(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るアクチュエータを示す斜視図であり、
図2は、同アクチュエータの要部分解斜視図である。また、
図3は、同アクチュエータにおける要部構成を示す概略断面図である。
【0018】
図1及び
図2に示すアクチュエータ100は、固定体110と、可動体120と、弾性変形することにより固定体110に可動体120を可動自在に支持する弾性体(弾性支持部)130と、交流供給部140(
図2参照)と、を有する。
【0019】
図1及び
図2に示すアクチュエータ100では、可動体120は、固定体110に対して、水平方向への移動を規制した状態で上下方向(着磁方向)を含む多自由度方向に移動自在に取り付けられている。可動体120は、交流供給部140からの電力供給によって、回転軸部材、或いは、回転中心となる部材を用いることなく、所定の角度範囲内で正逆方向に回転往復振動、具体的には、ねじり方向で回転し基準位置に戻ろうとする運動を繰り返す。これを用いて、可動体120は、所謂、すりこぎ(2自由度方向)運動を行うことができる。
【0020】
図2及び
図3に示すように固定体110は、固定基部111と、コア部112と、コアカバー113と、コイル部114と、を有する。なお、コア部112、コアカバー113及びコイル部114は、コイル部114の数に対応する電磁石を備える電磁石ユニットを構成する。
【0021】
固定基部111は、固定体110の基台であり、ここでは、有底筒状をなし、底面部の中央部に開口部111aが形成されている。固定基部111において開口部111aを囲むように電磁石ユニットが配置されている。この開口部111a内には、可動体120が配置される。
【0022】
コア部112は、磁性体により構成され、磁極を形成する複数の磁極コア1121を有する。磁極コア1121は、それぞれ棒状に形成されており、その一端部に磁極面116を備える。磁極面116は、可動体120の単極マグネット122に対して、単極マグネット122の着磁方向と交差する方向(ここでは直交する方向)で対向する。
【0023】
磁極コア1121は、それぞれ絶縁性を有するコアカバー113により被覆されている。磁極コア1121の外周には、それぞれ絶縁性を有するコアカバー113を介して、コイル部114が巻回されている。コイル部114に電流が供給されると励磁され、磁極面116が形成される。
【0024】
磁極コア1121は、アクチュエータ100を平面視して、固定基部111の中央に配置される可動体120の外周面に対して、四方から磁極面116が対向するように、固定基部111に固定されている。これにより、磁極面116は、可動体120を囲むように均等の距離を開けて配置されている。
【0025】
磁極面116は、可動体120の外周(ここでは、単極マグネット122の外周の中央部分)に対向し、且つ、可動体120の外周に沿う円弧状に構成されている。ここでは、磁極面116は、磁極コア1121の一端部から左右に、可動体120の周方向に沿って延びる円弧状の部位によって構成される。
【0026】
可動体120は、単極マグネット122と、磁性体123、124とを有する。
【0027】
単極マグネット122は、円盤状(例えば、コイン型)をなし、上下方向の面をそれぞれ着磁面としている。単極マグネット122は、ここでは、固定体110に対して、上面側、つまり表面側がN極で着磁され、下面側、つまり、裏面側をS極で着磁されている。これら単極マグネット122の磁極面のそれぞれに、円盤状の磁性体123、124が接着されている。
【0028】
単極マグネット122は、例えば、ネオジムマグネット、ネオジウムボンドマグネット等のネオジウム系マグネット或いは、フィライトマグネット、フィライトボンドマグネット等のフィライト系マグネットを適用することが望ましい。単極マグネット122に、永久磁石として最も強力とされているネオジウムマグネットを適用すれば、体積当たりの磁力が強いため、他の材料と比べて比較的小さい寸法でもエネルギー変換効率を高めて、アクチュエータ100自体の小型高出力化を可能にできる。また、単極マグネット122として、フィライトマグネットを適用すれば、ネオジウムマグネットと比較して、磁気回路を安価に構成できる。加えて、単極マグネット122がフィライトマグネットであれば、熱減磁温度が高い(ネオジウムマグネットの熱減磁温度、約130[℃]に対して、約200[℃])ため、アクチュエータ100自体を車載用の製品に用いることが可能となる。
【0029】
可動体120は、単極マグネット122の着磁方向に、固定体110の固定基部111の開口部を位置させて、配置されている。可動体120は、平面視して、可動体120の中心、つまり仮想中心線VLを、固定体110の中心と一致させた状態で、弾性体130により支持されている。
【0030】
コイル部114は、単極マグネットの着磁方向と交差する方向、ここでは直交する方向に延在するコア部112の外周に巻き付けられて構成される。コイル部114は、磁極面116を有するコア部112とで電磁石を構成し、アクチュエータ100の駆動に用いられる。コイル部114の軸心は、それぞれ巻回される磁極コア1121の軸心と同一であることが望ましい。コイル部114のコイル巻線は、図示しない基板(切り替えスイッチ等を備える基板)に接続されており、基板を介して外部端子に接続される。コイル部114には、外部端子を介して交流供給部140から交流電源(交流電圧)が供給される。
【0031】
コイル部114の極性は、コイル部114が巻回する磁極コア1121の磁極面116の極性に相当する。この磁極面の極性は、供給電流の向きによって適宜変更する。具体的には、コイル部114に対して、交流供給部140から可動体120の共振周波数に略等しい周波数の交流を供給する際の向きを変更することで、適宜変更される。このように所望のコイル部114を適宜励磁し、これを繰り返すことによって、可動体120を可動するトルク(磁気発生トルク)が発生し、可動体120は可動する。ここでは、対向配置されるコイル部114(詳細にはコイル部114に対応する磁極面116)がそれぞれ異なる極性となるように励磁(一方がN極、他方がS極)し、弾性体130を介して着磁マグネット122を捻る方向にトルク(磁気発生トルク)が発生する(
図4参照)。捻れ方向に変位した可動体120に対して、先に励磁したコイル部114組とは別のコイル部114の組を励磁し、これを順次繰り返す。
【0032】
