【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行日 平成25年11月26日 刊行物 繊維ニュース 平成26年11月26日付朝刊、第6面 (刊行物等)展示日 平成25年12月5日〜6日 展示会名 2014日東紡総合展示会 開催場所 TEPIAエキシビションホールC(東京都港区北青山2−8−44) (刊行物等)発行日 平成25年12月12日 刊行物 繊研新聞 平成25年12月12日付朝刊、第4面 (刊行物等)発行日 平成26年1月1日 刊行物 アパレル工業新聞 平成26年1月1日付朝刊、第4面
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、衣料品の多様性が増してきており、より風合いがソフトな衣料用布地が求められている。そこで、単位長さあたりの下層樹脂部(接着剤)のドット数を適度に減らすことにより、表生地のソフトな風合いを維持することが行われている。しかしながら、下層樹脂部のドット数を減らした接着芯地は、目ずれ、すなわち、基布(織物)の経糸又は緯糸のずれが起こりやすい。したがって、表生地のソフト感を維持させるには限界があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、表生地のソフトな風合いを維持しながらも、接着力の低下及び目ずれを防止することができる接着芯地を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る接着芯地は、撥水点が3級以上である基布と、基布の一方の面にドット状に設けられる下層樹脂部と、下層樹脂部の表面に設けられる接着樹脂部と、基布の一方の面及び他方の面の少なくとも一方にドット状に設けられると共に基布の一部に設けられる目止め樹脂部と、を備え、下層樹脂部のドット数が1個/25.4mm以上5個/25.4mm未満であり、目止め樹脂部の占有率が0.1%以上5.0%未満である。
【0007】
この構成の接着芯地では、表生地と基布とを接着するための下層樹脂部のドット数が1個/25.4mm以上5個/25.4mm未満としたことにより、表生地の風合いを維持することができる。基布には目止め樹脂部が設けられるので、基布における経糸又は緯糸のずれを抑制することができる。更に、目止め樹脂部の占有率が0.1%以上5.0%未満であるため、風合いの硬化を抑制しながらも適切に目ずれを防止することができる。
【0008】
また、一実施形態において、目止め樹脂部は、熱可塑性樹脂からなり、ガラス転移温度を30℃以下としてもよい。
【0009】
この構成の接着芯地では、通常使用の条件において目止め樹脂部が一定の柔軟性を有するため、熱硬化性樹脂やガラス転移温度が30℃より高い樹脂からなる目止め樹脂部を用いる場合に比べて、基布が表生地の動きに追従しやすくなる。このため、より少量の樹脂から形成される目止め樹脂部により目止め効果を発現させることができる。
【0010】
また、一実施形態において、下層樹脂部及び接着樹脂部のうち接着に寄与する部分である接着部の高さが150μm以上となるように形成されていてもよい。
【0011】
凹凸の大きな表生地ほど、接着芯地における接着樹脂部が表生地に接触し難くなる。したがって、一般的に、凹凸の大きな表生地ほど基布と表生地との接着力が低下する。一実施形態の接着芯地では、凹凸を有する表生地であっても接着部の高さが所定値以上確保されているので、接着芯地における接着部が表生地に接触し易い。このため、この構成の接着芯地は、凹凸を有する表生地であっても、表生地に対する接着力を高めることができる。なお、下層樹脂部及び接着樹脂部のうち接着に寄与する部分である接着部は、接着樹脂部のみから構成される場合と、下層樹脂部及び接着樹脂部の両方から形成される場合とがあり、目止め樹脂部は含まれない。
【0012】
また、一実施形態において、下層樹脂部及び接着樹脂部のうち接着に寄与する部分である接着部を形成する樹脂量を4g/m
2以下としてもよい。
【0013】
基布と表生地とを接着する樹脂量が多くなるほど樹脂量の表生地への浸透量も多くなる。したがって、一般的に、基布と表生地とを接着する樹脂量が多くなるほど表生地の風合い感が劣る。一実施形態の接着芯地では、下層樹脂部及び接着樹脂部のうち接着に寄与する部分である接着部を4g/m
