(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
結晶性ポリプロピレンは、機械的性質、耐薬品性,電気絶縁性に優れることから、各種成形分野に広く用いられている。中でも、射出成形によって得られる各種容器は、食品、化粧品、文具、玩具、家電製品、医療および日用品など、多くの用途に用いられている。
また、ポリプロピレン系重合体に造核剤を添加して、射出成形を行い、剛性と透明性に優れる容器を得ることは、公知である。
しかしながら、ポリプロピレン系重合体は、その高い結晶性のために、ポリスチレンやポリエチレンテレフタレートに比較して、特に透明性が劣るという欠点がある。
そのため、ポリプロピレン系重合体の材料から射出成形した容器は、ポリスチレン系及びポリエステル系の材料から成形した容器と、比較すると、未だ性能が劣っている。
【0003】
そこで、剛性と透明性に優れるために、高剛性化、高透明化の手法として、ポリプロピレン系重合体に、脂環式炭化水素樹脂と核剤を配合することが行われ、その手法は、公知である(例えば、特許文献1〜4など参照。)。
例えば、上記特許文献1には、ポリプロピレン系樹脂(A)97〜70重量部と脂肪族属系もしくは脂環族系石油樹脂または水素化テルペン樹脂(B)3〜30重量部と造核剤(C)を前記(A)成分と前記(B)成分と該(C)成分の合計を100重量%としたときに0.001〜2重量%となるように配合してなる組成物などが開示され、造核剤(C)として、シリカ、タルク、安息香酸ナトリウム、パラ第3級ブチル安息香酸アルミニウム塩、パラ第3級ブチルリン酸ナトリウム塩、ポリビニルシクロアルカン、ジベンジリデンソルビトール誘導体、メチレンビスアシッドリン酸ナトリウム等が、例示されている。
また、上記特許文献2、3には、ポリプロピレン樹脂に、造核剤、高融点ポリマーの微粉末、石油樹脂、テルペン樹脂及び有機過酸化物よりなる群から選ばれた1又は2以上の添加剤を加えた組成物などが開示され、造核剤として、タルク、有機カルボン酸塩及びその金属塩、有機リン酸金属塩、ポリビニルシクロアルカン、及びジベンジリデンソルビトール誘導体等が、例示されている。
さらに、上記特許文献4には、(A)軟化点が100℃以上である完全水添型石油樹脂100質量部に対し、(B)特定の芳香族環状リン酸エステルの金属塩3〜150質量部が添加されてなるポリオレフィン樹脂用造核剤マスターバッチを、ポリオレフィン樹脂に添加してなるポリオレフィン樹脂組成物が開示されている。
しかしながら、上記の提案されたポリオレフィン樹脂組成物などでは、未だ性能が十分でなく、更なる性能向上が要望され、特に、剛性と透明性などに優れたプロピレン系樹脂組成物やそれを用いた射出成形体が求められている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に,本発明の実施の形態について、詳細に説明するが,以下に記載する構成要件の説明は,本発明の実施態様の一例であり,これらの内容に本発明は、限定されるものではない。
【0012】
本発明の射出成形用プロピレン系樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物と記載することもある)は、MFRが1〜100g/分で融解温度が155℃以上であるポリプロピレン系重合体(A)40〜98重量%と、軟化温度が110〜160℃である脂環式炭化水素樹脂成分(B)2〜60重量%を含む樹脂成分100重量部に対して、前記一般式(1)で表される造核剤(C)0.1〜1重量部を含有することを特徴とする。
また、本発明の射出成形体は、上記の射出成形用プロピレン系樹脂組成物を用いて成形してなることを特徴とする。
以下、本発明の射出成形用プロピレン系樹脂組成物と射出成形体などについて、項目毎に、詳細に説明する。
【0013】
I.樹脂組成物
1.ポリプロピレン系重合体(A)
本発明の樹脂組成物に用いられるポリプロピレン系重合体(A)は、以下の特性(a)〜(b)を満足する必要がある。
(a)JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定されたメルトフローレート(MFR)が1〜100g/10分である。
(b)JIS K7121に準拠した示差走査型熱量計(DSC)により得られる融解温度(ピーク値)が155℃以上である。
【0014】
(1)特性(a):MFR
本発明の樹脂組成物に用いられるポリプロピレン系重合体(A)のMFRは、1〜100g/10分の範囲であることが必要であり,好ましくは5〜60g/10分、さらに好ましくは10〜40g/10分である。MFRが上記の範囲を下回ると、流動性の低下により、成形性が悪化する問題が生じ、一方、MFRが上記の範囲を上回ると、樹脂組成物の生産性が悪化し、経済上好ましくない。
