(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
太陽からの放射エネルギーである輻射熱は、物質に照射されると一部は物質表面で反射されるが、残りは物質に吸収され、熱を発生する。太陽からの輻射熱を反射させるためには、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材が有効であることが知られている。
しかし、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材は、そのままでは太陽光を95%以上も反射させるため、その反射光が人間や動物の目を傷めるばかりでなく、航空機への障害をも引き起こす要因となる。そのため、この素材は、屋外で使用することはできなかった。
【0008】
また、ポリエチレンなどの樹脂の表面に輻射熱を反射する素材を塗布又は混合したポリエチレンシートを、発砲体の上下に施工する方法が提案されているが、表面に反射材を塗布したものは、反射光が人間や動物の目を傷めるため使用することは難しい。さらに、ポリエチレン等に反射素材を混練したものは、反射性能が低いという問題がある。
【0009】
さらに、地温が上昇し、野菜や草木が枯れたり萎れたりしてしまうことを防止するために、シート状に加工した樹脂繊維を地面に敷き詰める対策が実施されている。しかし、この素材は日陰を作る効果はあるが、地温の上昇を抑える効果は十分でない。
【0010】
このように、地球温暖化を防止するためには、太陽から地球表面に照射され、地表に吸収される輻射熱の熱量を少なくできれば解決できるが、現在まで解決できる有効な手段はない。
本発明は、これらの問題に鑑みなされたものであり、反射光が人間や動物の目を傷めることを防止し、太陽から照射された輻射熱のうち地表に吸収される熱量を減少させることができる地表用遮熱材、この地表用遮熱材を用いた遮熱方法及び地球温暖化を防止するための地球温暖化防止工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明1)
本発明の地表用遮熱材は、太陽光の入射側から、着色顔料及びUV剤等を混合した塩化ビニル等樹脂層とアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材とが順次積層された、
ことを特徴とする。
【0012】
(発明2)
本発明の地表用遮熱材は、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材の地表側に、ポリエステルや塩化ビニル等の樹脂層又は断熱材が積層されたことを特徴とする。
【0013】
(発明3)
発明1又は発明2の地表用遮熱材は、地熱用遮熱材の表裏を貫通する通気孔が設けられたことを特徴とする。
【0014】
(発明4)
本発明の地表用遮熱材は、太陽光の入射側から、着色顔料及びUV剤等を混合した塩化ビニル等樹脂層と、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材と、ポリエステルや塩化ビニル等樹脂層と、ゴムや多孔質の樹脂層等の浮力素材とが順次積層されたことを特徴とする。
【0015】
(発明5)
本発明の地表用遮熱材は、内部に空気の質量以下の質量を有する気体を密封した樹脂製等箱の表面に、太陽光の入射側から、着色顔料及びUV剤等を混合した塩化ビニル等樹脂層と、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材とが順次積層されたことを特徴とする地表用遮熱材。
【0016】
(発明6)
本発明の地表用遮熱材は、発明1〜発明5の地表用遮熱材に浮輪及びアンカーが設けられていることを特徴とする。
【0017】
(発明7)
発明1〜発明6の地表用遮熱材は、着色顔料及びUV剤等を混合した塩化ビニル等樹脂層の厚みが5μm以下であることが好ましい。
【0018】
(発明8)
本発明の地表用遮熱材は、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材の表面が梨地状に形成されていることを特徴とする。
【0019】
(発明9)
本発明の遮熱方法は、発明1〜発明8の地表用遮熱材を地表に敷き詰めることを特徴とする。
【0020】
(発明10)
本発明の地球温暖化防止工法は、発明1〜発明8の地表用遮熱材のいずれかを、水上に敷き詰めることを特徴とする。
【0021】
(発明11)
本発明の地球温暖化防止工法は、発明1〜発明3の地表用遮熱材のいずれかを、地表に敷き詰めることを特徴とする。
