(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配列番号33で表されるアミノ酸配列を含むエピトープにおいてヒトCD69に特異的に結合し、アレルギー性炎症を抑制する活性を有し、且つマウスCD69に交差反応性を有する抗体。
配列番号33で表されるアミノ酸配列を含むエピトープにおいてヒトCD69に特異的に結合し、アレルギー性炎症を抑制する活性を有し、且つマウスCD69に交差反応性を有するヒト抗体。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、ヒトCD69に対する特異的結合活性を有し、アレルギー性炎症を抑制する活性を有する抗体を提供する。
【0011】
CD69は公知のII型膜タンパク質であり、そのアミノ酸配列やcDNA配列も公知である。ヒトCD69の代表的なアミノ酸配列を配列番号30に、ヒトCD69の代表的なcDNA配列を配列番号29に、マウスCD69の代表的なアミノ酸配列を配列番号32に、マウスCD69の代表的なcDNA配列を配列番号31に、それぞれ示す。
【0012】
本発明の抗体は、ヒトCD69の細胞外ドメインに対する特異的結合活性を有する。ヒトCD69の細胞外ドメインは、配列番号30で表されるアミノ酸配列における62−199の領域に、マウスCD69の細胞外ドメインは、配列番号32で表されるアミノ酸配列における62−199の領域に、それぞれ相当する。
【0013】
「ヒトCD69」とは、CD69のアミノ酸配列又は核酸配列が、ヒトにおいて天然に発現しているCD69のアミノ酸配列又は核酸配列と同一、又は実質的に同一のアミノ酸配列又は核酸配列を有することを意味する。「実質的に同一」とは、着目したアミノ酸配列又は核酸配列が、ヒトにおいて天然に発現しているCD69のアミノ酸配列又は核酸配列と70%以上(好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上)の同一性を有しており、且つヒトCD69の機能を有することを意味する。ヒト以外の生物種や、CD69以外のタンパク質、遺伝子、それらの断片についても同様に解釈する。
【0014】
抗体による抗原Xへの「特異的結合」とは、抗原抗体反応における、抗体の抗原Xに対する結合親和性についてのK
D値が1×10
−7M以下であることを意味する。
【0015】
本明細書において、本発明の抗体のヒトCD69への結合親和性に関するK
D値は、scatchard plot法を用いて、Immunoassays (OXFORD UNIVERSITY PRESS, 2000)に記載されている原理に従い算出される。抗体を様々な濃度の抗原(ヒトCD69の細胞外ドメイン)と平衡状態に達するまで室温で2時間インキュベーションを行い、これらのインキュベーション液中に存在する遊離抗体の量をELISA法で測定する。各平衡化サンプルの遊離抗体量の変化に基づき結合定数および解離定数(K
D値)を求める。尚、平衡化反応時の抗体濃度は0.015μg/mlとし、遊離抗体量を測定する際のELISAプレートには抗原を1μg/mlで固相化したものを用いる。
【0016】
好ましい態様において、本発明の抗体のヒトCD69への結合親和性に関するK
D値は、5×10
−8M以下である。
【0017】
本発明の抗体は、アレルギー性炎症を抑制する活性を有する。アレルギー性炎症とは、アレルギー反応に伴って生じる、標的組織への単核球の選択的な集積により特徴付けられる炎症をいう。単核球には、Th2細胞、好酸球、好塩基球、及びマスト細胞が包含される。抗体が、アレルギー性炎症を抑制する活性を有するか否かは、後述する本発明の非ヒト哺乳動物を抗原で曝露することにより誘導されるアレルギー反応(例、白血球浸潤)を抑制するか否か評価することにより確認することができる。
【0018】
本明細書において、「抗体」は、全長抗体及びそのいかなる抗原結合断片(すなわち、「抗原結合部分」)又はその一重鎖を含むものとして使用する。「抗体」は、ジスルフィド結合で連結された少なくとも2個の重鎖(H)と2個の軽鎖(L)を含む糖タンパク質またはその抗原結合部分を称する。各重鎖は、重鎖可変領域(本文においてV
Hと略す。)と重鎖定常領域とから構成されている。重鎖定常領域は、3個のドメインC
H1、C
H2およびC
H3から構成されている。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本文においてV
Lと略す。)と軽鎖定常領域から構成されている。軽鎖定常領域は、1個のドメインC
Lで構成されている。V
HおよびV
L領域は、更に、相補性決定領域(CDR)と称される変異性の高い領域に小分割され、それらには、フレームワーク領域(FR)と称され、より保存性の高い領域が散在している。各V
HおよびV
Lは、3個のCDRと4個のFRで構成され、下記の順序、すなわち、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシ末端へ配置されている。当該重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含んでいる。抗体の定常領域は、イムノグロブリンの宿主組織または因子への結合を媒介でき、それらには、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および旧来の補体系の第1成分(C1q)が含まれる。
【0019】
本明細書において、抗体の「抗原結合部分」とは、特異的に抗原(例えば、ヒトCD69)に結合する能力を保持する抗体の1個以上の断片を称するものとして使用する。抗体の抗原結合機能は全長抗体の断片によって行われることが明らかとなっている。抗体の「抗原結合部分」という用語に含まれる結合断片の例として、(i)V
L、V
H、C
LおよびC
H1ドメインから構成される1価の断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域中ジスルフィド架橋で結合した2個のFab断片を含む2価の断片であるF(ab’)
2断片、(iii)ヒンジ領域の部分を持つ本来的FabであるFab’断片(FUNDAMENTAL IMMUNOLOGY(Paul ed.,3.sup.rd ed.1993参照)、(iv)V
HおよびC
H1ドメインから構成されるFd断片、(v)抗体のシングルアームのV
LおよびV
Hドメインで構成されるFv断片、(vi)V
Hドメインから構成されるdAb断片(Wardら、(1989)Nature 341:544−546)、(vii)単離相補性決定領域(CDR)および(viii)単一可変ドメインと二つの定常領域を含む重鎖可変領域であるナノボディを含む。更に、Fv断片の2個のドメインであるV
LおよびV
Hは別々の遺伝子によりコードされているが、それらは、組換え技術を用いてそれらを単一タンパク質鎖として作製できる合成リンカーにより連結でき、この鎖中では、V
LおよびV
H領域が対となって1価の分子を形成する(単一鎖のFv(scFv)として知られている;例えば、Birdら(1988)Science 242:423−426;およびHustonら、(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883参照)。このような単一鎖の抗体も、抗体の「抗原結合部分」に包含される。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来の技術を用いて得られ、当該断片について、未改変抗体の場合と同様に有用性を求めてスクリーニングされる。
【0020】
本発明の抗体は、好ましくはモノクローナル抗体である。「モノクローナル抗体」とは、単一分子組成物の抗体分子の調製物をいう。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープと呼ばれる抗原の一部分に対して単一結合特異性と親和性を示す。
【0021】
本発明の抗体は、好ましくはヒト抗体である。「ヒト抗体」とは、フレームワークとCDR領域の両方ともにヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体をいう。更に、抗体が定常領域を含む場合には、この定常領域もヒト生殖細胞系列イムノグロブリン配列に由来する。本明細書において、「ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系列イムノグロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロにおけるランダムまたは部位特異的変異誘発またはインビボにおける体細胞変異により導入される変異)を含む態様をも包含する。しかし、本明細書において、「ヒト抗体」の用語は、マウスのようなヒト以外の動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列をヒトフレームワーク配列上に融合させた抗体を含むことは意図していない。
【0022】
本明細書において、ヒト抗体には「再構成ヒト抗体」が包含される。再構成ヒト抗体とは、第1のヒトドナー抗体に含まれる少なくとも1つのCDRが、第2のヒトアクセプター抗体において、第2のヒトアクセプター抗体のCDRの代わりに用いられる改変型抗体をいう。好ましくは、6つのCDR全てが置換される。より好ましくは、第1のヒトドナー抗体の抗原結合領域(例えば、Fv、FabまたはF(ab')2)全体が第2のヒトアクセプター抗体における対応領域の代わりに用いられる。より好ましくは、第1のヒトドナー抗体のFab領域が第2のヒトアクセプター抗体の適切な定常領域と機能可能なように連結して全長抗体を形成する。
【0023】
再構成ヒト抗体は、例えば、EP125023、WO96/02576、非特許文献8等に開示された、一般的な遺伝子組換え手法を用いて製造することができる。具体的には、例えばドナーヒト抗体中の目的のCDRとアクセプターヒト抗体中の目的のフレームワーク領域(FR)とを連結するように設計したDNA配列を、CDRおよびFR両方の末端領域にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてPCR法により合成する(WO98/13388に記載の方法を参照)。得られたDNAをヒト抗体定常領域もしくはヒト抗体定常領域改変体をコードするDNAと連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることにより再構成ヒト抗体を得ることができる(EP125023、WO96/02576参照)。
