(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
撮影光学系と;前記撮影光学系により形成された被写体像を電気的な画素信号に変換するイメージセンサと;前記撮影光学系の一部をなすレンズまたは前記イメージセンサを振れ補正部材とし、この振れ補正部材を前記撮影光学系の光軸と直交する平面内で駆動する駆動機構と;を備え、前記駆動機構を介して前記振れ補正部材を光軸直交平面内で駆動することで、被写体光束を前記イメージセンサの検出色の異なる複数の画素に入射させて、光学的なローパスフィルタ効果を得る撮影装置において、
前記駆動機構を介して前記振れ補正部材を光軸直交平面内で駆動するための駆動信号を生成する駆動信号生成部と;
前記撮影装置のボディ本体の異なる複数の姿勢毎に求めた、前記駆動信号の最適振幅を記憶した姿勢-最適振幅データ記憶部と;
前記ボディ本体の姿勢を検出する姿勢検出部と;
前記姿勢検出部が検出した前記ボディ本体の姿勢に応じて、前記姿勢-最適振幅データ記憶部が記憶した該ボディ本体の姿勢に応じた最適振幅を抽出し、抽出した最適振幅の駆動信号を前記駆動信号生成部に生成させ、生成させた最適振幅の駆動信号に基づいて、前記駆動機構を介して前記振れ補正部材を光軸直交平面内で駆動する駆動制御部と;
を備え、
前記姿勢-最適振幅データ記憶部は、前記ボディ本体の異なる複数の姿勢毎に、前記駆動信号の振幅を変化させて光学的なローパスフィルタ効果を変化させながら、前記撮影光学系と前記イメージセンサによってテストチャートを撮影し、テストチャートの各撮影画像に含まれるモアレ成分を色差信号の標準偏差を加算したもの(σcb+σcr)によって定量的に評価することで、変化させた前記駆動信号の振幅の中から前記最適振幅を選択し、姿勢-最適振幅データとして記憶する、
ことを特徴とする撮影装置。
撮影光学系と;前記撮影光学系により形成された被写体像を電気的な画素信号に変換するイメージセンサと;前記撮影光学系の一部をなすレンズまたは前記イメージセンサを振れ補正部材とし、この振れ補正部材を前記撮影光学系の光軸と直交する平面内で駆動する駆動機構と;を備え、前記駆動機構を介して前記振れ補正部材を光軸直交平面内で駆動することで、被写体光束を前記イメージセンサの検出色の異なる複数の画素に入射させて、光学的なローパスフィルタ効果を得る撮影装置の調整制御方法において、
前記撮影装置のボディ本体の異なる複数の姿勢毎に、前記駆動機構を介して前記振れ補正部材を光軸直交平面内で駆動するための駆動信号の最適振幅を記憶する最適振幅記憶ステップと;
前記ボディ本体の姿勢を検出する姿勢検出ステップと;
前記姿勢検出ステップで検出した前記ボディ本体の姿勢に応じて、前記最適振幅記憶ステップで記憶した最適振幅を抽出する最適振幅抽出ステップと;
前記最適振幅抽出ステップで抽出した最適振幅の駆動信号を生成する駆動信号生成ステップと;
前記駆動信号生成ステップで生成した最適振幅の駆動信号に基づいて、前記駆動機構を介して前記振れ補正部材を光軸直交平面内で駆動する駆動制御ステップと;
を備え、
前記最適振幅記憶ステップでは、前記ボディ本体の異なる複数の姿勢毎に、前記駆動信号の振幅を変化させて光学的なローパスフィルタ効果を変化させながら、前記撮影光学系と前記イメージセンサによってテストチャートを撮影し、テストチャートの各撮影画像に含まれるモアレ成分を色差信号の標準偏差を加算したもの(σcb+σcr)によって定量的に評価することで、変化させた前記駆動信号の振幅の中から、前記最適振幅を選択してこれを記憶する、
ことを特徴とする撮影装置の調整制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1ないし
図14を参照して、本発明によるデジタルカメラ(撮影装置)10の一実施形態について説明する。
【0024】
図1に示すように、デジタルカメラ10は、ボディ本体20と、このボディ本体20に着脱可能(レンズ交換可能)な撮影レンズ30とを備えている。撮影レンズ30は、被写体側(
図1中の左側)から像面側(
図1中の右側)に向かって順に、撮影レンズ群(撮影光学系、振れ補正部材)31と、絞り(撮影光学系)32とを備えている。ボディ本体20は、被写体側(
図1中の左側)から像面側(
図1中の右側)に向かって順に、シャッタ(撮影光学系)21と、イメージセンサ(振れ補正部材)22とを備えている。またボディ本体20は、撮影レンズ30への装着状態で絞り32とシャッタ21を駆動制御する絞り/シャッタ駆動回路23を備えている。撮影レンズ群31から入射し、絞り32とシャッタ21を通った被写体光束による被写体像が、イメージセンサ22の受光面上に形成される。イメージセンサ22の受光面上に形成された被写体像は、マトリックス状に配置された多数の画素によって、電気的な画素信号に変換され、画像データとしてDSP40に出力される。DSP40は、イメージセンサ22から入力した画像データに所定の画像処理を施して、これをLCD24に表示し、画像メモリ25に記憶する。なお、
図1では、撮影レンズ群31が単レンズからなるように描いているが、実際の撮影レンズ群31は、例えば、固定レンズ、変倍時に移動する変倍レンズ、フォーカシング時に移動するフォーカシングレンズなどの複数枚のレンズからなる。
【0025】
