(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配電網に対して充電制御装置を介して接続されているバッテリー装置のリスト、及び前記リストに含まれるバッテリー装置の各々から受け付けた接続終了予定時刻及び支払い希望金額を記憶したリスト記憶手段と、
前記配電網に対して接続されている発電機による発電、及び前記配電網に対して接続されている負荷による電力消費に応じた、前記配電網の潮流計算を各時刻について行う潮流計算手段と、
前記リスト記憶手段に記憶されている前記リストに含まれるバッテリー装置の各々から受け付けた接続終了予定時刻及び支払い希望金額と、予め求められた各時刻の電力料金とに基づいて、前記潮流計算手段による各時刻の潮流計算の結果に基づいて求められる、配電系統の安定状態を保ったまま、より多くの電力を発電装置から配電系統に取り入れるために各時刻に必要な無効電力を、前記リストに含まれるバッテリー装置から供給させ、かつ、前記バッテリー装置の各々の接続終了予定時刻及び支払い希望金額を満たすように、前記リストに含まれるバッテリー装置の各々に対して、充電スケジュール及び各時刻の力率を決定するスケジュール決定手段と、
前記リストに含まれるバッテリー装置の各々について、前記スケジュール決定手段によって前記バッテリー装置について決定された充電スケジュール及び各時刻の力率に従って充電を行うように、前記バッテリー装置の前記充電制御装置に対して指示を行うスケジュール指示手段と、
を含む充電制御監視装置。
前記バッテリー装置の接続終了予定時刻が経過したときに、前記バッテリー装置への充電に要したコストと、接続開始時刻から接続終了予定時刻までの時間の長さに応じて単調増加するインセンティブとに基づいて、前記バッテリー装置のユーザに対して請求する支払金額を計算する支払金額計算手段を更に含む請求項1記載の充電制御監視装置。
前記バッテリー装置の接続終了予定時刻が経過したときに、前記バッテリー装置への充電量と、接続開始時刻から接続終了予定時刻までの各時刻の電力料金の実績値とに基づいて、前記充電量の充電を最も安い電力料金で行った場合の支払い金額を、前記バッテリー装置のユーザに対して請求する支払金額として計算する支払金額計算手段を更に含む請求項1記載の充電制御監視装置。
前記配電網に対して前記充電制御装置を介して前記バッテリー装置が接続されたことを検出したときに、前記充電制御装置に対して、前記充電制御装置に備えられた、前記バッテリー装置の接続状態をロックする機構により、前記バッテリー装置の接続状態をロックするように指示するロック指示手段と、
前記バッテリー装置の接続終了予定時刻が経過したときに、前記充電制御装置に対して、前記バッテリー装置の接続状態のロックを解除するように指示するロック解除手段と、
を更に含む請求項1〜請求項3の何れか1項記載の充電制御監視装置。
前記潮流計算手段は、前記充電スケジュール及び各時刻の力率に基づいて、前記配電網に対して接続されている発電機による発電、及び前記配電網に対して接続されている負荷による電力消費に応じた、前記配電網の潮流計算を各時刻について行い、
前記スケジュール決定手段は、前記リスト記憶手段に記憶されている前記リストに含まれるバッテリー装置の各々から受け付けた接続終了予定時刻及び支払い希望金額と、予め求められた各時刻の電力料金とに基づいて、前記潮流計算手段による各時刻の潮流計算の結果に基づいて求められる、配電系統の安定状態を保ったまま、より多くの電力を発電装置から配電系統に取り入れるために各時刻に必要な無効電力を、前記リストに含まれるバッテリー装置から供給させ、かつ、前記バッテリー装置の各々の接続終了予定時刻及び支払い希望金額を満たすように、前記リストに含まれるバッテリー装置の各々に対して、充電スケジュール及び各時刻の力率を繰り返し変更し、
前記充電スケジュール及び各時刻の力率を繰り返し変更する毎に前記潮流計算手段により行われた各時刻の潮流計算の結果に基づいて、前記リストに含まれるバッテリー装置の各々に対して、最適化された充電スケジュール及び各時刻の力率を決定する請求項1〜請求項4の何れか1項記載の充電制御監視装置。
前記潮流計算手段は、前記バッテリー装置への充電を行わない場合について、前記配電網に対して接続されている発電機による発電、及び前記配電網に対して接続されている負荷による電力消費に応じた、前記配電網の潮流計算を各時刻について行い、
前記スケジュール決定手段は、前記潮流計算手段による各時刻の潮流計算の結果に基づいて、前記リスト記憶手段に記憶されている前記リストに含まれるバッテリー装置の各々について、前記バッテリー装置への充電を行うことで前記配電系統が得られる各時刻の価値を計算し、
前記リスト記憶手段に記憶されている前記リストに含まれるバッテリー装置の各々から受け付けた接続終了予定時刻及び支払い希望金額と、予め求められた各時刻の電力料金とに基づいて、前記バッテリー装置の各々について、各時刻の電力料金と、前記バッテリー装置について計算された各時刻の価値との差分が最小となり、かつ、前記バッテリー装置の各々の接続終了予定時刻及び支払い希望金額を満たすように、前記バッテリー装置に対して、充電スケジュール及び各時刻の力率を決定する請求項1〜請求項4の何れか1項記載の充電制御監視装置。
配電網に対して充電制御装置を介して接続されているバッテリー装置のリスト、及び前記リストに含まれるバッテリー装置の各々から受け付けた接続終了予定時刻及び支払い希望金額を記憶したリスト記憶手段を含むコンピュータを、
前記配電網に対して接続されている発電機による発電、及び前記配電網に対して接続されている負荷による電力消費に応じた、前記配電網の潮流計算を各時刻について行う潮流計算手段、