【0024】
また本明細書において、ヒト抗体には「人工ヒト抗体」が包含される。人工ヒト抗体は、例えば、非特許文献8等に開示された、一般的な遺伝子組換え手法を用いて製造することができる。
【0025】
本発明の抗体には、上述の抗体と他のペプチド又はタンパク質とが融合した融合タンパク質も含まれる。融合タンパク質を作製する方法は、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドと他のペプチド又はポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをフレームが一致するように連結してこれを発現ベクターに導入し、宿主で発現させればよく、当業者に公知の手法を用いることができる。本発明の抗体との融合に付される他のペプチドとしては、例えば、FLAG(Hopp, T. P. et al., BioTechnology (1988) 6, 1204−1210)、6個のHis(ヒスチジン)残基からなる6×His、10×His、ヒトc−mycの断片、VSV−GPの断片、p18HIVの断片、T7−tag、HSV−tag、E−tag、SV40T抗原の断片、lck tag、α−tubulinの断片、B−tag、Protein Cの断片等の公知のペプチドを使用することができる。また、本発明の抗体との融合に付される他のポリペプチドとしては、例えば、GST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)、HA(インフルエンザ凝集素)、イムノグロブリン定常領域、β−ガラクトシダーゼ、MBP(マルトース結合タンパク質)等が挙げられる。市販されているこれらペプチドまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドと融合させ、これにより調製された融合ポリヌクレオチドを発現させることにより、融合ポリペプチドを調製することができる。
【0026】
また本発明の抗体は、ポリエチレングリコール(PEG)やヒアルロン酸などの高分子物質、放射性物質、蛍光物質、発光物質、酵素、トキシン等の各種分子と結合したコンジュゲート抗体でもよい。このようなコンジュゲート抗体は、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。尚、抗体の修飾方法はこの分野においてすでに確立されている(例えば、US5057313、US5156840)。
【0027】
本発明の抗体は単離又は精製されていることが好ましい。「単離又は精製」とは、天然に存在する状態から、目的とする成分以外の成分を除去する操作が施されていることを意味する。単離又は精製された本発明の抗体の純度(全タンパク質重量に対する、本発明の抗体の重量の割合)は、通常50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上(例えば実質的に100%)である。
【0028】
一態様において、本発明の抗体は、マウスCD69(好ましくはマウスCD69の細胞外ドメイン)への交差反応性を有する。「交差反応性」とは、ヒトCD69に特異的に結合する抗体が、マウスCD69(好ましくはマウスCD69の細胞外ドメイン)にも抗原抗体反応により結合するということを意味する。マウスCD69への交差反応性を有する本発明の抗体は、ヒトCD69を発現していないマウスにおいても薬効を評価可能な点で、優れている。
【0029】
好ましい態様において、マウスCD69への交差反応性を有する本発明の抗体は、配列番号33で表されるアミノ酸配列(YNCPG)を含むエピトープにおいてヒトCD69に結合する。配列番号33で表されるアミノ酸配列を含むエピトープとしては、配列番号30で表されるアミノ酸配列の連続する部分配列であって、配列番号33で表されるアミノ酸配列を含み、且つ12アミノ酸長以下の部分配列からなるエピトープを挙げることができる。配列番号33で表されるアミノ酸配列を含むエピトープとしては、具体的には、配列番号35で表されるアミノ酸配列からなるエピトープ、及び配列番号36で表されるアミノ酸配列からなるエピトープを挙げることができる。
【0030】
マウスCD69への交差反応性を有する本発明の抗体としては、以下の(1)又は(2)に記載の抗体を挙げることができる:
(1)軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、
該軽鎖可変領域が、配列番号7で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号8で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号9、19または20で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含み、且つ
該重鎖可変領域が、配列番号10で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号11で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号12で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む、抗体;及び
(2)軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、
該軽鎖可変領域が、配列番号7で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号8で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号9、19又は20で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含み、且つ
該重鎖可変領域が、配列番号10で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号11で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号12で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む、抗体
(但し、配列番号7〜9、19及び20で表されるアミノ酸配列からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列において、1〜3個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加しており、且つ/或いは、
配列番号10〜12で表されるアミノ酸配列からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列において、1〜3個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加している)。
【0031】
上記(1)又は(2)に記載の抗体は、配列番号33で表されるアミノ酸配列を含むエピトープ(好ましくは、配列番号30で表されるアミノ酸配列の連続する部分配列であって、配列番号33で表されるアミノ酸配列を含み、且つ12アミノ酸長以下の部分配列からなるエピトープ;より好ましくは、配列番号35又は配列番号36で表されるアミノ酸配列からなるエピトープ)においてヒトCD69に結合し得る。
【0032】
一態様において、本発明の抗体は、配列番号59で表されるアミノ酸配列からなるエピトープにおいてヒトCD69に結合する。
【0033】
一態様において、本発明の抗体は、配列番号78で表されるアミノ酸配列(YAGREE)を含むエピトープにおいてヒトCD69に結合する。配列番号78で表されるアミノ酸配列を含むエピトープとしては、配列番号30で表されるアミノ酸配列の連続する部分配列であって、配列番号78で表されるアミノ酸配列を含み、且つ12アミノ酸長以下の部分配列からなるエピトープを挙げることができる。配列番号78で表されるアミノ酸配列を含むエピトープとしては、具体的には、配列番号57で表されるアミノ酸配列からなるエピトープ、配列番号58で表されるアミノ酸配列からなるエピトープ、及び配列番号59で表されるアミノ酸配列からなるエピトープを挙げることができる。
【0034】
その他の本発明の抗体としては、以下の(3)〜(6)に記載の抗体を挙げることができる:
(3)軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、
該軽鎖可変領域が、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号3で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含み、且つ
該重鎖可変領域が、配列番号4で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号5で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号6で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む、抗体;
(4)軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、
該軽鎖可変領域が、配列番号13で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号14で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号15で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含み、且つ
該重鎖可変領域が、配列番号16で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号17で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号18で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む、抗体;
