特許第6286774号(P6286774)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ポップリベット・ファスナー株式会社の特許一覧 ▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286774
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】クリップ
(51)【国際特許分類】
   F16B 19/10 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
   F16B19/10 B
【請求項の数】12
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-246466(P2014-246466)
(22)【出願日】2014年12月5日
(65)【公開番号】特開2016-109192(P2016-109192A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2016年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025243
【氏名又は名称】ポップリベット・ファスナー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100103849
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 誠
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 富男
(72)【発明者】
【氏名】藤井 遼
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−165810(JP,U)
【文献】 特開2009−174636(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/119900(WO,A1)
【文献】 特開2006−057666(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0057948(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 17/00−19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付部材を被取付部材に取り付けるため、ピンと、前記ピンを挿入するための開口部を有するグロメットとを備えるクリップであって、
前記ピンは、円板状のピンフランジと、
前記ピンフランジの下面に形成された複数のガイドリブと、
前記ガイドリブの下方に延びるピン軸部と、を有し、
前記グロメットは、円筒形のグロメットフランジと、
前記グロメットフランジの内側の円周方向に沿って次第に高さが高くなり、前記ガイドリブの下面を押し上げるための複数の押上げ斜面と、
前記押上げ斜面に隣接し、前記ガイドリブの下面に当接するための上面が平らな複数の斜面上部平面と、
前記斜面上部平面に隣接し、前記ガイドリブの側面に当接するための縦方向に延びる複数の過回転防止壁と、
前記グロメットフランジの下面から斜め下方に延びる一対の脱落防止爪と、を有し、
前記ピン軸部には縦方向に延びるピン位置決め溝が形成され、
仮嵌合状態では、前記グロメットの前記脱落防止爪が、前記ピン位置決め溝に入り、前記ピンは、前記グロメットに対して回転しないように規制される、
ことを特徴とするクリップ。
【請求項2】
請求項1に記載のクリップであって、前記押上げ斜面に隣接し、前記ガイドリブの外周に係合するため縦方向に延びる複数の回転抑制リブを有するクリップ。
【請求項3】
請求項2に記載のクリップであって、
前記グロメットの前記回転抑制リブと、前記押上げ斜面と、前記斜面上部平面と、前記過回転防止壁との数は、それぞれ4つであるクリップ。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載のクリップであって、
前記グロメットは、前記グロメットフランジの下方に形成されたグロメット胴部と、
前記グロメット胴部の間にスリットをあけて形成された一対の拡開脚と、を有する、
ことを特徴とするクリップ。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のクリップであって、前記ピンの前記ピン軸部は、 円柱状のピン軸上部と、
前記ピン軸上部の下側の外周上に形成され、前記ピン軸上部より大径で、上面が斜面である複数のピン外周部と、
前記ピン外周部の間の前記ピン位置決め溝と、
前記ピン外周部の下側に形成されたピン軸下部と、
前記ピン軸下部の下側に形成され、ピン軸下部より小径の円柱状のピン下端円筒部と、を有するクリップ。
【請求項6】
請求項5に記載のクリップであって、
前記ピンの前記ピン位置決め溝内には、前記グロメットの前記脱落防止爪が係合するための脱落防止爪係合棚が形成されているクリップ。
【請求項7】
請求項に記載のクリップであって、
仮嵌合状態では、前記脱落防止爪係合棚と、前記グロメットの前記脱落防止爪が係合し、前記ピンは抜け止めされ、
前記グロメットの一対の前記拡開脚の先端部が、前記ピン下端円筒部の下側に係合し、前記ピンが誤って押し込まれないように保持するクリップ。
【請求項8】
請求項4乃至の何れか1項に記載のクリップであって、
本嵌合状態では、前記ピンの前記ガイドリブの外周部は、前記グロメットの前記過回転防止壁と、前記回転抑制リブとの間に係止され、
前記拡開脚先端部は、前記ピン軸下部により押し広げられて、一対の前記拡開脚の間隔が広くなり、
前記ピン軸上部に形成されたピン軸凸部が、前記脱落防止爪と係合し、前記ピンは抜け止めされるクリップ。
【請求項9】
請求項に記載のクリップであって、
