(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
作用について説明する。本発明は、一方の軸筒と他方の軸筒とを連結してなり、弾性部材を配設してなる軸筒であって、前記一方の軸筒の後端部と前記他方の軸筒に形成した段部との間に前記弾性部材を
、前記一方の軸筒の後端部と前記他方の軸筒に形成した段部とに当接した状態で配設し、前記弾性部材に
撓み変形部を形成すると共に、その
撓み変形部が入り込むことが可能な空間を前記弾性部材と前記他方の軸筒との間に設け
、更に、前記撓み変形部の変形量の体積に対して、前記空間の容積を1.1倍〜2倍の間に設定している。
その為、一方の軸筒と他方の軸筒を連結する際に、弾性部材に形成された
撓み変形部が前記弾性部材と前記他方の軸筒の間に設けられた空間に向けて変形する。結果として、弾性部材の軸筒への装着が容易になり、一方の軸筒と他方の軸筒とを確実に連結することができる。
一方の軸筒と他方の軸筒との連結方法としては、螺合や圧入、嵌合など適宜最適な方法を選択することができる。また、弾性部材の例としては、把持部材として先部材と外軸により形成された軸筒への装着や、装飾部材としてクリップと後軸により形成された軸筒への装着などがあげられる。
【0010】
本発明の第1実施例を
図1〜
図9に示し、説明する。尚、以下では、後述の先部材8側を前方と言い、押圧部材34側を後方という。本実施例は、本発明をシャープペンシルに展開した例である。尚、本発明は、シャープペンシルに限らず、ボールペンやマーカーペン、万年筆、筆ペンなど、把持部材を装着してなる種々の筆記具に適用することが出来る。
【0011】
本実施例の軸筒1は、先部材8と、その先部材8の後方に螺合により配置された外軸9(軸筒本体)とから構成されている。軸筒1に形成された縮径部10(把持部材装着部)には把持部材17が装着されている。前記軸筒1の内部には、芯繰り出し機構を有する中軸セット20が配置されており、後述するが、その中軸セット20は前記先部材8と外軸9とで挟みこまれることで、前記軸筒1内に位置決めされている。
【0012】
前記先部材8内部には、スライダー2が前後に摺動可能に配置されている。前記スライダー2本体の前方には洋白製のパイプ3が圧入固定されており、内部には芯保持部材4が圧入固定されている。前記スライダー2の本体部5の後方にスリット6が等間隔に3箇所形成されていることにより、前記3箇所の弾性部7が形成されている。その弾性部7により、前記スライダー2と先部材8内周面との摺動を調整している。尚、前記先部材8の後方内面には、雌螺子部15が形成されており、後述の外軸9の雄螺子部16と螺合可能となっている。
【0013】
前記外軸9の前方には、縮径部10が略筒状に中間から前方にかけてストレートに形成されており、その縮径部10には円筒状の把持部材17が前記縮径部10の後端に形成された段部11に当接した状態で装着されている。また、前記外軸9の縮径部10より前方には、縮径部10よりも外径が小さい最縮径部12が略筒状にストレートに形成され、その更に前方には雄螺子部16が形成されている。前記縮径部10及び最縮径部12はストレートでなく傾斜状にしたテーパにしても構わない。
ここで、前記外軸9の縮径部10には、凹部13(落とし込み部)が形成されている。前記外軸9は成形により形成しているが、その成形時のゲートを前記凹部13に位置させている。前記凹部13を成形時にランナーから製品部を取り除く際のゲート残りより大きくすることで把持部材17を挿入し易くなるよう配慮しているが、必ずしも落とし込み部を設けずとも良い。前記外軸9の後方には、クリップ14が一体に形成されている。
尚、本実施例では、前記外軸9は、アクリロニトリルスチレン(AS)により形成しているが、これに限らず、任意の材料から外軸9を形成することができる。
