特許第6287110号(P6287110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6287110
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
   B25F5/00 G
【請求項の数】19
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-243617(P2013-243617)
(22)【出願日】2013年11月26日
(65)【公開番号】特開2015-100887(P2015-100887A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】日立工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080001
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 大和
(72)【発明者】
【氏名】菊池 一
【審査官】 中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−098282(JP,A)
【文献】 特開2008−173716(JP,A)
【文献】 特開2006−231457(JP,A)
【文献】 特開2012−171038(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/122108(WO,A1)
【文献】 特開2005−305647(JP,A)
【文献】 実開昭54−067878(JP,U)
【文献】 実開昭59−012553(JP,U)
【文献】 特開2009−101500(JP,A)
【文献】 特開2006−123086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 1/00− 5/02
B25B 21/00−21/02
B25D 1/00−17/32
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータの動力で作業具を駆動する電動工具であって、
前記電動モータが設けられた装置本体と、
前記電動モータの出力軸に対して略平行であり、かつ、前記出力軸に対して偏心して配置されたスピンドルを有し、かつ、前記出力軸の動力を前記スピンドルを介して前記作業具に伝達する動力伝達機構と、
前記装置本体の内部に配置され、前記電動モータに電力を供給する電源回路と、
前記装置本体の内部に配置され、前記電源回路から前記電動モータに供給される電力を制御する制御回路と、
前記出力軸の回転中心である軸線に沿った前後方向において前記動力伝達機構より後方に設けられるとともに、前記電動モータの半径方向外側に設けられ、かつ、前記半径方向の配置領域の一部が、前記動力伝達機構の配置領域の一部と重なっている第1収容室と、
を有し、
前記装置本体は、
前記電動モータを収容するモータハウジングと、
前記モータハウジングに対して相互に並列に接続された第1接続部及び第2接続部と、前記第1接続部及び前記第2接続部に接続されたグリップと、
前記グリップに設けられ、かつ、作業者により操作されるトリガと、
を有し、
前記出力軸を中心とする円周方向で、前記動力伝達機構の配置領域と、前記電源回路また前記制御回路の配置領域とが、少なくとも一部で重なっており、
前記電源回路または前記制御回路の一方は、前記第1収容室に配置され、
前記電源回路または前記制御回路の他方は、前記第1接続部に配置されている、電動工具。
【請求項2】
前記出力軸を中心とする半径方向で、前記動力伝達機構の配置領域と、前記第1収容室に配置されている前記電源回路または前記制御回路の一方の配置領域とが、少なくとも一部で重なっている、請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記装置本体に、前記装置本体の外部から前記装置本体の内部に進入する空気が通る通気孔が設けられている、請求項1または2に記載の電動工具。
【請求項4】
記通気孔は、前記第1収容室の外壁に設けられている、請求項3に記載の電動工具。
【請求項5】
前記通気孔は、前記第1接続部に設けられている、請求項3に記載の電動工具。
【請求項6】
前記電源回路が、前記第1収容室に設けられ、
前記制御回路が、前記第1接続部に設けられている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動工具。
【請求項7】
前記グリップに電源コードの端部が取り付けられ、
前記電源コードと前記電源回路とを接続する電源ケーブルは、前記グリップ及び前記第2接続部に亘って配置され、
前記電源回路と前記制御回路とを接続する制御回路用電源供給ケーブルは、前記第2接続部及び前記グリップに配置されている、
請求項6に記載の電動工具。
【請求項8】
記電源回路が、前記第1接続部に設けられ、
前記制御回路が、前記第1収容室に設けられている、請求項1〜3、5のいずれか1項に記載の電動工具。
【請求項9】
前記グリップに電源コードの端部が取り付けられ、
前記電源コードと前記電源回路とを接続する電源ケーブルは、前記第1接続部に配置され、
前記電源回路と前記制御回路とを接続する制御回路用電源供給ケーブルは、前記グリップ及び前記第2接続部に配置されている、
請求項8に記載の電動工具。
【請求項10】
電動モータの動力で作業具を駆動する電動工具であって、
前記電動モータが設けられた装置本体と、
前記電動モータの出力軸に対して略平行であり、かつ、前記出力軸に対して偏心して配置されたスピンドルを有し、かつ、前記出力軸の動力を前記スピンドルを介して前記作業具に伝達する動力伝達機構と、
前記装置本体の内部に配置され、前記電動モータに電力を供給する電源回路と、
前記装置本体の内部に配置され、前記電源回路から前記電動モータに供給される電力を制御する制御回路と、
を有し、
前記出力軸を中心とする円周方向で、前記動力伝達機構の配置領域と、前記電源回路の配置領域とが、少なくとも一部で重なっており、
前記電源回路は、前記出力軸の回転中心である軸線に沿った前後方向において前記動力伝達機構より後方に設けられるとともに、前記電動モータの半径方向外側に配置され、かつ、前記半径方向における配置領域の一部が、前記動力伝達機構の配置領域と重なっており、
前記制御回路は、前記前後方向において前記動力伝達機構より後方に設けられるとともに、前記電動モータの半径方向外側に配置され、かつ、前記電動モータを隔てて前記電源回路とは反対側に配置されている、電動工具。
【請求項11】
前記装置本体は、
前記電動モータを収容するモータハウジングと、
前記モータハウジングに対して相互に並列に接続された第1接続部及び第2接続部と、
前記第1接続部及び前記第2接続部に接続されたグリップと、
を有し、
前記グリップに電源コードの端部が取り付けられ、
前記電源コードと前記電源回路とを接続する電源ケーブルは、前記グリップ及び前記第2接続部に配置され、
