(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の粘着剤は、アクリル共重合体、樹脂酸塩、水およびイソシアネート化合物を含む。前記粘着剤は、基材または剥離シートに塗工することで粘着剤層を形成し、粘着シートとして使用することが好ましい。また本発明の粘着剤は、粘着シートを被着体に貼着後に前記粘着シートを剥離しない用途(永久粘着タイプ)および粘着シートを被着体に貼着後に前記粘着シートを剥離する用途(再剥離タイプ)に使用できる。なお、本発明で粘着シートは、粘着テープ、粘着フィルム、粘着ラベルと同義語である。
【0011】
本発明においてアクリル共重合体は、粘着剤の主剤として機能し、反応性官能基を有する。前記反応性官能基は、イソシアネート化合物等の硬化剤と硬化可能な官能基であればよく限定されない。反応性官能基は、水酸基を必須とし、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、グリシジル基、シアノ基等を併用できる。しかし前記併用により硬化速度およびポットライフの両立が難しくなる場合があるため、併用する官能基には注意が必要である。
【0012】
前記アクリル共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび反応性官能基含有単量体を必須成分、その他単量体を任意成分とした単量体混合物を共重合して得た共重合体である。前記共重合は、溶液重合、乳化重合、懸濁重合および塊状重合等の公知の重合方法を利用できるが、本発明では分子量を調整しやすい溶液重合が好ましい。なお(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルを含む。また単量体は、エチレン性不飽和二重結合を有するラジカル重合可能な化合物をいう。
【0013】
前記アクリル共重合体は、重量平均分子量10万〜200万が好ましく、30万〜120万がより好ましい。なお、重量平均分子量は、GPC測定で求めたポリスチレン換算の重量平均分子量であり、GPC測定条件は以下のとおりである。装置:SHIMADZU Prominence((株)島津製作所製)カラム:TOSOH TSK−GEL GMHXL(東ソー(株)製)を使用。溶媒:テトラヒドロフラン、流速:0.5ml/min、温度:40℃、試料濃度:0.1wt%、試料注入量:100μl。
【0014】
また、前記アクリル共重合体のガラス転移温度(以下、Tgともいう)は、−100〜20℃が好ましく、−80〜0℃がより好ましい。
【0015】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、およびn−テトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらに中でも粘着物性の点からn−ブチル(メタ)アクリレートおよび2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独または2種以上使用できる。なお、環状アルキル構造を含む単量体、アルキレンオキサイド構造を含む単量体、アルコキシ基を含む単量体およびアセトアセトキシ基を含む単量体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルには含まない。
【0016】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単量体混合物100重量%のうち50〜99.9重量%を配合することが好ましく、65〜99重量%がより好ましい。
【0017】
前記反応性官能基含有単量体のうち水酸基含有単量体は、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(メタ)アクリル酸18−ヒドロキシステアリル、(メタ)アクリル酸4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル等が挙げられる。これらの中でも2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、および(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル等が好ましい。水酸基含有単量体は、単独または2種以上使用できる。
【0018】
水酸基含有単量体は、単量体混合物100重量%のうち0.1〜20重量%を配合することが好ましい。前記配合量は、粘着剤の用途により適宜変更できる。例えば、再剥離用途の場合、2〜20重量%が好ましい。また。再剥離以外の用途の場合、0.1〜10重量%が好ましい。
【0019】
前記反応性官能基含有単量体のうち水酸基含有単量体以外の単量体は、カルボキシル基含有単量体、アミノ基含有単量体、アミド基含有単量体、イミド基含有単量体、グリシジル基含有単量体、シアノ基含有単量体等が好ましい。
【0020】
カルボキシル基含有単量体は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2−アクリロイロキシエチル−コハク酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、および2−アクリロイロキシエチル−フタル酸等が挙げられる。
【0021】