【0014】
前記把持部材17に関して詳述すると、把持部材17は略筒状に形成され、その全長は前記外軸9における縮径部10及び最縮径部12の長手方向全長よりも長く設定されている。そして、前記把持部材17前方には先部材8と外軸9とを螺合する際に変形する全周凸部18(
撓み変形部)が内径方向に向かって把持部材17の外形状と同等の略円筒状に形成されている。前記把持部材17の全周凸部18
(撓み変形部)における内径は前記外軸9の最縮径部12の外径よりもやや大となるように形成され、全周凸部18
(撓み変形部)が形成されている部分以外の把持部材本体部19における内径は前記外軸9の縮径部10よりもやや大となるように形成されている。また、外軸9と把持部材17の内形状における長手方向の関係性は、全周凸部18
(撓み変形部)を除く把持部材本体部19の全長が外軸9の縮径部10の全長より長く、外軸9の縮径部10及び最縮径部12を合わせた全長よりも短く設定されている。また、把持部材17の全周凸部18
(撓み変形部)の全長は外軸9の最縮径部12の間から始まり、最縮径部12前方よりも長くなるように設定されている(
図8)。
前述したように外軸9と把持部材17を形成することで、把持部材17を外軸9に装着した際、前記外軸9における縮径部10及び最縮径部12、前記把持部材17における把持部材本体部19及び全周凸部18
(撓み変形部)により空間Sが形成される。前記外軸9と把持部材17により形成される空間Sの容積は、前記全周凸部18(
撓み変形部)の変形量の体積と同等以上であれば良いが、把持部材17の形成時のばらつきを考えると、前記容積が前記体積よりも大きい方が望ましい。本実施例では
撓み変形部の変形量の体積に対して、空間Sの容積は1.4倍となるように設定されている。その比率は、望ましくは1.1倍〜2倍の間で設定することが良く、1.1倍以下であると把持部材17の全長のばらつきにより変形量が空間の容積を上回ってしまい、
撓み変形部を挟持してしまい螺合の際に把持部材17の反発による抵抗が生じ螺合し難くなり締め付け不足が発生する恐れがある。また2.0倍以上であると、把持部材17を装着後も余分な空間ができ、使用者が把持した際に把持部材17が内側に撓んでしまい把持感覚が悪いと感じてしまう恐れがある。また本実施例に置ける
撓み変形部の厚みは1.7mmに設定されている。望ましくは、1.0mm〜3.0mmの間が良く、前記範囲内に設定することで螺合の際に良好な変形ができる。尚、本実施例における把持部材17は熱可塑性エラストマーにより形成しているが、シリコーンなどの弾性部材であれば同様の効果を得ることができる。
【0015】
前記中軸セット20は、芯Lを収納する芯タンク21を有し、その芯タンク21の前端には芯Lを把持、解放するためのチャック体22が固定されている。そして、そのチャック体22には、チャック体22の開閉を行うチャックリング23が囲繞した状態で配置されている。更に、前記チャック体22、チャックリング23、並びに、前記芯タンク21の前方を内包するように中子25が配置されている。その中子25の内径部には、内鍔部26が形成されており、この内鍔部26の後端面と前記芯タンク21の前端面との間に弾撥部材28(コイルスプリング)が張設されている。前記中子25の外周部前端は外鍔部27となっており、この外鍔部27の前端面には、前記チャックリング23の外周部前端に形成された鍔部24の後端面が当接する。即ち、中子25は、そのチャックリング23と前記弾撥部材28とにより狭持されている。以上により、中軸セット20が構成される。尚、前記弾撥部材28は、前記中軸セット20が、軸筒1内に配置された際に、チャック体22及び芯タンク21を軸筒1の後方に付勢する。