前記リスト記憶手段に記憶されている前記リストに含まれるバッテリー装置の各々から受け付けた接続終了予定時刻及び支払い希望金額と、予め求められた各時刻の電力料金とに基づいて、前記潮流計算手段による各時刻の潮流計算の結果に基づいて求められる、配電系統の安定状態を保ったまま、より多くの電力を発電装置から配電系統に取り入れるために各時刻に必要な無効電力を、前記リストに含まれるバッテリー装置から供給させ、かつ、前記バッテリー装置の各々の接続終了予定時刻及び支払い希望金額を満たすように、前記リストに含まれるバッテリー装置の各々に対して、充電スケジュール及び各時刻の力率を決定するスケジュール決定手段、及び
前記リストに含まれるバッテリー装置の各々について、前記スケジュール決定手段によって前記バッテリー装置について決定された充電スケジュール及び各時刻の力率に従って充電を行うように、前記バッテリー装置の前記充電制御装置に対して指示を行うスケジュール指示手段
として機能させるためのプログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1の方法では、無効電力の活用については、潮流計算において考慮されているものの、無効電力を有効に活用する仕組みになっていない、という問題がある。
【0007】
また、上記の非特許文献1の方法では、電気事業者などが、無効電力制御装置を設置する必要があり、余分なコストがかかる、という問題がある。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、無効電力制御装置を設置することなく、無効電力を有効に活用して、配電系統の安定化を図ることができる充電制御監視装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の充電制御監視装置は、配電網に対して充電制御装置を介して接続されているバッテリー装置のリスト、及び前記リストに含まれるバッテリー装置の各々から受け付けた接続終了予定時刻及び支払い希望金額を記憶したリスト記憶手段と、前記配電網に対して接続されている発電機による発電、及び前記配電網に対して接続されている負荷による電力消費に応じた、前記配電網の潮流計算を各時刻について行う潮流計算手段と、前記リスト記憶手段に記憶されている前記リストに含まれるバッテリー装置の各々から受け付けた接続終了予定時刻及び支払い希望金額と、予め求められた各時刻の電力料金とに基づいて、前記潮流計算手段による各時刻の潮流計算の結果に基づいて求められる、配電系統の安定状態を保ったまま、より多くの電力を発電装置から配電系統に取り入れるために各時刻に必要な無効電力を、前記リストに含まれるバッテリー装置から供給させ、かつ、前記バッテリー装置の各々の接続終了予定時刻及び支払い希望金額を満たすように、前記リストに含まれるバッテリー装置の各々に対して、充電スケジュール及び各時刻の力率を決定するスケジュール決定手段と、前記リストに含まれるバッテリー装置の各々について、前記スケジュール決定手段によって前記バッテリー装置について決定された充電スケジュール及び各時刻の力率に従って充電を行うように、前記バッテリー装置の前記充電制御装置に対して指示を行うスケジュール指示手段と、を含んで構成されている。
【0010】
本発明に係るプログラムは、配電網に対して充電制御装置を介して接続されているバッテリー装置のリスト、及び前記リストに含まれるバッテリー装置の各々から受け付けた接続終了予定時刻及び支払い希望金額を記憶したリスト記憶手段を含むコンピュータを、前記配電網に対して接続されている発電機による発電、及び前記配電網に対して接続されている負荷による電力消費に応じた、前記配電網の潮流計算を各時刻について行う潮流計算手段、前記リスト記憶手段に記憶されている前記リストに含まれるバッテリー装置の各々から受け付けた接続終了予定時刻及び支払い希望金額と、予め求められた各時刻の電力料金とに基づいて、前記潮流計算手段による各時刻の潮流計算の結果に基づいて求められる、配電系統の安定状態を保ったまま、より多くの電力を発電装置から配電系統に取り入れるために各時刻に必要な無効電力を、前記リストに含まれるバッテリー装置から供給させ、かつ、前記バッテリー装置の各々の接続終了予定時刻及び支払い希望金額を満たすように、前記リストに含まれるバッテリー装置の各々に対して、充電スケジュール及び各時刻の力率を決定するスケジュール決定手段、及び前記リストに含まれるバッテリー装置の各々について、前記スケジュール決定手段によって前記バッテリー装置について決定された充電スケジュール及び各時刻の力率に従って充電を行うように、前記バッテリー装置の前記充電制御装置に対して指示を行うスケジュール指示手段として機能させるためのプログラムである。
【0011】
本発明の充電制御監視装置及びプログラムによれば、潮流計算手段によって、前記配電網に対して接続されている発電機による発電、及び前記配電網に対して接続されている負荷による電力消費に応じた、前記配電網の潮流計算を各時刻について行う。
【0012】
そして、スケジュール決定手段によって、前記リスト記憶手段に記憶されている前記リストに含まれるバッテリー装置の各々から受け付けた接続終了予定時刻及び支払い希望金額と、予め求められた各時刻の電力料金とに基づいて、前記潮流計算手段による各時刻の潮流計算の結果に基づいて求められる、配電系統の安定状態を保ったまま、より多くの電力を発電装置から配電系統に取り入れるために各時刻に必要な無効電力を、前記リストに含まれるバッテリー装置から供給させ、かつ、前記バッテリー装置の各々の接続終了予定時刻及び支払い希望金額を満たすように、前記リストに含まれるバッテリー装置の各々に対して、充電スケジュール及び各時刻の力率を決定する。スケジュール指示手段によって、前記リストに含まれるバッテリー装置の各々について、前記スケジュール決定手段によって前記バッテリー装置について決定された充電スケジュール及び各時刻の力率に従って充電を行うように、前記バッテリー装置の前記充電制御装置に対して指示を行う。