(5)軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、
該軽鎖可変領域が、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号3で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含み、且つ
該重鎖可変領域が、配列番号4で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号5で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号6で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む、抗体
(但し、配列番号1〜3で表されるアミノ酸配列からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列において、1〜3個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加しており、且つ/或いは、
配列番号4〜6で表されるアミノ酸配列からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列において、1〜3個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加している);及び
(6)軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、
該軽鎖可変領域が、配列番号13で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号14で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号15で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含み、且つ
該重鎖可変領域が、配列番号16で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号17で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号18で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む、抗体
(但し、配列番号13〜15で表されるアミノ酸配列からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列において、1〜3個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加しており、且つ/或いは、
配列番号16〜18で表されるアミノ酸配列からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列において、1〜3個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加している)。
【0035】
上記(3)又は(5)に記載の抗体は、配列番号59で表されるアミノ酸配列からなるエピトープにおいてヒトCD69に結合し得る。
【0036】
上記(4)又は(6)に記載の抗体は、配列番号78で表されるアミノ酸配列を含むエピトープ(好ましくは、配列番号30で表されるアミノ酸配列の連続する部分配列であって、配列番号78で表されるアミノ酸配列を含み、且つ12アミノ酸長以下の部分配列からなるエピトープ;より好ましくは、配列番号57、配列番号58又は配列番号59で表されるアミノ酸配列からなるエピトープ)においてヒトCD69に結合し得る。
【0037】
(1)に記載の抗体のヒトCD69への結合親和性に関するK
D値は、好ましくは3×10
−8M以下である。軽鎖可変領域のCDR3が配列番号19で表されるアミノ酸配列を有する場合、該抗体のヒトCD69への結合親和性に関するK
D値は、好ましくは1×10
−8M以下、より好ましくは5×10
−9M以下、更に好ましくは2×10
−9M以下である。軽鎖可変領域のCDR3が配列番号20で表されるアミノ酸配列を有する場合、該抗体のヒトCD69への結合親和性に関するK
D値は、好ましくは1×10
−8M以下、より好ましくは5×10
−9M以下、更に好ましくは3×10
−9M以下である。
【0038】
(2)に記載の抗体のヒトCD69への結合親和性に関するK
D値は、好ましくは3×10
−8M以下である。
(2)に記載の抗体が、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、
該軽鎖可変領域が、配列番号7で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号8で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号19で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含み、且つ
該重鎖可変領域が、配列番号10で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号11で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号12で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む、抗体
(但し、配列番号7、8及び19で表されるアミノ酸配列からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列において、1〜3個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加しており、且つ/或いは、
配列番号10〜12で表されるアミノ酸配列からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列において、1〜3個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加している)である場合、該抗体のヒトCD69への結合親和性に関するK
D値は、好ましくは1×10
−8M以下、より好ましくは5×10
−9M以下、更に好ましくは2×10
−9M以下である。
(2)に記載の抗体が、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、
該軽鎖可変領域が、配列番号7で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号8で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号20で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含み、且つ
該重鎖可変領域が、配列番号10で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号11で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号12で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む、抗体
(但し、配列番号7、8及び20で表されるアミノ酸配列からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列において、1〜3個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加しており、且つ/或いは、
配列番号10〜12で表されるアミノ酸配列からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列において、1〜3個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加している)である場合、該抗体のヒトCD69への結合親和性に関するK
D値は、好ましくは1×10
−8M以下、より好ましくは5×10
−9M以下、更に好ましくは3×10
−9M以下である。
【0039】
(3)又は(5)に記載の抗体のヒトCD69への結合親和性に関するK
D値は、好ましくは5×10
−8M以下である。
【0040】
(4)又は(6)に記載の抗体のヒトCD69への結合性に関するK
D値は、好ましくは8×10
−9M以下である。
【0041】
(2)、(5)及び(6)の態様においては、置換、欠失、挿入、及び/又は付加されるアミノ酸の数は、抗体がヒトCD69に特異的に結合し、アレルギー性炎症を抑制する活性を有する限り特に限定されないが、1つのCDR配列につき、好ましくは2アミノ酸以内、より好ましくは1アミノ酸である。また、アミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加するCDR配列の数は、抗体がヒトCD69に特異的に結合し、アレルギー性炎症を抑制する活性を有する限り特に限定されないが、1つの軽鎖可変領域につき、好ましくは2つ以内、より好ましくは1つであり、1つの重鎖可変領域につき、好ましくは2つ以内、より好ましくは1つである。アミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加は、軽鎖可変領域と重鎖可変領域の両方において行われてもよいし、いずれか一方のみにおいて行われてもよい。
【0042】
(2)、(5)及び(6)の態様においては、好ましくは、軽鎖可変領域のCDR3のアミノ酸配列においてのみ、1〜3個(好ましくは1又は2個、より好ましくは1個)のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加している。
【0043】
(2)の態様において、軽鎖可変領域のCDR3のアミノ酸配列において1〜3個のアミノ酸を置換、欠失、挿入、及び/又は付加する場合、該CDR3のアミノ酸配列における2番目のセリン及び3番目のチロシンは維持することが好ましい。また、該CDR3のアミノ酸配列における1番目のアミノ酸は、グルタミンとグリシンとの間で相互に置換可能であり得る。該CDR3のアミノ酸配列における4番目のアミノ酸は、アスパラギン酸とスレオニンとの間で相互に置換可能であり得る。該CDR3のアミノ酸配列における5番目のアミノ酸は、セリンとスレオニンとの間で相互に置換可能であり得る。