ここで、中軸セット20の軸筒1内での位置決めに関する構成を記す。前記中子25は、その外鍔部27が前記先部材8の内部に形成された内段部29と外軸9の前端面とによって狭持されており、前記先部材8と外軸9とを螺合することで、前記中子25、ひいては、前記中軸セット20が軸筒1内に位置決めされ、配置される。即ち、前記先部材8の雌螺子部15と外軸9の雄螺子部16とを、先部材8と前記中子25の外鍔部27、そして、その中子25の外鍔部27と外軸9とが当接するまで螺合せしめることで、中軸セット20は軸筒1内に固定される。また、前記中子25の外鍔部27の後端面には、突起30が等間隔に4つ形成されている。これら突起30は、弾性変形が可能な突起30であり、前記先部材8と外軸9との狭持力によって押し潰され、これによって、中軸セット20の長手方向における寸法のばらつきを吸収している。本実施例では、前記中子25の外鍔部27の後端面の突起30が弾性変形するが、その代わりに、その中子25の突起30が外軸9よりも硬く、前記突起30が接触する外軸9の前端面が突起30の形状に変形する構成としても、中軸セット20の長手方向における寸法のばらつきを吸収が可能である。
尚、前記芯タンク21の後端面は、後述の消しゴム受け31の内部に形成された壁部32に当接する。
【0016】
外軸9の後方には、前記芯タンク21に圧入された消しゴム受け31が取り付けられ、前記消しゴム受け31後方には、消しゴム33が装着されており、前記消しゴム33を覆うように押圧部材34が嵌合されている。前記押圧部材34の嵌合は消しゴム受け31の中間部に形成された全周の凸部35に当接することによって完了する。
尚、前記芯タンク21と消しゴム受け31との圧入力は、前記消しゴム受け31と押圧部材34の嵌合力よりも強くなるように設定されている。前述した力の関係性に設定することで使用者が押圧部材34を取り外した際に、消しゴム受け31が芯タンク21から抜けず、良好に消しゴムを使用することができる。
【0017】
次に、芯Lの繰り出しについて説明する。芯Lを繰り出す際には、軸筒1の後端に配置された押圧部材34を押圧する。この押圧動作によって消しゴム受け31が前進すると共に、その前方に配置され、消しゴム受け31の壁部32に当接している芯タンク21が前進し、チャック体22も前進する。このとき芯Lをも前進せしめ、チャックリング23の鍔部24が先部材8の内部に設けられた段部36に当接し、チャック体22が拡開する。そして、チャック体22の拡開後も、チャック体22の前進動作が行われる。ここで押圧部材34の押圧操作を解除すると、芯タンク21とチャック体22が後退し、チャック体22がチャックリング23によって閉鎖せしめられ、再び芯Lを把持する。これで芯Lの繰り出し動作が完了する。
【0018】
ここで、本実施例における、把持部材17の取付構造について詳述する。
前記把持部材17を軸筒1に取り付ける際には、まず、外軸9の前方から縮径部10を覆うように把持部材17を挿入する。把持部材17の挿入は、縮径部10後方に形成された前記段部11と把持部材17の後端面との当接により完了する。この時点で外軸9と把持部材17の間には前述した空間Sが形成されている。さらに、前記外軸9前方に形成された雄螺子部16と前記先部材8の後方内面に形成された雌螺子部15により外軸9と先部材8を螺合し、前記中軸セット20を挟持することで把持部材17の取り付けが完了する。詳しく述べると、前記先部材8を外軸9に螺合をしていく過程(
図8)で、先部材8の後端面は把持部材17の前端面に当接する(
図9)。その段階から螺合を進めると、前記全周凸部18(
撓み変形部)が空間Sに向かって螺合進展方向と同方向に撓み始める。さらに螺合を進め、先部材8内段と外軸9前端面で中軸セット20を挟持した時点で螺合が終了する(
図3、
図4)。このとき前記
撓み変形部は空間Sに向かって撓んでいるが、
