【実施例】
【0080】
以下、実施例及び比較例に基づき本出願に係る発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0081】
−測定方法の説明−
(a)原料の光学等方性組織率の測定
プラスチック製サンプル容器の底に少量の観察用試料を入れ、冷間埋込樹脂(商品名:冷間埋込樹脂#105、製造会社:ジャパンコンポジット(株))と硬化剤(商品名:硬化剤(M剤)、製造会社:日本油脂(株))との混合物をゆっくりと流し入れ、静置して凝固させる。次に、凝固したサンプルを取り出し、研磨板回転式の研磨機を用いて、測定する面を研磨する。研磨は、回転面に研磨面を押し付けるように行う。研磨板の回転は1000rpmとする。研磨板の番手は、#500、#1000、#2000の順に行い、最後はアルミナ(商品名:バイカロックス タイプ0.3CR,粒子径0.3μm、製造会社:バイコウスキー)を用いて鏡面研磨する。研磨したサンプルを500倍の倍率の偏光顕微鏡((株)ニコン製)を用いて、観察角度0度と45度において観測し、各画像をキーエンス製デジタルマイクロスコープVHX−2000に取り込んだ。
【0082】
取り込んだ2枚の観測画像について、それぞれ同じ地点から正方形の領域(100μm四方)を切り抜き、その範囲内の全粒子に対して以下の解析を行い、平均値を求めた。
【0083】
光学異方性ドメインは結晶子の向きにより色が変化する。一方、光学等方性ドメインは常に同じ色を示す。この性質を用いて、色が変化しない部分を二値化イメージにより抽出し、光学等方性部分の面積率を算出する。二値化する際には、しきい値が0〜34の部分と239〜255の部分をピュアマセンダと設定する。なお、黒色部分は空隙として扱った。
(b)原料中の遷移金属含有率の測定
日立レシオビーム分光光度計U−5100を用いて発光分光分析法に従って、原料となるコークスを定量分析した。
(c)平均粒子径の測定
レーザー回折散乱式粒度分布測定装置LMS−2000e(マルバーン社製)を用いて測定した。
(d)BET比表面積の測定
BET比表面積は、マルチソーブ(マルバーン社製)を使用して測定した。
(e)真密度の測定
気体置換法により測定される真密度は、ヘリウムガスを用いてマルチボリウム密度計1305型(島津製作所製)で測定した。
(f)タップ密度の測定
タップ密度はタップ回数を600回とした以外は、JIS K5101−12−2に記載の方法に従って測定した。
(g)非晶質炭素材料の酸素含有率の測定
不活性ガス融解−赤外線吸収法によって試料中の酸素含有率を定量分析した。
(h)非晶質炭素材料のケイ素含有率の測定
試料を1050℃で灰化処理し、その残量をケイ素含有量としてケイ素含有率を算出した。なお、O/Si比は、酸素含有率及びケイ素含有率からそれぞれ得られた試料中のモル濃度に基づいて求められる。
(i)円形度及び凹凸度合いの測定
粒子が積層しないように、且つ扁平な粒子は扁平面がシートに平行に配列するように分散固定したシートを走査型電子顕微鏡(S−4800 日立ハイテク社製)によってシートの真上から撮影し、画像をA像くん(旭化成エンジニアリング社製)で解析した。本実施例および比較例では、それぞれ粒子300個について投影面積と投影周囲長を測定し、円形度と凹凸度合いとを算出して円形度の平均値及び凹凸度合いの平均値を求めた。
(j)粒子の断面観察
粒子の断面写真は、樹脂に埋設した粒子をクロスセクションポリッシャー(CP)で処理し、走査型電子顕微鏡(S−4800 日立ハイテク社製)で撮影した。
(k)原料生コークス及び非晶質炭素材料の遷移金属含有率の測定
SPS−5000(セイコー電子工業製)を用い、ICP(誘導結合高周波プラズマ発光分析)法により試料に含まれるバナジウム等の遷移金属を定量分析した。
(l)ハーフセル評価用の電池作製と評価試験
単極の電池評価はCR2032コインセルを用いて行った。
【0084】
電極シート作製用ペースト調製:
試料1重量部にアセチレンブラック(AB)0.044重量部、呉羽化学製KFポリマー(ポリフッ化ビニリデン(PVdF))を0.066重量部を加え、N−メチルピロリドン(NMP)を溶剤として、プラネタリーミキサーにて混練した後、Cu金属箔に塗布し、乾燥させた。このシートを圧延して所定のサイズに打ち抜き、評価用の電極を作製した。対極には金属リチウムを用い、電解液は1mol/lのLiPF
