(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6287452
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】車両のフードサポートロッドの配設構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/12 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
B62D25/12 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-65250(P2014-65250)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-186970(P2015-186970A)
(43)【公開日】2015年10月29日
【審査請求日】2017年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176811
【氏名又は名称】三菱自動車エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】安永 俊寛
(72)【発明者】
【氏名】武居 昌史
【審査官】
梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭56−124064(JP,U)
【文献】
実公昭61−038856(JP,Y2)
【文献】
実開昭61−139322(JP,U)
【文献】
特開2002−178861(JP,A)
【文献】
実開昭62−031579(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0073473(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部空間を開閉する前開き式のフードと、
前記車体前部空間の閉塞状態で前記フードの下方に位置する車体前部構成部材上に倒伏した格納位置となり、前記車体前部構成部材上で起立しその上端が前記フードに係止した起立位置で前記車体前部空間の開放状態を保持するフードサポートロッドとを備え、
前記車体前部構成部材上に、前記起立位置から前記格納位置と反対側に倒れ前記車体前部構成部材への衝突を阻止する衝突阻止部材が設けられ、
前記衝突阻止部材は、フード閉塞時の衝撃を緩和するフード用ダンパとして構成されている、
ことを特徴とする車両のフードサポートロッドの配設構造。
【請求項2】
前記衝突阻止部材に、前記フードサポートロッドが前記起立位置から前記格納位置と反対側に倒れる際に、前記フードサポートロッドに係合し前記倒れる方向と直交する方向の前記フードサポートロッドの位置決めを行なう係合凹部が設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載の車両のフードサポートロッドの配設構造。
【請求項3】
前記車体前部構成部材は、アッパーバーの上に取り付けられるアッパーバーカバーであり、
前記衝突阻止部材は、前記アッパーバーカバーを前記アッパーバーに取り付ける取り付け部材として形成されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の車両のフードサポートロッドの配設構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のフードサポートロッドの配設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部空間を開閉する前開き式のフードを備える車両においては、フードを開いて車体前部空間の開放状態を保持するためのフードサポートロッドが設けられている。
フードサポートロッドは、ロッドクリップを介して車体前部構成部材で揺動可能に支持されている。
そして、フードサポートロッドは、車体前部空間の閉塞状態でフードの下方に位置する車体前部構成部材上に倒伏した格納位置と、車体前部構成部材上で起立しその上端がフードに係止し車体前部空間の開放状態を保持する起立位置との間で揺動される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平6−34217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フードサポートロッドが起立位置から格納位置と反対側に倒れた場合、フードサポートロッドが前照灯などの車体前部構成部材へ衝突し、前照灯を損傷することも考えられる。
そのため、ロッドクリップから突出するフードサポートロッドの端部をL字状に屈曲して所定の長さで形成し、この端部を車体前部構成部材へ当接することでフードサポートロッドの格納位置と反対側への揺動限界位置を定め、車体前部構成部材への衝突を阻止することが考えられる。
