(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
磁歪材料で構成され、軸方向に磁力線を通過させる少なくとも1つの磁歪棒と、該少なくとも1つの磁歪棒と対向し、前記磁歪棒に応力を付与する機能を有する梁部材とを備え、一端が他端に対して変位可能な梁と、
前記磁力線が軸方向に通過するように配置され、その密度の変化に基づいて電圧が発生するコイルとを有し、
前記梁を変位させて前記磁歪棒および前記梁部材が変形したとき、前記梁部材に蓄積される弾性エネルギーが、前記磁歪棒に蓄積される弾性エネルギーよりも大きくなるように構成されていることを特徴とする発電装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の発電装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の発電装置の第1実施形態について説明する。
【0021】
図1は、本発明の発電装置の第1実施形態を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す発電装置の分解斜視図である。
図3(a)は、
図1に示す発電装置の側面図である。
図3(b)は、
図3(a)に示す発電装置からコイルを取り除いた状態を示す図である。
図4は、
図1に示す発電装置の平面図である。
図5は、
図1に示す発電装置の正面図である。
図6は、
図1に示す発電装置を筐体に取り付けた状態を説明するための側面図である。
【0022】
なお、以下の説明では、
図1、
図2、
図3(a),(b)、
図5および
図6中の上側および
図4中の紙面手前側を「上」または「上方」と言い、
図1、
図2、
図3(a),(b)、
図5および
図6中の下側および
図4中の紙面奥側を「下」または「下方」と言う。また、
図1および
図2中の紙面右奥側および
図3(a),(b)、
図4および
図6中の右側を「先端」と言い、
図1および
図2中の紙面左手前側および
図3(a),(b)、
図4および
図6中の左側を「基端」と言う。
【0023】
図1および
図2に示す発電装置1は、軸方向に磁力線を通過させる磁歪棒2と、磁歪棒2に応力を付与する機能を有する梁部材73と、磁力線が軸方向に通過するように配置されたコイル3とを有している。この発電装置1では、磁歪棒2の基端(一端)に対して先端(他端)を、その軸方向とほぼ垂直な方向(
図1中、上下方向)に変位させて、磁歪棒2をその長手方向に伸縮させる。このとき、逆磁歪効果により磁歪棒2の透磁率が変化し、磁歪棒2を通過する磁力線の密度(コイル3を貫く磁力線の密度)が変化することにより、コイル3に電圧が発生する。本実施形態では、かかる発電装置1は、筐体100に固定される。
【0024】
以下、各部の構成について説明する。
(磁歪棒2)
本実施形態の発電装置1は、
図1および
図2に示すように、併設された2つの磁歪棒2、2を有している。磁歪棒2は、磁歪材料で構成され、磁化が生じ易い方向(磁化容易方向)を軸方向として配置されている。本実施形態では、この磁歪棒2は、長尺の平板状をなしており、その軸方向に磁力線を通過させる。
【0025】
このような磁歪棒2は、その横断面形状(短手方向の断面形状)が軸方向に沿ってほぼ一定となっているのが好ましい。磁歪棒2の平均厚さは、特に限定されないが、0.3〜10mm程度であるのが好ましく、0.5〜5mm程度であるのがより好ましい。また、磁歪棒2の平均横断面積は、0.2〜200mm
2程度であるのが好ましく、0.5〜50mm
2程度であるのがより好ましい。かかる構成により、磁歪棒2の軸方向に磁力線を確実に通過させることができる。
【0026】
磁歪材料のヤング率は、40〜100GPa程度であるのが好ましく、50〜90GPa程度であるのがより好ましく、60〜80GPa程度であるのがさらに好ましい。かかるヤング率を有する磁歪材料で磁歪棒2を構成することにより、磁歪棒2をより大きく伸縮させることができる。このため、磁歪棒2の透磁率をより大きく変化させることができるので、発電装置1(コイル3)の発電効率をより向上させることができる。
【0027】
かかる磁歪材料としては、特に限定されないが、例えば、鉄−ガリウム系合金、鉄−コバルト系合金、鉄−ニッケル系合金等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、鉄−ガリウム系合金(ヤング率:約70GPa)を主成分とする磁歪材料が好適に用いられる。鉄−ガリウム系合金を主成分とする磁歪材料は、前述したようなヤング率の範囲に設定し易い。
【0028】
また、以上のような磁歪材料は、Y、Pr、Sm、Tb、Dy、Ho、Er、Tmのような希土類金属のうちの少なくとも1種を含むのが好ましい。これにより、磁歪棒2の透磁率の変化をより大きくすることができる。
また、かかる磁歪材料の損失係数は、9×10
−4〜9×10
−2程度である。
【0029】
かかる2つの磁歪棒2、2の外周には、それらの両端部21、22を除く部分を囲むようにコイル3が巻回(配置)されている。
【0030】
(コイル3)
コイル3は、線材31を磁歪棒2の外周に巻回することにより構成されている。これにより、コイル3は、磁歪棒2を通過している磁力線が、その軸方向に通過する(内腔部を貫く)ように配設されている。このコイル3には、磁歪棒2の透磁率の変化、すなわち、磁歪棒2を通過する磁力線の密度(磁束密度)の変化に基づいて、電圧が発生する。
【0031】
本実施形態の発電装置1では、磁歪棒2、2を厚さ方向ではなく、幅方向に併設するため、これらの間隔を大きく設計することができる。そのため、磁歪棒2に巻回するコイル3のスペースを十分に確保することができ、横断面積(線径)が比較的大きい線材31を用いても、その巻き数を多くすることができる。線径が大きい線材は、その抵抗値(負荷インピーダンス)が小さく、効率良く電流を流すことができるため、コイル3に発生した電圧を効率良く利用することができる。
【0032】
ここで、磁歪棒2の磁束密度の変化に基づいて、コイル3に発生する電圧εは下記(1)式で表される。
ε=N×ΔB/ΔT (1)
(ただし、Nは線材31の巻き数、ΔBはコイル3の内腔部を通過する磁束の変化量、ΔTは時間の変化量を表す。)
【0033】
このように、コイル3に発生する電圧は、線材31の巻き数および磁歪棒2の磁束密度の変化量(ΔB/ΔT)に比例するため、線材31の巻き数を多くすることにより、発電装置1の発電効率を向上させることができる。
【0034】
線材31としては、特に限定されないが、例えば、銅製の基線に絶縁被膜を被覆した線材や、銅製の基線に融着機能を付加した絶縁被膜を被覆した線材等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
線材31の巻き数は、特に限定されないが、1000〜10000程度であるのが好ましく、2000〜9000程度であるのがより好ましい。これにより、コイル3に発生する電圧をより大きくすることができる。
【0036】
また、線材31の横断面積は、特に限定されないが、5×10
−4〜0.15mm
2程度であるのが好ましく、2×10
−3〜0.08mm
2程度であるのがより好ましい。このような線材31は、その抵抗値が十分に低いため、発生した電圧によってコイル3を流れる電流を効率良く外部に流すことができ、発電装置1の発電効率をより向上させることができる。
【0037】