6を溶解したエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)との混合溶液を(体積比で1:2)を用いた。なお、以下のコインセルの組み立ては、露点−80℃以下の乾燥アルゴン雰囲気下で実施した。
【0085】
単極充放電試験:
充電は0.25mAで10mVまで定電流充電(CC充電)を行い、0.025mAまで電流が減衰したところで充電完了とした。放電は0.25mAで定電流放電(CC放電)を行い、1.5Vでカットオフした。この充放電を10サイクル繰り返した。
【0086】
−実施例及び比較例に係るケイ素含有非晶質炭素材料の作製−
下記の実施例及び比較例において、原料コークスとして、石油系非針状コークスであるコークスA、又は石油系針状コークスであるコークスBを用いた。コークスA、Bの等方性組織率、遷移金属含有率、バナジウム含有率を表1に示す。コークスAは、コークスBに比べて遷移金属含有率、バナジウム含有率のいずれも非常に多かった。
【0087】
【表1】
【0088】
次に、以下の実施例及び比較例における製造条件を、表2にまとめて示す。また、これらの実施例及び比較例において作製された炭素材料の各パラメータを測定した結果を表3に示す。
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
<実施例1>
生コークスAを、D50が5.7μmとなるよう粉砕及び分級し、生コークス粒子と二酸化ケイ素粒子とを混合して上述の方法で乾式造粒を行った。二酸化ケイ素粒子の粒径は20〜30nmであった。二酸化ケイ素粒子と生コークス粒子の体積の和を100%とした場合の二酸化ケイ素粒子の添加量を50体積%とした。
【0092】
生コークス粒子と二酸化ケイ素粒子の一部とをCOMPOSI CP15型(日本コークス工業社製)に投入して低速で球形化処理を開始し、数回に分けて二酸化ケイ素粒子を全量投入した。全量投入後は周速を80m/sとして120分間処理を行い、造粒された粒子を得た。
【0093】
次に、造粒された粒子を1000℃、最高到達温度での保持時間(炭化時間)を5時間として炭化処理した。
【0094】
このようにして得られた実施例1に係る非晶質炭素材料のD50は13.5μmであり、BETは1.5m
2/gであり、円形度は0.970であり、凹凸度合いの値は0.985であった。また、真密度は2.02g/cm
3であり、O/Si比(モル比)は1.03であった。得られた炭素材料中のSi含有率は15.0wt%であった。
【0095】
<実施例2>
生コークスBを、D50が9.6μmとなるよう粉砕及び分級し、生コークス粒子と二酸化ケイ素粒子とを混合して上述の方法で乾式造粒及び炭化を行った。この際、二酸化ケイ素粒子の添加量を53体積%とした。二酸化ケイ素粒子は数回に分けて全量を投入した。全量投入後は周速を80m/sとし、処理時間を120分とした以外は実施例1と同じ条件で造粒及び炭化を行った。
【0096】
このようにして得られた実施例2に係る非晶質炭素材料のD50は24.9μmであり、BETは8.1m
2/gであり、円形度は0.953であり、凹凸度合いの値は0.976であった。また、真密度は2.10g/cm
3であり、O/Si比(モル比)は1.21であった。得られた炭素材料中のSi含有率は14.5wt%であった。
【0097】
<実施例3>
生コークスAを、D50が7.9μmとなるよう粉砕及び分級し、生コークス粒子と二酸化ケイ素粒子とを混合して上述の方法で乾式造粒及び炭化を行った。この際、二酸化ケイ素粒子の添加量を53体積%とした。二酸化ケイ素粒子は数回に分けて全量を投入した。全量投入後は周速を70m/sとし、処理時間を120分とした以外は実施例1と同じ条件で造粒及び炭化を行った。
【0098】
このようにして得られた実施例3に係る非晶質炭素材料のD50は27.1μmであり、BETは10.7m
2/gであり、円形度は0.901であり、凹凸度合いの値は0.949であった。また、真密度は2.07g/cm
3であり、O/Si比(モル比)は1.29であった。得られた炭素材料中のSi含有率は14.4wt%であった。
【0099】
<実施例4>