撮影レンズ30は、撮影レンズ群31の解像力(MTF)情報や絞り32の開口径(絞り値)情報などの各種情報を記憶した通信用メモリ33を搭載している。撮影レンズ30をボディ本体20に装着した状態では、通信用メモリ33が記憶した各種情報がDSP40に読み込まれる。
【0026】
ボディ本体20は、DSP40に接続させて、撮影操作スイッチ26とローパスフィルタ操作スイッチ27を備えている。撮影操作スイッチ26は、電源スイッチやレリーズスイッチなどの各種スイッチからなる。ローパスフィルタ操作スイッチ27は、イメージセンサ22を撮影光学系の光軸Zと直交する平面内(以下、光軸直交平面内と呼ぶことがある)で駆動するローパスフィルタ動作のオンオフの切替え、ローパスフィルタ動作に関する各種設定などを行うためのスイッチである。イメージセンサ22のローパスフィルタ動作については後に詳細に説明する。
【0027】
ボディ本体20は、DSP40に接続させて、ジャイロセンサ28を備えている。ジャイロセンサ28は、ボディ本体20に加わる移動角速度(X軸とY軸周り)を検出することで、該ボディ本体20の光軸直交平面内の振れを示す振れ検出信号を検出する。
【0028】
図1ないし
図3に示すように、イメージセンサ22は、撮影光学系の光軸Zと直交するX軸方向とY軸方向(直交二方向)に移動可能に像振れ補正装置(駆動機構)50に搭載されている。像振れ補正装置50は、ボディ本体20のシャーシなどの構造物に固定される固定支持基板51と、イメージセンサ22を固定した、固定支持基板51に対してスライド可能な可動ステージ52と、固定支持基板51の可動ステージ52との対向面に固定した磁石M1、M2、M3と、固定支持基板51に可動ステージ52を挟んで各磁石M1、M2、M3と対向させて固定した、各磁石M1、M2、M3との間に磁気回路を構成する磁性体からなるヨークY1、Y2、Y3と、可動ステージ52に固定した、前記磁気回路の磁界内において電流を受けることにより駆動力を発生する駆動用コイルC1、C2、C3を有し、駆動用コイルC1、C2、C3に交流駆動信号(交流電圧)を流す(印加する)ことにより、固定支持基板51に対して可動ステージ52(イメージセンサ22)が光軸直交平面内で駆動するようになっている。駆動用コイルC1、C2、C3に流す交流駆動信号は、DSP40による制御の下、後述するイメージセンサ駆動回路(駆動信号生成部)60によって生成される。イメージセンサ駆動回路60の構成及び該イメージセンサ駆動回路60が生成する交流駆動信号については後に詳細に説明する。
【0029】
本実施形態では、磁石M1、ヨークY1及び駆動用コイルC1からなる磁気駆動手段と、磁石M2、ヨークY2及び駆動用コイルC2からなる磁気駆動手段(2組の磁気駆動手段)とがイメージセンサ22の長手方向(水平方向、X軸方向)に所定間隔で配置され、磁石M3、ヨークY3及び駆動用コイルC3からなる磁気駆動手段(1組の磁気駆動手段)がイメージセンサ22の長手方向と直交する短手方向(鉛直(垂直)方向、Y軸方向)に配置されている。
【0030】
さらに固定支持基板51には、各駆動用コイルC1、C2、C3の近傍(中央空間部)に、磁石M1、M2、M3の磁力を検出して可動ステージ52(イメージセンサ22)の光軸直交平面内の位置を示す位置検出信号を検出するホールセンサH1、H2、H3が配置されている。ホールセンサH1、H2により可動ステージ52(イメージセンサ22)のY軸方向位置及び傾き(回転)が検出され、ホールセンサH3により可動ステージ52(イメージセンサ22)のX軸方向位置が検出される。DSP40は、後述するイメージセンサ駆動回路60を介して、ジャイロセンサ28が検出したボディ本体20の光軸直交平面内の振れを示す振れ検出信号と、ホールセンサH1、H2、H3が検出したイメージセンサ22の光軸直交平面内の位置を示す位置検出信号とに基づいて、像振れ補正装置50によってイメージセンサ22を光軸直交平面内で駆動する。これにより、イメージセンサ22上への被写体像の結像位置を変位させて、手振れに起因する像振れを補正することができる。本実施形態ではこの動作を「イメージセンサ22の像振れ補正動作」と呼ぶ。
【0031】
本実施形態の像振れ補正装置50は、撮影光学系の光軸Zと直交する平面内において所定軌跡を描くようにイメージセンサ22を駆動して、被写体光束をイメージセンサ22の検出色の異なる複数の画素に入射させることにより、光学的なローパスフィルタ効果(以下、LPF効果と呼ぶことがある)を与える。本実施形態ではこの動作を「イメージセンサ22のローパスフィルタ動作(LPF動作)」と呼ぶ。
【0032】
図4(A)、(B)を参照して、像振れ補正装置50が、所定軌跡を描くようにイメージセンサ22を駆動して、該イメージセンサ22によってLPF効果を与えるLPF動作について説明する。同図において、イメージセンサ22は、受光面にマトリックス状に所定の画素ピッチPで配置された多数の画素22aを備え、各画素22aの前面にベイヤ配列のカラーフィルタR、G、Bのいずれかが配置されている。各画素22aは、前面のいずれかのカラーフィルタR、G、Bを透過して入射した被写体光線の色を検出、つまり、色成分(色帯域)の光を光電変換し、その強さ(輝度)に応じた電荷を蓄積する。
【0033】