前記電源回路と前記制御回路とを接続する制御回路用電源供給ケーブルは、前記第2接続部及び前記グリップ及び前記第1接続部に配置されている、請求項10に記載の電動工具。
【請求項12】
前記装置本体は、
前記電動モータを収容するモータハウジングと、
前記モータハウジングに連続され、かつ、前記モータハウジングと共に前記装置本体をL字形とするグリップと、
を備えている、請求項10に記載の電動工具。
【請求項13】
前記グリップに電源コードの端部が取り付けられ、
前記グリップに配置され、かつ、前記電源コードと前記電源回路とを接続する電源ケーブルと、
前記グリップに配置され、かつ、前記電源回路と前記制御回路とを接続する制御回路用電源供給ケーブルと、
が設けられている、請求項12に記載の電動工具。
【請求項14】
前記出力軸に沿った方向で、前記電源回路の配置領域と、前記電動モータの配置領域とが、少なくとも一部で重なっている、請求項6、7、10、11、12、13のいずれか1項に記載の電動工具。
【請求項15】
前記出力軸に沿った方向で、前記電源回路の配置領域と、前記電動モータの配置領域とが、少なくとも一部で重なっている、請求項8または9に記載の電動工具。
【請求項16】
前記電動モータを制御するスイッチング素子を備える基板を設け、
前記通気孔は、前記基板へ向かう空気が通る第1通気孔を含む、請求項3に記載の電動工具。
【請求項17】
前記装置本体の内部に、
前記電動モータを配置する第2収容室と、
前記第1通気孔を通った空気を前記第2収容室に導く第2通気孔と、が設けられている、請求項16に記載の電動工具。
【請求項18】
記第1通気孔及び前記第2通気孔を通った空気により前記電動モータを冷却する、請求項17に記載の電動工具。
【請求項19】
前記第1収容室は、前記出力軸に直交する断面視において円弧形状に膨らんでおり、
前記電源回路または前記制御回路を含む電気部品は基板に設けられ、
前記基板からの突出量が大きい前記電気部品が、前記第1収容室内で最も膨らんだ位置に配置されている、請求項4に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータの動力を、動力伝達部材を介して作業具に伝達する電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電動モータの動力が動力伝達部材を経由して作業具に伝達されるようにした電動工具が知られており、その電動工具の例が、特許文献1、2に記載されている。特許文献1に記載された電動工具はドライバであり、ドライバは、装置本体としてのハウジングを有する。ハウジングの内部に電動モータが設けられており、電動モータの出力軸に駆動ギヤが設けられている。ハウジング内に動力伝達軸が回転可能に設けられており、動力伝達軸は出力軸に対して偏心して設けられている。動力伝達軸に従動ギヤが形成され、従動ギヤが駆動ギヤに噛み合っている。
【0003】
また、動力伝達軸にスピンドルが取り付けられており、作業具としてのドライバビットがスピンドルに保持される。ハウジングにはグリップが設けられており、作業者がグリップを握る。またグリップにはトリガが設けられており、グリップの端にコードが接続されている。グリップ内に、電源回路、制御回路等が設けられており、作業者がトリガを操作すると、交流電源がコードを介して電動モータに供給されて、出力軸が回転する。出力軸のトルクは、駆動ギヤ、従動ギヤを介して動力伝達軸に伝達され、動力伝達軸のトルクはスピンドルを介してドライバビットに伝達される。
【0004】
一方、特許文献2に記載された電動工具はインパクトドライバであり、インパクトドライバは、装置本体としてのハウジングを有する。ハウジング内に電動モータが設けられており、電動モータの出力軸、減速機構、ハンマ、アンビル等が同軸に配置されている。アンビルに、作業具としてドライバビットが取り付けられる。また、ハウジングには、電動モータの軸線に交差する向きで延ばされたグリップが接続されており、グリップの先端にコードが取り付けられている。グリップの内部には、電源回路、制御回路などが設けられており、グリップにトリガが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−149437号公報
【特許文献2】特開2012−139749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2のいずれにおいても、電動モータに電力を供給する電源回路、制御回路等の電気部品が、グリップ内に設けられているため、装置本体が電動モータの半径方向に大型化する問題があった。
【0007】
本発明の目的は、装置本体が電動モータの半径方向に大型化することを抑制することの可能な電動工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態の電動工具は、電動モータの動力で作業具を駆動する電動工具であって、前記電動モータが設けられた装置本体と、前記電動モータの出力軸に対して略平行であり、かつ、前記出力軸に対して偏心して配置されたスピンドルを有し、かつ、前記出力軸の動力を前記スピンドルを介して前記作業具に伝達する動力伝達機構と、前記装置本体の内部に配置され、前記電動モータに電力を供給する電源回路と、前記装置本体の内部に配置され、前記電源回路から前記電動モータに供給される電力を制御する制御回路と、前記出力軸の回転中心である軸線に沿った前後方向において前記動力伝達機構より後方に設けられるとともに、前記電動モータの半径方向外側に設けられ、かつ、前記半径方向の配置領域の一部が、前記動力伝達機構の配置領域の一部と重なっている第1収容室と、を有し、前記装置本体は、前記電動モータを収容するモータハウジングと、前記モータハウジングに対して相互に並列に接続された第1接続部及び第2接続部と、前記第1接続部及び前記第2接続部に接続されたグリップと、前記グリップに設けられ、かつ、作業者により操作されるトリガと、を有し、前記出力軸を中心とする円周方向で、前記動力伝達機構の配置領域と、前記電源回路また前記制御回路の配置領域とが、少なくとも一部で重なっており、前記電源回路または前記制御回路の一方は、前記第1収容室に配置され、前記電源回路または前記制御回路の他方は、前記第1接続部に配置されている。
【0009】