【0013】
このように、バッテリー装置の各々から受け付けた接続終了予定時刻及び支払い希望金額と、予め求められた各時刻の電力料金とに基づいて、各時刻の潮流計算の結果に基づいて求められる、配電系統の安定状態を保ったまま、より多くの電力を発電装置から配電系統に取り入れるために各時刻に必要な無効電力を、前記リストに含まれるバッテリー装置から供給させ、かつ、前記バッテリー装置の各々の接続終了予定時刻及び支払い希望金額を満たすように、前記リストに含まれるバッテリー装置の各々に対して、充電スケジュール及び各時刻の力率を決定することにより、無効電力制御装置を設置することなく、無効電力を有効に活用して、配電系統の安定状態を保ったまま、より多くの電力を発電装置から配電系統に取り入れることができる。
【0014】
また、本発明に係る充電制御監視装置は、前記バッテリー装置の接続終了予定時刻が経過したときに、前記バッテリー装置への充電に要したコストと、接続開始時刻から接続終了予定時刻までの時間の長さに応じて単調増加するインセンティブとに基づいて、前記バッテリー装置のユーザに対して請求する支払金額を計算する支払金額計算手段を更に含むようにすることができる。これにより、バッテリー装置を配電網に接続し続けることがユーザにとっての利益となる仕組みを構築することができる。なお、充電に要したコストとは、充電量に応じた電力料金などの原価、営業や機器メンテナンスなどの費用、さらに事業者の利益などを勘案して算出されるものである。
【0015】
本発明に係る充電制御監視装置は、前記バッテリー装置の接続終了予定時刻が経過したときに、前記バッテリー装置への充電量と、接続開始時刻から接続終了予定時刻までの各時刻の電力料金の実績値とに基づいて、前記充電量の充電を最も安い電力料金で行った場合の支払い金額を、前記バッテリー装置のユーザに対して請求する支払金額として計算する支払金額計算手段を更に含むようにすることができる。これにより、バッテリー装置を配電網に接続し続けることがユーザにとっての利益となる仕組みを構築することができる。
【0016】
また、本発明に係る充電制御監視装置は、前記配電網に対して前記充電制御装置を介して前記バッテリー装置が接続されたことを検出したときに、前記充電制御装置に対して、前記充電制御装置に備えられた、前記バッテリー装置の接続状態をロックする機構により、前記バッテリー装置の接続状態をロックするように指示するロック指示手段と、前記バッテリー装置の接続終了予定時刻が経過したときに、前記充電制御装置に対して、前記バッテリー装置の接続状態のロックを解除するように指示するロック解除手段と、を更に含むようにすることができる。これにより、ユーザから入力された接続終了予定時刻までバッテリー装置が配電網に接続された状態を確保することができる。
【0017】
本発明に係る潮流計算手段は、前記充電スケジュール及び各時刻の力率に基づいて、前記配電網に対して接続されている発電機による発電、及び前記配電網に対して接続されている負荷による電力消費に応じた、前記配電網の潮流計算を各時刻について行い、前記スケジュール決定手段は、前記リスト記憶手段に記憶されている前記リストに含まれるバッテリー装置の各々から受け付けた接続終了予定時刻及び支払い希望金額と、予め求められた各時刻の電力料金とに基づいて、前記潮流計算手段による各時刻の潮流計算の結果に基づいて求められる、配電系統の安定状態を保ったまま、より多くの電力を発電装置から配電系統に取り入れるために各時刻に必要な無効電力を、前記リストに含まれるバッテリー装置から供給させ、かつ、前記バッテリー装置の各々の接続終了予定時刻及び支払い希望金額を満たすように、前記リストに含まれるバッテリー装置の各々に対して、充電スケジュール及び各時刻の力率を繰り返し変更し、前記充電スケジュール及び各時刻の力率を繰り返し変更する毎に前記潮流計算手段により行われた各時刻の潮流計算の結果に基づいて、前記リストに含まれるバッテリー装置の各々に対して、最適化された充電スケジュール及び各時刻の力率を決定するようにすることができる。
【0018】
本発明に係る潮流計算手段は、前記バッテリー装置への充電を行わない場合について、前記配電網に対して接続されている発電機による発電、及び前記配電網に対して接続されている負荷による電力消費に応じた、前記配電網の潮流計算を各時刻について行い、前記スケジュール決定手段は、前記潮流計算手段による各時刻の潮流計算の結果に基づいて、前記リスト記憶手段に記憶されている前記リストに含まれるバッテリー装置の各々について、前記バッテリー装置への充電を行うことで前記配電系統が得られる各時刻の価値を計算し、前記リスト記憶手段に記憶されている前記リストに含まれるバッテリー装置の各々から受け付けた接続終了予定時刻及び支払い希望金額と、予め求められた各時刻の電力料金とに基づいて、前記バッテリー装置の各々について、各時刻の電力料金と、前記バッテリー装置について計算された各時刻の価値との差分が最小となり、かつ、前記バッテリー装置の各々の接続終了予定時刻及び支払い希望金額を満たすように、前記バッテリー装置に対して、充電スケジュール及び各時刻の力率を決定するようにすることができる。
【0019】
上記のバッテリー装置を、電気自動車とすることができる。
【0020】