2以下としているので、表生地の風合い感の劣化を抑制することができる。
【0014】
また、一実施形態において、基布において、経糸が延在する方向及び緯糸が延在する方向の少なくとも一方の伸長率を10%以上としてもよい。
【0015】
基布が伸び易いほど、基布を表生地から剥がそうとする力が分散され、表生地から基布を剥がし難くなる。したがって、一般的に、基布が伸び易いほど、表生地から基布を剥がし難くなる。一実施形態の接着芯地では、基布において、経糸が延在する方向及び緯糸が延在する方向の少なくとも一方の伸長率を10%以上としているので、表生地から基布が剥がれにくくなる。言い換えれば、表生地と基布との接着力を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、表生地のソフトな風合いを維持しながらも、接着力の低下及び目ずれを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して一実施形態に係る接着芯地1について説明する。図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0019】
図1は、一実施形態に係る接着芯地1を備えた衣料用布地10の概略断面図である。
図1では、接着芯地1に、表生地2が貼り合わされた状態を示している。
図2は、基布3を拡大して示した平面図である。
【0020】
図1に示すように、接着芯地1は、基布3と、基布3の一方の面3aに固着した樹脂R1からなる下層樹脂部4と、この下層樹脂部4の表面に固着した樹脂R2からなる接着樹脂部5と、基布3の他方の面3bに形成された樹脂R3からなるドット状の目止め樹脂部7と、を備えている。
【0021】
図2に示すように、基布3は、経糸31及び緯糸33を用いて製織された布帛である。布帛の組織は、特に限定されるものではなく、その例には、平織り、朱子織り及び斜文織りなどが含まれる。
【0022】
基布3の経糸31及び緯糸33は、捲縮糸から構成されている。捲縮糸の例には、仮撚り加工糸が含まれる。仮撚り加工糸は、仮撚り機で加工された加工糸である。仮撚り加工糸は、捲縮加工糸の主流であり、仮撚り糸ともいう。経糸31及び緯糸33の素材の例には、合成繊維、再生繊維、及び天然繊維などが含まれる。合成繊維の例には、ポリエステル、ナイロン、ポリアクリルニトリル、ポリエチレン及びポリプロピレンなどが含まれる。再生繊維の例には、ポリノジック、レーヨン及びキュプラなどが含まれる。天然繊維の例には、綿、麻、絹及び毛などが含まれる。仮撚り糸として用いる素材の例としては、ポリエステル、ナイロンなどの合成繊維が用いられる。
【0023】
基布3は、経糸方向及び緯糸方向の少なくとも一方における伸長率が10%以上となるように形成することができ、例えば、経糸方向及び緯糸方向の両方における伸長率が10%以上となるように形成することができる。基布3の伸長率は、基布3を任意の方向に伸縮させながら熱セットすることで、適宜調整することができる。基布3の伸長率は、10〜70%に調整することが、風合いや保型性の観点で好ましい。一般的に、伸長率が大きいと型崩れがしやすくなることは知られているが、ドット数が少ない芯地を用いるとその傾向がより顕著に表れ70%を超えると保型性に乏しくなる。伸長率は、JIS L 1096 B法により測定することができる。
【0024】
図1に示すように、下層樹脂部4は、基布3の一方の面3aに固着されている。下層樹脂部4は、主に、基布3に対して樹脂R2から形成される接着樹脂部5を良好に固着させるために設けられる。下層樹脂部4は、樹脂R1から形成される。樹脂R1の例には、ポリウレタン、アクリル、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、EVA系樹脂及びPVA系樹脂などが含まれる。樹脂R1の例には、熱可塑性樹脂と、熱及び紫外線で硬化する硬化性樹脂とが含まれる。樹脂R1は、熱により架橋する熱架橋性樹脂がより好ましい。熱架橋性樹脂としては、例えば、アクリル又はポリウレタンにエポキシ系架橋剤を添加したものなどが挙げられ、消費段階における洗濯耐久性の観点からN−メチロールアクリルアミドが添加されているものが特に好ましい。