なお、電磁石ユニットの磁極の数であるが、3極以上であれば、何極あってもよい。本実施の形態では、これら磁極が交互に異なる磁極となるようコイル部114を励磁して、発生するトルクによって可動体120をすりこぎ運動させることができる。なお、4つ以上の偶数個であれば、奇数個の極数である場合よりも制御しやすい。すなわち、対向するコイル部114同士を互い異なる磁極で励磁し、可動体120が捻れ方向に可動したタイミングで、先に励磁した一対のコイル部114と隣り合うコイル部を、励磁し、これを交互に繰り返し行うことによって容易にすり個運動させることができる。
【0033】
弾性体130は、固定体110と可動体120との間で、固定端を固定体110に固定して、遊端を可動体120に固定する。弾性体130は、可動体120の可動中心を、可動体120の発生磁気トルクの略中心に一致するように可動体120に取り付けられている。
【0034】
弾性体130は、例えば、ステンレス、りん青銅等の非磁性材料を用いることにより構成されている。これによりアクチュエータ100において、不要な漏れ磁束が低減でき、アクチュエータ100自体の組立性の向上を図ることができる。
【0035】
ここでは弾性体130は、板バネで構成されており、これにより、アクチュエータ100自体のコストの低廉化が図られている。また、弾性体130として樹脂バネを用いても良い。
【0036】
弾性体130は、一端が固定端の葛折り状部を有する板状弾性アーム部132と、板状弾性アーム部132の他端部に接続され、可動体120の周囲に外嵌されるリング部134とを有する。
【0037】
板状弾性アーム部132では、葛折り状部1321によって、固定基部111に固定された固定端から、可動体120に固定される遊端までの長さが、直線形状よりも、長くなるようにして弾性変形するための十分な長さを確保した形状となっている。
【0038】
リング部134は、可動体120の外周に外嵌されるホルダ150に一体的に固定されている。ホルダ150は、着磁マグネット122の外周に配置された状態で、磁性体124上に固定されている。ホルダ150は、その厚みにより弾性体130による着磁マグネット122に対する支持位置、つまり、固定体110及び可動体120間の架設位置を設定する。この構成により、固定体110及び可動体120間における板状弾性アーム部132は、可動体120の発生磁気トルクの略中心を通る水平面上に位置するように、固定体110と可動体120のそれぞれに固定されている。加えて、板状弾性アーム部132の架設位置は、平面視して可動体120の略中心に対して、それぞれ対称となる位置となっている。本実施の形態では、可動体120は、四方に配置された4つの板状弾性アーム部132を介して、可動自在に支持されている。弾性体130は、可動体120に接続される位置(固定端)の全てを起点にして付勢方向の延長線上に可動体120の発生磁気トルクの略中心が位置するように、可動体120を可動可能に支持されている。
【0039】
これにより、可動体120は、弾性体130を介して、固定体110に、可動体120の発生磁気トルクの略中心を、コア部112の磁極面116同士間における水平方向での略中心に一致させた状態で保持されている。可動体120は、回転軸に相当する部材、その軸受け等を用いることなく、固定体110に対して、水平方向への移動を規制した状態で上下方向(着磁方向)を含む多自由度方向に、移動可能に、取り付けられている。
【0040】
弾性体130は、単極マグネット122の可動方向に対して一定のばね定数を得ることができ、可動体120に対してトルクが作用する。これにより、例えば、可動体120は、2自由度方向、ここでは、ねじり方向に可動する(
図4参照)。この弾性体130のばね定数を調整することにより、アクチュエータ100における共振周波数が調整できる。
【0041】
すなわち、上記構成のアクチュエータ100では、可動体120の共振周波数に略等しい周波数の交流をコイル部114に入力して、互いに対向して配置されたコイル部114に対応する磁極面116が、それぞれ異なる極性となるように励磁(一方がN極、他方がS極)されると、可動体120の単極マグネット122に対して、効率的に磁気吸引力及び反発力を発生する。これにより、可動体120の単極マグネット122は、単極マグネット122の発生磁気トルクの略中心(中心も含む)Gを中心に、上下方向に延びる仮想の中心線の回りを回るように、すりこぎ運動を行う。
【0042】
本実施の形態のアクチュエータ100では、可動体120のイナーシャ(慣性モーメント)J、ねじり方向のバネ定数K
spとした場合、可動体120は、固定体110に対して、下記式(1)によって算出される共振周波数Fr[Hz]で振動する。
【0044】
本実施の形態のアクチュエータ100は、交流供給部140によって、コイル部に可動体120の共振周波数Frと略等しい周波数の交流を供給する。これにより、可動体120を効率良く駆動させることができる。
【0045】
本アクチュエータ100における可動体120は、弾性体130を介して固定体110により支持されるバネマス系構造で支持された状態となっている。よって、コイル部に可動体120の共振周波数Frに等しい周波数の交流が供給されると、可動体120は共振状態で駆動される。このとき発生するねじり方向への運動が、弾性体130に伝達される。
【0046】
アクチュエータ100は、下記式(2)で示す運動方程式及び下記式(3)で示す回路方程式に基づいて駆動する。
【0049】
すなわち、アクチュエータ100における慣性モーメントJ[Kgm
2]、回転角度θ(t)[rad]、トルク定数K
t[Nm/A]、電流i(t)[A]、バネ定数K
sp[Nm/rad]、減衰係数D[Nm/(rad/s)]、負荷トルクT
Load[Nm]等は、式(2)を満たす範囲内で適宜変更できる。また、電圧e(t)[V]、抵抗R[Ω]、インダクタンスL[H]、逆起電力乗数K
e[V/(rad/s)]は、式(3)を満たす範囲内で適宜変更できる。
【0050】
このように構成されたアクチュエータ100の動作について説明する。コイル部114のうち、対向する一対のコイル部114のそれぞれに、交流供給部140から可動体120の共振周波数に略等しい周波数の交流を供給して、交互に異なる極性で励磁(一方がN極、他方がS極)する。これにより、可動体120に対して捻れる方向にトルク(磁気発生トルク)が発生する。本実施の形態では、この捻れるトルクを用いて、可動体120を可動させる。
【0051】
