特許第6286968号(P6286968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6286968パーフルオロ分岐アルキルアニリン類の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286968
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】パーフルオロ分岐アルキルアニリン類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 209/68 20060101AFI20180226BHJP
   C07C 211/52 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   C07C209/68
   C07C211/52
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-193462(P2013-193462)
(22)【出願日】2013年9月18日
(65)【公開番号】特開2015-59097(P2015-59097A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年4月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 達也
(72)【発明者】
【氏名】松浦 誠
(72)【発明者】
【氏名】黒木 克親
(72)【発明者】
【氏名】山本 明典
【審査官】 齋藤 光介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−335735(JP,A)
【文献】 特開2004−161768(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102731321(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102731317(CN,A)
【文献】 インド特許出願公開2010DE00753号明細書
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるパーフルオロ分岐アルキルブロミド
【化1】

(式中、Rfは、炭素数3〜6の分岐状パーフルオロアルキル基を示す。)と
下記一般式(II)で表されるアニリン類
【化2】

(式中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数1〜6のハロアルコキシ基を示す。)を、
アルカリ金属塩の存在下、かつ還元剤の存在下又は光照射下において、
少なくとも、ジメチルスルホキシドの存在下で
反応させることを特徴とする、
下記一般式(III)で表されるパーフルオロ分岐アルキルアニリン類
【化3】

(式中の定義は前記の通り。)
の製造方法。
【請求項2】
前記パーフルオロ分岐アルキルブロミドが、パーフルオロイソプロピルブロミド(CF3)2CFBrである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記アニリン類が、2−メチルアニリンである、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記還元剤が、亜ジチオン酸塩である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有用中間体であるパーフルオロ分岐アルキルアニリン類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーフルオロ分岐アルキルアニリン類は、有用中間体として知られる。パーフルオロ分岐アルキルアニリン類は、例えば、農薬又は医薬等を製造するための中間体として利用されている。
【0003】
パーフルオロ直鎖アルキルアニリン類を製造する方法としては、例えば、非特許文献1に示す方法が知られている。
【0004】
パーフルオロ分岐アルキルアニリン類を製造する方法としては、例えば、パーフルオロ分岐アルキルアイオダイドとアニリン類を反応させる方法が知られている(特許文献1)。ただし、この方法には、原料として用いるパーフルオロ分岐アルキルアイオダイドが非常に高価であるという問題がある。
【0005】
また、パーフルオロ分岐アルキルアニリン類を製造する別の方法として、比較的安価なパーフルオロ分岐アルキルクロライド又はパーフルオロ分岐アルキルブロミドとアニリン類を、有機溶媒二相系で反応させる方法が知られている(特許文献2及び3)。ただし、これらの方法では目的生成物であるパーフルオロ分岐アルキルアニリン類の収率が十分でないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−122836号公報
【特許文献2】特開2003−335735号公報
【特許文献3】特開2004−161768号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Xiao-Ting Huang、外7名、Journal of Fluorine Chemistry、2001年、111、pp. 107−113
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、パーフルオロ分岐アルキルアニリン類を比較的安価に、かつ高い収率で製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、アニリン類と、比較的安価なパーフルオロ分岐アルキルブロミドを、塩基の存在下、かつ還元剤の存在下又は光照射下において、少なくとも、25℃での比誘電率が30以上である極性溶媒の存在下で反応させることにより、高い収率で目的生成物であるパーフルオロ分岐アルキルアニリン類が得られることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の実施態様を提供するものである。
項1.
下記一般式(I)で表されるパーフルオロ分岐アルキルブロミド
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、Rfは、炭素数3〜6の分岐状パーフルオロアルキル基を示す。)と
下記一般式(II)で表されるアニリン類
【0013】
【化2】
【0014】
(式中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数1〜6のハロアルコキシ基を示し、かつR及びR、R及びR、並びにR及びRの少なくとも一組が環を形成してもよい)を、
塩基の存在下、かつ
還元剤の存在下又は光照射下において、
少なくとも、25℃での比誘電率が5以上である極性溶媒の存在下で
反応させることを特徴とする、
下記一般式(III)で表されるパーフルオロ分岐アルキルアニリン類
【0015】
【化3】
【0016】
(式中の定義は前記の通り。)
の製造方法。
項2.
前記パーフルオロ分岐アルキルブロミドが、パーフルオロイソプロピルブロミド(CF3)2CFBrである、項1に記載の製造方法。
項3.
