特許第6286812号(P6286812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6286812天然ガス液化装置の混合冷媒組成の決定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286812
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】天然ガス液化装置の混合冷媒組成の決定方法
(51)【国際特許分類】
   F25J 1/00 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
   F25J1/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-550787(P2017-550787)
(86)(22)【出願日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】JP2016057651
(87)【国際公開番号】WO2017154181
(87)【国際公開日】20170914
【審査請求日】2017年10月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004411
【氏名又は名称】日揮株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091513
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162008
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 宣明
(72)【発明者】
【氏名】アウン カン レオン
(72)【発明者】
【氏名】金丸 剛久
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−25481(JP,A)
【文献】 特表2012−531576(JP,A)
【文献】 特表2013−540973(JP,A)
【文献】 米国特許第7266975(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J 1/00−5/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予冷用冷媒により天然ガスを予冷する予冷熱交換器と、窒素及び炭素数が1から3までの炭化水素からなる冷媒原料群から選択される複数の冷媒原料を含む混合冷媒により、前記予冷された天然ガスを液化する極低温熱交換器と、前記予冷用冷媒及び混合冷媒のガスの圧縮を行う複数の圧縮機とを備えた天然ガス液化装置の混合冷媒組成の決定方法であって、
天然ガスの供給組成及び供給圧力と、前記混合冷媒の組成とを決定し、予め設定した温度まで冷却された液化天然ガスを得る際に、前記極低温熱交換器の総括伝熱係数に伝熱面積を乗じた値であるUA値と、前記複数の圧縮機の総消費動力との算出に必要な前記天然ガス液化装置の稼働情報を入力可能なシミュレーションモデルを、当該天然ガス液化装置から取得した稼働データに基づいて作成するモデル作成工程と、
前記稼働データ取得時の混合冷媒組成と天然ガスの供給組成及び供給圧力とを用いて前記モデル作成の結果得られたシミュレーションモデルを実行し、前記UA値を算出するUA値算出工程と、
前記供給組成及び供給圧力の少なくとも一方を変化させた新たな供給条件下にて、前記稼働データ取得時の混合冷媒組成から、冷媒原料の組成を変化させた複数の混合冷媒ケースについて、前記極低温熱交換器のUA値が、UA値算出によって得られたUA値と揃うように調整した前記シミュレーションモデルを実行し、前記総消費動力を算出する試算工程と、
前記試算工程にて求めた各混合冷媒ケースについてのシミュレーションモデルの実行結果のうち、液化天然ガスの単位流出量あたりの総消費動力が最も小さくなる混合冷媒ケースの混合冷媒組成を、前記新たな供給条件下での混合冷媒組成とする組成決定工程と、を含むことを特徴とする天然ガス液化装置の混合冷媒組成の決定方法。
【請求項2】
前記混合冷媒は4つの冷媒原料を含み、
前記混合冷媒に含まれる蒸気圧が最大である第1の冷媒原料の含有量を変化させながら、前記極低温熱交換器のUA値が、UA値算出によって得られたUA値と揃うように調整した前記シミュレーションモデルを実行して、前記極低温熱交換器の塔頂部における液化天然ガスの温度と、当該塔頂部の液化天然ガスの冷却を行う混合冷媒の温度との温度差が、前記予め設定した温度まで冷却された液化天然ガスを得るために必要な最高温度差以下となる第1の冷媒原料の暫定含有量を求める第1の暫定含有量決定工程と、
前記混合冷媒に含まれる蒸気圧が最小である第2の冷媒原料の含有量を変化させながら、前記UA値算出によって得られたUA値が調整されたシミュレーションモデルを実行して、前記極低温熱交換器の塔底部における天然ガスの温度と、当該塔底部の天然ガスの冷却を行う混合冷媒の温度との温度差が、前記予め設定した温度まで冷却された液化天然ガスを得るために必要な最高温度差以下となる第2の冷媒原料の暫定含有量を求める第2の暫定含有量決定工程と、を含み、