図4(A)は、イメージセンサ22を、撮影光学系の光軸Zを中心とする回転対称な正方形軌跡を描くように駆動する場合を示している。この正方形軌跡は、例えば、イメージセンサ22の画素ピッチPを一辺とした正方形の閉じた経路とすることができる。
図4(A)では、イメージセンサ22を、画素22aの互いに直交する並び方向の一方(鉛直方向)と平行なY軸方向、他方(水平方向)と平行なX軸方向に1画素ピッチP単位で交互にかつ正方形経路となるように移動させている。
【0034】
図4(B)は、イメージセンサ22を、撮影光学系の光軸Zを中心とする回転対称な円形軌跡を描くように駆動する場合を示している。この円形軌跡は、イメージセンサ22の画素ピッチPの2
1/2/2倍を半径rとする円形の閉じた経路とすることができる。
【0035】
図4(A)、(B)のように、露光中にイメージセンサ22を正方形または円形の所定軌跡を描くように駆動すると、各カラーフィルタR、G、B(画素22a)の中央に入射した被写体光線(光束)が、4個のカラーフィルタR、G、B、Gに均等に入射するので、光学的なローパスフィルタと同等の効果が得られる。つまり、どのカラーフィルタR、G、B、G(画素22a)に入射した光線も、必ずその周辺のカラーフィルタR、G、B、G(画素22a)に入射するので、恰も光学的なローパスフィルタを光線が通過したのと同等の効果(LPF効果)が得られる。
【0036】
さらに、イメージセンサ22の駆動範囲を段階的に切り替える(正方形軌跡の場合は一辺の長さを異ならせ、円形軌跡の場合は半径rを異ならせる)ことで、イメージセンサ22によるLPF効果の強弱を段階的に切り替えることができる。つまり、正方形軌跡の一辺または円形軌跡の半径rを長くする(被写体光線が入射するイメージセンサ22の検出色の異なる画素22a(カラーフィルタR、G、B、G)に入射する画素22aの範囲を拡大する)ことでLPF効果が強くなり、一方、正方形軌跡の一辺または円形軌跡の半径rを短くする(被写体光線が入射するイメージセンサ22の検出色の異なる画素22a(カラーフィルタR、G、B、G)に入射する画素22aの範囲を縮小する)ことでLPF効果が弱くなる。
【0037】
イメージセンサ22の駆動範囲ならびにLPF効果の切り替えは、例えば、ローパスフィルタ操作スイッチ27の手動操作により行う態様、あるいはDSP40が種々の撮影条件パラメータに基づいて自動で行う態様が可能であり、その態様には自由度がある。
【0038】
図1、
図2、
図5−
図7に示すように、デジタルカメラ10は、駆動用コイルC1、C2、C3に交流駆動信号を流すことで、像振れ補正装置50を介してイメージセンサ22を光軸直交平面内で駆動するイメージセンサ駆動回路60を備えている。このイメージセンサ駆動回路60の動作全般はDSP40によって制御される。
【0039】
イメージセンサ駆動回路60は、駆動用コイルC1、C2、C3に流す交流駆動信号として、所定の臨界周波数より低い駆動周波数の低周波駆動信号を生成する「低周波駆動信号生成部」と、所定の臨界周波数より高い駆動周波数の高周波駆動信号を生成する「高周波駆動信号生成部」のいずれか一方として機能する。より具体的にイメージセンサ駆動回路60は、一方がオン状態のときは他方がオフ状態となる第1スイッチSW1と第2スイッチSW2を備えており、表1に示すように、第1スイッチSW1がオン状態で第2スイッチSW2がオフ状態のときは「低周波駆動信号生成部」として機能し、第1スイッチSW1がオフ状態で第2スイッチSW2がオン状態のときは「高周波駆動信号生成部」として機能する。
【表1】
【0040】
ここで「所定の臨界周波数」は、予め定めた可聴周波数域の下限に設定されている。可聴周波数域は、年齢や性別などの個人差によってばらつくことが知られているが、本実施形態では、所定の臨界周波数より低い駆動周波数の低周波駆動信号と、所定の臨界周波数より高い駆動周波数の高周波駆動信号とを使い分けており、可聴周波数域(の下限)の具体的な範囲(値)をどのように定めるかには自由度がある。本実施形態では、一般的な可聴周波数域が20Hz〜20kHzの範囲内とされていることに鑑みて、「所定の臨界周波数」を20Hzとした場合を例示して説明する。
【0041】
図6は、イメージセンサ駆動回路60が「低周波駆動信号生成部」として機能している状態を示している。イメージセンサ駆動回路(低周波駆動信号生成部)60は、加算部61と、増幅部62と、低周波微小信号生成部63と、固定ゲイン部64と、コントローラ65とを備えている。加算部61は、ジャイロセンサ28が検出したボディ本体20の光軸直交平面内の振れを示す振れ検出信号に加算処理を施す。増幅部62は、加算部61が加算処理を施した振れ検出信号を増幅する。低周波微小信号生成部63は、所定の臨界周波数(20Hz)より低い周波数(本実施形態では10Hz)の低周波微小信号を生成する。固定ゲイン部64は、製造現場(工場)で予め固定値として設定された駆動信号の振幅(ゲイン)に従って、低周波微小信号生成部63が生成した低周波微小信号を増幅する。増幅部62が増幅した振れ検出信号と、固定ゲイン部64が増幅した低周波微小信号とを重畳合成することで、低周波駆動信号が生成される。コントローラ65は、この低周波駆動信号を駆動用コイルC1、C2、C3に流すことで、イメージセンサ22を光軸直交平面内で駆動して、イメージセンサ22に像振れ補正動作とLPF動作を実行させる。コントローラ65によるコントロールの方式としては例えばPID制御などが考えられる。
