特許第6286834号(P6286834)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6286834耐熱性樹脂組成物および耐熱性樹脂膜の製造方法
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  • 特許6286834-耐熱性樹脂組成物および耐熱性樹脂膜の製造方法 図000023
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286834
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】耐熱性樹脂組成物および耐熱性樹脂膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20180226BHJP
   C08L 79/04 20060101ALI20180226BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20180226BHJP
   C08K 5/101 20060101ALI20180226BHJP
   C08K 5/1535 20060101ALI20180226BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20180226BHJP
   G03F 7/037 20060101ALI20180226BHJP
   G03F 7/023 20060101ALN20180226BHJP
   G03F 7/038 20060101ALN20180226BHJP
【FI】
   C08L79/08 A
   C08L79/08 Z
   C08L79/04 B
   C08K5/06
   C08K5/101
   C08K5/1535
   G03F7/004 501
   G03F7/037 501
   !G03F7/023
   !G03F7/038 601
【請求項の数】5
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2013-32840(P2013-32840)
(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公開番号】特開2014-162818(P2014-162818A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】有本 真治
(72)【発明者】
【氏名】赤松 孝義
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/133826(WO,A1)
【文献】 特開2005−187596(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/079637(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/107406(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/030744(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 79/08
C08K 5/06
C08K 5/101
C08K 5/1535
C08L 79/04
G03F 7/004
G03F 7/037
G03F 7/023
G03F 7/038
C09D 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット塗布法で樹脂膜を形成する際に用いられる耐熱性樹脂組成物であって、少なくとも(a)ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体およびこれらから選ばれる2種以上の共重合体から選択される少なくとも1種以上、(b)大気圧下における沸点が100℃以上150℃未満の有機溶媒、および(c)大気圧下における沸点が150℃以上の有機溶媒を含有し、(c)成分が(c−1)大気圧下における沸点が150℃以上190℃未満の有機溶媒および(c−2)大気圧下における沸点が190℃以上の有機溶媒を含有し、かつ(b)成分の含有量が有機溶媒全量に対して5重量%以上40重量%以下であって、(c−2)成分の含有量が有機溶媒全量に対して10重量%以上であり、前記(b)成分がプロピレングリコールモノメチルエーテルおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートから選ばれ、前記(c−1)成分がジエチレングリコールエチルメチルエーテル、乳酸エチルおよびジエチレングリコールジエチルエーテルから選ばれ、前記(c−2)成分がγ-ブチロラクトンであって、該耐熱性樹脂組成物の25℃における粘度が5mPa・s以上であることを特徴とする耐熱性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(b)成分の含有量が有機溶媒全量に対して10重量%以上25重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の耐熱性樹脂組成物。
【請求項3】
25℃における粘度が5mPa・s以上50mPa・s以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐熱性樹脂組成物。
【請求項4】
(1)請求項1〜3のいずれかに記載の耐熱性樹脂組成物を、インクジェットノズルを用いて基板に塗布し、塗布膜を形成する工程および(2)塗布膜を減圧乾燥する工程を含む耐熱性樹脂膜の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の製造方法により膜厚5μm以上の耐熱性樹脂膜を得る耐熱性樹脂膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性樹脂組成物および耐熱性樹脂膜の製造方法に関する。さらに詳しくは、半導体素子の表面保護膜や層間絶縁膜、有機エレクトロルミネッセンス(Electroluminescence:以下ELと記す)素子の絶縁膜、有機EL素子を用いた表示装置の駆動用薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下TFTと記す)基板の平坦化膜、回路基板の配線保護絶縁膜、固体撮像素子のオンチップマイクロレンズや各種ディスプレイ・固体撮像素子用平坦化膜などの用途に適した耐熱性樹脂組成物および耐熱性樹脂膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドやポリベンゾオキサゾールからなる樹脂膜は、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜、平坦化膜や、有機EL素子の絶縁膜やTFT基板の平坦化膜などに広く使用されている。
【0003】
一般的な半導体素子の製造基板に使われるシリコンウエハにポリイミドやポリベンゾオキサゾールを塗布する方法として、スピン塗布法が広く使われている。しかしながら、スピン塗布法は塗布液の利用効率が低く、環境への負荷が大きいことが指摘されている。
【0004】
必要な部分のみに膜を形成する方法としては、印刷法がある。このような絶縁材料の塗布方法にはスクリーン印刷法が一般的に用いられてきた。この方法では必要部にのみ膜を形成できるが、無機物や有機物の微粒子を加えて溶液にチクソトロピー性を出す必要があるため、これらの微粒子が、絶縁不良の原因になるなどの課題があった。(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
これに対して、インクジェット塗布法で耐熱性樹脂組成物を塗布する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この方法によると、ポリイミド膜をインクジェット塗布法で形成しているが、膜厚の大きい樹脂膜(膜厚5μm以上)を形成する場合、インクジェットノズルから吐出された塗布膜は多量の溶媒を含んでいるため、加熱乾燥する際に樹脂膜中に泡が生じ欠陥不良になる課題があった。そのため、多量の溶媒を含んでいる塗布膜の乾燥方法として、プリベークの前に常温にて減圧乾燥し、予め溶剤を蒸発させる方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、前記のインクジェット塗布法用に用いられる耐熱性樹脂組成物を減圧乾燥すると、耐熱性樹脂組成物中に含まれる有機溶媒の揮発性が低く、減圧乾燥時間が長くなる課題があった。さらに、減圧乾燥時に樹脂膜の表面のみが乾燥し膜あれが生じる課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−113338号公報
【特許文献2】特開2010−159402号公報
【特許文献3】特開2001−269607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ポリイミド、ポリベンゾオキサゾールまたはそれらの前駆体を含有する耐熱性樹脂組成物をインクジェット塗布法により泡や膜荒れなどの欠陥が無い厚膜(膜厚5μm以上)に形成でき、かつ、短時間で減圧乾燥することが望まれている。そこで本発明は、特定の特性を有する有機溶媒の組み合わせにより、インクジェット塗布法により泡や膜荒れなどの欠陥が無い厚膜(膜厚5μm以上)を形成でき、かつ、短時間で減圧乾燥することができる耐熱性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、インクジェット塗布法で樹脂膜を形成する際に用いられる耐熱性樹脂組成物であって、少なくとも(a)ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体およびこれらから選ばれる2種以上の共重合体から選択される少なくとも1種以上、(b)大気圧下における沸点が100℃以上150℃未満の有機溶媒、および(c)大気圧下における沸点が150℃以上の有機溶媒を含有し、(c)成分が(c−1)大気圧下における沸点が150℃以上190℃未満の有機溶媒および(c−2)大気圧下における沸点が190℃以上の有機溶媒を含有し、かつ(b)成分の含有量が有機溶媒全量に対して5重量%以上40重量%以下であって、(c−2)成分の含有量が有機溶媒全量に対して10重量%以上であり、前記(b)成分がプロピレングリコールモノメチルエーテルおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートから選ばれ、前記(c−1)成分がジエチレングリコールエチルメチルエーテル、乳酸エチルおよびジエチレングリコールジエチルエーテルから選ばれ、前記(c−2)成分がγ-ブチロラクトンであって、該耐熱性樹脂組成物の25℃における粘度が5mPa・s以上であることを特徴とする耐熱性樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インクジェット塗布法により泡や膜荒れなどの欠陥が無い厚膜(膜厚5μm以上)に形成でき、かつ、短時間で減圧乾燥することができる耐熱性樹脂組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施例で用いたインクジェット塗布装置の概略図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の耐熱性樹脂組成物は、インクジェット塗布法で樹脂膜を形成する際に用いられる耐熱性樹脂組成物であって、少なくとも(a)ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体およびこれらから選ばれる2種以上の共重合体から選択される少なくとも1種以上、(b)大気圧下における沸点が100℃以上150℃未満の有機溶媒、および(c)大気圧下における沸点が150℃以上の有機溶媒を含有し、かつ(b)成分の含有量が有機溶媒全量に対して5重量%以上40重量%以下であることを特徴とする耐熱性樹脂組成物である。以下に、各成分について説明する。
【0012】
本発明の耐熱性樹脂組成物は、(a)ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体およびこれらから選ばれる2種以上の共重合体から選択される少なくとも1種を含有する。これらを2種以上含有してもよいし、これらの2種以上の繰り返し単位を有する共重合体を含有してもよい。
【0013】
ポリイミドおよびポリベンゾオキサゾールは、主鎖構造内にイミド環またはオキサゾール環の環状構造を有する樹脂である。構造単位の繰り返し数は10〜100,000が好ましい。
【0014】
