(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
(A)主たる実施形態
以下では、本発明
の局側装置の一実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。この実施形態の局側装置は、N+1のPONプロテクション方式に従っているものである。
【0015】
(A−1)実施形態の構成
図1は、実施形態の局側装置2を含む光通信システム1の構成を示すブロック図である。
図1は、N:1のPONプロテクション方式の「N」が「3」の場合の例を示している。
【0016】
図1において、光通信システム1は、局側装置2と、複数(
図1は32×N=32×3=96個の場合を示している)のONU(Optical Network Unit;加入者側光回線終端装置)3−1〜3−96と、3(=N)個の光スプリッタ4−1〜4−3とを備えている。
【0017】
局側装置2は、3(=N)個の運用系OLT5−1〜5−3と、実施形態の予備系局側光回線終端装置である予備系OLT6と、全体制御部7とを有する。
【0018】
運用系OLT5−1〜5−3はそれぞれ、32台ずつのONU3−1〜3−32、3−33〜3−64、3−65〜3−96を収容し、障害が発生していないときに、運用系としてOLT処理を実行するものである。
【0019】
予備系OLT6は、運用系OLT5−1〜5−3を含め、運用系OLT5−1〜5−3から光スプリッタ4−1〜4−3へ至る経路で障害が発生した場合に、その障害経路に係るいずれかの運用系OLTに代わって、OLT処理を実行するものである。例えば、予備系OLT6は、運用系OLT5−1に障害が発生すれば運用系OLT5−1に代わってOLT処理を実行し、運用系OLT5−2に障害が発生すれば運用系OLT5−2に代わってOLT処理を実行し、運用系OLT5−3に障害が発生すれば運用系OLT5−3に代わってOLT処理を実行する。すなわち、1:1のPONプロテクション方式とは異なり、N:1(=3:1)のPONプロテクション方式では、予備系OLT6が代替処理する運用系OLTは一意に定まらない。
【0020】
全体制御部7は、当該局側装置2の全体を制御するものである。全体制御部7は、例えば、運用系OLT5−1〜5−3や予備系OLT6内の制御部(OLT制御部)と情報を適宜授受するものである。
【0021】
また、全体制御部7は、予備系OLT6内の回線切替スイッチ15からPON制御に係るプロトコルフレーム(以下、PON制御フレームとも呼ぶ。)を受け取り、ソフトウェア処理によりMPCPレイヤを含む上位レイヤのプロトコル処理を行うものである。
【0022】
つまり、全体制御部7は、回線スイッチ15の下流側に接続されるONUとの間で、PON制御フレームの授受を行い、ONUのMPCPディスカバリ、OAM(Operation Administration and maintenance;保守/運用/管理))ディスカバリ、暗号化、認証処理を実行する。全体制御部7は、回線切替スイッチ11に接続される全ての運用系OLT5−1〜5−3の配下にあるONU3−1〜3−96を、PON制御フレームの交換対象とする。
【0023】
なお、
図1では図示していないが、局側装置2は他の構成要素も有している。例えば、上位装置へ向かう上りユーザデータを集線したり、上位装置側からの下りユーザデータを運用系OLT5−1〜5−3別に分配したりする集線装置を備える。
【0024】
予備系OLT6は、回線切替スイッチ11、予備系OLT本体12及び光スイッチ13を有する。予備系OLT6は1つのユニットやパッケージや基盤(以下、構成体と呼ぶ)として構成され、その構成体に搭載されている構成要素11〜13を
図1では書き出している。そのため、例えば、回線切替スイッチ11が予備系OLT6の外部に設けられている変形例でも良く、光スイッチ13が予備系OLT6の外部に設けられている変形例でも良い。なお、特許請求の範囲では、このような変形例の場合も「予備系局側光回線終端装置」と呼んでいる。
【0025】