なお、線材31の横断面形状は、例えば、三角形、正方形、長方形、六角形のような多角形、円形、楕円形等のいかなる形状であってもよい。
各磁歪棒2の基端側には、第1のブロック体4が設けられている。
【0038】
(第1のブロック体4)
第1のブロック体4は、発電装置1を、筐体100に固定するための固定部として機能する。第1のブロック体4を介して発電装置1を固定することにより、磁歪棒2は、その基端を固定端、先端を可動端として片持ち支持されている。このような発電装置1は、筐体100に第1のブロック体4を固定し、発電装置1の先端(後述する第2のブロック体5)に直接外部から力を与えるようにし、無線装置と組み合わせることで人が操作するスイッチとして用いることができる。なお、スイッチの具体例については、後述する。
【0039】
図1および
図2に示すように、このような第1のブロック体4は、先端側の高背部41と、この高背部41よりも高さ(厚さ)が小さい低背部42とを有しており、外形が階段状(段差状)をなしている。
【0040】
高背部41の厚み方向の略中央には、その幅方向に沿って形成されたスリット411が設けられており、このスリット411に磁歪棒2の基端部21が挿入される。また、高背部41の幅方向の両端部には、その厚さ方向に貫通する一対の雌ネジ部412が設けられている。各雌ネジ部412には、雄ネジ43が螺合する。
【0041】
低背部42の幅方向の両端部には、その厚さ方向に貫通する一対の雌ネジ部421が設けられており、各雌ネジ部421には、雄ネジ44が螺合する。この雄ネジ44を、雌ネジ部421を介して筐体等に螺合することにより、第1のブロック体4を筐体に固定することができる。
【0042】
また、低背部42の下面には、その幅方向に延在する溝422が形成されている。したがって、第1のブロック体4は、溝422を挟む基端側(低背部42)と先端側(主に高背部41)との2つの部位で筐体100に固定されるため、溝422付近で撓み易い構成となる。
一方、磁歪棒2の先端側には、第2のブロック体5が設けられている。
【0043】
(第2のブロック体5)
第2のブロック体5は、磁歪棒2に対して外力や振動を付与する錘(質量部)として機能する部位である。第2のブロック体5に対して、下方向に外力を付与して、第2のブロック体5を下方に変位させる。その後、外力を取り除くと、第2のブロック体5は上下方向に振動する。これにより、磁歪棒2は、その基端を固定端とし、先端が上下方向に往復動(先端が基端に対して相対的に変位)する。
【0044】
図1および
図2に示すように、第2のブロック体5は、略直方体状をなしており、その基端側には、厚さ方向の略中央に、幅方向に沿って形成されたスリット501が設けられている。このスリット501に磁歪棒2の先端部22が挿入される。なお、本実施形態では、第2のブロック体5の上面からスリット501までの長さが、第1のブロック体4の高背部41の上面からスリット411までの長さとほぼ等しくなるように構成されている。
【0045】
また、第2のブロック体5の幅方向の両端部には、その厚さ方向に貫通する一対の雌ネジ部502が設けられており、各雌ネジ部502には、雄ネジ53が螺合する。
【0046】
第1のブロック体4および第2のブロック体5の構成材料としては、それぞれ、磁歪棒2の端部21、22を確実に固定することができ、磁歪棒2に対して、一様な応力を付与し得る十分な剛性を備え、かつ、磁歪棒2に永久磁石6からのバイアス磁界を付与し得る強磁性を備える材料であれば、特に限定されない。上記の特性を備える材料としては、例えば、純鉄(例えば、JIS SUY)、軟鉄、炭素鋼、電磁鋼(ケイ素鋼)、高速度工具鋼、構造鋼(例えば、JIS SS400)、ステンレス、パーマロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
また、第1のブロック体4および第2のブロック体5の幅は、磁歪棒2の幅よりも大きく設計されている。具体的には、各ブロック体4、5のスリット411、501に磁歪棒2を挿入した際に、一対の雌ネジ部412、502間に磁歪棒2を配置することが可能となるような幅を有する。このような各ブロック体4、5の幅としては、3〜15mm程度であるのが好ましく、5〜10mm程度であるのがより好ましい。各ブロック体4、5の幅を上記範囲内とすることにより、発電装置1の小型化を図りながら、各磁歪棒2に巻回されるコイル3の体積を十分に確保することができる。
【0048】
第1のブロック体4同士の間および第2のブロック体5同士の間には、磁歪棒2にバイアス磁界を印加する2つの永久磁石6が設けられている。
【0049】
(永久磁石6)
各永久磁石6は、円柱状をなしている。
【0050】
図4に示すように、第1のブロック体4同士の間に設けられた永久磁石6は、S極を
図4中下側に、N極を
図4中上側にして配置されている。また、第2のブロック体5同士の間に設けられた永久磁石6は、S極を
図4中上側に、N極を
図4中下側にして配置されている。すなわち、各永久磁石6は、その着磁方向が磁歪棒2の併設方向と一致するように配設されている(
図5等参照)。これにより、発電装置1には、時計周りの磁界ループが形成されている。
【0051】
永久磁石6には、例えば、アルニコ磁石、フェライト磁石、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石や、それらを粉砕して樹脂材料やゴム材料に混練した複合素材を成形してなる磁石(ボンド磁石)等を用いることができる。このような永久磁石6は、各ブロック体4、5と、例えば、接着剤等による接着により固定されるのが好ましい。
【0052】
なお、発電装置1では、永久磁石6が、第2のブロック体5ごと、変位するように構成されている。したがって、第2のブロック体5と永久磁石6との間で摩擦が発生しない。このため、摩擦によって第2のブロック体5が変位するためのエネルギーが消費されないため発電装置1は、効率良く発電することができる。
【0053】
このような磁歪棒2、2は、各第1のブロック体4および各第2のブロック体5を介して連結部7により連結されている。
【0054】
(連結部7)
連結部7は、第1のブロック体4同士を連結する第1の連結部材71と、第2のブロック体5同士を連結する第2の連結部材72と、第1の連結部材71と第2の連結部材72とを連結する1つの梁部材73とを備えている。このような連結部7は、弱磁性材料または非磁性材料で構成されている。
【0055】
本実施形態では、第1の連結部材71、第2の連結部材72および梁部材73は、いずれも帯状(長尺の平板状)をなしており、連結部7全体としては、平面視において、H字状をなしている。連結部7は、各部材を溶接等により連結した構成であってもよいが、各部材が一体的に形成されているのが好ましい。
【0056】
第1の連結部材71は、2つの第1のブロック体4に設けられた4つの雌ネジ部412に対応する位置に形成された4つの貫通孔711を備えている。スリット411に磁歪棒2の基端部21を挿入し、雄ネジ43を第1の連結部材71の貫通孔711に挿通して雌ネジ部412に螺合する。これにより、第1の連結部材71が第1のブロック体4の高背部41にネジ止めされるとともに、スリット411の間隔が狭まることにより、基端部21(磁歪棒2)が第1のブロック体4に固定される。
【0057】