ポリイミドは、テトラカルボン酸や対応するテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドなどと、ジアミンや対応するジイソシアネート化合物、トリメチルシリル化ジアミンなどを反応させることにより得ることができ、テトラカルボン酸残基とジアミン残基を有する。例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させて得られるポリイミド前駆体の1つであるポリアミド酸を、加熱処理により脱水閉環することにより得ることができる。この加熱処理時には、m−キシレンなどの水と共沸する溶媒を加えることもできる。あるいは、カルボン酸無水物やジシクロヘキシルカルボジイミドなどの脱水縮合剤やトリエチルアミンなどの塩基などを閉環触媒として加えて、化学熱処理により脱水閉環することにより得ることもできる。または、弱酸性のカルボン酸化合物を加えて、100℃以下の低温で加熱処理により脱水閉環することにより得ることもできる。ポリイミド前駆体については後述する。
【0015】
ポリベンゾオキサゾールは、ビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸や対応するジカルボン酸クロリド、ジカルボン酸活性エステルなどを反応させて得ることができ、ジカルボン酸残基とビスアミノフェノール残基を有する。例えば、ビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸を反応させて得られるポリベンゾオキサゾール前駆体の1つであるポリヒドロキシアミドを、加熱処理により脱水閉環することにより得ることができる。あるいは、無水リン酸、塩基、カルボジイミド化合物などを加えて、化学処理により脱水閉環することにより得ることができる。ポリベンゾオキサゾール前駆体については後述する。
【0016】
本発明において、アルカリ水溶液に対する溶解性の観点から、ポリイミドは、テトラカルボン酸残基および/またはジアミン残基にOR、SO、CONR、COOR、SONRなどで示される酸性基または酸性基誘導体を有することが好ましく、水酸基を有することがより好ましい。ここで、RおよびRは水素原子または炭素数1〜20の1価の有機基を示す。なお、酸性基とはRおよびRが全て水素原子となる場合を示し、酸性基誘導体とはRまたはRに炭素数1〜20の1価の有機基が含まれる場合を示す。有機基としては、アルキル基、アルコキシル基、エステル基などが挙げられる。
【0017】
また、ポリベンゾオキサゾールは、ジカルボン酸残基および/またはビスアミノフェノール残基にOR、SO、CONR、COOR、SONRなどで示される酸性基または酸性基誘導体を有することが好ましく、水酸基を有することがより好ましい。ここで、RおよびRは水素原子または炭素数1〜20の1価の有機基を示す。なお、酸性基とはRおよびRが全て水素原子となる場合を示し、酸性基誘導体とはRまたはRに炭素数1〜20の1価の有機基が含まれる場合を示す。有機基としては、アルキル基、アルコキシル基、エステル基などが挙げられる。
【0018】
本発明において、ポリイミドのテトラカルボン酸残基およびポリベンゾオキサゾールのジカルボン酸残基(以下、これらをあわせて酸残基という)の好ましい構造として、下記に示す構造や、これらの構造における水素原子の一部を炭素数1〜20のアルキル基、フルオロアルキル基、アルコキシル基、エステル基、ニトロ基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子により1〜4個置換した構造などが挙げられる。
【0019】
【化1】
【0020】
【化2】
【0021】
ただし、Jは直接結合、−COO−、−CONH−、−CH−、−C−、−O−、−C−、−C−、−SO−、−S−、−Si(CH−、−O−Si(CH−O−、−C−、−C−O−C−、−C−C−C−または−C−C−C−のいずれかを示す。
【0022】
本発明において、ポリイミドのジアミン残基およびポリベンゾオキサゾールのビスアミノフェノール残基(以下、これらをあわせてジアミン残基という)の好ましい構造として、下記に示す構造や、これらの構造における水素原子の一部を炭素数1〜20のアルキル基、フルオロアルキル基、アルコキシル基、エステル基、ニトロ基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子により1〜4個置換した構造などが挙げられる。
【0023】
【化3】
【0024】
【化4】
【0025】
ただし、Jはそれぞれ直接結合、−COO−、−CONH−、−CH−、−C−、−O−、−C−、−C−、−SO−、−S−、−Si(CH−、−O−Si(CH−O−、−C−、−C−O−C−、−C−C−C−または−C−C−C−のいずれか示す。Rはそれぞれ水素原子または炭素数1〜20の1価の有機基を示す。
【0026】
本発明に用いられる(a)成分のうち、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体は、主鎖にアミド結合を有する樹脂であり、加熱処理や化学処理により脱水閉環し、前述のポリイミド、ポリベンゾオキサゾールとなる。構造単位の繰り返し数は10〜100,000が好ましい。ポリイミド前駆体としては、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、ポリアミド酸アミド、ポリイソイミドなどを挙げることができ、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステルが好ましい。ポリベンゾオキサゾール前駆体としては、ポリヒドロキシアミド、ポリアミノアミド、ポリアミド、ポリアミドイミドなどを挙げることができ、ポリヒドロキシアミドが好ましい。
【0027】
ポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体は、アルカリ水溶液に対する溶解性の観点から、酸残基またはジアミン残基にOR、SO、CONR、COOR、SONRなどで示される酸性基または酸性基誘導体を有することが好ましく、水酸基を有することがより好ましい。ここで、RおよびRは水素原子または炭素数1〜20の1価の有機基を示す。なお、酸性基とはRおよびRが全て水素原子となる場合を示し、酸性基誘導体とはRまたはRに炭素数1〜20の1価の有機基が含まれる場合を示す。有機基としては、アルキル基、アルコキシル基、エステル基などが挙げられる。
【0028】
ポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体の酸残基を構成する酸成分としては、ジカルボン酸の例としてテレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビフェニルジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、トリフェニルジカルボン酸など、トリカルボン酸の例としてトリメリット酸、トリメシン酸、ジフェニルエーテルトリカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸など、テトラカルボン酸の例として、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸などの芳香族テトラカルボン酸や、ブタンテトラカルボン酸、シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1.]ヘプタンテトラカルボン酸、ビシクロ[3.3.1.]テトラカルボン酸、ビシクロ[3.1.1.]ヘプト−2−エンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2.]オクタンテトラカルボン酸、アダマタンテトラカルボン酸などの脂肪族テトラカルボン酸などを挙げることができる。また、上に例示したジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸の水素原子の一部を、OR、SO、CONR、COOR、SONRなどで示される酸性基または酸性基誘導体、好ましくは水酸基やスルホン酸基、スルホン酸アミド基、スルホン酸エステル基などで1〜4個置換したものがより好ましい。ここで、RおよびRは、水素原子または炭素数1〜20の1価の有機基を示す。
【0029】
これらの酸は、そのまま、あるいは酸無水物や活性エステルとしても使用できる。また、これらを2種以上用いてもよい。
【0030】
また、ジメチルシランジフタル酸、1,3−ビス(フタル酸)テトラメチルジシロキサンなどのシリコン原子含有テトラカルボン酸を用いることにより、基板に対する接着性や、洗浄などに用いられる酸素プラズマ、UVオゾン処理に対する耐性を高めることができる。これらシリコン原子含有テトラカルボン酸は、全酸成分の1〜30モル%用いることが好ましい。
【0031】
ポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体のジアミン残基を構成するジアミン成分の例としては、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メチレン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ)ビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのヒドロキシル基含有ジアミン、3,5−ジアミノ安息香酸、3−カルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのカルボキシル基含有ジアミン、3−スルホン酸−4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのスルホン酸含有ジアミン、ジチオヒドロキシフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルヒド、4,4’−ジアミノジフェニルスルヒド、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’−テトラメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’−テトラメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジ(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、あるいはこれらの芳香族環の水素原子の一部をアルキル基やF、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子で置換した化合物、シクロヘキシルジアミン、メチレンビスシクロヘキシルアミンなどの脂肪族ジアミンなどを挙げることができる。さらにこれらのジアミンは、水素原子の一部をメチル基、エチル基などの炭素数1〜10のアルキル基、トリフルオロメチル基などの炭素数1〜10のフルオロアルキル基、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子で置換してもよい。また、上に例示したジアミンは、OR、SO、CONR、COOR、SONRで示される酸性基または酸性基誘導体を有することが好ましく、水酸基を有することがより好ましい。ここで、RおよびRは、水素原子または炭素数1〜20の1価の有機基を示す。
【0032】
これらのジアミンは、そのまま、あるいは対応するジイソシアネート化合物、トリメチルシリル化ジアミンとして使用できる。また、これらを2種以上用いてもよい。耐熱性が要求される用途では、芳香族ジアミンをジアミン全体の50モル%以上使用することが好ましい。
【0033】
また、ジアミン成分として、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アニリノ)テトラメチルジシロキサンなどのシリコン原子含有ジアミンを用いることにより、基板に対する接着性や、洗浄などに用いられる酸素プラズマ、UVオゾン処理に対する耐性を高めることができる。これらシリコン原子含有ジアミンは、全ジアミン成分の1〜30モル%用いることが好ましい。
【0034】
また、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、それらの前駆体およびこれらから選ばれる2種以上の共重合体の末端を、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基またはチオール基を有するモノアミン、酸無水物、モノカルボン酸、酸クロリドにより封止することが好ましい。これらを2種以上用いてもよい。樹脂末端に前述の基を有することにより、樹脂のアルカリ水溶液に対する溶解速度を好ましい範囲に容易に調整することができる。
【0035】
