(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属管に対して超音波を送信する送信部を前記金属管の外周から所定距離だけ離間し且つ前記金属管の径方向に対して所定の送信角度の送信位置に配置するとともに、前記送信部が送信し前記金属管を伝搬した超音波を受信し超音波信号に変換する受信部を前記金属管の外周から所定距離だけ離間し且つ前記金属管の径方向に対して所定の受信角度の受信位置に配置する配置工程と、
前記送信部によって超音波を軸方向に送り出される前記金属管に送信し、前記受信部によって前記金属管を伝搬した超音波を受信し超音波信号に変換することにより、超音波信号の振幅の変化に基づいて前記金属管の欠陥を検出する探傷工程と、
を有し、
前記探傷工程では、
超音波信号の振幅が第1基準値未満となり、前記金属管の軸方向の移動距離に対する超音波信号の振幅の変化率が所定値より大きくなり、且つ、超音波信号の振幅が前記第1基準値未満となってから前記第1基準値より大きくなるまでの計測回数が所定回数未満であるときに、前記金属管に欠陥があると判断する
ことを特徴とする金属管の欠陥検査方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した方法では、金属管を軸方向に送り出しながら、金属管を伝搬した超音波を測定し、金属管の欠陥を検出していく。
【0005】
しかしながら、金属管を軸方向に送り出すとき、金属管の中心軸が軸方向に対して垂直な方向に動いてしまったり、金属管は軸方向に対して真っ直ぐではなく偏平していたりすることがある。このとき、金属管に対する送信部および受信部の位置がずれてしまうため、受信部によって変換された超音波信号の振幅が金属管の欠陥の有無に関わらず変化してしまう。このため、超音波信号の振幅の変化を金属管の欠陥であると誤認してしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、金属管の欠陥を誤認することを抑制する金属管の欠陥検査装置および金属管の欠陥検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、
金属管に対して超音波を送信する送信部を前記金属管の外周から所定距離だけ離間し且つ前記金属管の径方向に対して所定の送信角度の送信位置に配置するとともに、前記送信部が送信し前記金属管を伝搬した超音波を受信し超音波信号に変換する受信部を前記金属管の外周から所定距離だけ離間し且つ前記金属管の径方向に対して所定の受信角度の受信位置に配置する配置工程と、
前記送信部によって超音波を軸方向に送り出される前記金属管に送信し、前記受信部によって前記金属管を伝搬した超音波を受信し超音波信号に変換することにより、超音波信号の振幅の変化に基づいて前記金属管の欠陥を検出する探傷工程と、
を有し、
前記探傷工程では、
軸方向に送り出される前記金属管に対して、前記送信部を前記送信位置で且つ前記受信部を前記受信位置で追従させる
金属管の欠陥検査方法が提供される。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、
前記探傷工程では、
前記金属管の軸方向の移動距離に対する超音波信号の振幅の変化率が所定値より大きいときに、前記金属管に欠陥があると判断する
第1の態様に記載の金属管の欠陥検査方法が提供される。
【0009】
本発明の第3の態様によれば、
金属管に対して超音波を送信する送信部を前記金属管の外周から所定距離だけ離間し且つ前記金属管の径方向に対して所定の送信角度の送信位置に配置するとともに、前記送信部が送信し前記金属管を伝搬した超音波を受信し超音波信号に変換する受信部を前記金属管の外周から所定距離だけ離間し且つ前記金属管の径方向に対して所定の受信角度の受信位置に配置する配置工程と、
前記送信部によって超音波を軸方向に送り出される前記金属管に送信し、前記受信部によって前記金属管を伝搬した超音波を受信し超音波信号に変換することにより、超音波信号の振幅の変化に基づいて前記金属管の欠陥を検出する探傷工程と、
を有し、
前記探傷工程では、
前記金属管の軸方向の移動距離に対する超音波信号の振幅の変化率が所定値より大きいときに、前記金属管に欠陥があると判断する
金属管の欠陥検査方法が提供される。
【0010】
本発明の第4の態様によれば、
前記探傷工程では、
前記金属管の軸方向の計測位置をx、前記計測位置xにおける超音波信号の振幅をP(x)、既に超音波信号の振幅が計測された位置のなかで前記計測位置xに最も近い極大点をx
pとしたとき、以下の式(1)で定義される変化率r(x)が所定値より大きいときに、前記金属管に欠陥があると判断する
第2または第3の態様に記載の金属管の欠陥検査方法が提供される。
r(x)=|P(x
p)―P(x)|/P(x
p)×100 ・・・(1)
【0011】
本発明の第5の態様によれば、
前記探傷工程では、
超音波信号の振幅が第1基準値未満となったときに、超音波信号を増幅、または前記送信部が送信する超音波の強度を大きくする一方、超音波信号の振幅が前記第1基準値よりも大きい第2基準値より大きくなったときに、超音波信号を減衰、または前記送信部が送信する超音波の強度を小さくする
第2〜第4の態様いずれかに記載の金属管の欠陥検査方法が提供される。
【0012】
本発明の第6の態様によれば、
前記探傷工程では、
超音波信号の振幅が第1基準値未満となり、前記変化率が前記所定値より大きくなり、且つ、超音波信号の振幅が前記第1基準値未満となってから前記第1基準値より大きくなるまでの計測回数が所定回数未満であるときに、前記金属管に欠陥があると判断する
第2〜第5の態様のいずれかに記載の金属管の欠陥検査方法が提供される。
【0013】
本発明の第7の態様によれば、
前記送信部が送信する超音波は、バースト波であり、
前記探傷工程では、
バースト波の超音波信号のピークにおける振幅の変化に基づいて前記金属管の欠陥を検出する
第1〜第6の態様のいずれかに記載の金属管の欠陥検査方法が提供される。
【0014】
本発明の第8の態様によれば、
軸方向に送り出される金属管に対して超音波を送信する送信部と、
前記送信部が送信し前記金属管を伝搬した超音波を受信し超音波信号に変換する受信部と、
前記送信部を前記金属管の外周から所定距離だけ離間し且つ前記金属管の径方向に対して所定の送信角度の送信位置に支持する第1支持機構と、
前記受信部を前記金属管の外周から所定距離だけ離間し且つ前記金属管の径方向に対して所定の受信角度の受信位置に支持する第2支持機構と、
少なくとも前記送信部および前記受信部を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記送信部によって超音波を前記金属管に送信し、前記受信部によって前記金属管を伝搬した超音波を受信し超音波信号に変換することにより、超音波信号の振幅の変化に基づいて前記金属管の欠陥を検出する探傷処理を実施し、
前記探傷処理では、
前記金属管の軸方向の移動距離に対する超音波信号の振幅の変化率が所定値より大きいときに、前記金属管に欠陥があると判断する
金属管の欠陥検査装置が提供される。
【0015】
本発明の第9の態様によれば、
前記第1支持機構および前記第2支持機構を連結し、前記第1支持機構および前記第2支持機構を少なくとも前記金属管の径方向に移動可能に支持する主支持機構を有し、
前記第1支持機構は、
前記金属管の外周に対して回転可能に当接する円筒状の第1当接部と、
前記第1当接部を支持するとともに、前記送信部が前記金属管の外周から所定距離だけ離間し且つ前記金属管の径方向に対して所定の送信角度の送信位置に配置されるように前記送信部を支持する第1支持部と、
を有し、
前記第2支持機構は、
前記金属管の周方向に前記第1当接部に対して所定角度で設けられ、前記金属管の外周に対して回転可能に当接する円筒状の第2当接部と、
前記第2当接部を支持するとともに、前記受信部が前記金属管の外周から所定距離だけ離間し且つ前記金属管の径方向に対して所定の受信角度の受信位置に配置されるように前記受信部を支持する第2支持部と、
を有する
第8の態様に記載の金属管の欠陥検査装置が提供される。
【0016】
本発明の第10の態様によれば、
軸方向に送り出される金属管に対して超音波を送信する送信部と、
前記送信部が送信し前記金属管を伝搬した超音波を受信する受信部と、
前記送信部を支持する第1支持機構と、
前記受信部を支持する第2支持機構と、
前記第1支持機構および前記第2支持機構を連結し、前記第1支持機構および前記第2支持機構を少なくとも前記金属管の径方向に移動可能に支持する主支持機構と、
を有し、
前記第1支持機構は、
前記金属管の外周に対して回転可能に当接する円筒状の第1当接部と、
前記第1当接部を支持するとともに、前記送信部が前記金属管の外周から所定距離だけ離間し且つ前記金属管の径方向に対して所定の送信角度の送信位置に配置されるように前記送信部を支持する第1支持部と、
を有し、
前記第2支持機構は、
前記金属管の周方向に前記第1当接部に対して所定角度で設けられ、前記金属管の外周に対して回転可能に当接する円筒状の第2当接部と、