回線切替スイッチ11は、図示しない集線装置側に3(=N)個の入出力ポート16−1〜16−3、OLT側に4(=N+1)個の入出力ポート14−1〜14−4、全体制御部7側に1個の入出力ポート15を有するスイッチである。
【0026】
OLT側の4個の入出力ポート14−1〜14−4のうち、入出力ポート14−1〜14−3はそれぞれ運用系OLT5−1〜5−3に接続し、入出力ポート14−4は予備系OLT本体12に接続されている。
【0027】
回線切替スイッチ11は、入出力ポート14−1〜14−3から上り方向(すなわち、ONU3から運用系OLT5方向)のPON制御フレームをドロップし、そのPON制御フレームを、入出力ポート15を介して全体制御部7に出力する。また逆に、全体制御部7と接続する入出力ポート15からPON制御フレームを受け取ると、回線切替スイッチ11は、PON制御フレームを入出力ポート14−1〜14−3に出力して下り方向(すなわち、運用系OLT5からONU3方向)のトラフィックにインサートするものである。
【0028】
ここで、PON制御フレームは、MPCPレイヤを含む上位レイヤのPON制御プロトコルに関するフレームであり、MPCPフレーム、OAMフレーム、その他上位レイヤのフレームを含む。
【0029】
回線切替スイッチ11は、上り方向のフレームのSA(ONU MAC address)と入出力ポート14−1〜14−3との対応を学習しており、下り方向へのフレームについては宛先ONUに対応する入出力ポート14−1〜14−3にフレームを振り分けている。
【0030】
また、通常状態(障害が検出されていない状態)でのトラフィックについて、回線切替スイッチ11は、集線装置側の入出力ポート16−1〜16−3を運用系OLT5−1〜5−3に繋がっている入出力ポート14−1〜14−3に接続させる。
【0031】
さらに、いずれかの運用系OLT5−i(iは1〜3)に係る経路に障害が生じたときには、回線切替スイッチ11は、後述するOLT制御部12A(若しくは全体制御部7)の制御下で、その運用系OLT5−iに接続されている入出力ポート14−1〜14−3に代えて、予備系OLT本体12に接続されている入出力ポート14−4を集線装置側の該当する入出力ポート14−iに接続させる。
【0032】
予備系OLT本体12は、基本的には、運用系OLT5−1〜5−3内部と同様な構成を有し、障害が生じた経路に係る運用系OLT5−iに代わってOLT処理を実行するものである。
【0033】
この実施形態の場合、予備系OLT本体12は、機能的には、OLTとしての制御動作を実行するOLT制御部12A、OLT制御部12Aによって適宜更新される運用系情報のメモリ12B、運用系OLT5−iからの切替時に下りユーザデータを適宜蓄積する下りバッファ12C等を有している。OLT制御部12Aは、全体制御部7や運用系OLT5−1〜5−3内のOLT制御部との間で、制御データを授受するバスなどを介して運用系情報を授受する。
【0034】
光スイッチ13は、各光スプリッタ4−1〜4−3に接続されている入出力ポートと、予備系OLT本体12に接続されている入出力ポートとを備える。光スイッチ13は、基本的には(障害が検出されていないときには)、予備系OLT本体12に接続されている入出力ポートを、光スプリッタ4−1〜4−3側のどの入出力ポートとも接続させない。いずれかの運用系OLT5−iに係る経路に障害が生じたときには、光スイッチ13は、OLT制御部12A(若しくは全体制御部7)の制御下で、予備系OLT本体12に接続されている入出力ポートを、光スプリッタ4−iに接続されている入出力ポートに接続させる。
【0035】
図2は、予備系OLT本体12の内部構成を示すブロック図である。
【0036】
この実施形態に係る予備系OLT本体12は、基本的には、PON制御プロトコルに関するソフトウェア処理を実装せず、MPCPレイヤの一部の機能を実行するハードウェアとして実装する。つまり、予備系OLT本体12は、ハードウェアに設定する設定情報が、切替時の引き継ぎ対象となる。
【0037】