【0042】
図7は、イメージセンサ駆動回路60が「高周波駆動信号生成部」として機能している状態を示している。イメージセンサ駆動回路(高周波駆動信号生成部)60は、加算部61と、増幅部62と、高周波微小信号生成部66と、可変ゲイン部67と、コントローラ65とを備えている。加算部61と増幅部62の構成と機能は上述した通りである。高周波微小信号生成部66は、所定の臨界周波数(20Hz)より高い周波数(本実施形態では300Hz)の高周波微小信号を生成する。可変ゲイン部67は、後述する姿勢-最適振幅データ記憶部80から抽出した駆動信号の最適振幅(最適ゲイン)に従って、高周波微小信号生成部66が生成した高周波微小信号を増幅する。可変ゲイン部67が増幅した高周波微小信号と、コントローラ65が算出した駆動力信号とを重畳合成することで、高周波駆動信号が生成される。このようにして生成された高周波駆動信号を駆動用コイルC1、C2、C3に流すことで、イメージセンサ22が光軸直交平面内で駆動され、イメージセンサ22が像振れ補正動作とLPF動作を実行する。
【0043】
図1に示すように、デジタルカメラ10は、ボディ本体20の姿勢を検出する三軸加速度センサ(姿勢検出部)70を備えている。本実施形態の三軸加速度センサ70は、ボディ本体20の異なる複数の姿勢として、ボディ本体20が縦構図と横構図のいずれの姿勢であるかを検出する。
【0044】
図1に示すように、デジタルカメラ10は、姿勢-最適振幅データ記憶部80を備えている。この姿勢-最適振幅データ記憶部80は、ボディ本体20の異なる複数の姿勢毎に予め求めた、駆動信号(高周波駆動信号)の最適振幅(最適ゲイン)を記憶している。本実施形態の姿勢-最適振幅データ記憶部80は、ボディ本体20が縦構図と横構図の姿勢にあるときの駆動信号(高周波駆動信号)の最適振幅(最適ゲイン)を記憶している。以下では、姿勢-最適振幅データ記憶部80が記憶するデータを「姿勢-最適振幅データ」と呼ぶことがある。
【0045】
姿勢-最適振幅データは、工場等の製造現場で予め求められ、姿勢-最適振幅データ記憶部80に記憶される。
図8は、姿勢-最適振幅データ記憶部80に姿勢-最適振幅データを記憶させるための調整制御装置100を示している。この調整制御装置100は工場等の製造現場に備えられている。
【0046】
調整制御装置100は、カメラ載置部110と、テストチャート120と、モアレ成分評価部130と、解像度評価部140と、最適振幅決定部(最適ゲイン決定部)150とを備えている。
【0047】
カメラ載置部110は、デジタルカメラ10を縦構図と横構図のいずれかの姿勢で載置するための載置台からなる。すなわちデジタルカメラ10は、カメラ載置部110上で、縦構図と横構図の間で姿勢変換可能である。
【0048】
テストチャート120は、カメラ載置部110に縦構図と横構図のいずれかの姿勢で載置されたデジタルカメラ10の撮影光学系によって撮影するための白黒グリッドのチャートからなる。テストチャート120は、デジタルカメラ10によって撮影したときに画角いっぱいに偽色を出すように設計されている。より具体的に白黒グリッドの空間周波数は、イメージセンサ22のピッチ、カラーフィルタ(R、G、B)の配列、撮影レンズ群31の画角、及び被写体距離によって決定される。例えば、イメージセンサ22のピッチが3.91μmであり、カラーフィルタの配列がGBGBGB…の2画素の場合、サンプリング(1mm当たり)の空間周波数Fsは、Fs=1/(0.00391×2)=128Hzとなり、ナイキスト周波数Fnは、Fn=64Hzとなる。また、焦点距離が35mmの撮影レンズ群31を装着し、被写体距離を900mmとした場合、64×35/900=2.5Hzとなり、1mm当たりの空間周波数が2.5Hz以上のときにモアレが発生する。そこで20%程度の余裕を見て、テストチャート120の白黒グリッドの空間周波数を3Hz程度に決定することができる。
【0049】
モアレ成分評価部130は、デジタルカメラ10のDSP40と電気通信可能であり、デジタルカメラ10が撮影したテストチャート120の撮影画像に含まれるモアレ成分を定量的に評価する。より具体的にモアレ成分評価部130は、デジタルカメラ10が撮影したテストチャート120の撮影画像に含まれるモアレ成分を、色差信号の標準偏差を加算したもの(σcb+σcr)によって定量的に評価する。モアレ成分評価部130は、モアレ成分の評価結果を最適振幅決定部150に送る。
【0050】
解像度評価部140は、デジタルカメラ10のDSP40と電気通信可能であり、デジタルカメラ10が撮影したテストチャート120の撮影画像の解像度を定量的に評価して、その評価結果を最適振幅決定部150に送る。
【0051】
最適振幅決定部(最適ゲイン決定部)150は、モアレ成分評価部130から送られてきたモアレ成分の評価結果、あるいは、モアレ成分評価部130から送られてきたモアレ成分の評価結果と解像度評価部140から送られてきた解像度の評価結果の組み合わせに基づいて、駆動信号(高周波駆動信号)の最適振幅(最適ゲイン)を決定する。最適振幅決定部150は、決定した駆動信号(高周波駆動信号)の最適振幅(最適ゲイン)を、姿勢-最適振幅データとして、デジタルカメラ10の姿勢-最適振幅データ記憶部80に記憶させる。
【0052】