前記第2当接部を支持するとともに、前記受信部が前記金属管の外周から所定距離だけ離間し且つ前記金属管の径方向に対して所定の受信角度の受信位置に配置されるように前記受信部を支持する第2支持部と、
を有する
金属管の欠陥検査装置が提供される。
【0017】
本発明の第11の態様によれば、
前記主支持機構は、
前記第1支持機構および前記第2支持機構を、前記金属管の径方向に沿った方向に移動させる第1移動機構と、
前記第1支持機構および前記第2支持機構を、前記金属管の周方向に移動させる第2移動機構と、
を有するとともに、
前記金属管が軸方向に送り出される際に、前記第1当接部および前記第2当接部が前記金属管の外周に接するように前記金属管に前記第1支持機構および前記第2支持機構を押し付ける
第9または第10の態様に記載の金属管の欠陥検査装置が提供される。
【0018】
本発明の第12の態様によれば、
前記第1移動機構は、エアシリンダまたはバネを有する
第11の態様に記載の金属管の欠陥検査装置が提供される。
【0019】
本発明の第13の態様によれば、
前記第2移動機構は、1軸のリニアガイドを有する
第11または第12の態様に記載の金属管の欠陥検査装置が提供される。
【0020】
本発明の第14の態様によれば、
前記送信部は、前記金属管の外周に沿った曲面状の送信面を有し、
前記第1支持機構は、
前記送信部を前記金属管の径方向に移動可能に支持する径方向支持部を有する
第8〜第13の態様のいずれかに記載の金属管の欠陥検査装置が提供される。
【0021】
本発明の第15の態様によれば、
前記第1支持機構を制御する制御部を有し、
前記制御部は、
前記金属管に対して、前記送信部を前記送信位置に配置するとともに、前記受信部を前記受信位置に配置する配置処理を行い、
当該配置処理では、
前記金属管の直径に基づいて、前記金属管の中心から前記送信部までの距離を一定に保ち、且つ前記送信部の前記送信角度を一定に保つように、前記送信部を前記金属管の径方向に沿って移動させるように、前記径方向支持機構を制御する
第14の態様に記載の金属管の欠陥検査装置が提供される。
【0022】
本発明の第16の態様によれば、
前記送信部は、平面状の送信面を有し、
前記第1支持機構は、前記金属管の径方向に対する前記送信部の位置を固定する
第8〜第13の態様のいずれかに記載の金属管の欠陥検査装置が提供される。
【0023】
本発明の第17の態様によれば、
前記送信部、前記受信部、前記第1支持機構、前記第2支持機構、および前記主支持機構を有する検査部が所定組設けられ、
前記所定組の検査部は、前記金属管の軸方向に離間して設けられ、前記金属管の周方向に前記所定組の数で分割された領域をそれぞれ測定するように配置される
第8〜第16の態様のいずれかに記載の金属管の欠陥検査装置が提供される。
【0024】
本発明の第18の態様によれば、
コンピュータに、
金属管に対して超音波を送信する送信部を前記金属管の外周から所定距離だけ離間し且つ前記金属管の径方向に対して所定の送信角度の送信位置に配置するとともに、前記送信部が送信し前記金属管を伝搬した超音波を受信し超音波信号に変換する受信部を前記金属管の外周から所定距離だけ離間し且つ前記金属管の径方向に対して所定の受信角度の受信位置に配置した状態で、前記送信部によって超音波を軸方向に送り出される前記金属管に送信し、前記受信部によって前記金属管を伝搬した超音波を受信し超音波信号に変換することにより、超音波信号の振幅の変化に基づいて前記金属管の欠陥を検出する探傷手順を実行させ
前記探傷手順では、
前記金属管の軸方向の移動距離に対する超音波信号の振幅の変化率が所定値より大きいときに、前記金属管に欠陥があると判断する
プログラムが提供される。
【0025】
本発明の第19の態様によれば、
前記探傷手順では、
超音波信号の振幅が第1基準値未満となったときに、超音波信号を増幅、または前記送信部が送信する超音波の強度を大きくする一方、超音波信号の振幅が前記第1基準値よりも大きい第2基準値より大きくなったときに、超音波信号を減衰、または前記送信部が送信する超音波の強度を小さくする
第18の態様に記載のプログラムが提供される。
【0026】
本発明の第20の態様によれば、
前記送信部が送信する超音波は、バースト波であり、
前記探傷手順では、
バースト波の超音波信号のピークにおける振幅の変化に基づいて前記金属管の欠陥を検出する
第18または第19の態様に記載のプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、金属管の欠陥を誤認することを抑制する金属管の欠陥検査装置および金属管の欠陥検査方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
(1)金属管の欠陥検査装置の概略構成
まず、
図1を用い、本発明の一実施形態に係る金属管の欠陥検査装置について説明する。
図1は、本実施形態に係る金属管の欠陥検査装置の構成を示す概略図である。
【0031】
本実施形態の金属管の欠陥検査装置10は、金属管100を押出し成型する装置に隣接して設けられ、超音波により金属管100の欠陥を検出するよう構成される。例えば、本実施形態の金属管の欠陥検査装置10は、金属管100に対して超音波を送信する送信部200と、送信部200が送信し金属管100を伝搬した超音波を受信し超音波信号に変換する受信部300と、送信部200を金属管100の外周から所定距離だけ離間し且つ金属管100の径方向に対して所定の送信角度の送信位置に支持する第1支持機構240と、受信部300を金属管100の外周から所定距離だけ離間し且つ金属管100の径方向に対して所定の受信角度の受信位置に支持する第2支持機構340と、金属管100を軸方向に送り出す送り出し機構500と、を少なくとも有する。以下、本実施形態では、例えば空気中において非接触で金属管100に超音波を照射して、いわゆる透過法により金属管100の欠陥を検出する例について、詳細を説明する。
【0032】
図1において、金属管100の軸方向への送り出し方向を「x方向」、金属管100の軸方向に対して垂直な水平方向を「y方向」、金属管100の軸方向に対して垂直な鉛直方向を「z方向」とする。
【0033】
図1に示されているように、検査対象である金属管100は、欠陥検査装置10に保持されている。ここでの検査対象である「金属管100」とは、例えば電線ケーブルのケーブルコアの外側に設けられるコルゲート管の製造過程におけるコルゲート状に加工される前の金属管などである。金属管100の直径は、例えば50mm以上170mm以下である。また、金属管100の厚みは、例えば1.5mm以上4mm以下である。金属管100の材料は、例えばアルミニウム(Al)、鉛(Pb)等である。
【0034】
(送信部)
欠陥検査装置10は、金属管100に対して超音波を送信する送信部200を有する。送信部200は、例えば超音波のバースト波を生成して、金属管100の側面に照射するよう構成される。ここでいう「超音波のバースト波」とは、所定の期間でまとまった超音波の連続波が、所定の間隔を開けて繰り返される波のことである。
【0035】
送信部200は、例えば超音波を出力する振動子を有する。送信部200における振動子の送信面(出力面)は、例えば金属管100の外周に沿った円筒の曲面状に形成されている。送信部200は、振動子の送信面が金属管100の軸方向に沿うように配置される。なお、振動子の送信面の曲率は、金属管100の中心から振動子の送信面までの距離に等しくなるように設定される。金属管100の直径が例えば170mm以下である場合、振動子の送信面の曲率半径は85mm以上必要とされる。
【0036】
送信部200が生成する超音波のバースト波の周波数は、振動子及び電圧の周期によって設定される。具体的には、超音波のバースト波の周波数は、例えば、200kHz以上800kHz以下である。
【0037】
(受信部)
また、欠陥検査装置10は、送信部200が送信し金属管100を伝搬した超音波(エコー)を受信する受信部300を有する。受信部300は、例えば超音波を受信する振動子を有する。受信部300における振動子の受信面(入射面)は、例えば平面状に形成されている。この場合、金属管100の表面から受信面までの距離は任意に設定される。
【0038】
受信部300は、超音波を受信し、受信した超音波を電気信号としての超音波信号に変換し制御部600に送信するよう構成される。なお、例えば超音波信号を増幅または減衰させるプリアンプ(増幅部)は、後述する制御部600に設けられる。
【0039】
(送り出し機構)
また、金属管100の送り出し機構(搬送機構、押出し機構)500に隣接して、欠陥検査装置10が設けられる。送り出し機構500は、金属管100を支持するとともに、金属管100を軸方向(x方向)に所定の速度で送り出す(押し出す)よう構成される。なお、送り出し機構500を欠陥検査装置10の一部と考えても良い。送り出し機構500が金属管100を軸方向に送り出す速度は、例えば2mm/secである。
【0040】
(速度検出器)