【0044】
1又は複数のアミノ酸残基を目的の他のアミノ酸に置換する方法としては、例えば、部位特異的変異誘発法(Hashimoto−Gotoh, T, Mizuno, T, Ogasahara, Y, and Nakagawa, M. (1995) An oligodeoxyribonucleotide−directed dual amber method for site−directed mutagenesis. Gene 152, 271−275、Zoller, MJ, and Smith, M.(1983) Oligonucleotide−directed mutagenesis of DNA fragments cloned into M13 vectors.Methods Enzymol. 100, 468−500、Kramer,W, Drutsa,V, Jansen,HW, Kramer,B, Pflugfelder,M, and Fritz,HJ(1984) The gapped duplex DNA approach to oligonucleotide−directed mutation construction. Nucleic Acids Res. 12, 9441−9456、Kramer W, and Fritz HJ(1987) Oligonucleotide−directed construction of mutations via gapped duplex DNA Methods. Enzymol. 154, 350−367、Kunkel,TA(1985) Rapid and efficient site−specific mutagenesis without phenotypic selection.Proc Natl Acad Sci U S A. 82, 488−492)が挙げられる。該方法を用いて、抗体の所望のアミノ酸を目的の他のアミノ酸に置換することができる。又、フレームワークシャッフリング(Mol Immunol. 2007 Apr;44(11):3049−60)およびCDR修復(US2006/0122377)等のライブラリー技術を用いることにより、フレームワークおよびCDRにおけるアミノ酸を適切な他のアミノ酸に置換することも可能である。
【0045】
本発明の抗体において、CDRと連結される抗体のフレームワーク領域(FR)は、CDRが良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。本発明の抗体に用いられるFRは特に限定されず、如何なるFRが用いられていてもよいが、ヒト抗体のFRが用いられることが好ましい。ヒト抗体のFRは天然配列を有するFRが用いられてもよいし、必要に応じ、CDRが適切な抗原結合部位を形成するように、天然配列を有するフレームワーク領域の1又は複数のアミノ酸を置換、欠失、付加及び/又は挿入等してもよい。例えば、アミノ酸を置換したFRを用いた抗体の抗原への結合活性を測定し評価することによって、所望の性質を有する変異FR配列が選択できる(Sato, K. et al., Cancer Res.(1993)53, 851−856)。
【0046】
(1)及び(2)の抗体においては、軽鎖については、好ましくはヒト抗体のVl3(Kabat database)のFRが、重鎖については、好ましくはヒト抗体のVH3(Kabat database)のFRが用いられる。
(3)及び(5)の抗体においては、軽鎖については、好ましくはヒト抗体のVk1(Kabat database)のFRが、重鎖については、好ましくはヒト抗体のVH1B(Kabat database)のFRが用いられる。
(4)及び(6)の抗体においては、軽鎖については、好ましくはヒト抗体のVk3(Kabat database)のFRが、重鎖については、好ましくはヒト抗体のVH3(Kabat database)のFRが用いられる。
【0047】
本発明の抗体で用いられる定常領域は特に限定されず、如何なる定常領域が用いられてもよい。本発明の抗体で用いられる定常領域の好ましい例としては、ヒト抗体の定常領域(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM由来の定常領域など)を挙げることができる。例えばH鎖では、Cγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4、Cμ、Cδ、Cα1、Cα2、Cεを、L鎖ではCκ、Cλを使用することができる。
【0048】
(1)及び(2)の抗体においては、軽鎖については、好ましくはヒト抗体のCλの定常領域が、重鎖については、好ましくはヒト抗体のCγ4の定常領域が用いられる。
(3)及び(5)の抗体においては、軽鎖については、好ましくはヒト抗体のCκの定常領域が、重鎖については、好ましくはヒト抗体のCγ4の定常領域が用いられる。
(4)及び(6)の抗体においては、軽鎖については、好ましくはヒト抗体のCκの定常領域が、重鎖については、好ましくはヒト抗体のCγ4の定常領域が用いられる。
【0049】
本発明の好ましい抗体として以下のものを挙げることができる:
(1’)軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、該軽鎖可変領域が配列番号23、27または28で表されるアミノ酸配列を含み、且つ、該重鎖可変領域が配列番号24で表されるアミノ酸配列を含む、抗体;及び
(3’)軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、該軽鎖可変領域が配列番号21で表されるアミノ酸配列を含み、且つ、該重鎖可変領域が配列番号22で表されるアミノ酸配列を含む、抗体;
(4’)軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、該軽鎖可変領域が配列番号25で表されるアミノ酸配列を含み、且つ、該重鎖可変領域が配列番号26で表されるアミノ酸配列を含む、抗体。
【0050】
上記(1’)の抗体は、上記(1)の抗体の好ましい態様に、上記(3’)の抗体は、上記(3)の抗体の好ましい態様に、上記(4’)の抗体は、上記(4)の抗体の好ましい態様に、それぞれ相当する。
【0051】
上記(1’)の抗体は、配列番号33で表されるアミノ酸配列を含むエピトープ(好ましくは、配列番号30で表されるアミノ酸配列の連続する部分配列であって、配列番号33で表されるアミノ酸配列を含み、且つ12アミノ酸長以下の部分配列からなるエピトープ;より好ましくは、配列番号35又は配列番号36で表されるアミノ酸配列からなるエピトープ)においてヒトCD69に結合し得る。
【0052】
上記(3’)の抗体は、配列番号59で表されるアミノ酸配列からなるエピトープにおいてヒトCD69に結合し得る。
【0053】
上記(4’)の抗体は、配列番号78で表されるアミノ酸配列を含むエピトープ(好ましくは、配列番号30で表されるアミノ酸配列の連続する部分配列であって、配列番号78で表されるアミノ酸配列を含み、且つ12アミノ酸長以下の部分配列からなるエピトープ;より好ましくは、配列番号57、配列番号58又は配列番号59で表されるアミノ酸配列からなるエピトープ)においてヒトCD69に結合し得る。
【0054】
また、本発明は上記本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供するものである。該ポリヌクレオチドは、DNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよい。また、該ポリヌクレオチドは二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。
【0055】
尚、本発明のポリヌクレオチドには、本発明の抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域の両方をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、及び重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとの組み合わせが包含される。
【0056】
本発明のポリヌクレオチドは、本発明の抗体のアミノ酸配列情報、公知の配列情報や本明細書の配列表に記載された配列情報に基づき、公知の遺伝子組換え技術を利用することにより容易に製造することができる。例えば、配列情報に基づき適当なプライマーを設計し、本発明の抗体を構成する構成要素をコードするDNAをPCR反応によって増幅し、DNAフラグメントをリガーゼなどの適切な酵素を用いて連結することにより、本発明のポリヌクレオチドを製造することができる。或いは、本発明の抗体のアミノ酸配列情報に基づいて、ポリヌクレオチド合成装置により各構成要素をコードするポリヌクレオチドを合成してもよい。
【0057】
取得された本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドは、目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化するか、リンカーを付加した後に、使用することができる。該ポリヌクレオチドはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することができる。
【0058】
本発明のポリヌクレオチドは、好ましくは単離又は精製されている。単離又は精製された本発明のポリヌクレオチドの純度(全ポリヌクレオチド重量に対する、本発明のポリヌクレオチドの重量の割合)は、通常50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上(例えば実質的に100%)である。
【0059】