しかしながら、このように構成すると、車体前部空間の閉塞状態でフードサポートロッドの端部の先端がフードの下面に近づく。そのため、フードサポートロッドの端部の先端とフードとが干渉しないように、フードサポートロッドの端部とフードとの間に隙間を確保しなくてはならず、フードのレイアウトの自由度が損なわれる。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、フードサポートロッドによる車体前部構成部材の損傷を防止しつつ、フードのレイアウトの自由度を確保する上で有利な車両のフードサポートロッドの配設構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、車体前部空間を開閉する前開き式のフードと、前記車体前部空間の閉塞状態で前記フードの下方に位置する車体前部構成部材上に倒伏した格納位置となり、前記車体前部構成部材上で起立しその上端が前記フードに係止した起立位置で前記車体前部空間の開放状態を保持するフードサポートロッドとを備え、前記車体前部構成部材上に、前記起立位置から前記格納位置と反対側に倒れ前記車体前部構成部材への衝突を阻止する衝突阻止部材が設けられ、前記衝突阻止部材は、フード閉塞時の衝撃を緩和するフード用ダンパとして構成されていることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、前記衝突阻止部材に、前記フードサポートロッドが前記起立位置から前記格納位置と反対側に倒れる際に、前記フードサポートロッドに係合し前記倒れる方向と直交する方向の前記フードサポートロッドの位置決めを行なう係合凹部が設けられていることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、前記車体前部構成部材は、アッパーバーの上に取り付けられるアッパーバーカバーであり、前記衝突阻止部材は、前記アッパーバーカバーを前記アッパーバーに取り付ける取り付け部材として形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、フードサポートロッドが起立位置から格納位置と反対側に倒れた際、衝突阻止部材によりフードサポートロッドの車体前部構成部材への衝突を阻止でき、車体前部構成部材の損傷を阻止することができる。
しかもフードサポートロッドの車体前部構成部材への衝突を阻止するには、水平状態よりも僅か手前の揺動状態にフードサポートロッドを止めればよいため、衝突阻止部材の高さは小さな寸法で足り、車体前部空間の閉塞状態で衝突阻止部材がフードに干渉するおそれはなく、フードのレイアウトの自由度を確保する上で有利となる。
請求項2記載の発明によれば、フードサポートロッドが起立位置から格納位置と反対側に倒れる際に、フードサポートロッドを衝突阻止部材により確実に受け止め、フードサポートロッドの車体前部構成部材への衝突をより確実に阻止する上で有利となる。
請求項3記載の発明によれば、アッパーバーカバーをアッパーバーに取り付ける取り付け部材の個数を削減し、コストダウンを図る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態に係る車両のフードサポートロッドの配設構造においてフードサポートロッドが格納位置および起立位置に位置した状態を示す説明図である。
【
図2】実施の形態に係る車両のフードサポートロッドの配設構造においてフードサポートロッドが衝突阻止部材に受け止められた状態を示す説明図である。
【
図3】実施の形態に係る車両のフードサポートロッドの配設構造においてフードサポートロッドが格納位置に位置した状態を示す要部斜視図である。
【
図4】実施の形態に係る車両のフードサポートロッドの配設構造においてフードサポートロッドが衝突阻止部材に受け止められた状態を示す要部斜視図である。
【
図5】実施の形態に係る車両のフードサポートロッドの配設構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1、
図5に示すように、車両10は、車室の前方に車体パネルで仕切られた車体前部空間Sを有し、車体前部空間Sは前開き式のフード12により開閉される。
車体前部空間Sには、車両10が電動車の場合にはインバータが配置され、車両10が内燃機関を駆動源とする場合には、ラジエータ、エンジンが配置される。
車体前部空間Sの前部中央にはフロントグリル14が位置し、フロントグリル14の右左両側には前照灯16が配置されている。
車体前部空間Sの前部の上部には車幅方向に延在するアッパーバー18が位置し、フロントグリル14の上部背面はこのアッパーバー18で支持され、フロントグリル14の上部とアッパーバー18は、アッパーバー18に取着されたアッパーバーカバー20で覆われている。
それら前照灯16、アッパーバー18、アッパーバーカバー20は車体前部構成部材であり、前照灯16の上部、アッパーバー18、アッパーバーカバー20は、車体前部空間Sの閉塞状態でフード12の下方に位置してフード12で隠される。
【0009】
フードサポートロッド22は、車幅方向中心から右側に偏位したアッパーバー18の箇所にロッドクリップ24を介して設けられている。
図3、