前記試算工程における複数の混合冷媒ケースは、前記第1、第2の暫定含有量決定工程にて求めた暫定含有量の第1、第2の冷媒原料を含むことを特徴とする請求項1に記載の天然ガス液化装置の混合冷媒組成の決定方法。
【請求項3】
前記試算工程における複数の混合冷媒ケースは、前記第1、第2の冷媒原料の含有量が各々の暫定含有量における混合冷媒中の含有割合の±0.5パーセントポイントの範囲に設定され、且つ、これら第1、第2の冷媒原料以外の残る2つの冷媒原料の含有量を変化させたものであることを特徴とする請求項2に記載の天然ガス液化装置の混合冷媒組成の決定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の冷媒原料が混合された混合冷媒を用いて天然ガスを液化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガス液化装置(以下、「NG液化装置」という)においては、供給された天然ガス(NG:Natural Gas)を一連の熱交換器群にて冷却し、液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)を得る処理が行われる。主要なNG液化装置においては、プロパンなどの予冷用冷媒を用いてNGの予冷を行った後、窒素、メタン、エタン、プロパンなどの複数種類の冷媒原料を混合した混合冷媒(MR:Mixed Refrigerant)を用いて、予冷されたNGを液化、過冷却する。
【0003】
NG液化装置は、NGの供給組成や供給圧力、NG液化装置のプラント区域の環境要因(外気温や気圧)などの前提条件を設定したうえで、効率的にLNGを生産できるように最適な設計が行われる。特に複数の冷媒原料を混合するMRは、NGの冷却曲線に沿って温度変化する冷却曲線を実現することが可能であり、ロスが少なく効率的な液化サイクルを実現することができる。
【0004】
しかしながら、ガス井から産出される天然ガスの経時的な変化やガス井の切り替えなどによって、NGの供給組成や供給圧力が設計時の前提条件として設定された値からずれてしまう場合がある。前提条件の一つとして設定された値からの変化は、LNGの生産量の低下や、目標の生産量を維持するためにNG液化装置にて消費される動力の増大を招き、NG液化装置の稼働効率の低下(LNGの単位産出量あたりの消費動力の増大)を引き起こす可能性がある。
【0005】
ここで特許文献1には、公知のモデル予測制御を利用して、天然ガスの液化を行う主熱交換器(本願の“極低温熱交換器”に相当する)の運転に係る複数の操作変数のセット(例えばMRの重質冷媒フラクションや軽質冷媒フラクションの質量流量、冷媒成分組成物(本願の“混合冷媒”に相当する)の補填流量など)を操作することにより、所定の制御変数のセット(例えば主熱交換器の暖端部側における天然ガスと気化したMRとの温度差、液化天然ガスの温度など)の最適化を図る技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7266975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら特許文献1に記載のモデル予測制御は、各セット内の所定の操作変数の変化に対する、特定の制御変数の経験的な応答関係を利用した応答モデルを作成し、例えばLNGの生産量が最大となるように当該モデルを用いた制御を行う技術である。このため、操作変数と制御変数との応答関係は、NG液化装置のこれまでの運転にて得られたデータに制約されてしまう。
【0008】
通常、NG液化装置の操作変数の操作範囲や制御変数の許容変動範囲は、既述のように所定の前提条件の下、NG液化装置が効率的なLNG生産を実行できる範囲に限定されている。従って、前提条件となるNGの供給組成や供給圧力が変化してしまった場合には、現在、許容されている変動範囲自体が、NG液化装置を構成する各機器にて実現可能な最適状態からずれてしまっている可能性がある。このため、NGの供給組成や供給圧力の変化後においては、モデル予測制御の結果よりも効率的な運転状態が存在している可能性がある。
【0009】
本発明は、このような背景の下になされたものであり、その目的は、天然ガスの供給条件の少なくとも一つが変化した後であっても、変化後の新たな供給条件に適した混合冷媒組成を決定することが可能な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の天然ガス液化装置の混合冷媒組成の決定方法は、予冷用冷媒により天然ガスを予冷する予冷熱交換器と、窒素及び炭素数が1から3までの炭化水素からなる冷媒原料群から選択される複数の冷媒原料を含む混合冷媒により、前記予冷された天然ガスを液化する極低温熱交換器と、前記予冷用冷媒及び混合冷媒のガスの圧縮を行う複数の圧縮機とを備えた天然ガス液化装置の混合冷媒組成の決定方法であって、