調整制御装置100を用いたデジタルカメラ10の調整制御方法(特許請求の範囲における「最適振幅記憶ステップ」)は、以下の通りである。
【0053】
図9に示すように、ボディ本体20の異なる複数の姿勢毎(本実施形態では縦構図と横構図の2つの姿勢毎)に、駆動信号の振幅(ゲイン)を段階的に増加させてLPF効果を段階的に増加させながら、デジタルカメラ10によってテストチャート120を撮影する。本実施形態では、駆動信号の振幅(ゲイン)とLPF効果がゼロの状態で第1回目の撮影を行い、その後、駆動信号の振幅(ゲイン)とLPF効果を段階的に増加させながら、同じ時間間隔で、第2回目〜第5回目の撮影を行っている。
【0054】
モアレ成分評価部130は、デジタルカメラ10が撮影したテストチャート120の各撮影画像に含まれるモアレ成分(σcb+σcr)を定量的に評価する。
図10、
図11は、モアレ成分評価部130によるモアレ評価結果を示している。同図に示すように、駆動信号の振幅(ゲイン)とLPF効果がゼロの状態で行う第1回目の撮影では、テストチャート120の撮影画像に含まれるモアレ成分(σcb+σcr)が最も大きく、駆動信号の振幅(ゲイン)とLPF効果を段階的に増加させた第2回目〜第5回目の撮影では、テストチャート120の撮影画像に含まれるモアレ成分(σcb+σcr)が徐々に小さくなって一旦極小値に達した後に再び大きくなっている。
図10では、第3回目の撮影時におけるモアレ成分が極小値となっており、
図11では、第4回目の撮影時におけるモアレ成分が極小値となっている。
【0055】
最適振幅決定部(最適ゲイン決定部)150は、モアレ成分評価部130によるモアレ成分の評価結果に基づいて、第1回目〜第5回目の撮影で段階的に増加させた駆動信号の振幅(ゲイン)の中から、最適振幅(最適ゲイン)を選択して、これを姿勢-最適振幅データとして、デジタルカメラ10の姿勢-最適振幅データ記憶部80に記憶させる。
【0056】
より具体的に最適振幅決定部(最適ゲイン決定部)150は、
図10、
図11に示すように、段階的に増加させた駆動信号の振幅(ゲイン)の中から、テストチャート120の各撮影画像に含まれるモアレ成分が極小値をとるときのものを最適振幅(最適ゲイン)として選択して、これを姿勢-最適振幅データとして、デジタルカメラ10の姿勢-最適振幅データ記憶部80に記憶させる。また、第1回目〜第5回目の撮影時におけるモアレ成分は、直線補完などの手法により補完しより良い値を求めてもよい。
【0057】
あるいは、最適振幅決定部(最適ゲイン決定部)150は、第1回目〜第5回目の撮影時におけるモアレ成分の差分を順に算出していき、前回撮影時のモアレ成分と今回撮影時のモアレ成分との差分の符号が反転したときに、モアレ成分が満足できるレベルまで除去されたと判断して、今回撮影時の駆動信号の振幅(ゲイン)を最適振幅(最適ゲイン)として選択して、これを姿勢-最適振幅データとして、デジタルカメラ10の姿勢-最適振幅データ記憶部80に記憶させることもできる。
【0058】
ここで問題なのは、
図10、
図11に明らかなように、駆動信号の最適振幅(最適ゲイン)は、ボディ本体20の姿勢毎(本実施形態では縦構図と横構図の2つの姿勢毎)に異なるのが普通であることである。これは、同じ振幅(ゲイン)の駆動信号であっても、ボディ本体20の姿勢が変わると、カメラ部品(例えばフレキシブル基板等)の摩擦力や重力依存のばね特性が変わることに由来する。
【0059】
すなわち、
図10に示すように、デジタルカメラ10が縦構図である場合、第3回目の撮影時におけるモアレ成分が極小値となっているため、このときの駆動信号の振幅(ゲイン)が最適振幅(最適ゲイン)として選択及び記憶される。
【0060】
これに対し、
図11に示すように、デジタルカメラ10が横構図である場合、第4回目の撮影時におけるモアレ成分が極小値となっているため、このときの駆動信号の振幅(ゲイン)が最適振幅(最適ゲイン)として選択及び記憶される。
【0061】
したがって、第3回目の撮影時の駆動信号の振幅(ゲイン)は、デジタルカメラ10が縦構図である場合には最適振幅(最適ゲイン)として適切であるが、デジタルカメラ10が横構図である場合には最適振幅(最適ゲイン)として不適切である。また、第4回目の撮影時の駆動信号の振幅(ゲイン)は、デジタルカメラ10が横構図である場合には最適振幅(最適ゲイン)として適切であるが、デジタルカメラ10が縦構図である場合には最適振幅(最適ゲイン)として不適切である。仮に、デジタルカメラ10が横構図である場合に第3回目の撮影時の駆動信号の振幅(ゲイン)を使用し、あるいはデジタルカメラ10が縦構図である場合に第4回目の撮影時の駆動信号の振幅(ゲイン)を使用すると、LPF効果が不十分となってモアレ縞や偽色などの偽解像が発生してしまう。
【0062】
本実施形態ではこの点を重要な技術課題として捉えて、姿勢-最適振幅データ記憶部80に、ボディ本体20の異なる複数の姿勢毎(本実施形態では縦構図と横構図の2つの姿勢毎)に予め求めた、駆動信号の最適振幅(最適ゲイン)を記憶させることで、ボディ本体20の姿勢にかかわらず駆動信号の振幅(ゲイン)を最適設定することに成功している。
【0063】