本嵌合状態で、前記ピンを回転させると、前記ピンの前記ガイドリブは、前記回転抑制リブと前記過回転防止壁との間の係合から外れ、前記グロメットの前記押上げ斜面上に沿って押し上げられ、
前記ガイドリブは、前記斜面上部平面上で前記過回転防止壁に当接して回転を止められるクリップ。
【請求項10】
請求項に記載のクリップであって、
前記過回転防止壁に当接した前記ピンを引き上げると、前記脱落防止爪の下面が前記ピン外周部の前記斜面に当接して、前記ピンは回転し、
前記グロメットの前記脱落防止爪は、前記ピンの前記ピン位置決め溝に入り、前記脱落防止爪係合棚に係合し、
前記グロメットの一対の前記拡開脚の先端部が、前記ピン下端円筒部の下側に係合し、前記仮嵌合状態に戻るクリップ。
【請求項11】
取付部材を被取付部材に取り付けるため、ピンと、前記ピンを挿入するための開口部を有するグロメットとを備えるクリップであって、
前記ピンは、円板状のピンフランジと、
前記ピンフランジの下面に形成された複数のガイドリブと、
前記ガイドリブの下方に延びるピン軸部と、を有し、
前記グロメットは、円筒形のグロメットフランジと、
前記グロメットフランジの下面から斜め下方に延びる一対の脱落防止爪と、
前記グロメットフランジの下方に形成されたグロメット胴部と、
前記グロメット胴部の間にスリットをあけて形成された一対の拡開脚と、を有し、
前記ピン軸部には縦方向に延びるピン位置決め溝が形成され、前記グロメットの前記脱落防止爪は、前記ピン位置決め溝に入り、前記ピンは前記グロメットに対して回転しないように規制されることを特徴とするクリップ。
【請求項12】
請求項1に記載のクリップであって、
前記グロメットは、前記グロメットフランジの内側に形成され、縦方向に延びる複数の回転抑制リブと、縦方向に延びる複数の過回転防止壁と、を有し、
前記ピンの前記ガイドリブの外周部は、前記グロメットの前記回転抑制リブと、前記過回転防止壁との間に係止されるクリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のパネル等の被取付部材に、内装部品、保護カバー等の取付部材を取り付けるのに用いるクリップに関する。より詳しくは、ピンとグロメットとの2部品からなり、再使用することが出来るクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のパネル等の被取付部材に内装部品、保護カバー等の取付部材を取り付けるのにクリップを用いる。このようなクリップは従来から多く提供されている。ピンとグロメットとの組み合わせからなり、グロメットの胴部の開口部にピンを圧入し、胴部に設けられた係止爪を拡径させて被取付部材(パネル)の取付孔に係止するものが多く用いられている。
【0003】
このようなクリップは、ピンをグロメットに押圧するだけで、簡単に被取付部材に取付部材を取り付けることが出来る。ピンとグロメットを嵌合させた後、ピンを回転させることにより、ピンとグロメットを取り外すことが出来るクリップもある。
しかし、従来のピンを回転させて取り外すクリップは、どこまで回転させれば取り外すことが出来るかわからず、ピンを回し過ぎることがある。また、ピンを取り外す途中で、ピンを誤って再度押し込んでしまうことがあった。
【0004】
特許文献1は、貫通孔を有する顎状部と、顎状部の他方の側に筒状に設けられ、内側の面に凸部が形成されている弾性脚片とを有する取付部材(グロメット)と、フランジと、フランジから突設され、太径部と細径部が設けられた脚部材(ピン)とからなる部材締結用のクリップを開示する。脚部材の細径部から太径部の円周方向にカム部が設けられている。取付部材に脚部材を挿入すると、弾性脚片の凸部がカム部に乗り上げ、弾性脚片が拡開されて、部材が取り付けられる。
脚部材には、少なくとも1つの傾斜面を有する突部が設けられ、取付部材には、傾斜面を有する突壁が設けられている。弾性脚片が拡開されている状態で、脚部材が回転された場合に、突壁は、突部の傾斜面に当接し、脚部材を取付部材から離脱する方向に案内する。
【0005】
特許文献1のクリップは、少なくとも1つの傾斜面を有する突部と、突部の傾斜面に当接する突壁を設けることで、取付部の構造を簡便化することが出来るとしている。
しかし、特許文献1のクリップは、脚部材の治具係合部にドライバー等の治具を係合させて回転させ、取付部材と脚部材を取り外すとき、脚部材の回転を止める手段は設けられていない。脚部材をどこまで回転させれば、取り外すことが出来るかわからず、脚部材を必要以上に回すことになる。
また、クリップを取り外すため、脚部材を回転させた後、脚部材を誤って押し込んで、再度脚部材と取付部材を結合してしまうことがある。
【0006】
特許文献2は、固定部材(グロメット)と、スナップ部材(ピン)とを備えるスナップフィット構造を開示する。固定部材は、中空通し穴が形成され、片側に延伸された台座を有し、台座の外表面には、複数の突当部が設けられている。固定部材の台座と反対側には位置決め凹穴が設けられ、位置決め凹穴には複数の傾斜したガイド部が形成されている。
スナップ部材は、片側に延伸された係止リブを有し、係止リブは固定部材の通し穴にはめ込まれる。スナップ部材の他方の側には、ドライバー等の工具で緩めるためのスロットが設けられている。加力部の裏側には、ガイド用突起部が設けられている。係止リブには、複数のリブと複数の位置決めスロットが設けられている。
係止リブの位置決めスロットに台座の位置決めフックを嵌め込み、台座を拡開させて、取付部材を固定する。
【0007】
特許文献2のクリップは、工具を使用せず、手でスナップ部材を持って押し込むことにより、簡単に組み立てることが出来る。スナップ部材の加力部を反時計回りに回すと、ガイド用突起部がガイド部に当接し、スナップ部材が抜ける方向に移動し、取り外すことが出来る。
しかし、特許文献1のクリップと同様に、特許文献2のクリップは、スナップ部材を取り外すため回転させるとき、回転を止める手段は設けられていない。また、スナップ部材を回転させた後、誤って再度スナップ部材を押し込むことがある。