具体的には、まず、アクチュエータ100において、単極マグネット122に対して上面側をN極、下面側をS極とする。この構成において、
図4に示すように、単極マグネット122の外周面側に、単極マグネット122の着磁方向と直交する方向を磁極として配置された電磁石のうち、互いに対向する電磁石の第1のコイル部114−1と、第2のコイル部114−2に対して、図示する方向で交流電流を供給する。この電力供給によって、第1のコイル部114−1はN極に励磁され、第2のコイル部114−2はS極に励磁される。これにより、フレミング左手の法則に則って、推力が発生し、発生磁気トルクの略中心G回りで、可動体120はねじり方向(矢印D方向)に移動する。この状態を
図5Aで示す。
図5Bには、
図5Aで示す状態において、励磁された第1のコイル部114−1と周方向隣り合う第3のコイル部114−3と、この第3のコイル部114−3に対向する第4のコイル部114−4の状態を示す。
図5Aでは、可動体120は、第1のコイル部114−1のN極、第2のコイル部114−2のS極によって、捻れ方向に変位しているため、
図5Bに示すように、第3のコイル部114−3及び第4のコイル部114−4に対しては、可動体120は弾性体130の復元力に抗して、第3のコイル部114−3側に変位した状態となっている。
【0052】
次いで、
図5Bで示す状態の第1のコイル部114−1の周方向で隣り合う第3コイル部114−3をS極で、且つ、第3のコイル部114−3と対向する第4のコイル部114−4をN極で励磁する。これにより、ねじり方向に移動した可動体120が、弾性体130の復元力により、水平の基準位置に変位しようとする際に、第3のコイル部114−3から矢印D1方向に変位する。次いで、第1のコイル部114−1の磁極をS極、第2のコイル部114−2の磁極をN極となるように励磁する。このように周方向で隣り合うコイル部114と、そのコイル部114に対向するコイル部114に対して、順次、交互に異なる極性の磁極面116を有するように、対向する対毎に交互に励磁することで、可動体120を連続して可動させる。これにより可動体120は、仮想中心線VL(
図1及び
図4参照)回りに、仮想中心線VLに対して、所定角度を付けつつ旋回する運動、すなわち、可動体120の仮想中心線VL(
図1及び
図4参照)を通り、且つ、発生磁気トルクの略中心に一致する点を基点として円を描くようなすりこぎ運動を行う。
【0053】
次に、本実施の形態でコイル部114に供給される交流電流について簡単に説明する。
【0054】
図6は、本実施の形態のアクチュエータにおいて交流供給部140から固定体110のコイル部114に供給される交流の周期を示す図である。
【0055】
コイル部114に流れる交流は、
図6Aに示すように周波数f
0のパルス波でもよいし、
図6Bに示すように周波数f
0の正弦波でもよい。
【0056】
図4の状態では、第1及び第2のコイル部114−3、114−4に、
図6に示す時点t1の順方向の電流が供給されて、対極する磁極がそれぞれN極・S極で励磁され、可動部はねじれ方向(矢印D方向)に変位する。可動体120が矢印D方向に変位し切った状態が
図6の時点t2であり、この時点t2で電流の向きを切り替える。そして、可動体120が弾性体130の復元力によって、元の位置に向かって可動し、元に位置に戻った際が、
図6に示す時点t3であり、逆方向の電流が第3及び第4のコイル部114−3、114−4に供給されて、かつ、
図5BのD1方向に変位させる。また、可動体120が矢印D1方向に変位した状態(
図5C)において、
図6の時点t4で示すように電流の向きが切り替えられて、
図5Aで示す状態から元の位置に変位するように可動体120が可動して、元の位置に戻った際に、
図6に示す時点t5順方向の電流が、第1及び第2のコイル部114−3、114−4に供給される。これが1周期分の動作であり、このような動作が繰り返されることで、可動体120は、可動体120の仮想中心線VL(
図1及び
図4参照)を基点として円を描くようにすりこぎ運動を行う。なお、これら交流電流の供給及び供給先の切り替えは、交流供給部140とコイル部114との間に接続された図示しない基板にて行う。
【0057】
このように本実施の形態のアクチュエータ100によれば、簡易な磁気回路構成であり、組み立てやすく、安価な材料コストで低コスト化を図ることができ、さらに、小型化を図りつつ、高出力を実現することができる。
【0058】
なお、このアクチュエータ100の構成において、単極マグネット122の上面側をN極、下面側をS極とした場合、固定体110のコイル部114の磁極を全てN極に励磁すると、単極マグネット122の下面側で吸引力が働き、上面側は反発力が働く。これにより、例えば、全磁極をS極に励磁することによって、可動体120を上方向に移動させ、弾性体130の復元力により基準位置に戻るタイミングで、全磁極をN極に励磁することによって、可動体120を下方向に移動させることができる。すなわち、この動作を繰り返すことを、例えば基板で制御することによって、アクチュエータ100は、可動体120を上下方向に振動させることができる。
【0059】
また、アクチュエータ100では、可動体120は、ねじり方向で回転し基準位置に戻ろうとする運動を行う。このアクチュエータ100を、特許文献1に示す従来の小型ポンプの構成において、DCモータ、偏心回転軸に換えて適用することによって、従来の小型ポンプと比較して、一層の小型化を図ることができる。すなわち、本実施の形態のアクチュエータ100を適用したポンプでは、DCモータの回転をすりこぎ運動に変換する変換機構を用いることなく、可動体の上面と、ポンプ室底面のダイヤフラムとを直接接続するだけで、従来の小型ポンプにおけるダイヤフラムを上下動させることができる。
【0060】
この一例を、
図7に示す。
図7は、本発明の実施の形態のアクチュエータを適用したエアポンプの一例を示す。
【0061】
図7で示すエアポンプ1は、平面視長方形のケース2内にポンプ室3、3を形成する複数(ここでは2つ)のダイヤフラム4、4を備える。これらダイヤフラム4、4どうしは、互いに一体的に連結されており、これらダイヤフラム4、4の下部中心部には、取付突部9、9が下方に突設して設けられている。尚、ケース2は、上ケース2aと、中ケース2bと、下ケース2cの3段で構成され、ダイヤフラム4、4は、ダイヤフラム4、4の鍔部4a、4aを、上ケース2aと中ケース2bとの間に挟着されてケース2に保持されている。
【0062】