他の実施形態の電動工具は、電動モータの動力で作業具を駆動する電動工具であって、前記電動モータが設けられた装置本体と、前記電動モータの出力軸に対して略平行であり、かつ、前記出力軸に対して偏心して配置されたスピンドルを有し、かつ、前記出力軸の動力を前記スピンドルを介して前記作業具に伝達する動力伝達機構と、前記装置本体の内部に配置され、前記電動モータに電力を供給する電源回路と、前記装置本体の内部に配置され、前記電源回路から前記電動モータに供給される電力を制御する制御回路と、を有し、前記出力軸を中心とする円周方向で、前記動力伝達機構の配置領域と、前記電源回路の配置領域とが、少なくとも一部で重なっており、前記電源回路は、前記出力軸の回転中心である軸線に沿った前後方向において前記動力伝達機構より後方に設けられるとともに、前記電動モータの半径方向外側に配置され、かつ、前記半径方向における配置領域の一部が、前記動力伝達機構の配置領域と重なっており、前記制御回路は、前記前後方向において前記動力伝達機構より後方に設けられるとともに、前記電動モータの半径方向外側に配置され、かつ、前記電動モータを隔てて前記電源回路とは反対側に配置されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電動工具によれば、装置本体が電動モータの半径方向に大型化することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】電動工具の実施の形態1であるドライバを示す平面図である。
図2図1のドライバの正面図である。
図3図1のドライバの正面断面図である。
図4図3のドライバをモータハウジングで破断した側面断面図である。
図5図1のドライバの電気要素同士の接続関係を示す模式図である。
図6図1のドライバの制御系統を示すブロック図である。
図7図1のドライバのケーシング内における空気の流れを示す正面断面図である。
図8】電動工具の実施の形態2であるドライバを示す正面断面図である。
図9図8のドライバを接続部で破断した側面断面図である。
図10図8のドライバのケーシング内における空気の流れを示す正面断面図である。
図11】電動工具の実施の形態3であるドライバを示す正面断面図である。
図12図11のドライバをモータハウジングで破断した側面断面図である。
図13図11のドライバのケーシング内における空気の流れを示す正面断面図である。
図14】電動工具の実施の形態4であるドライバを示す正面断面図である。
図15図14のドライバのケーシング内における空気の流れを示す正面断面図である。
図16】電動工具の実施の形態5であるドライバを示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
電動工具の一例としてのドライバを、図1図5を参照して説明する。このドライバ10は、樹脂材料により成形された装置本体としてのケーシング11を有し、ケーシング11は電動工具本体を構成している。ケーシング11は電動モータ12が収容されたモータハウジング13と、モータハウジング13の端部に第2接続部64を介して接続されたグリップ14と、グリップ14とモータハウジング13とを接続した第1接続部15とを有する。第1接続部15及び第2接続部64は、相互に並列にモータハウジング13に接続されている。
【0015】
モータハウジング13内に、電動モータ12が収容される収容室16と、電源回路ユニット17が収容される収容室18とが設けられており、収容室16と収容室18とを隔てる壁部19が設けられている。収容室16と収容室18とは、グリップ14の長さ方向に並べて配置されている。収容室18は、第2軸線Bを中心とする半径方向で、電動モータ12の外側に配置されている。
【0016】
また、ケーシング11の内部には、収容室18と、グリップ14の内部に設けた収容室20とを隔てる壁部21が設けられている。壁部21は、モータハウジング13の上壁22と、モータハウジング13において最もグリップ14に近い位置に設けられた壁部23とをつないでいる。また、壁部21と壁部19との間に通気孔47が設けられており、通気孔47は、収容室16と収容室18とをつないでいる。通気孔47は、収容室18内の空気を収容室16に導く通路である。上壁22の断面形状は、モータハウジング13の外部に向けて膨らむ円弧形状である。上壁22には通気孔22aが設けられており、通気孔22aは、ケーシング11の外部と、収容室18とをつないでいる。
【0017】
さらに、モータハウジング13は、収容室16を取り囲むように設けられた2つの側壁43及び下壁24を有する。2つの側壁43は円弧形状であり、下壁24は円弧形状である。下壁24の両端に側壁43が別個に連続されている。壁部19は2つの側壁43の上端を連続している。2つの側壁43における冷却ファン35の側方に、通気孔43aがそれぞれ設けられている。通気孔43aは、収容室16と、ケーシング11の外部とをつないでいる。また、下壁24と壁部23とをつなぐ壁部25が設けられている。
【0018】
電動モータ12はブラシレスモータであり、電動モータ12は、モータハウジング13に固定されたステータ26と、回転可能なロータ27とを有する。ステータ26は、環状のステータコア28と、ステータコア28の内側に設けた複数のティース28aと、複数のティース28aにそれぞれ巻かれたコイル29とを有する。ロータ27は永久磁石27aを有しており、ロータ27は出力軸30と共に一体回転する。出力軸30の回転方向は、正回転と逆回転とに切り替えることが可能である。
【0019】
モータハウジング13において壁部23とは反対側の端部に、隔壁31が固定されている。また、隔壁31にギヤカバー32が取り付けられており、ギヤカバー32に筒状のカバー33が取り付けられている。壁部23及び隔壁31により支持された2個の軸受34が設けられており、出力軸30は2個の軸受34により回転可能に支持されており、第1軸線Aは、出力軸30の回転中心である。収容室16は、第1軸線Aに沿った方向で、壁部23と隔壁31との間に形成されている。収容室16における電動モータ12と隔壁31との間に、冷却ファン35が設けられている。冷却ファン35は出力軸30に固定されており、冷却ファン35は出力軸30と共に回転する。
【0020】
隔壁31には軸孔が設けられており、出力軸30は軸孔に挿入されており、出力軸30の一部はギヤカバー32の内部に位置している。出力軸30においてギヤカバー32の内部に配置された箇所の外周面に、駆動ギヤ36が設けられている。さらに、ギヤカバー32の内部にシャフト37が設けられており、シャフト37は軸受38により回転可能に支持されている。シャフト37は第2軸線Bに沿った方向には移動しない。
【0021】
シャフト37と一体回転する従動ギヤ39が設けられており、従動ギヤ39は駆動ギヤ36に噛み合っている。従動ギヤ39の歯数は駆動ギヤ36の歯数よりも多く、出力軸30のトルクがシャフト37に伝達される場合に、シャフト37の回転速度は、出力軸30の回転速度よりも低速となる。すなわち、駆動ギヤ36及び従動ギヤ39が減速機構である。
【0022】
そして、第1軸線Aと垂直な平面内で、従動ギヤ39の配置領域の一部と、電源回路ユニット17の配置領域の一部とが重なっている。具体的に説明すると、第1軸線Aを中心とする半径方向及び円周方向において、従動ギヤ39の配置領域の一部と、電源回路ユニット17の配置領域の一部とが重なっている。また、第1軸線Aと垂直な平面内で、従動ギヤ39の配置領域の一部と、電動モータ12の配置領域の一部とが重なっている。
【0023】
