(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る計量器1について図面を参照して説明する。
計量器1は、ほぼ水平面上に延びるとともに、上から被計量物が載せられる載せ台10と、この載せ台10に対して着脱可能に取り付けられる支持部材4と、支持部材4と床面との間に配置されるセンサ組立5と、を備えている。
なお、計量器1としては、例えば、使用者の体重を計測するための体重計、体重計の上面板2に生体インピーダンスを測定するための電極を備えた体脂肪計や体組成計、物品や食料品などの重量を計測するための秤などが考えられる。
【0016】
載せ台10は、上面板2と、この上面板2の下方に連結される筐体3と、を有している。本実施形態では上面板2は、製品の意匠性を高めることを目的として、一定程度の透光性を有するガラス板で形成されている。上面板2の上面、又は下面には、例えばシルクスクリーン印刷によって模様等が付加されている。これにより、使用者にとっての視覚的な美観を起こさせる。
【0017】
体重計として計量器1を利用する場合には、使用者の体重による負荷に耐久し得るように、上面板2を強化ガラス等で形成することが望ましい。
【0018】
筐体3は、上面板2の厚さ方向における下側に重ねられるとともに、内部に不図示の電子回路等を収容することで、計量器1の主部とされている。筐体3は、主に樹脂材料を射出成形することによって形成される。
【0019】
さらに、筐体3には後述の支持部材4が挿入され、定着させるための複数の孔H(位置定着部)が設けられている。孔Hは、筐体3を厚さ方向に貫通する貫通孔である。
【0020】
より詳細には、孔Hは、筐体3の下側の面から上方に向かって、厚さ方向における中途位置まで延びる大孔部33と、大孔部33よりも小さな孔幅寸法を有する小孔部34と、から構成されている。小孔部34の周囲には、小孔部周縁部30が形成されている。小孔部周縁部30の下側の面は、段差面32とされている。
【0021】
上方から見た場合の孔Hの形状は、本実施形態では円形を成している。また、下方から見た場合の孔Hの形状は、本実施形態では上方から見た場合の円形に加え、その外側に八角形を成している。なお、孔Hの形状は、これら形状に限られるものでない。後述する支持部材4の輪郭形状に応じた例えば方形や楕円形等に形成されていてもよい。また、孔H(位置定着部)は、支持部材4Aの輪郭形状を全周にわたって定めるものであっても良いし、支持部材の輪郭形状の一部を定めるものであっても良い。
【0022】
支持部材4(支持部材4A)は、薄肉板状に形成されたベース部40Aと、ベース部40Aの上側の面から上方に向かって延びる突起部45と、から構成される部材である。
【0023】
ベース部40Aは、おおむね水平面上に延びるとともに、平面視で八角形状を呈する板状部材である。ベース部40Aの厚さ方向における寸法は全体にわたっておおむね均一とされている。
【0024】
さらに、ベース部40Aの上側の面であるベース部上面44には、孔Hの小孔部34と略同一の寸法を有し、上方に向かって延びる突起部45が形成されている。換言すると、突起部45は、孔Hに小孔部34の孔幅寸法と略同一の寸法を有する円柱状の凸部である。突起部45の上側の面である支持部材上面43は平滑に形成されている。
【0025】
このように形成された支持部材4Aは、筐体3に対して孔Hを介して着脱可能に取り付けられている。一方で、支持部材上面43と、上面板2の下面21とは、例えば両面テープ等によって互いに連結されている。
【0026】
さらに、突起部45の上下方向における寸法は、孔Hにおける小孔部周縁部30の上下方向寸法よりも大きく設定されている。換言すれば孔Hにおける段差面32と、支持部材4におけるベース部上面44との間には、上下方向の寸法が一定の間隙が形成される。
【0027】
ここで、
図2は、後述の係止爪40B,40Bが配列される方向(以下、II−II方向とする)から見た支持部材4の部分の断面図である。
図2に示すように、突起部45の上下方向における寸法をL1とし、小孔部周縁部30の上下方向における寸法をL2とした時、L1>L2となるように、それぞれの寸法が設定されている。
【0028】
また、II−II方向から見た断面において、ベース部40Aの周縁部における互いに対向する2つの辺には、それぞれ下方に向かって突出する複数の(2つの)係止爪40B,40Bが1つずつ設けられている。係止爪40B,40Bの上下方向における寸法は、筐体3の厚さ方向における寸法よりも大きく設定されている。すなわち、支持部材4Aを筐体3に組み付けた状態においては、係止爪40B,40Bは、筐体3の下面からわずかに突出する。
また、大孔部33と係止爪40Bとの間には、間隙が形成される。
【0029】
図3は、水平面内で上述のII−II方向と直交する方向(以下、III−III方向とする)から見た支持部材4の断面図である。
【0030】
