特許第6286871号(P6286871)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6286871-ポリイミド多孔質膜 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286871
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】ポリイミド多孔質膜
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/28 20060101AFI20180226BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20180226BHJP
   B32B 5/32 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   C08J9/28CFG
   C08G73/10
   B32B5/32
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-113472(P2013-113472)
(22)【出願日】2013年5月29日
(65)【公開番号】特開2014-231571(P2014-231571A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2016年3月31日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(72)【発明者】
【氏名】番場 啓太
(72)【発明者】
【氏名】藤井 有一
(72)【発明者】
【氏名】大矢 修生
【審査官】 清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−251232(JP,A)
【文献】 特開平08−052332(JP,A)
【文献】 特開平11−021350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00−9/42
B01D 71/64
C08G 73/10−73/16
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面(a)及び表面(b)を有し、表面(a)側と表面(b)側とでポリイミド組成が異なる2つの層から成るポリイミド多孔質膜であって、
前記ポリイミド多孔質膜の表面(a)側及び/又は前記ポリイミド多孔質膜の表面(b)側のポリイミドを構成する酸無水物成分又はジアミン成分のいずれかに、フッ素含有モノマーを含み、
前記酸無水物成分又はジアミン成分のフッ素含有モノマーが、フッ素含有モノマーを含む層の全酸無水物成分又は全ジアミン成分に対して、10モル%以上40モル%以下であり、
ガーレー値が30秒以下であることを特徴とするポリイミド多孔質膜。
【請求項2】
前記ポリイミド多孔質膜が、ビフェニルテトラカルボン酸成分を含むテトラカルボン酸成分と、芳香族ジアミン成分を含むジアミン成分とから得られる芳香族ポリイミドであることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド多孔質膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド多孔質膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド多孔質膜は、電池用セパレータや電解コンデンサ用隔膜用、集塵、精密濾過、分離、物質充填支持体などに用いられている。例えば、特許文献1には、膜平面方向のボイド径が10〜500μmのマクロボイドを有する多孔膜ポリイミドが開示されている。しかしながら、さらに気体などの物質透過性に優れ、充填量が大きく且つ防水性、防汚性に優れる膜を得るために、フッ素系モノマーを含有するポリイミド多孔質膜が求められることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−219586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来のポリイミド多孔質膜よりも気体などの物質透過性に優れ、空孔率の高い、相対的に強度が高く、高空孔率にもかかわらず膜厚み方向への圧縮応力に対する耐力に優れ、且つ、表面(a)側と表面(b)側の厚み方向に対する膜構造が非対称であり、防水性、防汚性に優れるポリイミド多孔質膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の特徴を有するポリイミド多孔質膜を提供するものである。
【0006】
[1]表面(a)及び表面(b)を有し、表面(a)側と表面(b)側とでポリイミド組成が異なる2つの層から成るポリイミド多孔質膜であり、前記ポリイミド多孔質膜の表面(a)側及び/又は前記ポリイミド多孔質膜の表面(b)側のポリイミドを構成する酸無水物成分又はジアミン成分のいずれかに、フッ素含有モノマーを含み、前記酸無水物成分又はジアミン成分のフッ素含有モノマーが、全酸無水物成分又は全ジアミン成分に対して、10モル%以上40モル%以下であることを特徴とするポリイミド多孔質膜。
【0007】
[2]前記ポリイミド多孔質膜が、ビフェニルテトラカルボン酸成分を含むテトラカルボン酸成分と、芳香族ジアミン成分を含むジアミン成分とから得られる芳香族ポリイミドであることを特徴とする[1]に記載のポリイミド多孔質膜。
【0008】