MFR値の制御の方法は、周知であり、重合条件である温度や圧力を調節したり、水素等の連鎖移動剤を重合時に添加する水素添加量の制御により、容易に調整を行なうことができる。
なお,本発明において,ポリプロピレン系樹脂のMFRは、JIS K7210:1999「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)およびメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」のA法、条件M(230℃,2.16kg荷重)に準拠して測定され、単位はg/10分である。
【0015】
(2)特性(b):融解温度
本発明に用いられるポリプロピレン系重合体(A)の融解温度は、155℃以上であることが必要であり,好ましくは158℃以上,より好ましくは160℃以上である。好ましい上限値は170℃である。融解温度が155℃未満であると、成形した際の成形品の剛性が低下する。
ポリプロピレン系重合体(A)の融解温度の制御は、周知であり、高い立体規則性を発現すれば、融解温度を高くすることができ、そのため、高い融解温度を有する、すなわち、重合の際に、高い立体規則性を有するポリプロピレン系重合体を重合できる重合触媒を選択したりすることにより、容易に調整を行なうことができる。また、融解温度の制御は、プロピレンとα−オレフィンの共重合体の場合、重合槽に供給するプロピレンと、エチレンなどのα−オレフィンの量比を、適宜調整する等により可能である。融解ピーク温度(Tm)を、例えば155℃以上に、制御するためには、使用する触媒の種類にも依存するが、エチレンなどのα−オレフィン含有量が概ね0〜1重量%程度の範囲で調整することにより、所望の融解温度を有するポリプロピレン系重合体を製造できる。
また、各社から種々の市販品が上市されているので、これら市販品の物性を測定して、高い融解温度を有するポリプロピレン系重合体を選択することによっても、特性(b)を満足できる。
一般的に、プロピレン単独重合体であれば、融解温度は、160〜180℃程度であり、また、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体であれば、130〜160℃程度である。また、ブテン含量が10〜50重量%(7.69〜42.86モル%)のプロピレン−1−ブテン共重合体であれば、「Macromolecules」2011年、第44巻,p540で報告されているように、おおむね62〜110℃程度の値である
なお,プロピレン系樹脂の融解温度は、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に準拠して、示差走査型熱量計(DSC)により測定され、本発明では、温度40℃から200℃まで、10℃/分の昇温速度で融解させた時の融解曲線のピーク温度である。融解温度の測定法の詳細は、後述の実施例における物性の測定方法の項で記載する。
【0016】
また、本発明において、ポリプロピレン系重合体(A)については、プロピレン単独重合体が好ましい。エチレン、ブテン等のコモノマーを使用する場合も、その含有量の設定を低くすることが好ましく、コモノマー含量1wt%以下が目安となる。
【0017】
本発明で用いられるポリプロピレン系重合体(A)を得るために用いられる触媒としては、特に限定されるものではなく、公知の触媒が使用可能である。例えば、チタン化合物と有機アルミニウムを組み合わせた、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒、又は、メタロセン触媒(例えば、特開平5−295022号公報等に記載)が使用できる。本発明では、剛性の高いポリプロピレン系重合体が特に好ましいため、一般的に立体規則性の高いチーグラー・ナッタ触媒がより好ましい。
【0018】
ポリプロピレン系重合体の製造プロセスに関しては、前述の諸特性を満足すれば、いかなる方法で製造してもよいが、経済性の観点から気相法プロセスが好ましい。その中でも、液化プロピレンの蒸発潜熱を利用して、重合熱を除去する形式で、水平軸回りに回転する撹拌機を有する横型反応器を持つプロセスで製造することがより好ましい。
【0019】
また、本発明に用いられるポリプロピレン系重合体(A)として使用可能なポリプロピレン樹脂は、種々の製品が多くの会社から市販されており、例えば、日本ポリプロ社製のノバテックシリーズやウィンテックシリーズ等を挙げることができる。これら市販の製品から所望の物性を有する製品を購入し、使用することも、可能である。
【0020】
2.脂環式炭化水素樹脂成分(B)