なお、本発明のプログラムを記憶する記憶媒体は、特に限定されず、ハードディスクであってもよいし、ROMであってもよい。また、CD−ROMやDVDディスク、光磁気ディスクやICカードであってもよい。更にまた、該プログラムを、ネットワークに接続されたサーバ等からダウンロードするようにしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明の充電制御監視装置及びプログラムによれば、バッテリー装置の各々から受け付けた接続終了予定時刻及び支払い希望金額と、予め求められた各時刻の電力料金とに基づいて、各時刻の潮流計算の結果に基づいて求められる、配電系統の安定状態を保ったまま、より多くの電力を発電装置から配電系統に取り入れるために各時刻に必要な無効電力を、前記リストに含まれるバッテリー装置から供給させ、かつ、前記バッテリー装置の各々の接続終了予定時刻及び支払い希望金額を満たすように、前記リストに含まれるバッテリー装置の各々に対して、充電スケジュール及び各時刻の力率を決定することにより、無効電力制御装置を設置することなく、無効電力を有効に活用して、配電系統の安定状態を保ったまま、より多くの電力を発電装置から配電系統に取り入れることができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0024】
図1に、本実施の形態の充電制御システムの適用場面の概略を示す。
【0025】
図1(A)に示すように、再生可能エネルギーによる発電(太陽光発電など)が、配電網に導入されている。ここで、
図1(B)に示すように、再生可能エネルギーによる発電の増加による、配電系統の不安定化を防ぐために、発電量のうち一部を配電系統に流入させない制御が実施される。このとき、
図1(C)に示すように、配電網に電気自動車から無効電力を供給することによって、配電系統の安定状態を保ったまま、より多くの電力を発電装置から配電系統に取り入れることができる。
【0026】
また、本実施の形態では、
図2、3に示すビジネスモデルを想定している。アグリゲータ(A社)が、電気自動車(ハイブリッド自動車)を所有する個人・企業と契約し、系統安定化能力を確保する。また、再エネ発電機器を所有する個人・企業と契約し、系統安定化能力を有効活用する。また、電力市場に参入し、系統安定化能力を市場に提供する。
【0027】
本実施の形態では、以下の(1)〜(3)により、需要家(個人)の自発的な行動の結果として、系統安定化能力を確実に担保することを目的とする。
【0028】
(1)電気自動車を使用する予定の無いときには、系統安定化のため、電気自動車を系統に接続してもらう。顧客が電気自動車の使用予定を正直に申告し、系統に車を接続することによって、インセンティブを与える。
【0029】
(2)無効電力の価値を還元することによって、電気自動車からの無効電力の供給に同意してもらう。
【0030】
(3)電気自動車の移動を防ぐロック機構を用いて、約束された安定化能力を確保する。
【0031】
具体的には、アグリゲーター(A社)は、契約者全体の電力を市場から価格M(t、q)で調達する。ただし、tは時刻であり、qは調達する電力量である。また、再生可能エネルギーによる発電量に応じたインセンティブI(t、q)を市場から受け取る。また、電気自動車の充電電力の割り当てルールπを規定し、充電スケジュール・力率を決定する。また、電気自動車の契約者の電力購入価格支払ルールxを規定し、再生可能エネルギー発電の契約者の電力売却価格受け取りルールyを規定する。アグリゲーターの効用は、以下の式で表わされる。
【0032】
−M(t、q
sum)+I(t、q
PV)+Σ
i=allx
i−Σ
i=ally
i
但し、q
sum=q
house+q
EV−q
PV
ここで、q
houseは、家庭の消費電力であり、q
EVは、電気自動車の充電量であり、q
PVは、再生可能エネルギー発電の発電量である。
【0033】
また、電気自動車の所有者iの真の選好は、θ
i=<a
i、d
i、v
i>を持つ。ただし、aは、到着時刻であり、dは出発予定時刻であり、vは電力価格であり、
図4(A)に示すような各時刻の支払い希望金額である。例えば、
図5に示すように、プランの選択によって、支払い希望金額が決定される。また、出発予定時刻については、2段階の出発予定時刻(考え得る最も早い出発予定時刻、及び考え得る最も遅い出発予定時刻)を入力するようにしてもよい。到着時刻は入力不要とする。
【0034】
電気自動車の所有者iは、電気自動車を配電網に接続した後、^θ
i=<^a
i、^d
i、^v
i>をアグリゲーターに申告する。また、割り当てルールπに従い、財を受け取る。また、支払いルールxに従い、x
i(^θ
i、^θ
−i|π
i)を支払う。例えば、
図4(B)に示すような金額を支払う。このとき、所有者iの効用は、以下の式で表わされる。
【0036】
支払額は、申告した電力価値v
iと無関係に決定され、出発予定時刻をなるべく正確に申告すると、単価が安くなる。ただし、充電した電力量に対する支払い総額が、申告した金額より安いことは保証される。
【0037】
上記のように、電気自動車の所有者は、自分のスケジュールを正直に申告すると支払単価が安くなるため、正直申告へのインセンティブとなる。また、支払い金額の計算において、無効電力の価値を考慮することにより、無効電力の有効活用を図ることができる。
【0038】
図6に、第1の実施の形態の充電制御システムの概略図を示す。第1の実施の形態の充電制御システムは、管理センタ等に設置された充電制御監視サーバ10と、電気自動車12の各充電エリアに設けられた充電制御装置14とを含んで構成されている。充電制御監視サーバ10及び複数の充電制御装置14は、ネットワーク16を介して相互に接続されている。
図7に示すように、充電制御装置14は、配電網20に接続されており、電気自動車12は、充電制御装置14を介して配電網20に接続され、充電制御装置14に設けられた充電器により、電気自動車12のバッテリー装置への充電が行われる。なお、配電網20は複数存在する。
【0039】
充電制御監視サーバ10は、