第2の連結部材72は、2つの第2のブロック体5に設けられた4つの雌ネジ部502に対応する位置に形成された4つの貫通孔721を備えている。スリット501に磁歪棒2の先端部22を挿入し、雄ネジ53を第2の連結部材72の貫通孔721に挿通して雌ネジ部502に螺合する。これにより、第2の連結部材72が第2のブロック体5にネジ止めされるとともに、スリット501の間隔が狭まることにより、先端部22(磁歪棒2)が第2のブロック体5に固定される。
【0058】
このように、雄ネジ43により、磁歪棒2および第1の連結部材71を第1のブロック体4に、雄ネジ53により、磁歪棒2および第2の連結部材72を第2のブロック体5に共締めするため、部材同士を固定、連結するための部品点数および組立工数を少なくすることができる。なお、接合方法は上述したようなネジ止めに限られず、接着剤による接着、ろう付け、溶接(レーザー溶接、電気溶接)などでも良い。
【0059】
このような第1の連結部材71および第2の連結部材72の長さを設定することにより、磁歪棒2、2同士の間隔を変更することができる。磁歪棒2、2同士の間隔を大きくすることにより、各磁歪棒2にコイル3を巻回するスペースを十分に確保することができる。これにより、コイル3の体積を十分に大きくすることができ、結果として、発電装置1の発電効率を向上させることができる。
【0060】
梁部材73は、第1の連結部材71および第2の連結部材72の中央部同士を連結している。そして、発電装置1では、平面視において、この梁部材73と各磁歪棒2、2とが重ならないように配置され(
図4参照)、側面視において、梁部材73と磁歪棒2、2とが、一定の距離離間した状態で互いに平行となるように配置されている(
図3参照)。本実施形態では、梁部材73の幅は、各磁歪棒2に巻回されたコイル3同士の間隔より小さく設計され、側面視において、梁部材73の下面とコイル3の上面とがほぼ一致している。
【0061】
発電装置1では、2つの磁歪棒2、2と梁部材73とが対向する梁(平行梁)として機能し、第2のブロック体5の変位に伴って、各磁歪棒2と梁部材73とが同一方向(
図1中の上方向または下方向)に変位する。ここで、梁部材73が2つの磁歪棒2、2間に配置されているため、各磁歪棒2が変位する際に、これらと梁部材73とが互いに接触することはない。
【0062】
このような発電装置1は、
図6に示すように、雄ネジ44により第1のブロック体4が筐体100に固定される。この状態において、第2のブロック体5に対して、下方向に外力を付与して、第2のブロック体5を下方に変位させた後、外力を取り除くと、第2のブロック体5は上下方向に振動する。第2のブロック体5が振動する際に、第1のブロック体4に対して、第2のブロック体5が下方に向かって変位(回動)すると、すなわち、磁歪棒2の基端に対して先端が下方に向かって変位すると、梁部材73が軸方向に伸長するように変形し、磁歪棒2が軸方向に収縮するように変形する。一方、第2のブロック体5が上方に向かって変位(回動)すると、すなわち、磁歪棒2の基端に対して先端が上方に向かって変位すると、梁部材73が軸方向に収縮するように変形し、磁歪棒2が軸方向に伸長するように変形する。その結果、逆磁歪効果により磁歪棒2の透磁率が変化して、磁歪棒2を通過する磁力線の密度(コイル3の内腔部を軸方向に貫く磁力線の密度)が変化する。これにより、コイル3に電圧が発生する。
【0063】
かかる発電装置1では、2つの磁歪棒2、2と梁部材73とからなる梁の先端(第2のブロック体5)に外力を付与し、その先端(一端)を基端(他端)に対して変位させて磁歪棒2、2および梁部材73を変形させたときに、梁部材73に蓄積される弾性エネルギーが、2つの磁歪棒2、2に蓄積される弾性エネルギーよりも大きくなる。
【0064】
上述したように、発電装置1では、2つの磁歪棒2、2と梁部材73とが対向する一対の梁として機能し、第2のブロック体5に対して外力が付与されると、各磁歪棒2および梁部材73は、それぞれ同じ方向に変位し、2つの磁歪棒2、2および梁部材73が曲げ変形するとともに、2つの磁歪棒2、2および梁部材73のうちの一方が伸長するように変形し、他方が収縮するように変形する。この変形に伴い、各磁歪棒2および梁部材73には弾性エネルギーが蓄積され、この弾性エネルギーが運動エネルギーに変換されることにより、第2のブロック体5が上下方向に振動する。
【0065】
発電装置1では、外力の付与によって梁部材73に蓄積される弾性エネルギーが大きいため、第2のブロック体5を上下方向に振動させるための運動エネルギーも大きくすることができる。さらに、この第2のブロック体5の振動によって、運動エネルギーが磁歪棒2、2の変形(伸長・収縮方向への変形)に効率良く消費されることにより、発電装置の発電効率を向上させることができる。
【0066】
なお、発電装置1のように一対の梁を構成する各部材に、変形に伴って蓄積される弾性エネルギーU[J]は、各部材のバネ定数K[N/m]、変位量(撓み量)ΔS[m]を用いて、下記(2)式で表される。
U=1/2×K×ΔS
2 (2)
【0067】
発電装置1では、外力の付与によって、梁部材73および各磁歪棒2が同じ方向に変位し、それぞれの変位量はほぼ等しい。したがって、梁部材73のバネ定数を磁歪棒2のバネ定数よりも大きくすることにより、梁部材73に蓄積される弾性エネルギーを、各磁歪棒2に蓄積される弾性エネルギーよりも大きくすることができる。
【0068】
ところで、発電装置1において、梁部材73および磁歪棒2の変形は、各部材の先端が変位する方向、すなわち、各部材が曲がる方向(
図3中、上下方向)への変形(曲げ変形)と、各部材が伸長または収縮する方向への変形とからなる。したがって、変形に伴って各部材に蓄積される弾性エネルギーは、曲げ変形に伴う弾性エネルギーと、伸長・収縮方向への変形に伴う弾性エネルギーとを足し合わせたエネルギーとなる。
【0069】
一般的に、ある梁部材の曲げ方向および伸長・収縮方向に、それぞれ同じ外力を付与した場合には、曲げ変形に伴って部材に蓄積される弾性エネルギーの大きさの方が、伸長・収縮方向への変形に伴って部材に蓄積される弾性エネルギーの大きさに比べて大きくなる。具体的には、曲げ変形によって部材に蓄積される弾性エネルギーは、伸長・収縮方向への変形によって部材に蓄積される弾性エネルギーの数十倍となる。
【0070】
したがって、発電装置1では、梁部材73に蓄積される弾性エネルギーをより大きくするために、伸長・収縮方向への変形よりも曲げ変形によって、梁部材73に効率良く弾性エネルギーを蓄積できるように構成されているのが好ましい。
【0071】
一方、磁歪棒2は、伸長・収縮方向に変形することにより、その透磁率が変化し、磁束密度が変化することにより発電に寄与するが、曲げ変形によっては、その透磁率が変化しない。したがって、磁歪棒2には、曲げ変形よりも伸長・収縮方向への変形によって、効率良く弾性エネルギーを蓄積できるように構成されているのが好ましい。
【0072】
ここで、基端が筐体に固定され、先端が可動部(質量部)に固定された一対の梁を有する構造体について、可動部の振動によって各部材に付与される力、モーメントについて説明する。
【0073】
図7は、基端が筐体に固定され、先端が可動部(質量部)に固定された一対の平行な梁(梁部材および磁歪棒)を有する構造体について、可動部の振動によって各部材に付与される力、モーメントを説明するための側面図である。
【0074】
より具体的には、
図7(a−1)〜(a−3)は、それぞれ、各梁を構成する梁部材と磁歪棒とが、仮に、同じヤング率、形状を有しているとした場合の構造体を示している。