【0022】
(発明12)
本発明の地球温暖化防止工法は、発明4〜発明6の地表用遮熱材を水上に浮かせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の地表用遮熱材は、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材の表面で太陽光を反射するため、太陽光からのエネルギーが熱として全て地表に伝わらなくなるため、地表の温度上昇を防止することができる。
また、積層されている着色顔料及びUV剤等を混合した塩化ビニル等樹脂層が、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材によって反射された反射光を乱反射するため、反射光によって、人間や動物の目が傷つくことを確実に防止できる。
【0024】
本発明の地表用遮熱材は、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材の地表面にポリエステルや塩化ビニル等の樹脂又は断熱材が積層されているため、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材の地表側の面の腐食や変質を防止することができるとともに、電食防止効果も向上させることができる。さらに、ポリエステルや塩化ビニル等の樹脂又は断熱材が積層されることにより、地表用遮熱材の強度を向上させることができる。
【0025】
本発明の地表用遮熱材は、切欠きや孔が形成されているため、これらを介して、地表用遮熱材の表面に溜まった雨水を地面に誘導することができ、地面に水分を供給することができる。
【0026】
本発明の地表用遮熱材は、ゴムや多孔質の樹脂層等の浮力素材が積層されているため、水上に浮かせて使用することができる。さらに、この地表用遮熱材を水上で使用した場合、太陽光からのエネルギーが熱として全て水に伝わらなくなるため、水温を低下させることができる、湖沼や海洋の温度が上昇することを抑制することができる。
【0027】
本発明の地表用遮熱材は、箱の中に空気の質量以下の質量を有する気体が封入されているため、水上に浮かせることができ、地表用遮熱材を水上に敷き詰めることができる。また、箱を使用して浮かせるため、海洋等で生き物が衝突しても破壊されることなく、安定して水上に敷き詰めておくことができる。
【0028】
本発明の地表用遮熱材は、浮輪が設けることで浮力を大きく調整できるため、大きな面積の地表用遮熱材を水上に設ける場合でも、安定して水上に敷き詰めることができる。さらに、アンカーを水底に沈めることができるため、この地表用遮熱材を目的の位置に設置、固定することができる。
【0029】
本発明の地表用遮熱材の着色顔料及びUV剤等を混合した塩化ビニル等樹脂層を5μm以下とすることで、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材で反射した反射光を確実に散乱させることができる。
【0030】
本発明の地表用遮熱材は、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材の表面が梨地状に形成されているため、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材においても太陽光が散乱させることができる。
【0031】
本発明の遮熱方法は、地表用遮熱材を地表に敷き詰めたり、水上に浮かせたりすることで、地表、湖沼や海洋等の温度が上昇することを防止できる。さらに、地表用遮熱材を地表に敷き詰めた遮熱方法は、雑草の生長を抑制することもできる。
【0032】
本発明の地球温暖化防止工法は、上述した地表用遮熱材を積雪した雪に敷き詰めておくことで、雪や氷を長期間保存することができる。そのため、春先に気温が上昇しても急激な雪解けを防止することができ、洪水が生じることを防止できるのに加え、雪解けの速度を調整することができ、農業用水の確保を容易にすることができる。
また、地表用遮熱材を地面に敷き詰めることで、地面の温度が上昇することを防止できることに加え、地表の水分が蒸発することを抑制できるため、砂漠化が進行することを抑制することができる。
さらに、本発明の地球温暖化防止工法により、地表用遮熱材を水上に敷き詰めることで、地球温暖化が進行しても湖沼や海洋の水温を上昇することを抑制することができ、水温上昇による生物の絶滅を回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