撓み変形部の変形量の体積よりも空間Sの容積が大きいことで、先部材8を外軸9に螺合する際の把持部材17からの弾発の抵抗が少ないものとなっている。
【0019】
本実施例にあっては、以上のように、把持部材17を装着する際に把持部材17の前端面に形成された全周凸部18(
撓み変形部)を撓ませることで、先部材8を螺合する際の把持部材17からの弾発の抵抗が少なく、外軸9への把持部材17の装着が容易になり、先部材8を確実に締め付けることができる。
また、先部材8を当接させることで
撓み変形部を撓ませている為、先部材8を外軸9に螺合した際に、先部材8の後端と把持部材17の先端及び把持部材17の後端と外軸9の段部11間に隙間が形成されるのを防止している。
さらに、全周凸部18
(撓み変形部)が内径方向に向かって把持部材17の外形状と同等の略円筒状に形成されていることで、全周凸部18
(撓み変形部)が円環状に略均一に形成され、螺合による全周凸部18(
撓み変形部)の変形がいかなる場所でも同様となり、外観の優れた製品の提供をすることができる。
【0020】
ここで、把持部材17の
撓み変形部の変形例1として、
図10に示す。本変形例では、全周凸部37(
撓み変形部)における変形の支点に半円状の肉抜き部38を構成しているが、その形状に限らず、三角形状に構成しても良い。前記肉抜き部38を構成することで、先部材8を螺合する際に
撓み変形部が変形し易く把持部材17からの弾発の抵抗がより少なくなり、より容易に先部材8の取付けをすることができ、先部材8を確実に締め付けることができる。
尚、
図10では、肉抜き部38が楕円形状に見えるが、これは先部材8の外軸9への取付けが完了し、前記把持部材17の
撓み変形部の変形に伴い、前記肉抜き部38も変形しているためである。変形前の前記肉抜き部38は、前述の通り半円状に形成されている。
【0021】
次に、本発明の第2実施例を
図11〜
図22に示し、説明する。第2実施例は、円錐状の先部材8と横断面が三角筒状の外軸40(軸筒本体)とから軸筒39をなし、その軸筒39の縮径部41に横断面が三角筒状の把持部材47を装着した例である。尚、以下では、第1実施例と同様の構成に関する説明は省略する。
【0022】
本実施例においても、外軸40の前方には縮径部41及び最縮径部42が形成されている。そして、
撓み変形部を有する把持部材47が装着され、先部材8と外軸40の螺合により第1実施例と同一の中軸セット20が挟持されている。
本実施例においては、外軸40の最縮径部42より後方はクリップ14を正面にした際に見える辺が等しい二等辺三角形状にストレートに形成されている。前記縮径部41の各面の後方部には長手方向に向かって縦リブ44が形成され、使用者が把持した際に前記縦リブ44が把持部材47に喰い込むことで、把持部材47の回転や縦ズレを防止している。また、前記縮径部41の後方には、凹部13(落とし込み部)が形成されている。前記外軸40は成形により形成しているが、その成形時のゲートを前記凹部13に位置させている。さらに、縮径部41の中間には窓穴45が二等辺部分の面(二等辺面)に各2つずつ形成されている。前記窓穴45は外軸40の成形の際に、コアピンが射出圧で動かないように固定する固定ピンにより形成されるが、必ずしも窓穴45を設けずとも良い。前記外軸40の縮径部41より更に前方には、縮径部41よりも外径が小さい最縮径部42が略筒状にストレートに形成され、その前方には雄螺子部16が形成されている。前記縮径部41及び最縮径部42はストレートでなく傾斜状にしたテーパにしても構わない。
尚、第1実施例と同様に、外軸40の後方には、芯タンク21に圧入された消しゴム受け31が取り付けられており、その消しゴム受け31の中間部には、押圧部材34が当接する全周の凸部35(第一凸部)が形成されている。本実施例の消しゴム受け31ではさらに、消しゴム受け31の中間部から前端までの間であり、前記第一凸部35より前方に第二凸部46が形成されている。押圧部材34を取り外して消しゴムを使用する際に、第一凸部と全周の第二凸部46が外軸40の内壁に当接することで支点となり芯タンク21の横振れを防止し、良好な消字をすることができる。