なお、最適振幅決定部(最適ゲイン決定部)150が、モアレ成分評価部130によるモアレ成分の評価結果に加えて、解像度評価部140による解像度の評価結果も考慮して、第1回目〜第5回目の撮影で段階的に増加させた駆動信号の振幅(ゲイン)の中から、最適振幅(最適ゲイン)を選択し、これを姿勢-最適振幅データとして、デジタルカメラ10の姿勢-最適振幅データ記憶部80に記憶させる態様も可能である。
図12に示すように、駆動信号の振幅(ゲイン)とLPF効果を段階的に増加させながら複数回の撮影を行うと、テストチャート120の各撮影画像の解像度は段階的に減少する。つまり、LPF効果(撮影画像のモアレの除去具合)と撮影画像の解像度は振幅ゼロからある程度の振幅まではトレードオフの関係にある。従って、この態様では、モアレ成分評価部130によるモアレ成分の評価結果と解像度評価部140による解像度の評価結果の双方に基づいて、LPF効果(撮影画像のモアレの除去具合)と撮影画像の解像度の双方が適度となるポイントを狙って、駆動信号の最適振幅(最適ゲイン)を選択する。
【0064】
続いて、イメージセンサ駆動回路60の動作を制御するためのDSP40の構成について説明する。
図1に示すように、DSP40は、露光時間設定部41と、露光時間判定部42と、下限時間判定部43と、駆動制御部44とを備えている。
【0065】
露光時間設定部41は、例えば、絞り32のF値、シャッタ21のシャッタ速度、ISO感度、EV値などの各種パラメータにより、露光時間Tを設定する。
【0066】
露光時間判定部42は、露光時間設定部41が設定した露光時間Tが所定の臨界時間T
LIMITより長いか短いかを判定する。臨界時間T
LIMITは、例えば1/10秒などに設定することができるが、その値自体には自由度がある。臨界時間T
LIMITは、可聴周波数域の下限である「所定の臨界周波数」の逆数を基準にして設定することが好ましい。本実施形態では「所定の臨界周波数」を20Hzに設定しているので、その逆数である1/20秒を基準にしてその近傍の時間を臨界時間T
LIMITに設定している。また、イメージセンサ22を高周波で駆動したときには騒音が出るので、この観点では臨界時間T
LIMITはなるべく小さいほうが好ましい。人間の聴覚特性上、ミラーショックなどの大きな音の直後0.1秒程度は細かい音が聞き取れないため、臨界時間T
LIMITを1/10秒より小さな値にすると、イメージセンサ22を高周波で駆動しても品位が落ちない。
【0067】
下限時間判定部43は、露光時間設定部41が設定した露光時間Tが所定の下限時間T
LOWを下回っているか否かを判定する。下限時間T
LOWは、例えば1/500秒に設定することができるが、その値自体には自由度がある。下限時間T
LOWは、イメージセンサ22の駆動周期に基づいて設定されており、例えば、イメージセンサ22の高周波駆動周期の1/2以上に設定されている。ここで、イメージセンサ22の駆動周期とは、光軸直交平面内で所定軌跡(円形、四角形等)を1回描くようにイメージセンサ22を駆動するために要する時間を意味する。これにより露光期間中にイメージセンサ22の半周以上の駆動が確保される。
【0068】
駆動制御部44は、露光時間判定部42が、露光時間設定部41が設定した露光時間Tが臨界時間T
LIMITより長い(T>T
LIMIT)と判定したとき、第1スイッチSW1をオン状態に第2スイッチSW2をオフ状態にすることで、イメージセンサ駆動回路60を「低周波駆動信号生成部」として機能させる。そして駆動制御部44は、イメージセンサ駆動回路(低周波駆動信号生成部)60が生成した低周波駆動信号を駆動用コイルC1、C2、C3に流すことで、イメージセンサ22を光軸直交平面内で駆動して、イメージセンサ22に像振れ補正動作とLPF動作を実行させる。このように、臨界時間T
LIMITより長い露光時間Tのときに、人間の可聴周波数域の下限(20Hz)より低い駆動周波数(本実施形態では10Hz)の低周波駆動信号でイメージセンサ22を駆動することで、高周波騒音が発生してユーザに不快感を与えるのを防止することができる。
【0069】
駆動制御部44は、露光時間判定部42が、露光時間設定部41が設定した露光時間Tが臨界時間T
LIMITより短い(T<T
LIMIT)と判定したとき、第1スイッチSW1をオフ状態に第2スイッチSW2をオン状態にすることで、イメージセンサ駆動回路60を「高周波駆動信号生成部」として機能させる。そして駆動制御部44は、イメージセンサ駆動回路(高周波駆動信号生成部)60が生成した高周波駆動信号を駆動用コイルC1、C2、C3に流すことで、イメージセンサ22を光軸直交平面内で駆動して、イメージセンサ22に像振れ補正動作とLPF動作を実行させる。このように、臨界時間T
LIMITより短い露光時間Tのときに、高い駆動周波数(例えば300Hz)の高周波駆動信号でイメージセンサ22を駆動することで、極めて短秒時の露光であってもイメージセンサ22を高精度に駆動制御することができ、異なるカラーフィルタに均等に露光させることができる(好適なLPF効果が得られる)。また、極めて短秒時の露光であるため、順行マスキングの効果により、たとえ高周波騒音が発生してもミラーやシャッタの音に掻き消されて、人間の聴覚特性上これを聞き取ることはできず、ユーザに不快感を与えることはない(経時マスキング)。
【0070】
駆動制御部44は、下限時間判定部43が、露光時間設定部41が設定した露光時間Tが下限時間T