図8に示すように、キーボードやマウス等で構成された、各種情報を入力操作するための入力部22と、充電制御装置14を制御する処理を実行するコンピュータ24とを含んで構成されている。
【0040】
コンピュータ24は、充電制御監視サーバ10全体の制御を司るCPU26と、後述する充電制御監視処理ルーチンを含む充電制御監視プログラム等の各種プログラムを記憶した記憶媒体としてのROM28と、ワークエリアとしてデータを一時的に格納するRAM30と、各種情報が記憶された記憶手段としてのハードディスク(HDD)32と、入出力ポート(I/Oポート)34と、充電制御装置14との間で通信を行うための通信部36と、ネットワークインターフェース(ネットワークI/F)38と、これらを接続するバスとを含んで構成されている。
【0041】
コンピュータ24を機能的に示すと、
図9に示すように、充電監視部40、リスト記憶部41、環境予測部42、電力需給予測部44、潮流計算部46、スケジューリング部48、スケジュール指示部50、ロック指示部52、ロック解除部54、及び支払金額計算部56を含んで構成されている。
【0042】
充電監視部40は、配電網20毎に、当該配電網20に接続された電気自動車12の充電制御装置14から、「位置」、「支払い希望金額」、「希望充電量」、「接続終了予定時刻」を取得し、リスト記憶部41に格納する。ここで、「位置」とは、狭義には、電気自動車12が接続されている充電制御装置14の、配電網20上の存在場所を指す。例えば、夜10時に帰宅した、電気自動車12を所有する顧客は、自宅に設置されている充電制御装置14で、「明日の朝7時までに、20kWHの電力を、¥10/kWh以下で購入したい」と入力する。
【0043】
このとき、顧客に対して、「接続終了予定時刻」までの時間tに対して単調増加になる形で、インセンティブを与える。これにより、顧客は、遅い時刻を申告した方が得であるため、必要以上に早い接続終了予定時刻の申告を防ぐことができる。
【0044】
なお、顧客に対して、「想定される最も早い接続終了予定時刻t1」と「想定される最も遅い接続終了予定時刻t2」の2つの出発時刻を申告してもらい、下記の(1)、(2)の様な性質を持つ形で、売却電力単価にインセンティブを与えるようにしてもよい。
【0045】
車両の到着時刻がt0であり、実際の出発時刻がtaであったとき、インセンティブ単価f(t0、ta、t1、t2)≧0は、
【0046】
(1)時間(t1−t0)に対して単調増加であり
(2)時間(ta−t1)に対して単調増加であり
(3)時間(t2−t1))に対して単調減少である。
また、時間(t1−t0)に対する増加率は、時間(ta−t1)に対する増加率より大きいことが望ましい。
【0047】
また、顧客は「AkWh充電できるならB円、CkWhしか充電できないならD円」などといった、柔軟な料金体系を示しても良い。
【0048】
また、充電制御監視サーバ10の運営者などが、顧客に対して、複数の料金プランを提示し、その中から顧客が自分好みに合うプランを選択することにより、意思を表示しても良い。料金プランは、「接続終了予定時刻」までの時間tに対して単調増加になる形で、インセンティブを与えるものであればなお良い。
【0049】
また、「支払い希望金額」、「希望充電量」、「接続終了予定時刻」は、本人が毎回申告しなくても、プログラムによる自動申告でもかまわない。
【0050】
例えば、毎日出勤する時間帯の1時間前を「接続終了予定時刻」として自動的に申告するようにしてもよい。あるいは、次の走行予定をナビに入力することにより、ナビが、次の目的地に予定通り到着するための「接続終了予定時刻」と、次回充電予定場所までの「必要充電量」を計算して、自動的に申告するようにしてもよい。
【0051】
リスト記憶部41は、配電網20毎に、当該配電網20に対して充電制御装置14を介して接続されている電気自動車12のリスト(電気自動車12を所有するユーザ識別情報のリスト)、及び当該リストに含まれる電気自動車12の各々から受け付けた「位置」、「支払い希望金額」、「希望充電量」、及び「接続終了予定時刻」を記憶する。
【0052】
環境予測部42は、配電網20毎に、取得可能な環境データに基づいて、当該配電網20に接続されている自然エネルギー発電の発電機の各位置における日射量や風量を予測する。
【0053】
電力需給予測部44は、配電網20毎に、当該配電網20に接続されている電気自動車12の顧客の各々について、当該顧客の位置における、各時刻tの電力料金を表す電力料金関数p(t)を予測する。例えば、当該顧客の位置における電力料金関数p(t)について、電力市場の取引価格を参照する。あるいは、当該顧客の位置における電力料金関数p(t)を予測する際に、環境予測部42によって予測された日射量や風量に基づいて、自然エネルギー発電の発電機の状況を考慮するようにしてもよい。
【0054】
なお、予め定められた電力料金関数p(t)を取得するようにしてもよい。
【0055】
例えば、以下の式に示すような電力料金関数を取得してもよい。
【0057】
潮流計算部46は、配電網20毎に、スケジューリング部48によって決定される充電スケジュール及び各時刻の力率に基づいて、当該配電網20に対して接続されている発電機による発電(個人の太陽光発電や、発電事業者)、当該配電網20に対して接続されている負荷(個人の需要家など)による電力消費に応じた、当該配電網の潮流計算を各時刻について行う。
【0058】