【0023】
次に本実施例における把持部材47に関して詳述すると、把持部材47は外軸40と同様に二等辺三角筒状に形成され、全長は前記外軸40における縮径部41及び最縮径部42の長手方向全長よりも長く設定されている。前記把持部材47の二等辺面の外表面には長手方向に向かって縦溝48が2列形成され、さらに後端には全周に渡り横溝49が2列形成されている。前記縦溝48と横溝49を形成することで外軸40に把持部材47を装着する際に、外軸40の二等辺面と把持部材47の二等辺面、把持部材47の前後方向が目視にて容易に判断でき生産率が向上する。そして、前記第1実施例と同様に、前記把持部材47前方には先部材8と外軸40とを螺合する際に変形する全周凸部50(
撓み変形部)が内径方向に向かって形成されており、本実施例ではその全周凸部50
(撓み変形部)の内形状は把持部材47の外形状と異なる略円筒状に形成されている。このように、
撓み変形部を形成することで、
撓み変形部に薄肉部51と厚肉部52が形成される。その薄肉部51と厚肉部52を
図20に図示しているが、図中の破線は、全周凸部50
(撓み変形部)と把持部材本体部53の境界を表す仮想線である。破線部より内径側が、全周凸部50(
撓み変形部)となっている。前記全周凸部50
(撓み変形部)における内径は前記外軸40の最縮径部42の外径よりもやや大となるように形成され、全周凸部50
(撓み変形部)以外の把持部材本体部53における内径は前記外軸40の縮径部41よりもやや大となるように形成されている。また、外軸40と把持部材47内形状における長手方向の関係性は、全周凸部50
(撓み変形部)を除く把持部材本体部53の全長は外軸40の縮径部41全長より長く、外軸40の縮径部41及び最縮径部42を合わせた全長よりも短く設定されている。また、把持部材47の全周凸部50(
撓み変形部)の全長は外軸40の最縮径部42の間から始まり、最縮径部42前方よりも長くなるように設定されている。
前述したように外軸40と把持部材47を形成することで、把持部材47を外軸40に装着した際、前記外軸40における縮径部41及び最縮径部42、前記把持部材47における把持部材本体部53及び全周凸部50
(撓み変形部)により空間Sが形成される。前記外軸40と把持部材47により形成される空間Sの容積は、前記全周凸部50(
撓み変形部)の変形量の体積と同等以上であれば良いが、把持部材47の形成時のばらつきを考えると、前記容積が前記体積よりも大きい方が望ましい。本実施例では
撓み変形部の変形量の体積に対して、空間Sの容積は1.3倍となるように設定されている。また本実施例に置ける
撓み変形部の厚みは1.7mmに設定されている。望ましくは、1.0mm〜3.0mmの間が良く、前記範囲内に設定することで螺合の際に良好な変形ができる。
【0024】
ここで、本実施例における、把持部材47の取付構造について詳述する。
前記把持部材47を軸筒39に取り付ける際には、まず、外軸40の前方から前記縦溝48がクリップ14正面と同面に、前記横溝49が縮径部41の段部43側にくるように把持部材47を挿入する。把持部材47の挿入は、縮径部41後方に形成された前記段部43と把持部材47の後端面との当接により完了する。この時点で外軸40と把持部材47の間には前述した空間Sが形成されている。さらに、前記外軸40前方に形成された雄螺子部16と前記先部材8の後方内面に形成された雌螺子部15により外軸40と先部材8を螺合し、前記中軸セット20を挟持することで把持部材47の取り付けが完了する。詳しく述べると、前記先部材8を外軸40に螺合をしていく過程(