図2において、予備系OLT本体12は、上位送受信部21、ブリッジ部22、MPCP送受信部24、CPU部25、RAM部26、ROM部27、PON送信部28、PON受信部29、PON光送受信部30及び制御部間通信部31を有する。これら各部の中に、上述したOLT制御部12A、運用系情報メモリ12B、下りバッファ12Cとして機能する部分が存在する。
【0038】
上位側送受信部21は、図示しない上位装置との間でユーザデータのフレームを授受するものである。
【0039】
ブリッジ部22は、収容しているONUへの転送のためのバッファリングや、優先処理や、上り及び下りフレームの導通監視などを行うものである。ブリッジ部22が、上述した下りバッファ12Cを備えている。
【0040】
MPCP送受信部24は、PONインタフェースの制御に必要なPON制御フレーム(MPCPフレーム)を授受するものである。MPCPに関する制御処理は、基本的には、全体制御部7が実行するが、MPCPレイヤの一部の処理については、必要に応じて、予備系OLT本体12が実行するようにする。
【0041】
PON送信部28は、MPCPフレームなどのPON制御フレームや、ユーザデータを、PON光送受信部30に与えるものである。PON送信部28の中には、下りのシリアル化、逆シリアル化機能部が内蔵されている。
【0042】
PON光送受信部30は、PON送信部28からの電気信号を光信号へ変換して光スイッチ13に送信したり、光スイッチ13からの光信号を電気信号に変換してPON受信部29へ与えたりするものである。
【0043】
PON受信部29は、PON光送受信部30からのユーザデータやPON制御フレームを受信、識別し、ブリッジ部22、MPCP送受信部24へ振り分けるものである。
【0044】
CPU部25は、ROM部27に格納されているプログラムに従い、RAM部26やROM部(一般的なROMだけでなくEEPROM等も含む)27に格納されている設定値などを適用し、RAM部26をワーキングメモリとして用いながら、当該予備系OLT本体12の各部を制御するものである。CPU部25が、主に、上述したOLT制御部12Aを構成している。
【0045】
ROM部27に格納されているプログラムとして、いずれかの運用系OLT5−iから当該予備系OLT6へ切り替える際の処理プログラム(後述する
図3参照)が格納されている。
【0046】
RAM部26には、いずれかの運用系OLT5−iから当該予備系OLT6へ切り替える際の処理で利用される各運用系OLT5−1〜5−3に係る情報が記憶されている。すなわち、RAM部26の一部は、機能的に、運用系情報のメモリ12Bを構成している。
【0047】
図3は、予備系OLT本体12における運用系情報メモリ12Bの格納情報例を示す説明図である。
【0048】
運用系情報メモリ12Bには、運用系OLT5−1〜5−3が区別できるようなOLT番号と、各OLT番号に続いて、ONU番号、LLID(Logical Link ID)情報等が記述されている。
【0049】
ここで、LLID情報は、全体制御部7が各ONU3との間で実行した、MPCPディスカバリ処理で、各ONU3に対して割り当てたものが、予備系OLT本体12の運用系情報メモリ12Bに記述される。このとき、運用系OLT5を識別するOLT番号、ONU3を識別するONU番号、LLID情報を対応付けて、運用系情報メモリ12Bに格納される。MPCPレイヤを含む上位レイヤのPON制御プロトコル処理は、全体制御部7が統括して実行するため、予備系OLT12は、MPCPレイヤを含む上位レイヤのプロトコル情報を保持する必要がなくなり、各ONU3のLLID情報を保持すればよいため、予備系OLT12が保持する情報量を軽減することができる。
【0050】
なお、運用系情報メモリ12Bに格納させる情報は、
図3に例示する情報に限定されるものではなく、例えば、ONU3のMACアドレス等を含むようにしても良い。
【0051】