アミノ基含有単量体は、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、および(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
【0022】
アミド基含有単量体は、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、およびジアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
【0023】
イミド基含有単量体は、例えば、シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、およびイタコンイミド等が挙げられる。
【0024】
グリシジル基含有単量体は、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、およびアリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0025】
シアノ基含有単量体は、例えば、アクリロニトリル、およびメタクリロニトリル等が挙げられる。
【0026】
前記反応性官能基含有単量体のうち水酸基含有単量体以外のその他単量体は、硬化反応とポットライフを両立できる範囲内で、水酸基含有単量体と併用できる。
【0027】
前記その他単量体は、必須成分の単量体と共に使用することで粘着物性を適宜調整できる。具体的には、(メタ)アクリル酸シクロアルキル、アルキレンオキサイド構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシル基含有単量体、およびビニル単量体等が好ましい。
【0028】
前記(メタ)アクリル酸シクロアルキルは、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどが挙げられる。芳香族アクリルモノマーとしては、および(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
【0029】
前記アルキレンオキサイド構造を有する(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、メトキシ−ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ−トリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのメトキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート型、エトキシ−ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ−トリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのエトキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート型、ブトキシ−ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシ−トリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのブトキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート型、フェノキシ−ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ−トリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのフェノキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート型、およびメトキシ−ジプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのメトキシ−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート型等が挙げられる。
【0030】
前記アルコキシル基含有単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、および(メタ)アクリル酸1−フェノキシエチル(メタ)アクリル酸2−フェノキシエチル等が挙げられる。
【0031】
前記アセトアセトキシ基含有単量体は、例えば、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、および2−アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
前記ビニル単量体は、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、およびその他の置換スチレン等が挙げられる。
【0033】
その他単量体は、単量体混合物100重量%のうち1〜49.9重量%を配合することが好ましい。
【0034】
ビニルエーテル類としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、およびイソブチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0035】
本発明におけるアクリル共重合体の合成方法について、溶液重合を例に挙げて説明する。