図4に示すように、ロッドクリップ24は、基板部2402と、フードサポートロッド22の支軸部2202を揺動可能に支持するボス部2404とを有し、基板部2402がボルト2406を介してアッパーバー18に締結されることで配設されている。
フードサポートロッド22は、支軸部2202の一端から屈曲部を介して延在する本体部2204と、支軸部2202の他端から屈曲部を介して短い長さで延在する端部2206とを有している。
図1に示すように、本体部2204の長手方向の中間部に把持部2210が設けられ、本体部2204の先部2204Aはフード12側の係止部に係止する適宜形状で形成されている。
フードサポートロッド22は、車体前部空間Sの閉塞状態で先部2204Aを車両10左側に向けアッパーバーカバー20上に倒伏した格納位置P0となる。
また、フードサポートロッド22は、アッパーバー18上で起立しその上端がフード12に係止し車体前部空間Sの開放状態を保持する起立位置P1となる。
【0010】
図1、
図3、
図4、
図5に示すように、ロッドクリップ24よりも右側でロッドクリップ24の近傍のアッパーバーカバー20の箇所に、フードサポートロッド22が起立位置P1から格納位置P0と反対側に倒れた際、前照灯16への衝突を阻止する衝突阻止部材26が設けられている。
衝突阻止部材26は、弾性部材で形成され、本実施の形態では、弾性部材としてゴムが用いられている。
衝突阻止部材26は、アッパーバーカバー20の上面上に位置する上部2602と、上部2602の下面から突出する軸部2604とを有している。
上部2602は、フードサポートロッド22が起立位置P1から格納位置P0と反対側に倒れる際にフードサポートロッド22の本体部2204に弾接し、フードサポートロッド22の格納位置P0と反対側への揺動限界位置P2を定め、フードサポートロッド22の前照灯16への衝突を阻止するように構成されている。
フードサポートロッド22の前照灯16への衝突を阻止するには、フードサポートロッド22の水平状態よりも僅か手前の揺動状態をフードサポートロッド22の揺動限界位置P2とすればよいため、上部2602の高さは小さな寸法で足りる。
衝突阻止部材26をロッドクリップ24により近づけた箇所に配置すると、上部2602の高さをより小さな寸法にする上で有利となる。
【0011】
また、
図3、
図4に示すように、上部2602に、フードサポートロッド22が起立位置P1から格納位置P0と反対側に倒れる際に、フードサポートロッド22に係合し倒れる方向と直交する方向のフードサポートロッド22の位置決めを行なう係合凹部2610が設けられている。
このような係合凹部2610を設けることで、フードサポートロッド22が起立位置P1から格納位置P0と反対側に倒れる際に、フードサポートロッド22を確実に受け止め、フードサポートロッド22の前照灯16への衝突をより確実に阻止するように図られている。
【0012】
図5に示すように、衝突阻止部材26は、軸部2604がアッパーバーカバー20の軸部挿通孔2002を挿通しアッパーバー18の取り付け孔1802に係止することでアッパーバー18に取着されている。したがって、衝突阻止部材26はアッパーバーカバー20をアッパーバー18に取り付ける取り付け部材としても構成されている。
上部2602は所要の体積を有してフード12の前部下面に弾接可能に形成され、したがって、衝突阻止部材26はフード12閉塞時の衝撃を緩和するフード用ダンパとしても構成されている。
【0013】
本実施の形態によれば、フードサポートロッド22が起立位置P1から格納位置P0と反対側に倒れた際、衝突阻止部材26がフードサポートロッド22に弾接し、フードサポートロッド22を揺動限界位置P2とするので、前照灯16などの車体前部構成部材へのフードサポートロッド22の衝突を阻止でき、車体前部構成部材の損傷を阻止することができる。
しかも衝突阻止部材26の高さは小さな寸法で足りるため、車体前部空間Sの閉塞状態で衝突阻止部材26がフード12に干渉するおそれはなく、フード12のレイアウトの自由度を確保する上で有利となる。
また、衝突阻止部材26はフード12の閉塞時の衝撃を緩和するフード用ダンパとしても構成されているので、フード用ダンパの個数を削減し、コストダウンを図る上で有利となる。
また、衝突阻止部材26は係合凹部2610を備えているので、フードサポートロッド22が起立位置P1から格納位置P0と反対側に倒れる際に、フードサポートロッド22を確実に受け止め、車体前部構成部材への衝突をより確実に阻止する上で有利となる。
また、衝突阻止部材26はアッパーバーカバー20をアッパーバー18に取り付ける取り付け部材としても構成されているので、アッパーバーカバー20をアッパーバー18に取り付ける取り付け部材の個数を削減し、コストダウンを図る上で有利となる。
【符号の説明】
【0014】
10 車両
12 フード
16 前照灯(車体前部構成部材)
18 アッパーバー(車体前部構成部材)
20 アッパーバーカバー(車体前部構成部材)
22 フードサポートロッド
26 衝突阻止部材
2610 係合凹部
S 車体前部空間
P0 格納位置
P1 起立位置