また、欠陥検査装置10は、金属管100に接し、金属管100が送り出される速度を検出する速度検出器(ホイール計尺器)520を有する。後述するように、速度検出器520が検出する金属管100の送り出し速度に基づいて、受信部300は、所定間隔Δxごとに超音波を受信する。具体的には、受信部300は、例えば、2mm/secで送り出される金属管100に対して1秒ごとに超音波を受信し、すなわち2mmごとに超音波を受信する。
【0041】
(第1支持機構)
欠陥検査装置10は、送信部200を支持する第1支持機構240を有する。第1支持機構240は、送信部200を所定の送信位置に支持するよう構成される。
【0042】
具体的には、第1支持機構240は、例えば、金属管100の外周に対して回転可能に当接する円筒状の第1当接部242と、第1当接部242の金属管100と反対側に設けられ第1当接部242を支持する第1支持部244と、を有する。第1当接部242は、例えば金属管100の外周に当接し回転可能なロール部と、ロール部を回転可能に支持する軸部と、を有し、第1当接部242の軸部の一端は、第1支持部244に連結される。
【0043】
第1支持部244は、送信部200が金属管100の外周から所定距離だけ離間し且つ金属管100の径方向に対して所定の送信角度θ
1の送信位置に配置されるように送信部200を支持する。
【0044】
(送信部の配置)
ここで、
図6(a)は、本実施形態の送信部200の金属管100に対する配置を示す模式図である。
図6(a)に示されているように、送信部200は、金属管100の中心軸Cから所定距離だけずらした位置に超音波をフォーカシングするように配置される。超音波がフォーカシングされるライン状の中心軸を「曲率中心O」とする。
【0045】
金属管100の直径をD、曲率中心Oの金属管100の中心軸Cに対するずれをLとしたとき、送信部200の中心における金属管100に対する超音波の送信角度θ
1は以下の式で与えられる。
θ
1=sin
−1(2L/D) ・・・(1)
【0046】
送信部200が金属管100の外周に沿った曲面状の送信面を有する場合、上述のように、送信部200の曲率は、曲率中心Oから送信部200の送信面までの距離Rと等しくなるように設定されている。送信部200の送信面の幅をWとしたとき、
α=sin
−1(W/2R) ・・・(2)
【0047】
また、正弦定理により、
sin(π/2−α)/CR=sinθ
1min/CO
すなわち、
sinθ
1min=2L/D×sin(π/2−α) ・・・(3)
また、
sin(π/2+α)/CP=sinθ
1max/CO
すなわち、
sinθ
1max=2L/D×sin(π/2+α) ・・・(4)
【0048】
本実施形態では、送信部200から金属管100の外周面に入射する送信角度θ
1が送信部200の送信面の位置によらず一定となるように設定される。すなわち、式(1)〜(4)により、αを充分に小さい値であるとした場合に、およそθ
1=θ
1min=θ
1maxとなるように送信角度θ
1が設定される。これにより、超音波が金属管100に対して効率良く入射する。
【0049】
ここで、本実施形態の送信部200を支持する構成について説明する。
【0050】
図1に示されているように、送信部200が金属管100の外周に沿った曲面状の送信面を有する場合、第1支持部244は、送信部200の送信角度を正確に調整することができるように二つの支持部で構成され、例えば送信部200を金属管100の径方向に移動可能に支持する径方向支持部245と、径方向支持部245を第1当接部242の軸方向に沿って移動可能に支持するとともに、第1当接部242の軸部の一端を支持する周方向支持部246と、を有する。径方向支持部245は、金属管100の中心から送信部200までの距離を一定に保ち、且つ送信部200の送信角度θ
1を一定に保つように、送信部200を金属管100の径方向に沿って移動させることができるよう構成される。
【0051】
図6(b)は、金属管100の直径が変化したときの送信部200の金属管100に対する配置を示す模式図である。
図6(b)に示されているように、例えば金属管100の直径がDからD’に変わったとき、金属管100の直径に基づいて、金属管100の中心から送信部200までの距離を一定に保ち、且つ送信部200の金属管100に対する超音波の送信角度θ
1を一定に保つように、送信部200を金属管100の径方向および第1当接部242の軸方向(L方向)に移動させる。すなわち、以下の式を満たすように送信部200の金属管100の径方向に対する位置が調整される。
θ
1=sin
−1(2L/D)=sin
−1(2L’/D’)
【0052】
例えば金属管100の直径がDからD’(<D)に変わったとき、送信部200を金属管100の表面から遠ざけるように移動させる。また、曲率中心Oの金属管100の中心軸Cに対するずれLが小さくなるように(L’となるように)、送信部200を第1当接部242の軸方向(L方向)に沿って移動させる。
【0053】
送信部200の金属管100に対する送信位置は、例えば、以下のように設定される。金属管100の直径Dは、上述のように例えば50mm以上170mm以下である。送信部200の送信面の幅Wは、例えば20mmである。曲率中心Oの金属管100の中心軸Cに対するずれLは、例えば3.8mm以上11.3mm以下である。送信部200の送信面の曲率半径Rは、例えば30mm以上90mm以下である。また、送信部200の金属管100の径方向に対する送信角度θ
1は、例えば1°以上10°以下であり、具体的には7.2°±α°である。
【0054】
なお、送信角度θ
1は、装置校正の際に、欠陥検査装置10の各接合部分のネジ穴のマージンや、各接合部分の寸法誤差、金属管100の態様に合わせて、測定対象として標準的な金属管100である校正管を用いて補正する必要がある。αは、その補正値である。このように、超音波を、金属管100に対して小さい送信角度θ
1で正確に入射させる必要がある。
【0055】
(第2支持機構)
第2支持機構340は、金属管100の中心軸を含む面を挟んで送信部200と対称な位置に受信部300を支持するよう構成され、例えば、金属管100の周方向に第1当接部242に対して所定角度で設けられ金属管100の外周に対して回転可能に当接する円筒状の第2当接部342と、第2当接部342の金属管100と反対側に設けられ第2当接部342を支持する第2支持部344と、を有する。第2当接部342は、例えば第1当接部242と同様に構成され、ロール部および軸部を有し、第2当接部342の軸部の一端は、第2支持部344に連結される。
【0056】
第2支持部344は、受信部300が金属管100の外周から所定距離だけ離間し且つ金属管100の径方向に対して所定の受信角度θ
2の受信位置に配置されるように受信部300を支持する。なお、受信部300の振動子の受信面は送信部200側に向くように配置される。
【0057】
具体的には、受信部300の金属管100に対する受信位置は、以下のとおりである。受信部300と金属管100とは近づけることが望ましいが、受信部300が金属管100と接触し破損する可能性があるので、受信部300と金属管100とは適度に離間させる必要がある。受信部300が金属管100の外周から離間した距離は、例えば10mmである。また、受信部300の金属管100の径方向に対する受信角度θ
2は、例えば1°以上10°以下であり、具体的には、7.2°±α°である。
【0058】
なお、受信角度θ
2は、装置校正の際に、欠陥検査装置10の各接合部分のネジ穴のマージンや、各接合部分の寸法誤差、金属管100の態様に合わせて、測定対象として標準的な金属管100である校正管を用いて補正する必要がある。αは、その補正値である。このように、金属管100から伝搬した超音波を、受信部300に対して小さい受信角度θ
2で正確に入射させる必要がある。
【0059】
(主支持機構)
欠陥検査装置10には、第1支持機構240および第2支持機構340を連結して支持する主支持機構400が設けられる。主支持機構400は、金属管100を挟んで第1支持機構240および第2支持機構340のそれぞれを対称に配置するよう構成される。金属管100を挟んで第1支持機構240および第2支持機構340が互いに連結されていることにより、第1支持機構240の第1当接部242および第2支持機構340の第2当接部342の2点によって金属管100が支持される。これにより、送信部200および受信部300に対する金属管100の中心軸の位置を定めることができる。また、金属管100の中心軸が送信部200および受信部300に対して金属管100の軸方向に垂直な方向にずれることが抑制される。
【0060】
また、主支持機構400は、第1支持機構240および第2支持機構340を少なくとも金属管100の径方向、例えばz方向に移動可能に支持するよう構成される。本実施形態では、主支持機構400は、第1支持機構240および第2支持機構340を、金属管100の径方向に沿った方向(z方向)に移動させる第1移動機構420と、第1支持機構240および第2支持機構340を金属管100の周方向に沿って(y方向に)移動させる第2移動機構440と、を有する。主支持機構400は、第1支持機構240および第2支持機構340を金属管100に所定の押し圧で押し付けた状態で、金属管100の外周を囲むように設けられたフレーム(不図示)に固定される。