制御部間通信部31は、当該予備系OLT6におけるOLT制御部12A(CPU部25)と、運用系OLT5−1〜5−3におけるOLT制御部(図示せず)や全体制御部7との間の通信を行うものである。制御部間通信部31は、例えば、外部バス8とのデータ授受するレシーバやドライバで構成されている。例えば、各運用系OLT5−1〜5−3も、それぞれが、予備系OLT6と同様に、1つのユニットやパッケージや基盤などの構成体として構成され、各運用系OLT5−1〜5−3の構成体や予備系OLT6の構成体がバックボードに実装され、バックボード上のバス8を介して相互に通信し得るようになされている。
【0052】
この実施形態の運用系OLT5−1〜5−3はそれぞれ、内部機能の図示は省略しているが、当該運用系OLTにおいて、所定情報(
図3参照)の更新があったときは、その内部のOLT制御部は、更新された情報を全体制御部7に通知し、全体制御部7の制御下で、予備系OLT6(の予備系OLT本体12)へ与えるようになされている。
【0053】
図4は、全体制御部7の内部構成を示すブロック図である。全体制御部7は、上述したように、回線切替スイッチ11の下流側の全てのONU3との間で、PON制御プロトコルに関するソフトウェア処理を実行するものである。
【0054】
図4において、全体制御部7は、OAM送受信部73、MPCP送受信部74、CPU部75、RAM部76、ROM部77、PON送信部78、PON受信部79、PON光送受信部70、制御部間通信部71を有する。
【0055】
PON光送受信部70は、回線切替スイッチ15の入出力ポート15と繋がっており、PON送信部78からの電気信号を光信号へ変換して回線切替スイッチ15に送信したり、回線切替スイッチ15からの光信号を電気信号に変換してPON受信部79へ与えたりするものである。
【0056】
OAM送受信部73及びMPCP送受信部74は、PONインタフェースの制御に必要なPON制御フレーム(OAMフレームやMPCPフレーム)を授受するものである。MPCPフレームの種類として、後述するGATEフレームやREPORTフレームなどがある。
【0057】
PON送信部78は、OAMフレームやMPCPフレームなどのPON制御フレームをPON光送受信部70に与えるものである。PON送信部78の中には、下りのシリアル化、逆シリアル化機能部が内蔵されている。
【0058】
PON受信部79は、PON光送受信部70からPON制御フレームを受信、識別し、OAM送受信部73、MPCP送受信部74へ振り分けるものである。
【0059】
CPU部75は、ROM部77に格納されているプログラムに従い、RAM部76やROM部(一般的なROMだけでなくEEPROM等も含む)77に格納されている設定値などを適用し、RAM部76をワーキングメモリとして用いながら、当該全体制御部7の各部を制御するものである。
【0060】
ROM部77に格納されているプログラムとして、PON制御プロトコルの実行に必要なプログラム(例えば、DBA(Dynamic Bandwidth Allocation;動的帯域割当)処理プログラム、MPCPプログラム、OAMプログラム、暗号処理プログラム、認証処理プログラム等)が格納されている。以下では、適宜、例示した各種プログラムと、その各種プログラムの処理のためのデータの通信構成とを併せて、DBA部、MPCP部、OAM部、暗号部、認証部と呼ぶ。
【0061】
RAM部76には、いずれかの運用系OLT5−iから当該予備系OLT6へ切り替える際の処理で利用される各運用系OLT5−1〜5−3に係る情報が記憶されている。すなわち、RAM部76の一部は、機能的に、運用系情報のメモリ72Bを構成している。
【0062】
図5は、全体制御部7における運用系情報メモリ72Bの格納情報例を示す説明図である。
【0063】
運用系情報メモリ72Bには、運用系OLT5−1〜5−3が区別できるようなOLT番号と、各OLT番号に続いて、ONU番号、LLID(Logical Link ID)情報、往復伝搬遅延時間(Round Trip Time;以下、RTTと呼ぶ)、ONUのMAC(Media Access Control)アドレス、ONU登録情報、上り帯域等が記述される。
図5では、記載していないが、暗号で適用するキーや認証結果等も運用系情報メモリ72Bに記述されている。