地球は太陽からの放射エネルギーを吸収し、それと同量のエネルギーを赤外線として宇宙に放出することにより、ほぼ一定の温度に保たれている。太陽からの放射エネルギーの内、22%は雲や大気により反射され、9%は地表により反射される。そのため、直接宇宙に放射されるエネルギーの合計は31%である。さらに、太陽からの放射エネルギーの20%は雲や大気に吸収され、やがて赤外線として宇宙に再放射される。したがって、太陽から放射されるエネルギーの49%が地表に吸収される。地表に吸収された49%のエネルギーは、波長を変え、遠赤外線領域の波長として大気に再放射される。しかし、遠赤外線領域の波長のエネルギーは大気を通過できず、放射や吸収を繰り返しながら滞留し、地球は一定の温度に保たれている。
遠赤外線等の電磁波を吸収し易い二酸化炭素等の温室効果ガスが大気中に増加すると、大気や地球が得たエネルギーをより長く大気中に滞留させる。そのため、地表付近の温度が上昇し、地球温暖化が進行する。したがって、地球温暖化の進行を抑制するためには、二酸化炭素等の温室効果ガスの削減が必要となる。
【0035】
大気を透過して太陽から地球に放射される49%のエネルギーである輻射熱は、紫外線、可視光線、赤外線の一部及び電波のみである。
すなわち、これらの波長域の電磁波が地表に吸収される前に、宇宙に反射して直接戻すことで、大気の温度上昇を阻止することができる。
【0036】
本発明は、太陽から放射されたエネルギーの内、地表に吸収されている49%のエネルギーの一部を地表で反射させ、宇宙に再放射させるものである。
また、現在、太陽から地球に放射されるエネルギーの内、地表で反射し直接宇宙に再放射されているエネルギーの割合は全放射量の9%とされている。本発明は、この反射率を増加させようとするものである。
太陽からの放射エネルギーである輻射熱を反射させるためには、輻射熱に対して高反射率の素材であるアルミホイル等が有効で、アルミホイルの純度が高いものや表面が緻密なものが高反射する性能を有している。すなわち、輻射熱に対して高反射率の素材を雪の上、地上、水上に敷き詰めれば、地球温暖化を防止するために、非常に効果的である。
【0037】
[実施例1]
本実施例に係る地表用遮熱材1は、
図1に示すように、太陽光の入射側から、着色顔料及びUV剤等を混合した塩化ビニル等樹脂層(散乱樹脂層)11と、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材(反射素材)10を順次積層されている。
ここで、UV剤とは、紫外線の害を抑制するものである(以下、実施例2以下においても同様とする)。また、本実施形態において、地表とは、地球の表面を意味するものであり、地表には、陸地、海、流氷等が含まれる。
【0038】
[反射素材10]
反射素材10は、太陽光を反射する層であり、輻射熱に対して高反射率のアルミホイル等を使用する。反射素材10は、純度が高い方が輻射熱に対する反射率は向上するため、反射率が99.5%以上のものを使用する。また、反射素材10の厚さは、約5〜10μmのものを使用する。
反射素材10の表面は、光が散乱しやすくするために、梨地状に形成されている。
【0039】
[散乱樹脂層11]
散乱樹脂層11は、着色顔料及びUV剤等を混合した塩化ビニル等からなる。
散乱樹脂層11は、太陽光等を乱反射させる散乱層であると同時に、反射素材10を腐食から守る保護層としても機能する。
また、散乱樹脂層11は、厚さを5μm以下とし、薄膜として形成させることが好ましい。厚さが厚すぎると効果が得られない場合がある。
【0040】
次に、本実施例に係る地表用遮熱材1の効果について説明する。
大気を透過してきた紫外線、可視光線及び赤外線は、散乱樹脂層11で一部吸収されるが、大部分は透過し、反射素材10の表面で反射される。そして、再び散乱樹脂層11を透過し宇宙に放射される。
本実施例に係る地表用遮熱材1は、反射素材10の表面に散乱樹脂層11が積層されているため、輻射熱の一部を乱反射させることができる。したがって、地表用遮熱材1により反射した反射光によって、人間や動物の目が傷つくことを確実に防止することできる。
さらに、反射素材10の表面は梨地状に形成されているため、反射する光が散乱され、その光が散乱樹脂層11でさらに散乱されるため、人間や動物の目が傷つくことを確実に防止することできる。
【0041】
また、散乱樹脂層11に混練された着色顔料が劣化して透明化しても、地表用遮熱材1の眩しさは、散乱樹脂層11が積層されていないものと比較し、大幅に緩和できる。
