特許第6287462号(P6287462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6287462プラズマ処理装置用電極板及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6287462
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置用電極板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
   H01L21/302 101L
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-66988(P2014-66988)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-191970(P2015-191970A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】田中 輝紀
(72)【発明者】
【氏名】高畠 康太
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−324781(JP,A)
【文献】 特開2004−006581(JP,A)
【文献】 特開2004−207533(JP,A)
【文献】 特開2004−247350(JP,A)
【文献】 特開2005−060168(JP,A)
【文献】 特開平07−041399(JP,A)
【文献】 特開平10−074771(JP,A)
【文献】 特開昭59−190300(JP,A)
【文献】 特開2008−159773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/461
H01L 21/469
H01L 21/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径500mm以上の口径を有するプラズマ処理装置用電極板を製造する方法であって、
単結晶シリコンのシリコンインゴットを1100℃以上1250℃以下の温度範囲まで1℃/分以下の昇温レートで加熱して該温度範囲で10分以上保持した後に、1℃/分以下の降温レートで250℃まで冷却を行うことにより熱処理を施す熱処理工程と、
その熱処理がされた前記シリコンインゴットを切断して円板状の素地板を形成するスライス工程と
を有することを特徴とするプラズマ処理装置用電極板の製造方法。
【請求項2】
結晶シリコンにより直径500mm以上の円板状に形成され、比抵抗値の面内ばらつきが10Ω・cm以下とされることを特徴とするプラズマ処理装置用電極板。
【請求項3】
前記比抵抗値が76.95Ω・cm以上89.84Ω・cm以下であることを特徴とする請求項2に記載のプラズマ処理装置用電極板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置において、プラズマ生成用ガスを厚み方向に通過させながら放電するプラズマ処理装置用電極板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造プロセスに使用されるプラズマエッチング装置やプラズマCVD装置等のプラズマ処理装置は、チャンバー内に、高周波電源に接続される一対の電極を、例えば上下方向に対向配置し、その下側電極の上に被処理基板を配置した状態として、上部電極に形成した通気孔からエッチングガスを被処理基板に向かって流通させながら高周波電圧を印加することによりプラズマを発生させ、被処理基板にエッチング等の処理を行う構成とされている。
【0003】
このプラズマ処理装置で使用される上部電極として、一般に、シリコン製の電極板を冷却板に固定し重ね合せた積層電極板が用いられており、プラズマ処理中に上昇する電極板の熱は、冷却板を通じて放熱されるように構成されている。
また、この種のシリコン製の電極板としては、特許文献1に記載されているように、単結晶シリコン、多結晶シリコン、柱状晶シリコンからなる電極板が知られているが、現在では、チョクラルスキー法(CZ法)により引き上げられた単結晶シリコンからなるインゴットをダイヤモンドバンドソーなどで略円板状に薄く切断することにより作製された単結晶シリコン電極板が多く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4517363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、近年ではプラズマ処理されるシリコンウエハの大径化が進んでおり、それに伴って電極板も一層大きなものにしなければならなくなっている。ところが、単結晶シリコンによる大口径のシリコンインゴットから電極板を作製することは容易ではなかった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、単結晶シリコンからなる大口径のプラズマ処理装置用電極板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、直径500mm以上の口径を有するプラズマ処理装置用電極板を製造する方法であって、単結晶シリコンのシリコンインゴットを1100℃以上1250℃以下の温度範囲まで1℃/分以下の昇温レートで加熱して該温度範囲で10分以上保持した後に、1℃/分以下の降温レートで250℃まで冷却を行うことにより熱処理を施す熱処理工程と、その熱処理がされた前記シリコンインゴットを切断して円板状の素地板を形成するスライス工程とを有することを特徴とする。