[3]前記ポリイミド多孔質膜の空孔率が40%以上であることを特徴とする請求項[1]又は請求項[2]に記載のポリイミド多孔質膜。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリイミド多孔質膜は、表面(a)側と表面(b)側のポリイミド組成が異なることから、膜の断面構造は大部分が厚み方向に対して非対称構造であり、各種平膜材料として使う場合に非常に利用しやすく、大きな空孔率を得ることができ、例えば絶縁基板として用いると誘電率を低くすることができ、両表面及び支持層ともに、一方の表面から他方の表面に至る連通孔を有するために、物質の充填や移動が容易であり、マクロボイドを有するために物質の充填量を大きくすることができる。特に、表面層の片側が微細な多孔層であり、もう片側の表面層の孔径が大きく、ボイド径に近いため、充填量が大きく且つ充填を容易にすることができ、かさ密度に比して相対的に強度が高く、高空孔率にもかかわらず膜厚み方向への圧縮応力に対して耐力があり寸法安定性が高く、250℃、15分、0.5MPaの圧縮応力負荷後の膜厚み変化率が小さい、などの優れた効果を有する。またポリイミド組成にフッ素系モノマーを用いることにより、防水性、防汚性に優れた膜を提供でき、さらにフッ素系モノマーの含有量を適切に調整する事によって、ポリイミドの界面で多孔膜が剥離する事のないポリイミド多孔質膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明のポリイミド多孔質膜の好ましい一実施態様の側面方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の高分子の多孔質膜の好ましい実施態様について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明のポリイミド多孔質膜の好ましい一実施態様の側面方向の断面図である。
【0012】
図1に示すように、本発明のポリイミド多孔質膜1は、2つの表面(a)及び表面(b)と、表面(a)側と表面(b)側とでポリイミド組成が異なる2つの層2、3から成るポリイミド多孔質膜である。
【0013】
本発明のポリイミド多孔質膜1の厚さは5〜500μmであり、力学強度の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、更に好ましくは25μm以上であり、好ましくは300μm以下、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは50μm以下である。
【0014】
表面(a)側のポリイミド層2、表面(b)側のポリイミド層3の厚み構成は、非対称膜を製造する目的により適宜選択すれば良く、表面(a)側のポリイミド層2の構成に対して、表面(b)側のポリイミド層3が厚くても良く、表面(b)側のポリイミド層3の構成に対して、表面(a)側のポリイミド層2が厚くても良く、表面(a)側と表面(b)側のポリイミド層2、3の構成が同じ厚みでも良い。
【0015】
表面(a)側のポリイミド層2と表面(b)側のポリイミド層3のポリイミド組成の組合せを変えることとによって、例えば、表面(a)側と表面(b)側の孔径の倍率が大きくなる膜や、片側の表面に熱融着多孔層を有する膜などを製造することが可能となる。
【0016】
本発明のポリイミド多孔質膜のポリイミドは、好ましくはテトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリイミドからなる。
【0017】
前記ポリイミド多孔質膜の表面(a)側及び/又は前記ポリイミド多孔質膜の表面(b)側のポリイミドを構成する酸無水物成分又はジアミン成分は、酸無水物成分又はジアミン成分のいずれかにフッ素含有モノマーを含む。
【0018】
酸無水物成分にフッ素含有モノマーを含有している場合、全酸無水物成分のフッ素含有モノマーの含有量は全酸無水物成分に対して、10モル%以上40モル%以下であり、好ましくは15モル%以上40モル%以下である。
また、ジアミン成分にフッ素含有モノマーを含有している場合、全ジアミン成分のフッ素含有モノマーの含有量は全ジアミン成分に対して、10モル%以上40モル%以下であり、好ましくは15モル%以上40モル%以下である。
フッ素含有モノマーの含有量が多いと、表面(a)側と表面(b)側のポリイミド層2、3の界面の剥離強度が低下するため好ましくない。フッ素含有モノマーの含有量が少ないと、防水性、防汚性の性能が低下するため好ましくない。
【0019】
本発明の前記全酸無水物成分とは、表面(a)側のポリイミド層2又は表面(b)側のポリイミド層3を構成するポリイミド成分の各層における全酸無水成分であり、ポリイミド層2、3の酸無水物成分を合算したものではない。前記全ジアミン成分とは、表面(a)側のポリイミド層2又は表面(b)側のポリイミド層3を構成するポリイミド成分の各層における全ジアミン成分であり、ポリイミド層2、3のジアミン成分を合算したものではない。
【0020】
酸二無水物のフッ素含有モノマーは、任意のフッ素含有テトラカルボン酸二無水物を用いることができ、所望の特性などに応じて適宜選択することができる。フッ素含有テトラカルボン酸二無水物の具体例として、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物を挙げることができる。
【0021】