モノアミンの好ましい例としては、5−アミノ−8−ヒドロキシキノリン、1−ヒドロキシ−7−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−6−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−5−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−4−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−7−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−6−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−5−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−3−アミノナフタレン、1−カルボキシ−7−アミノナフタレン、1−カルボキシ−6−アミノナフタレン、1−カルボキシ−5−アミノナフタレン、2−カルボキシ−7−アミノナフタレン、2−カルボキシ−6−アミノナフタレン、2−カルボキシ−5−アミノナフタレン、2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、4−アミノサリチル酸、5−アミノサリチル酸、6−アミノサリチル酸、2−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−アミノフェノール、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール、2−アミノ−4−tert−ブチルフェノール、2−アミノチオフェノール、3−アミノチオフェノール、4−アミノチオフェノールなどを挙げることができる。
【0036】
酸無水物、モノカルボン酸、酸クロリドの好ましい例としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、ナジック酸無水物、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、3−ヒドロキシフタル酸無水物などの酸無水物、3−カルボキシフェノール、4−カルボキシフェノール、3−カルボキシチオフェノール、4−カルボキシチオフェノール、1−ヒドロキシ−7−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−6−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−5−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−7−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−6−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−5−カルボキシナフタレン、3−カルボキシベンゼンスルホン酸、4−カルボキシベンゼンスルホン酸などのモノカルボン酸およびこれらのカルボキシル基が酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物、テレフタル酸、フタル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、1,5−ジカルボキシナフタレン、1,6−ジカルボキシナフタレン、1,7−ジカルボキシナフタレン、2,6−ジカルボキシナフタレンなどのジカルボン酸類の1つのカルボキシル基だけが酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物、モノ酸クロリド化合物とN−ヒドロキシベンゾトリアゾールやN−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドとの反応により得られる活性エステル化合物などを挙げることができる。
【0037】
前述の末端封止剤として使用するモノアミン、酸無水物、モノカルボン酸、酸クロリド、の含有量は、酸成分モノマーまたはジアミン成分モノマーの仕込みモル数の0.1〜60モル%の範囲が好ましく、5〜50モル%がより好ましい。このような範囲とすることで、樹脂組成物を塗布する際の溶液の粘性が適度で、かつ優れた膜物性を有した樹脂組成物を得ることができる。
【0038】
樹脂中に導入された末端封止剤は、以下の方法で容易に検出できる。例えば、末端封止剤が導入された樹脂を酸性溶液に溶解し、樹脂の構成単位であるジアミン成分と酸成分に分解し、これをガスクロマトグラフィー(GC)や、NMR測定することにより、末端封止剤を容易に検出することができる。これとは別に、末端封止剤が導入された樹脂を直接、熱分解ガスクロマトグラフ(PGC)や赤外スペクトルおよび13C−NMRスペクトル測定することにより検出することも可能である。
【0039】
また、樹脂の末端に重合性官能基を有してもよい。重合性官能基の例としては、エチレン性不飽和結合基、アセチレン基、メチロール基、アルコキシメチル基などが挙げられる。
【0040】
本発明において、(a)成分としてはポリイミド前駆体またはポリベンゾオキサゾール前駆体が好ましく、より好ましくはポリイミド前駆体である。ポリイミド前駆体は約200℃での焼成によりアミド酸部位が閉環するイミド化反応を進行し、ポリベンゾオキサゾール前駆体は約300℃での焼成によりヒドロキシアミド部位が閉環するオキサゾール化反応を進行し、その結果、体積収縮する性質がある。
【0041】
また本発明の耐熱性樹脂組成物は、(a)成分に加えて他のアルカリ可溶性樹脂を含有してもよい。アルカリ可溶性樹脂とは、アルカリに可溶となる酸性基を有する樹脂を言い、具体的にはアクリル酸を有するラジカル重合性樹脂、フェノール−ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリシロキサンなどが挙げられる。また、これら樹脂の酸性基を保護してアルカリ溶解性を調節してもよい。このような樹脂は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド以外に、コリン、トリエチルアミン、ジメチルアミノピリジン、モノエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ水溶液に溶解する。これらの樹脂を2種以上含有してもよいが、(a)成分を含む樹脂全体に占める割合は70重量%以下が好ましい。
【0042】
本発明の耐熱性樹脂組成物は、(b)大気圧下における沸点が100℃以上150℃未満の有機溶媒を含有する。大気圧下における沸点が150℃未満である揮発性の高い有機溶媒を含有することで、減圧乾燥工程において塗布膜から有機溶媒を短時間で除去することができる。有機溶媒を短時間で除去するためには、沸点140℃以下がより好ましい。また、大気圧下における沸点が150℃未満である揮発性の高い有機溶媒を含有することで減圧乾燥時に樹脂膜表面のみが乾燥することを防ぎ、膜荒れを防止することができる。一方、大気圧下における沸点が100℃未満であると、前記(a)成分の溶解性が低下し、固形分が析出する場合がある。これらは、インクジェットノズルが詰まる原因や、樹脂膜中の欠陥の原因となる場合がある。
【0043】
本発明において、(b)成分の含有量は有機溶媒全量に対して5重量%以上40重量%以下である。(b)成分の含有量が5重量%未満であると、揮発性の高い溶媒の含有量が低くなり、減圧乾燥工程を短縮する効果と膜荒れを防止する効果が得られない。好ましくは10重量%以上である。一方、(b)成分の含有量が40重量%を超えると、耐熱性樹脂組成物に含有する溶媒の揮発性が高くなり、インクジェットノズルが詰まりやすく、長時間にわたる連続塗布ができなくなる。好ましくは25重量%以下である。
【0044】
(b)大気圧下における沸点が100℃以上150℃未満の有機溶媒としては、前記(a)成分の樹脂を溶解するものが好ましい。具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル(沸点124℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)などのアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピルアセテート(沸点102℃)、ブチルアセテート(沸点125℃)、イソブチルアセテート(沸点118℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点146℃)などのアルキルアセテート類、メチルブチルケトン(沸点116℃)、メチルイソブチルケトン(沸点116℃)、メチルプロピルケトン(沸点102℃)などのケトン類、ブチルアルコール(沸点117℃)、イソブチルアルコール(沸点108℃)などのアルコール類などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。耐熱性樹脂組成物の保存安定性および粘度安定性の観点から、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。
【0045】
本発明の耐熱性樹脂組成物は、(c)大気圧下における沸点が150℃以上の有機溶媒を含有する。(b)成分に加えて(c)大気圧下における沸点が150℃以上である揮発性の低い有機溶媒を含有することで、減圧乾燥において有機溶剤が揮発する圧力を分散でき、減圧乾燥時に樹脂膜中に生じる泡の発生を抑制することができる。さらに、揮発性の低い有機溶媒を含有することでインクジェットノズルが詰まりにくくなり、長時間にわたり安定して連続塗布をすることができる。一方、焼成後における膜への有機溶媒の残存を抑制するため、沸点は230℃以下が好ましい。また、(c)成分の有機溶媒は、2種以上含有する事が好ましい。2種以上含有することにより、減圧乾燥工程において溶媒が揮発する圧力をさらに分散でき、減圧乾燥時に樹脂膜中に生じる泡の発生をさらに抑制することができる。具体的には(c−1)大気圧下における沸点が150℃以上190℃未満の有機溶媒、(c−2)大気圧下における沸点が190℃以上の有機溶媒を混合する事が好ましい。特に、耐熱性樹脂膜の膜厚が大きい場合には、塗液の量を増やす必要があり、減圧乾燥時により多くの有機溶媒を除去する必要があるため、泡を発生しやすくなるが、有機溶媒として(b)成分、(c−1)成分および(c−2)成分を特定量組み合わせることにより、減圧乾燥に伴う泡の発生を抑制する効果が顕著に奏される。なお、減圧乾燥に伴い発生する泡は、乾燥後の耐熱性樹脂膜に直径1mm以下の泡として残存し、これらは耐熱性樹脂膜表面をナトリウムランプ照射下で目視観察することにより確認することができる。
【0046】
本発明において用いる有機溶媒全量に対する(c)成分の割合は、60重量%以上が好ましい。より好ましくは75重量%以上である。(c)成分の含有量が60重量%未満であると、減圧乾燥時に泡が発生しやすくなる。さらに、インクジェットノズルが詰まりやすく、長時間にわたる連続塗布ができなくなる。また、(c−1)成分と(c−2)成分を混合する場合、有機溶媒全量に対する(c−1)成分の割合は、30重量%以上80重量%以下が好ましく、(c−2)成分の割合は10重量%以上40重量%が好ましい。
【0047】
(c)大気圧下における沸点が150℃以上の有機溶媒としては、前記(a)成分の樹脂を溶解するものが好ましい。具体的には、乳酸エチル(沸点154℃)、乳酸ブチル(沸点186℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点171℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(沸点162℃)、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(沸点189℃)、3−メトキシブチルアセテート(沸点171℃)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点160℃)、ガンマブチロラクトン(沸点203℃)、N−メチル−2−ピロリドン(沸点204℃)、ジアセトンアルコール(沸点166℃)、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン(沸点154℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(沸点153℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(沸点165℃)、ジメチルスルホキシド(沸点189℃)が挙げられる。
【0048】
なお、有機溶媒の大気圧下における沸点は、「CRC Handbook of Chemistry and Physics」や「Aldrich Handbook of Fine Chemical and Laboratory Equipment」などの文献に記載されている。公知の文献に記載のない有機溶媒の沸点は、市販の沸点測定装置、例えば、FP81HT/FP81C(メトラー・トレド(株)製)により測定できる。
【0049】
本発明の耐熱性樹脂組成物の25℃における粘度は、前記(b)成分と(c)成分を用いることでインクジェット塗布法に適した範囲に調整することができる。本発明の耐熱性樹脂前駆体の粘度は5mPa・s以上50mPa・s以下が好ましい。粘度が5mPa・s以下の耐熱性樹脂組成物で膜厚5μm以上の樹脂膜を得るには、インクジェットノズルから吐出される塗布膜を厚くする必要があり、減圧乾燥で揮発する溶媒量が多くなるため、樹脂膜中に泡が発生し易くなる。また、インクジェットノズルで長時間にわたり安定して連続塗布するためには粘度50mPa以下が好ましい。なお、耐熱性樹脂組成物溶液の粘度は、E型粘度計を用いて測定することができる。