図15)で、先部材8の後端面は把持部材47の前端面に当接する。その段階から螺合を進めると、前記全周凸部50(
撓み変形部)が空間Sに向かって螺合進展方向と同方向に撓み始める。さらに螺合を進め、先部材8内段と外軸40前端面で中軸セット20を挟持した時点で螺合が終了する(
図13、
図14)。このとき前記
撓み変形部は空間Sに向かって撓んでいるが、
撓み変形部の変形量の体積よりも空間Sの容積が大きいことで、先部材8を外軸40に螺合する際の把持部材47からの弾発の抵抗が少ないものとなっている
【0025】
本実施例にあっては、以上のように、把持部材47を装着する際に把持部材47の前端面に形成された全周凸部50(
撓み変形部)を撓ませることで、先部材8を螺合する際の把持部材47からの弾発の抵抗が少なく、外軸40への把持部材47の装着が容易になり、先部材8を確実に締め付けることができる。
また、先部材8を当接させることで
撓み変形部を撓ませている為、先部材8を外軸40に螺合した際に、先部材8後端と把持部材47の先端及び把持部材47後端と外軸40の段部43間に隙間が形成されるのを防止している。
さらに、二等辺三角形である把持部材47の外形状と異なる略円筒状に、全周凸部50
(撓み変形部)が内径方向に向かって形成されていることで、
撓み変形部に薄肉部51と厚肉部52が形成されている。これにより、使用者が先部材8の取り付けを繰り返した際にも、厚肉部52により
撓み変形部の弾性力が保たれ、経時により
撓み変形部がへたることがなく、長期に渡り外観の優れた製品の提供をすることができる。本実施例においては、把持部材47の外形状を二等辺三角形、全周凸部50
(撓み変形部)の内周形状を円筒としたが、把持部材47の外形状と
撓み変形部の内周形状が異なる形状であれば良く、四角形状と六角形状の組み合わせなど、適宜選択することができる。
最後に、本実施例の様に先部材と外軸・把持部材の外観形状が異なる場合は、
撓み変形部を把持部材の先端に内径方向に向かって形成することで、先部材を異形の外軸や把持部材に螺合した際も、先部材の後端と把持部材の前端面との間を埋めることができ、外観のデザインの幅を広げることができる。
【0026】
次に、本発明の第3実施例を
図23〜
図25に示し、説明する。第3実施例は、先部材8と外軸9(軸筒本体)とから軸筒1をなし、
撓み変形部を後端に形成した把持部材54を装着した例である。尚、以下では、第1実施例と同様の構成に関する説明は省略する。
【0027】
本実施例においても、略円筒状の外軸9の前方には縮径部10が形成されている。その縮径部10はストレートに形成され、その前方には雄螺子部16が形成されている。前記縮径部10はストレートでなく傾斜状にしたテーパにしても構わない。さらに、前記縮径部10には円筒状に形成された
撓み変形部を有する把持部材54が前記縮径部10の後端に形成された段部11に当接した状態で装着されている。本実施例にあっても、先部材8と外軸9の螺合により第1、2実施例と同一の中軸セット20が挟持されている。
本実施例における把持部材54は、略筒状に形成され、内径は前記外軸9の縮径部10よりもやや大となるように形成されている。その把持部材54後端の外形部には、先部材8と外軸9とを螺合する際に変形する全周凸部55(
撓み変形部)が長手方向に向かって突出して形成されている。前記
撓み変形部に関してさらに詳述すると、全長は把持部材54の厚みよりもやや短くなるように形成され、外観は後端に向けて縮径するテーパ形状であり、そのテーパ形状の前方部分、即ち、把持部材本体部57側の外径が盛り上がった拡径部56となるように形成されている。前記の様に、拡径部56を形成することで
撓み変形部が変形した際に、外軸9の段部11と把持部材54の後端との間の外径部に隙間ができるのを防止している。ここで、長手方向に突出している前記全周凸部55