【0061】
第1移動機構420は、第1支持機構240および第2支持機構340を金属管100に押し付けるよう構成され、例えばエアシリンダ422を有する。エアシリンダ422は、例えば内部に空隙を有する筒部と、筒部の内部の空間を圧縮しながら軸方向に移動可能な軸部と、を有する。エアシリンダ422の軸部は、金属管100の径方向に沿って設けられる。エアシリンダ422は、金属管100が軸方向(x方向)に移動する際に、第1支持機構240および第2支持機構340を介して送信部200および受信部300を金属管100の外周に押し付けて、金属管100の径方向(例えばz方向)の変化に対して送信部200および受信部300を追従させるとともに、金属管100の偏平等による金属管100の送り出し時の振動等を緩和するよう構成される。なお、エアシリンダ422内の空気圧によって、第1支持機構240および第2支持機構340を金属管100に押し付ける圧力が調整される。
【0062】
第2移動機構440は、例えば金属管100の軸方向に対して垂直な水平方向(y方向)に沿って設けられた1軸のリニアガイドを有する。リニアガイドとしては、例えばLM(Linear Motion)ガイド(商標)が用いられる。リニアガイドは、金属管100が軸方向(x方向)に移動する際に、金属管100の軸方向に対して垂直な水平方向(y方向)の変化に対して第1支持機構240および第2支持機構340を介して送信部200および受信部300を追従させるよう構成される。
【0063】
本実施形態では、このような送信部200、受信部300、第1支持機構240、第2支持機構340、および主支持機構400により、一組の検査部12が構成される。
【0064】
図示されていないが、検査部12は例えば所定組設けられ、所定組の検査部12は、金属管100の軸方向(x方向)に互いに所定の間隔で離間して設けられており、また金属管100の周方向に所定組の数で分割された領域をそれぞれ測定するように配置される。好ましくは、所定組の検査部12の測定する領域がそれぞれ金属管100の軸方向から見て重なるように、所定組の検査部12が配置される。具体的には、金属管100がAlからなる場合、検査部12は、例えば4組設けられており、それぞれの検査部12における送信部200および受信部300の角度θ
0は、90°以上180°未満であり、好ましくは110°である。検査部12が複数組設けられていることにより、金属管100の周方向の全体に亘って、欠陥を検出することができる。なお、各検査部12の金属管100の軸方向の間隔は、100mm以上であることが望ましい。これにより、各検査部12が互いに干渉することが抑制される。
【0065】
(支持部の動作)
金属管100の欠陥検査工程において、送り出し機構500によって、金属管100が軸方向に所定の移動速度で移動する。その間、主支持機構400のエアシリンダ422により、第1支持機構240および第2支持機構340は、所定の押し圧によって金属管100に押し付けられる。
【0066】
第1支持機構240の第1当接部242は、金属管100が軸方向に移動する際、金属管100の軸方向に沿って回転しながら金属管100の外周に当接する。送信部200は、金属管100の外周から所定距離だけ離間し且つ金属管100の径方向に対して所定の送信角度θ
1で向けられた状態で第1支持部244に固定されていることによって、欠陥検査工程の間もその状態で常に保たれる。したがって、金属管100が軸方向に移動しても、送信部200から送信される超音波は金属管100に対して常に同じ条件で照射される。
【0067】
一方で、第2当接部342は、第1当接部242と同様にして、金属管100が軸方向に移動する際、金属管100の軸方向に沿って回転しながら金属管100の外周に当接する。受信部300も、金属管100に対して所定距離および所定の受信角度θ
2で第2支持部344に固定されていることによって、欠陥検査工程の間もその状態で常に保たれる。したがって、金属管100が軸方向に移動しても、送信部200から送信され金属管100を伝搬した超音波は金属管100から常に同じ条件で受信される。
【0068】
また、第1当接部242および第2当接部342の2点によって金属管100が軸方向に移動可能に支持される。これにより、送信部200および受信部300に対する金属管100の中心軸の位置を定めることができる。
【0069】
このように、送り出し機構500によって軸方向に送り出される金属管100に対して、送信部200は所定の送信位置で追従し、且つ受信部300は所定の受信位置で追従するよう構成される。
【0070】
(制御部)
図1に示されているように、送信部200、受信部300、第1支持機構240、第2支持機構340および速度検出器520には、制御部600が接続される。
【0071】
制御部600は、後述する配置工程において、金属管100の直径に基づいて、金属管100の中心から送信部200までの距離を一定に保ち、且つ送信部200の送信角度θ
1を一定に保つように、送信部200を金属管100の径方向に移動させるよう、第1支持機構240を制御する。また、制御部600は、金属管100の直径に基づいて、受信部300を所定の受信位置に移動させるよう、第2支持機構340を制御する。
【0072】
また、制御部600は、後述する探傷工程において、送り出し機構500によって軸方向に送り出される金属管100に対して、所定の振幅および所定の周波数を有する超音波を金属管100に送信するよう送信部200を制御する。
【0073】
また、制御部600は、探傷工程において、金属管100を伝搬した超音波を受信し超音波信号に変換するよう受信部300を制御する。制御部600は、受信部300から送信された超音波信号を受信するパルスレシーバ(信号受信部)610を有する。制御部600は、パルスレシーバを介して、受信部300からの超音波信号の振幅を検出するよう構成され、具体的には、例えば、バースト波の超音波信号の経時的な波形の変化を検出したり、バースト波の超音波信号のピークにおける振幅を検出したりすることができるよう構成される。制御部600は、超音波信号の振幅の変化(減衰)に基づいて金属管100の欠陥を検出する探傷処理を実施するよう制御する。
【0074】
また、制御部600のパルスレシーバ610は、受信部300からの超音波信号を増幅または減衰させるプリアンプ(増幅部)を有する。制御部600は、探傷工程において、超音波信号の振幅が第1基準値未満となったときに、超音波信号を増幅する(利得を増加する)一方、超音波信号の振幅が第1基準値よりも大きい第2基準値より大きくなったときに、超音波信号を減衰させる(利得を減少させる)。制御部600のプリアンプによる超音波信号を増幅または減衰させる機能は、AGC(Auto Gain Control)機能と呼ばれる。
【0075】
また、制御部600は、探傷工程において、送り出し機構500が金属管100を軸方向に送り出す速度に係る信号を速度検出器520から受信する。また、制御部600は、探傷工程において、速度検出器520が検出した金属管100の軸方向の送り出し速度に基づいて、一定の測定間隔(Δx)で超音波を受信するよう受信部300を制御する。
【0076】
ここで、制御部600は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、記憶装置、I/Oポートを備えたコンピュータとして構成されている。RAM、記憶装置、およびI/Oポートは、内部バスを介して、CPUとデータ交換可能なように構成されている。
【0077】
また、制御部600には、例えばタッチパネル等の表示部等を含む入出力部が接続されている。入出力部の表示部は、バースト波の超音波信号の連続波形、金属管100の軸方向の位置に対する振幅、利得、後述する変化率を表示するよう構成される。その他、入出力部の表示部は、測定開始、一時停止および測定終了のボタンを表示するよう構成される。
【0078】
記憶装置は、例えばHDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等で構成されている。記憶装置内には、後述する金属管100の欠陥検査工程に係る欠陥検査プログラムや、金属管100の直径に応じた第1支持機構240および第2支持機構340の配置に係るテーブル、超音波信号の振幅の「変化率」に係る計算式、超音波信号の振幅の「第1基準値」および「第2基準値」、金属管100の欠陥であると判断するときの振幅の変化率の所定値、超音波信号の振幅の測定間隔(所定間隔Δx)、および所定間隔Δxごとに超音波を受信した計測回数等が読み出し可能に格納されている。なお、これらの値および式等については詳細を後述する。
【0079】