ギヤカバー32の内部からカバー33の内部に亘りスピンドル40が設けられている。スピンドル40は、第2軸線Bを中心とする凹部40aを有し、シャフト37の一端が凹部40aに配置されている。スピンドル40とシャフト37とは相対回転可能である。スピンドル40とシャフト37とは、第2軸線Bを中心として相対回転可能である。スピンドル40は、カバー33内で第2軸線Bに沿った方向に移動可能である。従動ギヤ39、スピンドル40、シャフト37は同心状に配置されている。従動ギヤ39の外径は、スピンドル40の外径またはシャフト37の外径よりも大きい。
【0024】
また、従動ギヤ39とスピンドル40との間の動力伝達経路を接続または遮断するクラッチ機構78が設けられている。クラッチ機構78は、ギヤカバー32内に設けられており、クラッチ機構78は、従動ギヤ39とスピンドル40との間に配置された可動部材79を有する。可動部材79は、シャフト37に取り付けられており、可動部材79は、シャフト37に対して第2軸線Bに沿った方向に移動可能である。可動部材79は噛み合い部80,81を有する。クラッチ機構78は、スピンドル40に設けた噛み合い部82と、従動ギヤ39における軸受38とは反対側に設けた噛み合い部83とを有する。また、従動ギヤ39と可動部材79との間に弾性部材84が設けられている。弾性部材84は、金属製の圧縮バネである。
【0025】
第2軸線Bと第1軸線Aとは平行であり、かつ、非同軸である。第1軸線Aと第2軸線Bとは、グリップ14の長さ方向に位置ずれ、つまり、偏心している。そして、作業具としての先端工具42が、スピンドル40により保持される。図に示す先端工具42はドライバビットであり、ねじ部材を締め付けたり弛めたりするためのものである。
【0026】
電動モータ12に電力を供給する要素を、図3図5を参照して説明する。まず、収容室16にFET基板44が設けられている。FET基板44は回転しないようにステータ26に固定されており、FET基板44に設けた軸孔に出力軸30が配置されている。FET基板44には、複数のスイッチング素子45が取り付けられている。複数のスイッチング素子45としては、例えば、FET(Field Effect Transistor )等が用いられる。複数のスイッチング素子45は、3相、つまり、U相、V相、Y相に対応するコイル29に接続されている。
【0027】
図3では、スイッチング素子45の長さ方向は、出力軸30と略平行になるようにFET基板44上に配置されている。なお、スイッチング素子45の長さ方向を、出力軸30と直交する方向に配置すれば、ケーシング11の出力軸30の方向の寸法を抑えることもできる。出力軸30と直交する方向とは、FET基板44と平行な方向である。
【0028】
FET基板44は、第1軸線Aに沿った方向で、電動モータ12と壁部23との間に配置されている。また、複数のスイッチング素子45は、第1軸線Aに沿った方向でFET基板44と壁部23との間に配置されている。FET基板44及び複数のスイッチング素子45により、FET基板ユニット49が形成されている。FET基板ユニット49は、いわゆるインバータ回路の役割を果たす。第1軸線Aに沿った方向で、電動モータ12の配置領域内に、電動モータ12と、FET基板44と、スイッチング素子45の一部とが配置されている。そして、2つの側壁43であって、複数のスイッチング素子45の側方に通気孔43bが設けられている。通気孔43bは、ケーシング11の外部と収容室16とをつないでいる。
【0029】
FET基板44は、モータ用電源供給ケーブル46により電源回路ユニット17に接続されている。モータ用電源供給ケーブル46は、収容室16,18に亘って配置されている。電源回路ユニット17は、回路基板48と、回路基板48に取り付けられた電気部品、例えば、整流回路50、フィルムコンデンサ51、ノーマルモードフィルタ52等を有する。フィルムコンデンサ51は発熱しにくい特性を有する。ノーマルモードフィルタ52は、電源コード55から供給される交流電源56から発生するノイズを除去するためのチョークコイル52aと、スイッチング素子45によって発生するノイズを除去するためのコンデンサ52bとを有する。交流電源56は、例えばAC100V電源である。整流回路50は、公知のダイオード50aを4個組み合わせたダイオードブリッジであり、整流回路50は、交流電源56を直流に整流するためのものである。整流回路50、フィルムコンデンサ51、ノーマルモードフィルタ52等により、電源回路54が構成されている。さらに、電源回路ユニット17は、回路基板48及び電気部品を覆うカバー53を有する。
【0030】
また、図4に示すように、ケーシング11の上壁22は、その断面が円弧形状に膨らんでいる。このため、図4の左右方向において、収容室18内の中央部分に背の高い電気部品を配置することで、収容室18の空間を有効に活用することができる。背の高い電気部品とは、回路基板48の表面からの突出量が大きい電気部品である。ケーシング11のグリップ14の長さ方向における寸法の大型化を抑制することができる。グリップ14の長さ方向とは、第2軸線Bに沿った方向である。
【0031】
また、カバー53を設けたことにより、通気孔22aからケーシング11内に侵入した粉塵が、直接、電源回路54に衝突することを抑制することができ、電源回路54を構成する電気部品の破損を抑制することができる。なお、カバー53は、通気孔22aと対向する位置だけに設け、その他の位置にある電気部品をカバー53から露出する構成としてもよい。カバー53をこのように構成すると、粉塵が電気部品に直撃することを抑制し、かつ、電気部品を効率良く冷却することができる。
【0032】
一方、前記ケーシング11におけるグリップ14と第1接続部15との接続箇所には、電源コード55の一端が接続されている。電源コード55の他端にプラグが設けられており、プラグは交流電源56に着脱可能である。電源コード55に接続された2本の電源ケーブル57が設けられており、2本の電源ケーブル57は電源回路54に接続されている。2本の電源ケーブル57は、グリップ14の収容室20、第2接続部64の内部65、収容室18に亘って配置されている。
【0033】
グリップ14における第2接続部64に近い箇所にトリガ58が設けられている。トリガ58は作業者により操作される。グリップ14の収容室20にはスイッチ59が設けられており、トリガ58の操作によりスイッチ59が接続または遮断される。スイッチ59の外壁には、2本の電源ケーブル57がねじ60により固定されている。フィルムコンデンサ51は、収容室20において電源コード55の端部と、スイッチ59との間に配置されており、フィルムコンデンサ51は、電源回路54に接続されている。
【0034】
第1接続部15内に収容室61が形成され。収容室61に制御回路62が設けられている。収容室61は、第2軸線Bを中心とする半径方向で、電動モータ12の外側に配置されている。収容室61は、電動モータ12を隔てて収容室18の反対の位置に配置されている。
【0035】