図7(b−1)は、梁部材として、
図7(a−1)に示す構造体の梁部材に比べて、その横断面積およびヤング率が大きい部材を用いて、梁部材のみで可動部を支持する構造体を示しており、
図7(b−2)および(b−3)は、それぞれ、
図7(b−1)に示す構造体の梁部材と、かかる梁部材よりも横断面積およびヤング率が小さい磁歪棒とで一対の梁を構成した構造体を示している。
【0075】
なお、
図7中の上側を、「上」または「上側」と言い、
図7中の下側を、「下」または「下側」と言う。
【0076】
梁部材と磁歪棒とが、同じヤング率および同じ形状を有している場合には、可動部に対して下方向に外力を加え、可動部を下方向に変位させると、梁部材および磁歪棒は、それぞれ下方向に曲げ変形するとともに、さらに、梁部材は伸長する方向に変形し、磁歪棒は収縮する方向に変形する(
図7(a−2)参照)。この状態で、可動部に付与された外力が取り除かれると、可動部は上方向に変位して、梁部材および磁歪棒は、それぞれ上方向に曲げ変形するとともに、さらに、梁部材は収縮する方向に変形し、磁歪棒は伸長する方向に変形する(
図7(a−3)参照)。その後、可動部の上下方向への振動に伴い、可動部に発生する回転モーメントによって、梁部材および磁歪棒は、曲げ変形および伸長・収縮方向への変形を繰り返す。この可動部の振動によって、梁部材および磁歪棒には、変位する方向(曲げ方向、伸長・収縮方向)に力が付与される。
【0077】
一方、
図7(b−1)に示す構造体は、梁部材として、
図7(a−1)に示す構造体の梁部材に比べてその横断面積およびヤング率が大きい部材を用いて、梁部材のみで可動部を支持する構成である。かかる構成では、可動部に対して外力を加えて、可動部を下方向に変位させると、梁部材は、下方向に曲げ変形するが、伸長・収縮方向にはほとんど変形しない。この状態で、可動部に付与された外力が取り除かれると、可動部は上方向に変位して、梁部材は、上方向に曲げ変形するが、伸長・収縮方向にはほとんど変形しない。その後、可動部の上下方向への振動に伴って、梁部材も上下方向に変位するが、その際に、梁部材は、伸長・収縮方向にほとんど変形せずに、ほぼ曲げ方向にのみ変形する。すなわち、梁部材には、可動部に付与された外力によって、ほぼ曲げ方向への力しか付与されない。
【0078】
このような構造体に、
図7(b−2)および(b−3)に示すように、梁部材よりも横断面積およびヤング率が小さい磁歪棒を追加し、梁部材と磁歪棒とで一対の梁を構成した構造体とする。かかる構造体においても、梁部材には、可動部に付与された外力によって、ほぼ曲げ方向への力しか付与されない。かかる構造体では、磁歪棒の剛性が梁部材に比べて小さいため、可動部の変位によって梁部材が曲げ変形する際に、磁歪棒は、梁部材の曲げ変形に対して従属的に曲げ変形する。このような磁歪棒には、可動部に付与された外力によって、曲げ方向への力がほとんど付与されず、ほぼ伸長・収縮方向への力しか付与されない。
【0079】
すなわち、
図7(b−2)および(b−3)に示す構造体では、可動部に付与された外力によって、梁部材には曲げ変形に伴う弾性エネルギーが主に蓄積され、磁歪棒には、伸長・収縮方向への変形に伴う弾性エネルギーが主に蓄積される。この
図7(b−2)および(b−3)に示す構造体を発電装置に適用した場合には、その発電効率をより向上させることができる。
【0080】
以下に、
図7に示すような構造体において、可動部(質量部)に外力を付与した際に、各部材に蓄積される弾性エネルギーについて詳細に説明する。
【0081】
図8は、基端が筐体に固定され、先端が可動部(質量部)に固定された一対の平行な梁(梁部材および磁歪棒)を有する構造体について、可動部に外力を付与した際に、各部材に蓄積される弾性エネルギーについて説明するための側面図である。
【0082】
また、
図8中の上側を、「上」または「上側」と言い、
図8中の下側を、「下」または「下側」と言う。
【0083】
なお、
図8に示される構造体では、梁部材および磁歪棒の長さは、それぞれ、Lh[m]、Lj[m]であり、ほぼ等しい(Lh≒Lj)。また、梁部材および磁歪棒は、それぞれ、横断面形状(短手方向の断面形状)が長手方向に沿ってほぼ一定であり、梁部材および磁歪棒の横断面積は、それぞれ、Ah[m
2]、Aj[m
2]である。また、梁部材および磁歪棒の構成材料のヤング率は、それぞれ、Eh[N/m
2]、Ej[N/m
2]である。また、梁部材および磁歪棒の横断面(短手方向の断面)における断面2次モーメントは、それぞれ、Ih[m
4]、Ij[m
4]である。
【0084】
かかる構造体全体のバネ定数をKf[N/m]、可動部に対して下方向に付与される外力をFf[N]、付与された外力により下方向への変位量(たわみ量)をΔSf[m]とする。この場合、付与された外力Ffによって、かかる構造体に蓄積される弾性エネルギーUf[J]は、下記(2−1)式で表される。
Uf=1/2×Ff×ΔSf=1/2×Kf×ΔSf
2 (2−1)
【0085】
また、可動部に外力Ffが付与された際に、可動部の変位に伴って、梁部材および磁歪棒は、曲げ方向(
図8中、上下方向)、伸長・収縮方向(各部材の長手方向)に変形する。
【0086】
その際に、梁部材および磁歪棒の先端の曲げ方向への変位量(たわみ量)は、それぞれ、ΔSmh[m]、ΔSmj[m]であり、ほぼ等しい(ΔSmh≒ΔSmj)。また、梁部材および磁歪棒の曲げ方向のモーメント(曲げ方向に付与される力)は、それぞれ、Fmh[N]、Fmj[N]である。また、梁部材および磁歪棒の曲げ方向のバネ定数は、それぞれ、Kmh[N/m]、Kmj[N/m]である。また、曲げ変形に伴って梁部材および磁歪棒に蓄積される弾性エネルギーは、それぞれ、Umh[J]、Umj[J]である。
【0087】
また、梁部材および磁歪棒の伸長・収縮方向への変形量は、それぞれ、ΔLh[m]、ΔLj[m]であり、ほぼ等しい(ΔLh≒ΔLj)。また、梁部材および磁歪棒の伸長・収縮方向に付与される力は、それぞれ、ΔFh[N]、ΔFj[N]である。また、梁部材および磁歪棒の伸長・収縮方向のバネ定数は、それぞれ、Kh[N/m]、Kj[N/m]である。また、伸長・収縮方向への変形に伴って梁部材および磁歪棒に蓄積される弾性エネルギーは、それぞれ、Uh[J]、Uj[J]である。
【0088】
ここで、可動部に外力Ffが付与された際に、
図8に示す構造体に蓄積される弾性エネルギーUfは、曲げ変形に伴って梁部材および磁歪棒に蓄積される弾性エネルギーUmh、Umjと、伸長・収縮方向への変形に伴って梁部材および磁歪棒に蓄積される弾性エネルギーUh[J]、Uj[J]を用いて下記(2−2)式で表される。
Uf≒Umh+Umj+Uh+Uj (2−2)
【0089】
曲げ変形に伴い梁部材および磁歪棒に蓄積される弾性エネルギーUmh、Umjは、それぞれ、下記(2−3)、(2−4)式で表される。
Umh=1/2×Kmh×ΔSmh
2 (2−3)
Umj=1/2×Kmj×ΔSmj
2 (2−4)
【0090】
上述したように、ΔSmh≒ΔSmjであるから、弾性エネルギーUmh、Umjは、下記(2−5)式の関係を満足する。
Umh∝Kmh、Umj∝Kmj (2−5)
【0091】
ここで、曲げ方向のバネ定数Kmh、Kmjは、それぞれ、下記(2−6)、(2−7)式で表せる。
Kmh=3×Eh×Ih/Lh
3 (2−6)
Kmj=3×Ej×Ij/Lj
3 (2−7)
【0092】