【0008】
特許文献3は、内方に向けて突出する係止部が形成された脚部を有する本体部(グロメット)と、頭部から下方に突出し、側面に凹部が形成された軸部を有するピンと、からなるプッシュリベット(リベット)を開示する。ピンを押圧することにより、脚部を拡開させるとともに、凹部に係止部を係止させて被留め付け物を取り付ける。取り付け後、ピンの頭部に形成された回動手段によりピンを回動させると、ピンの頭部下に形成された突起片が、本体部に形成された押上げ部の斜面に当接し、押し上げられ、プッシュリベットを取り外すことが出来る。回動手段は、大溝部と、大溝部より幅の小さい小溝部とを有する。
【0009】
特許文献3のプッシュリベットは、小溝部に適合するドライバー等の回動具がなくても、コイン等の部材を大溝部に係合させて回動させることにより、本体部とピンを係止状態から取り外すことが出来る。
しかし、特許文献3のクリップも、ピンを取り外すため回転させるとき、回転を止める手段は設けられていない。また、ピンを回転させた後、誤って再度ピンを押し込むことがある。
【0010】
そのため、取り外すとき、ピンの回し過ぎを防ぐことが出来るクリップが求められていた。取り外す途中で、ピンを再度押し込んでしまうことを防ぐことが出来るクリップが求められていた。
即ち、作業の熟練を必要とせず、誰でも取り外して再使用することのできるクリップが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011−231850号公報
【特許文献2】実用新案登録第3182541号公報
【特許文献3】実用新案登録第3126590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、クリップを取り外すときピンの回し過ぎを防ぐことが出来、取り外し作業中に、誤ってピンを再度押し込んでしまうことを防ぐことが出来るクリップを提供することである。
本発明の別の目的は、確実に再使用することの出来るクリップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するため、本発明の第1の態様は、取付部材を被取付部材に取り付けるため、ピンと、前記ピンを挿入するための開口部を有するグロメットとを備えるクリップであって、
前記ピンは、円板状のピンフランジと、
前記ピンフランジの下面に形成された複数のガイドリブと、
前記ガイドリブの下方に延びるピン軸部と、を有し、
前記グロメットは、円筒形のグロメットフランジと、
前記グロメットフランジの内側の円周方向に沿って次第に高さが高くなり、前記ガイドリブの下面を押し上げるための複数の押上げ斜面と、
前記押上げ斜面に隣接し、前記ガイドリブの下面に当接するための上面が平らな複数の斜面上部平面と、
前記斜面上部平面に隣接し、前記ガイドリブの側面に当接するための縦方向に延びる複数の過回転防止壁と、を有する、ことを特徴とするクリップである。
【0014】
ピンのガイドリブを有し、グロメットが、押上げ斜面と、斜面上部平面と、過回転防止壁とを有すると、ピンを回転させることにより、ピンのガイドリブが、グロメットの押上げ斜面上に沿って押し上げられ、斜面上部平面上で過回転防止壁に当接して回転を止められ、本嵌合状態を解除することが出来る。
【0015】
前記押上げ斜面に隣接し、前記ガイドリブの外周に係合するため縦方向に延びる複数の回転抑制リブを有することが好ましい。
回転抑制リブと過回転防止壁の間にガイドリブを保持することにより本勘合状態が維持される。
【0016】
前記グロメットの前記回転抑制リブと、前記押上げ斜面と、前記斜面上部平面と、前記過回転防止壁との数は、それぞれ4つであることが好ましい。
回転抑制リブと、押上げ斜面と、斜面上部平面と、過回転防止壁とがこの順で4つづつあると、ピンを90°回転させると、グロメットからピンを浮き上がらせることが出来る。
【0017】
前記グロメットは、更に、
前記グロメットフランジの下面から斜め下方に延びる一対の脱落防止爪と、
前記グロメットフランジの下方に形成されたグロメット胴部と、
前記グロメット胴部の間にスリットをあけて形成された一対の拡開脚と、を有することが好ましい。
【0018】
グロメットがグロメットフランジの下面から斜め下方に延びる一対の脱落防止爪を有すると、ピンを抜け止めするのに使用することが出来る。
グロメットが一対の拡開脚を有すると、拡開脚先端部が広がって、取付部材を取り付けることが出来る。
【0019】
ピンがガイドリブを有し、グロメットが押上げ斜面を有すると、ピンを回転させるとき、ガイドリブが押上げ斜面上を摺動し、ピンを解除する方向に移動させることが出来る。
グロメットが斜面上部平面と過回転防止壁とを有すると、ピンを取り外すため回転させるとき、ガイドリブが、斜面上部平面上で過回転防止壁に当接する。そのため、ピンの回し過ぎを防止することが出来る。
【0020】
前記ピンの前記ピン軸部は、円柱状のピン軸上部と、前記ピン軸上部の下側の円周上に形成され、前記ピン軸上部より大径で、上面が斜面である複数のピン外周部と、前記ピン外周部の間のピン位置決め溝と、前記ピン外周部の下側に形成されたピン軸下部と、前記ピン軸下部の下側に形成され、ピン軸下部より小径の円柱状のピン下端円筒部と、を有することが好ましい。
前記ピン軸下部の断面は、ほぼ正方形で、各辺が緩やかにカーブすることが好ましい。
【0021】
ピン外周部と、ピン外周部の間のピン位置決め溝が形成されていると、グロメットの脱落防止爪がピン位置決め溝に位置するようにすることにより、ピンをグロメット内に押し込むとき、ピンとグロメットが回転しないようにすることが出来る。
【0022】
前記ピンの前記ピン位置決め溝内には、前記グロメットの前記脱落防止爪が係合するための脱落防止爪係合棚が形成されていることが好ましい。
ピン位置決め溝内に脱落防止爪係合棚があると、脱落防止爪が脱落防止爪係合棚に係合し、仮嵌合状態で、ピンが脱落しないように保持することが出来る。