制御回路62は、コントローラ71、制御信号出力回路72等を有する公知のものである。制御信号出力回路72は、パルス幅変調(PWM(Pulse Width Modulation))信号を出力して、複数のスイッチング素子45のオンの割合であるデューティ比を制御する。制御回路62には、トリガ58の操作信号、正逆回転切替スイッチ68の操作信号、出力軸回転数センサ73の検出信号等が入力される。出力軸回転数センサ73は、ロータ27の円周方向に沿って配置された複数のホール素子等を有する。制御回路62と電源回路54とを接続する制御回路用電源供給ケーブル63が設けられている。制御回路用電源供給ケーブル63は、収容室18から、内部65及び収容室20を経て収容室61に到達している。
【0036】
制御回路62とFET基板44とを接続するFET駆動用信号ケーブル66が設けられている。FET駆動用信号ケーブル66は収容室61に配置されている。さらに、制御回路62とスイッチ59とを接続するスイッチ信号ケーブル67が設けられている。スイッチ信号ケーブル67は、収容室20及び収容室61に亘って配置されている。
【0037】
第1接続部15の収容室61に正逆回転切替スイッチ68が設けられている。正逆回転切替スイッチ68は、作業者により操作されるものであり、正逆回転切替スイッチ68は制御回路62と壁部25との間に配置されている。正逆回転切替スイッチ68と制御回路62とを接続する正逆回転切替スイッチ信号ケーブル69が設けられている。正逆回転切替スイッチ信号ケーブル69は、収容室61に配置されている。
【0038】
上記ドライバ10は、トリガ58が操作されると、交流電源56の電力が電源回路54を介して電動モータ12に供給され、出力軸30が回転する。出力軸30のトルクは、駆動ギヤ36及び従動ギヤ39を介して先端工具42に伝達される。また、正逆回転切替スイッチ68を操作することで、出力軸30が正回転または逆回転する。出力軸30のトルクは、駆動ギヤ36を介して従動ギヤ39に伝達される。
【0039】
ここで、先端工具42が対象物に押し付けられていなければ、弾性部材84の力で噛み合い部80と噛み合い部83とが離されている。つまり、クラッチ機構78は解放されている。このため、従動ギヤ39のトルクはスピンドル40には伝達されない。
【0040】
これに対して、先端工具42が対象物に押し付けられると、噛み合い部80と噛み合い部83とが噛み合う。つまり、クラッチ機構78が係合される。このため、従動ギヤ39のトルクはスピンドル40を介して先端工具42に伝達され、ねじ部材を締め付けるか、または、ねじ部材を緩める作業が行われる。
【0041】
図3に示すグリップ14の長さ方向は、図4の上下方向に相当する。つまり、モータハウジング13を側面断面視すると、グリップ14の長さ方向で、収容室18と第1軸線Aとの間に、第2軸線Bが配置されている。また、第1軸線Aと第2軸線Bとは、グリップ14の長さ方向で異なる位置に配置されており、上壁22から第1軸線Aまでの距離は、上壁22から第2軸線Bまでの距離よりも長い。また、電動モータ12と、減速機構としての駆動ギヤ36及び従動ギヤ39とは、第1軸線Aに沿った方向で異なる位置に配置されている。そして、モータハウジング13の上壁22と、電動モータ12との間にある空いた空間を収容室18とし、収容室18に電源回路ユニット17が配置されている。このため、ドライバ10が、電動モータ12の半径方向に大型化することを抑制できる。すなわち、グリップ14の長さ方向、または第1軸線Aと交差する方向に、ドライバ10が大型化することを抑制でき、作業性、操作性が向上する。
【0042】
ところで、電動モータ12は、コイル29への通電により発熱し、電源回路ユニット17は、ダイオード50aへの通電により発熱し、FET基板ユニット49は、スイッチング素子45の通電により発熱する。本実施形態のドライバ10は、電動モータ12及び電源回路ユニット17及びFET基板ユニット49を、以下のように冷却することができる。出力軸30が回転すると冷却ファン35が回転し、図7のようにケーシング11の外部の空気が、通気孔22aを経由して収容室18に進入し、電源回路ユニット17が冷却される。収容室18に進入した空気は、通気孔47を経て収容室16に進入する。さらに、ケーシング11の外部の空気が、通気孔43bを経由して収容室16に進入する。このため、FET基板ユニット49及び電動モータ12が冷却され、収容室16の空気は通気孔43aからケーシング11の外部に排出される。
【0043】
すなわち、ケーシング11の外部からの新鮮な空気を取り込み、その空気によって電源回路ユニット17及びFET基板ユニット49が最初に冷却される。新鮮な空気とは、ケーシング11内に設けられている部品の温度よりも低い温度の空気を意味する。その後、空気は電動モータ12を冷却し、ケーシング11の外部に排出される。電動モータ12は、電源回路ユニット17及びFET基板ユニット49を冷却した後の空気によって冷却されるため、電動モータ12を冷却する空気の温度は、電源回路ユニット17等を冷却する前の空気の温度よりも高くなってしまう。しかしながら、2つの通気孔22a,43bから進入した空気が、温度の高い空気と合流して、電動モータ12を冷却するため、風量が増大することにより、電動モータ12を効果的に冷却することができる。
【0044】
また、ドライバ10は、ケーシング11内における空気の流れを阻害しないように、各種のケーブルが配置されている。空気の通る経路である通気孔47、収容室16,18には、2本の電源ケーブル57の一部、モータ用電源供給ケーブル46の一部、フィルムコンデンサ51のケーブルの一部、制御回路用電源供給ケーブル63の一部が配置されていることに止まり、FET駆動用信号ケーブル66、スイッチ信号ケーブル67、正逆回転切替スイッチ信号ケーブル69は、通気孔47、収容室16,18には、配置されていない。したがって、空気の流れが阻害されることを抑制できる。
【0045】
さらに、電動モータ12を収容する収容室16と、電源回路ユニット17を収容する収容室18とを仕切る壁部19には通気孔47が設けられている。一方、収容室16と、制御回路62を収容する収容室61とを仕切る壁部25には、通気孔は設けられていない。したがって、通気孔22aから収容室18に入った空気が、電動モータ12側に効率良く流れるとともに、雨水等が収容室16に浸入しても、雨水等が制御回路62側に流れることを抑制できる。すなわち、収容室16と収容室18とをつなぐ通気孔47が設けられて収容室18を形成するモータハウジング13の上壁22に通気孔22aを設けることにより、電源回路ユニット17及び電動モータ12を効率良く冷却できる。一方、雨水等が、制御回路62が位置する収容室61に浸入することを抑制できる。
【0046】
さらに、電動モータ12への電力供給を制御するスイッチング素子45を収容室16内に配置している。収容室16は冷却風の通路であるため、スイッチング素子45も効率良く冷却することができる。また、通気孔22aと通気孔75とを、電源回路ユニット17が延びる方向にずらして配置してある。電源回路ユニット17が延びる方向は、第2軸線Bに沿った方向である。このため、冷却風が電源回路ユニット17に沿って流れる距離を稼ぐことができ、電源回路ユニット17を効率良く冷却することができる。