また、上述したように、Lh≒Ljであるため、上記(2−5)〜(2−7)式から、弾性エネルギーUmh、Umjは、下記(2−8)式の関係を満足する。
Umh∝Eh×Ih、Umj∝Ej×Ij (2−8)
【0093】
上記(2−8)式から分かるように、曲げ変形に伴って梁部材および磁歪棒に蓄積される弾性エネルギーは、各部材の構成材料のヤング率×各部材の横断面の断面2次モーメントの値に比例する。したがって、発電装置1では、梁部材73の構成材料のヤング率Eh×梁部材73の横断面の断面2次モーメントIhの値を、磁歪棒2の構成材料(磁歪材料)のヤング率Ej×磁歪棒2の横断面の断面2次モーメントIjの値よりも大きくすることが好ましい。すなわち、発電装置1では、梁部材73および磁歪棒2が、Eh×Ih>Ej×Ijの関係を満足するのが好ましい。これにより、曲げ変形に伴って梁部材73に蓄積される弾性エネルギーを、曲げ変形に伴って磁歪棒2に蓄積される弾性エネルギーよりも大きくすることができ、その結果、発電装置1の発電効率をより向上させることができる。
【0094】
一方、伸長・収縮方向への変形に伴い梁部材および磁歪棒に蓄積される弾性エネルギーUh、Ujは、それぞれ、下記(2−9)、(2−10)式で表される。
Uh=1/2×Fh×ΔLh (2−9)
Uj=1/2×Fj×ΔLj (2−10)
【0095】
また、ΔLhおよびΔLjは、梁部材および磁歪棒の伸長・収縮方向へのバネ定数Kh、Kjを用いて下記(2−11)式の関係を満足する。
ΔLh=Fh/Kh、ΔLj=Fj/Kj (2−11)
【0096】
したがって、上記(2−9)〜(2−11)式から、弾性エネルギーUh、Ujは、下記(2−12)、(2−13)式の関係を満足する。
Uh=1/2×Fh
2/Kh (2−12)
Uj=1/2×Fj
2/Kj (2−13)
【0097】
ここで、可動部の変位によって、梁部材および磁歪棒の伸長・収縮方向に付与される力は、ほぼ等しい(Fh≒Fj)。したがって、上記(2−12)および(2−13)式から、弾性エネルギーUh、Ujは、下記(2−14)式の関係を満足する。
Uh∝1/Kh、Uj∝1/Kj (2−14)
【0098】
ここで、伸長・収縮方向のバネ定数Kh、Kjは、それぞれ、下記(2−15)、(2−16)式で表せる。
Kh=Eh×Ah/Lh (2−15)
Kj=Ej×Aj/Lj (2−16)
【0099】
また、上述したように、Lh≒Ljであるため、上記(2−14)〜(2−16)式から、弾性エネルギーUh、Ujは、下記(2−17)式の関係を満足する。
Uh∝1/(Eh×Ah)、Uj∝1/(Ej×Aj) (2−17)
【0100】
上記(2−17)式から分かるように、伸長・収縮方向への変形に伴って梁部材および磁歪棒に蓄積される弾性エネルギーは、各部材の構成材料のヤング率×各部材の横断面積の値に反比例する。したがって、発電装置1では、梁部材73の構成材料のヤング率Eh×梁部材73の横断面積Ahの値を、磁歪棒2の構成材料(磁歪材料)のヤング率Ej×磁歪棒2の横断面積Ajの値よりも大きくすることが好ましい。すなわち、発電装置1では、梁部材73および磁歪棒2が、Eh×Ah>Ej×Ajの関係を満足するのが好ましい。これにより、伸長・収縮方向への変形に伴って磁歪棒2に蓄積される弾性エネルギーを、伸長・収縮方向への変形に伴って梁部材73に蓄積される弾性エネルギーよりも大きくすることができ、その結果、発電装置1の発電効率をより向上させることができる。
【0101】
なお、梁部材73および磁歪棒2が、Eh×Ih>Ej×Ijの関係、およびEh×Ah>Ej×Ajの関係のいずれも満足する場合には、以下の効果が得られる。すなわち、曲げ変形に伴って梁部材73に蓄積される弾性エネルギーUmhを、曲げ変形に伴って磁歪棒2に蓄積される弾性エネルギーUmjよりも相対的に大きくすることができる。また、伸長・収縮方向への変形に伴って磁歪棒2に蓄積される弾性エネルギーUjを、伸長・収縮方向への変形に伴って梁部材73に蓄積される弾性エネルギーUhよりも相対的に大きくすることができる。これにより、第2のブロック体5に対して外力が付与されることにより、梁部材73には曲げ変形に伴う弾性エネルギーが主に蓄積され、磁歪棒2には、伸長・収縮方向への変形に伴う弾性エネルギーが主に蓄積される。そのため、発電装置1では、その発電効率をより向上させることができる。
【0102】
また、発電装置1では、梁部材73の構成材料の損失係数が、磁歪棒2を構成する磁歪材料の損失係数よりも小さいのが好ましい。これにより、梁部材73の変形に伴うエネルギーロス(構造減衰)を、磁歪棒2の変形に伴うエネルギーロス(構造減衰)よりも十分に小さくすることができる。その結果、梁部材73に蓄積された弾性エネルギーは、第2のブロック体5を振動させるための運動エネルギーに効率良く変換される。
【0103】
発電装置1では、各磁歪棒2の変形に伴うエネルギーロスが比較的大きいが、梁部材73の変形に伴うエネルギーロスが十分に小さいため、発電装置1全体としては、一対の梁(磁歪棒2、2および梁部材73)の変形に伴うエネルギーロスを十分に小さくすることができる。これにより、発電装置1の発電効率をより向上させることができる。
【0104】
なお、本明細書中において、「損失係数」とは、制振材料の制振特性を評価するための指標である。一般的に、損失係数が大きい材料で構成された部材では、変形時に大きな熱エネルギーを発生し、運動エネルギーのロスが大きい。一方、損失係数が小さい材料で構成された部材では、変形時に発生する熱エネルギーが抑えられ、運動エネルギーのロスが小さくなる。各材料の損失係数の具体的な測定方法については、後述する。
【0105】
また、梁部材73の構成材料は、上述したように、弱磁性材料または非磁性材料であれば、特に限定されないが、磁歪材料よりも損失係数が小さい材料として、以下に示す材料を用いるのが好ましい。なお、連結部7を構成する各部材(第1の連結部材71、第2の連結部材72および梁部材73)を一体的に形成する場合には、連結部7全体が、以下に示す材料で形成されていることが好ましい。
【0106】
すなわち、梁部材73(連結部7)の構成材料としては、ステンレス鋼等の弱磁性材料、アルミニウム、マグネシウム合金、鋼合金、非磁性ステンレス鋼等の非磁性材料等を用いるのが好ましい。特に、非磁性ステンレス鋼の一種であるオーステナイト系ステンレス鋼を用いるのがより好ましい。
【0107】
ここで、基端を筐体に固定した棒材の先端に対して、外力を付与して振動させた際に、棒材の構成材料の損失係数の違いによる振動幅(振幅)の経時変化について、
図9を参照して説明する。
【0108】
図9は、鉄−ガリウム系合金を主成分とする磁歪材料で構成された磁歪棒および非磁性ステンレス鋼で構成された棒材について、それぞれ、基端を筐体に固定した状態で、先端に対して外力を付与して振動させた際に、各先端の振幅の経時変化を示すグラフである。
【0109】
なお、評価に用いた磁歪棒は、その構成材料(磁歪材料)の損失係数が9×10
−3、ヤング率が70GPaであり、長さが25mm、断面積が1.5mm
2である。また、評価に用いた非磁性ステンレス鋼で構成された棒材(梁部材)は、その構成材料の損失係数が1×10
−4、ヤング率が200GPaであり、長さが25mm、断面積が1.5mm
2である。なお、
図9では、各棒材(磁歪棒および非磁性ステンレス鋼の棒材)の先端に、その軸方向に対して垂直な方向に1Nの荷重を付与して、各棒材の先端が振動を開始した直後の振幅(初期振幅)を100%として示す。
【0110】