溶液重合は、上段で説明した単量体を有機溶媒および重合開始剤の存在下、共重合して得る。
【0036】
前記有機溶媒は、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、テトラリン、デカリン、芳香族ナフサなどの芳香族炭化水素類;例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、i−オクタン、n−デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、テレピン油などの脂肪系もしくは脂環族系炭化水素類;例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸2−ヒドロキシエチル、酢酸2−ブトキシエチル、酢酸3−メトキシブチル、安息香酸メチルなどのエステル類;例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンなどのケトン類;例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、s-ブチルアルコール、およびt−ブチルアルコールのアルコール類;等が挙げられる。有機溶媒は単独または2種以上使用できる。
【0037】
前記重合開始剤は、過酸化物およびアゾ化合物から適宜選択して使用できる。前記過酸化物は、例えばt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、および1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。前記アゾ化合物は、例えば、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。重合開始剤は、単独または2種以上使用できる。
重合開始剤は、単量体混合物100重量部に対して0.001〜10重量部使用できる。
【0038】
前記共重合の際に分子量を調節する目的で、連鎖移動剤(重合調節剤ともいう)を使用できる。具体的には、例えば、n−ブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類;チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、チオグリセロール、2−メルカプトエタノール等のその他メルカプタン類;ベンゾキノン、2,3,5,6−テトラメチル−p−ベンゾキノンなどのベンゾキノン誘導体類;ビネン、ターピノレンなどのテルペン類;その他、α−メチルスチレンダイマー、ジスルフィド、イソプロピルアルコール、ジオキサン、四塩化炭素、およびクロロホルム等が挙げられる。連鎖移動剤は単独または2種以上を使用できる。
連鎖移動剤は、単量体混合物100重量部に対して0.1〜30重量部使用できる。
【0039】
本発明において樹脂酸塩は、イソシアネート化合物とアクリル共重合体の反応性官能基との硬化反応を促進する硬化触媒である。ここで樹脂酸とは、松科の植物に多量に含まれる松脂の不揮発性の成分であり、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸およびデヒドロアビエチン酸等のいずれかを含む混合物(以下ロジンともいい、カルボキシル基を有するロジンをロジン酸ともいう)である。前記樹脂酸塩は、前記樹脂酸のカルボキシル基と1価金属から構成される。前記1価金属は、Ag,B,Ba,Bi,Co,Cu,Fe,Mn,Mo,Ni,Pb,Pd,Pt,Rh,Sb,Sn,Ta,Ti,V,ZnおよびZrからなる群より選択するいずれかである。これらの中でもBiを使用した樹脂酸塩は、毒性が少ないため好ましい。
樹脂酸塩は、アクリル共重合体に対して0.005〜3重量部配合することが好ましく、0.1〜1.5重量部がより好ましい。
【0040】
上記の通り粘着剤に硬化触媒として樹脂酸塩を使用すると硬化反応が速くなるが、反面ポットライフが短くなる。そこで本発明では、粘着剤に、さらに水を配合することで適度な硬化速度と必要十分なポットライフを両立できた。特にイソシアネート化合物の中でも後述する非芳香族イソシアネートは、反応速度が遅いため水を配合したことによるイソシアネート化合物とアクリル共重合体に水酸基との硬化反応が阻害される場合が少ない。水は、アクリル共重合体100重量部に対して、0.01〜10重量部配合することが好ましく、0.1〜5重量部がより好ましく、0.5〜3重量部がさらに好ましい。0.01〜10重量部配合することで粘着剤層の透明性、およびポットライフをより高い水準で両立できる。なお水を配合する時期は、アクリル共重合体の合成の際、硬化剤等を配合する際等時期を選ばず、粘着剤を塗工する直前までに配合すれば良い。また、粘着剤の原料に混入した水が配合されていてもよい。
【0041】
本発明においてイソシアネート化合物は、アクリル共重合体の水酸基と反応できる硬化剤である。前記イソシアネート化合物は、イソシアナト基を1分子中に3個以上有することが好ましい。
前記イソシアネート化合物は、ジイソシアネート化合物を水酸基を3個有する3官能ポリオールと反応させたアダクト体、ジイソシアネート化合物が水と反応したビュレット体、中心骨格にイソシアヌレート環を有しジイソシアネート化合物を3分子反応したイソシアヌレート体等が好ましい。
【0042】