反射素材10の表面に、塩化ビニル等の樹脂を積層させただけでは太陽光をそのまま反射する鏡面反射となってしまうが、塩化ビニル等樹脂に着色顔料を混練させることにより太陽光を散乱させることができる。
反射素材10の表面に散乱樹脂層11を積層すると、輻射熱に対する反射率は約10〜15パーセント低下するが、地表用遮熱材1は目視をしても眩しさを感じない表面状態となる。
【0042】
さらに、本実施例に係る地表用遮熱材1は、色褪せすることも長期間防止することができる。着色顔料は、紫外線によって破壊されやすく、太陽光に長時間当たると色褪せを起こす可能性がある。地表用遮熱材1を構成する散乱樹脂層11は、塩化ビニル等樹脂にUV剤が混練されているため、UV剤によって、紫外線による色褪せを抑制することができる。したがって、太陽光を散乱する性能を長期間保持することができる。
【0043】
[実施例2]
以下、
図1に示したものと同一あるいは相当する部分には同じ符号を使用して説明する。
本実施例における地表用遮熱材2は、
図2に示したように、太陽光の入射側から、散乱樹脂層11と、反射素材10とが順次積層され、反射素材10の地表側にポリエステルや塩化ビニル等の樹脂層(保護樹脂層)12が積層されている。
【0044】
[保護樹脂層12]
保護樹脂層12は、ポリエステルや塩化ビニル等の樹脂からなり、反射素材10の地表側の面を保護する。この保護樹脂層12に使用する樹脂の素材や厚みは自由に選定できる。また、保護樹脂層12の代わりに断熱材を使用することもできる。断熱材を使用する場合は、スポンジ系の柔軟性のある素材が好ましい。
【0045】
次に、本実施例に係る地表用遮熱材2の効果について説明する。
保護樹脂層12が積層されていることで、地表用遮熱材2は土や水分と保護樹脂層12を介して接するため、反射素材10の地表側の面が腐食することを防止できる。
また、地表用遮熱材2は、反射素材10の両面に散乱樹脂層11,保護樹脂層12(又は断熱材)が積層されているため、地表用遮熱材2に酸性やアルカリ性の溶液が付着しても反射素材10が変質することを防止できることに加え、電食防止効果も向上させることができる。
さらに、地表用遮熱材2は、反射素材10の地表側(裏面側)に保護樹脂層12を積層させることにより、地表用遮熱材2全体の強度を向上させることができる。
【0046】
[実施例3]
本実施例に係る地表用遮熱材3は、
図3に示すように、地表用遮熱材2の表裏を貫通する通気孔としての切欠き13が形成されている。また、地表用遮熱材3には、
図3に示すように、通気孔としての孔14を形成することもできる。
本実施例の地表用遮熱材3においても、散乱樹脂層11の厚みは5μm以下とすることが好ましい。また、切欠き13、孔14は、地表用遮熱材1に形成してもよい。
【0047】
[切欠き13]
切欠き13は、地表用遮熱材3に対して垂直方向に形成されている。切欠き13は、長手方向に等間隔に複数形成されている。この切欠き13は、例えば刃物により切込みを入れることによって、形成することができる。
【0048】
[孔14]
孔14は、ひし形状であり、地表用遮熱材3に対して垂直方向に、等間隔に複数形成されている。孔14の形状は、ひし形状に限定されず、丸状や矩形状に形成することができる。この孔14は、例えばドリルにより孔を空けることによって、形成することができる。
【0049】
次に、本実施例に係る地表用遮熱材3の効果について説明する。
地表用遮熱材3を、土を覆うように使用した場合、地表用遮熱材3の表面に溜まった雨水は切欠き13や孔14介して、裏面まで誘導される。そして、その雨水はそのまま土に浸透する。したがって、地表用遮熱材3の表面に溜まった雨水を、地表用遮熱材3が覆っている土に浸透させることができ、地面に水分を供給できる。
【0050】
切欠き13や孔14の大きさ、個数、位置は、施工場所や使用目的によって、適宜決定することができる。例えば、切欠き13や孔14の設ける個数を少なくした地表用遮熱材においては、切欠き13や孔14の開口部は少ないので地表用遮熱材は防水性が高く、気温が上昇した場合でも、地面からの水分の蒸発を抑制することができる。
【0051】
この地表用遮熱材3は、砂漠のような乾燥地帯の地面に使用することが適している。
地表用遮熱材3を砂漠のような超乾燥地帯の地面に敷き込むことで、地温の温度低下や水分の蒸発を抑えることができ、草や樹木の生育が期待できる。
さらに、地表用遮熱材3は、土の乾燥を防止できるため、高温状況下においても、野菜や果汁等の生産性を損なわない環境を維持できる。
