成で同一工法によりバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールを作製した。
絶縁層付封止材として、黒PET「帝人デュポンフィルムVK(50μm)」の両面に二液硬化型ウレタン系ドライラミネート接着剤三井化学「A515」を乾燥後塗布量が5g/mとなるように塗工してドライラミネート(DL)を行った後、タマポリアイオノマーフィルム「HM52」(50μm)をドライラミネートの上に貼り合せて、絶縁層付封止材2「HM52(50μm)/DL/黒PET(50μm)/DL/HM52(50μm)」を作製した。
【0056】
<実施例4>
実施例4として、絶縁層付封止材2の素材が異なる点を除いて、実施例1と同一構成で同一工法によりバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールを作製した。
絶縁層付封止材の作製においては、「試作白オレフィンフィルム(ランダムPP 50%,ポリエチレン 50%)」の両面に、押出しラミネーション方式により「凸版印刷製EVA系封止材EF1001」を75μmで押出して、絶縁層付封止材2「EVA封止剤(75μm)/白オレフィンフィルム(50μm)/EVA封止剤(75μm)」を作製した。
【0057】
<比較例1>
比較例1として、絶縁層付封止材2に対応する裏面側封止材として表面側封止材である透明封止材1と同じEVA封止材「EF1001(200μm)」を用いた点を除いて、実施例1と同一構成で同一工法によりバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールを作製した。
【0058】
<比較例2>
比較例2として、透明封止材1としてアイオノマー封止材(400μm)を用い、且つ、絶縁層付封止材2に対応する裏面側封止材として白色アイオノマー封止材(200μm)を用いた点を除いて、実施例1と同一構成で同一工法によりバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールを作製した。
【0059】
<評価>
実施例1から4と比較例1及び2で作製したバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールにおける裏面側封止材の構成の差による相違を検証するために、封止材生産性、絶縁性、封止材色ムラ、封止材色変更、製造コスト、及び、積層方法の6項目について、実施例1から4と比較例1及び2の評価を行った。
評価結果を表1に示す。表1の評価結果で「◎」は「きわめて優秀」、「○」は「合格」、「×」は「劣等」、「−」は「評価不能」を示す。

【表1】
【0060】
実施例1で作製したバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールにおける絶縁層付封止材(裏面側封止材)は、透明EVA/透明PET/透明EVAの3層で構成されている。このため、表面(受光面)側の封止材層の樹脂と裏面側封止材層の樹脂とを切り替える必要が無い。よって、封止材の生産性が高い。
絶縁層付封止材(裏面側封止材)がEMAA/白PET/EMAAの3層で構成されている実施例2、絶縁層付封止材(裏面側封止材)がアイオノマー/黒PET/アイオノマーの3層で構成されている実施例3、及び絶縁層封止材(裏面側封止材)がEVA/白オレフィンフィルム(PP,PE,EVA)/EVAの3層で構成されている実施例4、及び封止材の層構成が透明EVA単体となっている比較例1も同様である。
一方、比較例2は封止材の層構成が白着色アイオノマーを含むので、表面(受光面)側の封止材層の樹脂と裏面側の封止材層の樹脂とを切り替える際に、着色加工後の樹脂パージが必要になる。このため、封止材の生産性は低い。
【0061】
また、実施例1から3の場合、絶縁層付封止材(裏面側封止材)に絶縁層としてPETフィルムが含まれ、実施例4の場合、絶縁層付封止材(裏面側封止材)に絶縁層として白オレフィンフィルム(PP,PE,EVA)が含まれる。このため、実施例1から4の場合、いずれも絶縁性が良好である。一方、比較例1及び2の場合、裏面側封止材に絶縁層が含まれていない。このため、たとえば回路シート表面等に別途絶縁層を形成する必要がある。したがって、実施例1から4の場合と対比して絶縁性が劣っている。
【0062】
実施例1及び比較例1の場合、封止材層が透明であるため、封止材の色ムラがない。
実施例2から実施例4の場合、絶縁フィルムが着色フィルムである。このため、絶縁層付封止材(裏面側封止材)における色の濃淡は発生しない。一方、比較例2の場合、着色樹脂を押出し樹脂として用いて裏面側封止材を形成するため、裏面側封止材における樹脂層の薄い部分では色が淡い。よって、裏面側封止材において色の濃淡が目立つ。
【0063】
実施例1から4の場合、セル側封止材及び回路側封止材は透明であるため、絶縁フィルムの色を替えるだけで裏面側封止材の色を簡単に替えることが出来る。一方、比較例1及び2の場合、裏面側封止材の色を替えるために、表面(受光面)側の封止材層の樹脂と裏面側封止材層の樹脂とを切り替える必要がある。このため、実施例1から4と比べて、比較例1及び2は裏面側封止材の色を替えるために多くの間接時間を要する。したがって、実施例1から4と比べて、比較例1及び2は、太陽電池モジュールの生産性が低下する。
【0064】
その他の製造コストに影響する点を比較してみると実施例1、実施例4、及び比較例2の場合、裏面側封止材を形成する樹脂として従来と同じ架橋剤入りのEVAを使用している。このため、押出しに際して通常の押出し機と異なる専用機を使う必要がある。したがって、他の実施例及び比較例と対比して、実施例1、実施例4、及び比較例2は、太陽電池モジュールの製造コストが大きい。
さらに、比較例2の場合、裏面側封止材を形成する樹脂として着色樹脂を用いている。このため、樹脂切り替え時のパージを十分に行う必要がある。したがって、他の実施例及び比較例と対比して、比較例2は、太陽電池モジュールの製造コストがより一層大きくなるおそれがある。
一方、実施例2及び3の場合、裏面側封止材を形成する樹脂として通常の透明な押出し用樹脂を用いている。このため、押出に際して特殊な装置を必要としない。また、絶縁フィルムとして汎用の着色フィルムを用いている。したがって、他の実施例及び比較例と対比して、実施例2及び3は、太陽電池モジュールの製造コストがきわめて低く抑えられるという点でより好ましい。
【0065】
以上の結果より、本発明の実施形態に係るバックコンタクトタイプ太陽電池モジュールによれば、太陽電池モジュールの各構成要素を保護するための諸特性を具備し、汎用の方法で成形及び加工でき、低コストで製造でき、安全性及び耐久性に優れ、特に安定した高い電力変換効率を有する太陽電池モジュールを提供することが出来た。
【産業上の利用可能性】
【0066】
高い光電効率を有する結晶系太陽電池におけるバックコンタクトタイプ太陽電池モジュール用の回路シートの上面に、一般的にプリント配線板において採用されている塗工印刷方式によって形成される絶縁層(ILD)を設けるのではなく、中間層として絶縁フィルムを設けることにより、より高い絶縁性を有する絶縁層の供給と、さらには着色フィルムの使用によって簡単に形成される着色封止材の供給と、これらの絶縁層及び着色封止材を用いた太陽電池モジュールの供給が可能になる。
【符号の説明】
【0067】
100…従来の太陽電池モジュール
101…本発明の太陽電池モジュール
1…透明封止材
1’…透明封止材
2…絶縁層付封止材
2a…セル側封止材
2b…回路シート側封止材
2c…絶縁フィルム
3…回路シート(ベースフィルム)
4…バックシート
5…セル電極
6…半田または銀ペースト
7…金属箔等の配線パターン
8…前面ガラス等の透明基材
9…バックコンタクトセル
10…電気絶縁層
11…貫通孔
図1
図2
図3