特許第6286906号(P6286906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブリヂストンスポーツ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6286906-アイアン型ゴルフクラブヘッド 図000003
  • 特許6286906-アイアン型ゴルフクラブヘッド 図000004
  • 特許6286906-アイアン型ゴルフクラブヘッド 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286906
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】アイアン型ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20180226BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20180226BHJP
【FI】
   A63B53/04 E
   A63B102:32
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-148636(P2013-148636)
(22)【出願日】2013年7月17日
(65)【公開番号】特開2015-19746(P2015-19746A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】北川 知憲
(72)【発明者】
【氏名】和田 梢
【審査官】 藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第07022028(US,B1)
【文献】 特開2003−310809(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0166758(US,A1)
【文献】 特開2008−272241(JP,A)
【文献】 特開2010−017475(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0273570(US,A1)
【文献】 米国特許第05437456(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00−53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェース部、ソール部、ホゼル部、キャビティ部を有するアイアン型ゴルフクラブヘッドにおいて、キャビティ部のフェース面側の内面の下部は、フェース面に向って凹陥する前向き凹所となっており、該キャビティ部のフェース面側の内面の下部とフェース面との交角をθとし、キャビティ部の後面とフェース面との交角をθとし、キャビティ部の底面とフェース面との交角をθとした場合に、θが90°以下で、θ≦θ、θ≦θであることを特徴とするアイアン型ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
請求項1において、前記キャビティ部の底面から前記ソール部の底面であるソール面までの厚さが最も小さい部分のソール厚さが1.5〜5.0mmであることを特徴とするアイアン型ゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記フェース部を構成する材料が、ヤング率70〜230GPaの材料であることを特徴とするアイアン型ゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記キャビティ部の底面は、前記後面に連なり、前記フェース面に向って延在し、該底面は、前方ほど前記ソール部の底面であるソール面に近づくように傾斜していることを特徴とするアイアン型ゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記フェース部の中央部の厚みをtとし、そのトップ側の前記中央部よりも高位の高段部の厚みをtとした場合に、t≧tであることを特徴とするアイアン型ゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記前向き凹所におけるフェース部の厚さが最も小さい部分のフェース部の厚さをtとした場合、t/tが0.5以上、0.9以下であることを特徴とするアイアン型ゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
請求項1ないしのいずれか1項において、前記前向き凹所と前記キャビティ部の底面との交差隅部は凹曲面となっており、アイアン型ゴルフクラブヘッドの前後方向の鉛直断面における該凹曲面の曲率半径が0.5〜3.0mmであることを特徴とするアイアン型ゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイアン型ゴルフクラブヘッドに係り、詳しくは、キャビティ部のフェース面側の内面の下部にフェース面に向って凹陥する前向き凹所を有するアイアン型ゴルフクラブヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アイアン型ゴルフクラブとしては、フェアウェー、ラフ、バンカーなどからのショットや、ショートホール(パー3のホール)のティーショット等に主として用いられるアイアンクラブのほか、アイアンヘッドに近似した形状のヘッドを有したユーティリティクラブが用いられている。