LOWを下回っていない(T≧T
LOW)と判定したとき、イメージセンサ駆動回路60を介してイメージセンサ22を光軸直交平面内で駆動することで、像振れ補正動作とLPF動作の双方を実行させる。一方、駆動制御部44は、下限時間判定部43が、露光時間設定部41が設定した露光時間Tが下限時間T
LOWを下回っている(T<T
LOW)と判定したとき、イメージセンサ駆動回路60を介してイメージセンサ22を光軸直交平面内で駆動することで、像振れ補正動作のみを実行させる(LPF動作を停止する)。露光時間Tが下限時間T
LOWを下回っていると、イメージセンサ22が所定軌跡の半分すら描けずLPF効果が得られないことから、イメージセンサ22のLPF動作を停止する。これに対し、露光時間Tが下限時間T
LOWを下回っていなければ、たとえイメージセンサ22が所定軌跡を1回も描けなくても(例えば所定軌跡の3/4周や4/5周しか描けなくても)、LPF効果を得ることができるので、イメージセンサ22のLPF動作を実行する。
【0071】
図13は、駆動制御部44が、露光時間判定部42と下限時間判定部43の判定結果に基づいて、イメージセンサ駆動回路60を介してイメージセンサ22のLPF動作を駆動制御する内容を示している。同図に示すように、露光時間Tが下限時間T
LOWを下回っているときは、イメージセンサ22のLPF動作を実行せず、露光時間Tが下限時間T
LOWを下回っておらず且つ臨界時間T
LIMITより短いときは、高周波駆動信号を用いてイメージセンサ22のLPF動作を実行し、露光時間Tが臨界時間T
LIMITより長いときは、低周波駆動信号を用いてイメージセンサ22のLPF動作を実行する。
【0072】
そして本実施形態の駆動制御部44は、イメージセンサ駆動回路60が「高周波駆動信号生成部」として機能しているときにだけ、イメージセンサ(振れ補正部材)22を次のように駆動制御する。まず駆動制御部44は、三軸加速度センサ70が検出したボディ本体20の姿勢に応じて、姿勢-最適振幅データ記憶部80が記憶した該ボディ本体20の姿勢に応じた最適振幅(最適ゲイン)を抽出する。
図10、
図11を例にとると、ボディ本体20が縦構図である場合は、第3回目の撮影時の駆動信号の振幅(ゲイン)が最適振幅(最適ゲイン)として抽出され、ボディ本体20が横構図である場合は、第4回目の撮影時の駆動信号の振幅(ゲイン)が最適振幅(最適ゲイン)として抽出される。次いで駆動制御部44は、抽出した最適振幅(最適ゲイン)を可変ゲイン部67の振幅(ゲイン)として設定することで、イメージセンサ駆動回路(高周波駆動信号生成部)60に、抽出した最適振幅(最適ゲイン)の駆動信号を生成させる。そして駆動制御部44は、イメージセンサ駆動回路(高周波駆動信号生成部)60に生成させた最適振幅(最適ゲイン)の駆動信号を駆動用コイルC1、C2、C3に流すことで、像振れ補正装置50を介してイメージセンサ22を光軸直交平面内で駆動し、イメージセンサ22に像振れ補正動作とLPF動作を実行させる。
【0073】
最後に、
図14のフローチャートを参照して、本実施形態のデジタルカメラ10の調整制御方法について説明する。
【0074】
[最適振幅記憶ステップ]
まず、工場等の製造現場において、姿勢-最適振幅データ記憶部80に、ボディ本体20の異なる複数の姿勢毎(本実施形態では縦構図と横構図の2つの姿勢毎)に予め求めた、駆動信号(高周波駆動信号)の最適振幅(最適ゲイン)を記憶させる(ステップS1)。
【0075】
[姿勢検出ステップ]
次いで、三軸加速度センサ(姿勢検出部)70が、ボディ本体20の姿勢を検出する(ステップS2)。
【0076】
[最適振幅抽出ステップ]
次いで、駆動制御部44が、三軸加速度センサ(姿勢検出部)70が検出したボディ本体20の姿勢に応じて、姿勢-最適振幅データ記憶部80が記憶した最適振幅(最適ゲイン)を抽出する(ステップS3)。
【0077】
[駆動信号生成ステップ]
次いで、駆動制御部44が、抽出した最適振幅(最適ゲイン)を可変ゲイン部67の振幅(ゲイン)として設定することで、イメージセンサ駆動回路(高周波駆動信号生成部)60に、抽出した最適振幅(最適ゲイン)の駆動信号を生成させる(ステップS4)。
【0078】
[駆動制御ステップ]
そして、駆動制御部44が、イメージセンサ駆動回路(高周波駆動信号生成部)60に生成させた最適振幅(最適ゲイン)の駆動信号を駆動用コイルC1、C2、C3に流すことで、像振れ補正装置50を介してイメージセンサ22を光軸直交平面内で駆動し、イメージセンサ22に像振れ補正動作とLPF動作を実行させる(ステップS5)。
【0079】
このように本実施形態のデジタルカメラ10は、姿勢-最適振幅データ記憶部80が、ボディ本体20の異なる複数の姿勢毎に求めた駆動信号の最適振幅(最適ゲイン)を記憶する。また三軸加速度センサ(姿勢検出部)70が、ボディ本体20の姿勢を検出する。さらに駆動制御部44が、三軸加速度センサ70が検出したボディ本体20の姿勢に応じて、姿勢-最適振幅データ記憶部80が記憶したボディ本体20の姿勢に応じた最適振幅を抽出し、抽出した最適振幅の駆動信号をイメージセンサ駆動回路(駆動信号生成部)60に生成させ、生成させた最適振幅の駆動信号に基づいて、像振れ補正装置(駆動機構)50を介してイメージセンサ(振れ補正部材)22を光軸直交平面内で駆動する。これにより、イメージセンサ22を高精度に駆動制御するとともに、ボディ本体20の姿勢にかかわらず駆動信号の振幅を最適設定することができる。