【0052】
以上説明した地表用遮熱材1〜3は、主として地面に使用される。
地表用遮熱材1〜3の使用する面積が小さい場合、風等の対策として、地表用遮熱材1〜3の周囲を地面に埋めることにより固定する。また、土嚢等で要所に錘を載せ、固定することができる。地表用遮熱材1〜3の使用する面積が大きい場合、地表用遮熱材1〜3の周囲に鳩目をつけ、この鳩目を利用しピン等で地面に固定することができる。
また、春に山岳地帯で全層雪崩が起きるころ気温は一気に上昇、積雪した雪も一気に解けだすが、地表用遮熱材1〜3は軽量であるため、このような雪面に敷き込むことが効果的である。
地表用遮熱材同士の繋ぎは両面テープ等で接合あるいは糸で縫合し、現地で広げれば簡単に設置できるように大きめのシートにしておくと施工が容易である。また、風に飛ばされないように、シートの上部に土嚢等で重石を付ければ、設置が完成する。
【0053】
実施例1〜3では、主として地面に使用する地表用遮熱材及び遮熱方法について説明した。実施例4および5では、主として湖沼や海洋に使用する地表用遮熱材及び遮熱方法について説明する。
【0054】
[実施例4]
本実施例に係る地表用遮熱材4は、
図4に示すように、太陽光の入射側から、散乱樹脂層11と、反射素材10と、保護樹脂層12と、ゴムや多孔質の樹脂層等の浮力素材(浮力素材)15とが順次積層されている。この地表用遮熱材4は、主として湖沼や海の水上に浮かせて使用される。
【0055】
[浮力素材15]
浮力素材15は、ゴムや多孔質な樹脂等浮力が大きい素材を使用する。
この浮力素材15の厚みは、10mm程度とする。地表用遮熱材4は、主として湖沼や海洋で使用されるため、浮力素材15は、優れた力学特性や耐腐食性を有する素材が適している。
なお、浮力素材15は、保護樹脂層12の全面に積層されていなくてもよく、保護樹脂層12の一部に積層された場合でも、地表用遮熱材4が水面に浮くだけの浮力を有すればよい。
【0056】
次に、本実施例に係る地表用遮熱材4の効果について説明する。
地表用遮熱材4は、散乱樹脂層11が太陽光の入射側となるように使用する。この地表用遮熱材4は、保護樹脂層15の裏面に浮力素材15が積層されているため、その浮力によって水上に浮かすことができる。そのため、水上に、地表用遮熱材4を敷き詰めることができ、湖沼や海洋を遮熱することができる。
【0057】
[実施例5]
本実施例に係る地表用遮熱材5は、
図5に示すように、内部に、空気の質量以下の質量が軽い気体17を密封した箱16の表面に、太陽光の入射側から、散乱樹脂層11と、反射素材10とが順次積層されている。
地表用遮熱材5は、湖沼や海洋等の水上に浮かせて、長期間使用するものである。
【0058】
箱16は樹脂製であり、矩形状からなる。箱16の内部には気体17が封入されている。
箱16は、耐水性、耐熱性、酸やアルカリに対する耐性を有している素材を使用する。また、箱16は、強度が大きい素材を使用する。
気体7は、空気の質量以下の質量が小さい気体、例えば、ヘリウムを使用することができる。
【0059】
地表用遮熱材5は、例えば50cm角位のサイズとして、樹脂やステンレス等腐食に強い線材で連結することにより巨大筏を作り、湖沼や海洋に浮かべて使用することができる。
湖沼等では、巨大筏の要所からアンカーを下すことで、目的の位置に設置することができ、施工費も削減できる。海洋では、海流と深さを考慮する必要があるが、海底や岩礁からワイヤー等巨大筏を固定し設置することが望ましい。
【0060】
次に、地表用遮熱材5の効果について説明する。
地表用遮熱材5は、箱16の内部に質量が軽い気体17が封入されているため、浮力が大きく、水上に浮くことができる。この際、地表用遮熱材5は、散乱樹脂層11が太陽光の入射側となるように、水面上に敷き詰める。
また、地表用遮熱材5を構成する箱16は強度が大きい素材であるため、海等で生き物が衝突しても、破壊されることがなく、安定して水面上に敷き詰めておくことができる。
さらに、箱16は、海洋等で溶解することはないため地表用遮熱材5は、長期間、湖沼や海洋で使用することができる。
【0061】
[実施例6]
上述した地表用遮熱材1〜5は、面積の大きな水面、例えば、湖沼や海洋に敷き詰める場合、大きな面積の地表用遮熱材1〜5を使用するため、これらの地表用遮熱材1から4を確実に水面に浮かせつつ、敷き詰めなければならない。
そこで、実施例6では、これらの地表用遮熱材1〜5を水面に確実に浮かせ、敷き詰めるための地表用遮熱材6について説明する。