(撓み変形部)の後端部は、曲面形状となっており、全周凸部55
(撓み変形部)が先部材8と外軸9の螺合の進展によって力を受けた際に、前記段部11に沿って内径方向に変形するように形成されている。
前述したように外軸9と把持部材54を形成することで、把持部材54を外軸9に装着した際、前記外軸9における縮径部10、前記把持部材54における把持部材本体部57及び全周凸部55
(撓み変形部)により空間Sが形成される。前記外軸9と把持部材54により形成される空間Sの容積は、前記全周凸部55(
撓み変形部)の変形量の体積と同等以上であれば良いが、把持部材54の形成時のばらつきを考えると、前記容積が前期体積よりも大きい方が望ましい。本実施例では全周凸部55
(撓み変形部)の変形量の体積に対して、空間Sの容積は1.2倍となるように設定されている。また本実施例に置ける
撓み変形部の厚みは、拡径部56が0.4mm、
撓み変形部の後端は0.3mmに設定されている。望ましくは0.15mm〜1.0mmの間が良く、前記範囲内に設定することで螺合の際に良好な変形ができる。
【0028】
ここで、本実施例における、把持部材54の取付構造について詳述する。
前記把持部材54を軸筒1に取り付ける際には、まず、外軸9の前方から縮径部10を覆うように把持部材54を挿入する。把持部材54の挿入は、外軸9の縮径部10後方に形成された段部11と把持部材54の後端面との当接により完了する。この時点で外軸9と把持部材54の間には前述した空間Sが形成されている。さらに、前記外軸9の前方に形成された雄螺子部16と前記先部材8の後方内面に形成された雌螺子部15により外軸9と先部材8を螺合し、前記中軸セット20を挟持することで把持部材54の取り付けが完了する。詳しく述べると、前記先部材8を外軸9に螺合をしていく過程で、先部材8の後端面は把持部材54の前端面に当接する(
図25)。その段階から螺合を進めると、前記全周凸部55(
撓み変形部)が空間Sに向かって撓み始める。さらに螺合を進め、先部材8内段と外軸9前端面で中軸セット20を挟持した時点で螺合が終了する(
図23、
図24)。このとき前記撓み変形部は空間Sに向かって撓んでいるが、
撓み変形部の変形量の体積よりも空間Sの容積が大きいことで、先部材8を外軸9に螺合する際の把持部材54からの弾発の抵抗が少ないものとなっている。
【0029】
本実施例にあっては、以上のように、把持部材54を装着する際に後端面に形成された全周凸部55(
撓み変形部)を撓ませることで、先部材8を螺合する際の把持部材54からの弾発の抵抗が少なく、外軸9への把持部材54の装着が容易になり、先部材8を確実に締め付けることができる。
また、先部材8を当接させることで全周凸部55(
撓み変形部)を撓ませている為、先部材8を外軸9に螺合した際に、先部材8後端と把持部材54の先端及び把持部材54後端と外軸9の段部11間に隙間が形成されるのを防止している。
さらに、
撓み変形部を把持部材54の外径部に長手方向に向かって形成することで、把持部材54を装着する際に
撓み変形部の変形を容易に目視することができ、先部材8と外軸9の螺合の完了を
撓み変形部の状態で確認でき、生産の効率が向上する。また、把持部材54の前方部に本実施例の全周凸部55(
撓み変形部)を形成しても良いが、通常把持すると考えられる前方部避け、後方に
撓み変形部を設けることで、使用者は違和感なく把持することが出来る。
【0030】
最後に、本発明の第4実施例を
図26〜
図27に示し、説明する。第4実施例は、先部材8と外軸9(軸筒本体)とから軸筒1をなし、内周面に切り欠き部61を形成した把持部材59を装着した例である。尚、以下では、第1実施例と同様の構成に関する説明は省略する。
【0031】