【0047】
(実施の形態2)
実施の形態2のドライバを、図5図6図8図10を参照して説明する。実施の形態2のドライバ10において、実施の形態1のドライバ10と同じ構成部分については、実施の形態1のドライバ10と同じ符号を付してある。また、図5に示す電気要素同士の接続関係、及び図6に示す制御系統は、実施の形態2のドライバ10にもあてはまる。
【0048】
実施の形態2のドライバ10は、収容室18に制御回路62が設けられ、電源回路ユニット17が、第1接続部15の収容室61に収容されている。図9のように、第1接続部15において収容室61の両側に通気孔15aが設けられている。通気孔15aは、収容室61とケーシング11の外部とをつなぐ。実施の形態2におけるドライバ10は、通気孔47を備えておらず、壁部25に通気孔75が設けられている。また、内部65と収容室18との間に壁部21は設けられていない。さらにモータハウジング13の上壁22に通気孔22aは設けられていない。
【0049】
通気孔75は、収容室16と、第1接続部15の収容室61とをつないでいる。そして、モータ用電源供給ケーブル46は、収容室61、通気孔75、収容室18に亘って配置されている。また、2本の電源ケーブル57は、収容室61に配置されている。さらに、制御回路用電源供給ケーブル63は、収容室61,20、内部65、収容室18に亘って配置されている。
【0050】
一方、FET駆動用信号ケーブル66は、収容室16,18に亘って配置されている。また、正逆回転切替スイッチ信号ケーブル69は、収容室18、内部65、収容室20,61に亘って配置されている。さらに、スイッチ信号ケーブル67は、収容室18、内部65、収容室20に亘って配置されている。
【0051】
実施の形態2のドライバ10は、第1軸線Aに対して垂直な平面内で、制御回路62の配置領域の一部と、従動ギヤ39の配置領域の一部とが重なっている。具体的には、第1軸線Aを中心とする半径方向及び円周方向で、制御回路62の配置領域の一部と、従動ギヤ39の配置領域の一部とが重なっている。また、第1軸線Aに対して垂直な平面内で、従動ギヤ39の配置領域の一部と、電動モータ12の配置領域の一部とが重なっている。さらに、第1軸線Aに沿った方向で、制御回路62の配置領域内に、電動モータ12の配置領域の一部と、スイッチング素子45の配置領域の一部とが配置されている。第1軸線Aに沿った方向で、制御回路62の配置領域内に、FET基板44が配置されている。
【0052】
実施の形態2のドライバ10は、実施の形態1のドライバ10と同様に、交流電源56の電力を電動モータ12に供給して、先端工具42を回転させ、ねじ部材を締め付ける作業または緩める作業を行うことができる。また、実施の形態2のドライバは、モータハウジング13の上壁22と、電動モータ12との間にある空いた空間を収容室18とし、収容室18に制御回路62が配置されている。このため、ドライバ10が電動モータ12の半径方向に大型化することを抑制できる。したがって、グリップ14の長さ方向にドライバ10が大型化することを抑制でき、作業性、操作性が向上する。
【0053】
一方、実施の形態2のドライバ10は、出力軸30が回転して冷却ファン35が回転すると、ケーシング11の外部の空気が、通気孔15aから収容室61に進入し、収容室61に進入した空気は、通気孔75を通り収容室16へ進入する。また、ケーシング11の外部の空気は、通気孔43bを通り収容室16に進入する。そして、収容室16に進入した空気は、通気孔43aからケーシング11の外部に排出される。したがって、実施の形態2のドライバ10は、電源回路ユニット17を冷却し、かつ、FET基板ユニット49を冷却し、かつ、電動モータ12を冷却することができる。
【0054】
また、2本の電源ケーブル57、制御回路用電源供給ケーブル63、スイッチ信号ケーブル67は、ケーシング11内で空気の通る経路に配置されていない。したがって、ドライバ10は、ケーシング11内で空気の流れが阻害されることを抑制できる。また、実施の形態1のドライバ10と同様に、電源回路ユニット17及び電動モータ12を効率良く冷却できるとともに、制御回路62側への水等の浸入を抑制できる。
【0055】
(実施の形態3)
実施の形態3のドライバを、図5図6図11図13を参照して説明する。実施の形態3のドライバ10は、実施の形態2のドライバ10と略同じ構成を有する。このため、実施の形態3のドライバ10において、実施の形態2のドライバ10と同じ構成部分については、実施の形態2のドライバ10と同じ符号を付してある。また、図5に示す電気要素同士の接続関係、及び図6に示す制御系統は、実施の形態3のドライバ10にも概ね当てはまる。
【0056】
しかし、図5において、スイッチング素子45がFET基板44に取り付けられている構成は、実施の形態3のドライバ10には当てはまらない。実施の形態3のドライバ10は、スイッチング素子45が制御回路62に取り付けられている。すなわち、スイッチング素子45はFET基板44に取り付けられておらず、スイッチング素子45は収容室18に設けられている。スイッチング素子45は、制御回路62に取り付けられており、スイッチング素子45は、電動モータ12と制御回路62との間に配置されている。複数個のスイッチング素子45は、第2軸線Bに沿った方向に並べて配置されている。つまり、複数個のスイッチング素子45は、FET基板44の平面方向に対して直交する方向に沿って並べられている。
【0057】
また、実施の形態3のドライバ10は、実施の形態1のドライバ10で説明した通気孔47を有する。さらに、実施の形態3のドライバ10は、実施の形態1のドライバ10で説明した壁部21を有する。壁部21と上壁22との間に隙間があり、内部65及び収容室18に亘って制御回路62が配置されている。さらに、実施の形態3のドライバ10は、上壁22に通気孔22aを有する。さらに、実施の形態3のドライバ10は、モータハウジング13に通気孔43bは設けられていない。
【0058】
実施の形態3のドライバ10は、第1軸線Aに対して垂直な平面内で、制御回路62の配置領域の一部と、従動ギヤ39の配置領域の一部とが重なっている。具体的には、第1軸線Aを中心とする半径方向及び円周方向で、制御回路62の配置領域の一部及びスイッチング素子45の配置領域の一部と、従動ギヤ39の配置領域の一部とが重なっている。また、第1軸線Aに対して垂直な平面内で、従動ギヤ39の配置領域の一部と、電動モータ12の配置領域の一部とが重なっている。さらに、第1軸線Aに沿った方向で、制御回路62の配置領域内に、電動モータ12及びスイッチング素子45及びFET基板44が配置されている。実施の形態3においては、通気孔47,75が両方設けられている。
【0059】