III−III方向から見た断面において、ベース部40Aの周縁部における互いに対向する2つの辺には、それぞれ下方に向かって突出する立ち上がり片40E,40Dが1つずつ設けられている。それぞれの立ち上がり片40E,40Dは、筐体3に設けられた係止爪35(後述)と、係止突起36(後述)のそれぞれの上下方向における寸法と対応するように設定される。この限りにおいて、立ち上がり片40E,40Dそれぞれの上下方向における寸法は互いに異なっていてもよいし、略同一であってもよい。
また、これらの立ち上がり片40E,40Dの間の、上面板2に平行な面上における離間寸法は、上述の係止爪40B同士の間の離間寸法よりも大きく形成されている。
【0031】
加えて、III−III方向から見て、筐体3における大孔部33の周縁部には、孔側に向かって突出する係止爪35が形成されている。係止爪35は全体が薄肉状に形成されているため、孔側から力を加えると、この力に従って孔Hの外側に向かって弾性変形することが可能である。
【0032】
同じく大孔部33の周縁部であって係止爪35と対向する位置には、孔側に向かって突出する係止突起36が設けられている。
これらの係止爪35と係止突起36とにより、支持部材4は筐体3に対して固定される。より詳細には、まず支持部材4のベース部40Aにおける立ち上がり片40Dを係止突起36上方の空間に向かって斜めに挿入することで、係合させる。
【0033】
続いて、この状態から、ベース部40Aにおける、係止突起36と対向する側の周縁部を押圧することで、係止爪35とベース部40Aにおける立ち上がり片40Eとを係合させる。上述のように、係止爪35は孔Hの外側に向かって弾性変形可能である。すなわち、ベース部40Aの周縁部を押圧することで係止爪35は径方向外側に向かってわずかに弾性変形する。さらにベース部40Aの周縁部を押圧することにより、ベース部40A(立ち上がり片40E)は係止爪35を乗り越え、弾性復元力によって当初の形状に戻る。これにより、係止爪35とベース部40Aの周縁部とが互いに係合する。
以上のような構成により、支持部材4は筐体3に対して固定される。
なお、小孔部周縁部30の下面37とベース面上面44との間には、間隙が形成される。
【0034】
このような構成によれば、係止爪40B,40Bの直上(段差面32とベース面上面44との間)及び係止爪40B,40Bと大孔部33との間には、上述のように間隙が形成されている。したがって、計量器1の使用時に、上面板2に対して加えられる下方向の荷重は、係止爪40B,40Bには作用しない。これにより、係止爪40B,40Bは、固定状態を一定に保ったままにセンサ組立5A(5)を挟持固定することができる。すなわち、係止爪40B,40Bとセンサ組立5A(5)との固定状態が変化した場合に発生する計量器1の計測精度の劣化を抑制することができる。
なお、係止爪40B,40Bの直上(段差面32とベース面上面44との間)及び係止爪40B,40Bと大孔部33との間には、間隙を設けなくても、実施可能である。
さらに、係止爪40E,40Dの直上(小孔部周縁部30の下面37とベース面上面44との間)も間隙を設けなくても、実施可能である。
【0035】
詳細構造の図示は省略するが、センサ組立5(センサ組立5A)は、ロードセルと、このロードセルに組み合わされて設置面に接地する脚とによって構成される。そして、ロードセルは、荷重を受けると荷重に対応した変形を起こす起歪体と、この起歪体に貼り付けられ、起歪体の変形による歪を検知する歪ゲージとにより構成される。この歪ゲージからの出力信号を演算装置(図示省略)に伝達して演算を行うことで、ロードセル(センサ組立5A)が受けた荷重が数値に変換される。計量器1は、この数値を表示するための表示装置(図示省略)をさらに備えている。これにより、計量器1は被計量物の重量を数値化して使用者に通知することができる。ここで、ロードセルは、本事例では、外形を略円柱状に形成したものを用いるが、ロードセルの外形は如何なる形状に形成されていてもよい。
【0036】
本実施形態では、センサ組立5Aは、支持部材4Aにおけるベース部40Aの下側の面上で、係止爪40B,40Bによって挟持される。
【0037】
より詳細には、係止爪40B,40Bは、例えば
図1に示すように、支持部材4Aのベース部40Aの周縁部において互いに対向する任意の2か所に設けられる。さらに、係止爪40B,40Bの下側の端部には、軸線AZに向かう方向に向かってわずかに突出する折り返し部40C,40Cがそれぞれ形成されている。
本実施形態では、センサ組立5Aには係止爪40B,40Bが係合するための段差、又は凹部等が設けられているものとされている。この場合において、折り返し部40C,40Cからベース部40Aまでの上下方向の寸法は、センサ組立5Aにおける上側の面からこの段差や凹部等までの上下方向寸法と概ね同一に設定されている。
このような構成によれば、係止爪40B,40Bの折り返し部40C,40Cが、センサ組立5Aの段差に係合することでこれを保持することができる。
なお、センサ組立5Aにおいて、上述のような段差や凹部等が設けられていない場合には、不図示のねじ等によって支持部材4Aとセンサ組立5Aとを固定する構成としてもよい。
【0038】
以上のような構成であれば、センサ組立5Aは下方に向かって脱落することなく、支持部材4Aによって保持される。
【0039】