天然ガスの供給組成及び供給圧力と、前記混合冷媒の組成とを決定し、予め設定した温度まで冷却された液化天然ガスを得る際に、前記極低温熱交換器の総括伝熱係数に伝熱面積を乗じた値であるUA値と、前記複数の圧縮機の総消費動力との算出に必要な前記天然ガス液化装置の稼働情報を入力可能なシミュレーションモデルを、当該天然ガス液化装置から取得した稼働データに基づいて作成するモデル作成工程と、
前記稼働データ取得時の混合冷媒組成と天然ガスの供給組成及び供給圧力とを用いて前記モデル作成の結果得られたシミュレーションモデルを実行し、前記UA値を算出するUA値算出工程と、
前記供給組成及び供給圧力の少なくとも一方を変化させた新たな供給条件下にて、前記稼働データ取得時の混合冷媒組成から、冷媒原料の組成を変化させた複数の混合冷媒ケースについて、前記極低温熱交換器のUA値が、UA値算出によって得られたUA値と揃うように調整した前記シミュレーションモデルを実行し、前記総消費動力を算出する試算工程と、
前記試算工程にて求めた各混合冷媒ケースについてのシミュレーションモデルの実行結果のうち、液化天然ガスの単位流出量あたりの総消費動力が最も小さくなる混合冷媒ケースの混合冷媒組成を、前記新たな供給条件下での混合冷媒組成とする組成決定工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
前記天然ガス液化装置の混合冷媒組成の決定方法は以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記混合冷媒は4つの冷媒原料を含み、
前記混合冷媒に含まれる蒸気圧が最大である第1の冷媒原料の含有量を変化させながら、前記極低温熱交換器のUA値が、UA値算出によって得られたUA値と揃うように調整した前記シミュレーションモデルを実行して、前記極低温熱交換器の塔頂部における液化天然ガスの温度と、当該塔頂部の液化天然ガスの冷却を行う混合冷媒の温度との温度差が、前記予め設定した温度まで冷却された液化天然ガスを得るために必要な最高温度差以下となる第1の冷媒原料の暫定含有量を求める第1の暫定含有量決定工程と、
前記混合冷媒に含まれる蒸気圧が最小である第2の冷媒原料の含有量を変化させながら、前記UA値算出によって得られたUA値が調整されたシミュレーションモデルを実行して、前記極低温熱交換器の塔底部における天然ガスの温度と、当該塔底部の天然ガスの冷却を行う混合冷媒の温度との温度差が、前記予め設定した温度まで冷却された液化天然ガスを得るために必要な最高温度差以下となる第2の冷媒原料の暫定含有量を求める第2の暫定含有量決定工程と、を含み、
前記試算工程における複数の混合冷媒ケースは、前記第1、第2の暫定含有量決定工程にて求めた暫定含有量の第1、第2の冷媒原料を含むこと。
(b)前記試算工程における複数の混合冷媒ケースは、前記第1、第2の冷媒原料の含有量が各々の暫定含有量における混合冷媒中の含有割合の±0.5パーセントポイントの範囲に設定され、且つ、これら第1、第2の冷媒原料以外の残る2つの冷媒原料の含有量を変化させたものであること。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、実際の稼働データに基づいて作成した天然ガス液化装置のシミュレーションモデルを利用して、極低温熱交換器の総括伝熱係数に伝熱面積を乗じたUA値を算出し、極低温熱交換器のUA値が算出されたUA値と揃うようにシミュレーションモデルを調節しながら、天然ガスの供給組成及び供給圧力の少なくとも一方を変化させた新たな供給条件下でシミュレーションモデルを実行する。そして、稼働データ取得時の混合冷媒組成から、冷媒原料の組成を変化させた複数の混合冷媒ケースについてシミュレーションモデルを実行した結果に基づいて、液化天然ガスの単位流出量あたりの総消費動力が最も小さくなる混合冷媒ケースの混合冷媒組成を、新たな供給条件下での混合冷媒組成とするので、より消費動力の少ない混合冷媒組成を選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】NG液化装置の構成例を示す説明図である。
図2】前記NG液化装置におけるNG及び冷媒に対する冷却曲線を示す説明図である。
図3】前記NG液化装置にて、NGの液化に用いられるMRの組成を決定する手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
初めに、本発明の実施の形態に係るMR組成の決定方法が適用されるNG液化装置の一例について図1を参照しながら説明する。
図1に示すように、本例のNG液化装置は、予冷用冷媒によってNGを予冷する予冷熱交換器101〜104と、NGから重質分を分離するスクラブカラム2と、予冷されたNGを液化する極低温熱交換器(MCHE:Main Cryogenic Heat Exchanger)3と、熱交換後の予冷用冷媒やMRの気体を圧縮する圧縮機41、42、51と、を備える。
【0015】