【0003】
アイアンのヘッドとしては、ステンレススチール、炭素鋼、各種合金などでフェース部からホゼル部まで形成したものが広く用いられている。
【0004】
アイアンのヘッドは、ボールをヒットするためのフェース面と、地面に対面するソール面とを有する。ヘッドのヒール側にホゼル部が設けられ、このホゼル部にシャフトが挿入され、接着剤などの固着手段によって固着される。
【0005】
ヘッドのソール側を後方に突出させた形状の張出部を有するアイアン型ゴルフクラブヘッドは、ヘッドの重心が低く、また重心のフェース面からの距離(重心深度)が大きい。このような張出部を有するアイアン型ゴルフクラブヘッドは、非力なプレーヤーに好まれる傾向がある。
【0006】
特許文献1,2には、ソール部上面とフェース部背面との交差隅部に、フェース面側に凹陥した凹所を有するアイアンヘッドが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−62134
【特許文献2】米国特許公開2004/0092331
【特許文献3】特開2006−305170
【特許文献4】特開2009−56060
【特許文献5】特開2009−82291
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のアイアンヘッドは、フェース部背面の中央付近を厚肉部としたものであり、フェース部背面とソール部上面との交差隅部を薄肉とするものではない。特許文献2は、ポリマー材を入れる凹所が設けられている。
【0009】
本発明は、ボールをヒットしたときにフェース部が撓み易く、ボール反発性能に優れると共に生産性に優れたアイアン型ゴルフクラブヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のアイアン型ゴルフクラブヘッドは、フェース部、ソール部、ホゼル部、キャビティ部を有するアイアン型ゴルフクラブヘッドにおいて、キャビティ部のフェース面側の内面の下部は、フェース面に向って凹陥する前向き凹所となっており、該キャビティ部のフェース面側の内面の下部とフェース面との交角をθとし、キャビティ部の後面とフェース面との交角をθとし、キャビティ部の底面とフェース面との交角をθとした場合に、θが90°以下で、θ≦θ、θ≦θであることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の一態様では、前記フェース部中央部の厚みをtとし、そのトップ側の厚みをtとした場合に、t≧tであることが好ましい。
【0012】
前記前向き凹所におけるフェース部の厚さが最も小さい部分のフェース部の厚さをtとした場合、t/tが0.5以上、0.9以下であることが好ましい。
【0013】
前記前向き凹所と前記キャビティ部の底面との交差隅部は凹曲面となっており、アイアン型ゴルフクラブヘッドの前後方向の鉛直断面における該凹曲面の曲率半径が0.5〜3.0mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のアイアン型ゴルフクラブヘッドにおいては、フェース部の背面側にキャビティ部が設けられ、このキャビティ部のフェース面側の内面の下部に、フェース面に向って凹陥する前向き凹所が設けられているので、ボールをヒットしたときのフェース部の撓みが大きく、ボールの初速が大きくなり、飛距離が増大する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態に係るアイアン型ゴルフクラブヘッドの背面図である。
図2図1のII−II線断面図である。
図3図1のII−II線端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜3を参照して実施の形態について説明する。
【0017】
このアイアンヘッド1は、フェース部2と、フェース部2のヒール側に連なるホゼル部3と、フェース部2の下部に連なるソール部4とを有している。ホゼル部3にはシャフトを差し込むためのホゼル穴(図示略)が設けられている。フェース部2の前面がフェース面2fであり、多数のスコアライン(溝、図示略)が設けられている。
【0018】
フェース部2の背面の周縁部のうちトウ側、トップ側及びヒール側は、凸部2aとなっている。フェース部中央付近の背面がバック面2bとなっている。バック面2bの周縁と凸部2aとの間は、バック面2bよりも高位の高段部2cとなっている。この高段部2cにおけるフェース部厚みはフェース部中央部の厚み以上である。ここでフェース部中央部とは、フェース面2fにおける中央部の事である。
【0019】
ソール部4は、アイアンヘッド1のトウ側からヒール側まで延在している。ソール部4の底面がソール面4sである。
【0020】
フェース部の背面側にはキャビティ部が設けられている。キャビティ部はトウ側からヒール側にまで延在しており、ソール部と、凸部2aとによって周囲が囲まれている。
【0021】