スケジューリング部48は、配電網20毎に、リスト記憶部41に記憶されている当該配電網20のリストに含まれる電気自動車12の各々の「位置」、「支払い希望金額」、「希望充電量」、及び「接続終了予定時刻」と、電力需給予測部44によって得られた電力料金関数とに基づいて、潮流計算部46による各時刻の潮流計算の結果に基づいて求められる、配電系統の安定状態を保ったまま、より多くの電力を発電装置から配電系統に取り入れるために各時刻に必要な無効電力を、当該配電網20のリストに含まれる電気自動車12から供給させ、かつ、電気自動車12の各々の「支払い希望金額」、「希望充電量」、及び「接続終了予定時刻」を満たすように、当該配電網20のリストに含まれる電気自動車12の各々に対して、充電スケジュール及び各時刻の力率を繰り返し変更する。スケジューリング部48は、配電網20毎に、充電スケジュール及び各時刻の力率を繰り返し変更する毎に潮流計算部46により行われた各時刻の潮流計算の結果に基づいて、当該配電網20のリストに含まれる電気自動車12の各々に対して、最適化された充電スケジュール及び各時刻の力率を決定する。
【0059】
例えば、電気自動車12の位置における料金関数をp(t、θ)=cosθ・p
a(t)−sinθp
r(t)とし、供給できる無効電力の価値p
r(t)を考慮して、最も電力料金p
a(t)が安くなる充電時間帯と、各時刻の力率cosθを求める。
【0060】
上記の潮流計算部46及びスケジューリング部48による計算は、配電網20の状況や予測情報に変化がある度に実施される。これにより、新たな電気自動車12が配電網20に接続されると、その度に、充電中の他の電気自動車12の充電スケジュール及び各時刻の力率も、新たな条件下での最適化されたものに更新される。
【0061】
スケジュール指示部50は、配電網20毎に、リスト記憶部41に記憶されている当該配電網20に対するリストに含まれる電気自動車12の各々について、スケジューリング部48によって当該電気自動車12について決定された充電スケジュール及び各時刻の力率に従って充電を行うように、当該電気自動車12の充電制御装置14に対して、通信部36を介して指示を行う。
【0062】
充電制御装置14は、電気自動車12を所有する顧客が指定した接続終了予定時刻までの間、当該充電制御装置14との接続を解除できないロック機構を有する。例えば、充電制御装置14との接続が有線接続である場合、充電制御装置14と車体の接続が解除できないようにする、タイマーロック機構を備える。
【0063】
ワイヤレス給電の場合には、指定場所から車両を移動できないようにするロック機構を用いればよい。例えば、車止めや門扉などの物理的方法、車両のキーを管理者が預かる方法、指定時間までエンジンがオンにならないような車両制御を実施する方法などがある。
【0064】
このように、ロック機構を設けることにより、顧客が指定した時間までのバッテリーの確保を確実にすることで、電力系統安定化能力を確保することができる。
【0065】
なお、追加料金(違約金)の支払いにより、指定時刻よりも前であってもロックを解除する仕組みを追加してもよい。
【0066】
ロック指示部52は、当該配電網20に新たに電気自動車12が接続されたことを検出した場合、当該電気自動車12の充電制御装置14に対して、ロック機構を作動するように指示する指示信号を、通信部36を介して送信する。
【0067】
ロック解除部54は、電気自動車12の「接続終了予定時刻」が経過したときに、当該電気自動車12の充電制御装置14に対して、ロック機構を解除するように指示する指示信号を、通信部36を介して送信する。
【0068】
支払金額計算部56は、電気自動車12の「接続終了予定時刻」が経過したときに、当該電気自動車への充電量Qと、電力需給予測部44によって得られた各時刻tの電力料金P(t)と、接続開始時刻から「接続終了予定時刻」までの時間の長さt
eに応じて単調増加するインセンティブI(t
e)とに基づいて、当該電気自動車12のユーザに対して請求する支払金額を計算する。
【0069】
例えば、
図10に示すように、「接続終了予定時刻」までの時間の長さに応じて単調増加する形で、インセンティブI(t
e)を計算し、ユーザの支払金額を、Q×P(t)−I(t
e)として計算する。
【0070】
次に、第1の実施の形態の充電制御システムの動作について説明する。
【0071】
まず、
図11を参照して、第1の実施の形態の充電制御監視サーバ10における充電制御監視処理ルーチンについて説明する。なお、充電制御監視処理ルーチンが、配電網20毎に実行される。以下、処理対象の配電網20について充電制御監視処理ルーチンが実行される場合について説明する。
【0072】
ステップ100で、リスト記憶部41に記憶されている、処理対象の配電網20に対して充電制御装置14を介して接続されている電気自動車12のリスト、及び当該リストに含まれる電気自動車12の各々から受け付けた「位置」、「支払い希望金額」、「希望充電量」、及び「接続終了予定時刻」に基づいて、割り当てルールに従い、各電気自動車12に対する充電スケジュール及び各時刻の力率を更新する。
【0073】
ステップ102で、処理対象の配電網20に対して充電制御装置14を介して接続されている各電気自動車12の充電制御装置14に対して、上記ステップ100で更新された充電スケジュール及び各時刻の力率を指示する。
【0074】
ステップ104では、イベントが検出されたか否かを判定する。新たに電気自動車12が処理対象の配電網20に接続されるか、接続されている電気自動車12の「接続終了予定時刻」を経過するか、又は電力需給予測部44による予測される電力料金関数に変化があった場合には、ステップ106へ進む。
【0075】
ステップ106では、検出されたイベントが、新たに電気自動車12が処理対象の配電網20に接続されたことである場合には、ステップ108へ移行し、検出されたイベントが、接続されている電気自動車12の「接続終了予定時刻」を経過したことである場合には、ステップ112へ移行する。また、検出されたイベントが、電力需給予測部44による予測される電力料金関数に変化があったことである場合には、ステップ100へ戻る。