I/Oポートは、上述の送信部200、(パルスレシーバ610を介して)受信部300、第1支持機構240、第2支持機構340および速度検出器520に接続されている。CPUは、記憶装置から欠陥検査プログラムを読み出して実行するよう構成される。
【0080】
なお、制御部600は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていてもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、CDやDVD等の光ディスク等)を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態に係る制御部600を構成することができる。なお、例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。
【0081】
(2)金属管の欠陥検査方法
次に、
図2を用い、本実施形態に係る金属管の欠陥検査方法について説明する。
図2は、本実施形態に係る金属管の欠陥検査工程を示すフローチャートである。
【0082】
本実施形態の金属管の欠陥検査方法は、軸方向に送り出される金属管100に対して超音波を送信する送信部200を金属管100の外周から所定距離だけ離間し且つ金属管100の径方向に対して所定の送信角度θ
1の送信位置に配置するとともに、送信部200が送信し金属管100を伝搬した超音波を受信し超音波信号に変換する受信部300を金属管100の外周から所定距離だけ離間し且つ金属管100の径方向に対して所定の受信角度θ
2の受信位置に配置する配置工程と、金属管100を軸方向に送り出しながら、送信部200によって超音波を金属管100に送信し、受信部300によって金属管100を伝搬した超音波を受信し超音波信号に変換することにより、超音波信号の振幅の変化に基づいて金属管100の欠陥を検出する探傷工程と、を有する。以下、詳細を後述する。
【0083】
なお、以下の説明において、金属管の欠陥検査方法の各工程は、制御部600により制御される。また、本実施形態において、「欠陥検査工程」とは、後述する配置工程S110および探傷工程S200を含めた全体の工程のことをいう。
【0084】
(配置工程S110)
まず、送り出し機構500から送り出され検査対象である金属管100に対して、欠陥検査装置10を所定の位置に配置する。次に、例えば、検査者は、入力した金属管100の直径を制御部600に入力する。制御部600は、例えば入力された金属管100の直径に基づいて、金属管100の直径に応じた第1支持機構240および第2支持機構340の配置に係るテーブルを参照し、送信部200を金属管100の外周から所定距離だけ離間し且つ金属管100の径方向に対して所定の送信角度θ
1の送信位置に配置するよう、第1支持機構240を制御する。このとき、金属管100の直径に基づいて、金属管100の中心から送信部200までの距離を一定に保ち、且つ送信部200の送信角度θ
1を一定に保つように、送信部200を金属管100の径方向に移動させる。また、制御部600は、例えば入力された金属管100の直径に基づいて、受信部300を金属管100の外周から所定距離だけ離間し且つ金属管100の径方向に対して所定の受信角度θ
2の受信位置に配置するよう、第2支持機構340を制御する。また、第1支持機構240および第2支持機構340を金属管100に押し付ける。
【0085】
(探傷工程S200)
次に、制御部600は、以下のようにして探傷工程S200を行う。本実施形態では、欠陥検査装置10が透過法の構成であるため、探傷工程S200では、超音波信号の振幅の減衰に基づいて金属管100の欠陥を検出する。
【0086】
(計測開始S210)
軸方向に送り出される金属管100に対して、送信部200によって超音波を金属管100に送信し、受信部300によって金属管100を伝搬した超音波を受信し超音波信号に変換し始める。このとき、主支持機構400により、軸方向に送り出される金属管100に対して、送信部200を送信位置で追従させるとともに受信部300を受信位置で追従させる。
【0087】
また、制御部600は、計測位置xにおける超音波信号のピークの振幅P(x)を計測していく。ここで、受信部300からの超音波信号の波形は、環境の変化、電子部品のノイズ、伝搬する複数の超音波の影響を受け易く、金属管100を移動せずに静止させた状態であっても、4〜5%の振幅の揺らぎが生じることがある。そこで、制御部600が受信する受信部300からの超音波信号の強度は、パルスレシーバ610のプリアンプを調整することにより、制御部600が受信することができる超音波信号の最大値を100%としたとき、金属管100の正常部分を計測したときの超音波のピークの振幅P(x)が上述した揺らぎによって100%を超えることが無いように、プリアンプによって所定の標準値(例えば80%)に設定される。
【0088】
さらに、制御部600は、金属管100の軸方向の移動距離に対する超音波信号の振幅の変化率(後述するr(x))を算出し始める。
【0089】
また、制御部600は、例えば表示部に、バースト波の超音波信号の連続波形を表示するとともに、計測位置xに対する当該バースト波の超音波信号のピークにおける振幅P(x)を表示する。これにより、超音波信号の振幅P(x)の減衰傾向が見易くなる。これ以降、制御部600は、後述する探傷手順では、バースト波の超音波信号のピークにおける振幅の変化に基づいて金属管100の欠陥を検出する。
【0090】
ここで、発明者らは、金属管100を送り出し(押出し)ている際に金属管100に緩やかな形状変化、すなわち外径の変化や偏平が生じている場合には、金属管100の軸方向の移動距離に対して超音波信号の振幅P(x)が緩やかに変化するのに対し、金属管100の欠陥が生じている場合には金属管100の軸方向の移動距離に対して超音波信号の振幅P(x)が急激に変化することを見出した。
【0091】
そこで、本実施形態では、制御部600は、超音波信号の振幅P(x)の変化率に応じて、金属管100に偏平が生じているのか、あるいは金属管100に欠陥が生じているのかを判断する。以下、場合分けをして説明する。
【0092】
(a)第1測定例
図3を用い、第1測定例について説明する。
図3は、第1測定例の金属管の軸方向の位置に対する超音波信号の振幅、利得、および変化率を示す図である。第1測定例は、金属管100に偏平が生じている場合を示している。なお、「利得」とは、制御部600のプリアンプにおけるゲインのことである。まず、
図3の例において、金属管100の軸方向の計測位置がx
1であるとする。
【0093】
(振幅上限判断S220)
ここで、超音波信号の振幅P(x)には、金属管100に欠陥が無く正常部分であるとして判断できる下限値としての第1基準値、および上限値としての第2基準値が設定されている。まず、制御部600は、超音波信号の振幅P(x)が第2基準値より大きいか否かを判断する(S220)。ここでいう「第2基準値」とは、例えば振幅P(x)が増加しすぎていると判断するときの振幅P(x)の基準値であり、具体的には例えば90%に設定される。
【0094】
(振幅下限判断S230)
図3の例において、計測位置がx
1のとき、超音波信号の振幅P(x
1)は第2基準値(90%)以下である。制御部600は、振幅P(x
1)が第2基準値以下であるとき(S220でNo)、超音波信号の振幅P(x)が第1基準値未満か否かを判断する(S230)。ここでいう「第1基準値」とは、例えば振幅P(x)が減衰しすぎていると判断するとき、または振幅P(x)の変化が金属管100の正常部分を測定する際の振幅の揺らぎを超え、振幅P(x)が金属管100の欠陥等を起因として減衰し始めるときの少なくともいずれかのときにおける振幅P(x)の基準値であり、具体的には例えば70%に設定される。
【0095】
(変化率判断S242)
計測位置がx
1のとき、振幅P(x
1)は第1基準値(70%)未満である。制御部600は、振幅P(x
1)が第1基準値未満であるとき(S230でYes)、金属管100の軸方向の移動距離に対する超音波信号の振幅の変化率として、以下のように変化率r(x)を評価し始める。
【0096】
ここで、本実施形態では、既に超音波信号の振幅が計測された位置のなかで計測位置xに最も近い極大点の位置をx
pとしたとき、変化率r(x)は、以下の式(1)で定義される。
r(x)=|P(x
p)―P(x)|/P(x
p)×100 ・・・(1)
なお、本実施形態では、透過法であるため、式(1)は以下の式(1)’と置き換えることができる。
r(x)=(P(x
p)―P(x))/P(x
p)×100 ・・・(1)’
また、超音波信号の振幅が計測された位置のなかで計測位置xに最も近い極大点における振幅P(x)が第1基準値(70%)未満または第2基準値(90%)より大きいときは考慮にいれず、振幅P(x)が第1基準値以上第2基準値以下である極大点の位置をx
pとする。
【0097】
なお、
図3の下の図のように、制御部600は、表示部に、バースト波の超音波信号の連続波形、および計測位置xに対する当該バースト波の超音波信号のピークの振幅P(x)とともに、計測位置xに対する変化率r(x)を表示する。さらに、制御部600は、振幅P(x)が第1基準値未満となってから所定間隔Δxごとに超音波信号を計測した計測回数をカウントしていく。