【0062】
地表用遮熱材6は、地表用遮熱材1〜5)に、浮輪30及びアンカー31がそれぞれ設けられたものである。
地表用遮熱材6は、
図9に示すように、その四辺にそれぞれ浮輪30が取り付けられている。この浮輪30は、一辺に対し、3つ設けられている。浮輪30には、例えば、樹脂製のエアーフロート式のものを使用することができる。
なお、浮輪30は、地表用遮熱材1を水面に浮かすことができればよいため、必ずしも四辺に設けられている必要はない。例えば、浮輪30は、一対の対向する辺に設けられていてもよい。また、浮輪30を設ける個数も限定されず、地熱用遮熱材6の大きさや重量によって適宜決定することができる。
地表用遮熱材6の四つ角には、所定の長さの綱が取り付けられ、その綱の先端にアンカー31が設けられている。
【0063】
この地表用遮熱材6は、例えば、日射量の多い春から夏にかけて使用する。地表用遮熱材6は、湖沼等の水上で、散乱樹脂層11が太陽光の入射側となるように、水面上に広げられ、各アンカー31を水底まで落下させる。このアンカー31によって、地表用遮熱材6は、所定の位置に敷き詰めることができる。
【0064】
次に、地表用遮熱材6の効果について説明する。
地表用遮熱材6は、浮輪30が設けられているため、浮力が大きく、確実に水上に浮くことができる。
また、アンカー31を水底まで沈め、地表用遮熱材6を所定の位置に設置あるいは固定できるため、安定して水面上に敷き詰めることができる。
この地表用遮熱材6は、浮輪30とアンカー31を設けることで、面積の大きい地表用遮熱材へ適用できるため、大きな面積の湖沼、海洋等に使用することに適している。
さらに、この地熱用遮熱材6は、使用後には、浮輪30のエアーを抜いて、折りたたんで保管することができ、翌年の春から夏の時期に再利用することができる。
【0065】
[実施例7]
実施例7では、筏状の台座上に形成した地表用遮熱材7について説明する。
この地表用遮熱材7は、筏状の台座の上に反射素材10、散乱樹脂層11、保護樹脂樹脂層12を積層させたものである。
この筏状の台座には、例えば、プラスチックやステンレスを使用することができる。
地表用遮熱材7は、湖沼等の水上で、散乱樹脂層11が太陽光の入射側となるように、水面上に設けられ、所定の位置に敷き詰めることができる。
【0066】
この地表用遮熱材7は、湖沼等の水上で、散乱樹脂層11が太陽光の入射側となるように、水面上に浮かせ、所定の位置に敷き詰めることができる。
地表用遮熱材7は、筏状の台座を有しているため、水面上に確実に安定して浮かせておくことができる。
なお、筏状の台座にプラスチックを使用することで安価に作製することができる反面、劣化によって生じるマイクロチップが流出し、湖沼等を汚染するおそれもある。一方、筏状の台座にステンレスを使用した場合、劣化する(錆びる)おそれが低いため湖沼等への影響は小さい反面、高価であるためコストがかかる。そのため、筏状の台座の素材は、使用する地表用遮熱材7の面積や使用する期間等を考慮し、適宜選択する。
【0067】
次に、本実施形態に係る地表用遮熱材の実証実験について説明する。
[遮熱試験1]
底部に幅3cm、高さ1cmの水の排出口21を設けたプラスチック容器20(幅25cm、長さ37cm、深さ14cm)を2つ用意した。そして、外部から容器20の内部に侵入する熱量を少なくするため、それらの箱の周囲を遮熱材(図示しない)で覆い、約10℃傾けて、屋外に設置した。容器20の内部には、
図6に示すように、約5mmに破砕した氷22を、合計7kg入れた。片方の容器20には1.5mmの発砲ポリエチレンシート23の上に0.1mmの地表用遮熱材1を配置した。もう一方の容器は、大気に開放した状態で屋外に放置した。この状態で、容器20の排出口21から流出する水を受け容器24に溜め、溜まった水の量(質量)から氷の溶解率を算出した。
【0069】
[考察1]
イ)天候は曇りで、気温は約24〜26℃であったが、大気に開放している容器20の氷22はすぐに溶け出した。そして、4時間後には、溶解率は78%が水となり、容器20の底部が見える状態になった。
ロ)一方、遮熱した容器20の氷22の溶解率は、4時間後に約35%となり、地表用遮熱材1を設けていないものと比較し、溶解率が大幅に低下した。このことから、地表用遮熱材1は、遮熱の効果が非常に大きいことが解る。
【0070】
遮熱試験1は、粉砕した氷の溶ける量を調査したものであるが、地表用遮熱材を使用した効果は大きいことが解る。地表用遮熱材は、地上や雪上等に直接敷き込むだけで大きな効果を生むことができる。