【0050】
本発明の耐熱性樹脂組成物は(d)感光剤を含有しても良い。感光剤としては、(d−1)光酸発生剤や、(d−2)光重合開始剤および(d−3)エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物の組み合わせが挙げられる。(d−1)光酸発生剤を含有することで、光照射部に酸が発生して光照射部のアルカリ水溶液に対する溶解性が増大し、光照射部が溶解するポジ型のレリーフパターンを得ることができる。また、(d−1)光酸発生剤とエポキシ化合物または後述する熱架橋剤を含有することで、光照射部に発生した酸がエポキシ化合物や熱架橋剤の架橋反応を促進し、光照射部が不溶化するネガ型のレリーフパターンを得ることができる。また、(d−2)光重合開始剤および(d−3)エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物を含有することで、光照射部に発生した活性ラジカルがエチレン性不飽和結合のラジカル重合を進行させ、光照射部が不溶化するネガ型のレリーフパターンを得ることができる。
【0051】
(d−1)光酸発生剤としては、キノンジアジド化合物、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩などが挙げられる。
【0052】
キノンジアジド化合物としては、ポリヒドロキシ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合したもの、ポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がスルホンアミド結合したもの、ポリヒドロキシポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合および/またはスルホンアミド結合したものなどが挙げられる。これらポリヒドロキシ化合物やポリアミノ化合物の官能基全体の50モル%以上がキノンジアジドで置換されていることが好ましい。また、(d−1)光酸発生剤を2種以上含有することが好ましく、これにより高感度な感光特性を付与した耐熱性樹脂組成物を得ることができる。
【0053】
本発明において、キノンジアジド化合物は5−ナフトキノンジアジドスルホニル基を有する化合物、4−ナフトキノンジアジドスルホニル基を有する化合物のいずれも好ましく用いられる。4−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物は水銀灯のi線領域に吸収を持っており、i線露光に適している。5−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物は水銀灯のg線領域まで吸収を持っており、g線露光に適している。本発明においては、露光する波長によって4−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物、5−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を選択することが好ましい。また、同一分子中に4−ナフトキノンジアジドスルホニル基、5−ナフトキノンジアジドスルホニル基を有するナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を含有してもよいし、4−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物と5−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を含有してもよい。
【0054】
(d−1)光酸発生剤のうち、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩は、露光によって発生した酸成分を適度に安定化させるため好ましい。中でもスルホニウム塩が好ましい。さらに増感剤などを必要に応じて含有することもできる。
【0055】
(d−2)光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アルキル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド、2−ヒドロキシ−3−(4−ベンゾイルフェノキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロペンアミニウムクロリド一水塩、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イロキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパナミニウムクロリド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイド、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2−ビイミダゾール、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、メチルフェニルグリオキシエステル、η5−シクロペンタジエニル−η6−クメニル−アイアン(1+)−ヘキサフルオロフォスフェイト(1−)、ジフェニルスルフィド誘導体、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、4−ベンゾイル−4−メチルフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,3−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、ベンジルメトキシエチルアセタール、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、ナフタレンスルフォニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイルなど、エオシン、メチレンブルーなどの光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミンなどの還元剤との組み合わせなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0056】
(d−3)エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物として、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、グリセリントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化イソシアヌール酸トリアクリレートなどのアクリルモノマーを挙げることができる。これらを2種以上含有してもよい。
【0057】
本発明において、(d)感光剤の含有量は、(a)成分の樹脂100重量部に対して0.05〜50重量部が好ましい。(d−1)光酸発生剤の含有量は、高感度化の観点から、(a)成分の樹脂100重量部に対して0.01〜50重量部が好ましい。このうち、キノンジアジド化合物は3〜40重量部が好ましい。また、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩の総量は0.5〜20重量部が好ましい。(d−2)光重合開始剤の含有量は、(a)成分の樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましい。0.1重量部以上であれば、光照射により十分なラジカルが発生し、感度が向上する。また、20重量部以下であれば、過度なラジカルの発生によって光未照射部が硬化することがなく、アルカリ現像性が向上する。(d−3)エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物の含有量は、(a)成分の樹脂100重量部に対して5〜50重量部が好ましい。
【0058】
また、溶解性の調整などのためにエチレン性不飽和結合を1個有する化合物を、(a)成分の樹脂100重量部に対して1〜50重量部含有してもよい。このような化合物の例として、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、アクリロイルモロフォリン、1−ヒドロキシエチルα−クロロアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルα−クロロアクリレート、1−ヒドロキシプロピルメタクリレート、1−ヒドロキシプロピルアクリレート、1−ヒドロキシプロピルα−クロロアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルα−クロロアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルα−クロロアクリレート、1−ヒドロキシ−1−メチルエチルメタクリレート、1−ヒドロキシ−1−メチルエチルアクリレート、1−ヒドロキシ−1−メチルエチルα−クロロアクリレート、2−ヒドロキシ−1−メチルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシ−1−メチルエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−1−メチルエチルα−クロロアクリレート、1−ヒドロキシブチルメタクリレート、1−ヒドロキシブチルアクリレート、1−ヒドロキシブチルα−クロロアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルα−クロロアクリレート、3−ヒドロキシブチルメタクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルα−クロロアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルα−クロロアクリレート、1−ヒドロキシ−1−メチルプロピルメタクリレート、1−ヒドロキシ−1−メチルプロピルアクリレート、1−ヒドロキシ−1−メチルプロピルα−クロロアクリレート、2−ヒドロキシ−1−メチルプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−1−メチルプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−1−メチルプロピルα−クロロアクリレート、1−ヒドロキシ−2−メチルプロピルメタクリレート、1−ヒドロキシ−2−メチルプロピルアクリレート、1−ヒドロキシ−2−メチルプロピルα−クロロアクリレート、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルα−クロロアクリレート、2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチルα−クロロアクリレート、1,2−ジヒドロキシプロピルメタクリレート、1,2−ジヒドロキシプロピルアクリレート、1,2−ジヒドロキシプロピルα−クロロアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルα−クロロアクリレート、2,3−ジヒドロキシブチルメタクリレート、2,3−ジヒドロキシブチルアクリレート、2,3−ジヒドロキシブチルα−クロロアクリレート、p−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノール、フェネチルメタクリレート、フェネチルアクリレート、フェネチルα−クロロアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、α−クロロアクリル酸、クロトン酸、4−ペンテン酸、5−ヘキセン酸、6−ヘプテン酸、7−オクテン酸、8−ノナン酸、9−デカン酸、10−ウンデシレン酸、ブラシジン酸、リシノール酸、2−(メタクリロイロキシ)エチルイソシアネート、2−(アクリロイロキシ)エチルイソシアネート、2−(α−クロロアクリロイロキシ)エチルイソシアネートなどを挙げることができる。
【0059】
前述の(d)感光剤を含有することで感光特性を付与した耐熱性樹脂組成物を、感光性樹脂組成物と呼ぶ。感光性樹脂組成物は、塗布後に得られた感光特性を付与した耐熱性樹脂膜を露光・現像し微細パターンを得た後、焼成することにより、順テーパー形状のパターンを得ることができる。この順テーパー形状パターンは、有機EL素子の絶縁膜として用いる際に上部電極の被覆性に優れ、断線を防止し素子の信頼性を高めることができる。
【0060】