生コークスAを、D50が7.9μmとなるよう粉砕及び分級し、生コークス粒子と二酸化ケイ素粒子とを混合して上述の方法で乾式造粒及び炭化を行った。この際、二酸化ケイ素粒子の添加量を50体積%とした。二酸化ケイ素粒子は数回に分けて全量を投入した。全量投入後は周速を70m/sとし、処理時間を180分とした以外は実施例1と同じ条件で造粒を行った。
【0100】
このようにして得られた実施例4に係る非晶質炭素材料のD50は21.1μmであり、BETは1.6m
2/gであり、円形度は0.947であり、凹凸度合いの値は0.973であった。また、真密度は2.02g/cm
3であり、O/Si比(モル比)は1.31であった。得られた炭素材料中のSi含有率は15.0wt%であった。また、タップ密度は1.2g/cm
3であった。
【0101】
<実施例5>
生コークスAを、D50が4.8μmとなるよう粉砕及び分級し、生コークス粒子と二酸化ケイ素粒子とを混合して上述の方法で乾式造粒及び炭化を行った。この際、二酸化ケイ素粒子の添加量を50体積%とした。二酸化ケイ素粒子は数回に分けて全量を投入した。全量投入後の周速を80m/sとし、処理時間を210分とした以外は実施例1と同じ条件で造粒及び炭化を行った。
【0102】
このようにして得られた実施例5に係る非晶質炭素材料のD50は9.6μmであり、BETは2.5m
2/gであり、円形度は0.963であり、凹凸度合いの値は0.981であった。また、真密度は2.04g/cm
3であり、O/Si比(モル比)は1.27であった。得られた炭素材料中のSi含有率は15.1wt%であった。また、タップ密度は1.17g/cm
3であった。
【0103】
<実施例6>
実施例4に係る非晶質炭素材料と実施例5に係る非晶質炭素材料とを重量比7:3で混合した非晶質炭素材料を実施例6とした。得られた炭素材料のタップ密度は1.27g/cm
3であった。
【0104】
<実施例7>
生コークスAを、D50が5.8μmとなるよう粉砕及び分級し、生コークス粒子と二酸化ケイ素粒子とを混合して上述の方法で乾式造粒及び炭化を行った。この際、二酸化ケイ素粒子の添加量を61体積%とし、二酸化ケイ素粒子は数回に分けて全量を投入した。全量投入後の周速を80m/sとし、処理時間を120分とした以外は実施例1と同じ条件で造粒及び炭化を行った。
【0105】
このようにして得られた実施例7に係る非晶質炭素材料のD50は12.1μmであり、BETは5.0m
2/gであり、円形度は0.967であり、凹凸度合いの値は0.983であった。また、真密度は2.09g/cm
3であり、O/Si比(モル比)は1.14であった。得られた炭素材料中のSi含有率は20.0wt%であった。
【0106】
<実施例8>
生コークスAを、D50が5.7μmとなるよう粉砕及び分級し、生コークス粒子と二酸化ケイ素粒子とを混合して上述の方法で乾式造粒及び炭化を行った。この際、二酸化ケイ素粒子の添加量を80体積%とし、二酸化ケイ素粒子は数回に分けて全量を投入した。全量投入後の周速を80m/sとし、処理時間を60分とした以外は実施例1と同じ条件で造粒及び炭化を行った。
【0107】
このようにして得られた実施例8に係る非晶質炭素材料のD50は13.6μmであり、BETは27.2m
2/gであり、円形度は0.967であり、凹凸度合いの値は0.983であった。また、真密度は2.19g/cm
3であり、O/Si比(モル比)は1.26であった。得られた炭素材料中のSi含有率は35.0wt%であった。
【0108】
なお、既に説明した
図1は、本実施例に係る非晶質炭素材料の断面を上述の方法で撮影した顕微鏡写真を示す図である。同図から、本実施例に係る非晶質炭素材料は、円形度が高くなっているとともに、内部に空隙20が形成されていることが分かる。
【0109】
<実施例9、10>
コークスAを、D50が4.8μmとなるよう粉砕及び分級し、粒径が400nmになるように破砕したケイ素粒子と混合し、上述の方法で乾式造粒及び炭化を行った。この際、実施例9ではケイ素粒子の添加量を7体積%、実施例10ではケイ素粒子の添加量を28体積%とした。ケイ素粒子は数回に分けて全量を投入した。ケイ素粒子の全量を投入した後に、実施例9では周速を80m/s、処理時間を420分とし、実施例10では周速を80m/s、処理時間を390分とした以外は実施例1と同じ条件でそれぞれ造粒及び炭化を行った。
【0110】