【0025】
接着樹脂部5は、下層樹脂部4の表面4aに固着される。接着樹脂部5は、樹脂R2から形成される。樹脂R2は、通常ホットメルト樹脂と呼ばれる、熱により可塑化されて冷却後に接着能力を発揮する熱可塑性樹脂が用いられる。樹脂R2には、融点が80〜140℃の熱可塑性樹脂を用いることができる。樹脂R2の例には、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン及び変性エチレン酢酸ビニル共重合体などが含まれる。
【0026】
接着芯地1の下層樹脂部4の個数割合は、5個/25.4mm未満であり、例えば、1〜4個/25.4mmとすることができ、2〜3個/25.4mmとすることが風合いと接着力のバランスが良好であるため好ましい。下層樹脂部4の平均ドット径は、1.0mm以上3.0mm以下とすることができる。下層樹脂部4の平均ドット径は、風合いをよりソフトにするためには、1.0mm以上2.5mm以下であることが好ましく、1.0mm以上2.0mm以下であることがさらに好ましい。本実施形態の下層樹脂部4及び接着樹脂部5を形成する樹脂R1及び樹脂R2のうち接着に寄与する部分である接着部の樹脂量を4g/m
2以下とすることができる。接着部の樹脂量は0.5〜4.0g/m
2であることが好ましく、1.0〜3.0g/m
2であることが風合いと接着力とのバランスが良好であるため、より好ましい。なお、樹脂R1及び樹脂R2には、必要に応じて、重合開始剤、架橋剤、顔料、染料、乾燥抑制剤、及びその他改質剤の少なくとも1つが含まれていてもよい。
【0027】
目止め樹脂部7は、基布3の一方の面3a及び他方の面3bの少なくとも一方にドット状に設けられると共に、
図2に示すように、基布3における経糸31と緯糸33との交差点である組織点35の一部に設けられてもよい。本実施形態の接着芯地1では、目止め樹脂部7が、基布3の他方の面3bにドット状に固着されている。目止め樹脂部7は、組織点において経糸31と緯糸33とを固着することによって目ずれを防止できる。
【0028】
風合いのソフト化及び軽量化を考慮すると、目止め樹脂部7は、基布3のいずれか一方の面のみにドット状に設けられることが好ましい。また、消費段階における引っ掛かり及びファスナー現象などといった問題を抑制することを考慮すると、目止め樹脂部7は、接着樹脂部5が設けられる面とは反対方向の面に設けられることがより好ましい。
【0029】
目止め樹脂部7は、樹脂R3から形成される。樹脂R3は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂が用いられる。熱硬化性樹脂の例には、エポキシ系及びフェノール系などの樹脂が含まれる。熱可塑性樹脂の例には、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、及び酢酸ビニル系樹脂が含まれる。加工性、黄変性、耐久性など総合的に考えた場合、アクリル系のものが好適に使用できる。例えば、目止め樹脂部7を形成する樹脂R3として、ガラス転移温度が30℃以下である、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0030】
接着芯地1の目止め樹脂部7(以下、背面ドット7ということもある。)の個数割合は、15個/25.4mm以下である。また、目止め樹脂部7の直径は、0.1〜1.0mmとすることができる。背面ドット7の径は、風合いをよりソフトに保つためには、比較的小さな方がよく、0.1〜0.5mmとすることがより好ましい。
【0031】
本実施形態では、下層樹脂部4及び接着樹脂部5のうち接着に寄与する部分である接着部の高さHが150μm以上となるように形成されている。ここで、上記接着部は、接着樹脂部5のみから構成される場合、又は、下層樹脂部4及び接着樹脂部5の両方から構成される場合があり得る。接着部が接着樹脂部5のみから構成される場合の高さHは
図3(A)に示すH1であり、接着部が下層樹脂部4及び接着樹脂部5の両方から構成される場合の高さHは
図3(B)に示すH2である。接着部の高さHは、ストライクバックの観点から150μm以上300μm以下であることが望ましい。