前記アニリン類が、2−メチルアニリンである、項1又は2に記載の製造方法。
項4.
前記極性溶媒が、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド及びアセトニトリルからなる群より選択される少なくとも一種の極性溶媒である、項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
項5.
前記塩基が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン及び複素環化合物からなる群より選択される少なくとも一種の塩基である、項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
項6.
前記還元剤が、亜ジチオン酸塩である、項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の製造方法を用いることにより、比較的安価な反応原料を使用しつつ、高い収率で目的生成物であるパーフルオロ分岐アルキルアニリン類を得ることができる。
【0018】
以下、本発明の方法について、具体的に説明する。
【0019】
1.パーフルオロ分岐アルキルアニリン類
本発明は、下記一般式(III)で表されるパーフルオロ分岐アルキルアニリン類を製造する方法である。
【0020】
【化4】
【0021】
(式中、Rfは、炭素数3〜6の分岐状パーフルオロアルキル基を示し、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数1〜6のハロアルコキシ基を示し、かつR及びR、R及びR、並びにR及びRの少なくとも一組が環を形成してもよい。)
【0022】
なお、本発明において、ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子を表す。
【0023】
また、本発明において、アルキル基とは、置換を有していてもよい、直鎖状又は分岐状のアルキル基を表す。
【0024】
上記一般式(III)で表されるパーフルオロ分岐アルキルアニリン類としては、具体的には、下記一般式(IV)で表される2−メチル−4−ヘプタフルオロイソプロピルアニリンが挙げられる。この化合物は、殺虫剤として用いられるフルベンジアミドを製造する際の中間体として有用である。
【0025】
【化5】
【0026】
2.パーフルオロ分岐アルキルブロミド
本発明の製造方法において、原料として用いるパーフルオロ分岐アルキルブロミドは、下記一般式(I)で表される。
【0027】
【化6】
【0028】
(式中、Rfは、炭素数3〜6の分岐状パーフルオロアルキル基を示す。)
上記一般式(I)で表されるパーフルオロ分岐アルキルブロミドとしては、Rfが炭素数3〜5のものが好ましく、Rfが炭素数3〜4のものがより好ましく、パーフルオロイソプロピルブロミド(CF3)2CFBrがさらに好ましい。
【0029】
本発明の製造方法において原料として用いるパーフルオロ分岐アルキルブロミドの当量は、特に限定されないが、後述の原料としてのアニリン類1当量に対して、通常1.0〜2.0当量とすることができ、好ましくは1.2〜1.5当量とすることができる。
【0030】
3.アニリン類
本発明の製造方法において、原料として用いるアニリン類は、下記一般式(II)で表される。
【0031】
【化7】
【0032】
(式中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数1〜6のハロアルコキシ基を示し、かつR及びR、R及びR、並びにR及びRの少なくとも一組が環を形成してもよい。)
【0033】
上記一般式(II)で表されるアニリン類としては、R〜Rに関しては、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基又は炭素数1〜3のハロアルコキシ基であるものが好ましい。
【0034】
上記一般式(II)で表されるアニリン類としては、R〜Rに関しては、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、ハロメチル基、メトキシ基又はハロメトキシ基であるものがより好ましく、いずれも水素原子であるものがさらに好ましい。
【0035】
上記一般式(II)で表されるアニリン類としては、Rに関しては、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基又は炭素数1〜3のハロアルコキシ基であるものが好ましい。
【0036】
上記一般式(II)で表されるアニリン類としては、Rに関しては、メチル基、ハロメチル基、メトキシ基又はハロメトキシ基であるものが好ましく、メチル基であるものがさらに好ましい。
【0037】
上記一般式(II)で表されるアニリン類としては、R〜Rに関しては、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基又は炭素数1〜3のハロアルコキシ基であるものが好ましい。
【0038】
上記一般式(II)で表されるアニリン類としては、R〜Rに関しては、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、ハロメチル基、メトキシ基又はハロメトキシ基であるものがより好ましく、いずれも水素原子であるものがさらに好ましい。
【0039】