キャビティ部の内面のうちフェース部2側の面は、バック面2bに連なり、下方ほどフェース面に近づく前面12からなる。キャビティ部の内面のうち後面13は、ソール部4の上面から立ち下がり、下方ほどフェース面に近づくように傾斜している。キャビティ部の底面14は、該後面13に連なり、フェース面に向って延在している。この底面14は、前方ほどソール面4sに近づくように傾斜している。底面14と前面12との交差隅部は丸みを帯びた凹曲面15となっている。前面12と、それに連なる凹曲面15の前部とによって前向き凹所が構成される。
【0022】
前向き凹所のトウ・ヒール方向の長さは、下限として20mm以上、好ましくは30mm以上である。この長さが20mmよりも小さいと、ボールヒット時にフェース部2が十分に撓まないおそれがある。上限としては、70mm以下、好ましくは60mm以下である。70mmを超えると、ヘッド1の耐久性が低下するおそれがある。
【0023】
前面12は、前述の通り、下方ほどフェース面2fに近接している。図3はフェース面を前方側から見た状態を正面図とした場合における右側側面図である。図3の通り、前面12とフェース面2fとの交角θは下限として、5°以上、好ましくは10°以上である。θが5°よりも小さいと、ボールヒット時にフェース部2が十分に撓まないおそれがある。上限としては、30°以下、好ましくは25°以下である。θが30°よりも大きいと、耐久性が低下するおそれがある。
【0024】
後面13とフェース面2fとの交角θは、θ≦θに設定する。θは上限として、80°以下、好ましくは40°以下である。
底面14とフェース面2fとの交角θは、θ≦θに設定する。θは上限として、90°以下、好ましくは75°以下である。θが90°よりも大きいと、ヘッド1の耐久性が低下するおそれがある。
【0025】
凹曲面15の曲率半径rは0.5〜3.0mm特に0.7〜2.5mmであることが好ましい。rが0.5mmよりも小さいとヘッド1の耐久性が低下するおそれがある。rが3.0mmよりも大きいと、ソール側の肉厚が小さくなりすぎ、耐久性が低下するおそれがある。
【0026】
なお、θ〜θを上記のように設定すると、ヘッド1を鋳造するに際し、キャビティ部を形成するための中子を容易に脱型することができ、生産性に優れる。またキャビティ部の内面のフェース部側の面、底面14、後面13に囲まれたキャビティ部をより大きくする事もでき、ソール部の剛性を下げ、よりフェース部が撓む構造とする事ができる。
【0027】
底面14からソール面までの厚さが最も小さい部分のソール厚さは1.5〜5.0mm、特に2.0〜4.0mm程度が好ましい。
【0028】
フェース部中央部におけるフェース部2の厚さをtとし、高段部2cのトップ側におけるフェース部2の厚さをtとし、前向き凹所においてフェース部2の厚さが最も小さい部分のフェース部2の厚さをtとした場合、t≧tとすることにより、ヘッド上部の剛性を高くし、前向き凹所によるボールヒット時におけるフェース部2の撓み効果を大きくすることができる。
【0029】
また、t/tは下限として0.5以上、好ましくは0.6以上である。t/tが0.5よりも小さいと、ヘッド1の耐久性が低下するおそれがある。上限としては、0.9以下、好ましくは0.8以下である。t/tが0.9よりも大きいと、ボールヒット時にフェース部2が十分に撓まないおそれがある。
【0030】
ヘッド1の材料は、金属材料であれば特に制限はないが、フェース部2を構成する材料は、ステンレス鋼・軟鉄・チタン合金・ソフトステンレスなど、ヤング率70〜230GPaであることが好ましい。このヤング率が70GPaよりも小さいと、フェース部2の耐久性が低下するおそれがあり、230GPaを超えるとボールヒット時におけるフェース部2の撓みが不十分となる場合がある。
【0031】
このように構成されたアイアンヘッド1においては、ゴルフボールをヒットしたときにフェース部2の撓みが大きくなり、ボールの反発性が高くなり、ボールの初速が大きくなり、飛距離が増大する。また、このアイアンヘッド1は鋳造時に中子の脱型を容易に行うことができ、生産性に優れる。
【0032】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態とされてもよい。本発明はアイアンヘッドに近似した外観形状のアイアン型ユーティリティヘッドにも適用することができる。
【実施例】
【0033】
以下の実施例1、比較例1のアイアンヘッドモデルを作成し、同条件にてコンピューターによる打撃シミュレーションを行った。打撃シミュレーションでは、これらのアイアンヘッドモデルをゴルフボールモデルにヘッドスピード40m/sで打撃した。その結果を表1に示す。
【0034】
[実施例1]
図1〜3に示す構成のアイアンヘッドモデル(ロフト角22°の4番アイアン)を作成した。ヘッドモデルのヤング率を210Mpaに設定。t=3.0mm、t=4.0mm、t=2.3mmとした。θは20°。θは20°。θを60°。凹曲面15の曲率半径r=1.0mm、底面からソール面までの厚さが最も小さい部分のソール厚さは2.1mm。
【0035】
[比較例1]
実施例1に対し前向き凹所を無くし、θ=0、t=3.0mmとしたこと以外は、実施例1と同じ構成のヘッドモデルを作成した。
【0036】
【表1】
【0037】
表1の通り、本発明例によるとボール初速が大きくなることが認められた。
【符号の説明】
【0038】
1 アイアンヘッド
2 フェース部
2f フェース面
3 ホゼル部
4 ソール部
5 キャビティ部
12 前面
13 後面
14 底面
15 凹曲面
図1
図2
図3