フッ素成分を含有しない酸無水物は、任意のテトラカルボン酸二無水物を用いることができ、所望の特性などに応じて適宜選択することができる。テトラカルボン酸二無水物の具体例として、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)などのビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、m−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2−ビス〔(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。また、2,3,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸等の芳香族テトラカルボン酸を用いることも好ましい。これらは単独でも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0022】
これらの中でも、特に、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を好適に用いることができる。
ジアミンのフッ素含有モノマーは、任意のフッ素含有ジアミンを用いることができ、所望の特性などに応じて適宜選択することができる。フッ素含有ジアミンの具体例として、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2−ビス(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)−4−トリフルオロメチルベンゼン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンを挙げることができる。
【0023】
フッ素成分を含有しないジアミンは、任意のジアミンを用いることができ、所望の特性などに応じて適宜選択することができる。ジアミンの具体例として、1)1,4−ジアミノベンゼン(パラフェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエンなどのベンゼン核1つのべンゼンジアミン、2)4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、2,2’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシドなどのベンゼン核2つのジアミン、3)1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−ジアミノ−4−(4−フェニル)フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジ(4−フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(3−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼンなどのベンゼン核3つのジアミン、4)3,3’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパンなどのベンゼン核4つのジアミン。これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。用いるジアミンは、所望の特性などに応じて適宜選択することができる。
【0024】
これらの中でも、芳香族ジアミン化合物が好ましく、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及びパラフェニレンジアミン、1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを好適に用いることができる。特に、ベンゼンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル及びビス(アミノフェノキシ)フェニルからなる群から選ばれる少なくとも一種のジアミンが好ましい。
【0025】
フッ素含有モノマーは、重合時の取扱い易さの観点から酸無水物成分側に加えることが好ましく、工業的な入手のし易さの観点から、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物が好ましい。
本発明のポリイミド多孔質膜は、表面(a)側のポリイミド層2と表面(b)側のポリイミド層3を異なる組成の組合せにすることによって、厚み方向に対して非対称なポリイミド多孔質膜を製造することが可能となる。
【0026】
本発明のポリイミド多孔質膜の内部構造は、気体透過性の観点から内部にマクロボイド構造を有することが好ましい。
マクロボイド構造は、表面(a)層及び表面(b)層の間に挟まれたマクロボイド層を有する三層構造の膜である。表面(a)層及び表面(b)層は、マクロボイド構造のポリイミド多孔質膜の表面(a)及び表面(b)を有する層である。
マクロボイド層は、複数のマクロボイドと、マクロボイド同士を隔てる隔壁とを有する。マクロボイドは、隔壁並びに表面(a)層及び表面(b)層によって囲まれた空間である。マクロボイド層を膜平面方向に対して平行に切断したときの断面は、ハニカム構造またはそれに類似する構造であり、所定のボイド径を有する複数のマクロボイドが隔壁を挟んで密接して存在している。すなわち、本発明のポリイミド多孔質膜は、いわゆる「ハニカムサンドウィッチ構造」を有する。なお、本明細書における「ハニカム構造」とは、個々に区分された多数の空間部が密集している構造を意味するにすぎず、前記空間部が正確に断面六角形になった構造のみを意味するものではない。マクロボイドにより、本発明のポリイミド多孔質膜は大きな空間を有し、空孔率が高い。そのため、例えば絶縁基板として用いた場合には誘電率を低くすることができ、また、物質をボイド中に充填する場合にはその充填量を大きくすることができる。