【0098】
ここで、制御部600は、振幅P(x
1)が第1基準値未満であるとき(S230でYes)、計測位置x
1での変化率r(x
1)が所定値より大きい否かを判断する(S242)。ここでいう変化率r(x)を比較するための「所定値」とは、例えば超音波信号の振幅の変化率r(x)が金属管100の偏平等ではなく金属管100の欠陥を起因として増加していると判断されるときの変化率r(x)の基準値であり、例えば20%である。
【0099】
(振幅上昇判断S244)
計測位置がx
1のとき、変化率r(x
1)が所定値(20%)以下である。制御部600は、変化率r(x
1)が所定値(20%)以下であるとき(S242でNo)、振幅P(x
1)がひとつ前の測定位置における振幅P(x
1−Δx)よりも上昇したか否かを判断する(S244)。これにより、計測位置x
1−Δxのときに、金属管100の軸方向の移動距離に対して変曲点となったか否かを判断する。
【0100】
(移動距離更新S246)
計測位置がx
1のとき、振幅P(x
1)がひとつ前の測定位置における振幅P(x
1−Δx)よりも上昇していない(下降している)。制御部600は、振幅P(x
1)が上昇していないとき(S244でNo)、金属管100の計測位置xを金属管100の軸方向(x方向)に所定間隔Δxだけ移動した位置で振幅P(x)の計測を継続する(S246)。
【0101】
(増幅S250)
S242でNo、S244でNoおよびS246を繰り返した後、計測位置がx
2のとき、変化率r(x
2)が所定値以下であり、振幅P(x
2)がひとつ前の測定位置における振幅P(x
2−Δx)よりも上昇している。
【0102】
このとき、変化率r(x
2)が所定値を超えることなく超音波信号の振幅P(x)が上昇し始めていることから、超音波信号の振幅P(x)が減衰した原因は、金属管100の欠陥ではなく、具体的には、金属管100の偏平等によって、金属管100への超音波の入射角度や受信角度が僅かに変化したため、またはノイズ、環境の変化、無害な傷等が生じたためであると推認される。また、偏平が生じた金属管100に対して同じ条件で超音波を照射し続けることによって、再度超音波信号の振幅P(x)が減衰し続けた場合、金属管100の欠陥が原因でないのにもかかわらず、変化率r(x)が見かけ上大きくなってしまう可能性がある。
【0103】
そこで、制御部600は、変化率r(x)が所定値(20%)以下であり、且つ、振幅P(x
2)がひとつ前の測定位置における振幅P(x
2−Δx)よりも上昇しているとき(S244でYes)、超音波信号の振幅P(x)の減衰が金属管100の欠陥に起因しないと判断し、超音波信号を増幅し始める(S250)。このとき、制御部600は、例えば現計測位置x
2における超音波信号の振幅P(x
2)が上記した超音波信号の振幅の基準値(80%)に近づくように超音波信号を増幅する。
【0104】
(終了判断S280)
超音波信号を増幅した後、探傷工程S200を終了するか否かを判断する(S280)。探傷工程S200を終了しないとき(S280でNo)、金属管100の計測位置xを金属管100の軸方向(x方向)に所定間隔Δxだけ移動した位置で振幅P(x)の計測を継続する(S290)。
【0105】
制御部600は、振幅P(x)が第1基準値(70%)以上となったとき(S230でNo)、金属管100の計測位置xを金属管100の軸方向(x方向)に所定間隔Δxだけ移動した位置で振幅P(x)の計測を継続する(S280でNo〜S290)。
【0106】
(減衰S222)
計測位置x
2以降、振幅P(x)は例えば標準値(80%)を超えてさらに単調に増加する。計測位置がx
3のとき、振幅P(x
3)は第2基準値(90%)より大きくなっている。制御部600は、振幅P(x
3)が第2基準値より大きいとき(S220でYes)、超音波信号を減衰させる(S222)。これにより、超音波信号の振幅P(x)は、正常な金属管100を計測する際の振幅の水準(標準値)に戻る。
【0107】
(終了判断S280)
その後、制御部600は、以上の探傷工程S200を終了するか否かを判断する(S280)。例えば検査者が入出力部における測定終了ボタンを押すことをトリガーとして、探傷工程S200は終了する。制御部600は、探傷工程S200を終了するとき(S280でYes)、金属管100に対して超音波を送信することを停止するとともに、金属管100から伝搬した超音波を受信することを停止するよう、送信部200および受信部300を制御する。
【0108】
(b)第2測定例
次に、
図4を用い、第2測定例について説明する。
図4は、第2測定例の金属管の軸方向の位置に対する超音波信号の振幅、利得、および変化率を示す図である。第2測定例は、金属管100に欠陥が生じている場合を示している。まず、
図4の例において、金属管100の軸方向の計測位置がx
4であるとする。
【0109】
(移動距離更新S246)
図4の例において、計測位置がx
4のとき、振幅P(x
4)は第1基準値(70%)未満であり、ひとつ前の測定位置における振幅P(x
1−Δx)よりも上昇していない。制御部600は、振幅P(x
4)が上昇していないとき(S244でNo)、金属管100の計測位置xを金属管100の軸方向(x方向)に所定間隔Δxだけ移動した位置で振幅P(x)の計測を継続する(S246)。
【0110】
(変化率判断S242)
S242でNo、S244でNoおよびS246を繰り返した後、計測位置がx
5のとき、制御部600は、計測位置x
5での変化率r(x
5)が所定値(20%)より大きい否かを判断する(S242)。
【0111】
(振幅下限判断S262)
計測位置がx
5のとき、変化率r(x
5)は所定値(20%)より大きくなっている。制御部600は、変化率r(x
5)が所定値(20%)より大きいとき(S242でYes)、超音波信号の振幅P(x)が第1基準値(70%)より大きいか否かを判断する(S262)。
【0112】
なお、制御部600は、変化率r(x
5)が所定値(20%)より大きいとき(S242でYes)、AGC機能を用いていた場合はAGC機能を停止(ロック)する。これにより、変化率r(x)の大きさから金属管100の欠陥の大小を判断することができる。
【0113】
(計測回数判断S264)
計測位置がx
5のとき、振幅P(x
5)は第1基準値(70%)以下である。制御部600は、振幅P(x
5)は第1基準値(70%)以下であるとき(S262でNo)、超音波信号の振幅P(x)が第1基準値(70%)未満となってから(S230でYesから)所定間隔Δxごとに超音波信号を計測した計測回数が所定回数未満であるか否かを判断する(S264)。ここでいう計測回数を比較するための「所定回数」とは、金属管100に欠陥が生じている場合に計測する可能性がある最大の計測回数に基づいて定められ、例えば50回である。計測回数がこの「所定回数」以上となると、例えば金属管100に偏平が生じていると考えられる。
【0114】
(移動距離更新S266)
計測位置がx
5のとき、計測回数は所定回数(50回)未満である。制御部600は、計測回数が所定回数(50回)未満であるとき(S264でYes)、金属管100の計測位置xを金属管100の軸方向(x方向)に所定間隔Δxだけ移動した位置で振幅P(x)の計測を継続する(S266)。
【0115】
(欠陥認定S270)
S262でNo、S264でYesおよびS266を繰り返した後、計測位置がx
6のとき、振幅P(x
6)は第1基準値(70%)より大きくなっている。制御部600は、振幅P(x
6)は第1基準値(70%)より大きいとき(S262でYes)、金属管100の計測位置x
5から計測位置x
6までの間の部分に欠陥が生じていると判断する(S270)。すなわち、超音波信号の振幅P(x)が第1基準値(70%)未満となり、変化率r(x)が所定値(20%)より大きくなり、且つ、超音波信号の振幅P(x)が第1基準値未満となってから第1基準値より大きくなるまでの計測回数が所定回数(50回)未満であるときに、金属管100に欠陥が生じていると認定される。
【0116】
このとき、金属管100の計測位置x
5から計測位置x
6までの間の部分には、例えば金属管100内(金属管100の金属部分の内部)の異物、金属管100内側の凹み(ノッチ)、金属管100における貫通孔、金属管100表面の凹凸等の欠陥が生じていることが考えられる。送信部200から金属管100に伝搬し金属管100のこのような欠陥に到達した超音波は、大きく減衰して、受信部300によって受信される。
【0117】
なお、このとき、制御部600は、変化率r(x)の大きさによって金属管100に生じた欠陥の種類や大きさ等を判別してもよい。
【0118】
これ以降、終了判断S280を行い、上記した工程と同様の工程を継続して行っていく。
図4の例では、同様に計測を行っていくことにより、金属管100の計測位置x
8から計測位置x