図9に示すように、非磁性ステンレス鋼で構成された棒材(梁部材)は、この梁部材よりも損失係数が大きい磁歪棒に比べて、その先端の振幅の減衰が緩やかである。例えば、磁歪棒では、その先端の振幅が初期振幅の50%まで減衰するまでの時間が、おおよそ82msecであるのに対し、梁部材では、その先端の振幅が初期振幅の50%まで減衰するまでの時間が、おおよそ210msecである。
図9から、磁歪棒に比べて損失係数の小さい梁部材では、その変形(振動)に伴うエネルギーロスが抑えられていることが分かる。
【0111】
梁部材73の構成材料の損失係数は、6×10
−4以下であるのが好ましく、2×10
−5〜2×10
−4程度であるのがより好ましい。梁部材73の構成材料の損失係数が上記条件を満足する場合には、梁部材73の変形に伴うエネルギーロスをさらに低減することができる。これにより、梁部材73に蓄積された弾性エネルギーは、第2のブロック体5を振動させるための運動エネルギーに、より効率良く変換されて、発電装置1の発電効率をより向上させることができる。
【0112】
また、梁部材73の構成材料の損失係数をη
1、磁歪棒2を構成する磁歪材料の損失係数をη
2としたとき、η
1/η
2の値は、0.3以下であるのが好ましく、0.01〜0.2程度であるのがより好ましい。η
1/η
2の値が上記条件を満足する場合には、発電装置1全体として、磁歪棒2、2および梁部材73の変形に伴うエネルギーロスをより低減することができ、その結果、発電装置1の発電効率をより向上させることができる。
【0113】
なお、梁部材73の構成材料および磁歪材料の損失係数は、それぞれ、制振鋼板の振動減衰特性の試験方法に関するJIS規格に定める方法(JIS G0602)、片持ち梁法を用いるASTM規格に定める方法(ASTM E756−83)等の方法を用いて測定することができる。
【0114】
また、梁部材73の構成材料と磁歪材料との損失係数との大小関係は、例えば、以下の方法により評価することができる。すなわち、各部材(梁部材73、磁歪棒2)の構成材料からなる棒材を準備し、棒材の基端を固定端、先端を可動端として片持ち支持した状態で、その可動端を振動させて、その振動を変位計等で測定することにより、各部材の損失係数を相対的に評価することができる。
【0115】
また、このような梁部材73の構成材料のヤング率は、80〜200GPa程度であるのが好ましく、100〜190GPa程度であるのがより好ましく、120〜180GPa程度であるのがさらに好ましい。
【0116】
このような梁部材73は、その横断面形状(短手方向の断面形状)が長手方向に沿ってほぼ一定となっているのが好ましい。梁部材73の平均厚さは、特に限定されないが、0.3〜10mm程度であるのが好ましく、0.5〜5mm程度であるのがより好ましい。また、梁部材73の平均横断面積は、0.2〜200mm
2程度であるのが好ましく、0.5〜50mm
2程度であるのがより好ましい。
【0117】
また、発電装置1では、側面視における磁歪棒2、2と梁部材73との間隔(以下、「梁間隔」とも言う)も自由に設計することができる。具体的には、各ブロック体4、5に設けられたスリット411、501からその上面(第1のブロック体4においては、高背部41の上面)までの長さ(高さ)を調整することにより、これらの梁間隔を自由に設計することができる。
【0118】
上述したように、発電装置1では、コイル3の体積を十分に大きくすることができるとともに、各磁歪棒2と梁部材73との梁間隔を自由に設計することができる。以下に、梁間隔と発電装置1の発電効率との関係について説明する。
【0119】
図10は、基端が筐体に固定された1つの棒材(1つの梁)の先端に対して、下方向に外力を付与した状態を模式的に示す側面図である。
図11は、基端が筐体に固定された対向する一対の平行な梁(平行梁)の先端に対して、下方向に外力を付与した状態を模式的に示す側面図である。
図12は、先端に外力が付与された一対の平行梁にかかる応力(伸長応力、収縮応力)を模式的に示す図である。
【0121】
1つの梁の先端に対して下方に曲げ変形するように外力を付与した場合には、
図10に示すように、梁の曲げ変形に伴い、梁に応力がかかり、梁上側には一様な引張(伸長)応力、梁下側には一様な圧縮(収縮)応力が発生する。一方、一定の梁間隔を有する平行梁の先端に対して外力を付与した場合には、各梁は、
図10に示すように曲げ変形するとともに、
図11に示すように外力の付与前後で先端側の梁間隔を一定に保つために平行リンク動作を行うように変形する。このような平行梁では、梁間隔が大きいほど、この平行リンク動作が顕著に表れ、逆に、梁間隔が小さいほど、平行リンク動作が抑制されて、
図10に示すような1つの梁の曲げ変形に近い変形をするようになる。
【0122】
したがって、梁間隔が比較的大きい平行梁の構成では、曲げ変形と平行リンク動作による変形とが混在することにより、各梁が、
図12に示すような略S字状に変形する。平行梁が下側に変形する際には、上側の梁には一様な伸長応力が発生するのが好ましいが、
図12に示すように、中央部に伸長応力Aが発生するものの、基端側の下部および先端側の上部に大きな収縮応力Bが発生する。また、下側の梁には一様な収縮応力が発生するのが好ましいが、中央部に収縮応力Bが発生するものの、基端側の上部および先端側の下部に大きな伸長応力Aが発生する。すなわち、各梁に発生する伸長応力と収縮応力との双方がいずれも大きいため、梁全体に発生するいずれか一方の応力(伸長応力または収縮応力)の絶対値を大きくすることができない。このような平行梁として磁歪棒を用いた場合、磁歪棒中の磁束密度の変化量を大きくすることができない。
【0123】
なお、バイアス磁界が印加された磁歪棒において、発生する応力(伸長応力または収縮応力)の大きさと磁束密度の変化量とは、以下に示すような関係を有する。
【0124】
図13は、鉄−ガリウム系合金(ヤング率:約70GPa)を主成分とする磁歪材料で構成された磁歪棒において、付与される応力に応じた、印加される磁場(H)と磁束密度(B)との関係を示すグラフである。
【0125】
なお、
図13において、(a)は、磁歪棒に応力が発生していない状態、(b)は、磁歪棒に90MPaの収縮応力が発生した状態、(c)は、磁歪棒に90MPaの伸長応力が発生した状態、(d)は、磁歪棒に50MPaの収縮応力が発生した状態、(e)は、磁歪棒に50MPaの伸長応力が発生した状態をそれぞれ示す。
【0126】
図13に示すように、応力が発生していない状態の磁歪棒に比べて、伸長応力が発生している磁歪棒では、その透磁率が高くなる結果、これを軸方向に通過する磁力線の密度(磁束密度)が高くなる((c)および(e))。一方、応力が発生していない状態の磁歪棒に比べて、収縮応力が発生している磁歪棒では、その透磁率が低くなる結果、これを通過する磁束密度が低くなる((b)および(d))。
【0127】
このため、
図13中に示す一定のバイアス磁界が印加された状態で、磁歪棒の一端に対して他端を振動(変位)させることにより、磁歪棒に90MPaの伸長応力と90MPaの収縮応力とを交互に発生させると、これを通過する磁束密度の変化量は1T程度となり、その変化量が最大となる((b)、(c)参照)。一方、この磁歪棒に発生させる伸長応力および収縮応力を50MPaに低下させると、これを通過する磁束密度の変化量は小さくなる((d)、(e)参照)。
【0128】