【0064】
ここで、ONU番号、LLID情報、ONUのMACアドレス、ONU登録情報、上り帯域等は、予備系OLT6が待機しているときにも、所定のタイミングで適宜、該当する運用系OLT5−1〜5−3から転送されて記述されるものである。
【0065】
RTTは、予備系OLT6が待機しているときに、運用系OLT5−1〜5−3の処理の空き時間等を利用して、全体制御部7が測定して記述するものである。例えば、全体制御部7は、ONU3に送信するGATEフレームの送信時と、このGATEフレームに対する応答フレームであるREPORTフレームのONU3からの受信時とに基づいて各ONU3の伝搬遅延時間を求めるようにしても良い。
【0066】
当該全体制御部7におけるDBA部、MPCP部、OAM部、暗号部、認証部等は、運用系情報メモリ72Bに上述したような情報が格納されているため、運用系OLT5−iからの切替時に、運用系情報メモリ72Bからの情報の設定を受ければ良く、MPCPディスカバリ、OAMディスカバリ、適用する暗号キーの決定処理、認証等を改めて行うことは不要である。
【0067】
制御部間通信部71は、当該全体制御部7におけるCPU部75と、運用系OLT5−1〜5−3におけるOLT制御部(図示せず)や予備系OLT本体12のOLT制御部12Aとの間の通信を行うものである。制御部間通信部71は、例えば、外部バス8とのデータ授受するレシーバやドライバで構成されている。全体制御部7がPON制御プロトコルのソフトウェア処理に獲得した運用系情報メモリ72Aのうち、各運用系OLT5−1〜5−3のOLT番号、各ONU3−1〜3−96のONU番号、各ONU3−1〜3−96のLLID情報が、運用系OLT5−1〜5−3及び予備系OLT本体12のOLT制御部12Aに与えられる。
【0068】
この実施形態の運用系OLT5−1〜5−3はそれぞれ、内部機能の図示は省略しているが、当該運用系OLTにおいて、所定情報(
図5参照)の更新があったときは、その内部のOLT制御部は、更新された情報を全体制御部7に通知し、全体制御部7の制御下で、予備系OLT6(の予備系OLT本体12)へ与えるようになされている。
【0069】
(A−2)実施形態の動作
次に、実施形態の予備系局側光回線終端装置である予備系OLT6を含む局側装置2の動作を説明する。
【0070】
まず、作業者が予備系OLT6を局側装置2に実装すると、予備系OLT6のハードウェアの設定情報を設定する。全体制御部7を用いて各運用系OLT5−1〜5−3に種々の所定情報を設定すると共に、予備系OLT6にも、運用系OLT5−1〜5−3に設定した情報のうち、予め定められている情報を設定する。
【0071】
また、作業者は、各運用系OLT5−1〜5−3に設定しているクロック、ローカルタイムを予備系OLT6にも予め設定する。各運用系OLT5−1〜5−3や予備系OLT6の基盤とは別の基盤で形成、更新されているクロック、ローカルタイムを適用するように設定する。
【0072】
次に、予備系OLT6の実装後、全体制御部7が、各運用系OLT5−1〜5−3の配下における全てのONU3−1〜3−96との間のPON制御プロトコルに係るプロトコル情報の設定を行う。
【0073】
つまり、全体制御部7は、予備系OLT6の回線切替スイッチ15を介して、各運用系OLT5−1〜5−3配下の全てのONU3−1〜3−96との間でネゴシエーションを行い、PON制御プロトコルに従った設定情報を設定する
回線切替スイッチ11は、上りトラフィックより、全体制御部7宛てのPON制御フレームをドロップし、全体制御部7と繋がっている入出力ポート15に出力する。
【0074】
また、全体制御部7から入出力ポート15に入力されたPON制御フレームは、回線切替スイッチ11により下りトラフィックにインサートされる。
【0075】
回線切替スイッチ11は、上りフレームのSA(ONU MAC address)とポートの対応を学習することにより、宛先ONUに対応するポートへのフレーム振り分けを実現する。
【0076】