このようにして得られた実施例9に係る非晶質炭素材料のD50は8.8μmであり、BETは1.8m
2/gであり、円形度は0.966であり、凹凸度合いの値は0.981であった。また、真密度は1.80g/cm
3であり、O/Si比(モル比)は1.18であった。得られた炭素材料中のSi含有率は3.0wt%であった。
【0111】
また、実施例10に係る非晶質炭素材料のD50は8.8μmであり、BETは9.5m
2/gであり、円形度は0.963であり、凹凸度合いの値は0.982であった。また、真密度は1.94g/cm
3であり、O/Si比(モル比)は1.17であった。得られた炭素材料中のSi含有率は11.7wt%であった。
【0112】
図3は、本実施例に係る非晶質炭素材料の断面を上述の方法で撮影した顕微鏡写真を示す図である。同図から、本実施例に係る非晶質炭素材料は、内部に空隙20が形成されているとともに、酸化ケイ素粒子5を含んでいることが分かる。
【0113】
<実施例11>
生コークスBを、D50が9.6μmとなるよう粉砕及び分級し、生コークス粒子と二酸化ケイ素粒子とを混合して上述の方法で乾式造粒及び炭化を行った。この際、二酸化ケイ素粒子の添加量を53体積%とした。二酸化ケイ素粒子は数回に分けて全量を投入した。全量投入後は周速を80m/sとし、処理時間を105分とした以外は実施例1と同じ条件で造粒及び炭化を行った。
【0114】
このようにして得られた実施例11に係る非晶質炭素材料のD50は24.8μmであり、BETは8.8m
2/gであり、円形度は0.921であり、凹凸度合いの値は0.961であった。また、真密度は2.10g/cm
3であり、O/Si比(モル比)は1.22であった。得られた炭素材料中のSi含有率は10.0wt%であった。
【0115】
<実施例12>
生コークスAを、D50が5.7μmとなるよう粉砕及び分級し、生コークス粒子と二酸化ケイ素粒子とを混合して上述の方法で乾式造粒及び炭化を行った。この際、二酸化ケイ素粒子の添加量を80体積%とした。二酸化ケイ素粒子は数回に分けて全量を投入した。全量投入後の周速を80m/sとし、処理時間を60分とし、炭化温度を1200℃とした以外は実施例1と同じ条件で造粒及び炭化を行った。
【0116】
このようにして得られた実施例12に係る非晶質炭素材料のD50は14.0μmであり、BETは32.5m
2/gであり、円形度は0.965であり、凹凸度合いの値は0.979であった。また、真密度は2.18g/cm
3であり、O/Si比(モル比)は1.59であった。得られた炭素材料中のSi含有率は35.2wt%であった。
【0117】
また、
図4は、実施例12に係る非晶質炭素材料の断面を上述の方法で撮影した顕微鏡写真を示す図である。同図から、本実施例に係る非晶質炭素材料は、円形度が高くなっているとともに、内部に空隙20が形成されていることが分かる。
【0118】
<比較例1>
生コークスAを、D50が6.0μmとなるよう粉砕及び分級し、生コークス粒子のみで乾式造粒を行った。造粒では、周速を80m/sとし、処理時間を240分とした。次に、造粒された粒子を1000℃、最高到達温度での保持時間を5時間とする条件で炭化処理した。
【0119】
このようにして得られた比較例1に係る非晶質炭素材料のD50は14.6μmであり、BETは0.3m
2/gであり、円形度は0.963であり、凹凸度合いの値は0.981であった。であった。また、真密度は1.76g/cm
3であり、O/Si比(モル比)は1.44であった。
【0120】
<比較例2>
D50が8.5μmである黒鉛を、二酸化ケイ素粒子と混合して上述の方法で乾式造粒及び炭化を行った。この際、二酸化ケイ素粒子の添加量を63体積%とした。二酸化ケイ素粒子は数回に分けて全量を投入した。全量投入後は周速を70m/sとし、処理時間を120分とした以外は実施例1と同じ条件で造粒及び炭化を行った。
【0121】
このようにして得られた比較例2に係る炭素材料は十分に複合化しておらず、二酸化ケイ素粒子の一部は黒鉛に付着していなかった。BETは33.2m
2/gであり、円形度は0.812であり、凹凸度合いの値は0.899であった。また、真密度は2.31g/cm
3であり、O/Si比(モル比)は1.96であった。得られた炭素材料中のSi含有率は14.8wt%であった。