前記ジイソシアネート化合物は、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。なお本発明で芳香族イソシアネートとは、イソシアナト基と芳香環が直接結合した化合物をいい、イソシアナト基がメチレン基を介して芳香環と結合した化合物は、芳香族イソシアネートとはいわない。
【0043】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等が挙げられる。
【0044】
脂肪族ジイソシアネートは、例えばトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0045】
芳香脂肪族ジイソシアネートは、例えばω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0046】
脂環族ジイソシアネートは、例えば3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。イソシアネート化合物は、単独または2種以上使用できる。
【0047】
本発明の粘着剤は、さらに任意成分として他の樹脂、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂を配合できる。また、必要に応じて、例えば、粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機充填剤、紫外線吸収剤、消泡剤、光安定剤、酸化防止剤等などを適宜配合できる。
【0048】
本発明の粘着シートは、基材および前記粘着剤から形成した粘着剤層を備えていることが好ましい。
【0049】
本発明の粘着シートの製造は、例えば、粘着剤を基材上に塗工し、次いで乾燥することで粘着剤層を得る方法。または粘着剤を剥離シート上に塗工し、次いで乾燥することで粘着剤層を得て、さらに基材を貼り合わせる方法が好ましい。なお、粘着剤層は、ゴミ等の付着防止のため粘着テープが使用される直前まで剥離シートを貼り合わる必要があることはいうまでもない。また、粘着剤層の形成後、硬化反応完了まで数日間かかる場合がある。
【0050】
粘着剤層の厚みは、一般に0.1〜300μm程度が好ましく、経済性の観点から0.1〜100μm程度がより好ましい、
【0051】
前記基材は、例えば紙、プラスチックス、合成紙、布および不織布等、ならびこれらの積層体を使用できる。前記プラスチックスは、ポリエステル樹脂、アセテート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0052】
基材の厚みは、取り扱いの点から1〜500μmが好ましく、5〜300μmがより好ましい、また経済性の観点から5〜100μmがさらに好ましい。基材には粘着剤層との密着性を向上させるため公知の易接着処理が施されていてもよい。
これらの基材に片面又は両面には、剥離時の帯電防止を目的に、帯電防止層が設けられていてもよい。また該基材の、粘着剤層が設けられる側の表面には、粘着剤層との密着性を向上させるためにコロナ放電処理等が施されていてもよい。
【0053】
前記剥離シートは、基材と剥離層を備えた構成が好ましい。前記基材は、紙およびプラスチックス等、ならびにこれらの積層体が好ましい。前記剥離層は、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の公知の剥離剤を塗工して形成できる。剥離シートの厚みは特に限定されず、一般に5μm〜500μm程度である。
【0054】
本発明の粘着シートの用途は、自動車や家電などの工業用途、偏光板やタッチパネルなどの光学用途などに適しており、そのなかでも、特に再剥離性を必要とする用途には最適である。
【実施例】
【0055】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明の効果を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されないことはいうまでもない。なお、以下「部」は「重量部」、「%」は「重量%」をそれぞれ示す。
【0056】
[実施例1]
<アクリル共重合体の合成>
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコに窒素雰囲気下、2―エチルヘキシルアクリレート 40部、2−ヒドロキシエチルアクリレート 1部、n−ブチルアクリレート 1部、メチルアクリレート 0.5部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを適量、溶剤として酢酸エチル適量をフラスコに仕込んだ。次いで滴下ロートに2―エチルヘキシルアクリレート 53部、2−ヒドロキシエチルアクリレート 3部、n−ブチルアクリレート 1部、メチルアクリレート 0.5部、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを適量、溶剤として酢酸エチル適量を仕込んだ。前記4口フラスコを加熱し還流を確認後、モノマー混合物を滴下管から約2時間かけて滴下した。さらに還流温度で8時間反応を継続した。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈することで、不揮発分50%・Mw(重量平均分子量)450,000のアクリル共重合体溶液を得た。
【0057】
<粘着剤の配合>