このような回線切替スイッチ11の方路振り分け機能、およびPON制御フレームのドロップ・インサート機能により、全体制御部7のソフトウェア処理で実現されるPON制御プロトコル処理は、運用系OLT5−1〜5−3毎に独立のPONを、論理的に1つのPONとして制御することが可能となる(
図6参照)。
【0077】
MPCPレイヤより上位レイヤのプロトコルは、論理リンクに対応するLLIDを用いてプロトコル制御を行う。
【0078】
全体制御部7は、各運用系OLT5−1〜5−3の配下に位置する論理リンクを同一PON上の論理リンクとして制御するプロトコル処理を実現するために、MPCPディスカバリ処理で、全OLT5−1〜5−3配下の論理リンクに対してユニーク値となるようにLLID情報を付与し管理する。
【0079】
全体制御部7は、MPCPレイヤのリンクが確立するまでは、各運用系OLT5−1〜5−3のハードウェアと連携してMPCPディスカバリ処理を行い、MPCPリンク確立後に、回線切替スイッチ11経由でPON制御フレーム送受信を行う。
【0080】
全体制御部7は、MPCPディスカバリ処理で割り当てたLLID情報を、制御部間通信部71を介して、対応する運用系OLT5−1〜5−3と予備系OLT本体12のOLT制御部12Aに設定する。
【0081】
この実施形態では、上位レイヤのプロトコル処理は、予備系OLT6への切替発生時においても、全体制御部7で継続的に実施されるので、予備系OLT本体12のOLT制御部12Aに予め設定しておくべき情報はLLID情報のみとなり、全体制御部7でLLID情報の付与の際に、予備系OLT本体12のOLT制御部12Aにも設定しておくことで、切替時に必要な情報は予備系OLT12のOLT制御部12A内に設定されることになる。
【0082】
なお、切替事象の検出、および切替処理は、予備系OLT本体12のCPU25が行う。切替制御を予備系OLT本体12が自律に行うことにより、全体制御部7は、下位レイヤのハードウェア切替を意識する必要なく、PON制御プロトコル処理を継続することができる(
図7参照)。
【0083】
全体制御部7の上位レイヤのPON制御フレームの送受信は、回線切替スイッチ11でドロップ・インサートされるので、全体制御部7のソフトウェア処理は、障害が発生した運用系OLT5−iから予備系OLT6への切替を意識する必要はなく、「1個の運用系OLTあたりのサポート分岐数×全運用系OLTの数」で表される分岐数のPON制御を実現すればよい。
【0084】
全体制御部7でのOLT故障検出は、予備系OLT6に切替完了後、予備系OLT本体12のOLT制御部12Aから全体制御部7へ切替元の運用系OLT5−iの故障を通知することで実現可能である。
【0085】
(A−3)実施形態の効果
以上のように、実施形態によれば、各運用系OLTに独立に実装していた上位レイヤのプロトコル処理機能を全体制御部のソフトウェア処理に共通化することで、運用系OLTに実装すべき機能は、MPCPレイヤ機能の一部と、下位レイヤ機能のハードウェア処理のみとなり、OLT基盤のCPUレス化を行うことで、コスト低減と基盤サイズの小型化が可能となる。
【0086】
また、実施形態によれば、予備系OLTに予め保持すべき切替元の運用系OLTのデータ量を減らせるため、予備OLT基盤のデータ蓄積リソース減によるコスト低減を実現できる。
【0087】
さらに、実施形態によれば、切替時のデータ設定量を減らせるので、切替時間を短縮できる。
【0088】
また、実施形態によれば、切替時に、上位プロトコル制御を行うソフトウェア処理の予備OLTへの引継ぎを考慮しなくて済むので、切替制御ソフトウェアの開発コストを低減できる。
【0089】
(B)他の実施形態
上記実施形態では、N:1のPONプロテクション方式の局側装置に適用した場合を示したが、N:M(M<N)のPONプロテクション方式の局側装置に本発明を適用することができる。ここで、M個の予備系OLTは、代替できる運用系OLTが全ての運用系OLTであっても一部の運用系OLTであっても良い。後者の場合、運用系情報メモリ72に保持させておく情報は、当該予備系OLTが代替できる運用系OLTに関する情報である。