井戸元から供給されたNGは、不図示の前処理部にて、NG中に含まれる水銀や酸性ガス、水分を除去する前処理が行われた後、予冷熱交換器101〜104に供給される。本例のNG液化装置においては、プロパンを主成分とする予冷用冷媒(以下「C3冷媒」とも記す)を用い、前処理後、例えば40〜50℃で供給されたNGが、直列に接続された例えば4段の予冷熱交換器101〜104によって−30℃付近まで冷却される。
【0016】
各予冷熱交換器101〜104にC3冷媒を供給するラインの上流側には、各々不図示の膨張弁が設けられ、この膨張弁にて断熱膨張させ、温度を低下させたC3冷媒が、各予冷熱交換器101〜104へと供給される。この結果予冷熱交換器101〜104においては、NGの流れ方向の上流側(予冷熱交換器101)から下流側(予冷熱交換器104)へ向けて、順次、圧力レベルが低くなるように調整されたC3冷媒(図1中に「HPC3、MPC3、LPC3、LLPC3」と記載してある)を用いてNGの冷却が行われる。
【0017】
スクラブカラム2は、予冷熱交換器101〜104にて予冷されたNGを、メタンを多く含む塔頂側の気体と、メタンより重質の炭化水素成分を多く含む塔底側の液体とに分留する。本例のスクラブカラム2には、スクラブカラム2の下段位置から抜き出した液体を加熱し、加熱後の気体及び液体をスクラブカラム2に戻すリボイラー201が設けられている。
【0018】
スクラブカラム2の塔頂側から流出した気体は、MCHE3における後述のボトムバンドルのNG用のチューブ内を流れ、MCHE3の塔底部近傍の比較的温度が高いMRによって冷却されてその一部が液化する。しかる後、ボトムバンドルのチューブから抜き出されたNGの気液混合流体は、リフラックスドラム202へ供給されて気液分離される。気液分離後の液体はリフラックスポンプ203によりスクラブカラム2へと還流される一方、気体は、MCHE3のミドルバンドルのNG用のチューブへと導入される。
【0019】
また、スクラブカラム2の塔底側から流出した液体は、不図示の精留塔を備える精留部21にて、常温で液体のコンデンセートと、コンデンセートより軽質の気体とに分離される。コンデンセートと分離された気体はMCHE3へ供給される。
【0020】
ここで本例のMCHE3は、塔頂部側から塔底部側へ向けてMRが流下するシェル内に、NG用及びMR用の多数本のチューブを前記MRの流れ方向に沿って配設した構造となっている。NGやMRは、各チューブ内をシェルの塔底部側から塔頂部側へ向けて、シェル内のMRの流れと反対方向に流れる。
【0021】
また、上述のNG用、MR用の多数本のチューブは束ねられてチューブバンドルを構成している。チューブバンドルは、シェルの塔頂部側の領域に配置されたトップバンドルと、トップバンドルの下方側から、シェルの塔底部に至る領域に配置されたミドルバンドル及びボトムバンドルとの3つの領域に分けることができる。以下、トップバンドル/ミドルバンドル/ボトムバンドルの3領域に分けられたMCHE3を3バンドル型のMCHE3という。
NG用のチューブの一部は、一部のNG(既述のスクラブカラム2の塔頂側から流出したNG)がボトムバンドルを流れた後、MCHE3から抜き出されるように配置される。またMR用のチューブの一部は、一部のMR(後述のMRセパレーター31にて気液分離された気体MR)がミドルバンドル、ボトムバンドルを流れた後、MCHE3から抜き出されるように配置されている。また、残るNG用、MR用のチューブは、NGやMRがボトムバンドル、ミドルバンドル及びトップバンドルを流れた後、MCHE3の塔頂部から抜き出されるように配置されている。
【0022】
MCHE3においては、既述の精留部21から供給されたコンデンセートとの分離後の気体は、ボトムバンドルのNG用のチューブに導入され、シェル側を流れるMRにより次第に冷却される。当該流体には、さらに既述のリフラックスドラム202から抜き出された気体が合流する。そして、これらの気体(NG)の流れは、ミドルバンドルとトップバンドルに流れ込んで冷却されながら液化され、さらに過冷却されて、およそ−150〜−155℃に冷却されたLNGとしてMCHE3の塔頂部から抜き出される。
【0023】
MCHE3から流出したLNGは、エキスパンダータービン33で動力回収を行った後、膨張弁V5にて膨張させ、エンドフラッシュ容器61にて窒素や一部の軽質末端成分をフラッシュさせて、LNGの沸点をおよそ−161℃に調節した後、不図示のLNGタンクへランダウンされる。なお、エンドフラッシュ容器61にてLNGからフラッシュさせた軽質末端成分は、例えばNG液化装置が設置された工場内で燃料ガスとして利用される。
【0024】
次いで、MCHE3にてNGの液化、過冷却を行うMRの流れ(MRサイクル)について説明する。NGの冷却に利用されたMRは、MCHE3のシェルの底部から低圧MR(およそ温度−40℃、圧力3.5bara)として気体の状態で抜き出される。低圧MRは、サクションドラム413にて液滴が分離された後、低圧MR圧縮機41にて低圧から中圧に昇圧され、さらにアフタークーラー411にて冷却される。アフタークーラー411にて冷却された中圧MRは、サクションドラム423にて液滴が分離された後、高圧MR圧縮機42にて中圧から高圧(圧力50〜55bara)に昇圧され、さらにアフタークーラー421により冷却される(およそ温度+30℃)。