【0032】
次に、上述した構成の接着芯地1を製造する方法について説明する。まず、上述したように、経糸31及び緯糸33からなる生機を製織する。その後、下層樹脂部4及び接着樹脂部5のうち接着に寄与する接着部の高さHを従来と比べて高く形成するための工程として、精練、染色、防縮、撥水加工など、通常知られた方法によって撥水点(JIS L 1092 はっ水度試験(スプレー試験)での判定)が3級以上となるように基布3を調整する。このような調整を実施することにより、接着部の高さを従来と比べて高くすることができる。
【0033】
次に、基布3の他方の面3bに目止め樹脂部7となる樹脂R3をドット状に付着させる。具体的には、樹脂R3は、所定の回転軸回りに回転する円筒状のスクリーンを用いて基布3の他方の面3bにドット状に付着させる。スクリーンの周面には、樹脂R3を通過させるための貫通孔がドットの個数に対応して複数形成されている。すなわち、貫通孔は、接着芯地1の目止め樹脂部7の占有率が0.1%以上5.0%未満となるように形成されている。占有率は、ホットメルト樹脂及び/又は下層樹脂を染色できる材料(例えば、ボーケンステイン液)によりドット部位を染色し、色差を利用して、例えば、マイクロスコープなどの画像処理によって面積を算出することにより求めることができる。
【0034】
スクリーン内には、樹脂R3を供給するスキージが設けられている。スキージから供給された樹脂R3は、スクリーンの貫通孔を通過して押し出され、基布3の他方の面3bに付着する。スクリーンとバックロールとの間に挟まれて、搬送されている基布3に対して、樹脂R3が転写される。
【0035】
次に、基布3の一方の面3aにペースト状の下層樹脂部4となる樹脂R1をドット状に付着させる。具体的には、樹脂R1は、所定の回転軸回りに回転する円筒状のスクリーンを用いて基布3の一方の面3aにドット状に付着させる。スクリーンの周面には、樹脂R1を通過させるための貫通孔がドットの個数に対応して複数形成されている。すなわち、貫通孔は、接着芯地1の下層樹脂部4の個数割合が、5個/25.4mm未満となるように形成されている。
【0036】
スクリーン内には、樹脂R1を供給するスキージが設けられている。スキージから供給された樹脂R1は、スクリーンの貫通孔を通過して押し出され、基布3の一方の面3aに付着する。スクリーンとバックロールとの間に挟まれて、搬送されている基布3に対して、樹脂R1が転写される。
【0037】
また、経糸31及び緯糸33の少なくとも一方に仮撚り加工糸を用いた基布3を用いる場合には、基布3の伸長率を10%以上の状態に保った状態で、基布3の一方の面3aにペースト状の下層樹脂部4となる樹脂R1をドット状に付着させることで、下層樹脂部4の高さH1を従来と比べて高くすることができる。これにより、
図3(B)に示すような下層樹脂部4及び接着樹脂部5の両方から構成される接着部の高さH1を150μm以上とすることができる。
【0038】
次に、樹脂R1が転写された基布3の一方の面3aに熱可塑性樹脂である樹脂R2の粉末が散布される。これにより、樹脂R1に樹脂R2を付着させる。具体的には、樹脂R2の粉末(粉砕物)を散布するためのホッパー(スキャッター)を用いて、樹脂R2を樹脂R1が付着している基布3の一方の面3aに散布し、樹脂R2を樹脂R1の表面4aに付着させる。その後、基布3に散布された余分な樹脂R2の粉末を振い落としたり、吹き飛ばしたりしてもよい。例えば、空気を噴出させるエアーブローにより、基布3上の余分な樹脂R2を吹き飛ばす。吹き飛ばされた樹脂R2は、サクションノズルによって吸い込まれることにより回収される。
【0039】
なお、この時に散布される樹脂R2の粒度分布は、50〜300μmであることが好ましく、接着力のバラツキを抑制するためには、樹脂R2の粒度分布が80〜200μmであることが好ましい。接着力のバラツキを抑制するためには、樹脂R2の粒度分布が80〜160μmであることがより好ましい。なお、粒度分布が80〜160μmである樹脂R2のモード径(粒度分布における最頻径)は120μm程度であり、加工工程において加熱溶融されることにより、接着芯地における樹脂R2によって形成される接着樹脂部5の高さは一般的に60〜90μm程度となる。樹脂R2の粒度分布を0μm以上300μm未満とすれば、一定の接着力を維持したまま、樹脂R2が表生地2及び/又は基布3の背面に染み出てくる現象(ストライクバック)が発生することを低減できる。なお、接着部の高さHは、接着芯地のホットメルト樹脂を溶解する前後の高さの差から算出することができ、例えば、厚み計や、マイクロスコープなどによって測定できる。