【0023】
仮嵌合状態では、前記グロメットの前記脱落防止爪が、前記ピンの前記ピン位置決め溝に入り、前記ピンは、前記グロメットに対して回転しないように規制されることが好ましい。
脱落防止爪が、ピン位置決め溝に入っていると、仮嵌合状態から、ピンをグロメットに対して回転させずに押し込むことが出来る。
【0024】
仮嵌合状態では、前記脱落防止爪係合棚と、前記グロメットの前記脱落防止爪が係合し、前記ピンは抜け止めされ、
前記グロメットの一対の拡開脚先端部が、前記ピン下端円筒部の下側に係合し、前記ピンが誤って押し込まれないように保持することが好ましい。
【0025】
仮嵌合状態で、一対の拡開脚先端部が、ピン下端円筒部の下側に係合すると、ピンを容易に押し込めないように保持することが出来る。
仮嵌合状態で、脱落防止爪係合棚と脱落防止爪とが係合すると、ピンは仮嵌合状態から抜けないように保持される。
【0026】
本嵌合状態では、前記ピンの前記ガイドリブの外周部は、前記グロメットの前記過回転防止壁と、前記回転抑制リブとの間に係止され、
前記拡開脚先端部は、前記ピン軸下部により押し広げられて、一対の前記拡開脚の間隔が広くなり、
前記ピン軸上部に形成されたピン軸凸部が、前記脱落防止爪と係合し、前記ピンは抜け止めされることが好ましい。
【0027】
本嵌合状態で、ピンのガイドリブの外周部が、過回転防止壁と回転抑制リブとの間に入ると、ピンが容易に回転しないように保持される。
拡開脚先端部が、ピン軸下部により押し広げられると、グロメットフランジと、拡開脚との間に被取付部材と取付部材を挟むことが出来る。
ピン軸凸部が脱落防止爪と係合すると、ピンは確実に抜け止めされる。
【0028】
本嵌合状態で、前記ピンを回転させると、前記ピンの前記ガイドリブは、前記回転抑制リブと前記過回転防止壁との間の係合から外れ、前記グロメットの前記押上げ斜面上に沿って押し上げられ、
前記ガイドリブは、前記斜面上部平面上で前記過回転防止壁に当接して回転を止められることが好ましい。
【0029】
ピンを回転させることにより、ガイドリブが押上げ斜面上に沿って押し上げられ、本嵌合状態を容易に解除することが出来る。
ガイドリブが、斜面上部平面上で過回転防止壁に当接して回転を止められるので、ピンを必要以上に回転させることがない。
【0030】
前記過回転防止壁に当接した前記ピンを引き上げると、前記脱落防止爪の下面が前記ピン外周部の前記斜面に当接して、前記ピンは回転し、
前記グロメットの前記脱落防止爪は、前記ピンの前記ピン位置決め溝に入り、前記脱落防止爪係合棚に係合し、
前記グロメットの一対の前記拡開脚の先端部が、前記ピン下端円筒部の下側に係合し、前記仮嵌合状態に戻ることが好ましい。
【0031】
指で、ピンを引き上げると、ピンは回転させられ、脱落防止爪は、初めの仮嵌合状態の時とは、90°ずれた隣のピン位置決め溝に入る。グロメットとピンが仮嵌合状態に戻ると、そのままで再使用することが出来る。
【0032】
本発明の第2の態様は、取付部材を被取付部材に取り付けるため、ピンと、前記ピンを挿入するための開口部を有するグロメットとを備えるクリップであって、
前記ピンは、円板状のピンフランジと、
前記ピンフランジの下面に形成された複数のガイドリブと、
前記ガイドリブの下方に延びるピン軸部と、を有し、
前記グロメットは、円筒形のグロメットフランジと、
前記グロメットフランジの下面から斜め下方に延びる一対の脱落防止爪と、
前記グロメットフランジの下方に形成されたグロメット胴部と、
前記グロメット胴部の間にスリットをあけて形成された一対の拡開脚と、を有することを特徴とするクリップである。
【0033】
前記ピン軸部には縦方向に延びるピン位置決め溝が形成され、前記グロメットの前記脱落防止爪は、前記ピン位置決め溝に入り、前記ピンは前記グロメットに対して回転しないように規制されることが好ましい。
【0034】
前記グロメットは、前記グロメットフランジの内側に形成され、縦方向に延びる複数の回転抑制リブと、縦方向に延びる複数の過回転防止壁と、を有し、
前記ピンの前記ガイドリブの外周部は、前記グロメットの前記回転抑制リブと、前記過回転防止壁との間に係止されることが好ましい。
【0035】
本発明の第3の態様は、取付部材を被取付部材に取り付けるため、開口部を有するグロメットと共にクリップを構成するピンであって、
円板状のピンフランジと、
前記ピンフランジの下面に形成された複数のガイドリブと、
前記ガイドリブの下方に延びるピン軸部と、を有し、
前記ピン軸部は、ピン軸上部と、前記ピン軸上部の下側の円周上に形成され、前記ピン軸上部より大径で、上面が斜面である複数のピン外周部と、前記ピン外周部の間のピン位置決め溝と、前記ピン外周部の下側に形成されたピン軸下部と、前記ピン軸下部の下側に形成され、ピン軸下部より小径のピン下端円筒部と、を有することを特徴とするピンである。
【0036】
本発明の第4の態様は、取付部材を被取付部材に取り付けるため、ピンと共にクリップを構成し、前記ピンを挿入するための開口部を有するグロメットであって、
円筒形のグロメットフランジと、
前記グロメットフランジの内側の円周方向に形成された複数の回転抑制リブと、
前記グロメットフランジの内側に沿って次第に高さが高くなる複数の押上げ斜面と、
前記押上げ斜面に隣接し、上面が平らな複数の斜面上部平面と、
前記斜面上部平面に隣接し、縦方向に延びる複数の過回転防止壁と、
前記グロメットフランジの下面から斜め下方に延びる一対の脱落防止爪と、
前記グロメットフランジの下方に形成されたグロメット胴部と、
前記グロメット胴部の間にスリットをあけて形成された一対の拡開脚と、を有する、
ことを特徴とするグロメットである。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、クリップを取り外すときピンの回し過ぎを防ぐことが出来、取り外し作業中に、誤ってピンを再度押し込んでしまうことを防ぐことが出来るクリップを提供することが出来る。