上記一般式(II)で表されるアニリン類としては、R〜Rに関しては、Rが炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数1〜6のハロアルコキシ基であり、R〜Rがいずれも水素原子であるものが特に好ましい。これらの中でも、Rが炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基又は炭素数1〜3のハロアルコキシ基であり、R〜Rがいずれも水素原子であるものがより好ましく、Rがメチル基、ハロメチル基、メトキシ基又はハロメトキシ基であり、R〜Rがいずれも水素原子であるものがさらに好ましく、Rがメチル基であり、R〜Rがいずれも水素原子であるものがもっとも好ましい。
【0040】
上記一般式(II)で表されるアニリン類としては、具体的には、下記一般式(V)で表される2−メチル−アニリンが挙げられる。
【0041】
【化8】
【0042】
4.塩基
塩基としては、本発明の効果が得られればよく、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン及び複素環化合物等が挙げられる。
【0043】
アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩としては、例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物、酢酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、炭酸塩及び炭酸水素塩等が挙げられる。アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム及び炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0044】
アンモニウム塩の具体例としては、酢酸アンモニウム及び炭酸アンモニウム等が挙げられる。
【0045】
アミンの具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルグアニジン、N,N−ジメチルアニリン、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、ジアザビシクロノネン(DBC)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、N−メチルピペリジン及びピペリジン等が挙げられる。
【0046】
複素環化合物の具体例としては、ピリジン、2−N,N−ジメチルアミノピリジン、3−N,N−ジメチルアミノピリジン及び4−N,N−ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
【0047】
塩基としては、これらを単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
塩基としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属炭酸水素塩が好ましく、アルカリ金属炭酸水素塩がより好ましい。アルカリ金属炭酸水素塩の具体例として、ナトリウム炭酸水素塩が挙げられる。
【0049】
塩基の使用量としては、本発明の効果が得られればよく特に限定されないが、通常は反応原料であるアニリン類1に対して0.01〜3当量であり、好ましくは1.0〜2.0当量である。
【0050】
5.還元剤
還元剤としては、それを用いることにより反応開始のために必要なエネルギーが供給されればよく、特に限定されないが、例えば、亜ジチオン酸塩等を適量使用することができる。
【0051】
亜ジチオン酸塩の具体例としては、亜ジチオン酸ナトリウム及び亜ジチオン酸カリウム等が挙げられる。
【0052】
還元剤の使用量としては、本発明の効果が得られればよく特に限定されないが、通常は反応原料であるアニリン類1に対して0.01〜3当量であり、好ましくは0.1〜2当量であり、より好ましくは1〜2当量であり、具体例としては1.5当量等が挙げられる。
【0053】
6.光照射
光照射としては、反応開始のために必要なエネルギーが供給されればよく、特に限定されないが、例えば、光源として高圧水銀ランプ等を使用して適当な条件で照射することができる。
【0054】
なお、還元剤及び光照射はいずれも反応開始に必要なエネルギーを供給する目的で使用されるものであり、いずれか一方のみを使用してもよいし、必要に応じて両者を併用してもよい。
【0055】
7.極性溶媒
極性溶媒は、25℃での比誘電率が5以上である溶媒である。少なくともこのような極性溶媒の存在下で反応を行うことにより、高い収率で目的生成物であるパーフルオロ分岐アルキルアニリン類を得ることができる。
【0056】
極性溶媒としては、25℃での比誘電率が5以上の極性溶媒を単独で用いてもよいし、それぞれ25℃での比誘電率が5以上の極性溶媒を二種以上混合して用いてもよい。
【0057】
極性溶媒は、一種を用いる場合、単独での25℃での比誘電率が30以上50以下であることが、目的生成物の収率の点で、好ましい。二種以上を混合して用いる場合、目的生成物の収率を向上させるためには、それぞれ25℃での比誘電率が30以上50以下の極性溶媒を混合して用いることができる。
【0058】
極性溶媒としては、単独で比誘電率が上記に該当するものを使用することができ、特に限定されないが、そのような溶媒の具体例としては、ジメチルスルホキシド(25℃での比誘電率47;以下同様に括弧内は25℃での比誘電率を示す。)、N,N−ジメチルホルムアミド(38)、アセトニトリル(37)、メタノール(24)、スルホラン(42)及びN−メチルピロリドン(33)等が挙げられる。また、上記範囲内の比誘電率の極性溶媒をさらに組み合わせて用いることもできる。