本発明に係る樹脂組成物に用いられる脂環式炭化水素樹脂成分(B)は、下記の要件(B−i)の条件を満たすことを特徴とする。
(B−i)軟化点温度が110〜160℃である。
【0021】
脂環式炭化水素樹脂成分(B)の軟化点温度は、上記のように、110〜160℃の範囲であることが必要であり、好ましくは120〜145℃である。軟化点温度が上記範囲を下回ると、射出成形体表面へのブリードが発生して透明性を低下させる。一方、軟化点温度が上記範囲を上回ると、透明性が損なわれる。
脂環式炭化水素樹脂成分(B)の軟化点は、例えばJIS K2207の方法によって測定することが可能である。
【0022】
脂環式炭化水素樹脂成分(B)は、石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン系樹脂、クロマンインデン樹脂、及びそれらの水素添加誘導体からなる群から選ばれる一種類以上が使用できる。
これらの中で、極性基を有さないものや、あるいは、水素を添加して、95重量%以上の水添率とした樹脂が好ましい。さらに好ましい樹脂は、石油樹脂又は石油樹脂の水素添加誘導体であり、このような石油樹脂としては、例えば、荒川化学工業(株)製の商品名「アルコン」またはエクソンモービル(有)製の商品名「オペラ(OPPERA)」等の市販品が挙げられる。
【0023】
本発明の樹脂組成物において、脂環式炭化水素樹脂成分(B)の配合量は、2〜60重量%、好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは7〜40重量%である。すなわち、ポリプロピレン系重合体(A)の配合量は、40〜98重量%、好ましくは50〜95重量%、さらに好ましくは60〜93重量%である。
脂環式炭化水素樹脂成分(B)の配合量が上記範囲を下回ると、剛性が低下し、一方、上記範囲を上回ると、透明性が損なわれる。
【0024】
3.造核剤(C)
本発明の樹脂組成物には、下記の一般式(1)で表される造核剤(C)を配合することが必要である。
【0025】
【化2】
(式中、nは、0〜2の整数であり、R
1〜R
5は、それぞれ独立に、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、カルボニル基もしくはフェニル基であり、R
6は、炭素数が1〜20のアルキル基である。)
【0026】
一般式(1)において、好ましくは、nは、0〜2の整数であり、R
1、R
2、R
4およびR
5は、それぞれ水素原子であり、R
3およびR
6は、同一または異なって、それぞれ炭素数が1〜20のアルキル基である。
一般式(1)において、さらに好ましくは、nは、0〜2の整数であり、R
1、R
2、R
4およびR
5は、それぞれ水素原子であり、R
3は、−CH
3、−CH
2CH
3、−CH
2CH
2CH
3、−CH
2CH
2CH
2CH
3、−CH
2CH=CH
2、−CH(CH
3)CH=CH
2、−CH
2CH−X
1−CH
2−X
2、−CH
2CH−X
3−CH
2CH
3、−CH
2CH−X
4−CH
2OHまたは−CH
2OH−CH(OH)−CH
2OHであり(但し、X
1〜X
4は、それぞれ独立したハロゲン原子を含んでなる基である。)、R
6は、炭素数が1〜20のアルキル基であることが好ましい。
【0027】
また、造核剤(C)が下記の化学構造式(2)で表される場合には、透明性がきわめて優れる上、ゲル−ゾル転移温度が170℃と、従来の透明化造核剤の代表であるジベンジリデンソルビトール系核剤に比べて、約20℃も低下するため、成形温度を約20℃以上下げても、良好な透明性を得ることが可能となり、非常に好ましい。
【0029】
上記のような造核剤としては、市販のものを用いることができる。具体的には、ミリケン社製、商品名「ミラッドNX8000」、「ミラッドNX8000J」を挙げることができる。
【0030】
また、造核剤(C)の配合量は、ポリプロピレン系重合体(A)と脂環式炭化水素樹脂成分(B)の合計の樹脂成分100重量部に対し、透明性の観点から、0.1〜1重量部であり、好ましくは0.2〜0.7重量部,より好ましくは0.3〜0.5重量部である。造核剤の配合量が上記範囲を下回ると、透明性が低下し、一方、上記範囲を上回ると、製造コストが高くなり、経済上好ましくない。
【0031】
4.その他の添加剤
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、各種添加剤などを、例えば、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、銅害防止剤、帯電防止剤、難燃剤、親水化剤、スリップ剤、抗ブロッキング剤、防曇剤、着色剤、充填剤、エラストマー、抗菌剤などを、配合することができる。