【0027】
マクロボイドの膜平面方向のボイド径は、隔壁により表面(a)層及び表面(b)層を十分に支持することができ、物質透過性を阻害しなければよく、10〜300μmであり、好ましくは10〜200μm、より好ましくは10〜100μmである。ボイド径が大きすぎると表面(a)層をフィルタリング機能膜として用いる際の支持体として不足するため好ましくない。またボイド径が小さすぎると、物質透過性が低下するため好ましくない。
【0028】
表面(a)層及び表面(b)層の厚さはそれぞれ、0.1〜50μmであり、ポリイミド多孔質膜の強度の観点から、好ましくは0.5〜10μm、より好ましくは1〜9μm、更に好ましくは2〜8μm、特に好ましくは2〜7μmである。高分子の多孔質膜を各種平膜材料として使う観点からは、表面(a)層及び表面(b)層の厚さは略同一であることが好ましい。
【0029】
表面(a)層は、複数の細孔を有する。細孔の平均孔径は0.01〜10μmであり、好ましくは0.1〜5μm、より好ましくは1〜5μmである。表面(b)層は、複数の細孔を有する。細孔の平均孔径は5〜200μmであり、好ましくは5〜150μm、より好ましくは5〜100μmである。当該細孔同士は互いに連通し、更にマクロボイドに連通している。
【0030】
また、通気性の観点から、本発明のポリイミド多孔質膜のガーレー値(0.879g/m2の圧力下で100ccの空気が膜を透過するのに要する秒数)は、好ましくは30秒以下、より好ましくは25秒以下、更に好ましくは2秒以下であり、下限値は特に限定されないが、好ましくは測定限界以上である。ガーレー値は、JIS P8117に準拠して測定することができる。本発明のポリイミド多孔質膜は、通気性が非常に優れる。
【0031】
物質透過性の観点から、本発明のポリイミド多孔質膜を膜平面方向に対して垂直に切断した断面において、マクロボイドの断面積は、膜断面積に対して好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上である。
本発明のポリイミドの多孔質膜は、耐熱性、高温下での寸法安定性の観点から、ガラス転移温度が、240℃以上であるか、又は300℃以上で明確な転移点がないことが好ましい。
ポリイミドの多孔質膜は、耐熱性、高温下での寸法安定性の観点から、ガラス転移温度が240℃以上であるか、又は300℃以上で明確な転移点がないテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを組み合わせて得られるポリイミドから形成されていることが好ましい。
【0032】
本発明のポリイミド多孔質膜の空孔率は40%以上95%未満であり、物質透過性、力学強度、及び膜の構造保持性の観点から、好ましくは50〜90%、より好ましくは60〜90%の範囲である。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(ポリイミド多孔質膜の評価)
1)膜厚
膜厚みの測定は、接触式の厚み計で行った。
2)気体透過性
ガーレー値(0.879g/m2の圧力下で100ccの空気が膜を透過するのに要する秒数)の測定は、JIS P8117に準拠して行った。
3)界面の剥離性評価
3−1)前処理
ポリイミド膜を室温のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中で72時間浸漬した。
3−2)剥離性評価
3−1の前処理を施したポリイミド多孔質膜の両表面(a)層及び表面(b)層へ、ステンレス基板との90°ピール強度が0.33kgf/cmのセロハンテープを貼り付けた。指の腹でテープ表面をよく押してから、テープを剥離して、表面(a)側と表面(b)側のポリイミド界面の剥離性評価を行った。
【0034】
製造例1
(ポリアミック酸溶液(A)の調製)
500mlのセパラブルフラスコに、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶媒として用いて、酸無水物をジアミンのモル比が1:1で、ポリマー濃度が8質量%になるように、ジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)を測り取って投入した。次に、ジアミンに対する酸無水物のモル比が約1:1となるように、酸無水物として4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)を測り取って投入した。その後、撹拌羽、窒素導入管、排気管を取り付けたセパラブルカバーで蓋をし、撹拌を開始した。溶液粘度が任意の粘度となるまで、適宜6FDAを測りとって投入した。粘度が安定したところで安息香酸をポリアミック酸100質量部に対して30質量部の量を計り取って投入して撹拌操作を継続した。30時間後に撹拌を終了し、フラスコ内のドープを加圧ろ過器(濾紙:アドバンテック東洋(株)製:粘稠液用濾紙No.60)でろ過して、ポリアミック酸溶液(A)を得た。
【0035】
製造例2
(ポリアミック酸溶液(B)の調製)