本発明の耐熱性樹脂組成物は、(e)下記一般式(1)で表される構造を有する熱架橋剤または下記一般式(2)で表される基を有する熱架橋剤(以下、あわせて(e)熱架橋剤という)を含有してもよい。これらの(e)熱架橋剤は、(a)ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、それらの前駆体およびこれらから選ばれる2種以上の共重合体同士、またはその他添加成分を架橋し、焼成後または硬化後の膜の耐薬品性および硬度を高めることができる。
【0061】
【化5】
【0062】
上記一般式(1)中、Rは2〜4価の連結基を示す。Rは炭素数1〜20の1価の有機基、Cl、Br、IまたはFを示す。RおよびRは、CHOR(Rは水素原子または炭素数1〜6の1価の炭化水素基)を示す。Rは水素原子、メチル基またはエチル基を示す。sは0〜2の整数、uは2〜4の整数を示す。複数のR〜Rはそれぞれ同じでも異なってもよい。連結基Rの例を下に示す。
【0063】
【化6】
【0064】
上記式中、R〜R27は水素原子、炭素数1〜20の1価の有機基、Cl、Br、IまたはFを示す。
【0065】
−N(CHOR(H) (2)
上記一般式(2)中、Rは水素原子または炭素数1〜6の1価の炭化水素基を示す。tは1または2、vは0または1を示す。ただし、t+vは1または2である。
【0066】
上記一般式(1)中、RおよびRは、熱架橋基であるCHOR(Rは水素原子または炭素数1〜6の1価の炭化水素基)を表している。適度な反応性を残し、かつ保存安定性に優れることから、Rは炭素数1〜4の1価の炭化水素基が好ましい。また、(d−1)光酸発生剤や(d−2)光重合開始剤などを含む感光性樹脂組成物においては、Rはメチル基またはエチル基がより好ましい。
【0067】
一般式(1)で表される構造を有する熱架橋剤において、化合物の純度は85%以上が好ましい。純度が85%以上であれば、保存安定性に優れ、吸水性をもつ未反応基を少なくすることができるため、耐熱性樹脂組成物の吸水性を小さくすることができる。高純度の熱架橋剤を得る方法としては、再結晶、蒸留などが挙げられる。熱架橋剤の純度は液体クロマトグラフィー法により求めることができる。
【0068】
一般式(1)で表される構造を有する熱架橋剤の好ましい例を下記に示す。
【0069】
【化7】
【0070】
一般式(2)中、Rは水素原子または炭素数1〜6の1価の炭化水素基であるが、炭素数1〜4の1価の炭化水素基が好ましい。また、化合物の安定性や樹脂組成物における保存安定性の観点から、(d−1)光酸発生剤や(d−2)光重合開始剤などを含む感光性樹脂組成物においては、Rはメチル基またはエチル基が好ましく、化合物中に含まれる(CHOR)基の数が8以下であることが好ましい。
【0071】
一般式(2)で表される基を有する熱架橋剤の好ましい例を下記に示す。
【0072】
【化8】
【0073】
(e)熱架橋剤の含有量は、(a)成分の樹脂100重量部に対して10重量部以上100重量部以下が好ましい。(e)熱架橋剤の含有量が10重量部以上100重量部以下であれば、焼成後または硬化後の膜の強度が高く、耐熱性樹脂組成物の保存安定性にも優れる。
【0074】
本発明の耐熱性樹脂組成物は、さらに(f)熱酸発生剤を含有してもよい。(f)熱酸発生剤は、後述する現像後の加熱により酸を発生し、(a)成分の樹脂と(e)成分の熱架橋剤との架橋反応を促進するほか、(a)成分の樹脂においてイミド環、オキサゾール環の環化を促進する。このため、焼成後の膜の耐薬品性が向上し、膜減りを低減することができる。(f)熱酸発生剤から発生する酸は強酸が好ましく、例えば、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などのアリールスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸などのアルキルスルホン酸などが好ましい。本発明において、(f)熱酸発生剤は一般式(3)または(4)で表されるスルホン酸化合物が好ましく、これらを2種以上含有してもよい。
【0075】
【化9】
【0076】
上記一般式(3)および(4)中、R28〜R30は炭素数1〜10のアルキル基または炭素数7〜12の1価の芳香族基を示す。アルキル基および芳香族基はその中に含まれる水素原子の一部が置換されていてもよく、置換基としては、アルキル基、カルボニル基などが挙げられる。
【0077】
一般式(3)で表される化合物の具体例としては以下の化合物を挙げることができる。
【0078】
【化10】
【0079】
一般式(4)で表される化合物の具体例としては以下の化合物を挙げることができる。
【0080】
【化11】
【0081】
(f)熱酸発生剤の含有量は、架橋反応をより促進する観点から、(a)成分の樹脂100重量部に対して、0.5重量部以上10重量部以下が好ましい。
【0082】
必要に応じて、感光性樹脂組成物のアルカリ現像性を補う目的で、フェノール性水酸基を有する化合物を含有してもよい。フェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、Bis−Z、BisOC−Z、BisOPP−Z、BisP−CP、Bis26X−Z、BisOTBP−Z、BisOCHP−Z、BisOCR−CP、BisP−MZ、BisP−EZ、Bis26X−CP、BisP−PZ、BisP−IPZ、BisCR−IPZ、BisOCP−IPZ、BisOIPP−CP、Bis26X−IPZ、BisOTBP−CP、TekP−4HBPA(テトラキスP−DO−BPA)、TrisP−HAP、TrisP−PA、TrisP−PHBA、TrisP−SA、TrisOCR−PA、BisOFP−Z、BisRS−2P、BisPG−26X、BisRS−3P、BisOC−OCHP、BisPC−OCHP、Bis25X−OCHP、Bis26X−OCHP、BisOCHP−OC、Bis236T−OCHP、メチレントリス−FR−CR、BisRS−26X、BisRS−OCHP、(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、BIR−OC、BIP−PC、BIR−PC、BIR−PTBP、BIR−PCHP、BIP−BIOC−F、4PC、BIR−BIPC−F、TEP−BIP−A(以上、商品名、旭有機材工業(株)製)、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,4−ジヒドロキシキノリン、2,6−ジヒドロキシキノリン、2,3−ジヒドロキシキノキサリン、アントラセン−1,2,10−トリオール、アントラセン−1,8,9−トリオール、8−キノリノールなどが挙げられる。これらのフェノール性水酸基を有する化合物を含有する感光性樹脂組成物は、露光前はアルカリ現像液にほとんど溶解せず、露光すると容易にアルカリ現像液に溶解するため、現像による膜減りが少なく、かつ短時間で現像が容易になる。そのため、感度が向上しやすくなる。
【0083】
このようなフェノール性水酸基を有する化合物の含有量は、(a)成分の樹脂100重量部に対して、好ましくは3重量部以上40重量部以下である。
【0084】
本発明の耐熱性樹脂組成物は、加熱により発色し、350nm以上700nm以下の波長域に吸収極大を示す熱発色性化合物や、350nm以上500nm未満の波長域に吸収極大を持たず500nm以上750nm以下の波長域に吸収極大を持つ有機顔料または染料を含有してもよい。熱発色性化合物の発色温度は120℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。熱発色性化合物の発色温度が高いほど、高温条件下での耐熱性に優れ、また長時間の紫外−可視光照射により退色することなく耐光性に優れる。
【0085】
熱発色性化合物としては、感熱色素、感圧色素や、トリアリールメタン骨格を有する水酸基含有化合物などが挙げられる。
【0086】
本発明の耐熱性樹脂組成物は、密着改良剤を含有してもよい。密着改良剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、チタンキレート剤、アルミキレート剤などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの密着改良剤を含有することにより、感光性樹脂組成物から形成した膜を現像する場合などに、シリコンウエハ、ITO、SiO、窒化ケイ素などの下地基材との密着性を高めることができる。また、洗浄などに用いられる酸素プラズマ、UVオゾン処理に対する耐性を高めることができる。密着改良剤の含有量は、(a)成分の樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましい。
【0087】
本発明の耐熱性樹脂組成物は、接着改良剤を含有してもよい。接着改良剤としては、アルコキシシラン含有芳香族アミン化合物、芳香族アミド化合物または芳香族非含有シラン化合物などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの化合物を含有することにより、焼成後または硬化後の膜と基材との接着性を向上させることができる。アルコキシシラン含有芳香族アミン化合物および芳香族アミド化合物の具体例を以下に示す。この他に、芳香族アミン化合物とアルコキシル基含有ケイ素化合物を反応させて得られる化合物であってもよく、例えば、芳香族アミン化合物と、エポキシ基、クロロメチル基などのアミノ基と反応する基を有するアルコキシシラン化合物を反応させて得られる化合物などが挙げられる。
【0088】
【化12】
【0089】
接着改良剤の総含有量は、(a)成分の樹脂100重量部に対して、0.01〜15重量部が好ましい。
【0090】
本発明の耐熱性樹脂組成物は、界面活性剤を含有してもよく、これにより基板との濡れ性を向上させることができる。
【0091】
界面活性剤としては、フロラード(商品名、住友3M(株)製)、“メガファック(登録商標)”(DIC(株)製)、スルフロン(商品名、旭硝子(株)製)などのフッ素系界面活性剤、KP341(商品名、信越化学工業(株)製)、DBE(商品名、チッソ(株)製)、グラノール(商品名、共栄社化学(株)製)、BYK(商品名、ビック・ケミー(株)製)などの有機シロキサン界面活性剤、ポリフロー(商品名、共栄社化学(株)製)などのアクリル重合物界面活性剤などが挙げられる。
【0092】
次に、本発明の耐熱性樹脂組成物の製造方法について説明する。例えば、前記(a)〜(c)成分と、必要により(d)〜(f)成分、溶解調整剤、熱発色性化合物、密着改良剤、接着改良剤または界面活性剤などを溶解させることにより、耐熱性樹脂組成物を得ることができる。溶解方法としては、撹拌や加熱が挙げられる。加熱する場合、加熱温度は耐熱性樹脂組成物の性能を損なわない範囲で設定することが好ましく、通常、室温〜80℃である。また、各成分の溶解順序は特に限定されず、例えば、溶解性の低い化合物から順次溶解させる方法がある。また、界面活性剤や一部の密着改良剤など、撹拌溶解時に気泡を発生しやすい成分については、他の成分を溶解してから最後に添加することで、気泡の発生による他成分の溶解不良を防ぐことができる。
【0093】
得られた耐熱性樹脂組成物は、濾過フィルターを用いて濾過し、ゴミや粒子を除去することが好ましい。フィルター孔径は、例えば0.5μm、0.2μm、0.1μm、0.07μm、0.05μm、0.03μm、0.02μm、0.01μm、0.005μmなどがあるが、これらに限定されない。濾過フィルターの材質には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン(NY)、ポリテトラフルオロエチエレン(PTFE)などがあるが、PEやNYが好ましい。
【0094】
次に、本発明の耐熱性樹脂組成物を用いた耐熱性樹脂膜の製造方法について説明する。耐熱性樹脂組成物の塗布方法としては、スピン塗布法、スリット塗布法、ディップ塗布法、スプレー塗布法、印刷法、インクジェット塗布法などが挙げられ、これらを組み合わせてもよいが、本発明の感光性樹脂組成物が最も効果を奏するのはインクジェット塗布法である。本発明の耐熱性樹脂膜の製造方法は、(1)本発明の耐熱性樹脂組成物を、インクジェットノズルを用いて基板に塗布し、塗布膜を形成する工程および(2)塗布膜を減圧乾燥する工程を含む。膜厚5μm以上となる耐熱性樹脂膜をインクジェット塗布法で形成する場合、インクジェットノズルから吐出された塗布膜は多量の溶媒を含んでいるため、加熱乾燥する際に樹脂膜中に泡が生じ欠陥不良になる課題があったが、本発明の耐熱性樹脂組成物を用いて減圧乾燥を行うと、乾燥時に泡が生じず、欠陥が無い厚膜(膜厚5μm以上)の耐熱性樹脂膜を形成することができる。また、インクジェット塗布法では、一般的にはインクジェットヘッドの乾燥を防ぎ長時間にわたり安定して吐出するために揮発性の低い材料が用いられるが、このような材料で減圧乾燥を行うと処理時間が長くなる課題があったが、本発明の耐熱性樹脂組成物を用いると、短時間で減圧乾燥することができる。
【0095】