本発明は、上記本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを提供するものである。本発明のベクターには、本発明の抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域の両方をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含むベクター、及び重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含むベクターと、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含むベクターとの組み合わせが包含される。該ベクターは好ましくは単離又は精製されている。ベクターとしては発現ベクター、クローニングベクター等を挙げることができ、目的に応じて選択することが可能であるが、好ましくは、ベクターは発現ベクターである。該発現ベクターは、本発明の抗体を発現し得る。該発現ベクターは、本発明のポリヌクレオチドを適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に機能的に連結することにより製造することができる。ベクターの種類としては、プラスミドベクター、ウイルスベクター等を挙げることができ、用いる宿主に応じて適宜選択することができる。
【0060】
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌(エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等)、バチルス属菌(バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)等)、酵母(サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等)、昆虫細胞(夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)等)、昆虫(カイコの幼虫等)、哺乳動物細胞(ラット神経細胞、サル細胞(COS−7等)、チャイニーズハムスター細胞(CHO細胞等)等)などが用いられる。
【0061】
哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ミンク等の家畜、イヌ、ネコ等のペット、ヒト、サル、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
プラスミドベクターとしては、大腸菌由来のプラスミドベクター(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来のプラスミドベクター(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミドベクター(例、pSH19,pSH15)等を挙げることができ、用いる宿主の種類や使用目的に応じて適宜選択することができる。
【0063】
ウイルスベクターの種類は、用いる宿主の種類や使用目的に応じて適宜選択することができる。例えば、宿主として昆虫細胞を用いる場合には、バキュロウイルスベクター等を用いることができる。また、宿主として哺乳動物細胞を用いる場合には、モロニーマウス白血病ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、シンドビスウイルスベクター等のレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、パルボウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、センダイウイルスベクター等を用いることができる。
【0064】
また、プロモーターは、用いる宿主の種類に対応して、該宿主内で転写を開始可能なものを選択することができる。例えば、宿主がエシェリヒア属菌である場合、trpプロモーター、lacプロモーター、T7プロモーターなどが好ましい。宿主がバチルス属菌である場合、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなどが好ましい。宿主が酵母である場合、PHO5プロモーター、PGKプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。宿主が哺乳動物細胞である場合、サブゲノミック(26S)プロモーター、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどが好ましい。
【0065】
本発明のベクターには、抗体分泌のためのシグナル配列が含まれていてもよい。抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol. (1987) 169, 4379)を使用すればよい。
【0066】
本発明のベクターは、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを、それぞれ機能可能な態様で含有していてもよい。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(Amp
rと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(Neo
rと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。
【0067】
上記本発明のベクターを、自体公知の遺伝子導入法(例えば、リポフェクション法、リン酸カルシウム法、マイクロインジェクション法、プロトプラスト融合法、エレクトロポレーション法、DEAEデキストラン法、Gene Gunによる遺伝子導入法等)に従って上記宿主へ導入することにより、該ベクターが導入された形質転換体(本発明の形質転換体)を製造することができる。導入されるベクターとして発現ベクターを使用することにより、該形質転換体は本発明の抗体を発現し得る。本発明の形質転換体は、本発明の抗体の製造等に有用である。
【0068】
本発明の形質転換体を、宿主の種類に応じて、自体公知の方法で培養し、培養物から本発明の抗体を単離することにより、本発明の抗体を製造することができる。宿主がエシェリヒア属菌である形質転換体の培養は、LB培地やM9培地等の適切な培地中、通常約15〜43℃で、約3〜24時間行なわれる。宿主がバチルス属菌である形質転換体の培養は、適切な培地中、通常約30〜40℃で、約6〜24時間行なわれる。宿主が酵母である形質転換体の培養は、バークホールダー培地等の適切な培地中、通常約20℃〜35℃で、約24〜72時間行なわれる。宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体の培養は、約10%のウシ血清が添加されたGrace‘s Insect medium等の適切な培地中、通常約27℃で、約3〜5日間行なわれる。宿主が動物細胞である形質転換体の培養は、約10%のウシ血清が添加されたMEM培地等の適切な培地中、通常約30℃〜40℃で、約15〜60時間行なわれる。いずれの培養においても、必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。
【0069】
尚、遺伝子工学的に抗体を製造する方法については、例えば、Co, M. S. et al., J. Immunol. (1994) 152, 2968−2976 ; Better, M. and Horwitz, A. H., Methods Enzymol. (1989) 178, 476−496 ; Pluckthun, A. and Skerra, A., Methods Enzymol. (1989) 178, 497−515 ; Lamoyi, E., Methods Enzymol. (1986) 121, 652−663 ; Rousseaux, J. et al., Methods Enzymol. (1986) 121, 663−669 ; Bird, R. E. and Walker, B. W., Trends Biotechnol. (1991) 9, 132−137等を参照のこと。
【0070】
培養物からの本発明の抗体の分離、精製は、通常の抗体の精製で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、クロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、溶媒沈殿、溶媒抽出、蒸留、免疫沈降、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動法、透析、再結晶等を適宜選択、組み合わせれば抗体を分離、精製することができる。
【0071】
クロマトグラフィーとしては、例えばアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等が挙げられる(Strategies for Protein Purification and Characterization: A Laboratory Course Manual. Ed Daniel R. Marshak et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1996)。これらのクロマトグラフィーは、液相クロマトグラフィー、例えばHPLC、FPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、プロテインAカラム、プロテインGカラムが挙げられる。例えば、プロテインAを用いたカラムとして、Hyper D, POROS, Sepharose FF(GE Amersham Biosciences社製)等が挙げられる。本発明は、これらの精製方法を用い、高度に精製された抗体も包含する。
【0072】