【0076】
ステップ108では、処理対象の配電網20に新たに接続された電気自動車12を、リスト記憶部41に格納すると共に、当該電気自動車を所有するユーザが入力された「位置」、「支払い希望金額」、「希望充電量」、及び「接続終了予定時刻」を受け付けると、リスト記憶部41に格納する。
【0077】
ステップ110では、処理対象の配電網20に新たに接続された電気自動車12の充電制御装置14に対して、ロック機構を作動させるように指示し、ステップ100へ戻る。
【0078】
ステップ112では、「接続終了予定時刻」を経過した電気自動車12の充電制御装置14に対して、ロック機構を解除するように指示する。
【0079】
ステップ114では、「接続終了予定時刻」を経過した電気自動車12の情報を、リスト記憶部41から削除する。
【0080】
ステップ116では、「接続終了予定時刻」を経過した電気自動車12について、支払いルールに従い、支払金額を計算する。ステップ118では、「接続終了予定時刻」を経過した電気自動車12を所有するユーザの端末に対して、上記ステップ116で計算された支払金額を送信し、ステップ100へ戻る。
【0081】
上記ステップ100は、
図12に示す処理ルーチンによって実現される。
図12に示すように処理ルーチンは、各時刻について実行される。以下では、対象時刻tについて実行される場合について説明する。
【0082】
ステップ120において、対象時刻tの電力料金P(t)を予測し、ステップ122において、対象時刻tの日射量及び風量を予測する。
【0083】
ステップ124では、リスト記憶部41からリストを読み込み、対象時刻tに接続されている電気自動車12の情報を取得する。
【0084】
ステップ126では、処理対象の配電網20を表す配電網モデルに、上記ステップ124で取得した電気自動車12を追加する。
【0085】
ステップ128では、上記ステップ124で取得した電気自動車12の情報に基づいて、「支払い希望金額」、及び「接続終了予定時刻」を満たすように、上記ステップ124で取得した各電気自動車12への充電スケジュール及び対象時刻tの力率を変化させて、上記ステップ122で予測された日射量及び風量に基づいて、配電網20の対象時刻tの潮流計算を行う。このとき、電圧上昇により、太陽光発電の電力を配電網20に入力できない状況の発生が見込まれる場合、電気自動車12への力率を下げた充電による補償効果を考慮して、各電気自動車12への充電スケジュール及び対象時刻tの力率を変化させる。
【0086】
ステップ130では、上記ステップ128で計算された潮流計算の結果に基づいて、処理対象の配電網20において、対象時刻tに得られる価値が最大となるか否かを判定し、対象時刻tに得られる価値が最大でないと判定される場合には、上記ステップ128へ戻る。一方、対象時刻tに得られる価値が最大となると判定された場合には、最終的に得られた各電気自動車12への充電スケジュール及び対象時刻tの力率に決定し、処理ルーチンを終了する。
【0087】
上記ステップ116は、
図13に示す処理ルーチンにより実現される。
【0088】
ステップ140では、充電に要したコストの実績値から計算された各時刻tの電力料金からなる電力料金関数P(t)を取得する。
【0089】
そして、ステップ142において、「接続終了予定時刻」を経過した電気自動車12について、接続開始時刻から「接続終了予定時刻」までの時間の長さt
eに応じて単調増加するインセンティブI(t
e)を計算する。
【0090】
ステップ144では、「接続終了予定時刻」を経過した電気自動車12について、充電を行った充電量Qと、上記ステップ140で取得した電力料金関数P(t)と、上記ステップ142で計算されたインセンティブI(t
e)とに基づいて、当該電気自動車12のユーザに対して請求する支払金額を計算し、処理ルーチンを終了する。
【0091】
以上説明したように、第1の実施の形態の充電制御システムによれば、電気自動車の各々から受け付けた接続終了予定時刻及び支払い希望金額と、予め求められた各時刻の電力料金とに基づいて、各時刻の潮流計算の結果に基づいて求められる、配電系統の安定状態を保ったまま、より多くの電力を発電装置から配電系統に取り入れるために各時刻に必要な無効電力を、配電網に接続されている電気自動車から供給させ、かつ、電気自動車の各々の接続終了予定時刻及び支払い希望金額を満たすように、電気自動車の各々に対して、充電スケジュール及び各時刻の力率を決定することにより、無効電力制御装置を設置することなく、無効電力を有効に活用して、配電系統の安定状態を保ったまま、より多くの電力を発電装置から配電系統に取り入れることができる。
【0092】
また、ロック機構を設けることにより、ユーザから入力された接続終了予定時刻までバッテリー装置が配電網に接続された状態を確保することができ、再生可能エネルギー発電が多く導入された配電系統において、確実な系統安定化能力を提供することができる。
【0093】
また、電気自動車を配電網に接続し続けることがユーザにとっての利益となる仕組みを構築することができる。
【0094】
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では、充電スケジュール及び各時刻の力率の決定方法、並びに、支払金額の計算方法が、第1の実施の形態と異なっている。なお、第2の実施の形態の充電制御システムの概略構成は第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0095】