【0071】
[遮熱試験2]
木枠(横50cm、縦50cm、深さ10cm)を2つ用意し、地面に並べて設置した後、木枠の周囲を土で覆った。一方の木枠には砂を、もう一方の木枠には土を、それぞれ高さ10cmとなる量を入れた。この砂と土の表面に、縦25cm、横50cmの屋外用遮熱材(THB−WBE1、ベージュ)を厚み0.1mmで覆った。すなわち、双方とも木枠の半分の面積が屋外用遮熱材で覆われている。
さらに、サーモ―レコーダー25の端子を、地表用遮熱材1を設けていない部分の表面に、もう一つを屋外用遮熱材と砂又は土との間に設置し、炎天下にて各々の地面の表面温度を測定した。
【0073】
[考察2]
イ)最高温度となった12時30分、気温33.2℃の時、砂の表面温度は63.9℃であったが、地表用遮熱材1で覆われている砂の表面温度は46.7℃となり、17.2℃の差が生じた。このことから、地表用遮熱材1が太陽光を遮熱する効果が大きいことが解る。
ロ)最高温度となった12時30分、気温33.2℃の時、土の表面温度は56.4℃であったが、地表用遮熱材1で覆われている土の表面温度は43.6℃となり、12.8℃の差が生じた。このことからも、地表用遮熱材1が太陽光を遮熱する効果が大きいことが解る。
ハ)砂の最高温度は12時30分で、表面温度が63.9℃であったが、土は同時刻に56.4℃で、土の方が7.5℃低かった。
ニ)16時の時、砂地の温度差は9℃であったが、土の温度差は2.2℃となった。このことから遮熱する物質により差が大きいことが解る。
ホ)以上のことから、地表の土や砂の温度を下げるには、地表用遮熱材1で覆うことが効果的であることが解る。
【0074】
[遮熱試験3]
2つの水槽A及び水槽B(幅45cm、長さ76cm、高さ37cm)に、ほぼ満杯の水(125L)を入れ、炎天下に放置した。周囲から水槽A,Bの内部へ熱が侵入することを防ぐために、水槽A,Bの側面及び底面は遮熱材(図示しない)で覆った。
また、
図7に示すように、水槽Aの水面には地表用遮熱材を設けず、水槽Bの水面には断熱材として発砲スチロール23(厚さ:10mm)を設け、その上に厚さ0.1mmの地表用遮熱材1を設けた。
さらに、水槽AおよびBとも、水面から3cmと15cmの2か所にサーモレコーダー25を設置し、水温を測定した。
【表5】
【0076】
[考察3]
イ)地表用遮熱材1を設けていない水槽Aの温度は、水面から3cmの位置及び水面から15cmの位置で、ほぼ同じ温度で推移している。すなわち、この水槽Aの内部では対流が発生して、内部の水が撹拌されていると考えられる。
ロ)地表用遮熱材1を設置した水槽Bでは、水面から3cmの位置と15cmの位置の温度は平衡状態である。すなわち、この水槽Bの内部では対流の発生がなく、水温は表面から下部に向かって徐々に低下していると考えられる。
ハ)水槽AおよびBの水面から3cmの位置の温度を比較すると、地表用遮熱材1を設けた水槽Bの方が、明らかに温度が低く、地表用遮熱材1による遮熱の効果が大きいことが解る。
ニ)湖沼の内部では対流がないと底部に酸素を供給することができない。しかし、地表用遮熱材1を設ける部分と設けない部分の面積を適度に調整することで、湖沼の水温の低下を図りつつ、湖沼の内部に対流を起こさせることもできると考えられる。
ホ)本遮熱試験で使用した水槽A,Bの深さは浅く、かつ大きさが小さいため、実際の湖沼とは異なる環境であるが、上述した水温の傾向は同じであると考えられ、地表用遮熱材1を使用することで、その効果を十分享受することができると考えられる。
【0077】
[遮熱試験4]
水槽C(幅45cm、長さ76cm、高さ37cm)に、ほぼ満杯の水(125L)を入れ、炎天下に放置した。周囲から水槽Cの内部へ熱が侵入することを防ぐために、水槽Cの側面及び底面は遮熱材(図示しない)で覆った。
また、
図8に示すように、水槽Cの水面の半分は地表用遮熱材1を設けない開放状態、もう半分は断熱材として発砲スチロール23(厚さ:10mm)の表面に厚さ0.1mmの地表用遮熱材1を設け、地表用遮熱材1が太陽光側になるように水面上に浮かせた。
地表用遮熱材1を設けた部分と設けなかった部分の水面から3cmと15cmの2か所にサーモレコーダー25をそれぞれ設置し、水温を測定した。
【表8】
【0079】
[考察4]