得られたアクリル共重合体溶液の不揮発分100重量部に対して、樹脂酸ビスマス塩を0.3部、イオン交換水1.0部、ヘキサメチレンジイソシアネートイソシアヌレートアダクト体の75%酢酸エチル溶液5.0部を配合し粘着剤を得た。
【0058】
<粘着テープの作成>
得られた粘着剤を乾燥後の厚みが20μmになるように剥離シートに塗工し、熱風乾燥機で100℃・120秒間乾燥した。次いで基材の厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルム)を貼り合わせ、23℃で7日間放置することで粘着シートを得た。
【0059】
得られた粘着剤・粘着シートを用いて下記物性評価を行った。
【0060】
<粘着力>
得られた粘着テープを幅25mm・縦100mmの大きさに準備した。次いで23℃−50%RH雰囲気で剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を厚さ2mmのガラス板に貼着した。そして2kgロールを粘着テープ上から1往復を行い圧着した。前記圧着から24時間経過後、引張試験機を使用して剥離角180°、剥離速度300mm/minの条件で粘着力を測定した。なお粘着力はJIS Z−0237に準拠した。
【0061】
<高速剥離粘着力>
剥離速度を30m/minに変更した以外は前記粘着力と同様に測定することで高速剥離粘着力を測定した。なお、実施例12および13の粘着剤は、永久粘着タイプであるため高速剥離粘着力は行っていない。
【0062】
<再剥離性>
得られた粘着テープを幅25mm・縦100mmの大きさに準備した。次いで23℃−50%RH雰囲気で剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層をガラス板に貼着した積層体を60℃−95%RH雰囲気に24時間放置した。次いで前記積層体を23℃−50%RH雰囲気に1時間放置した後、粘着テープをガラス板から剥離した。剥離後のガラス板に付着した粘着剤層を下記基準で目視評価した。なお、実施例12および13の粘着剤は、永久粘着タイプであるため再剥離性の評価は行っていない。
○ 付着が全く無い (良好)
△ わずかに付着がある(実用上、問題なし)
× 全面的に付着した。(実用不可)
【0063】
<硬化性>
得られた粘着剤を乾燥後の厚みが20μmになるように厚み38μmのPETフィルムに塗工し、熱風乾燥機で100℃・120秒間乾燥し粘着剤層を形成した。次いで23℃-50%RHで3日間養生し粘着シートを得た。得られた粘着シートを幅25mm・縦100mmの大きさに準備し試料とした。前記試料からセパレーターを剥がして露出した粘着剤層をSUS200メッシュに貼り付け、酢酸エチル溶液で満たした蓋つきガラス瓶に投入し、50℃で24時間抽出した。24時間放置後、酢酸エチル溶液から取り出した試料を100℃で20分乾燥し、23℃-50%RHで30分放置した。その後、粘着シートをSUS200メッシュから剥がし、剥がした試験片の重量を測定し、下記式(1)でゲル分率を算出した
式(1) ゲル分率(重量%)=(M2/M1)×100
M1:酢酸エチルで抽出する前の粘着層の重量
M2:酢酸エチルで抽出・乾燥した後の粘着層の重量
上記同様に7日間養生した粘着シートのゲル分率を作成し、7日間養生した粘着シートのゲル分率から3日間養生した粘着シートのゲル分率を差し引くことで硬化性を評価した。
○ ゲル分率の差が10%未満(良好)
× ゲル分率の差が10%以上(不良)
【0064】
<ポットライフ>
得られた粘着剤を直ぐに蓋つきガラス瓶に入れ、前記ガラス瓶を25℃の恒温水槽で保温した。そしてガラス瓶を25℃に投入した1時間後、および12時間後の粘度を測定した。1時間後の粘度と12時間後の粘度のその差を2段階で評価した。なお粘度は、B型粘度計、ローター#3、回転数12rpmで回転開始1分間後の数値を測定した。粘度と
○:12時間後の粘度が配合直後の粘度の3未満(良好)
×:12時間後の粘度が配合直後の粘度の3以上(不良)
【0065】
<臭気>
粘着剤を塗工した際、100℃・120秒間乾燥し、粘着シートを熱風乾燥機から取り出した時の前記熱風乾燥機からの臭気をテスター5人がそれぞれ評価した。臭気は、アクリル共重合体の残留単量体、および酢酸エチル以外の臭気を評価した。なお、評価結果は、テスター5人の平均値である。
○:臭気を感じなかった。 (良好)
△:臭気をわずかに感じた。 (実用上、問題なし)
×:臭気を強く感じた。 (不良)
【0066】
<腐食性>
テストコーターの乾燥オーブン内の上面に幅20cm・縦20cm・厚さ1mmの市販の鉄板を設置し、1ヶ月かけて粘着剤を、乾燥後の厚みが20μmになるように、温度90℃、塗工速度10m/分で幅30cmで1万mの塗工を行った。次いで前記鉄板を取り出し、23℃-50%RH雰囲気で1ヶ月間放置し、前記鉄板表面の錆の発生の有無を目視で評価した。
○:錆が無かった。 (良好)
△:点状の錆が両面合計で5点以下発生した。 (実用上、問題なし)
×:点状の錆が両面に発生した。(実用不可)
【0067】
[実施例2〜13、比較例1〜5]
アクリル共重合体に合成に使用した単量体、硬化触媒、水および硬化剤の種類、ならびに配合量を表1および表2の通りに変更した以外は、実施例1と同様に行うことで粘着剤および粘着テープを得た。次いで、実施例1と同様に上記の物性評価を行った。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】