したがって、磁歪棒を通過する磁束密度の変化量を大きくするためには、磁歪棒に発生させる一定方向の応力(伸長応力または収縮応力)を十分に大きくする必要がある。なお、上記磁歪材料で構成された磁歪棒であれば、70MPa以上の伸長応力と70MPa以上の収縮応力とを交互に発生させることにより、磁歪棒を通過する磁束密度の変化量を十分に大きくすることができる。
【0129】
以上のような理由から、発電装置1では、その発電効率を向上する観点から、各磁歪棒2と梁部材73との梁間隔を小さくして、梁の平行リンク動作を抑制することにより、
図10に示すような1つの梁の曲げ変形挙動に近づけることが望ましい。発電装置1では、コイル3の体積が、各磁歪棒2と梁部材73との梁間隔によって制限されないため、コイル3の体積を十分に大きくしながらも、各磁歪棒2と梁部材73との梁間隔を十分に小さく設計することができる。これにより、コイル3の体積を増大させつつも、磁歪棒2に生じる応力を均一にすることができ、発電装置1の発電効率をより向上させることができる。
【0130】
なお、発電装置1を適用するスイッチとしては、特に限定されないが、例えば、電源、信号線の配線をしなくとも機能し、例えば、住宅照明用無線スイッチ、住宅セキュリティー用システム(特に、窓やドアの操作検知を無線で知らせるシステム)等に用いることができる。
【0131】
また、車両の各スイッチに発電装置1を応用することで、電源、信号線の配線がなくなり、組立工数の削減だけではなく、車両に設ける配線に必要な重量を軽減し、車両等の軽量化を得て、タイヤ、車体、エンジンにかかる負荷を抑制し、安全性にも寄与することができる。
【0132】
また、発電装置1は、スイッチとして用いる以外にも、ポンプや空調用ダクト等の振動体の筐体に取り付けて用いることもできる。具体的には、第1のブロック体4を振動体の筐体に固定し、振動体からの振動により第2のブロック体5に対して、上下方向への外力または振動を付与するようにしてもよい。
【0133】
このような振動体としては、例えば、蒸気、水、燃料油、気体(空気、燃料ガス等)等をパイプやダクトを通して移動(排気、換気、吸気、廃液、循環)させる装置であり、大型施設、ビル、駅等の配管や空調用ダクトが挙げられる。また、発電装置1を取り付ける振動体としては、このような配管や空調用ダクトに限られず、例えば、輸送機(貨物列車や自動車、トラックの荷台)、線路を構成するレール(枕木)、高速道路やトンネルの壁面パネル、架橋、ポンプやタービン等の機器等が挙げられる。
【0134】
これらの振動体に発生する振動は、目的とする媒体(空調用ダクトの場合、ダクト内を通過する気体等)の移動には不必要な振動であり、騒音や不快な振動を発生させる原因となっている。このような振動体に上記発電装置1を取り付けることにより、この不必要な振動(運動エネルギー)を電気エネルギーとして変換(回生)して得ることができる。
【0135】
この得られた電気エネルギーをセンサー、無線装置等の電源に用いて、施設居住空間の照度、温度、湿度、圧力、騒音を計測し、無線装置で検出データを送信して、各種制御信号やモニタリング信号として利用することができる。また、車両の各部の状態を監視するシステム(例えば、タイヤ空気圧センサー、シートベルト着装検知センサー)としても利用することができる。また、このように不必要な振動を電力に変換することで、振動体からの騒音や不快な振動を軽減する効果も得られる。
【0136】
なお、発電装置1の発電量は、特に限定されないが、20〜2000μJ程度であるのが好ましい。発電装置1の発電量(発電能力)が上記範囲内であれば、例えば、無線装置と組み合わせることで、上述した住宅照明用無線スイッチや住宅セキュリティー用システム等に有効に利用することができる。
【0137】
なお、本実施形態の発電装置1では、平面視において、各磁歪棒2に巻回されたコイル3と梁部材73とが重ならないように配置されているが、コイル3の一部が梁部材73と重なる構成であってもよい。具体的には、平面視において、磁歪棒2と梁部材73とは重ならないが、コイル3の端部と梁部材73の端部とが重なる構成であってもよい。かかる構成であっても、コイル3の巻回スペースを十分に確保しつつ、コイル3と梁部材73とが接触しない範囲で、磁歪棒2と梁部材73との梁間隔を十分に小さくすることができ、上記発電装置1で得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0138】
また、本実施形態の発電装置1では、対向する梁として、2つの磁歪棒2、2と1つの梁部材73とを備えているが、これに限定されず、以下のような構成とすることもできる。
【0139】
例えば、連結部が、第1の連結部材および第2の連結部材の長手方向の両端部同士を連結する2つの梁部材を備えるように構成してもよい。かかる構成では、各梁部材が、磁歪棒の外側に配置されているため、コイルの体積を増大させつつも、磁歪棒同士の間隔を小さくして、発電装置の幅方向のサイズを小さくすることができる。なお、かかる構成でも、上述した本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0140】
また、発電装置は、2つ以上の磁歪棒と1つ以上の梁部材とを備えた構成をとることができる。なお、磁歪棒および梁部材の総数を変更する場合には、その総数が奇数となるのが好ましい。具体的には、磁歪棒の数:梁部材の数が、2:3、3:2、3:4、4:3、4:5等となる構成が挙げられる。このような構成では、梁として機能する磁歪棒と梁部材とが発電装置の幅方向に対称に配置されるため、磁歪棒、第1および第2のブロック体、連結部にかかる応力のバランスが良好となる。
【0141】
なお、このような構成の場合には、梁部材73のバネ定数をA[N/m]、梁部材73の数をX[本]とし、磁歪棒2のバネ定数をB[N/m]、磁歪棒2の数をY[本]としたとき、A×Xの値とB×Yの値とがほぼ等しくなることが好ましい。これにより、第1のブロック体4に対して第2のブロック体5を上下方向へ円滑かつ確実に変位させることができる。
【0142】
また、上記の説明では、各雄ネジ43、53を各雌ネジ部412、501に螺合することにより、磁歪棒2の両端部21、22と各ブロック体4、5との固定および連結部7と各ブロック体4、5との連結を行っているが、各部材の固定、連結は、上記方法に限定されない。例えば、溶接(レーザー溶接、電気溶接)、ピンの圧入、接着剤による接着等の方法により各部材を固定、連結してもよい。
【0143】
<第2実施形態>
次に、本発明の発電装置の第2実施形態について説明する。
図14は、本発明の発電装置の第2実施形態を示す斜視図である。
【0144】
なお、以下の説明では、
図14中の上側を「上」または「上方」と言い、
図14中の下側を「下」または「下方」と言う。また、
図14中の紙面右奥側を「先端」と言い、
図14中の紙面左手前側を「基端」と言う。
【0145】
以下、第2実施形態の発電装置について、前記第1実施形態の発電装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0146】
図14に示す発電装置1は、外周にコイル3が巻回された磁歪棒2および梁部材73と、これらの基端部同士および先端部同士をそれぞれ連結する連結ヨーク48および連結ヨーク58と、磁歪棒2および梁部材73と併設されたヨーク82と、連結ヨーク48とヨーク82との間および連結ヨーク58とヨーク82との間に設けられた2つの永久磁石6とを有している。また、基端側の連結ヨーク48は、支持部49に固定され、先端側の連結ヨーク58は、錘部(質量部)59に固定されている。