また本発明は、上記本発明の抗体を有効成分として含有する医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物はヒトCD69が関連するアレルギー性疾患や炎症性疾患の予防又は治療に用いることが可能である。即ち本発明は、上述の抗体を有効成分とするアレルギー性疾患又は炎症性疾患の予防剤又は治療剤も提供する。アレルギー性疾患としては、例えばアレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、等が挙げられるが、これに限定されることはない。炎症性疾患としては、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、気管支炎、間質性肺炎、肺線維症、肺浮腫、成人呼吸窮迫症候群、慢性関節リウマチ、敗血性ショック、潰瘍性大腸炎、クローン病、再灌流障害、慢性糸球体腎炎、エンドトキシンショック、骨関節炎、多発性硬化症等が挙げられるが、これに限定されることはない。上記アレルギー性疾患又は炎症性疾患は、好ましくは呼吸器(肺、気管支、気道等)におけるアレルギー性疾患又は炎症性疾患である。呼吸器(肺、気管支、気道等)におけるアレルギー性疾患としては、アレルギー性喘息等が挙げられるが、これに限定されることはない。呼吸器(肺、気管支、気道等)における炎症性疾患としては、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、気管支炎、間質性肺炎、肺線維症、肺浮腫、成人呼吸窮迫症候群等が挙げられるが、これに限定されることはない。
【0073】
本発明の抗体を「有効成分として含有する」とは、本発明の抗体を活性成分の少なくとも1つとして含むという意味であり、その含有率を制限するものではない。また、本発明の医薬組成物は、本発明の抗体と合わせて他の有効成分を含有してもよい。
【0074】
本発明の抗体は、常法に従って製剤化することができる(例えば、Remington’s Pharmaceutical Science, latest edition, Mark Publishing Company, Easton, U.S.A)。更に、必要に応じ、医薬的に許容される担体及び/または添加物を含んでもよい。例えば、界面活性剤(PEG、Tween等)、賦形剤、酸化防止剤(アスコルビン酸等)、着色料、着香料、保存料、安定剤、緩衝剤(リン酸、クエン酸、他の有機酸等)、キレート剤(EDTA等)、懸濁剤、等張化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤等を含むことができる。しかしながら、本発明の医薬組成物は、これらに制限されず、その他常用の担体を適宜含んでいてもよい。具体的には、軽質無水ケイ酸、乳糖、結晶セルロース、マンニトール、デンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、白糖、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等を挙げることができる。また、その他の低分子量のポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン及び免疫グロブリン等のタンパク質、並びに、アミノ酸を含んでいてもよい。注射用の水溶液とする場合には、本発明の抗体を、例えば、生理食塩水、ブドウ糖またはその他の補助薬を含む等張液に溶解する。補助薬としては、例えば、D−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、更に、適当な溶解補助剤、例えばアルコール(エタノール等)、ポリアルコール(プロピレングリコール、PEG等)、非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80、HCO−50)等と併用してもよい。
【0075】
また、必要に応じポリペプチドをマイクロカプセル(ヒドロキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリ[メチルメタクリル酸]等のマイクロカプセル)に封入したり、コロイドドラッグデリバリーシステム(リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル等)とすることもできる(Remington’s Pharmaceutical Science 16th edition &, Oslo Ed. (1980)等参照)。更に、薬剤を徐放性の薬剤とする方法も公知であり、ポリペプチドに適用し得る(Langer et al., J.Biomed.Mater.Res.(1981) 15: 167−277; Langer, Chem. Tech. (1982)12: 98−105;米国特許第3,773,919号;欧州特許出願公開(EP)第58,481号; Sidman et al., Biopolymers(1983)22:547−56;EP第133,988号)。更に、本剤にヒアルロニダーゼを添加あるいは混合することで皮下に投与する液量を増加させることも可能である(例えば、WO2004/078140等)。
【0076】
医薬組成物中の本発明の抗体の含有量は、例えば、医薬組成物全体の約0.01〜100重量%、好ましくは0.1〜99.9重量%である。
【0077】
本発明の医薬組成物は、経口又は非経口のいずれでも投与可能であるが、好ましくは非経口投与される。具体的には、注射及び経皮投与により患者に投与される。注射剤型の例としては、例えば、静脈内注射、筋肉内注射または皮下注射等により全身又は局所的に投与することができる。治療部位又はその周辺に局所注入、特に筋肉内注射してもよい。経皮投与剤型の例としては、例えば、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、湿布剤、および貼付剤等があげられ、全身又は局所的に投与することができる。また、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。投与量としては、例えば、1回につき体重1kgあたり本発明の抗体として0.5mg〜2.5mgの範囲で選ぶことが可能である。しかしながら、本発明の医薬組成物は、これらの投与量に制限されるものではない。
【0078】
本発明は、アレルギー性疾患や炎症性疾患等におけるヒトCD69の機能の解析に有用な非ヒト哺乳動物を提供する。具体的には本発明は、移入された、ヒトCD69を発現する、特定抗原により感作されたCD69欠損非ヒト哺乳動物のTh2細胞を含む、非ヒト哺乳動物を提供する。
【0079】
非ヒト哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の家畜、イヌ、ネコ等のペット、サル、オランウータン、チンパンジー等の霊長類が挙げられる。非ヒト哺乳動物は、好ましくはマウスである。
【0080】
Th2細胞が由来するCD69欠損非ヒト哺乳動物の遺伝型は、本発明の非ヒト哺乳動物の動物種にとって、免疫学的自己(即ち同種同系)又は免疫学的非自己(即ち同種異系又は異種異系)であり得るが、移入したTh2細胞を長期間生体内に生着させる観点から、好ましくは免疫学的自己である。
【0081】
CD69の欠損とは、CD69遺伝子が本来有する正常な機能が十分に発揮できない状態をいい、例えば、CD69遺伝子が全く発現していない状態、またはCD69遺伝子が本来有する正常な機能が発揮できない程度にその発現量が低下している状態、あるいはCD69遺伝子産物の機能が完全に喪失した状態、又はCD69遺伝子が本来有する正常な機能が発揮できない程度にCD69遺伝子産物の機能が低下した状態が挙げられる。
【0082】
CD69欠損非ヒト哺乳動物は、好ましくは、ゲノムDNAの改変を伴う動物、いわゆるトランスジェニック動物であり得る。CD69欠損非ヒト哺乳動物は、CD69遺伝子欠損ヘテロ接合体、又はCD69遺伝子欠損ホモ接合体であり得るが、好ましくはCD69遺伝子欠損ホモ接合体である。
【0083】
CD69欠損非ヒト哺乳動物は、例えば、ES細胞をCD69遺伝子について相同的組換えを誘導するターゲッティングベクターでトランスフェクトすることにより、CD69遺伝子の一方のアレルに欠損が導入されたES細胞を調製し、得られたES細胞から、これに由来するCD69遺伝子の一方のアレルに欠損が導入された子孫動物を調製し、当該子孫動物同士を交配することにより得ることができる。CD69欠損マウスの製造については、例えば、Murata, K. et al. 2003. Int. Immunol. 15: 987−992を参照のこと。
【0084】
抗原の種類は、CD69欠損非ヒト哺乳動物に対して抗原性を有する限り、特に限定されず、所望の抗原を選択することができる。抗原としては、CD69欠損非ヒト哺乳動物に対して抗原性を有する、タンパク質、ペプチド、脂質、糖鎖等を挙げることができる。
【0085】
抗原によるCD69欠損非ヒト哺乳動物の感作は、免疫するのに十分量の当該抗原を、CD69欠損非ヒト哺乳動物に注入することにより行うことができる。例えば、1〜3週間に1回の頻度で、合計2〜6回、CD69欠損非ヒト哺乳動物を当該抗原で免疫する。免疫に際しては、抗原をアジュバントと供にCD69欠損非ヒト哺乳動物に投与してもよい。アジュバントとしては、免疫原性を増強し得るものである限り特に限定されないが、例えば、水酸化アルミニウム、キーホールリンペットヘモシアニン、デキストラン、BCG、リン酸アルミニウム、TLRリガンド(例えば、リポ多糖(LPS)、CpG)等が挙げられるが、Th2細胞を効率的に誘導する観点から、水酸化アルミニウム等が好ましく用いられる。
【0086】
Th2細胞とは、抗原刺激により、ナイーブなCD4T細胞から分化した、IL−4を優勢に産生するCD4T細胞をいう。
【0087】
Th2細胞は、例えば、特定抗原により感作されたCD69欠損非ヒト哺乳動物の脾臓や末梢血からCD4T細胞を単離し、当該CD4T細胞を、当該抗原、抗原提示細胞、IL−2及びIL−4の存在下で培養することにより得ることができる。当該抗原に代えて、固相化した抗TCR抗体や抗CD3抗体を用いてもよい。また、固相化した抗CD28抗体を併せて用いることにより、より強力にTh2細胞を誘導することができる。
【0088】
得られた細胞がTh2細胞であることは、得られた細胞を抗原で刺激し、IFN−γと比較してIL−4を優勢に産生するか否かをフローサイトメトリーにより評価することにより確認することができる。
【0089】
CD69欠損非ヒト哺乳動物のTh2細胞にヒトCD69を発現させるためには、通常、当該非ヒト哺乳動物のTh2細胞内でヒトCD69を発現し得る発現ベクターで、CD69欠損非ヒト哺乳動物のTh2細胞をトランスフェクトする。ベクターとしては、プラスミドベクター、ウイルスベクター、レトロウイルスベクター等が挙げられるが、レトロウイルスベクターを用いると、容易に導入遺伝子が染色体内へ組み込まれ、Th2細胞が増殖しても、安定にヒトCD69を発現し続けることができるので、本発明においては、レトロウイルスベクターが好ましく用いられる。Th2細胞へのレトロウイルスによる遺伝子導入の詳細については、例えば、Kimura, M. et al. 2001. Immunity 15: 275−287.を参照のこと。