また、確実に再使用することの出来るクリップを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の実施形態によるクリップのグロメットの斜視図である。
図2図1のグロメットの上面図である。
図3図1のグロメットの正面図である。
図4図1のグロメットの底面図である。
図5図1のグロメットの右側面図である。
図6図2のグロメットのA−A線に沿った断面図である。
図7図2のグロメットのB−B線に沿った断面図である。
図8】本発明の実施形態によるクリップのピンの斜視図である。
図9図8のピンの上面図である。
図10図8のピンの正面図である。
図11図8のピンの底面図である。
図12図8のピンの右側面図である。
図13図9のピンのC−C線に沿った断面図である。
図14図10のピンのD−D線に沿った断面図である。
図15図10のピンのE−E線に沿った断面図である。
図16図1のグロメットと図8のピンとを仮嵌合した状態のクリップの上面図である。
図17図16のクリップの正面図である。
図18図16のクリップのF−F線に沿った断面図である。
図19図16のクリップのG−G線に沿った断面図である。
図20図18のクリップのH−H線に沿った断面図である。
図21図18のクリップのJ−J線に沿った断面図である。
図22図1のグロメットと図8のピンとを本嵌合した状態のクリップの上面図である。
図23図22のクリップのK−K線に沿った断面図である。
図24図22のクリップのL−L線に沿った断面図である。
図25図24のクリップのM−M線に沿った断面図である。
図26】本発明の実施形態によるクリップの取り外し工具の正面図である。
図27図26の取り外し工具の下面図である。
図28図26の取り外し工具をクリップにセットした状態の正面図である。
図29図26の取り外し工具によりピンを回転させた中間段階の断面図である。
図30】ピンを約75°回転させた段階の断面図である。
図31図30と直交する方向の断面図である。
図32図30の段階から、ピンを指で摘まんで引き上げ、ピンを約75〜90°回転させた段階の断面図である。
図33図32のN−N線に沿った断面図である。
図34図32の段階から更にピンを引き上げ、ピンを約90°回転させた段階のN−N線と同じ線に沿った断面図である。
図35】クリップを取付部材と被取付部材から取り外した状態のN−N線と同じ線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。本発明の実施形態によるクリップ1は、図1〜7に示す合成樹脂製のグロメット30と、図8〜15に示す合成樹脂製のピン10とからなる。ピン10とグロメット30とは、図16〜21に示す仮嵌合状態に仮止めされて保管される。クリップ1は、内装部品、保護カバー等の取付部材を、自動車のボディパネル等の被取付部材に取り付けるのに使用される。取付部材の取付孔と被取付部材の取付孔を合わせて、仮嵌合状態のクリップ1を取付孔に挿入し、グロメット30にピン10を押し込んで、図22〜25に示す本嵌合状態とする。
図29〜35にクリップ1を取り外す手順を示す。
【0040】
(グロメット)
図1〜7を参照して、グロメット30について説明する。図1は、本発明の実施形態によるクリップ1のグロメット30の斜視図である。図2は上面図、図3は正面図、図4は底面図、図5は右側面図である。図6図2のグロメット30のA−A線に沿った断面図、図7図2のB−B線に沿った断面図である。
【0041】
図1、3に示すように、グロメット30は、上部にほぼ円筒形のグロメットフランジ31と、グロメットフランジ31の中央部から下方に延びる断面がほぼ正方形のグロメット胴部41とを有する。グロメット30の中央部は、ピン10を挿入することが出来るように開口している。
図1、6に示すように、グロメットフランジ31は円筒形で、グロメットフランジ31の下はほぼ平面のフランジ底部32である。グロメットフランジ31の内側には、凸状に隆起した回転抑制リブ33が縦方向に延びるように形成されている。回転抑制リブ33は、90°間隔で4本形成されている。なお、本明細書では、縦方向とはピン10とグロメット30の中心軸の方向をいう。
【0042】
グロメットフランジ31の内側には、回転抑制リブ33に隣接した位置から押上げ斜面35が形成されている。押上げ斜面35は、グロメットフランジ31の内周に沿って徐々に高さが高くなる。押上げ斜面35は、90°間隔で4か所に形成されている。ピン10とグロメット30を本嵌合させた後、取り外すときは、ピン10を回転させると、ピン10のガイドリブ12が、グロメット30の押上げ斜面35上を摺動して、ピン10が押し上げられるようになっている。
【0043】
押上げ斜面35が最も高くなった位置の円周方向に隣接して、小さい斜面上部平面37が形成されている。
斜面上部平面37に隣接して、縦方向に延びる過回転防止壁34が形成されている。過回転防止壁34は、次の回転抑制リブ33に隣接している。
回転抑制リブ33、押上げ斜面35、斜面上部平面37、過回転防止壁34は、この順で並び、それぞれ90°間隔で4か所に形成されている。
【0044】
ピン10とグロメット30を本嵌合させた後、取り外すときは、ピン10を回転させると、ガイドリブ12の一方の側面は、過回転防止壁34に当接し、ピン10の回転は止められる。ピン10のガイドリブ12が斜面上部平面37上にあるので、ピン10を押し込むことはできない。そのため、クリップ1を取り外す途中で、誤ってピン10を押し込み、再度嵌合させてしてしまうことを防止することが出来る。
【0045】
グロメット30のフランジ底部32の中央部は開口している。フランジ底部32の対向する方向から一対の脱落防止爪36が開口部中心部に向かって斜め下方に延びる。図2に示すように、一対の脱落防止爪36が対向する方向は、過回転防止壁34及び隣接する回転抑制リブ33の方向と一致している。
【0046】
グロメット30のフランジ底部32の下には、グロメット胴部41が下方に延びる。