これら取付突部9、9には、ダイヤフラム4、4の下面を上下動させる揺動体12が揺動自在に配設されている。ダイヤフラム4、4の底部中心部は、一部を切開されて吸気弁体42、42が形成されている。この切開によって貫通孔43、43が設けられ、吸気弁体42、42により、貫通孔43、43を閉塞、開放可能にして吸気弁部V1、V1が構成される。尚、吸気弁体42、42の形成方法は前述の切開方法に限定されるものではなく、他の方法で形成してもよい。
【0063】
取付突部9、9は、内部を貫通して形成され、一端側で吸気弁体42を介して貫通孔43に連続可能な空気導入孔91を備える。
取付突部9、9は、吸気弁体42の開閉によって空気導入孔91を介して、ポンプ室内とアクチュエータの配置空間(下ケース2c内)とを連通させる。
【0064】
一方、上ケース2aは、中央部に排気孔22が穿孔されている。また、上ケース2aは、上ケース2aの下面を環状に切り欠いて形成され、且つ、ダイヤフラム4、4の上端部が挿入される環状溝部24を有する。環状溝部24は、上ケース2の中央部分で、それぞれ排気孔22の両端部分と連続している。これら環状溝部24を形成する内壁面24aには、ダイヤフラム4、4の上部で構成する排気弁体8を圧接されることによって排気弁部V2、V2が構成されている。
【0065】
また、ダイヤフラム4、4の下端部には揺動体12が揺動自在に連結され、この揺動体12には、アクチュエータ100の可動体120が接合されている。
揺動体12は、可動体120の磁性体123から着磁方向に延びる軸部12aと、軸部12aの先端部から、軸部12aに対して略垂直方向に突出した揺動アーム12bを有する。揺動アーム12bの先端で、ダイヤフラム4の下部の取付突部9、9の下端部に、揺動自在に連結されている。この連結部分は、任意の方向に回転可能となるように接続されていればどのように構成されてもよい。なお、揺動体12が配設される下ケース2cの壁部には、下ケース2cの内外に連通して形成され、外気を内部に導入する連通孔93が設けられている。
【0066】
このエアポンプ1は、アクチュエータ100を駆動して、可動体120をすりこぎ運動させることによって、軸部12aも追従してすりこぎ運動を行い、これにより揺動アーム12bが揺動してダイヤフラム4、4の下端部の取付突部9を上下動させる。
例えば、ダイヤフラム4の下端部の取付突部9が揺動体12により下動された際に、ダイヤフラム4内は負圧となるので、排気弁体8は環状凹溝24の内壁面24aに密着し、即ち、排気弁部V2は閉じ、且つ、吸気弁体42は、貫通孔43を閉塞状態から開放し、即ち、吸気弁部V1は開状態となり、空気導入孔91からダイヤフラム4内、つまりポンプ室内3へ矢印Fの如く吸気が行われる。
次に、ダイヤフラム4の下端部が上動された時、ダイヤフラム4内は高圧になり、吸気弁体42が貫通孔43を閉塞して吸気弁部V1を閉状態にするとともに、排気弁体8が内壁面24aより拡径して、排気弁部V2による排気が矢印Dのように行われる。排気弁体8内より排出された空気は、環状凹溝24を通、排気孔22からケース2外に排出される。なお、ダイヤフラム4の上動に伴って下ケース2c内は負圧になる。これにより、連通孔93を介して下ケース2c内、つまり、ケース2内に空気が吸入される。
【0067】
このように、エアポンプ1では、ポンプ室3を構成する各ダイヤフラム4、4の底部中心部に吸気弁部V1を配設し、更に、ポンプ室3の上面を構成するケース2の上ケース2aの上板中央部に、ダイヤフラム4内の排気を行う排気弁部V2を配設している。そして、排気弁部V2からエアを送り出すためのダイヤフラム4を駆動する揺動体12は、直接、アクチュエータ100の可動体120に接合されている。これにより、エアポンプ1は、従来のポンプと比較して、DCモータの回転をすりこぎ運動に変換する変換機構を必要とせず、エアポンプ1の高さ自体が低くなっており(低背化)、一層の小型化が図られている。
【0068】
このようにアクチュエータ100は、同種のすりこぎ運動を実現するための駆動源として利用可能であり、エアポンプ1以外にも適用してもよい。また、アクチュエータ100はエアポンプ等のすりこぎ運動を実現するための駆動源として用いることができる点に加えて、例えば、アクチュエータ100は、2軸の回転運動が必要なレーザーレーダーのミラー駆動用途や走査機能を必要とするレーザー走査機器等に用いてもよい。
【0069】
また、アクチュエータ100が美顔器としてマッサージ器等の理美容機器に用いられる場合、アクチュエータ100を取り付けた機器本体に、可動体120の運動によって、外部に出没自在な突起部を設けることで実現できる。
【0070】
また、アクチュエータ100は、式(2)、(3)を満たし、式(1)で示す共振周波数を用いた共振現象により駆動する。これにより、アクチュエータ100では、定常状態において消費される電力は負荷トルクによる損失及び摩擦等による損失だけとなり、低消費電力で駆動、つまり、可動体120を低消費電力ですりこぎ運動させることができる。
【0071】
また、本実施の形態によれば、着磁マグネット122を備える可動体120により、直動でのすりこぎ運動を実現できるため、エアポンプ1の駆動源として用いた場合、従来と異なり、回転運動からすりこぎ運動への変換機構が不要となる。よって、エアポンプ1の一層の小型化を図ることができる。さらに、従来と異なり、回転運動からすりこぎ運動への変換機構が不要となるため、回転運動からすりこぎ運動への変換を行う機構部で発生する摺動音を低減できる。また、変換機構を有しないことから、少ない部品点数で組み立て易い構造のアクチュエータを実現できる。
【0072】
また、例えば、特許文献3に示す従来の支軸構造を持つ2自由度アクチュエータと比較して、可動体を可動させるための可動体の回転軸、或いは位置決めの軸を必要としない。これにより、構造を簡易化でき、組立性の向上、コストの低廉化を図ることができる。
【0073】
なお、アクチュエータ100によれば、弾性体(ばね)130の配置を可動体120の外周部に配置するため、可動体の中心に固定された弾性体(ばね)によって可動体を支持する構成のアクチュエータと異なり、薄型化を図ることができる。
【0074】
また、単極マグネット122の磁極面には磁性体123、124が配置されている。これにより、単極マグネット122を、電磁石ユニットとともに効率的な磁気回路の一部にすることが可能となり、外径の小さい単極マグネット122でも高出力とすることができ、エネルギー変換効率を高めることができる。
【0075】