【0008】
単結晶シリコンインゴットの大径化に伴い、シリコンインゴットの内部に存在する内部ひずみも大きくなっており、従来と同様にシリコンインゴットを切断して素地板を形成すると、素地板に縁欠けや割れが発生することがあった。また、切断後の素地板には反りが発生するため、電極板として使用するためには、素地板の表面を研磨して反り部分を除去して平らに加工する必要があった。このため、シリコンインゴットから円板状の素地板を切り出す際には、切断後の素地板の反り量を考慮して、作製する予定の電極板の厚みよりも厚く切断する必要があり、製造コストの増加につながっていた。
この点、本発明のプラズマ処理装置用電極板の製造方法においては、シリコンインゴットを切断する前に、すなわちスライス工程の前に上記条件で熱処理を行うことにより、シリコンインゴットの内部ひずみを除去することとしているので、後のスライス工程において、素地板に割れや欠けが生じることを防止でき、単結晶シリコンからなる大口径の電極板を製造することが可能となる。また、素地板に反りが生じることも防止できることから、電極板の材料使用率を向上させることもできる。
また、このようにして製造される電極板においては、比抵抗値の面内ばらつきを低減させることができ、被処理基板へのプラズマ処理を均一に行うことが可能となる。
なお、熱処理工程において、シリコンインゴットを加熱、保持する温度が1100℃未満の場合や、保持の時間が10分未満の場合、また降温のレートが1℃/分を超える場合は、十分に内部ひずみを除去することができず、後のスライス工程において素地板に生じる割れや欠けを防止することができない。また、加熱、保持の温度が1250℃を超えると、シリコンインゴットの自重により歪みがかえって蓄積され、最悪の場合は強度的にシリコンインゴットの形状が保てなくおそれがある。
【0009】
本発明のプラズマ処理装置用電極板は、結晶シリコンにより直径500mm以上の円板状に形成され、比抵抗値の面内ばらつきが10Ω・cm以下とされる。
比抵抗値の面内ばらつきは、電極板の面方向の中心位置、外周位置及中心位置と外周位置との中間位置を含む複数箇所で測定して、それらの比抵抗値の最大値と最小値の差から求められるものである。
また、本発明のプラズマ処理装置用電極板の好ましい実施形態として、前記比抵抗値が76.95Ω・cm以上89.84Ω・cm以下であるとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、単結晶シリコンからなる大口径のプラズマ処理装置用電極板を形成することができるとともに、その電極板の比抵抗値の面内ばらつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態のプラズマ処理装置用電極板の製造方法を説明するフロー図である。
図2】本実施形態のプラズマ処理装置用電極板が用いられるプラズマ処理装置の一例を示す概略構成図である。
図3】比抵抗値の測定位置を説明する電極板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るプラズマ処理装置用電極板及びその製造方法の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
まず、このプラズマ処理装置用電極板(以下、電極板と称す。)が用いられるプラズマ処理装置として、プラズマエッチング装置100について説明する。
プラズマエッチング装置100は、図2に示すように、真空チャンバー2内の上側に電極板(上側電極)3が設けられるとともに、下側に上下動可能な架台(下側電極)4が電極板3と相互間隔をおいて平行に設けられる。この場合、上側の電極板3は絶縁体5により真空チャンバー2の壁に対して絶縁状態に支持されているとともに、架台4の上に、静電チャック6と、その周りを囲むシリコン製の支持リング7とが設けられており、静電チャック6上に支持リング7により周縁部を支持した状態でウエハ(被処理基板)8が載置されるようになっている。
【0013】
また、真空チャンバー2の上側には、エッチングガス供給管21が設けられ、このエッチングガス供給管21から送られてきたエッチングガスは、拡散部材9を経由した後、電極板3に設けられた通気孔31を通してウエハ8に向かって流され、真空チャンバー2の側部の排出口22から外部に排出される構成とされる。一方、電極板3と架台4との間には、高周波電源10により高周波電圧が印加されるようになっている。
【0014】
また、電極板3の背面には熱伝導性に優れるアルミニウム等からなる冷却板11が固定されている。この冷却板11にも、電極板3の通気孔31に連通するように、この通気孔31と同じピッチで貫通孔12が形成されている。そして、電極板3は、背面が冷却板11に接触した状態でねじ止め等によってプラズマエッチング装置100内に固定される。
【0015】
そして、本実施形態の電極板3は、単結晶シリコンにより、例えば厚み10mm〜15mm、直径500mm以上の大口径の円板に形成される。また、この電極板3には、数mm〜40mm程度のピッチで数百〜3000個程度の通気孔31が縦横に整列した状態で厚み方向に平行に貫通するように形成されている。なお、各通気孔31は、ドリル加工又はレーザ加工により形成され、例えば、厚み12mm、直径530mmの電極板3に対して穴径が0.5mm、ピッチ25mmで形成される。