グロメット胴部41の間には、一対の拡開脚42が形成されている。図7に示すように、一対の拡開脚42の先端部は、相互に近づく方向に延びる拡開脚先端部43となっている。図2、4に示すように、一対の拡開脚42は、脱落防止爪36が対向する方向と直角方向に対向する。拡開脚42は、縦方向に延びるスリット44により、グロメット胴部41から分離している。
【0047】
図4に示すように、グロメット胴部41と拡開脚42との断面の外形はほぼ正方形である。図5に示すように、脱落防止爪36が対向する方向には、拡開脚42はなく、グロメット胴部41にはスリット43は形成されていない。
図4に示すように、グロメット胴部41の4つの角部は、肉厚が厚くなっている。
【0048】
(ピン)
図8〜15を参照して、ピン10について説明する。図8は、クリップ1のピン10の斜視図である。図9はピン10の上面図、図10は正面図、図11は底面図、図12は右側面図である。図13図9のピン10のC−C線に沿った断面図である。図14図10のピン10のD−D線に沿った断面図、図15はE−E線に沿った断面図である。
ピン10は、上部の円板状のピンフランジ11と、ピンフランジ11の下方に延びるピン軸部21とを有する。
【0049】
ピンフランジ11は、ほぼ円板状である。ピンフランジ11の中心部の上部には、低い円柱状のピンフランジ突起13が形成されている。ピンフランジ突起13と円周の間には、断面がほぼ円形の1つの解除用凹部14が形成されている。ピンフランジ突起13と解除用凹部14とに合う専用の取り外し工具を用いて、グロメット30とピン10との係合を解除することが出来るようになっている。
本実施形態では、専用の取り外し工具を用いて、ピン10を取り外す。ピン10の取り外し方は専用の取り外し工具を使用する方法に限定されない。六角形の突起を形成して六角レンチ等の一般的な工具を使用して取り外すようにすることが出来る。
【0050】
ピンフランジ11の下に、90°間隔で4本のガイドリブ12が設けられている。ガイドリブ12は断面が十字形である。ガイドリブ12は、ピンフランジ11の下面からピン10の縦方向に板状に延びる。
解除用凹部14の横側と下側は、凹部外側部15が形成されている。4本のガイドリブ12の中央部は、ガイドリブ軸部16である。
【0051】
ピン10とグロメット30の仮嵌合状態では、ピン10のガイドリブ12は、グロメット30の過回転防止壁34と回転抑制リブ33との間に入る位置にある。
ピン10とグロメット30を本嵌合させた後、取り外すときは、ピン10を回転させると、ピン10のガイドリブ12が、グロメット30の押上げ斜面35上を摺動して、ピン10が押し上げられるようになっている。
【0052】
ピンフランジ11の下には、中心軸に沿ってピン軸部20が延びる。ピン軸部20は、ピン軸上部21、ピン軸凸部22、ピン外周部23、ピン位置決め溝25、脱落防止爪係合棚26、ピン軸下部27、ピン下端円筒部28、を含んでいる。ピン軸上部21の外周には、4つのピン軸凸部22が90°間隔で形成されている。本嵌合状態で、ピン軸凸部22は、グロメット30の脱落防止爪36に係合し、ピン10が外れないように保持する。
【0053】
ピン軸上部21の下側の周りには4つのピン外周部23が等間隔で設けられている。ピン外周部23の外径は、ピン軸上部21の外径より大きい。ピン外周部23の上面は、円周方向に沿って、一方が高くなるように傾斜し、ピン回転力付与斜面24となっている。クリップ1を本嵌合状態から仮嵌合状態に戻すとき、ピン回転力付与斜面24は、脱落防止爪36が当接して、ピン10を回転させる作用を行う。
【0054】
隣接するピン外周部23の間には、ピン位置決め溝25が下方に延びている。ピン位置決め溝25は90°間隔で4本形成されている。図10、12に示すように、ピン位置決め溝25の円周方向の角度位置は、ガイドリブ12の円周方向の角度位置と同じである。
仮嵌合状態では、グロメット30の脱落防止爪36が、ピン10のピン位置決め溝25に入り、ピン10とグロメット30は、相互に回転しないように規制されるようになっている。
【0055】
ピン位置決め溝25内には、水平面が円周状に延びる脱落防止爪係合棚26となっている。ピン10の脱落防止爪係合棚26の下側部分は、上方に行くにしたがって太さが太くなっている。仮嵌合状態では、グロメット30の一対の脱落防止爪36が、ピン10の脱落防止爪係合棚26に係合することで、ピン10がグロメット30から外れることがないようになっている。
【0056】
ピン位置決め溝25の下部からピン外周部23の下側には、ピン軸下部27が形成されている。ピン軸下部27の断面は、ほぼ正方形であり、各辺は緩やかにカーブする。
本嵌合状態では、グロメット30の一対の拡開脚の先端部43は、ピン軸下部27に係合し、拡開脚42が拡開して、取付部材が外れないように保持する。ピン軸下部27は断面がほぼ正方形なので、拡開脚の先端部43が安定して当接する。
【0057】
ピン軸下部27の下方は、ピン軸下部27より細い円筒形のピン下端円筒部28となっている。仮嵌合状態では、グロメット30の一対の拡開脚先端部43が、ピン下端円筒部28の下側に係合し、ピン10を弱い力では押し込めないように保持する。
ピン軸上部21、ピン軸下部27、ピン下端円筒部28の中心部には、ピン中心孔29が形成されている。ピン中心孔29は、上部で塞がり貫通孔ではない。
【0058】
(仮嵌合状態)
一般的には、クリップ1は、グロメット30とピン10とを組み立てて仮嵌合させた状態で保管され、組み立て部門に納入される。図16は、グロメット30とピン10とを仮嵌合した状態のクリップ1の上面図である。図17は正面図、図18図16のクリップ1のF−F線に沿った断面図、図19はG−G線に沿った断面図である。図20図18のクリップ1のH−H線に沿った断面図、図21はJ−J線に沿った断面図である。
【0059】