【0090】
Th2細胞がヒトCD69を発現していることは、抗ヒトCD69抗体を用いたフローサイトメトリーにより確認することができる。
【0091】
レシピエント非ヒト哺乳動物へ、ヒトCD69を発現する、特定抗原により感作されたCD69欠損非ヒト哺乳動物のTh2細胞を静脈内、又は腹腔内注射することにより、当該Th2細胞をレシピエント非ヒト哺乳動物へ移入することができる。移入するTh2細胞の数は、レシピエント非ヒト哺乳動物において、当該抗原に対する移入したTh2細胞の応答反応が確認される程度であれば、特に限定されない。レシピエント非ヒト哺乳動物がマウスである場合には、例えば、100万〜300万個のTh2細胞を移入するのが好適である。
【0092】
移入したTh2細胞は、特定の抗原刺激により活性化され、多量のIL−4を産生するので、本発明の非ヒト哺乳動物を当該抗原に曝露することにより、ヒトCD69を発現するTh2細胞が媒介するアレルギー反応やそれに伴う炎症反応が生じる。本発明は、このような非ヒト哺乳動物アレルギーモデルをも提供する。本発明の非ヒト哺乳動物を用いれば、ヒトCD69のアレルギー反応や炎症反応における役割をインビボにおいて容易に解析することができる。また、抗ヒトCD69抗体のアレルギー性疾患や炎症性疾患に対する薬効評価を、非ヒト哺乳動物において実施することができる。
【0093】
刊行物、特許文献等を含む、本明細書に引用されたすべての参考文献は、引用により、それらが個々に具体的に参考として援用されかつその内容全体が具体的に記載されているのと同程度まで、本明細書に援用される。
【実施例】
【0094】
以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。尚、実施例における各種遺伝子操作は、Molecular cloning third. ed. (Cold Spring Harbor Lab. Press, 2001)に記載の方法に従った。
【0095】
[実施例1]
抗原および抗体作製
(1)ヒトCD69 組み換えタンパク質の作製
ヒトCD69はシステイン68を介してホモダイマーを形成するため、システイン68を含む細胞外領域(アミノ酸配列;62−199)をコードするcDNA(NM_001781)を大腸菌ペリプラズム発現用ベクターに挿入した。この発現ベクターを予め調製(Z−competent E.Coli Transformation Buffer Set:ZYMO RESEARCH社製)しておいた大腸菌TG1F(−)株コンピテントセルに形質転換し、クロラムフェニコール(終濃度 34μg/mL)を含むLB寒天プレート上で37℃、一晩培養した。この大腸菌を2×YT培地に植菌し、37℃で3−5時間培養(OD600=0.5−0.8)後、IPTG(終濃度0.1mM)を添加し、25℃で一晩培養した。培養した大腸菌を遠心分離により集菌して、溶菌バッファー(200mM ホウ酸、160mM NaCl、2mM EDTA、1mg/ml リゾチウム、pH8.0)により溶菌させた後、これを遠心分離することで可溶性画分を得た。この可溶性画分よりStrep−Tactinカラム(IBA社製)の標準法に従い、ヒトCD69ホモダイマータンパク質の精製を行った。また、SDS−PAGEによって精製したヒトCD69組み換えタンパク質の95%以上の純度を確認し、BCA Protein Assay Kit(PIERCE社製)を用いてタンパク質濃度を決定した。
【0096】
(2)ヒトCD69組み換えタンパク質のビオチン化
精製したヒトCD69組み換えタンパク質は、EZ−Link NHS−PEO
4−Biotin(Thermo Scientific)の標準プロトコールに従ってビオチン化し、BCA Protein Assay Kit(PIERCE社製)を用いて濃度を決定した。
【0097】
(3)ファージディスプレイ法によるヒトCD69特異的抗体クローンの選択
ビオチン化したヒトCD69組み換えタンパク質は、ストレプトアビジンコート磁性体ビーズ(Dynabeads MyOne Streptavidin T1 磁性体ビーズ、Invitrogen社製)100μlに4℃、1時間固相化し、1mlのPBST(0.05% Tween 20含有PBS)で5回洗浄した。ヒト抗体ファージライブラリーにはHuCAL GOLD(MorphoSys社製)を用い、WO2007/042309及びWO2006/122797等に記載された方法に従って抗体選択を行った。ファージライブラリーにヒトCD69固相化ビーズを加えて抗原特異的抗体を結合させた。磁性体ビーズを回収し、数回洗浄を行った後、ファージを磁性体ビーズから溶出させた。溶出したファージは、大腸菌に感染させ、37℃で一晩培養した。尚、ファージ感染大腸菌からのファージレスキュー操作は一般的な方法に従った(Molecular cloning third. Ed. Cold Spring Harbor Lab. Press, 2001)。以上に記載した選択ラウンドを複数回繰り返して抗原特異的抗体を提示するファージの濃縮操作を行った。
【0098】
(4)ELISAによる抗原特異的抗体のスクリーニング
濃縮操作後に得られたFab遺伝子のプールを大腸菌発現ベクターにサブクローニングした。WO2006/122797等に記載の手法に従って、Fab抗体を発現させ、ELISA法により抗原特異的抗体のスクリーニングを行った。Fab抗体は大腸菌破砕液の可溶性画分よりStrep−Tactinカラム(IBA社製)の標準法に従い精製を行った。また、SDS−PAGEによって精製抗体の純度を確認し、BCA Protein Assay Kit(PIERCE社製)を用いて濃度を決定した。
【0099】
(5)細胞染色評価による抗体クローンのスクリーニング
精製したELISA陽性のFab抗体クローンは更にヒトCD69およびマウスCD69過剰発現細胞に対する細胞染色によって抗原反応性の評価を行った。抗原にはヒトCD69もしくはマウスCD69発現ベクターをFreeStyle MAX Reagent(Invitrogen社製)を用いた標準方法でトランスフェクションして48時間後に4% PFAで固定したCHO−S細胞を用いた。染色の1次抗体には50μg/mlの精製Fab抗体を使用し、室温で1時間インキュベートした後にPBSで3回洗浄した。2次抗体には500倍希釈したAlexa555標識のanti−human IgG(Invitrogen社製)を使用して室温で1時間インキュベートした後にPBSで3回洗浄した。これを蛍光顕微鏡(IX71,OLYMPUS社製)で観察することによって染色の有無を評価した。その結果、160−c76クローンがヒトCD69(hCD69)とマウスCD69(mCD69)双方に結合し、(
図1)、また、160−c7と160−c103はヒトCD69のみに結合することが確認され、最終的に合計3クローンが細胞表面上の天然型ヒトCD69特異的に結合する抗ヒトCD69抗体クローンとして得られた。
【0100】
(6)抗ヒトCD69抗体クローンの塩基配列解析
得られた3クローン(160−c7、160−c76、160−c103)の大腸菌を培養し、プラスミドを回収(QIAprep Spin MiniPrep kit:QIAGEN社製)して塩基配列解析に使用した。表1に、それぞれのクローンのCDR(相補性決定領域)のアミノ酸配列を示した。
【0101】
【表1】
【0102】
(7)抗ヒトCD69抗体クローンのIgG抗体作製
得られた3クローンのFab抗体遺伝子をサブクローニングすることでIgG発現ベクター(重鎖の定常領域はIgG4)を構築した。これらの発現ベクターをLipofectamine(Invitrogen社製)の標準方法に従ってHEK293T細胞にトランスフェクションし、72時間培養後の培養上清を回収した。尚、培地にはUltra Low IgG FBS(Invitrogen社製)を10%で添加したDMEM(Sigma)を用いた。この培養上清からrProteinA Sepharose Fast Flow(GE healthcare社製)を用いた標準方法によってIgG抗体を精製した。精製後のタンパク質はSDS−PAGEによって単一バンドであることを確認、BCA Protein Assay Kit(PIERCE社製)を用いて濃度を決定した。
【0103】
[実施例2]
肺胞内単核球浸潤に対する抗ヒトCD69抗体の効果
BALB/cマウスまたはBALB/cに対して10回以上バッククロスしたCD69欠損(CD69KO)マウス(Murata, K. et al. 2003. Int. Immunol. 15: 987−992)とDO11.10 トランスジェニックマウスを掛け合わせた個体を使用した。これらのマウスの脾臓CD4T細胞を、AutoMACSソーター(Miltenyi Biotec)を用いて精製し、>98%の純度とした。単離したCD4T細胞を、Th2条件下(IL−2 10u/ml, IL−4 100U/ml)で固相化した抗TCR及び抗CD28モノクローナル抗体により刺激しながら培養し、培養開始から2日後に、ヒトCD69(hCD69)遺伝子を含むレトロウイルスベクターにより、ヒトCD69遺伝子を導入した。ヒトCD69遺伝子導入の方法は、既述の方法に準じた(Kimura, M. et al. 2001. Immunity 15: 275−287.)。培養開始から5日後に、培養した細胞を回収し、フローサイトメトリーにより、ヒトCD69発現を確認した(
図2)。50.2%の細胞がヒトCD69陽性であった。
【0104】
300万個の、上記培養により得られたヒトCD69(hCD69)を過剰発現する、CD69KOマウスTh2細胞、又は野生型BALB/cマウスのTh2細胞を、野生型BALB/cマウス中に静注投与した(day0)。細胞移入後、day1及び3に、超音波ネブライザー(NE−U07; Omron社製)を用いて、30分間、エアロゾル化した生理食塩水中の1%OVA溶液をマウスに吸入させることにより、気道を介してマウスをアレルゲンチャレンジに曝露した。
【0105】
day1のOVA吸入の2時間前に、以下の抗体を100μg/マウスの用量で腹腔内に注入した:
コントロール抗体(抗“TSLYKKAG” peptide IgG4 自社開発)