実施の形態3のドライバ10において、実施の形態2のドライバ10と同じ構成部分については、同じ動作が生じ、同じ作用効果を有する。実施の形態3のドライバ10も、電動モータ12と上壁22との間に形成された空間を利用して収容室18を設け、収容室18に制御回路62、スイッチング素子45を配置しているから、ドライバ10が電動モータ12の半径方向、つまり、グリップ14の長さ方向に大型化することを抑制できる。また、スイッチング素子45は、FET基板44と壁部23との間に設けられていないため、FET基板44と壁部23との間のスペースをなるべく狭くすることができる。したがって、ドライバ10は、第1軸線Aに沿った方向の全長をなるべく短くすることができる。
【0060】
さらに、実施の形態3のドライバ10は、冷却ファン35が回転すると、ケーシング11の外部の空気が、通気孔15aを通り収容室61に進入する。収容室61に進入した空気は、通気孔75を通り収容室16に至る。一方、ケーシング11の外部の空気は、通気孔22aを通り収容室18に進入する。収容室18に進入した空気は、通気孔47を通り収容室16に進入する。そして、収容室16に進入した空気は通気孔43aを通りケーシング11の外部に排出される。したがって、電源回路ユニット17、制御回路62、スイッチング素子45、電動モータ12等を冷却することができる。また、ケーシング11内に通気孔22aから水等が浸入しても、水等を通気孔47,75を通り通気孔15aから排出することができるため、ケーシング11内に水等が溜まることを抑制できる。
【0061】
なお、図11では、複数個のスイッチング素子45は、FET基板44の平面方向に対して直交する方向に配置した例を示している。これに対して、複数のスイッチング素子45を、FET基板44の平面方向に対して平行になるように配置してもよい。あるいは、複数のスイッチング素子45を、FET基板44の平面方向に沿って実装するタイプのスイッチング素子45を用いることも可能である。複数のスイッチング素子45を、このように配置すると、図11において、収容室18の上下方向の寸法を、さらに抑えることができる。
【0062】
また、スイッチング素子45を、制御回路62と上壁22との間に配置してもよい。この構成によれば、スイッチング素子45が通気孔22aに対向して配置されるため、より温度の低い空気でスイッチング素子45を冷却することができる。
【0063】
(実施の形態4)
実施の形態4のドライバを、図5図6図14図15を参照して説明する。実施の形態4のドライバ10は、実施の形態1のドライバ10と略同じ構成を有する。このため、実施の形態4のドライバ10において、実施の形態1のドライバ10と同じ構成部分については、実施の形態1のドライバ10と同じ符号を付してある。また、図5に示す電気要素同士の接続関係、及び図6に示す制御系統は、実施の形態4のドライバ10にも当てはまる。
【0064】
実施の形態4のドライバ10は、壁部25の一部が、下壁24と壁部19との間に配置されており、収容室16は、壁部25と壁部19との間に形成されている。さらに、壁部25と下壁24との間に隙間があり、収容室61の一部は、壁部25と下壁24との間に形成されている。そして、収容室61に設けられた制御回路62の一部は、壁部25と下壁24との間に配置されている。
【0065】
実施の形態4のドライバ10は、第1軸線Aに対して垂直な平面内で、電源回路ユニット17の配置領域の一部と、従動ギヤ39の配置領域の一部とが重なっている。具体的には、第1軸線Aを中心とする半径方向及び円周方向で、電源回路ユニット17の配置領域の一部と、従動ギヤ39の配置領域の一部とが重なっている。
【0066】
また、第1軸線Aに対して垂直な平面内で、従動ギヤ39の配置領域の一部と、電動モータ12の配置領域の一部とが重なっている。さらに、第1軸線Aに沿った方向で、電源回路ユニット17の配置領域内に、電動モータ12、及びスイッチング素子45の一部、及びFET基板44、及び制御回路62が配置されている。すなわち、制御回路62と電源回路ユニット17とが、第1軸線Aを隔てて正反対の位置に配置されている。
【0067】
実施の形態4のドライバ10において、実施の形態1のドライバ10と同じ構成部分については、同じ動作が生じ、同じ作用効果を有する。実施の形態4のドライバ10も、電動モータ12と上壁22との間に形成された空間を利用して収容室18を設け、収容室18に電源回路ユニット17を配置している。したがって、ドライバ10が、電動モータ12の半径方向、つまり、グリップ14の長さ方向に大型化することを抑制できる。また、収容室61に設けられた制御回路62の一部は、壁部25と下壁24との間に配置されている。したがって、ドライバ10がグリップ14の長さ方向に大型化することを一層抑制できる。なお、実施の形態4のドライバ10は、ケーシング11内に進入する空気の流れ経路は、図15に矢印で示すように、実施の形態1のドライバ10と同じである。
【0068】
(実施の形態5)
実施の形態5のドライバを、図5図6図16を参照して説明する。実施の形態5のドライバ10において、実施の形態1のドライバ10と同じ構成部分については、実施の形態1のドライバ10と同じ符号を付してある。また、図5に示す電気要素同士の接続関係、及び図6に示す制御系統は、実施の形態5のドライバ10にも当てはまる。
【0069】
実施の形態5のドライバ10は、壁部25の一部が、下壁24と壁部19との間に配置されており、収容室76は壁部25と下壁24との間に形成されている。つまり、収容室76はモータハウジング13内に設けられており、制御回路62は収容室76に収容されている。収容室76は、第2軸線Bを中心とする半径方向で、電動モータ12の外側に配置されている。収容室76は、電動モータ12を隔てて収容室18とは反対の位置に配置されている。また、実施の形態5においては、通気孔47,75が両方設けられている。
【0070】
一方、モータハウジング13における隔壁31とは反対側の端部にグリップ77が設けられている。ドライバ10を正面視すると、モータハウジング13及びグリップ77により、ケーシング11がL字形に形成されている。グリップ77内に収容室85が形成されており、収容室85とモータハウジング13の内部とが、壁部23により仕切られている。また、壁部25と壁部23との間に通気孔75が設けられており、通気孔75は収容室16と収容室76とをつないでいる。グリップ77の端部に電源コード55が取り付けられており、フィルムコンデンサ51、スイッチ59、正逆回転切替スイッチ68等は、収容室85内に収納されている。
【0071】
また、グリップ77にトリガ58が取り付けられている。電源コード55と電源回路ユニット17とを接続する2本の電源ケーブル57は、収容室85に配置されている。制御回路62とスイッチ59とを接続するスイッチ信号ケーブル67は、収容室85に配置されている。FET基板44と電源回路ユニット17とを接続するモータ用電源供給ケーブル46は、収容室18,85に亘って配置されている。さらに、制御回路62と電源回路ユニット17とを接続する制御回路用電源供給ケーブル63は、収容室18から、収容室85を経て収容室16,76に到達している。