【0016】
このように構成される電極板3は、図1のフロー図に示すように、単結晶シリコンのシリコンインゴットに熱処理を施す熱処理工程(S1)と、その熱処理後のシリコンインゴットを切断して円板状の素地板を形成するスライス工程(S2)と、素地板に複数の通気孔を加工する通気孔形成工程(S3)を経て製造される。なお、単結晶シリコンからなる直径500mm以上のシリコンインゴットは、チョクラルスキー法により形成される。
【0017】
上記電極板3の製造工程について詳述すると、まず直径500mm以上の単結晶シリコンからなるシリコンインゴットに対して、1100℃以上1250℃以下の温度範囲まで1℃/分以下の昇温レートで加熱して、その温度範囲で10分以上保持した後に、1℃/分以下の降温レートで250℃まで冷却を行うことにより熱処理を施す(熱処理工程:S1)。そして、その熱処理後のシリコンインゴットを、ダイヤモンドバンドソー等で略円板状に薄く切断して素地板を形成する(スライス工程:S2)。
【0018】
最後に、各素地板に対し、素地板の一方の表面側から厚み方向に平行にドリルを下降させる、またはレーザ照射を行うことにより、通気孔31を1つずつ加工して電極板3を仕上げる(通気孔形成工程:S3)。なお、ドリル加工により通気孔31の内面に多数発生するいわゆるマイクロクラックを除去するために、電極板をエッチング液に一定時間浸漬してエッチング処理を施すこととしてもよい。
【0019】
このように、本実施形態の電極板の製造方法においては、単結晶シリコンのシリコンインゴットに対して、1100℃以上1250℃以下の温度範囲まで1℃/分以下の昇温レートで加熱して、その温度範囲で10分以上保持した後に、1℃/分以下の降温レートで250℃まで冷却を行う熱処理工程(S1)を施すことにより、シリコンインゴットの内部ひずみを除去することとしている。これにより、シリコンインゴットの切断時において、シリコンインゴットの切終わり部分で割れや欠けが生じ易かったが、切り始めから切終わりの最後まで円滑に切断することが可能となる。
【0020】
したがって、後のスライス工程(S2)において、素地板に割れや欠けが生じることを防止でき、単結晶シリコンからなる大口径の電極板を製造することが可能となる。また、素地板に反りが生じることも防止できることから、電極板の材料使用率を向上させることもできる。
さらに、このようにして製造される電極板においては、比抵抗値の面内ばらつきを低減させることができるので、被処理基板へのプラズマ処理を均一に行うことが可能となる。
なお、熱処理工程(S1)において、シリコンインゴットを加熱、保持する温度が1100℃未満の場合や、保持の時間が10分未満の場合、また降温のレートが1℃/分を超える場合は、十分に内部ひずみを除去することができず、後のスライス工程(S2)において素地板に生じる割れや欠けを防止することができない。また、加熱、保持の温度が1250℃を超えると、シリコンインゴットの自重により歪みがかえって蓄積され、最悪の場合は強度的にシリコンインゴットの形状が保てなくおそれがある。
【実施例】
【0021】
本発明の効果を確認するために、本発明例及び比較例の素地板の試料を作製した。
各試料は、直径540mmの単結晶シリコンからなるシリコンインゴットを切断することにより、厚み12mmの素地板を形成した。
【0022】
本発明例1〜3及び比較例1〜3の試料については、シリコンインゴットを切断する前に、熱処理を施した後に、素地板の切り出しを行った。本発明例1〜3の試料については、1175℃まで1℃/分の昇温レートで加熱して、1175℃で10分保持した後に、1℃/分の降温レートで250℃まで冷却を行った。一方、比較例1〜3の試料については、1175℃まで2℃/分の昇温レートで加熱して、1175℃で10分保持した後に、2℃/分の降温レートで250℃まで冷却を行った。また、比較例4〜6の試料については、1050℃まで1℃/分の昇温レートで加熱して、1050℃で10分保持した後に、1℃/分の降温レートで250℃まで冷却を行った。
比較例7〜9の試料については、シリコンインゴットに対して熱処理工程を行うことなく、素地板の切り出しを行った。
【0023】
そして、図3に示すように、各試料の素地板30について、素地板表面の面方向の中心位置a、外周位置b、中心位置aと外周位置bとの中間位置cの三箇所の位置における比抵抗値を測定した。また、比抵抗値の面内ばらつきを、これら中心位置a、外周位置b、中心位置aと外周位置bとの中間位置cの各位置における3つの比抵抗値のうちの最大値と最小値の差(PV値)から求めた。また、素地板に生じた割れや欠けの有無を確認した。
表1に結果を示す。
【0024】
【表1】
【0025】
表1からわかるように、本発明例1〜3の試料においては、シリコンインゴットの切断時に素地板に割れや欠けを生じさせることなく、製造することができた。また、本発明例1〜3の試料は、比較例1〜9の試料に比べて比抵抗値のばらつき(PV値)が低減されることが確認できた。
【0026】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0027】
2 真空チャンバー
3 電極板(上側電極)
4 架台(下側電極)
5 絶縁体
6 静電チャック
7 支持リング
8 ウエハ(被処理基板)
9 拡散部材
10 高周波電源
11 冷却板
12 貫通孔
21 エッチングガス供給管
22 排出口
30 素地板
31 通気孔
100 プラズマエッチング装置(プラズマ処理装置)
図1
図2
図3