【0040】
上記実施形態の接着芯地1における作用効果について説明する。上記実施形態の接着芯地1では、表生地2と基布3とを接着するための下層樹脂部4のドット数を5個/25.4mm未満としたことにより、表生地2の更なる風合いを維持することができる。また、基布3における組織点35には目止め樹脂部7が設けられるので、基布3における経糸31又は緯糸33のずれを抑制することができる。更に、目止め樹脂部7の占有率が0.1%以上5.0%未満となるように設けられているので、風合いの硬化を抑制しながらも適切に目ずれを防止することができる。更に、上記実施形態の接着芯地では、ピリング及びひっかけなどが発生しにくくなるので、消費段階におけるトラブルを低減することができる。
【0041】
また、上記実施形態の接着芯地1において、目止め樹脂部7を、熱可塑性樹脂からなりガラス転移温度が30℃以下の樹脂R3とすれば、通常使用の条件において目止め樹脂部7が一定の柔軟性を有するため、熱硬化性樹脂やガラス転移温度が30℃より高い樹脂からなる目止め樹脂部を用いる場合に比べて、基布3が表生地2の動きに追従しやすくなる。このため、より少量の樹脂R3からなる目止め樹脂部7により目止め効果を発現させることができる。さらに、目止め樹脂部7の占有率を0.1%以上5.0%未満に減少させることにより、風合いがよりソフトで着用感の良い衣料品を製造することができる。加えて、占有率が少ないことにより風合いに及ぼす目止め樹脂部7の影響を最小限に抑制することができる。
【0042】
また、上記実施形態の接着芯地1では、下層樹脂部4及び接着樹脂部5において接着に寄与する部分の樹脂部の高さH1が、150μm以上となるように形成されているので、接着芯地1における下層樹脂部4及び接着樹脂部5において接着に寄与する部分の樹脂部が表生地2に接触し易い構成となっている。このため、この構成の接着芯地1は、比較的凹凸の大きな表生地2であっても、表生地2に下層樹脂部4及び接着樹脂部5において接着に寄与する部分の樹脂部を接触させることができ、表生地2に対する接着力を高めることができる。
【0043】
また、上記実施形態の接着芯地1では、下層樹脂部4及び接着樹脂部5において接着に寄与する部分の樹脂部を形成する樹脂量が4g/m
2以下であるので、下層樹脂部4及び接着樹脂部5において接着に寄与する部分の樹脂部が表生地2に浸透することによる風合い感の劣化を抑制することができる。特に、上記実施形態の接着芯地1では、下層樹脂部4及び接着樹脂部5において接着に寄与する部分の樹脂部の高さH1が150μm以上となるように形成して基布3と表生地2との接着力を高めているので、従来よりも少ない樹脂量(4g/m
2以下)としても十分な接着力を確保することができる。
【0044】
また、上記実施形態の接着芯地1の基布3において、経糸31が延在する方向及び緯糸33が延在する方向の少なくとも一方の伸長率を10%以上とすれば、表生地2から基布3が剥がれにくくなる。言い換えれば、表生地2と基布3との接着力を高めることができる。
【実施例】
【0045】
次に、接着芯地における下層樹脂部のドット数が1個/25.4mm以上5個/25.4mm未満であり、目止め樹脂部の占有率が0.1%以上5.0%未満としたときに、表生地のソフトな風合いを維持しながらも、接着力の低下及び目ずれを防止することができる点について、実施例1〜5及び比較例1〜4に基づいて説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例1〜5に限定されるものではない。
【0046】
<実施例1>
(1)基布及び接着芯地の製造
ポリエステル仮撚り加工糸 22dtex24fを用いて経糸密度87本/25.4mm、緯糸密度51本/25.4mmである生機を製織した。この生機を用いて通常知られた精練・染色を行った。防縮加工(セット)の段階に合わせて撥水剤を処理し、伸長率や撥水点が所定の値に収まるように調整した。