9までの間の部分に欠陥が生じていると認定される。
【0119】
(c)第3測定例
次に、
図5を用い、第3測定例について説明する。
図5は、第3測定例の金属管の軸方向の位置に対する超音波信号の振幅、利得、および変化率を示す図である。第3測定例のように、金属管100に偏平が生じている場合であっても、変化率r(x)が所定値(20%)以上となる場合がある。この場合、探傷工程S200は、以下のようにして行われる。まず、
図5の例において、金属管100の軸方向の計測位置がx
10であるとする。
【0120】
(移動距離更新S246)
図5の例において、計測位置がx
10のとき、振幅P(x
4)は第1基準値(70%)未満であり、ひとつ前の測定位置における振幅P(x
1−Δx)よりも上昇していない。制御部600は、振幅P(x
10)が上昇していないとき(S244でNo)、金属管100の計測位置xを金属管100の軸方向(x方向)に所定間隔Δxだけ移動した位置で振幅P(x)の計測を継続する(S246)。
【0121】
(変化率判断S242)
S242でNo、S244でNoおよびS246を繰り返した後、計測位置がx
11のとき、制御部600は、計測位置x
11での変化率r(x
11)が所定値(20%)より大きい否かを判断する(S242)。
【0122】
(振幅下限判断S262)
計測位置がx
11のとき、変化率r(x
11)は所定値(20%)より大きくなっている。制御部600は、変化率r(x
11)が所定値(20%)より大きいとき(S242でYes)、超音波信号の振幅P(x)が第1基準値(70%)より大きいか否かを判断する(S262)。
【0123】
(計測回数判断S264)
計測位置がx
11のとき、振幅P(x
11)は第1基準値(70%)以下である。制御部600は、振幅P(x
11)は第1基準値(70%)以下であるとき(S262でNo)、計測回数が所定回数未満であるか否かを判断する(S264)。
【0124】
(移動距離更新S266)
計測位置がx
11のとき、計測回数は所定回数(50回)未満である。制御部600は、計測回数が所定回数(50回)未満であるとき(S264でYes)、金属管100の計測位置xを金属管100の軸方向(x方向)に所定間隔Δxだけ移動した位置で振幅P(x)の計測を継続する(S266)。
【0125】
(増幅S250)
S262でNo、S264でYesおよびS266を繰り返した後、計測位置がx
12のとき、振幅P(x
12)は第1基準値(70%)以下であり、計測回数は所定回数(50回)以上となっている。
【0126】
このような場合、超音波信号の振幅P(x)が減衰した原因は、金属管100の欠陥ではなく、金属管100の偏平等によって、金属管100への超音波の入射角度や受信角度が僅かに変化したためであると推認される。このまま計測を継続した場合、変化率r(x)が所定値を超えたままであるため、金属管100の欠陥を検出することが困難となる可能性がある。
【0127】
そこで、制御部600は、変化率r(x)が所定値(20%)より大きく、且つ、超音波信号の振幅P(x)が第1基準値(70%)未満となってから第1基準値より大きくなるまでの計測回数が所定回数(50回)以上であるとき(S264でNo)、超音波信号の振幅P(x)の減衰が金属管100の欠陥に起因しないと判断し、超音波信号を増幅し始める(S250)。これにより、金属管100に偏平等が生じている場合であっても、超音波信号の強度を適正な範囲とした状態で金属管100の欠陥検出を継続することができる。
【0128】
これ以降、終了判断S280を行い、上記した工程と同様の工程を継続して行っていく。
【0129】
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態やその変形例によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0130】
(a)本実施形態によれば、探傷工程S200では、金属管100に対して、送信部200を金属管100の外周から所定距離だけ離間し且つ金属管100の径方向に対して所定の送信角度θ
1の送信位置で且つ受信部300を金属管100の外周から所定距離だけ離間し且つ金属管100の径方向に対して所定の受信角度θ
2の受信位置で追従させながら、金属管100を軸方向に送り出す。
【0131】
ここで、金属管を軸方向に送り出すとき、金属管の中心軸が軸方向に対して垂直な方向に動いてしまったり、金属管100は軸方向に対して真っ直ぐではなく偏平していたりすることがある。例えば、金属管100の押出し成型の際に、装置の振動や成型条件の変化によって押出し具合が変化する。このとき、金属管100に対する送信部200および受信部300の位置がずれてしまうため、超音波信号の振幅P(x)が金属管100の欠陥の有無に関わらず変化してしまう。このため、超音波信号の振幅P(x)の変化を金属管100の欠陥であると誤認してしまう可能性がある。
【0132】
そこで、本実施形態によれば、金属管100の中心軸の軸方向に対して垂直な方向への動きに対して、送信部200を所定の送信位置で、且つ受信部300を所定の受信位置で追従させる。これにより、金属管100が軸方向に対して偏平している場合であっても金属管100の欠陥を誤認することを抑制することができる。
【0133】
(b)本実施形態によれば、第1支持機構240の第1当接部242が金属管100の外周に当接することによって、送信部200は、第1支持部244を介して、金属管100の外周から所定距離だけ離間し且つ金属管100の径方向に対して所定の送信角度θ
1の送信位置に配置される。また、第2支持機構340の第2当接部342が金属管100の外周に当接することによって、受信部300は、金属管100の外周から所定距離だけ離間し且つ金属管100の径方向に対して所定の受信角度θ
2の受信位置に配置される。これにより、探傷工程S200において金属管100が軸方向に移動している間、金属管100に対して送信部200を所定の送信位置で且つ受信部300を所定の受信位置で追従させることができる。
【0134】
(c)本実施形態によれば、欠陥検査装置10には、第1支持機構240および第2支持機構340を連結して支持する主支持機構400が設けられる。金属管100を挟んで第1支持機構240および第2支持機構340が互いに連結されていることにより、第1支持機構240の第1当接部242および第2支持機構340の第2当接部342の2点によって金属管100が支持される。これにより、送信部200および受信部300に対する金属管100の中心軸の位置を定めることができる。また、金属管100の中心軸が送信部200および受信部300に対して金属管100の軸方向に垂直な方向にずれることが抑制される。
【0135】
(d)本実施形態によれば、例えば空気中において非接触で金属管100に超音波を照射して金属管100の欠陥を検出する。このような空気中での欠陥検出方法では、とりわけ送信部200の送信位置および受信部300の受信位置の誤差が測定結果に影響を与えやすい。このため、送信部200の送信位置および受信部300の受信位置を高い精度で設定する必要がある。したがって、欠陥検査装置10に上記のような追従機構を設けることにより、安定的に空気中において金属管100の欠陥検出を行うことができる。
【0136】
(e)本実施形態によれば、探傷工程S200では、金属管100の軸方向の移動距離に対する超音波信号の振幅の変化率が所定値以上であるときに、金属管100に欠陥があると判断する。
【0137】
ここで、金属管100の断面形状は必ずしも真円となっておらず、例えば楕円であったり、一方の側面から歪んだ(凹んだ)形状となっていたりすることがあり、すなわち、金属管100に偏平が生じることがあった。このような場合、送信部200の金属管100に対する送信角度が変化してしまう。また、例えば金属管100の表面粗さが局所的に大きくなることがあった。このような場合、送信部200の金属管100に対する超音波の送信効率が変化してしまう。したがって、超音波信号の振幅P(x)が金属管100の偏平等を起因として金属管100の欠陥の有無に関わらず減衰しうる。なお、上述のように金属管100に対して、送信部200を所定の送信位置で、且つ受信部300を所定の受信位置で追従させる場合であっても、超音波信号の振幅P(x)が金属管100の偏平を起因として減衰しうる。このため、超音波信号の振幅P(x)の減衰を金属管100の欠陥であると誤認してしまう可能性がある。
【0138】
発明者らは、金属管100に偏平等が生じている場合には、金属管100の軸方向の移動距離に対して超音波信号の振幅P(x)が緩やかに変化するのに対し、金属管100の欠陥が生じている場合には金属管100の軸方向の移動距離に対して超音波信号の振幅P(x)が急激に変化することを見出した。
【0139】
そこで、本実施形態では、制御部600は、金属管100の軸方向の移動距離に対する超音波信号の振幅の変化率に応じて、金属管100に欠陥があるか否かを判断する。これにより、金属管100に偏平等が生じている場合であっても金属管100の欠陥を誤認することを抑制することができる。