本発明の耐熱性樹脂膜の製造方法は、まず、(1)本発明の耐熱性樹脂組成物を、インクジェットノズルを用いて基板に塗布し、塗布膜を形成する。塗布に用いるインクジェットノズルについては特に制限はなく、複数の製造メーカーから上市されているものを用いることができる。塗布膜の膜厚は、耐熱性樹脂組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが、通常、乾燥後の膜厚が0.1〜50μm、好ましくは0.3〜40μmになるように塗布される。本発明の耐熱性樹脂組成物を用いると、泡などの欠陥が無い厚膜(膜厚5μm以上)の耐熱性樹脂膜を形成する事ができる。
【0096】
耐熱性樹脂組成物の塗布に先立ち、基板を予め前述した密着改良剤で前処理してもよい。例えば、密着改良剤をイソプロパノール、エタノール、メタノール、水、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、アジピン酸ジエチルなどの溶媒に0.5〜20重量%溶解させた溶液を、スピンコート、スリットダイコート、バーコート、ディップコート、スプレーコート、インクジェット塗布法、蒸気処理などの方法により基板表面を処理する方法が挙げられる。必要に応じて、溶液を塗布した基板に減圧乾燥処理を施し、その後50℃〜300℃の熱処理を行うことにより基板と密着改良剤との反応を進行させることができる。
【0097】
次に(2)塗布膜を減圧乾燥して耐熱性樹脂膜を得る。塗布膜を形成した基板ごと減圧乾燥することが一般的である。例えば、真空チャンバー内に配置されたプロキシピン上に塗布膜を形成した基板を置き、真空チャンバー内を減圧することで減圧乾燥する。
【0098】
減圧乾燥速度は、真空チャンバー容積、真空ポンプ能力やチャンバーとポンプ間の配管径などにもよるが、例えば塗布基板のない状態で、60秒経過後40Paまで減圧される条件などに設定して使用される。加熱乾燥の前に減圧乾燥することで、膜厚5μm以上の耐熱性樹脂膜においても、樹脂膜中に発生する泡を抑制することができる。また、本発明の耐熱性樹脂組成物を用いると、短時間で減圧乾燥することができる。
【0099】
減圧乾燥の後、塗布膜を加熱乾燥することが一般的である。この工程をプリベークとも言う。加熱乾燥はホットプレート、オーブン、赤外線などを使用する。ホットプレートを用いる場合、プレート上に直接、もしくは、プレート上に設置したプロキシピンなどの治具上に塗布膜を保持して加熱する。プロキシピンの材質としては、アルミニウムやステンレスなどの金属材料、あるいはポリイミド樹脂や“テフロン(登録商標)”などの合成樹脂があり、耐熱性があればいずれの材質のプロキシピンを用いてもかまわない。プロキシピンの高さは、基板のサイズ、塗布膜の種類、加熱の目的などにより様々であるが、0.1〜10mmが好ましい。加熱温度は塗布膜の種類や目的により様々であり、室温から180℃の範囲で1分間〜数時間行うことが好ましい。
【0100】
本発明の耐熱性樹脂膜をパターン形成する方法として、インクジェット塗布法により任意の部位のみに樹脂膜を形成する方法、(d)成分を添加した感光性樹脂組成物を用いて、感光特性を付与した耐熱性樹脂膜をリソグラフィー法でパターン形成する方法などがある。
【0101】
感光特性を付与した耐熱性樹脂膜をパターン形成する方法について説明する。感光特性を付与した耐熱性樹脂膜上に所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いることが好ましい。ポジ型の感光性を有する場合、露光部は現像液に溶解する。ネガ型の感光性を有する場合、露光部は硬化し、現像液に不溶化する。
【0102】
露光後、現像液を用いてポジ型の場合は露光部を、またネガ型の場合は非露光部を除去することによって所望のパターンを形成する。現像液としては、ポジ型・ネガ型いずれの場合もテトラメチルアンモニウム水溶液、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。また場合によっては、これらのアルカリ水溶液にN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを単独あるいは数種を組み合わせたものを添加してもよい。またネガ型においては、アルカリ水溶液を含まない上記極性溶媒やアルコール類、エステル類、ケトン類などを単独あるいは数種を組み合わせたものを用いることもできる。現像後は水にてリンス処理をすることが一般的である。ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを水に加えてリンス処理をしてもよい。
【0103】
得られた感光特性を有する耐熱性樹脂膜のパターンを焼成する。焼成の方法としては、例えば、230℃で60分間加熱処理する方法、120〜400℃で1分間〜10時間加熱処理する方法、硬化触媒などを加えて室温〜100℃程度の低温で加熱処理する方法、超音波や電磁波処理により室温〜100℃程度の低温で硬化する方法などが挙げられる。
【0104】
本発明の感光性樹脂組成物を焼成して得られる膜は、LSIなど半導体デバイスの表面保護膜や層間絶縁膜、有機EL素子の絶縁膜、表示素子用TFT基板の平坦化膜、回路基板の配線保護膜、固体撮像素子のオンチップマイクロレンズや各種ディスプレイ・固体撮像素子用平坦化膜などの用途に好ましく用いることができる。
【実施例】
【0105】
以下実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、実施例中の耐熱性樹脂組成物の評価は以下の方法により行った。
【0106】
(1)耐熱性樹脂膜の作製、減圧乾燥性の評価
8インチシリコンウエハに耐熱性樹脂組成物を乾燥後の膜厚が3μm、5μmまたは7μmとなるようにインクジェットコーター(図1参照)を用いて塗布した。塗布後、真空チャンバーに投入し減圧乾燥した。減圧乾燥時間を60秒〜240秒まで10秒間隔で変更して指触で乾燥状態を調査し、乾燥した最短の時間を減圧乾燥最小時間とした。減圧乾燥性の評価では減圧乾燥最小時間が60〜120秒を○、130〜160秒を△、170秒以上を×とした。この後、ホットプレートを用いて120℃で120秒間プリベークし耐熱性樹脂膜を得た。
【0107】
(2)耐熱性樹脂膜の外観評価
(1)の方法により得られた耐熱性樹脂膜をナトリウムランプ下で目視にて観察し、膜荒れ、泡のそれぞれについて3段階評価した。膜荒れ、泡が明確に見えるものを×、僅かに見えるものを△、見えないものを×とした。
【0108】
(3)連続塗布性評価
(1)のインクジェット塗布法で10分間連続塗布した後、さらに塗布を継続して得られた樹脂塗膜を減圧乾燥、プリベークして耐熱性樹脂膜を作成した。作成した耐熱性樹脂膜を観察し塗布ムラ(膜厚ムラ等)について3段階評価した。目視において塗布ムラが明確に見えるものを×、周辺部、中央部を20倍の顕微鏡にて観察しピンホールや塗布ムラが観測された場合を△、塗布ムラのないものを○とした。
【0109】
(4)有機溶媒の沸点の算出方法
本発明の実施例および比較例に用いた有機溶媒の沸点は文献「CRC Handbook of Chemistry and Physics」および「Aldrich Handbook of Fine Chemical and Laboratory Equipment」から引用した。
【0110】
(5)粘度の算出方法
本発明の実施例および比較例の感光性樹脂組成物のワニスの粘度は、E型粘度計を用いて25℃の条件で測定した。
【0111】
合成例1 ヒドロキシル基含有ジアミン化合物(HFHA)の合成
2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(セントラル硝子(株)製、BAHF)18.3g(0.05モル)をアセトン100mL、プロピレンオキシド(東京化成(株)製)17.4g(0.3モル)に溶解させ、−15℃に冷却した。ここに3−ニトロベンゾイルクロリド(東京化成(株)製)20.4g(0.11モル)をアセトン100mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、−15℃で4時間撹拌し、その後室温に戻した。析出した白色固体を濾別し、50℃で真空乾燥した。
【0112】
得られた白色固体30gを300mLのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセルソルブ250mLに分散させ、5%パラジウム−炭素(和光純薬(株)製)を2g加えた。ここに水素を風船で導入して、還元反応を室温で行った。約2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させた。反応終了後、濾過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、下記式で表されるヒドロキシル基含有ジアミン化合物(HFHA)を得た。
【0113】
【化13】
【0114】
合成例2 キノンジアジド化合物の合成
乾燥窒素気流下、TrisP−PA(商品名、本州化学工業(株)製)、21.22g(0.05モル)と5−ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリド(東洋合成(株)製、NAC−5)26.8g(0.1モル)を1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合したトリエチルアミン12.65gを、系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後40℃で2時間撹拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、濾液を水に投入した。その後、析出した沈殿を濾過で集め、さらに1%塩酸水1Lで洗浄した。その後、さらに水2Lで2回洗浄した。この沈殿を真空乾燥機で乾燥し、下記式で表されるキノンジアジド化合物を得た。
【0115】
【化14】
【0116】
合成例3 アルコキシメチル基含有化合物(A−1)の合成
1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(本州化学工業(株)製、TrisP−HAP)103.2g(0.4モル)を、水酸化ナトリウム80g(2.0モル)を純水800gに溶解させた溶液に溶解させた。完全に溶解させた後、20〜25℃で36〜38重量%のホルマリン水溶液686gを2時間かけて滴下した。その後20〜25℃で17時間撹拌した。これに硫酸98gと水552gを加えて中和を行い、そのまま2日間放置した。放置後に溶液に生じた針状の白色結晶を濾過で集め、水100mLで洗浄した。この白色結晶を50℃で48時間真空乾燥した。乾燥した白色結晶を島津製作所(株)製の高速液体クロマトグラフィーで、カラムにODSを、展開溶媒にアセトニトリル/水=70/30を用い、254nmで分析したところ、出発原料は完全に消失し、純度92%であることがわかった。さらに、重溶媒にDMSO−d6を用いてNMR(日本電子(株)製、GX−270)により分析したところ、ヘキサメチロール化したTrisP−HAPであることがわかった。
【0117】
次に、このようにして得た化合物をメタノール300mLに溶解させ、硫酸2gを加えて室温で24時間撹拌した。この溶液にアニオン型イオン交換樹脂(Rohm and Haas社製、アンバーリストIRA96SB)15gを加え1時間撹拌し、濾過によりイオン交換樹脂を除いた。その後、乳酸エチル500mLを加え、ロータリーエバポレーターでメタノールを除き、乳酸エチル溶液にした。この溶液を室温で2日間放置したところ、白色結晶が生じた。得られた白色結晶を高速液体クロマトグラフィー法により分析したところ、下記式で表される純度99%のTrisP−HAPのヘキサメトキシメチル化合物(アルコキシメチル基含有化合物(A−1))であることがわかった。
【0118】
【化15】
【0119】
実施例で使用したその他の熱架橋剤および酸発生剤は以下のとおりである。
【0120】
【化16】
【0121】
実施例1
乾燥窒素気流下、合成例1で得られたHFHA51.3g(0.085モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(SiDA、信越化学(株)製)1.24g(0.005モル)、3−アミノフェノール(東京化成(株)製)2.18g(0.02モル)をN−メチルピロリドン(NMP)200gに溶解した。ここに3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(ODPA、マナック(株)製)31.0g(0.1モル)を加え、40℃で2時間撹拌した。その後、ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(三菱レーヨン(株)製、DFA)7.14g(0.06モル)をNMP5gで希釈した溶液を10分間かけて滴下した。滴下後、40℃で2時間撹拌を続けた。撹拌終了後、溶液を水2Lに投入して、ポリマー固体の沈殿を濾過で集めた。さらに水2Lで3回洗浄を行い、集めたポリマー固体を50℃の真空乾燥機で72時間乾燥し、ポリイミド前駆体を得た。
【0122】