【0047】
次に、上記基布について、経伸長率及び緯伸長率の伸長率がそれぞれ10%以上となるように保った状態で、目止め樹脂部及び下層樹脂部を配置した。具体的には、基布の他方の面にロータリースクリーンにより目止め樹脂部となるドット状のペーストを転写して乾燥させた。目止め樹脂部の占有率は、0.1%以上5.0%未満となるように調整した。なお、目止め樹脂部には、ガラス転移点Tgが6℃のアクリル酸エステル誘導体を用いた。次に、基布の一方の面にロータリースクリーンにより下層樹脂部となるドット状のペーストを転写した。下層樹脂部にはアクリル酸エステル誘導体を用いた。その後、この基布に、接着樹脂部となる粒度分布が80μm〜160μm、モード径120μmのホットメルト樹脂を散布し、固着乾燥させ、いわゆるダブルドットの接着芯地を得た。ホットメルト樹脂は、融点が110℃であるポリアミド系のホットメルトを用いた。下層樹脂部のドット数は3個/25.4mmとなるように調整した。このとき、下層樹脂部のドット径は1.4mmとなり、接着樹脂部のドットの高さ(接着部の高さ)は190μm、ホットメルト樹脂の塗布量(接着部を形成する樹脂量)は2.1g/m
2となった。
【0048】
(2)接着芯地の評価
上記のような手法により得られた接着芯地を紡毛素材に貼りあわせた接着布(サンプル)について、接着力の測定、風合いの確認、及び目ずれ防止効果の確認(ピリング試験)を行った。接着力の測定は、JIS L 1086:接着芯地試験方法に準じた。風合いの確認は、人による官能評価で実施した。ピリング試験はJIS L 1096:織物及び編物のピリング試験A法に準じた。これらの評価結果を
図4の図表に示す。なお、風合い試験の評価の記号の意味は、以下に示す通りである。実施例1の接着芯地を貼りあわせた接着布(以下、単に「接着布」という。実施例2〜5、比較例1〜4についても同様)では接着力、風合い、及び目ずれ防止の評価において、それぞれ良好な結果が得られた。
◎:非常にやわらかい
○:柔らかい
△:やや柔らかい
×:固い
【0049】
<実施例2>
実施例2では、下層樹脂部のドット数を4個/25.4mmとなるように調整し、その他については、実施例1と同様の手法で接着芯地を作成した。この結果、実施例2の接着芯地は、接着樹脂部のドットの高さが180μm、ホットメルト樹脂の塗布量が2.5g/m
2となった。そして、実施例1と同様の方法にて、接着芯地の評価を行った。実施例2の接着芯地は、下層樹脂部の単位面積当たりのドット数が2倍近くになることから、実施例2の接着布は、実施例1の接着布と比べて若干風合いが硬くなったが良好な結果が得られた。実施例2の接着布の接着力及び目ずれ防止効果については、実施例1の接着布とほぼ同等の評価が得られた。
【0050】
<実施例3>
実施例3では、経伸長率及び緯伸長率の伸長率がそれぞれ3%となるように保った状態で、目止め樹脂部及び下層樹脂部を配置し、その他については、実施例1と同様の手法で接着芯地を作成した。実施例3の接着芯地は、実施例1の接着芯地と比べて経伸長率及び緯伸長率が小さいので、ドット転写後の毛細管現象が促進される。この結果、下層樹脂部のドット径が2.5mm、接着樹脂部のドット高さが100μm、ホットメルト樹脂の塗布量が2.5g/m
2となった。そして、実施例1と同様の方法にて、接着芯地の評価を行った。実施例3の接着布の接着力は、実施例1の接着布と比べてやや低くなったものの良好な結果が得られた。実施例3の接着布の風合いは、実施例1の接着布と比べてやや固くなったものの良好な結果が得られた。実施例3の接着布の目ずれ防止効果については、実施例1の接着布とほぼ同等の評価が得られた。
【0051】
<実施例4>
実施例4では、実施例1と比べてモード径が大きい(400μm)ホットメルト樹脂を用い、その他については、実施例1と同様の手法で接着芯地を作成した。この結果、接着樹脂部のドット高さが300μm、ホットメルト樹脂の塗布量が4.0g/m