マウス抗ヒトCD69モノクローナル抗体(FN50 BioLegend社製)
160−c7
160−c76
160−c103
【0106】
Day5に、既報に従い肺胞洗浄(BAL)を行った(Kamata, T. et al., 2003, J. Clin. Invest. 111: 109−119)。全ての肺胞洗浄液を採集し、150μl分取液中の細胞をカウントした。10万個の生存しているBAL細胞をサイトスピン4(Thermo Fisher Scientific社製)によりスライド上に細胞遠心分離し、メイグリュンワルドギムザ溶液(メルク社製)により染色した。各スライド上、500個の白血球をカウントし、細胞型を、形態学的クライテリアを用いて同定した。各細胞型の百分率を計算した。
【0107】
結果を
図3に示す。抗hCD69抗体は、OVA吸入により生じる肺胞内への単核球の浸潤、特に好酸球の浸潤を抑制した。
【0108】
[実施例3]
高親和性抗ヒトCD69抗体の選択
実施例1で選択した抗体群の軽鎖CDR3に変異を導入することにより、よりヒトCD69への親和性が高い抗体の選択を試みた。具体的には、Prassler J, Steidl S, Urlinger S. Immunotherapy. 2009 Jul;1(4):571−83.および Hillig RC, Urlinger S, Fanghanel J, Brocks B, Haenel C, Stark Y, Sulzle D, Svergun DI, Baesler S, Malawski G, Moosmayer D, Menrad A, Schirner M, Licha K. J Mol Biol. 2008 Mar 14;377(1):206−19.に記述されている方法に従った。2回の抗体選択ラウンドを実施した後、得られた抗体クローン群の軽鎖CDR3の塩基配列を調べて新規の配列を持った抗体クローンを同定した。これらを大腸菌内で発現させ、その溶菌液を用いて抗原に対するELISAを行うと同時に、溶菌液中の抗体量をサンドイッチELISAで測定した。抗原に対するELISAの吸光度と抗体量より各クローンの結合比活性を算出し、高親和性クローンを選抜した。また、高親和性上位10クローンについてはIgG化を行いK
D値の測定を行った。
【0109】
実施例1と同様に、Fab抗体遺伝子をサブクローニングすることでIgG発現ベクター(重鎖の定常領域はIgG4)を構築した。これらの発現ベクターをLipofectamine(Invitorogen社製)によりHEK293T細胞にトランスフェクションし、72時間培養し、回収した培養上清からIgG抗体を精製した。
【0110】
調製したIgGクローンのヒトCD69への親和性を、scatchard plotにより評価した。具体的には、Immunoassays (OXFORD UNIVERSITY PRESS, 2000)に記載されている原理に従い算出した。抗体を様々な濃度の抗原と平衡状態に達するまで室温で2時間インキュベーションを行い、これらのインキュベーション液中に存在する遊離抗体の量をELISA法で測定した。各平衡化サンプルの遊離抗体量の変化に基づき結合定数および解離定数(K
D値)を求めた。尚、平衡化反応時の抗体濃度は0.015 μg/mlとし、遊離抗体量を測定する際のELISAプレートには抗原を1 μg/mlで固相化したものを用いた。
【0111】
その結果、軽鎖CDR3以外のCDRが160−c76と同じクローン群において、マウスCD69への交差反応性を維持しつつ、ヒトCD69へ結合する複数の高親和性クローンが選択された。表2に、特にヒトCD69への親和性が高かった2クローン、234−61及び234−83の軽鎖CDR3のアミノ酸配列および親和性を示す。これら2クローンの親和性は、軽鎖CDR3以外が同じ配列である160−c76クローンと比較して、ヒトCD69への親和性が9倍以上増加した。
【0112】
【表2】
【0113】
[実施例4]
マウスCD69への交差反応性
マウスCD69への反応性を以下の通り評価した。野生型マウス及びCD69KOマウス(いずれもBalb/c)から脾細胞を単離し、Phorbol 12−myristate 13−acetate(PMA)で4時間刺激することにより、CD69の細胞表面上への発現を誘導した。1×10
6個の脾細胞に対して、各抗ヒトCD69抗体(160−c76、234−61及び234−83)を1μg添加し、氷上で30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、二次抗体としてAnti−human IgG−Alexa488 (x200 dilution)を添加し、氷上で20分間インキュベートした。細胞を洗浄後、フローサイトメトリー(FACSCalibur:Becton, Dickinson社製)により、各抗ヒトCD69抗体による染色強度を評価した。陽性対照として、Anti−mouse CD69 ハムスターモノクローナル抗体 (H1.2F3)−FITC(Becton, Dickinson社製)を用いた。
一方、ヒトCD69への反応性を、PMAで4時間刺激することにより、CD69の細胞表面上への発現を誘導した健常人の末梢血単核球(PBMC)を用いて、マウスCD69と同様に評価した。陽性対照として、Anti−human CD69 マウスモノクローナル抗体(FN50)(BioLegend社製)を用いた。
【0114】
その結果、160−c76、234−61及び234−83のいずれのクローンも、活性化マウス脾細胞及び活性化ヒト末梢血単核球に結合し、マウスCD69(mCD69)とヒトCD69(hCD69)の双方へ交差反応することが示された(
図4)。160−c76と比較して、234−61によるマウスCD69の染色強度は弱かった。一方、234−83は、マウスCD69へ強力に結合した。
【0115】
[実施例5]
肺胞内単核球浸潤に対する抗ヒトCD69抗体の効果
実施例2と同様のプロトコールにより、肺胞内単核球浸潤に対する以下の抗ヒトCD69抗体の効果を評価した。
コントロール抗体(抗”TSLYKKAG” peptide IgG4 自社開発)
マウス抗ヒトCD69モノクローナル抗体(FN50 BioLegend社製)
160−c76
234−61
234−83
【0116】
即ち、BALB/cに対して10回以上バッククロスしたCD69欠損(CD69KO)マウスを、4mgの水酸化アルミニウムゲル(alum)中の250μgのOVA(シグマーアルドリッチからの鶏卵アルブミン)により、腹腔内に免疫した。OVA感作したCD69欠損マウスの脾臓CD4T細胞を、CD4+T細胞単離キットMiltenyi Biotec社製)及びAutoMACSソーター(Miltenyi Biotec社製)を用いて、精製し、>98%の純度とした。単離したCD4T細胞を、Th2条件下で固相化した抗TCR及び抗CD28mAbにより刺激しながら培養し、培養開始から2日後に、ヒトCD69(hCD69)遺伝子を含むレトロウイルスベクターにより、hCD69遺伝子を導入した。培養開始から5日後に、培養した細胞を回収し、フローサイトメトリーにより、hCD69発現を確認した。58.7%の細胞がhCD69陽性であった。
【0117】
300万個の、上記培養により得られたhCD69を過剰発現するCD69KOマウスTh2細胞、又は野生型BALB/cマウスのTh2細胞を、野生型BALB/cマウス中に静注投与した(day0)。細胞移入後、day1及び3に、超音波ネブライザー(NE−U07; Omron社製)を用いて、30分間、エアロゾル化した生理食塩水中の1%OVA溶液をマウスに吸入させることにより、気道を介してマウスをアレルゲンチャレンジに曝露した。
【0118】
day1のOVA吸入の2時間前に、評価対象の抗体を100μg/マウスの用量で腹腔内に注入した。day4に、既報に従い肺胞洗浄(BAL)を行った(Kamata, T. et al., 2003, J. Clin. Invest. 111: 109−119)。全ての肺胞洗浄液を採集し、150μl分取液中の細胞をカウントした。10万個の生存しているBAL細胞をサイトスピン4(Thermo Fisher Scientific社製)によりスライド上に細胞遠心分離し、メイグリュンワルドギムザ溶液(メルク社製)により染色した。各スライド上、500個の白血球をカウントし、細胞型を、形態学的クライテリアを用いて同定した。各細胞型の百分率を計算した。
【0119】
結果を
図5に示す。評価したいずれの抗hCD69抗体も、OVA吸入により生じる肺胞内への白血球(好酸球、好中球、リンパ球、マクロファージ)の浸潤を抑制した。白血球浸潤抑制能はFN50<160−c76<234−61<234−83であり、親和性向上による白血球浸潤抑制能の増強が確認された。
【0120】
[実施例6]
エピトープの同定
ヒトCD69の部分ペプチドを固定化したペプチドアレイを用いて、抗ヒトCD69抗体234−83、160−c7及び160−c103について、エピトープマッピングを行った。具体的には、下記の表のように、ヒトCD69の細胞外ドメインをカバーする配列(60−199)に対して、残基数が12アミノ酸残基でオフセットが3アミノ酸残基のペプチド群からなるペプチドアレイを作製した(PepSpots, JPT社製)。ペプチドアレイと抗ヒトCD69抗体の反応はJPT社のマニュアルに従い行った。抗ヒトCD69抗体はHRP標識(Peroxidase Labeling Kit - NH2, Dojindo社製)したものを用いた。
【0121】
【表3】
【0122】
その結果、234−83は、上記ペプチド#2及び#3に特異的に結合し、特にペプチド#3に対して強力に結合した。この結果から、234−83のエピトープには、ペプチド#2とペプチド#3に共通し、且つヒトCD69とマウスCD69に共通する配列番号33で表されるアミノ酸配列(YNCPG)が含まれることが示唆された(
図6)。
【0123】
160−c7は、上記ペプチド#26に特異的に結合した。この結果から、160−c7は配列番号59で表されるアミノ酸配列からなるエピトープにおいてヒトCD69に結合することが示された。
【0124】
160−c103は、上記ペプチド#24、#25及び#26に特異的に結合した。この結果から、160−c103のエピトープには、ペプチド#24、#25及び#26に共通する配列番号78で表されるアミノ酸配列(YAGREE)が含まれることが示唆された。