また、本発明の樹脂組成物には、MFR調整が必要な場合は、有機過酸化物を配合することもできる。
さらに、ポリプロピレン系重合体(A)には、そのまま単独で使用することも、また、本発明の効果を損なわない範囲で、別のポリプロピレンや、ポリエチレン、各種エラストマーのような別のポリマーを添加して、使用することもできる。
【0032】
また、本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記の造核剤(C)以外に、他の造核剤として、芳香族カルボン酸金属塩、芳香族リン酸金属塩、ソルビトール系誘導体、アミン系化合物等を用いることもできる。
これらの造核剤の中では、好ましくはp−t−ブチル安息香酸アルミニウム、リン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム、リン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)アルミニウム、p−メチル−ベンジリデンソルビトール、p−エチル−ベンジリデンソルビトール、1・3,2・4−ジベンジリデンソルビトール、1・3,2・4−ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、1・3−p−クロルベンジリデン−2・4−p−メチルべンジリデンソルビトール、1・3,2・4−ビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ビス(3・4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、等の造核剤が挙げられるが、本発明においては、これらの造核剤を、本発明の効果を損なわない範囲で、化学式(1)で表される造核剤と併用することもできる。
【0033】
5.樹脂組成物の調製
本発明の樹脂組成物の調製においては、前述の各種配合成分の所定量を、例えば、ヘンシェルミキサー(商品名)、スーパーミキサー、リボンブレンダー、タンブラーミキサー、バンバリーミキサー、等の通常の混合装置を用いて、混合することによって、得ることができる。
また、得られた混合物を、単軸または2軸の押出機、あるいはロールなどを用いて、溶融混練温度150〜300℃、好ましくは180〜250℃で、ペレタイズすることによって、ペレット状の樹脂組成物とすることもできる。
【0034】
II.射出成形体
本発明の射出成形体(射出成形品)は、上記のプロピレン系樹脂組成物を、通常の射出成形法、射出圧縮成形法、射出発泡成形法等に付すことにより、得ることができる。
この射出成形体としては、具体的には、
(i)食品容器(プリン容器、ゼリー容器、ヨーグルト容器、その他のデザート容器、惣菜容器、茶碗蒸し容器、インスタントラーメン等のインスタント麺類に代表されるインスタント食品用の容器、米飯容器、レトルト容器、弁当容器等)、
(ii)飲料容器(飲料ボトル、チルドコーヒー容器、ワンハンドカップ容器、その他の飲料容器等)、
(iii)キャップ(ペットボトルキャップ、1ピースキャップ、2ピースキャップ、インスタントコーヒーのキャップ、調味料キャップ、化粧品容器キャップ等)、
(iv)医薬品容器(プレフィルドシリンジ、キット製剤、目薬容器、薬液容器、アンプル、薬剤容器、液体の長期保存容器、プラスチックバイアル等)、
(v)その他各種容器(インク容器、化粧品容器、シャンプー容器、洗剤容器等)、
(vi)日用品(衣装ケース、バケツ、洗面器、筆記用具、コンテナ、玩具、調理器具、その他各種ケース等)、などが挙げられる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
なお、実施例、比較例で用いた物性測定法および使用材料は、以下の通りである。
【0036】
1.物性の測定方法
(1)メルトフローレート(MFR):
本発明のプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210−1995(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した。
(2)融解温度(Tm):
本発明のプロピレン系樹脂組成物の融解温度は、DSC測定により測定される融解ピーク温度により定義され、その測定は、セイコー社製DSC/RDC220Uを用い、試料5.0mgを採り、40℃で1分間保持した後、200℃まで10℃/分の昇温速度で融解させたときの融解ピーク温度をTmとした(単位:℃)。
(3)曲げ弾性率、曲げ強さ:
射出成形により試験片を成形し、成形後に室温23℃、相対湿度50%に調節された恒温室に100時間放置した後、JIS K7171(ISO178)に準拠して、曲げ弾性率と曲げ強さを測定した(単位:MPa)。