弾性体130は、板バネにより形成されている。これにより、弾性体130を安価で製作でき、コストの削減を図ることができる。さらに、ばね定数の設計が容易となり、アクチュエータを、信頼性の高い製品として提供できる。
【0076】
固定体110の内側に、可動体120を配置しているため、可動体120を、円筒型や角型の単極マグネットで構成でき、安価でアクチュエータを構成してコストの削減を図ることができる。
【0077】
また、弾性体130は、非磁性材料により構成されているため、アクチュエータ100の組立時に磁気吸引力が働かくことがなく、アクチュエータ100自体の組立性の向上を図ることができる。
【0078】
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2に係るアクチュエータ100Aを示す斜視図であり、
図9は、同アクチュエータ100Aの要部分解斜視図であり、
図10は、同アクチュエータ100Aの要部構成を示す概略断面図である。
【0079】
実施の形態1では、可動体120を一つの弾性体130で可動自在に支持する構成としたが、実施の形態2では、可動体120Aを、それぞれ弾性変形する2つの弾性体130Aで支持するようにした(
図9、
図10参照)。
【0080】
具体的には、本実施の形態2のアクチュエータ100Aは、実施の形態1のアクチュエータ100の構成において、固定基部111、弾性体130及びホルダ150を、固定ケース111A、2つの弾性体130A及び上ホルダ151、下ホルダ152に代えている。つまり、アクチュエータ100Aは、アクチュエータ100と同様の基本的構成を有しており、同様の駆動原理で駆動する。よって、以下では、同一の構成要素には同名称、同符号を付し、その説明を省略する。
【0081】
図8〜
図10に示すアクチュエータ100Aは、固定体110Aと、可動体120Aと、固定体110Aに可動体120Aを可動自在に支持する弾性体130Aと、交流供給部140(
図9参照)と有する。固定体110A及び可動体120Aは、実施の形態1のアクチュエータ100の固定体110及び可動体120と同様の機能を有する。
【0082】
すなわち、可動体120Aは、実施の形態1における可動体120の構成と同様に、円盤状の単極マグネット122Aを有する。この単極マグネット122Aの着磁方向の上下の磁極面のそれぞれに、円盤状の磁性体123A、124Aが接着されている。磁性体123A、124Aには、着磁方向(上下方向)に所定の厚みを有する上ホルダ151、下ホルダ152が固定されている。上ホルダ151、下ホルダ152は、可動体120A、つまり、着磁マグネット122Aに対する弾性体130Aの支持位置を設定するものであり、ここでは、弾性体130Aで支持できるように厚み調整されている。この厚みのある上ホルダ151、下ホルダ152には、それぞれ固定体110に固定端で固定された弾性体130Aの遊端が接合されており、可動体130Aは、基準位置として固定体110Aと可動体120Aとに水平に架設される位置に位置する。これにより、2つの弾性体130Aは、可動体120Aの可動中心を、可動体120Aの発生磁気トルクの略中心(中心も含む)G1(
図10参照)に一致するように可動体120Aに取り付けられている。
【0083】
固定体110Aは、実施の形態1の電磁石ユニットを内蔵する固定ケース111Aを有する。
【0084】
固定ケース111Aは、天面及び底面の中央部分で開口する開口部111bを介して外部に連通し、且つ、内部に可動体120Aが可動可能に配置される中空部が形成されている。固定ケース111Aは、
図9及び
図10に示すように上下に分割された上ケース1111と、下ケース1112とを有する。
【0085】
上ケース1111及び下ケース1112内には、中央部分の開口部111bの縁部を囲むように、電磁石ユニット(コア部112、コアカバー113及びコイル部114)が配置されている。コア部112の磁極コア1121の磁極面116は、それぞれ、固定ケース111Aの中空部内の可動体120Aの外周面に対向して配置されている。
【0086】
上ケース1111及び下ケース1112の天面及び底面の中央の開口部111bの開口縁部には、それぞれの開口部111bを塞ぐように、弾性体130Aが取り付けられている。
【0087】
弾性体130Aは、弾性体130と同様の基本的構成を有し、ここでは同様の材質で円盤状に形成されている。すなわち、弾性体130Aは、外周側に固定端を有し、内周側で内縁円形板133aに一様に固定された遊端を有する葛折り状の板状弾性アーム部132Aを備える。
【0088】
葛折り状の板状弾性アーム部132Aにおける固定端は、弾性体130Aの外縁環状部133bに接合され、遊端は、内縁円形板133aに接合されている。外縁環状部133bは、上下ケース1111、1112の開口部111bの開口縁部に固定され、内縁円形板133aは、上ホルダ151、下ホルダ152の上下面で固定されている。
【0089】
この構成により弾性体130Aでは、板状弾性アーム部132Aは、上下ケース1111、1112の開口部111bの開口縁部と、上ホルダ151、下ホルダ152の外縁との間で、周方向に沿って水平に延びるように取り付けられている。各弾性体130Aの板状弾性アーム部132Aは、上下ケース1111、1112の開口部111bの開口縁部と、上ホルダ151、下ホルダ152の外縁との間において、開口縁部に沿って形成されている。板状弾性アーム部132Aは、上下ケース1111、1112の開口部111bの開口縁部と、上ホルダ151、下ホルダ152の外縁とを直線で結んだ長さよりも長く形成されており、弾性変形に十分な長さを有している。弾性体130Aは、可動体120Aに接続される位置(固定端)の全てを起点にして付勢方向の延長線上に可動体120Aの発生磁気トルクの略中心G1が位置するように、可動体120Aを可動可能に支持されている。
【0090】
このように構成されるアクチュエータ100Aでは、固定体110Aにおける電磁石ユニットのコイル部114に、アクチュエータ100と同様に、交流供給部140から電力供給を行う。
図11に示すように、第1のコイル部114−1が巻回される磁極コア1121の磁極面116がN極に、これに対向する第2のコイル部114−2が巻回された磁極コア1121の磁極面116がS極となるように交流を供給して励磁する。