本実施例においても、略円筒状の外軸9の前方には縮径部10が形成されている。その縮径部10はストレートに形成され、その前方には雄螺子部16が形成され、後端には傾斜面58が縮径部10から鋭角に立ち上がる様に形成されている。前記縮径部10はストレートでなく傾斜状にしたテーパにしても構わない。また、縮径部10の後端の傾斜面58は必ずしも設けずとも良く、垂直面、曲面等、適宜選択することができる。前記縮径部10には、
撓み変形部を有する把持部材59が装着され、先部材8と外軸9の螺合により第1、2実施例と同一の中軸セット20が挟持されている。
本実施例における把持部材59は、略筒状に形成され、後端には外軸9の縮径部10に形成された傾斜面58と係合する傾斜面60が形成されている。内径は前記外軸9の縮径部10の外径よりもやや大となるように形成されている。その把持部材59の中間部の内周面には切り欠き部61が径方向の全周にわたって形成されており、その切り欠き部61の壁部62(
撓み変形部)が先部材8と外軸9とを螺合する際に変形する。前記切り欠き部61の壁部62
(撓み変形部)に関してさらに詳述すると、その壁部62
(撓み変形部)の縦断面形状は頂点を円弧状とする山状に形成されている。
前述したように外軸9と把持部材59を形成することで、把持部材59を外軸9に装着した際、前記外軸9における縮径部10、前記把持部材59における切り欠き部61の壁部62
(撓み変形部)により空間Sが形成される。
【0032】
ここで、本実施例における、把持部材59の取付構造について詳述する。
前記把持部材59を軸筒1に取り付ける際には、まず、外軸9の前方から縮径部10を覆うように把持部材59を挿入する。把持部材59の挿入は、縮径部10後方に形成された前記傾斜面58と把持部材59の後端の傾斜面60との当接により完了する。この時点で外軸9と把持部材59の間には前述した空間Sが形成されている(
図28)。さらに、前記外軸9前方に形成された雄螺子部16と前記先部材8の後方内面に形成された雌螺子部15により外軸9と先部材8を螺合し、前記中軸セット20を挟持することで把持部材59の取付けが完了する。詳しく述べると、前記先部材8を外軸9に螺合をしていく過程で、先部材8の後端面は把持部材59の前端面に当接する。その段階から螺合を進めると、前記切り欠き部61の壁部62
(撓み変形部)の頂点が支点となり、前記壁部62
(撓み変形部)が前記空間Sに入り込むように変形し把持部材59の全体が内径方向に向けて撓み始める。外軸9の縮径部10と把持部材59に係合する傾斜面を形成したことで、把持部材59が縮径部10に向けて撓むように促し、螺合の際の良好な変形を補助している。さらに螺合を進め、先部材8内段と外軸9前端面で中軸セット20を挟持した時点で螺合が終了する(
図26、
図27)。このとき前記
撓み変形部を支点に空間Sを埋めるように把持部材59全体が撓んでいるが、螺合完了時にも空間Sを残すことで、先部材8を外軸9に螺合する際の把持部材59からの弾発の抵抗が少ないものとなっている。
【0033】
本実施例にあっては、以上のように、把持部材59を装着する際に把持部材59の中間部に形成された切り欠き部61の壁部62(
撓み変形部)を撓ませることで、先部材8を螺合する際の把持部材59からの弾発の抵抗が少なく、軸筒1への把持部材59の装着が容易になり、先部材8を確実に締め付けることができる。
また、先部材8を当接させることで切り欠き部61の壁部62(
撓み変形部)を撓ませている為、先部材8を外軸9に螺合した際に、先部材8の後端と把持部材59の先端及び把持部材59の後端と外軸9の段部11間に隙間が形成されるのを防止している。
さらに、
撓み変形部を切り欠き部61の壁部62
(撓み変形部)として設けることで把持部材59を単純な筒状に形成することができるため成形性が良く生産の効率が向上する。