(4)シャルピー衝撃強度:
射出成形により試験片を成形し、成形後に室温23℃、相対湿度50%に調節された恒温室に100時間放置した後、JIS K7111(ISO179)に準拠して、シャルピー衝撃強度を測定した(単位:kJ/m
2)。
(5)透明性(ヘーズ):
射出成形により厚さ2mmの平板を成形し、成形後に室温23℃、相対湿度50%に調節された恒温室に24時間放置した後、JIS K7136(ISO14782)に準拠して、ヘーズを測定した(単位:%)。
【0037】
2.使用材料
(1)ポリプロピレン系重合体(A)
・PP−1:日本ポリプロ社製、商品名「ノバテック(登録商標)PP MA3」
チーグラー系触媒を用いて製造されたプロピレン単独重合体、MFR10g/10分、融解温度160℃
・PP−2:日本ポリプロ社製、商品名「ノバテック(登録商標)PP FY6H」
チーグラー系触媒を用いて製造されたプロピレン単独重合体、MFR1.5g/10分、融解温度164℃
・PP−3:日本ポリプロ社製、商品名「ノバテック(登録商標)PP MG3F」
チーグラー系触媒を用いて製造されたプロピレン−エチレンランダム共重合体、MFR8g/10分、融解温度146℃
【0038】
(2)脂環式炭化水素樹脂(B)
・B−1:エクソンモービル社製、商品名「OPPERA PR103J」
軟化点125℃
【0039】
(3)造核剤(C)
・C−1:ミリケン社製、商品名「Millad NX8000J」
・C−2:新日本理化社製、商品名「ゲルオールMD」
【0040】
[実施例1]
(1)樹脂組成物の調製
ポリプロピレン系重合体(PP−1)90重量%,脂環式炭化水素樹脂(B−1)10重量%(樹脂成分100重量部)に対して、造核剤(C−1)0.5重量部を添加し、スーパーミキサーで窒素シール後、3分間混合した。その後、東芝機械社製2軸押出機TEM35を用い、ホッパーを窒素シールしながらシリンダー温度230℃、スクリュー回転数150rpm、押出量15kg/hで造粒し、プロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。
【0041】
(2)射出成形体の製造
上記で得られたプロピレン系樹脂組成物のペレット試料を東芝射出成形機EC100に供給し、射出1次圧力50MPa、成形温度200℃、金型冷却水温度40℃、成形サイクル15秒で試験片、試験用平板を成形した。
得られた試験片、試験用平板の評価結果を表1に示す。
【0042】
[実施例2]
ポリプロピレン系重合体としてPP−2を用い、射出成形温度を250℃とした以外は、実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂組成物、射出成形体を得た。
その結果を表1に示す。
【0043】
[比較例1]
脂環式炭化水素樹脂(B−1),造核剤(C−1)を用いなかった以外は、実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂組成物,射出成形体を得た。
その結果を表1に示す。
【0044】
[比較例2]
造核剤(C−1)を用いなかった以外は、実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂組成物,射出成形体を得た。
その結果を表1に示す。
【0045】
[比較例3]
脂環式炭化水素樹脂(B−1)を用いなかった以外は、実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂組成物,射出成形体を得た。
その結果を表1に示す。
【0046】
[比較例4]
ポリプロピレン系重合体としてPP−3を用いた以外は、実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂組成物、射出成形体を得た。
その結果を表1に示す。
【0047】
[比較例5]
造核剤にC−2を用いた以外は、実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂組成物、射出成形体を得た。
その結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
上記の表1から明らかなように、本発明の実施例1、2のプロピレン系樹脂組成物とそれから得られた射出成形体は、剛性(曲げ弾性率と曲げ強さ)が高く、透明性(ヘーズ、HAZE)が良好であることが判る。
これに対して、比較例1〜5のプロピレン系樹脂組成物とそれから得られた射出成形体は、本発明の要件を満たしていないため、目的の性能(剛性と透明性)が発現していないことが判る。