500mlのセパラブルフラスコに、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶媒として用いて、酸無水物をジアミンのモル比が1:1で、ポリマー濃度が8質量%になるように、ジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)を測り取って投入した。次に、ジアミンに対する酸無水物のモル比が約1:1となるように、酸無水物として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)を測り取って投入した。その後、撹拌羽、窒素導入管、排気管を取り付けたセパラブルカバーで蓋をし、撹拌を開始した。溶液粘度が任意の粘度となるまで、適宜s−BPDAを測りとって投入した。粘度が安定したところで安息香酸をポリアミック酸100質量部に対して30質量部の量を計り取って投入して撹拌操作を継続した。30時間後に撹拌を終了し、フラスコ内のドープを加圧ろ過器(濾紙:アドバンテック東洋(株)製:粘稠液用濾紙No.60)でろ過して、ポリアミック酸溶液(B)を得た。
【0036】
製造例3
(ポリアミック酸溶液(C)の調製)
500mlのセパラブルフラスコに、NMPを溶媒として用いて、酸無水物をジアミンのモル比が1:1で、ポリマー濃度が8質量%になり、ジアミンとしてモル比が1:1となるようにODAと1、3ビス(−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)を測り取って投入した。次に、ジアミンに対する酸無水物のモル比が約1:1となるように、酸無水物としてs−BPDAを測り取って投入した。その後、撹拌羽、窒素導入管、排気管を取り付けたセパラブルカバーで蓋をし、撹拌を開始した。溶液粘度が任意の粘度となるまで、適宜s−BPDAを測りとって投入した。粘度が安定したところで安息香酸をポリアミック酸100質量部に対して30質量部の量を計り取って投入して撹拌操作を継続した。30時間後に撹拌を終了し、フラスコ内のドープを加圧ろ過器(濾紙:アドバンテック東洋(株)製:粘稠液用濾紙No.60)でろ過して、ポリアミック酸溶液(C)を得た。
【0037】
実施例1
500mlのセパラブルフラスコに、製造例1で得たポリマー溶液(A)と製造例2で得たポリマー溶液(B)を重量比が1:9となるように測り取って投入した。その後、撹拌羽、窒素導入管、排気管を取り付けたセパラブルカバーで蓋をし、撹拌を開始した。30時間後に撹拌を終了し、フッ素含有ポリマー調整液を得た。表面に鏡面研磨を施したステンレス製の20cm角の基板上に、製造例3で調製したポリマー溶液(C)を厚さ約100μmで、均一に流延塗布した。次に、流延塗布されたポリマー溶液(C)上に、前記で得たフッ素含有ポリマー調整液を厚さ約50μmで均一に流延塗布した。次に凝固浴(水87質量部/NMP13質量部、室温)中に基板全体を投入した。投入後、8分間静置し、基板上にポリアミック酸膜を析出させた。その後、基板を浴中から取りだし、基板上に析出したポリアミック酸膜を剥離した後に、純水中に3分間浸漬し、ポリアミック酸膜を得た。このポリアミック酸膜を温度23℃、湿度40%の大気中で乾燥させた後、10cm角のピンテンターに張りつけて電気炉内にセットした。約10℃/分の昇温速度で150℃まで加熱し、その後20℃/分の昇温速度で380℃まで加熱し、そのまま3分間保持する温度プロファイルで熱処理を行い、ポリイミド多孔質膜1を得た。
【0038】
実施例2
500mlのセパラブルフラスコに、製造例1で得たポリマー溶液(A)と製造例2で得たポリマー溶液(B)を重量比が2:8となるように測り取って投入した以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド多孔質膜2を得た。
【0039】
実施例3
500mlのセパラブルフラスコに、製造例1で得たポリマー溶液(A)と製造例2で得たポリマー溶液(B)を重量比が3:7となるように測り取って投入した以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド多孔質膜3を得た。
【0040】
実施例4
500mlのセパラブルフラスコに、製造例1で得たポリマー溶液(A)と製造例2で得たポリマー溶液(B)を重量比が4:6となるように測り取って投入した以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド多孔質膜4を得た。
【0041】
比較例1
500mlのセパラブルフラスコに、製造例1で得たポリマー溶液(A)と製造例2で得たポリマー溶液(B)を重量比が5:5となるように測り取って投入した以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド多孔質膜6を得た。
【0042】
比較例2
500mlのセパラブルフラスコに、製造例1で得たポリマー溶液(A)と製造例2で得たポリマー溶液(B)を重量比が8:2となるように測り取って投入した以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド多孔質膜7を得た。
【0043】
実施例1〜4から比較例1〜2で得たポリイミド多孔質膜の全酸無水物成分に対するフッ素含有モノマーモル濃度、膜厚、ガーレ値、剥離評価結果を表1に示す。比較例2は、凝固浴(水87質量部/NMP13質量部、室温)中に基板全体を投入後に、表面(a)側と表面(b)側のポリイミド界面で剥離したため、表面(a)側と表面(b)側のポリイミド層が一体となったポリイミド多孔質膜が得られず、膜厚、ガーレ値、剥離評価を行う事が出来なかった。
【0044】
実施例1〜4の剥離評価は、表面(a)側と表面(b)側のポリイミド界面で剥離することなく良好であった。比較例1の剥離評価は、表面(a)側と表面(b)側のポリイミド界面で剥離した。
【0045】
【表1】
【符号の説明】
【0046】
1 ポリイミド多孔質膜
2 表面(a)側のポリイミド層
3 表面(b)側のポリイミド層
(a) 表面(a)
(b) 表面(b)
図1