ピン10とグロメット30とを仮嵌合させるには、図21に示すように、ピン10のピン位置決め溝25に、グロメット30の脱落防止爪36が入るように、ピン10とグロメット30の方向を合わせる。グロメット30のグロメットフランジ31側から中心部の開口部に、ピン10のピン下端円筒部28を先頭にして、ピン10を挿入していく。
【0060】
ピン10の脱落防止爪係合棚26の下側部分は、上方に行くにしたがって太さが太くなっている。ピン10を挿入していくと、脱落防止爪係合棚26の下側部分が、グロメット30の脱落防止爪36を押し広げていく。図18に示すように、脱落防止爪係合棚26が脱落防止爪36の下側に出ると、脱落防止爪係合棚26と、グロメット30の脱落防止爪36が係合し、ピン10は抜け止めされる。
脱落防止爪係合棚26の上方にも凸部があり、ピン10は脱落防止爪係合棚26に当接した位置で保持される。
【0061】
仮嵌合状態では、グロメット30の脱落防止爪36が、ピン10のピン位置決め溝25に入り、ピン10とグロメット30は、相互に回転しないように規制される。
【0062】
図19に示すように、仮嵌合状態では、グロメット30の一対の拡開脚先端部43が、ピン下端円筒部28の下側に係合し、保持している。そのため、ピン10を強い力で押さない限り、ピン10は押し込まれず停止している。
図20に示すように、ピン10のガイドリブ12は、グロメット30の過回転防止壁34と回転抑制リブ33との間に入るような位置にある。この状態が仮嵌合状態である。
【0063】
(本嵌合状態)
図22は、グロメット30とピン10とを本嵌合させた状態のクリップ1の上面図である。図23図22のクリップ1のK−K線に沿った断面図、図24はL−L線に沿った断面図である。図25は、図24のクリップ1のM−M線に沿った断面図である。
【0064】
クリップ1を本嵌合させるには、取付部材51の取付孔53と、ボディパネル等の被取付部材52の取付孔54の位置を合わせて、仮嵌合状態のクリップ1のグロメット30のグロメット胴部41と、ピン10のピン下端円筒部28とが、取付孔53,54に入るように挿入していく。グロメット30のフランジ底部32が、取付部材51の取付孔53の周りの表面に当接するようにする。
【0065】
次に、グロメット30に対して、ピン10を下方に押し込んでいく。ピン10のピン下端円筒部28は、グロメット30の拡開脚先端部43を押し広げて、下方に移動していく。一対の拡開脚先端部43は、ピン軸下部27に当接する。ピン軸下部27は、ピン下端円筒部28より太いので、拡開脚先端部43は、ピン軸下部27により押し広げられて、一対の拡開脚42の間隔が広くなる。ピン軸下部27は断面がほぼ正方形なので、拡開脚の先端部43が安定して当接する。
【0066】
ピン10のガイドリブ12は、グロメット30の過回転防止壁34と、回転抑制リブ33との間に入っていく。ガイドリブ12の下面がグロメット30のフランジ底部32に当接すると、ピン10の移動は停止する。
図23に示すように、ピン10のピン軸凸部22が、グロメット30の脱落防止爪36を押し広げて、その下側に出ると、ピン軸凸部22は脱落防止爪36と係合し、ピン10は抜け止めされる。
本嵌合状態では、グロメット30の脱落防止爪36は、ピン10のピン位置決め溝25より上に出て、ピン軸上部21の周りに当接する。
【0067】
図24に示すように、グロメット30のフランジ底部32と拡径した拡開脚42との間に、取付部材51と被取付部材52が取り付けられる。
図25図24のクリップ1のM−M線に沿った断面図であり、拡開脚42が拡径していることが分かる。
【0068】
本発明の実施形態では、ピン10とグロメット30とを仮嵌合させた状態で、取付部材51と被取付部材52の取付孔53,54に取り付け、ピン10とグロメット30とを本嵌合させる方法を説明した。これ以外に、ピン10とグロメット30とを仮嵌合させた状態で、取付部材51に取り付けておき、取付部材51と被取付部材52を重ね合せ、ピン10とグロメット30とを本嵌合させることも出来る。また、ピン10とグロメット30とを仮嵌合させずに、グロメット30を被取付部材52に取り付け、ピン10を取付部材51に取り付けてから、ピン10をグロメット30の開口部に挿入して、ピン10とグロメット30とを本嵌合させ、取付部材51を被取付部材52に取り付けることも出来る。
【0069】
(取り外し工具)
図26は、本発明の実施形態によるクリップ1の取り外し工具60の正面図であり、図27は底面図である。取り外し工具60は、全体としてドラーバーのような外観である。取り外し工具60は、把持部と、把持部に隣接する軸部と、軸部に隣接する先端部61とを有する。先端部61には、中央部にピンフランジ突起13に適合する工具凹部62と、解除用凹部14に適合する工具凸部63とが形成されている。
取り外し工具60の工具凹部62にピンフランジ突起13が入り、工具凸部63が解除用凹部14に入るように取り外し工具60の先端部61をピンフランジ11に当接させて、工具を手で回転させると、ピン10が回転し、ピン10を取り外すことが出来る。
【0070】
前述したように、ピンフランジ突起13と解除用凹部14の代わりに、ピン10に六角形等の突起又は凹部を設け、専用の取り外し工具60を使わずに、六角レンチ等の一般的な工具を使用してピン10を取り外すようにすることも出来る。
【0071】
(クリップの取り外し)
図29〜35を用いて、クリップ1のピン10とグロメット30とを本嵌合させ、被取付部材52に取付部材51を取り付けた後に、ピン10とグロメット30とを取り外す方法を説明する。
【0072】
図28は、取り外し工具60を図22〜25に示す本嵌合状態のクリップ1にセットした状態の正面図である。取り外し工具60を用いてピン10を回転させることにより、ピン10をグロメット30から取り外すことが出来る。
【0073】
図29は、取り外し工具60によりピン10を0°〜75°の範囲で回転させた中間段階の断面図である。本嵌合状態のクリップ1のピン10を回転させていくと、ピン10のガイドリブ12が、グロメット30の過回転防止壁34と、回転抑制リブ33との間に入っている状態から、ガイドリブ12の外周部が回転抑制リブ33を乗り越え、クリック感をもって外れる。