【0025】
各MR圧縮機41、42は、NGを燃料としたガスタービンや燃料ガスを燃焼させて得られた蒸気により駆動するスチームタービン、或いは電気モーターなどの駆動部412、422によって駆動される。また、例えばアフタークーラー411、421は、各MR圧縮機41、42のうちの対応する一つから吐出されたMRが流れる多数のチューブを束ねたチューブバンドルと、このチューブバンドルに空気を供給するためのファンとを備えた空冷式熱交換器、或いは水冷式熱交換器より構成される。
【0026】
高圧MRは、さらにチラー431〜434にて、C3冷媒により冷却され、気液混合流体としてMRセパレーター31へ供給されて気液分離が行われる。予冷熱交換器101〜104と同様に、これらのチラー431〜434においても、高圧MRの流れ方向の上流側(チラー431)から下流側(チラー434)へ向けて、順次、圧力レベルが低くなるように、膨張弁を用いて膨張、温度低下させたC3冷媒を用いて高圧MRの冷却が行われる(図示の便宜上、チラー431〜434側においては、「HPC3、MPC3、LPC3、LLPC3」とのC3冷媒側の圧力レベルの記載は省略してある)。
【0027】
MRセパレーター31にて気液分離された気体MR(およそ温度−30〜−40℃)は、MCHE3の塔底側からMR用のチューブへ導入された後、ボトムバンドル、ミドルバンドル及びトップバンドルを流れて冷却され、MCHE3の塔頂部から抜き出される(およそ−150〜−155℃)。MCHE3から抜き出されたMRは、膨張弁V1にて膨張させた後、MCHE3の塔頂部側に設けられたノズル302を介してMCHE3のシェル側に供給される。
【0028】
一方で、MRセパレーター31にて気液分離された液体MR(およそ温度−30〜−40℃)は、MCHE3の塔底部側からMR用のチューブ側へ導入された後、ボトムバンドルとミドルバンドルを流れて冷却され、MCHE3から抜き出される(およそ−120〜−125℃)。当該ミドルバンドルから抜き出された液体MRは、エキスパンダータービン32を介して動力回収を行いながら、膨張弁V2にて膨張させた後、既述の気体MR側のノズル302の下方側(トップバンドルの下方側)に配置されたノズル301より、MCHE3のシェル側に導入される。
【0029】
上下2段に配置されたノズル302、301を介してMCHE3のシェル側に導入されたMRは、NG用のチューブを流れるNGの液化、過冷却及びMR用のチューブを流れる気体MR、液体MRの冷却に利用された後、低圧MRとしてMCHE3の塔底部から抜き出され、再び低圧MR圧縮機41に供給される。
【0030】
上述のMRサイクルにおいて、MRセパレーター31から気体MRを抜き出してMCHE3へ供給するライン及び同じくMRセパレーター31から液体MRを抜き出してMCHE3へ供給するラインからは、各々、NG液化装置の外部へ気体MRや液体MRを抜き出すための抜き出しラインが分岐している。MCHE3へのMRの供給量は、弁V1、V2の開度を変化させることにより調節することができる。MRの成分の調節は、抜き出し弁V3、V4の開度を変化させることにより調節することができる。
【0031】
また、例えば低圧MR圧縮機41に併設されたサクションドラム413の上流側の位置には、MRの冷媒原料である窒素(N)、メタン(C1)、エタン(C2)、プロパン(C3)を個別に補充することが可能なMR原料補充ラインが設けられている。これらのMR原料補充ラインからの各冷媒原料の補充は、補充量調節弁V51〜V54の開度を変化させることによって調節することができる。
【0032】
続いて、NGの予冷及び高圧MRの冷却に用いられるC3冷媒の流れ(C3サイクル)について説明する。予冷熱交換器101〜104におけるNGとの熱交換、チラー431〜434における高圧MRとの熱交換を行った後のC3冷媒の気体は、サクションドラム512〜515にて液滴が分離され、各C3冷媒の圧力レベルに応じて、例えば4段圧縮を行うC3圧縮機51の各段の吸込側へ供給される。
【0033】
なお、図示の便宜上、C3サイクルにおいては、予冷熱交換器101〜104、チラー431〜434や、これらの熱交換器101〜104、431〜434の上流側に各々設けられた膨張弁の個別の記載を省略し、総括的に「C3冷媒熱交換部50」と表示してある。
またMR圧縮機41、42と同様に、C3圧縮機51は、NGを燃料としたガスタービンや燃料ガスを燃焼させて得られた蒸気により駆動するスチームタービン、或いは電気モーターなどの駆動部511によって駆動される。
【0034】
C3圧縮機51にて所定の圧力まで圧縮されたC3冷媒は、デスーパーヒーター521及びコンデンサー522にて減温され、凝縮したC3冷媒は、セパレーター53に集められた後、C3冷媒熱交換部50内の予冷熱交換器101、チラー431の上流側に配置された膨張弁へ、再び供給される。MR圧縮機41、42側のアフタークーラー411、421と同様に、デスーパーヒーター521やコンデンサー522についても例えば空冷式熱交換器、或いは水冷式熱交換器により構成される。