【0140】
(f)本実施形態によれば、探傷工程S100では、上記した式(1)から求められるように、変化率r(x)が所定値(20%)以上であるときに、金属管100に欠陥があると判断する。式(1)の変化率r(x)を評価することにより、金属管100の軸方向の移動距離に対する超音波信号の振幅の変化率(傾き)に相当する評価を行うことができる。
【0141】
(g)本実施形態によれば、制御部600は、探傷工程において、超音波信号の振幅が第1基準値未満となったときに、超音波信号を増幅する(利得を増加する)一方、超音波信号の振幅が第1基準値よりも大きい第2基準値より大きくなったときに、超音波信号を減衰させる(利得を減少させる)。制御部600のプリアンプによる超音波信号を増幅または減衰させる機能は、AGC(Auto Gain Control)機能と呼ばれる。例えば金属管100に欠陥が生じていない場合に、超音波信号の振幅を補正するために、AGC機能は用いられる。これにより、超音波信号の強度を適正な範囲とした状態で超音波信号の振幅を評価することができる。
【0142】
(h)本実施形態によれば、探傷工程S200では、変化率r(x)が所定値(20%)未満であり、且つ、振幅P(x
2)がひとつ前の測定位置における振幅P(x−Δx)よりも上昇しているときに(S244でYes)、超音波信号を増幅する。
【0143】
ここで、変化率r(x)が所定値(20%)を超えることなく超音波信号の振幅P(x)が上昇し始めているとき、超音波信号の振幅P(x)が減衰した原因は、金属管100の欠陥ではなく、具体的には、金属管100の偏平等によって、金属管100への超音波の入射角度や受信角度が僅かに変化したためであると推認される。金属管100の偏平により超音波信号の振幅P(x)が緩やかに減衰し続けたとき、金属管100の欠陥が原因でない場合であっても、変化率r(x)が見かけ上大きくなる可能性がある。このため、金属管100に欠陥が生じたと誤認する可能性がある。
【0144】
これに対して本実施形態によれば、変化率r(x)が所定値(20%)未満であり、且つ、振幅P(x
2)がひとつ前の測定位置における振幅P(x
2−Δx)よりも上昇しているときに(S250でNo)、超音波信号を増幅することにより、金属管100の欠陥が原因でない場合に変化率r(x)が過剰に大きくなることが抑制される。したがって、金属管100に偏平が生じているときに、金属管100に欠陥があると誤認することを抑制することができる。
【0145】
(i)本実施形態によれば、探傷工程S200では、変化率r(x)が所定値(20%)より大きくなり、且つ、超音波信号の振幅P(x)が第1基準値(70%)未満となってから第1基準値より大きくなるまでの計測回数が所定回数(50回)以上であるとき(S264でNo)、超音波信号を増幅する。
【0146】
ここで、変化率r(x)が所定値(20%)より大きくなり、且つ、超音波信号の振幅P(x)が第1基準値(70%)未満となってから第1基準値より大きくなるまでの計測回数が所定回数(50回)以上である場合、超音波信号の振幅P(x)が減衰した原因は、金属管100の欠陥ではなく、金属管100の偏平等によって、金属管100への超音波の入射角度や受信角度が僅かに変化したためであると推認される。このまま計測を継続した場合、変化率r(x)が所定値を超えたままであるため、金属管100の欠陥を検出することが困難となる可能性がある。
【0147】
これに対して本実施形態によれば、変化率r(x)が所定値(20%)より大きくなり、且つ、超音波信号の振幅P(x)が第1基準値(70%)未満となってから第1基準値より大きくなるまでの計測回数が所定回数(50回)以上であるとき(S264でNo)、超音波信号を増幅することにより、金属管100に偏平が生じている場合であっても、超音波信号の強度を適正な範囲とした状態で金属管100の欠陥検出を継続することができる。
【0148】
(j)本実施形態によれば、超音波信号の振幅P(x)が第1基準値(70%)未満となり、変化率r(x)が所定値(20%)より大きくなり、且つ、超音波信号の振幅P(x)が第1基準値未満となってから第1基準値より大きくなるまでの計測回数が所定回数(50回)未満であるとき(S262でYes)、金属管100に欠陥が生じていると判断する(S270)。このように、式(1)で定義される変化率r(x)の大きさを判断することに加え計測回数を判断することにより、結果的に金属管100の軸方向の移動距離に対する振幅の変化率(傾き)を判断している。これにより、金属管100に欠陥が生じているか否かを判断することができる。
【0149】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0150】
上述の実施形態では、透過法により金属管100の欠陥を検出する場合について説明したが、反射法により金属管の欠陥を検出する場合であっても、上記した実施形態と同様の欠陥検査装置、および欠陥検査方法を適用することができる。反射法の場合、例えば送信部が受信部を兼ね、探傷工程では超音波信号の振幅の増加に基づいて金属管の欠陥を検出する。また、反射法の場合、送信部を含む検査部の数は上記した実施形態における検査部の数以上であってもよく、例えば8組設けられていても良い。
【0151】
また、上述の実施形態では、電力ケーブル等に用いられる金属管100に関する欠陥検査方法について説明したが、長尺の金属管であれば、どのような用途の金属管に対しても適用することができる。
【0152】
また、上述の実施形態では、空気中で超音波を照射する場合について説明したが、水中で超音波を照射して金属管の欠陥を検出する場合にも、本実施形態の欠陥検出方法および欠陥検出装置を適用することができる。
【0153】
また、上述の実施形態では、金属管100がAlからなり、検査部12が4組設けられている場合について説明したが、金属管がPbからなる場合、検査部は10組以上設けられていても良い。
【0154】
また、上述の実施形態では、主支持機構400の第1移動機構420がエアシリンダ422を有する場合について説明したが、第1移動機構はエアシリンダの代わりにバネ(スプリング)を有していても良い。
【0155】
また、上述の実施形態における第1基準値、標準値、第2基準値、変化率r(x)の所定値、計測回数の所定回数は、任意に設定することができる。
【0156】
また、上述の実施形態では、所定の条件で金属管100に偏平が生じていると推認されるときに(例えばS244でYesおよびS264でNo)、超音波信号を増幅する(S250)場合について説明したが、送信部が送信する超音波の強度を大きくしてもよい。
【0157】
また、上述の実施形態では、超音波信号の振幅P(x)が第2基準値(90%)以上となったときに(S220でYes)、超音波信号を減衰させる(S222)場合について説明したが、送信部が送信する超音波の強度を小さくしてもよい。
【0158】
また、上述の実施形態では、式(1)で定義される変化率r(x)に基づいて金属管100に欠陥があるか否かを判断する場合について説明したが、変化率が金属管の軸方向の移動距離に対する超音波信号の振幅の変化率に相当すれば、変化率は他の定義式で与えられても良い。例えば、変化率r’(x)は、振幅の基準値P
0(80%)としたとき、以下の式で与えられても良い。
r’(x)=|P
0−P(x)|/P
0×100
【0159】
また、上述の実施形態では、送信部200が金属管100の外周に沿った曲面状の送信面を有する場合について説明したが、送信部は平面状の送信面を有していても良い。
【0160】
ここで、
図7を用い、他の実施形態として、送信部が平面状の送信面を有する場合について説明する。
図7は、他の実施形態の送信部の金属管に対する配置を示す模式図である。
図7に示されているように、送信部202は、送信面の位置によらず平行に超音波を送信し、言い換えれば、無限遠にフォーカシングするように超音波を送信する。他の実施形態では、第1支持機構は、径方向支持部を有しておらず、金属管の径方向に対する送信部202の位置を固定するよう構成される。例えば金属管の直径がDからD’に変わったとき、金属管の表面から送信部202までの距離(H)が一定に保たれる。
【0161】
上述の実施形態では、送信部が曲面状の送信面を有しており、超音波をフォーカシングすることにより、高い精度で金属管の欠陥検査を行うことができる一方で、送信位置を精密に調整する必要がある。また、金属管の直径が小さくなったときに送信部の送信面から金属管の表面までの距離が長くなり、超音波のロスが大きくなる可能性がある。これに対して、他の実施形態によれば、送信部202を複雑かつ精密に位置調整する必要がないため、容易に配置工程を行うことができ、測定中に送信部202が微小に位置ずれしても安定的に超音波の計測を行うことができる。また、他の実施形態によれば、金属管の直径が小さくなった場合であっても金属管の表面から送信部202までの距離(H)が一定に保たれる。これにより、送信部の送信面から金属管の表面までの間における超音波のロスを小さくすることができる。