さらに、本実施形態に係る計量器1では、上述の支持部材4Aに替えて、
図4及び
図5に示すような支持部材4Bを、支持部材4として用いることも可能である。
図4及び
図5に示す支持部材4Bは、
図2及び
図3の例で示すセンサ組立5Aの形態(段差を有する円柱状)と異なる形態(段差のない円柱状)を成しているセンサ組立5Bと結合可能な形態を、2つの幅広の立ち上がり片40F,40F、2つの立ち上がり片40D,40Eで囲まれるベース部40Aにねじ等により締結固定される。
【0040】
ところで、センサ組立5A,5Bとしてのロードセルには、用途や定格に応じて複数の種類が存在する。そして、定格に応じてロードセルの形状や寸法も異なる。具体的には、最小計測単位(分解能)が例えば50gのものと、100gのもの等が存在する。ロードセルを用いる限りにおいて、計量器1の計測精度はロードセルの分解能に一部依存する。
【0041】
計量器1を設計するに際して、このような複数種類のロードセル(センサ組立5A,5B)の形状に合わせて、複数種類の筐体3を用意することは不経済である。特に、樹脂材料を射出成形することで筐体3を形成する場合、金型を新規に設計・製作する必要があるため、生産コストに与える影響は大である。
【0042】
しかしながら、本実施形態に係る計量器1では、製品の仕様変更などの際に、上述のようにセンサ組立5A,5Bの形状と寸法に応じて異なる種類の支持部材4(4A,4B)を用いることが可能である。このような構成では、支持部材4Aに替えて支持部材4Bを用いる場合には、載せ台への支持部材4Bの取り付け作業が容易に、かつ、上面板2や筐体3の形状と寸法を変更することなく、形状と寸法の異なるセンサ組立5A,5Bを計量器1に適用することができる。
【0043】
換言すれば、センサ組立5A,5Bの形状と寸法に応じて、支持部材4A,4Bのいずれかを使い分けることのみによって、異なる分解能や定格を有する計量器1を提供することができる。筐体3の全体の寸法は支持部材4A,4Bに比して小さいことから、金型を新規に製作する場合であっても、製造コストに与える影響を低減することができる。
【0044】
さらに、上述の構成では、筐体3の孔Hにおける段差面32と、支持部材4におけるベース部上面44とが、抜け止め部Rを構成している。
筐体3における孔Hには、上下方向における中途位置に段差面32が形成されている。この段差面32は、支持部材4におけるベース部上面44と、間隙を介して対向している。
【0045】
ここで、計量器1の組立に際して、支持部材4は孔Hに対して下方から挿入される。このとき、抜け止め部Rが設けられていない場合、支持部材4は上面板2の方向、すなわち上方に向かって脱落する可能性がある。しかしながら、上述のように、計量器1は抜け止め部Rを有していることから、支持部材4を上方に挿入し続けた場合、支持部材4のベース部上面44と、段差面32とが当接する。
これにより、支持部材4の上面板2方向への移動が所定位置で規制される。したがって、支持部材4を筐体3に組み付ける際に、格別に仮止め等を施さなくとも、支持部材4が脱落して散逸する可能性を抑制することができる。これにより、計量器1の組立性が向上する。
【0046】
さらに、上述の構成では、孔Hの孔幅寸法よりも大きな孔幅寸法を有する抜け止め部Rが形成されている。
【0047】
このような構成によれば、抜け止め部Rが孔Hに対して係合することで、支持部材4、及びセンサ組立5が、孔Hから上面板2の方向に脱落することを規制するための構造を簡便に設けることができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0049】
例えば、上述の実施形態では、上面板2は強化ガラス等のように透光性を有する材料で形成されるものとした。しかしながら、上面板2の材質はこれに限定されず、例えば透明、又は半透明の樹脂材料等で形成されていてもよい。
また、上面板2の形状や寸法は、計量器1で想定される被計量物の重量に耐えられる限りにおいて、あるいは、意匠上の要請によって、いかように形成されていてもよい。
【0050】
さらに、上面板2と筐体3とを固定するための構造は、上述の実施形態、及び図面によっては限定されず、計量器1の測定精度を確保できる限りにおいて、任意の態様を採ってよい。
【0051】
さらに、上述の実施形態では、支持部材4A,4Bはともに、ベース部40Aから上方に向かって突出する突起部45を有する構成とした。また、筐体3は、この突起部45の輪郭形状によって定まる位置定着部(孔H)を有する構成とした。
しかしながら、これらの部材の形状は上記に限定されず、
図6と
図7とに示すように、ベース部40Aに突起部45を設けずに支持部材4Cとしてもよい。この場合、支持部材4Cにおけるベース部上面44は一様に平坦な面として形成される。これに対応して、筐体3の下側の面には、上下方向から見て、支持部材4Cの輪郭形状と対応する形状をなすとともに、下方に向かってわずかに突出する突条部38が設けられて、位置定着部Hとされている。支持部材4Cは、この突条部38によって囲まれる領域に対して嵌合する。このような構成であっても、計量器1の組立性を良好に保つことができる。