【0035】
以上、図1を用いてNG液化装置の構成例を示したが、実施の形態に係るMR組成の決定方法を適用可能なNG液化装置の構成は、当該例に限定されるものではない。実際のNG液化装置にて採用可能な種々の変形例に適用することができる。
【0036】
例えば、C3圧縮機51の圧縮段数は3段であってもよいし、5段であってもよい。この場合には、予冷熱交換器101〜104、チラー431〜434の設置段数もC3圧縮機51の圧縮段数に応じて増減される。また、セパレーター53とC3冷媒熱交換部50との間に、C3冷媒の過冷却を行うサブクーラーを設けてもよい。
また、MCHE3の構成は、既述の3バンドル型に限定されるものではなく、トップバンドルとボトムバンドルで構成される2バンドル型であってもよい。
【0037】
以下の説明においては、NG液化装置の各種変形例を代表する一例として、図1に示すNG液化装置に、実施の形態に係るMR組成の決定方法を適用する場合を説明する。
予冷用冷媒によるNGの予冷及びMRによるNGの液化が行われるNG液化装置は、図2に示される冷却曲線に沿ってNGの冷却が行われるように設計される。図2の横軸は、NGやC3冷媒、MRのエンタルピー変化を示し、縦軸はこれらの流体の温度を示している。同図中、実線または一点鎖線がNGの冷却曲線を示している。また、長い破線がC3冷媒の冷却曲線(「予冷サイクル」と記してある)を示し、短い破線がMRの冷却曲線(「液化サイクル」と記してある)を示している。
【0038】
例えば温度40℃で予冷熱交換器101の入口側に供給されたNGはC3冷媒を用いた多段の予冷サイクル(図示の便宜上、図2には、3段の予冷サイクルを示してある)にて予冷された後、さらにMCHE3におけるMRを用いた液化サイクルにてNGが液化、過冷却される。
この液化サイクルにおいて、MRにおけるN、C1、C2、C3の組成(MR中の各冷媒原料の含有割合)は、井戸元から供給されるNGの供給組成や供給圧力の設計値に基づいて決定されている。
【0039】
しかしながら、NG液化装置に供給されるNGは、井戸元からの産出状態の変化や、NGを産出する井戸の切り替えなどによって供給組成や供給圧力が変化する場合がある。
例えば図2に示す一点鎖線は、実線で示す冷却曲線のNGよりも重質のNGの冷却曲線の例を示している。この場合には、MCHE3におけるNG側とMR側の温度差が大きくなりNGの液化効率が低下してしまう。一方で、NGが軽質化してMCHE3内におけるMRとNGとの温度差が過小になると、MCHE3の処理能力に制約が生じる可能性もある。
【0040】
上述の課題を解決するため、本実施の形態においては、通常は固定された状態で用いられているMR組成について、NGの供給組成や供給圧力の変化に対応して効率的な処理を行うことが可能な新たなMR組成を決定する。
以下、図3を参照しながら実施の形態に係るMR組成の決定法の一例について説明する。
【0041】
はじめに、NG液化装置のシミュレーションモデルを作成する(モデル作成工程:P1)。シミュレーションモデルは、予冷熱交換器101〜104やMCHE3における熱交換、スクラブカラム2におけるNGの分留、圧縮機41、42、51における各冷媒ガスの圧縮など、機器毎にNG液化装置内で実行される単位操作を表現することが可能な公知のプロセスシミュレータを用いて作成することができる。
【0042】
シミュレーションモデルにおいては、NGの供給組成、供給圧力、供給温度、MCHE3内における各流体の圧力、温度、C3及びMRの各冷媒の流量、圧力、温度などの稼働条件が設定される。これらの稼働条件は、新たなMR組成の決定を行うNG液化装置の実際の稼働データに基づいて設定される。例えば図1には、稼働データの取得が行われる圧力計(PI)、温度計(TI)、流量計(FI)、組成分析計(AI)及び圧縮機動力計測器(SC)を破線で囲んで示してある。例えば稼働データは、所定の期間中にこれらの計測機器などで取得された計測値の平均値を採用することができる。
【0043】
作成したNG液化装置のシミュレーションモデルからは、MCHE3の総括伝熱係数に伝熱面積を乗じた値であるUA値と、各圧縮機41、42、51にて消費される動力とを算出することができる。
UA値は、MCHE3内にてNGからMRへの単位時間当たりの伝熱量をq、MCHE3におけるNGの温度とMRの温度との対数平均温度差をLMTDとしたとき、UA値=q/LMTDの関係より算出することができる。伝熱量qや温度差LMTDは、シミュレーションモデルを実行した結果より得られる。
【0044】
また、MRや予冷用冷媒の流量、温度、入口側、出口側の圧力から各圧縮機41、42、51にて実行される仕事が計算され、各圧縮機41、42、51の効率(投入した動力に対する仕事の比)から、消費動力を求めることができる。そして、全ての圧縮機41、42、51の消費動力の合計値が総消費動力となる。
【0045】