【0147】
また、本実施形態の発電装置1では、磁歪棒2と梁部材73とが厚さ方向に併設されており、第1実施形態の発電装置1と同様に、磁歪棒2と梁部材73との梁間隔が、基端から先端に向かって小さくなるように構成されている。
【0148】
なお、本実施形態の磁歪棒2、コイル3および梁部材73としては、第1実施形態で前述した各部材を用いることができる。
【0149】
連結ヨーク48は、磁歪棒2の基端部21および梁部材73の基端部と連結する。
連結ヨーク48には、上下2つのスリット481、482が形成されており、下側のスリット481に磁歪棒2の基端部21が挿入され、上側のスリット482に梁部材73の基端部が挿入されて、ピン483により固定される。
この連結ヨーク48は、その基端側において支持部49に固定される。
【0150】
支持部49は、平板状をなしており、その先端側の略中央に幅方向に貫通する溝部491が形成されている。この溝部491に連結ヨーク48が挿入、固定される。
【0151】
本実施形態の発電装置1では、支持部49の基端を筐体100に固定することにより、磁歪棒2が、その基端を固定端、先端を可動端として片持ち支持されている。
【0152】
連結ヨーク58は、磁歪棒2の先端部22および梁部材73の先端部と連結する。
連結ヨーク58には、上下2つのスリット581、582が形成されており、下側のスリット581に磁歪棒2の先端部22が挿入され、上側のスリット582に梁部材73の基端部が挿入されて、ピン583により固定される。連結ヨーク58では、スリット581、582間の離間距離が、連結ヨーク48のスリット481、482間の離間距離よりも短くなっており、これにより、磁歪棒2と梁部材73との梁間隔が、基端から先端に向かって小さくなっている。
この連結ヨーク58は、その先端側において錘部59と固定される。
【0153】
錘部59は、平板状をなしており、その基端側の略中央に幅方向に貫通する溝部591が形成されている。この溝部591に連結ヨーク58が挿入、固定される。
【0154】
錘部59は、連結ヨーク58とともに、磁歪棒2に対して外力や振動を付与する錘として機能する。第2のブロック体5に対して、下方向に外力を付与して、第2のブロック体5を下方に変位させる。その後、外力を取り除くと、第2のブロック体5は上下方向に振動する。これにより、磁歪棒2は、その基端を固定端とし、先端が上下方向に往復動(先端が基端に対して相対的に変位)する。
【0155】
なお、各連結ヨーク48、58、支持部49および錘部59の構成材料は、前記第1実施形態における第1のブロック体4および第2のブロック体5を構成する各種材料と同様の材料を用いることができる。
【0156】
ヨーク82は、長尺の平板状をなしており、磁歪棒2および梁部材73と幅方向に併設されている。ヨーク82の構成材料としては、前述した第1実施形態における第1のブロック体4および第2のブロック体5を構成する各種材料と同様の材料を用いることができる。
【0157】
永久磁石6は、前記第1実施形態の発電装置1の永久磁石6と同様に、円柱状をなしている。このような永久磁石6の構成材料としては、前述した第1実施形態の永久磁石6と同様の材料を用いることができる。
【0158】
本実施形態では、
図14に示すように、連結ヨーク48とヨーク82との間に設けられた永久磁石6は、S極を連結ヨーク48側に、N極をヨーク82側にして配置され、連結ヨーク58とヨーク82との間に設けられた永久磁石6は、S極をヨーク82側に、N極を連結ヨーク58側にして配置されている。これにより、発電装置1には、時計間周りの磁界ループが形成されている。
【0159】
本実施形態の発電装置1では、前記第1実施形態の発電装置1と同様に、第2のブロック体5に外力を付与し、その先端を基端に対して変位させて磁歪棒2および梁部材73を変形させたときに、梁部材73に蓄積される弾性エネルギーが、磁歪棒2に蓄積される弾性エネルギーよりも大きい。これにより、磁歪棒2および梁部材73に蓄積された弾性エネルギーが運動エネルギーに変換される際に、梁部材73が有する運動エネルギーは、磁歪棒2が有する運動エネルギーよりも大きくなる。これにより、梁部材73によって磁歪棒2が効率良く変形し、その結果、発電装置1の発電効率を向上させることができる。
【0160】
また、本実施形態の発電装置1では、側面視において、磁歪棒2と梁部材73との梁間隔が、基端から先端に向かって小さくなるように構成されている。言い換えれば、磁歪棒2と梁部材73とが基端から先端にテーパーがかかった梁構造(テーパー梁構造)となっている(
図14参照)。かかる構成では、磁歪棒2と梁部材73とからなる一対の梁は、基端から先端に向かって変位方向(上下方向)への剛性が低くなる。そのため、錘部59に外力が付与されると、磁歪棒2および梁部材73は変位方向(上下方向)に円滑に変位することができ、その結果、磁歪棒2に発生する応力の厚さ方向におけるバラつきを少なくすることができる。これにより、磁歪棒2に一様な応力を生じさせることができ、発電装置1の発電効率をより向上させることができる。
【0161】
なお、側面視において、磁歪棒2と梁部材73とのなす角度(テーパー角度)は、特に限定されないが、0.5〜10°程度であるのが好ましく、1〜7°程度であるのがより好ましい。磁歪棒2と梁部材73とのなす角度が上記範囲内であれば、磁歪棒2と梁部材73とで上記テーパー梁構造を構成しつつも、基端側における磁歪棒2と梁部材73との梁間隔を十分に小さくすることができる。これにより、磁歪棒2により一様な応力を発生させることができる。
【0162】
なお、本実施形態では、コイル3を磁歪棒2に巻回する代わりに、ヨーク82の外周に巻回する構成にしてもよい。磁歪棒2中の磁束密度の変化に伴い、ヨーク82を通過する磁束密度も同様に変化するため、上記構成の発電装置1と同様にコイル3に電圧を発生させることができる。また、かかる構成では、各連結ヨーク48、58の幅を大きくしたり、各永久磁石の厚さを大きくすることにより、磁歪棒2および梁部材73とヨーク82との間隔を大きくすることができるため、コイル体積を大きくすることが可能である。これにより、発電装置1の発電効率をより向上させることができる。
【0163】
なお、各部材の固定、連結は、例えば、ネジ止め、ピンの圧入、溶接、接着剤による接着等の方法により各部材同士を固定、連結することができる。
【0164】
かかる第2実施形態の発電装置1によっても、前記第1実施形態の発電装置1と同様の作用・効果を生じる。
【0165】
以上、本発明の発電装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することができる。
例えば、前記第1および第2実施形態の任意の構成を組み合わせることもできる。
【0166】
また、2つの永久磁石のうち一方を省略することもでき、永久磁石の一方または双方を電磁石に置き換えることもできる。さらに、本発明の発電装置は、双方の永久磁石を省略し、外部磁場(外部磁界)を用いて発電する構成とすることもできる。
【0167】
また、磁歪棒および梁部材は、いずれも、その横断面形状が長方形状をなしているが、例えば、円形状、楕円形状、三角形状、正方形状、六角形状のような多角形状であってもよい。
【0168】
また、前記各実施形態の永久磁石は、円柱状をなしているが、平板状、角柱状、三角柱状をなしていてもよい。