2となった。そして、実施例1と同様の方法にて、接着芯地の評価を行った。実施例4の接着芯地は、実施例1の接着芯地と比べて接着樹脂部のドットの高さを高くすることができたので、実施例4の接着布は、実施例1の接着布と比べて、接着力が非常に高くなった。実施例4の接着布の風合いは、実施例1の接着布と比べてやや固くなったものの良好な結果が得られた。実施例4の接着布の目ずれ防止効果については、実施例1の接着布とほぼ同等の評価が得られた。ただし、接着時に芯地側からホットメルト樹脂が染み出てくるストライクバックが発生し、縫製作業に問題が生じる場合があった。
【0052】
<実施例5>
実施例5では、実施例1と比べてガラス転移点が高い(40℃)のアクリル酸エステル誘導体を目止め樹脂部の材料として用い、その他については、実施例1と同様の手法で接着芯地を作成した。そして、実施例1と同様の方法にて、接着芯地の評価を行った。実施例5の接着布は、実施例1の接着布と比べると、風合いがやや硬くなるものの良好な結果が得られた。実施例5の接着布の接着力は、実施例1の接着布とほぼ同等の評価が得られた。実施例5の接着布の目ずれ防止効果については、ピリング試験において評価が低くなったものの実用性能に耐え得るものであった。
【0053】
<比較例1>
比較例1では、目止め樹脂部を設けずに、接着芯地を作成した。実施例1と同様の手法で接着芯地を作成した。その他については、実施例1と同様の手法で接着芯地を作成した。そして、実施例1と同様の方法にて、接着芯地の評価を行った。比較例1の接着芯地には目止め樹脂部がない。この結果、比較例1の接着布の目ずれ防止効果については、ピリング試験で1級となり、非常に目ずれが起きやすく実用性能に乏しいものであった。比較例1の接着布の接着力及び風合いについては、実施例1の接着布とほぼ同等の評価が得られた。
【0054】
<比較例2>
比較例2では、撥水点が1級の基布を用いて接着芯地を作成した。その他については、実施例1と同様の手法で接着芯地を作成した。この結果、加工時に下層樹脂部となる樹脂が基布に浸透してしまい、接着樹脂部のドットの高さが確保できなかった。そして、実施例1と同様の方法にて、接着芯地の評価を行った。比較例2の接着布では接着力が得られなかった。また、下層樹脂部となる樹脂が基布に浸透してしまうことにより、比較例2の接着布の風合いは実施例1の接着布と比べ悪化した。比較例2の接着布の目ずれ防止効果については、実施例1の接着布とほぼ同等の評価が得られた。
【0055】
<比較例3>
比較例3では、目止め樹脂部の占有率を8.1%として接着芯地を作成した。その他については、実施例1と同様の手法で接着芯地を作成した。そして、実施例1と同様の方法にて、接着芯地の評価を行った。比較例3の接着布の風合いは実施例1の接着布と比べ悪化した。比較例3の接着布の接着力及び目ずれ防止効果については、実施例1の接着布とほぼ同等の評価が得られた。
【0056】
<比較例4>
比較例4では、下層樹脂部のドット数を7個/25.4mmとして、接着芯地を作成した。その他については、実施例1と同様の手法で接着芯地を作成した。そして、実施例1と同様の方法にて、接着芯地の評価を行った。比較例4の接着布の風合いは実施例1の接着布と比べ悪化した。比較例4の接着布の接着力及び目ずれ防止効果については、実施例1の接着布とほぼ同等の評価が得られた。
【0057】
以上、一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態及び実施例に限られない。発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0058】
上記実施形態及び実験例におけるそれぞれの接着芯地では、経糸31及び緯糸33の両方を捲縮糸とする例を挙げて説明したが本発明はこれに限定されない。例えば、経糸及び緯糸を捲縮糸以外の延伸糸、短繊維からなる紡績糸などとしてもよい。また、経糸31及び緯糸33の少なくとも一方を捲縮糸としてもよい。
【0059】
上記実施形態では、樹脂R1及び樹脂R3を基布3へ転写するための方法としてロータリースクリーン法を用いた例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、樹脂R1及び樹脂R3を基布3へ転写するための方法として、エンボスロール法及びスプレー法などを用いてもよい。