シミュレーションモデルを作成したら、前記稼働データ取得時のMR組成と、NGの供給組成及び供給圧力とを用いて前記シミュレーションモデルを実行する。この結果、計算値が稼働データとよく一致しておれば、検討対象のNG液化装置を適切に表現したシミュレーションモデルと評価することができる。
【0046】
そして、シミュレーションモデルを実行した結果に基づき、UA値を算出する(UA値算出工程:P2)。既述のように、シミュレーションモデルは稼働データ取得時のNG液化装置の状態を適切に表現しているので、このシミュレーションモデルを実行した結果から算出したUA値についても、稼働データ取得時におけるMCHE3の冷却能力を適切に表した指標であると言える。
【0047】
しかる後、シミュレーションモデル作成時に設定された供給条件から、供給組成、供給圧力の少なくとも一方を変化させた新たなNGの供給条件下で、MCHE3のUA値が算出されたUA値に揃うようにシミュレーションモデルを調整しながら、MR組成を変化させる。なお、「MCHE3のUA値を算出されたUA値に揃える」とは、これらのUA値が厳密に揃っている場合に限定されない。シミュレーションモデルに要求される精度などに応じて例えば±1~2%程度の範囲内でずれがあってもよい。
【0048】
既述のようにUA値は、MCHE3内おける単位時間当たりの伝熱量と、NGとMRの温度差との比で表されるので、UA値の調整に当たっては、これらの値に影響するパラメータを調整する。パラメータの例としては、LNGのランダウン量、膨張弁V1、V2の開度などを例示することができる。また、必要に応じて気体MR、液体MRの抜き出し用の抜き出し弁V3、V4の開度を調節してもよいし、MR成分の補充ラインにある補充量調節弁V51、52、53、54の開度を調節してもよい。
【0049】
またここで、新たなMR組成においても図2中に実線で示した冷却曲線と同様の効率的な冷却が可能なように、蒸気圧最大の冷媒原料(本例ではN)の暫定含有量(PAH:Preliminary Amount of the Highest vapor pressure refrigerant component)及び蒸気圧最小の冷媒原料(本例ではC3)の暫定含有量(PAL:Preliminary Amount of the Lowest vapor pressure refrigerant component)を求める(第1、第2の暫定含有量決定工程:P3)。
【0050】
PAHについて、新たなNG組成及び供給圧力下で、MCHE3のUA値が算出されたUA値に揃うように調整を行いつつ、MR中のNの含有量を調整しながらシミュレーションモデルを実行する。そして、MCHE3の塔頂部におけるNGの温度と、当該塔頂部のMRの温度との温度差が、予め設定した温度(本例では−150〜−155℃の範囲の所定の温度)まで冷却されたLNGを得るために必要な最高温度差以下となるときのNの流量をPAHとする(第1の暫定含有量決定工程)。このとき、N以外の冷媒原料の含有量は、後段の第2の暫定含有量決定工程、及び試算工程で決定するので、ここでは仮の値(例えば現状のC1、C2、C3の含有量)を設定しておく。
【0051】
次いで、新たなNG組成及び供給圧力下で、PALはMCHE3のUA値が算出されたUA値に揃うように調整を行いつつ、MR中のC3の含有量を調整しながらシミュレーションモデルを実行する。そして、MCHE3の塔底部におけるNGの温度と、当該塔底のNGの冷却を行うMRの温度との温度差が、前記予め設定した温度まで冷却されたLNGを得るために必要な最高温度差以下となるときのC3の流量をPALとする(第2の暫定含有量決定工程)。このとき、C3以外の冷媒原料の含有量は、Nについては既述の第1の暫定含有量決定工程にて決定し、残る2つ(C1、C2)については後段の試算工程で決定するので、ここでは仮の値(例えば現状のC1、C2、C3の含有量)を設定しておく。
【0052】
そして、新たなNG組成、供給圧力下、且つ、PAH、PALの制約の範囲内で、残る冷媒原料(C1、C2)の含有量を変化させた複数のMRケースについて、MCHE3のUA値が算出されたUA値に揃うように調整されたシミュレーションモデルを実行する。このとき、MR中のN、C3の含有量は、各々PAH、PALと厳密に一致している場合に限られない。例えば、PAH、PALにおける各冷媒原料の含有割合の0.5パーセントポイントの範囲(PAHにおけるMR中のNの含有割合が10パーセントであれば、9.5〜10.5パーセントの範囲)で変化させてもよい。
そして、シミュレーションモデルを実行した複数のMRケースについて圧縮機41、42、51の総消費動力を求める(試算工程:P4)。
【0053】
さらに、前記複数のMRケースについて総消費動力を求めた結果から、当該総消費動力をNG液化装置からのLNGの流出量のシミュレーション値で除した値であるPSP(Plant Specific Power、LNGの単位流出量当たりの総消費動力)を算出する。当該PSPの値が最小となったMRケースにおけるMRの組成を、新たなNG組成、供給圧力に適したMRの組成とする(組成決定工程:P5)。