【0080】
以上の実施形態では、イメージセンサ22を「振れ補正部材」として、このイメージセンサ22を光軸直交平面内で駆動する態様を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、撮影レンズ群(撮影光学系)31の一部をなすレンズを「振れ補正部材」として、このレンズを撮影レンズ30内に設けたボイスコイルモータ(駆動機構)によって光軸直交平面内で駆動する態様も可能である。この態様であっても、イメージセンサ22上への被写体像の結像位置を変位させて像振れを補正するとともに、被写体光束をイメージセンサ22の検出色の異なる複数の画素に入射させて光学的なローパスフィルタ効果を得ることができる。
【0081】
以上の実施形態では、ボディ本体20の姿勢を検出する姿勢検出部として三軸加速度センサ70を用いた場合を例示して説明したが、姿勢検出部の態様はこれに限定されるものではない。例えば、姿勢検出部として、ボディ本体20に内蔵された電子水準器、またはボディ本体20のアクセサリーシューに取り付けるアタッチメント方式の電子水準器もしくは液体式水準器を用いる態様も可能である。
【0082】
以上の実施形態では、三軸加速度センサ(姿勢検出部)70が、ボディ本体20の異なる複数の姿勢として、ボディ本体20が縦構図と横構図のいずれの姿勢であるかを検出する場合を例示して説明したが、これに限定されるものではない。例えば、三軸加速度センサ(姿勢検出部)70が、ボディ本体20の異なる複数の姿勢として、縦構図、横構図、上向き構図及び下向き構図のいずれの姿勢であるかを検出する態様も可能である。この場合、姿勢-最適振幅データ記憶部80は、ボディ本体20が縦構図、横構図、上向き構図及び下向き構図の姿勢にあるときの姿勢-最適振幅データを記憶する。
【0083】
以上の実施形態では、「最適振幅記憶ステップ」において、ボディ本体20の異なる複数の姿勢毎に、駆動信号の振幅(ゲイン)とLPF効果を段階的に増加させながら、デジタルカメラ10によってテストチャート120を撮影する場合を例示して説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、駆動信号の振幅(ゲイン)とLPF効果は段階的に変化させればよく、例えばこれらを段階的に減少させながら、デジタルカメラ10によってテストチャートを撮影する態様も可能である。
【0084】
以上の実施形態では、モアレ成分評価部130が、デジタルカメラ10が撮影したテストチャート120の撮影画像に含まれるモアレ成分を、色差信号の標準偏差を加算したもの(σcb+σcr)によって定量的に評価する場合を例示して説明した。しかし、モアレ成分を定量的に評価する手法はこれに限定されない。例えば、モアレ成分評価部130は、デジタルカメラ10が撮影したテストチャート120の撮影画像に含まれるモアレ成分を、全画素のCb、Crの分布幅の絶対値|Cbの最大値−Cbの最小値|+|Crの最大値−Crの最小値|によって定量的に評価することもできる。このとき、CPUによる処理時間を考慮して、全画素ではなく、特定の画素領域だけを切り出して定量化してもよい。
【0085】
以上の実施形態では、単一(共通)の像振れ補正機構(駆動機構)50を介してイメージセンサ22を光軸直交平面内で駆動することで、イメージセンサ22による像振れ補正動作とLPF動作を実行する場合を例示して説明したが、LPF動作を実行させるための駆動系をピエゾ駆動装置などによって独立して設ける態様も可能である。
【0086】
以上の実施形態では、DSP40とイメージセンサ駆動回路60を別々の構成要素(ブロック)として描いているが、これらを単一の構成要素(ブロック)として実現する態様も可能である。
【0087】
以上の実施形態では、像振れ補正装置(駆動機構)50の構成として、固定支持基板51に磁石M1、M2、M3及びヨークY1、Y2、Y3を固定し、可動ステージ52に駆動用コイルC1、C2、C3を固定した場合を例示して説明したが、この位置関係を逆にして、可動ステージに磁石及びヨークを固定し、固定支持基板に駆動用コイルを固定する態様も可能である。
【0088】
以上の実施形態では、イメージセンサ22が描く所定軌跡を、撮影光学系の光軸Zを中心とする回転対称な正方形軌跡または円形軌跡とした場合を例示して説明したが、これに限定されず、例えば、撮影光学系の光軸Zと直交する平面内における直線往復移動軌跡としてもよい。
【0089】
以上の実施形態では、ボディ本体20と撮影レンズ30を着脱可能(レンズ交換可能)とする態様を例示して説明したが、ボディ本体20と撮影レンズ30を着脱不能(レンズ交換不能)とする態様も可能である。
【0090】
以上の実施形態では、低周波微小信号生成部63が生成する低周波微小信号の周波数を10Hzとした場合を例示して説明したが、これに限定されるわけではなく、例えば、8Hz、16Hzなどに切り替える態様も可能である。
【0091】
以上の実施形態では、高周波微小信号生成部66が生成する高周波微小信号の周波数を300Hzとした場合を例示して説明したが、これに限定されるわけではなく、例えば、5kHz、20kHzなどに切り替える態様も可能である。