これにより、可動体120Aは、上下面側でそれぞれ矢印D方向のトルクが作用し、D方向のねじり方向に変位する。なお、コイル部114のコイル巻線は、図示しない基板(切り替えスイッチ等を備える基板)に接続されている。基板は、外部端子を介して接続される交流供給部140からコイル部114への交流電源(交流電圧)の供給を制御してもよい。
【0091】
次いで、復元力により弾性体130Aが基準位置に戻る際に、実施の形態1と同様に、第1のコイルブ114−1と隣り合う第3のコイル部114−3(
図9参照)とそれに対向する第4のコイル部114−4(
図9参照)に交流電流を供給して互いに異なる磁極となるように励磁する。具体的には、第3コイル部114−1をS極で、この第3コイル部114−3と対向する第4のコイル部114−4をN極となるように励磁する。そして、復元力により弾性体130Aが基準位置に戻る際に、第1コイル部114−1の隣の第3のコイル部114−3を、N極となるように励磁し、第3のコイル部114−3に対向するコイル部114−4を、S極となるように励磁する。これを周方向で、順次、交互に繰り返して制御することによって、実施の形態1と同様の運動原理で、可動体120Aは、可動体120Aの仮想中心線VL(
図8及び
図11参照)が円を描くようなすりこぎ運動等の運動を行う。
【0092】
また、本実施の形態2では、すりこぎ運動等の運動を行う可動体120Aは、複数の弾性体130Aによって、固定体110Aに対して可動自在に支持されている。これにより、弾性体130Aに衝撃が加わった際に応力分散が図られることになり、不具合が発生しにくく、信頼性の向上を確保できる。また、固定体110A及び可動体120A間に架設される弾性体130Aが、可動体120Aの上下で挟むように配置されている。これにより、弾性体130Aは、実施の形態1と異なり、固定体110Aの内部に設ける必要がなく、実施の形態1の構成よりもバネ設計の自由度が高い。これは、固定体110の内部に弾性体130を配置する場合、固定体110内では、電磁石ユニットも配置されるため、弾性体130の配置場所は予め決められており、その場所の領域内でのバネ設計を行う必要が生じるからである。
【0093】
また、アクチュエータ100Aもアクチュエータ100と同様に、ばねマス系を持つ構造となる。これにより、コイル部114への入力周波数を、可動体120Aのイナーシャとばね定数により決定できる共振周波数に近い値にして、磁気回路を駆動することによって、消費電力の抑制が可能であり、高効率なアクチュエータを提供することが可能となる。
【0094】
また、アクチュエータ100Aにおいて、単極マグネット122Aの上面側をN極・下面側をS極とし、固定体110Aのコイル部114を励磁して磁極を全てN極にする。すると、単極マグネット122Aの下面側で吸引力が働き、上面側は反発力が働く。これにより、例えば、全磁極をS極となるように励磁することによって、可動体120Aを上方向に移動させ、弾性体130Aの復元力により基準位置に戻るタイミングで、全磁極をN極に励磁することによって、可動体120Aを下方向に移動させることができる。すなわち、これを繰り返すことで、アクチュエータ100Aは、アクチュエータ100と同様に、可動体120Aを上下方向に振動させることができる。この振動の制御は、例えば、図示しない基板を用いて、コイル部114への電源供給を制御することによって行う。
【0095】
また、このアクチュエータ100Aを、アクチュエータ100と同様に、
図7に示すエアポンプ1に用いても良い。すなわち、本実施の形態のアクチュエータ100Aを適用したポンプでは、DCモータの回転をすりこぎ運動に変換する変換機構を用いることなく、可動体の上面と、ポンプ室底面のダイヤフラムとを直接接続するだけで、従来の小型ポンプにおけるダイヤフラムを上下動させることができる。これにより、DCモータの回転をすりこぎ運動に変換する変換機構を用いた特許文献1に示す従来の小型ポンプの構成と比較して、一層の小型化を図ることができる。
【0096】
アクチュエータ100Aは、エアポンプ以外にも適用してもよい。また、アクチュエータ100Aは、エアポンプ1等のすりこぎ運動を実現するための駆動源として用いることができる点に加えて、2軸の回転運動を実現することができ、レーザーレーダーのミラー駆動用途や走査機能を必要とするレーザー走査機器等に用いてもよい。また、アクチュエータ100Aをアクチュエータ100と同様に美顔器としてマッサージ器の理美容機器等に用いて小型化を図ることもできる。
【0097】
(実施の形態3)
図12は、本発明の実施の形態3に係るアクチュエータ100Bを示す斜視図であり、
図13は、同アクチュエータ100Bの要部分解斜視図である。なお、このアクチュエータ100Bの要部を示す概略断面図は、符号のみ異なり、
図3と同様である。
【0098】
実施の形態3のアクチュエータ100Bは、アクチュエータ100と同様の基本的構成を有しており、アクチュエータ100と比較して、固定体110側の磁極数及び弾性体の板状弾性アーム部132の数のみ異なる構成とした。本実施の形態3のアクチュエータ100Bは、実施の形態1のアクチュエータ100において、電磁石の磁極(コイル部114及び磁極コア1121)の数を、奇数個である3つにした。
【0099】
具体的には、アクチュエータ100Bは、固定体110Bと、可動体120Bと、固定体110Bに可動体120Bを可動自在に支持する弾性体(弾性支持部)130Bと、交流供給部140B(
図13参照)とを有する。
【0100】
可動体120Bは、可動体120と同様に構成されており、弾性体130Bを介して、固定体110Bに、上下方向(着磁方向)を含み且つ水平方向への移動を規制した状態で多自由度方向に移動自在に取り付けられている。すなわち、可動体120Bには、弾性体130Bが、可動体120Bの可動中心を、可動体120Bの発生磁気トルクの略中心(中心も含む)に一致させた状態で、取り付けられている。
【0101】
アクチュエータ100Bでは、可動体120Bは、固定体110Bに対して、上下方向或いは2自由度方向に移動する。可動体120Bは、交流供給部140Bからの電力供給によって、回転軸部材、或いは、回転中心となる部材を用いることなく、所定の角度範囲内で正逆方向に回転往復振動、具体的には、ねじり方向で回転し基準位置に戻ろうとする運動を繰り返す。これを用いて、可動体120Bは、所謂、仮想中心線VL回りに、仮想中心線VLから所定角度傾いて、可動体120Bの発生磁気トルクの略中心を通る軸線の一端で円を描くように回転する運動、つまり、すりこぎ運動を行うことができる。
【0102】