【0059】
極性溶媒としては、副反応が抑制されるという点で、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド及びアセトニトリルが好ましい。
【0060】
極性溶媒としては、特にジメチルスルホキシドが好ましい。
【0061】
本発明の極性溶媒に加えて、25℃での比誘電率が30以上50以下の範囲外の溶媒を、本発明を実施する際に、本発明の効果を損なわない範囲で補助溶媒として加えることができる。補助溶媒を併用することによって、反応後の後処理が容易になるという効果が期待できる。補助溶媒の具体例としては、脂肪族又は芳香族の、場合によりハロゲン化された炭化水素、例えばベンジンフラクション、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、石油エーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム又は四塩化炭素、エーテル、ケトン並びにエステル等が挙げられる。エーテルの具体例としては、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル及びシクロペンチルメチルエーテル等が挙げられる。ケトンの具体例としては、例えばシクロヘキサノン、ブタノン及びメチルイソブチルケトン等が挙げられる。エステルの具体例としては、例えば酢酸メチル又は酢酸エチル等が挙げられる。補助溶媒の量は適宜調節可能であり、本発明の極性溶媒を1重量部とした場合、通常、5重量部ないし100重量部の補助溶媒を併用することができる。
【0062】
8.その他の反応条件
反応温度としては、下限を25℃、上限を用いる極性溶媒の反応条件における沸点の程度とする範囲内で適宜設定できる。工業生産上、25〜80℃が好ましい。
【0063】
反応圧力は、特に限定されないが、通常は大気圧〜2MPa(ゲージ圧)である。
【0064】
反応時間は、特に限定されないが、通常は60〜180分である。
【0065】
9.後処理及び分離精製
反応終了後は、常法にしたがい、必要に応じて塩の除去、極性溶媒の留去、粗生成物の抽出及び濃縮等の後処理を行ったうえで、目的生成物であるパーフルオロ分岐アルキルアニリン類を単離することができる。特に限定されないが、具体的には、例えば、それぞれ以下のようにして操作することができる。
【0066】
塩は、析出させたのちに濾過することで除去できる。塩を除去しないままだと最後に目的生成物をうまく単離できないので、単離前にあらかじめ行っておくことが好ましい。例えば、無極性溶媒(例えば酢酸エチル等)を反応系に導入してから攪拌して塩を析出させ、減圧濾過により除去してもよい。このようにして得られた濾液から蒸留により無極性溶媒を除去することができる。
【0067】
極性溶媒の留去方法としては、特に限定されないが、例えば、必要に応じて安定剤(例えば炭酸カリウム等)を導入したうえで、所定条件(例えば80℃/10mmHg)にて極性溶媒を留去する方法等が挙げられる。
【0068】
目的生成物の抽出は、特に限定されないが、例えば以下のようにして行うことができる。極性溶媒を留去したあと、抽出溶媒(例えば酢酸エチル等)と水を導入し、攪拌したのちに二層分離させ、水層を除去する。さらに必要に応じて洗浄を行ってもよい。洗浄は、特に限定されないが、例えば水、又は必要に応じて5%塩酸水等を用いて行うことができる。洗浄に用いる水溶液を導入して攪拌したのち二層分離させ、水層を除去することにより洗浄することができる。洗浄は複数回行ってもよく、この場合、直前の洗浄で使用したのと異なる水溶液を用いて洗浄してもよい。最終的に、抽出溶媒を取り出して溶媒を留去し、目的生成物を単蒸留することにより単離することができる。
【0069】
単離された目的生成物を、必要に応じてさらに常法にしたがい精製してもよい。
【実施例】
【0070】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0071】
実施例1
下記のようにして、以下の反応を行った。
【0072】
【化9】
【0073】
内容量30mlのステンレス製オートクレーブに、トルイジン(0.717g)、Na2S2O4(1.75g)、NaHCO3(0.84g)及びDMSO(7ml)を仕込んだ。オートクレーブの蓋を閉めて、N2で0.5MPa気密し、漏れがないことを確認した。確認後、脱圧して、Rf-Brのボンベと反応装置をつなげ、Rf-Brを2g仕込んだ。内温が70℃になるように温調し、4h攪拌した。
【0074】
4h攪拌後、副生するCO2をパージし、オートクレーブを開放した。AcOEt(30ml)を導入し、15min.攪拌し、塩を析出させた。析出した塩を減圧濾過し、ろ液をエバポレーターによってAcOEtを留去した。その後、0.2gのK2CO3を入れ、80℃/10mmHgにてDMSOを留去した。
【0075】
AcOEt(30ml)とH2O(30ml)を導入し、30min.攪拌し2層分離した。水層を除去した後、5%塩酸水(30ml)で洗浄し、2層分離した。さらに水層を除去した後、水(30ml)で洗浄し、2層分離後水層を除去した。
【0076】
得られた有機層からAcOEtを留去し、その後目的物(上記のRFA)を単蒸留した(100℃/10mmHg)。
【0077】
収量は1.36g、単離収率は75%であった。