【0122】
<比較例3>
コークスAを、D50が4.8μmとなるよう粉砕及び分級し、生コークス粒子と二酸化ケイ素粒子とを手混合した。コークス粒子に対するケイ素粒子の添加量は50体積%とした。造粒処理は行わず、1000℃、5時間の条件で炭化処理を行った。
【0123】
このようにして得られた比較例3に係る非晶質炭素材料のBETは39.1m
2/gであり、円形度は0.745であり、凹凸度合いの値は0.856であった。また、真密度は2.14g/cm
3であり、O/Si比(モル比)は1.88であった。
【0124】
以上のようにして作製された実施例及び比較例に係る炭素材料について、初期充電容量及び初期放電容量を測定し、初期効率を算出した。また、初期放電容量に対する、10サイクル充放電後の放電容量の割合をサイクル維持率とした。
【0125】
なお、比較例3については実施例1〜12及び比較例1、2と同様の方法で電極の作製を試みたが、銅箔から活物質層が剥離したため、試料1重量部に対してアセチレンブラックを0.047重量部、PVdFを0.116重量部加えるよう組成を変更している。
【0126】
−測定結果−
実施例1〜10、12及び比較例1〜3に係る炭素材料についての試験結果を表4に示す。
【0127】
【表4】
【0128】
表4に示すように、実施例1〜10、12に係る炭素材料では、いずれも初期放電容量が300mAhを十分に上回っており、また、サイクル維持率も80%以上と、酸化ケイ素を含む炭素材料としては、十分に高くすることができた。
【0129】
また、例えば実施例1に係る炭素材料と比較例1に係る炭素材料とでは、いずれも生コークスを原料としているため、得られた炭素材料には易黒鉛化非晶質炭素が含まれている。しかしながら、実施例1に係る炭素材料では、比較例1に係る炭素材料に比べて、初期効率がやや低下しているものの、初期放電容量は大幅に増加しており、サイクル特性の低下も小さく抑えられていることが確認できた。
【0130】
一方、黒鉛を炭素原料として用いた場合(比較例2)では、球形化処理を行っても炭素材料とケイ素材料との複合化ができず、また、初期放電容量の向上効果は見られなかった。これは、黒鉛に揮発成分が含まれていないことで、炭化工程において二酸化ケイ素粒子が還元されず、ケイ素の容量向上効果が十分に得られなかったためと考えられる。
【0131】
また、造粒処理を行わなかった場合(比較例3)は、例えば実施例5と比べて二酸化ケイ素粒子の添加量が同程度であっても、ケイ素の容量向上効果が十分に得られないことが確認できた。これは、生コークス粒子と二酸化ケイ素粒子とが複合化されていないことで、炭化処理時に生コークスから発生した揮発分が二酸化ケイ素を効果的に還元できなかったことによると考えられる。
【0132】
また、実施例2の結果から、石油系針状コークスを炭素原料として用いた場合でも、石油系非針状コークスを炭素原料として用いた場合と同様に、優れた効果を得ることができることが分かった。
【0133】
実施例9、10の結果から、ケイ素原料として粉砕されたケイ素粒子を用いても、ケイ素原料を用いない場合(比較例1)に比べて初期放電容量を大きくすることができるとともに、初期効率は維持され、サイクル特性の低下も小さく抑えられることが確認できた。
【0134】
なお、実施例1〜12に係る非晶質炭素材料では、O/Si比がいずれも0.2以上2.0未満となっており、ケイ素の含有率は1重量%を超えて50重量%以下となっていた。真密度はいずれも1.8g/cm
3以上2.2g/cm
3以下となっており、ケイ素原料を用いない場合(比較例1)に比べて大きく、黒鉛を炭素原料とした場合(比較例2)に比べて小さくなっていた。
【0135】
また、実施例4に係る炭素材料と実施例5に係る炭素材料とを重量比7:3で混合した実施例6では、造粒によって酸化ケイ素を易黒鉛化非晶質炭素中に複合化した粒径が異なる二種類の粒子を混合して用いることによって、本発明のサイクル特性改善の効果を損なうことなく、タップ密度を向上させることができ、電極密度を高くできる炭素材料を得ることができた。
【0136】
また、実施例1〜12に係る非晶質炭素材料の遷移金属含有率は、いずれも700ppm以上2500ppm以下であったが、比較例1〜3に係る炭素材料に含まれる遷移金属含有率との間に大きな差は見られなかった。