固定体110Bは、固定基部111Bと、コア部112Bと、コアカバー113Bと、コイル部114Bと、を有する。なお、コア部112B、コアカバー113B及びコイル部114Bにより電磁石ユニットを構成する。
【0103】
固定基部111Bは、有底筒状をなし、底面部の中央部に開口部が形成されている。固定基部111Bにおいて底面部の中央の開口部を囲むように電磁石ユニットが配置されている。この開口部内には、弾性体130Bを介して可動体120Bが配置されている。
【0104】
コア部112Bは、磁極を形成する3つの棒状の磁極コア1121(
図3参照)を有する。これら磁極コア1121は、固定基部111B内で底面上に、中央の開口部を中心に放射状に配置されている。磁極コア1121の一端部の磁極面116は、開口部の外縁に沿って、等間隔を開けて配置されている。磁極面116は、固定基部111Bの中央部分に配置された可動体120Bの単極マグネット122に対して、単極マグネット122の着磁方向と交差する方向(ここでは直交する方向)で対向し、且つ、単極マグネット122の外周を囲むように配置されている。なお、磁極面116は、可動体120Bの外周(ここでは、単極マグネット122の外周の中央部分)に対向し、且つ、可動体120Bの外周に沿う円弧状に構成されている。
【0105】
コア部112Bの磁極コア1121(
図3参照)は、それぞれ絶縁性を有するコアカバー113Bにより被覆されている。磁極コア1121の外周には、それぞれコアカバー113Bを介して、コイル部114Bが巻回されており、コイル部114Bに電流が供給されると磁極面116が励磁する。
【0106】
可動体120Bは、単極マグネット122と、磁性体123、124とを有し、可動体120と同様の構成であるため、単極マグネット122と、磁性体123、124の説明は省略する。
【0107】
この可動体120Bは、弾性変形する弾性体130Bによって、磁性体124に固定されたホルダ150を介して、単極マグネット122の着磁方向に、固定体110Bの固定基部111の開口部が位置するように、支持されている。ホルダ150は、その厚みにより弾性体130Bによる着磁マグネット122に対する支持位置、つまり、固定体110B及び可動体120B間の架設位置を設定する。この構成により、固定体110B及び可動体120B間における板状弾性アーム部132は、可動体120Bの発生磁気トルクの略中心を通る水平面上に位置するように、固定体110Bと可動体120Bのそれぞれに固定されている。加えて、放射状に配置される各板状弾性アーム部132の架設位置は、平面視した際の可動体120Bの中心に対して、それぞれ対称となる位置となっている。本実施の形態では、可動体120Bは、3方に配置された3つの板状弾性アーム部132を介して、可動自在に支持されている。弾性体130Bは、可動体120Bに接続される位置(固定端)の全てを起点にして付勢方向の延長線上に可動体120Bの発生磁気トルクの略中心が位置するように、可動体120Bを可動可能に支持されている。また、平面視して、基準位置における可動体120Bの中心(仮想中心線VL)は、固定体110Bの中心と一致している。
【0108】
コイル部114Bは、コイル部114と同様であり、コア部112Bの磁極コア1121の外周に絶縁性を有するコアカバー113Bを介して巻回されている。コイル部114Bは、磁極面116を有する磁極コア(
図3に示す磁極コア1121と同様の構成であり、図示省略)とともに電磁石を構成し、アクチュエータ100Bの駆動に用いられる。コイル部114Bの軸心は、それぞれ巻回されるコア部112の磁極コア(図示省略)の軸心と同一であることが望ましい。コイル部114Bのコイル巻線は、図示しない基板に接続されており、基板を介して外部端子に接続される。コイル部114Bには、外部端子を介して交流供給部140Bから交流電源(交流電圧)が供給される。
【0109】
コイル部114Bの磁極面116の極性は、供給電流の向きによって適宜変更する。具体的には、コイル部114Bの磁極面116の極性は、交流供給部140Bから可動体120Bの共振周波数に略等しい周波数の交流を供給することで、適宜変更される。このようにコイル部114Bを適宜励磁し、これを繰り返すことによって、可動体120Bは可動する。
【0110】
弾性体130Bは、弾性体130と同様の材料、例えば、ステンレス、りん青銅等の非磁性材料を用いることにより構成されている。これによりアクチュエータ100Bにおいて、不要な漏れ磁束が低減でき、アクチュエータ100B自体の組立性の向上を図ることができる。ここでは、弾性体130Bは、板バネを用いることで、アクチュエータ100B自体のコストを低減できる。
【0111】
弾性体130Bは、弾性体130と同様の基本的構成を有する。すなわち、弾性体130Bは、一端が固定端の葛折り状部を有する板状弾性アーム部132と、板状弾性アーム部132の他端部に接続され、可動体120Bの周囲に外嵌されるリング部134Bとを有する。
【0112】
リング部134Bは、可動体120Bの外周に外嵌されるホルダ150に一体的に固定されている。これにより、固定体110B及び可動体120B間における板状弾性アーム部132の架設位置は、平面視して、等間隔で位置する可動体120Bの外周と対向する磁極面116との組の間に、可動体120Bの中心で点対称となる位置に配置されている。
【0113】
これら板状弾性アーム部132は、実施の形態1と同様に、可動体120Bの発生磁気トルクの略中心を通る水平面上に位置するように、固定体110Bと可動体120Bのそれぞれに固定されている。本実施の形態では、可動体120Bは、3方に配置された3つの板状弾性アーム部132を介して、可動自在に支持されている。
【0114】
これにより、可動体120Bは、弾性体130Bを介して、可動体120Bの中心をコア部112の各磁極面116間の水平方向での中心に一致させた状態で、固定体110Bにより保持されている。可動体120Bは、回転軸に相当する部材、軸受け等を用いることなく、固定体110Bに対して、上下方向(着磁方向)を含み且つ水平方向への移動を規制した状態で多自由度方向に移動可能に固定体110Bに取り付けられている。
【0115】
弾性体130Bは、単極マグネット122の回動方向に対して一定のばね定数を得ることができ、可動体120Bに対してトルクが作用する。これにより、可動体120Bは、可動体120と同様にねじり方向に可動する(
図4参照)。すなわち、弾性体130Bによりアクチュエータ100Bにおける共振周波数が調整できる。