【0074】
グロメット30の拡開脚先端部43は、ピン10の断面がほぼ正方形のピン軸下部27に当接しているので、ピン10を45°回転させた位置では、拡開脚42は更に開く。
ガイドリブ12の下面がピン押し上げ斜面35の上を摺動し、次第に押し上げられていく。ピン軸凸部22は、回転してグロメット30の脱落防止爪36と係合しない位置にきて、その上部へ行く。
【0075】
図30は、クリップ1が嵌合した状態から、ピン10を約75°回転させた段階の断面図であり、図31図30と直交する方向の断面図である。この段階では、ピン10のガイドリブ12は、ピン引上げ斜面34の最上部まで押し上げられ、斜面上部平面37上にある。ガイドリブ12の一方の側面は、過回転防止壁34に当接し、ピン10の回転は止められる。この段階で取り外し工具60を取り外す。ピン10のガイドリブ12が斜面上部平面37上にあるので、ピン10を押し込むことはできない。そのため、クリップ1を取り外す途中で、誤ってピン10を押し込み、再度嵌合させてしてしまうことを防止することが出来る。
【0076】
図31に示すように、グロメット30の拡開脚42の拡開脚先端部43は、ピン10のピン軸下部27から移動し、ピン下端円筒部28の外周に接する。拡開脚42は、少し閉じるが拡開したままである。ピン下端円筒部28は断面が円形で、拡開脚先端部43はピン下端円筒部28の外周上を摺動しやすいので、ピン10を回転させることができる。
この段階では、ピンフランジ11とグロメットフランジ31の間は、隙間があき、ピンフランジ11を指で摘まむことが出来る。
【0077】
図32は、図30の段階から、ピン10を指で摘まんで引き上げ、ピン10を約75〜90°回転させた段階の断面図である。図33は、図32のN−N線に沿った断面図である。図32に示すように、ピン10のガイドリブ12の下面は、斜面上部平面37から上昇し、グロメットフランジ31の上面より、少し低い位置にある。
ピン10を引き上げると、ピン10のピン回転力付与斜面24と、グロメット30の脱落防止爪36とが当接し、ピン10は更に回転させられる。
【0078】
ピン10のガイドリブ12の下面は、過回転防止壁34の頂部より高くなる。そのため、ガイドリブ12は過回転防止壁34を越えて、過回転防止壁34と隣接する回転抑制リブ33との間に位置することができる。
脱落防止爪36は、ピン位置決め溝25に入る。
【0079】
図34は、図32の段階から更にピン10を引き上げ、ピンを約90°回転させた段階のN−N線と同じ位置の断面図である。ピン10のガイドリブ12の下面は、グロメットフランジ31に上端部とほぼ同じ高さにある。
グロメット30の脱落防止爪36は、外径の大きいピン外周部23に当接せず、ピン10のピン位置決め溝25に入っている。そのため、ピン10を更に引き上げることが出来る。
【0080】
取り付ける前の仮嵌合状態では、脱落防止爪36は、ピン位置決め溝25に入っていた。図34の取り外す段階では、1つの脱落防止爪36は、初めの仮嵌合状態とは90°ずれた隣のピン位置決め溝25に入っている。脱落防止爪36と、脱落防止爪係合棚26との間には、まだ隙間がある。
拡開脚42の先端の拡開脚先端部43は、ピン下端円筒部28の下端部に係合している。そのため、拡開脚42は拡開し、取付部材51と被取付部材52は固定されている。もう少しピン10が上方に移動すると、拡開脚42は拡開されなくなる。
【0081】
図35は、図34の段階から更にピンを引き上げ、クリップ1を取付部材51と被取付部材52の取付孔53,54から取り外した状態のN−N線と同じ位置の断面図である。図34の段階から、更にピン10を引き上げると、グロメット30の脱落防止爪36は、ピン10の脱落防止爪係合棚26の上の凸部を乗り越え、脱落防止爪係合棚26に当接し、ピン10はそれ以上引き上げられなくなる。
【0082】
拡開脚42の拡開脚先端部43は、ピン下端円筒部28の外周部に当接していたのが外れ、ピン下端円筒部28の下方に移動し、この時クリック感がある。拡開脚42は拡開していない状態に戻る。そのため、取付部材51と被取付部材52の取付孔53,54から、クリップ1を取り外すことが出来る。
ピン下端円筒部28の下端部は、拡開脚42の拡開脚先端部43で保持されている。ピン10を強い力で押さない限り、ピン10は押し込まれない。こうして、初めの仮嵌合状態からピン10は90°ずれて、仮嵌合状態に戻っている。
図35の仮嵌合状態のクリップ1は、再使用することが出来る。
【0083】
本発明の実施形態によれば、自動車のパネル等の被取付部材に内装部品、保護カバー等の取付部材を取付けたクリップを取り外すときピンの回し過ぎを防ぐことが出来、取り外し作業中に、誤ってピンを再度押し込んでしまうことを防ぐことが出来る。
また、本発明の実施形態のクリップは、確実に再使用することが出来る。
【符号の説明】
【0084】
1 クリップ
10 ピン
11 ピンフランジ
12 ガイドリブ
13 ピンフランジ突起
14 解除用凹部
15 凹部外側部
16 ガイドリブ軸部
20 ピン軸部
21 ピン軸上部
22 ピン軸凸部
23 ピン外周部
24 ピン回転力付与斜面
25 ピン位置決め溝
26 脱落防止爪係合棚
27 ピン軸下部
28 ピン下端円筒部
29 ピン中心孔
30 グロメット
31 グロメットフランジ
32 フランジ底部
33 回転抑制リブ
34 過回転防止壁
35 押上げ斜面
36 脱落防止爪
37 斜面上部平面
41 グロメット胴部
42 拡開脚
43 拡開脚先端部
44 スリット
51 取付部材
52 被取付部材
53 取付孔
54 取付孔
60 取り外し工具
61 先端部
62 軸部
63 係合部
64 工具凹部
65 工具凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35