このポリイミド前駆体10.0g、界面活性剤としてBYK333(商品名、ビックケミー(株)製)0.04gをプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)16.2gとジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)48.6gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)16.2gに加えて撹拌しポリイミド前駆体組成物のワニスを得た。ワニスの粘度は11mPa・sであった。得られたワニスを用いて、前記(1)に記載の方法で、乾燥後の膜厚が3μmとなるようにインクジェット塗布法により耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。
【0123】
実施例2
実施例1のワニスを用いて、乾燥後の膜厚が5μmとなるようにインクジェット塗布法により耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。
【0124】
実施例3
実施例1のワニスを用いて、乾燥後の膜厚が7μmとなるようにインクジェット塗布法により耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。
【0125】
実施例4
溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)32.4gとジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)32.4gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)16.2gに変更した以外は実施例2と同様にして耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。ワニスの粘度は11mPa・sであった。
【0126】
実施例5
溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)24.3gとジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)40.5gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)16.2gに変更した以外は実施例2と同様にして耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。ワニスの粘度は11mPa・sであった。
【0127】
実施例6
溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)12.2gとジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)52.7gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)16.2gに変更した以外は実施例2と同様にして耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。ワニスの粘度は11mPa・sであった。
【0128】
実施例7
溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)6.5gとジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)58.3gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)16.2gに変更した以外は実施例2と同様にして耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。ワニスの粘度は11mPa・sであった。
【0129】
実施例8
溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)16.2gとジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)60.1gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)4.1gに変更した以外は実施例2と同様にして耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。ワニスの粘度は11mPa・sであった。ただし、本実施例8は比較例である。
【0130】
実施例9
溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)16.2gとジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)56.7gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)8.1gに変更した以外は実施例2と同様にして耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。ワニスの粘度は11mPa・sであった。
【0131】
実施例10
溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)16.2gとジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)40.1gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)24.3gに変更した以外は実施例2と同様にして耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。ワニスの粘度は11mPa・sであった。
【0132】
実施例11
溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)16.2gとジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)32.4gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)32.4gに変更した以外は実施例2と同様にして耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。ワニスの粘度は11mPa・sであった。
【0133】
実施例12
溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)16.2gとジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)24.3gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)40.1gに変更した以外は実施例2と同様にして耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。ワニスの粘度は11mPa・sであった。
【0134】
実施例13
溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)16.2gとジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)64.8gに変更した以外は実施例2と同様にして耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。ワニスの粘度は11mPa・sであった。ただし、本実施例13は比較例である。
【0135】
実施例14
溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)16.2gと乳酸エチル(沸点154℃)48.6gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)16.2gに変更した以外は実施例2と同様にして耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。ワニスの粘度は11mPa・sであった。
【0136】
実施例15
溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)16.2gとジエチレングリコールジエチルエーテル(沸点189℃)48.6gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)16.2gに変更した以外は実施例2と同様にして耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。ワニスの粘度は11mPa・sであった。
【0137】
実施例16
実施例1で得られたポリイミド前駆体10g、合成例2で得られたキノンジアジド化合物3g、溶解調整剤としてTrisP−PHBA(商品名、本州化学工業(株)製)2g、界面活性剤としてBYK333(ビックケミー(株)製)0.04gをプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)17.0gとジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)51.0gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)17.0gに加えて撹拌しポジ型感光性を付与したポリイミド前駆体組成物のワニスを得た。ワニスの粘度は11mPa・sであった。得られたワニスを用いて、前記(1)に記載の方法で、乾燥後の膜厚が5μmとなるようにインクジェット塗布法により耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。
【0138】
実施例17
乾燥窒素気流下、BAHF32.9g(0.09モル)をNMP500gに溶解した。ここにODPA31.0g(0.1モル)をNMP50gとともに加えて、30℃で2時間撹拌した。その後、3−アミノフェノール(東京化成(株)製)2.18g(0.02モル)を加え、40℃で2時間撹拌した。さらにピリジン(東京化成(株)製)5gをトルエン(東京化成(株)製30g)で希釈して、溶液に加え、冷却管を付け系外に水をトルエンとともに共沸で除去しながら溶液の温度を120℃にして2時間、さらに180℃で2時間反応させた。この溶液の温度を室温まで低下させ、水3Lに溶液を投入し、白色の粉体を得た。この粉体を濾過で集め、さらに水で3回洗浄を行った。洗浄後、白色粉体を50℃の真空乾燥機で72時間乾燥させ、ポリイミドを得た。
【0139】
このポリイミド樹脂10.0g、界面活性剤としてBYK333(ビックケミー(株)製)0.04gをプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)14.7gとジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)43.9gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)14.7gに加えて撹拌しポリイミド樹脂組成物のワニスを得た。ワニスの粘度は11mPa・sであった。得られたワニスを用いて、前記(1)に記載の方法で、乾燥後の膜厚が5μmとなるようにインクジェット塗布法により耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。
【0140】
実施例18
実施例17で得られたポリイミド樹脂10g、合成例2で得られたキノンジアジド化合物3g、溶解調整剤としてTrisP−PHBA(本州化学工業(株)製)2g、界面活性剤としてBYK333(ビックケミー(株)製)0.04gをプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)16.8gとジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)50.3gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)16.8gに加えて撹拌しポジ型感光性を付与したポリイミド組成物のワニスを得た。ワニスの粘度は11mPa・sであった。得られたワニスを用いて、前記(1)に記載の方法で、乾燥後の膜厚が5μmとなるようにインクジェット塗布法により耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。
【0141】
実施例19
乾燥窒素気流下、BAHF18.3g(0.05モル)をNMP50g、グリシジルメチルエーテル26.4g(0.3モル)に溶解させ、溶液の温度を−15℃まで冷却した。ここにジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリド(日本農薬(株)製)7.4g(0.025モル)とイソフタル酸クロリド(東京化成(株)製)5.1g(0.025モル)をγ−ブチロラクトン25gに溶解させた溶液を内部の温度が0℃を越えないように滴下した。滴下終了後、−15℃で6時間撹拌を続けた。反応終了後、メタノールを10重量%含んだ水3Lに溶液を投入して白色の沈殿を集めた。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、50℃の真空乾燥機で72時間乾燥し、ポリベンゾオキサゾール前駆体を得た。