新たな供給条件に適したMR組成が決定されたら、補充量調節弁V51〜V54の開度を調整することにより、実際のNG液化装置内を循環するMR組成を徐々に組成決定工程にて決定された値に近づける調整を行う。
【0054】
本実施の形態に係るNG液化装置のMR組成の決定方法によれば以下の効果がある。実際の稼働データに基づいて作成したNG液化装置のシミュレーションモデルを利用して、MCHE3の総括伝熱係数に伝熱面積を乗じたUA値を算出し、稼働データ取得時のUA値と揃うようにシミュレーションモデルを調節しながら、NGの供給組成及び供給圧力の少なくとも一方を変化させた新たな供給条件下でシミュレーションモデルを実行する。そして、稼働データ取得時のMR組成から、冷媒原料の組成を変化させた複数のMRケースについてシミュレーションモデルを実行した結果に基づいて、LNGの単位流出量あたりの総消費動力が最も小さくなるMRケースのMR組成を、新たな供給条件下でのMR組成とするので、より消費動力の少ないMR組成を選択することができる。
【0055】
ここでNGの新たな条件下におけるMR組成の決定にあたって、PAHやPALを求めてから、MR中のNやC3の含有量をこれらPAHやPALに揃えた条件下で、残る冷媒原料(C1、C2)の含有量を変化させる手法を採用することは必須ではない。
現状のMR組成を含む複数のMRケースについてシミュレーションモデルを実行してPSPを算出し、PSPが最も小さくなるMRケースが、現状のMR組成以外のMRケースであれば、NG液化装置の稼働効率を改善できる。
【0056】
またMRは、N、C1、C2、C3からなる冷媒原料群に含まれる冷媒原料の全てを含んでいる必要はない。これらの冷媒原料群から選択した複数の冷媒原料を含んでいれば、複数のMRケースについてのシミュレーションモデルを実行した結果に基づいて、PSPが最も小さくなるMRケースを決定することができる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明の実施の形態に基づき、NGの供給条件の少なくとも一つが変化したときにMR組成を変化させることによるPSPへの影響について説明する。
本例では、図1に示したNG液化装置に対して所定の圧力で供給されるNGの平均分子量が、17.15から18.29に増加(重質化)した場合について、MR組成の変更によるPSPへの影響をシミュレーションモデルにより確認した。MRは、冷媒原料としてN、C1、C2及びC3を含むものを用い、後記の各表中では各冷媒原料の含有割合に替えて、総括的な指標として平均分子量を表示してある。シミュレーションモデルの作成に用いたプロセスシミュレータはハネウエル社のUNISIM(登録商標)である。
【0058】
(参照例)
表1の参照例1〜5は、NG液化装置の現状の稼働データを用いてシミュレーションモデルを作成し、NGの平均分子量を増加(重質化)させる前の平均分子量が17.15のNGについて、MRの平均分子量を次第に増加(重質化)させた各MRケースについて当該シミュレーションモデルを実行して得られたPSPを示している。
表1に示した結果によれば、平均分子量が25.73のMRケースである参照例3においてPSP比が最小となることが確認できる。参照例3のMRケースにおいて、各冷媒原料の含有割合は、Nが13モル%、C1が40モル%、C2が36モル%、C3が11モル%である。
【表1】
【0059】
(実施例)
平均分子量が25.87、各冷媒原料の含有割合が、Nは13モル%、C1は39モル%、C2は37モル%、C3は11モル%であるMRケースについて、NGの平均分子量を18.29まで重質化させた新たな供給条件下でシミュレーションモデルを実行してPSP、総消費動力、LNG流出量を算出した。シミュレーションモデルを実行する際には、MCHE3のUA値が参照例1〜5におけるUA値と揃うように調整した。
(比較例)
参照例3に相当するMRケースにて、NGの平均分子量を18.29まで重質化させた新たな供給条件下でシミュレーションモデルを実行し、実施例と同様の手法でPSP、総消費動力、LNG流出量を算出した。
実施例、比較例の結果を表2に示す。また、参照例3についての同様のデータを表2に併記した。
【表2】
【0060】
表2に示した結果によれば、NGが重質化する前においてPSPが最小であった参照例3に対応するMRケースを採用した比較例の方がPSPは大きかった。これに対して、MRを重質化(参照例5のMRケースに対応する)させた実施例の方がLNGの流出量が増加し、その結果としてPSPが小さくなった。
上述の結果によれば、NGの供給条件の少なくとも一つが変化するとき、稼働データを用いて作成したシミュレーションモデルを用い、複数のMRケース(実施例、比較例の各MRケース)についてUA値を揃えながらシミュレーションモデルを実行してPSPを算出、比較することにより、新たな供給条件に適したMRを決定できることが確かめられた。
【符号の説明】
【0061】
101〜104
予冷熱交換器
3 MCHE
41 低圧MR圧縮機
42 中圧MR圧縮機
412、422
駆動部
431〜434
チラー
50 C3冷媒熱交換部
51 C3圧縮機
511 駆動部

図1
図2
図3