【0116】
上記構成のアクチュエータ100Bでは、コイル部114Bへ入力される交流波により磁極コア1121、具体的には磁極面116が磁化され、可動体120の単極マグネット122に対して、効率的に磁気吸引力及び反発力を発生する。
【0117】
磁極が3極であるため、3つのコイル部114Bに120度位相をずらした電流を入力する。これを、周方向で、順次、位相をずらした電流を供給することによって、4極構成(アクチュエータ100)と同様に、可動体120Bに、可動体120の仮想中心線VL(
図1及び
図4参照)が円を描くようにすりこぎ運動をさせる。
【0118】
なお、このアクチュエータ100Bも、アクチュエータ100と同様に、上記式(2)、(3)を満たし、上記式(1)で示す共振周波数を用いた共振現象により駆動する。アクチュエータ100Bによれば、アクチュエータ100よりも、コイル部114の数を減らすこと(4つ→3つ)ができ、工数の削減を図ることができる。また、図示しない駆動回路のスイッチング素子(一般にMOSFET)の数を減らすことができるため、更にコストの削減を図ることができる。
【0119】
また、アクチュエータ100Bにおいて、単極マグネット122Bの上面側をN極・下面側をS極とし、固定体110Bのコイル部114Bを励磁して磁極を全てN極にする。すると、単極マグネット122Bの下面側で吸引力が働き、上面側は反発力が働く。これにより、例えば、全磁極をS極にすることによって、可動体120Bを上方向に移動させ、復元力により弾性体130Bが基準位置に戻る際に、コイル部114Bを励磁して全磁極をN極にすることによって、可動体120Bを下方向に移動させることができる。すなわち、これを繰り返すことで、アクチュエータ100Bは、アクチュエータ100と同様に、可動体120Bを上下方向に振動させることができる。
【0120】
また、このアクチュエータ100Bを、アクチュエータ100と同様に、
図7に示すエアポンプ1に用いても良い。すなわち、本実施の形態のアクチュエータ100Bを適用したポンプでは、DCモータの回転をすりこぎ運動に変換する変換機構を用いることなく、可動体の上面と、ポンプ室底面のダイヤフラムとを直接接続するだけで、従来の小型ポンプにおけるダイヤフラムを上下動させることができる。これにより、DCモータの回転をすりこぎ運動に変換する変換機構を用いた特許文献1に示す従来の小型ポンプの構成と比較して、一層の小型化を図ることができる。
【0121】
アクチュエータ100Bは、エアポンプ以外にも適用してもよい。また、アクチュエータ100Bは、エアポンプ1等のすりこぎ運動を実現するための駆動源として用いることができる点に加えて、2軸の回転運動を実現することができ、レーザーレーダーのミラー駆動用途や走査機能を必要とするレーザー走査機器等に用いてもよい。また、アクチュエータ100Bをアクチュエータ100と同様に美顔器としてマッサージ器等の理美容機器に用いて小型化を図ることもできる。
【0122】
(実施の形態4)
実施の形態4は、実施の形態1のアクチュエータ100と同様に偶数の磁極を構成する電磁石を備えるアクチュエータ100Cにおいて、励磁する電磁石の極性を変えて可動体120を駆動させる。
【0123】
図14に示すアクチュエータ100Cは、アクチュエータ100と同様の構成である。すなわち、固定体110は、単極マグネット122の周囲に等間隔で配置された偶数個(ここでは4個)の電磁石を有する。また、電磁石で囲まれる可動体120は、上下方向を着磁方向とした単極マグネット122の両磁極面に磁性体123、124を取り付けることで構成されている。単極マグネット122において、上面は、N極で着磁され、下面はS極で着磁されている。
【0124】
この構成のアクチュエータ100Cは、隣り合う2個の第1群の電磁石(第1のコイル部114−1と第3のコイル部114−3をそれぞれ有する電磁石)の磁極を同磁極(例えば、N極)で励磁し、第1群の電磁石に相対する第2群の電磁石(第2のコイル部114−2と第4のコイル部114−4をそれぞれ有する電磁石)の磁極を、第1群の電磁石の磁極と反対の磁極(例えば、S極)に励磁する。
すると、可動体120は、可動中心を基準に傾く方向に変位する。そして、この可動体120が傾いて、元の位置(基準位置)に戻ろうとする際に、各群を構成する電磁石(具体的にはコイル部114)への供給電源の電流の向きを逆向きに切り替える。これにより、可動体120が弾性体130の復元力により元の位置に移動するときに、先の極性とは異なる磁極で励磁される第1群の電磁石と第2群の電磁石によって、可動体は中心C1を中心に先の傾きとは逆の方向に傾く。この動作を繰りかえすことで可動体120は、中心線C1を基準に、中心線C回りで、往復揺動運動を行う。これにより、アクチュエータ100Cは、可動体120に振動を加えることができ、発電機として用いることができる。また、アクチュエータ100Cを、アクチュエータ100と同様に美顔器としてマッサージ器の理美容機器等に用いて小型化を図ることもできる。
【0125】
なお、各実施の形態における単極マグネット122、122A、122Bの上下の磁極面の極性は、上面側、つまり表面側をS極で着磁し、下面側、つまり、裏面側をN極で着磁してもよい。この場合、各アクチュエータ100、100A、100Bでは、上述したアクチュエータ100、100A、100Bでの可動体120、120A、120Bの運動と同様の運動をさせるべく、固定体110、110A、110B側の磁気回路を変更する。具体的には、対応するコイル部114、114Bに電流を流す方向を逆にする。
【0126】
また、各実施の形態のアクチュエータ100、100A、100B、100Cは、磁極位置が可動体120の外周側に配置したインナーロータ式で構成されている。これにより、可動体を固定部の外側に位置させるアウターロータ式と比べて、可動する可動体を保持する機構を、可動体の外部に別途設ける必要が無く、一層の薄型化を図ることができる。さらに、アクチュエータ100、100A、100B、100Cは、PM駆動方式を適用できるため、一般に、VCMによる駆動方式に比べ出力を大きくできる。
【0127】
なお、上記本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、種々の改変をなすことができ、そして本発明が該改変させたものに及ぶことは当然である。
【0128】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。