【0142】
このポリベンゾオキサゾール前駆体10.0g、界面活性剤としてBYK333(ビックケミー(株)製)0.04gをプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)14.7gとジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)43.9gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)14.7gに加えて撹拌しポリベンゾオキサゾール前駆体組成物のワニスを得た。ワニスの粘度は11mPa・sであった。得られたワニスを用いて、前記(1)に記載の方法で、乾燥後の膜厚が5μmとなるようにインクジェット法塗布により耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。
【0143】
実施例20
実施例19で得られたポリベンゾオキサゾール前駆体10.0g、界面活性剤としてBYK333(ビックケミー(株)製)0.04gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点146℃)14.7gとジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)43.9gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)14.7gに加えて撹拌しポリベンゾオキサゾール前駆体組成物のワニスを得た。ワニスの粘度は11mPa・sであった。得られたワニスを用いて、前記(1)に記載の方法で、乾燥後の膜厚が5μmとなるようにインクジェット塗布法により耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。
【0144】
実施例21
実施例19で得られたポリベンゾオキサゾール前駆体10gに合成例2で得られたキノンジアジド化合物3g、溶解調整剤としてTrisP−PHBA(本州化学工業(株)製)2g、界面活性剤としてBYK333(ビックケミー(株)製)0.04gをプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)16.8gとジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)50.3gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)16.8gに加えて撹拌しポジ型感光性を付与したポリベンゾオキサゾール前駆体組成物のワニスを得た。ワニスの粘度は11mPa・sであった。得られたワニスを用いて、前記(1)に記載の方法で、乾燥後の膜厚が5μmとなるようにインクジェット塗布法により耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。
【0145】
実施例22
実施例17で得られたポリイミド樹脂10g、合成例3で得られたアルコキシメチル基含有化合物(A−1)2.4g、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学工業(株)製、NKエステルBPE−100)2g、トリメチロールプロパントリアクリレート0.5g、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.1g、界面活性剤としてBYK333(ビックケミー(株)製)0.04gをプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)16.8gとジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)50.3gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)16.8gに加えて撹拌しネガ型感光性を付与したポリイミド樹脂組成物のワニスを得た。ワニスの粘度は11mPa・sであった。得られたワニスを用いて、前記(1)に記載の方法で、乾燥後の膜厚が5μmとなるようにインクジェット塗布法により耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。
【0146】
実施例23
実施例19で得られたポリベンゾオキサゾール前駆体10g、WPAG−314(商品名、和光純薬工業(株)製)0.5g、熱酸発生剤として5−プロピルスルホニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−メチルフェニル−アセトニトリル(商品名PAG−103、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)0.5g、MW−30HM(商品名、三和ケミカル(株)製)4g、界面活性剤としてBYK333(ビックケミー(株)製)0.04gをプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)16.8gとジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)50.3gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)16.8gに加えて撹拌しネガ型感光性を付与したポリベンゾオキサゾール前駆体樹脂組成物のワニスを得た。ワニスの粘度は11mPa・sであった。得られたワニスを用いて、前記(1)に記載の方法で、乾燥後の膜厚が5μmとなるようにインクジェット塗布法により耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。
【0147】
実施例24
溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)38.0gとジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)114.0gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)38.0gに変更した以外は実施例2と同様にして耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。ワニスの粘度は4mPa・sであった。ただし、本実施例24は比較例である。
【0148】
実施例25
溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)23.0gとジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)69.0gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)23.0gに変更した以外は実施例2と同様にして耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。ワニスの粘度は7mPa・sであった。
【0149】
実施例26
溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)12.3gとジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)36.8gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)12.3gに変更した以外は実施例2と同様にして耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。ワニスの粘度は25mPa・sであった。
【0150】
実施例27
溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)8.5gとジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)25.6gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)8.5gに変更した以外は実施例2と同様にして耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。ワニスの粘度は40mPa・sであった。
【0151】
実施例28
溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)7.1gとジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)21.3gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)7.1gに変更した以外は実施例2と同様にして耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。ワニスの粘度は60mPa・sであった。
【0152】
比較例1
溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)48.5gとジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)16.2gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)16.2gに変更した以外は実施例1と同様にして耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。ワニスの粘度は11mPa・sであった。
【0153】
比較例2
比較例1のワニスを用いて、乾燥後の膜厚が5μmとなるようにインクジェット塗布法により耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。
【0154】
比較例3
比較例1のワニスを用いて、乾燥後の膜厚が7μmとなるようにインクジェット塗布法により耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。
【0155】
比較例4
溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)40.5gとジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)24.3gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)16.2gに変更した以外は実施例2と同様にして耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。ワニスの粘度は11mPa・sであった。
【0156】
比較例5
溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)2.5gとジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)62.3gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)16.2gに変更した以外は実施例2と同様にして耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。ワニスの粘度は11mPa・sであった。
【0157】
比較例6
溶媒をジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)40.5gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)40.5gに変更した以外は実施例2と同様にして耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。ワニスの粘度は11mPa・sであった。
【0158】
比較例7
溶媒をジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点176℃)48.5gとγ−ブチロラクトン(沸点203℃)16.2gとメチルエチルケトン(沸点80℃)16.2gに変更した以外は実施例2と同様にして耐熱性樹脂膜の作製および減圧乾燥性の評価を実施した。ワニスの粘度は11mPa・sであった。
【0159】
実施例1〜28および比較例1〜7の組成を表1〜3に、評価結果を表4〜5に示す。
【0160】
【表1】
【0161】
【表2】
【0162】
【表3】
【0163】
【表4】
【0164】
【表5】
【符号の説明】
【0165】
1 ノズル
2 荷電電極
3 偏向電極
4 液滴
5 インクタンク
6 基板
7 ステージ
8 超音波振動子
9 モーター
10 パーソナルコンピューター
11 ガター(インク回収板)
12 ポンプ
図1