イ)水面から3cm及び15cmの水温を比較すると、地表用遮熱材1を設けた場合、15cmの位置の温度の方が大きく下がり、地表用遮熱材1を設けていない場合、両者ともほぼ同じになる。すなわち、遮熱することで熱は上部から下部に伝導する形態をとり、熱は徐々に伝達されるので、水底に近くなるほど水温は低くなる。一方、水面に地表用遮熱材1を設けていない場合、太陽光が水中の深いところまで透過し、水に熱を与えるため、対流が発生し、水温が均一化される、そのため、水面から3cm及び15cmの位置の水温は、ほぼ同じになる。
ロ)本遮熱試験では、一つの水槽Cにおいて、地表用遮熱材1を設けた部分と設けていない部分を作ったため、地表用遮熱材1を設けなかった部分でも、上側と下側の水温の差は大きくなった。
ハ)しかも、同じ深さであれば、地表用遮熱材1を設けない方が、低い温度となっている。
二)つまり、地表用遮熱材1を設けない部分で対流が発生すると、地表用遮熱材1を設けた部分の温度の低い水が流入し、水槽Cの内部全体に大きな対流が発生していると考えられる。
ホ)よって、湖沼でも地表用遮熱材1を設けた部分と設けていない部分を作ることにより、湖沼の内部に対流を発生させることができると考えられる。
ヘ)しかも、地表用遮熱材1を設けた部分と設けていない部分の面積を変えることで、水の流速や移動量も変えられる可能性がある。
【0080】
湖沼における水の撹拌メカニズムを、水槽における遮熱試験3及び4の結果に基づいて説明する。一般に、水槽に太陽光が照射されると、太陽光の大半は水を透過し、やがて水に吸収され、熱を発生する。水槽の下側は、上側で吸収された光が照射されるため、上側と比較し、照射される太陽光のエネルギーが小さい。そのため、水槽の上側と下側で温度差が生じ、対流が発生する。遮熱試験3の水槽Aのように、この現象が繰り返されることにより、水槽の内部の温度は均一となり、水槽Aの上側と下側の温度差は小さくなる。
一方、水槽Bの表面に地表用遮熱材を敷き詰めた場合、地表用遮熱材に照射された太陽光の大半は地表用遮熱材で反射され宇宙に戻る。
また、地表用遮熱材に吸収された太陽光は伝導熱となり、熱力学第二法則に基づき、熱は熱い方から冷たい方へ移動し、大気あるいは水に伝達される。地表用遮熱材から水へは、堪えず伝導熱しか伝達されないので、熱は徐々に下部に伝達される。
すなわち、遮熱試験3の水槽Bのように、水槽の上側と下側の水の移動はほとんどなく、下側に行くほど水温が低下していると考えられる。
【0081】
遮熱試験4においては、地熱用遮熱材1が敷き詰められていない部分は遮熱試験3と同様に対流が発生し、上側と下側の熱移動が始まる。この時、地熱用遮熱材1が敷き詰められていない部分の温度の低い水は、地熱用遮熱材1が敷き詰められた部分の下側に入り込み、水槽Cの内部全体に大きな対流が発生していると考えられる。
水槽Cの内部の水温を観察すると明らかであり、地熱用遮熱材1が敷き詰められていない部分の底部が最も温度が低い。
【0082】
この遮熱試験3及び4により、湖沼等では水面に地表用遮熱材1を敷き詰めることにより、湖沼の温度を低下させることができることが解る。さらに、地表用遮熱材1の敷き詰める面積を変えることにより、湖沼の内部に大きな対流を起こすことができ、空気中の酸素を湖沼の内部に取り込みやすくすることができると考えられる。
【0083】
[遮熱試験5]
雑草を取り除いた場所に地表用遮熱材1を設け、地表用遮熱材1を設けた部分と設けていない部分の雑草の生長度合を調べる試験を行った。期間は60日間とし、評価は目視で行った。
【0084】
[結果5]
地表用遮熱材1を設けていない部分の土では、雑草が生長していた。
一方、地表用遮熱材1を設けた部分の土には、雑草がほとんど生長しておらず、地表用遮熱材1を設けていない部分からの草の根が数本見あたるだけだった。
【0085】
[考察5]
イ)地表用遮熱材1を設けた部分は、太陽光が地表用遮熱材1の表面で反射され、土までには照射されなかったため、雑草は生長しなかったと考えられる。
ロ)このことから、地表用遮熱材1は、太陽光を確実に遮熱することが解る。
この遮熱試験5の結果から、雑草が生えている場所に地表用遮熱材を敷き詰めることにより、雑草の成長を抑制することができ、除草効果を有することが解る。
【0086】
以上の遮熱試験の結果から、本実施形態に係る地表用遮熱材1〜5は、地球温暖化を防止するために使用することができる。また、本実施例で述べた土や水面等の地表を遮熱する方法は、地球温暖化防止工法として使用することができる。
【0087】
以上、本実施形態について説明したが、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。例えば、箱16は、より高性能にするために、箱16の中を真空にすることもできる。