【0072】
グリップ77は、第1軸線Aを中心とする円の半径方向で、第1軸線Aから離れる向きでモータハウジング13から延ばされている。そして、トリガ58、スイッチ59、フィルムコンデンサ51は、第1軸線Aを中心とする円の半径方向で、電源コード55と制御回路62との間に配置されている。
【0073】
実施の形態5のドライバ10においても、電動モータ12と上壁22との間に形成された空いた空間に収容室18が設けられ、電源回路ユニット17は、収容室18に収納されている。また、第1軸線Aに対して垂直な平面内で、電動モータ12の配置領域の一部と、従動ギヤ39の配置領域の一部とが重なっている。また、第1軸線Aに対して垂直な平面内で、電源回路ユニット17の配置領域の一部と、従動ギヤ39の配置領域の一部とが重なっている。具体的には、第1軸線Aを中心とする半径方向及び円周方向で、電源回路ユニット17の配置領域の一部と、従動ギヤ39の配置領域の一部とが重なっている。さらに第1軸線Aに沿った方向で、電源回路ユニット17の配置領域に、制御回路62、電動モータ12、FET基板44、スイッチング素子45が配置されている。電源回路ユニット17と制御回路62とが、第1軸線Aを隔てて正反対の位置に配置されている。
【0074】
実施の形態5のドライバ10において、実施の形態1のドライバ10と同じ構成部分については、同じ動作が生じ、同じ作用効果を有する。実施の形態5のドライバ10も、電動モータ12と上壁22との間に形成された空間を利用して収容室18を設け、収容室18に電源回路ユニット17を配置している。したがって、ドライバ10が、電動モータ12の半径方向、つまり、グリップ14の長さ方向に大型化することを抑制できる。また、制御回路62は、壁部25と下壁24との間に配置されている。したがって、ドライバ10がグリップ14の長さ方向に大型化することを一層抑制できる。
【0075】
実施の形態5のドライバ10において、冷却ファン35が回転すると、ケーシング11の外部の空気が通気孔22aを通り収容室18に進入する。収容室18に進入した空気は、通気孔47を通り収容室16に進入する。また、ケーシング11の外部の空気は、通気孔43bを通り収容室16に進入する。このようにして、収容室16に進入した空気は、通気孔43aを通りケーシング11の外部に排出される。したがって、実施の形態5のドライバ10は、空気がケーシング11内を流れる過程で、電源回路ユニット17、スイッチング素子45、電動モータ12等から熱を奪い、電源回路ユニット17、スイッチング素子45、電動モータ12等を冷却することができる。
【0076】
各実施の形態で説明した構成と、本発明の構成との対応関係を説明すると、本発明の動力伝達機構は、従動ギヤ39、スピンドル40を含み、本発明の電気部品は、電動モータ12、電源回路ユニット17、制御回路62、FET基板44、スイッチング素子45、回路基板48等を含み、第1軸線Aが、本発明の軸線に相当する。
【0077】
また、実施の形態1、4で説明した構成と、本発明の構成との関係を説明すると、収容室16は、本発明の第2収容室、モータ収容空間に相当し、収容室18は、本発明の第1収容室、第1収容空間、基板収容空間に相当し、壁部19が、本発明の第1壁部に相当し、壁部25が、本発明の第2壁部に相当し、通気孔22aが、本発明の通気孔、第1通気孔に相当し、FET基板44が、本発明の基板に相当し、回路基板48が、本発明の回路基板に相当し、通気孔47が、本発明の第1接続孔、第2通気孔に相当し、収容室61が、本発明の第2収容空間に相当する。
【0078】
また、実施の形態2で説明した構成と、本発明の構成との関係を説明すると、収容室16は、本発明の第2収容室、モータ収容空間に相当し、収容室18は、本発明の第2収容空間に相当し、壁部25が、本発明の第1壁部に相当し、壁部19が、本発明の第2壁部に相当し、通気孔15aが、本発明の通気孔、第1通気孔に相当し、通気孔75が、本発明の第1接続孔、第2通気孔に相当し、FET基板44が、本発明の電気部品に相当し、回路基板48が、本発明の回路基板に相当し、収容室61が、本発明の第1収容室、第1収容空間、基板収容空間に相当する。
【0079】
また、実施の形態3で説明した構成と、本発明の構成との関係を説明すると、通気孔47が、本発明の第2接続孔に相当する。実施の形態3で説明した他の構成と、本発明の構成との関係は、実施の形態2の構成と、本発明の構成との関係と同じである。
【0080】
また、実施の形態5で説明した構成と、本発明の構成との関係を説明すると、収容室18は、本発明の第1収容室、第1収容空間、基板収容空間に相当し、収容室76が、本発明の第2収容空間に相当し、壁部19が、本発明の第1壁部に相当し、壁部25が、本発明の第2壁部に相当し、通気孔22aが、本発明の通気孔、第1通気孔に相当し、FET基板44が、本発明の基板に相当し、回路基板48が、本発明の回路基板に相当し、通気孔47が、本発明の第1接続孔、第2通気孔に相当し、通気孔75が、本発明の第2接続孔に相当する。
【0081】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、電動モータ12は、三相ブラシレスモータに限られることなく、ロータに永久磁石が設けられていないリラクタンスモータとしても良く、種々のタイプを使用することができる。本発明の電動工具は、ドライバの他、先端工具を回転させて対象物に穴をあけるドリル、先端工具に回転力及び第2軸線に沿った方向の打撃力を加えるハンマドライバ及びハンマドリルを含む。すなわち、先端工具は、ドライバビットの他、ドリルビットを含む。また、本発明の作業具は、対象物を加工する先端工具の他、スピンドルと先端工具とを接続するアダプタ、エクステンションバー等を含む。
【0082】
また、本発明の電動工具は、第1軸線に沿った方向で、電動モータの配置領域と電源回路の配置領域とが、少なくとも一部で重なっていればよい。また、本発明の電動工具は、第1軸線に沿った方向で、電動モータの配置領域と制御回路の配置領域とが、少なくとも一部で重なっていればよい。また、本発明の電動工具は、電動モータの出力軸を中心とする円周方向で、電気部品の配置領域と、動力伝達機構の配置領域とが、少なくとも一部で重なっていればよい。
【符号の説明】
【0083】
10…ドライバ、11…ケーシング、12…電動モータ、13…モータハウジング、14,77…グリップ、15…第1接続部、15a,22a,43a,43b,47,75…通気孔、16,18,61,76…収容室、17…電源回路ユニット、19,25…壁部、42…先端工具、44…FET基板、30…出力軸、35…冷却ファン、36…駆動ギヤ、39…従動ギヤ、40…スピンドル、42…先端工具、48…回路基板、55…電源コード、57…電源ケーブル、62…制御回路、63…制御回路用電源供給ケーブル、64…第2接続部、78…クラッチ機構。
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