第2の実施の形態に係る充電制御監視サーバ10の潮流計算部46は、配電網20毎に、当該配電網20に対して接続されている電気自動車12への充電を行わない場合について、当該配電網20に対して接続されている発電機による発電(個人の太陽光発電や、発電事業者)、当該配電網20に対して接続されている負荷(個人の需要家など)による電力消費に応じた、当該配電網の潮流計算を各時刻について行う。
【0096】
スケジューリング部48は、配電網20毎に、潮流計算部46による各時刻の潮流計算の結果に基づいて、リスト記憶部41に記憶されている当該配電網20のリストに含まれる電気自動車12の各々について、電気自動車12への充電を行うことで配電系統が得られる各時刻の価値を計算する。
【0097】
また、スケジューリング部48は、リスト記憶部41に記憶されている当該配電網20のリストに含まれる電気自動車12の各々の「位置」、「支払い希望金額」、「希望充電量」、及び「接続終了予定時刻」と、電力需給予測部44によって得られた電力料金関数とに基づいて、電気自動車12の各々について、各時刻の電力料金と、当該電気自動車について計算された各時刻の価値との差分が最小となり、かつ、電気自動車12の各々の「支払い希望金額」、「希望充電量」、及び「接続終了予定時刻」を満たすように、当該配電網20のリストに含まれる電気自動車12の各々に対して、充電スケジュール及び各時刻の力率を決定する。
【0098】
支払金額計算部56は、電気自動車12の「接続終了予定時刻」が経過したときに、当該電気自動車への充電量Qと、接続開始時刻から「接続終了予定時刻」までの各時刻の電力料金(実績値)とに基づいて、充電量Qの充電を最も安い電力料金で行った場合の支払い金額を、当該電気自動車12のユーザに対して請求する支払金額として計算する。
【0099】
例えば、
図14に示すように、各時刻の電力料金(実績値)に基づいて、当該電気自動車への充電量Qの充電を最も安い電力料金で行った場合の時間帯を特定し、特定された時間帯と、各時刻の電力料金(実績値)とに基づいて、支払金額を計算する。この計算方法により、結果的に、接続開始時刻から「接続終了予定時刻」までの申告時間の長さに対して支払金額が単調減少する形になる。すわなち、インセンティブが単調増加する形となる。
【0100】
次に、第2の実施の形態の充電制御システムの動作について説明する。
【0101】
第2の実施の形態の充電制御監視サーバ10は、上記
図11に示す充電制御監視処理ルーチンと同様の処理ルーチンを実行する。
【0102】
ここで、上記ステップ100は、
図15に示す処理ルーチンによって実現される。
図15に示す処理ルーチンは、各時刻について実行される。以下では、対象時刻tについて実行される場合について説明する。なお、第1の実施の形態の処理ルーチンと同一の処理については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0103】
ステップ120において、対象時刻tの電力料金P(t)を予測する。ステップ200では、上記ステップ120で予測した対象時刻tの電力料金P(t)に基づいて、グローバル規模での電力価格A(t)を予測する。
【0104】
ステップ122において、対象時刻tの日射量及び風量を予測する。
【0105】
ステップ124では、リスト記憶部41からリストを読み込み、対象時刻tに接続されている電気自動車12の情報を取得する。
【0106】
ステップ126では、処理対象の配電網20を表す配電網モデルに、上記ステップ124で取得した電気自動車12を追加する。
【0107】
ステップ202では、上記ステップ122で予測された日射量及び風量に基づいて、上記ステップ124で取得した電気自動車12に対して充電を行わない場合について、処理対象の配電網20の対象時刻tの潮流計算を行う。
【0108】
ステップ204では、上記ステップ202での潮流計算の結果に基づいて、電圧上昇により、太陽光発電の電力を配電網20に入力できない状況が発生しているか否かを判定する。電圧上昇により発電量を配電網20に入力できない状況が発生していないと判定された場合には、ステップ206において、上記ステップ124で取得した電気自動車12の各々に対して、i番目の電気自動車12に充電を行うことで対象時刻tに配電系統が得られる価値B
i(t、r)を0に設定する。
【0109】
一方、電圧上昇により発電量を配電網20に入力できない状況が発生していると判定された場合には、ステップ208において、上記ステップ124で取得したi番目の電気自動車12に対して、当該電気自動車12に充電を行うことで対象時刻tに配電系統が得られる価値B
i(t、r)を計算する。
【0110】
ステップ210では、上記ステップ124で取得した全ての電気自動車12に対して、上記ステップ208の計算を行ったか否かを判定する。上記ステップ124で取得した電気自動車12のうち、上記ステップ208の計算を行っていない電気自動車12が存在する場合には、上記ステップ208へ戻り、当該電気自動車12に対して計算を行う。上記ステップ124で取得した全ての電気自動車12に対して、上記ステップ208の計算を行った場合には、ステップ212へ移行する。
【0111】
ステップ212では、上記ステップ200で予測された電力価格A(t)と、上記ステップ124で取得した電気自動車12の情報と、上記ステップ206又はステップ208で電気自動車12に対して計算された価値B
i(t、r)とに基づいて、電気自動車12に対して「支払い希望金額」及び「接続終了予定時刻」を満たし、かつ、電力価格A(t)−価値B
i(t、r)が最小となるように、当該電気自動車12への充電スケジュール及び対象時刻tの力率を決定する。
【0112】
ステップ214では、上記ステップ124で取得した全ての電気自動車12に対して、上記ステップ212の決定を行ったか否かを判定する。上記ステップ124で取得した電気自動車12のうち、上記ステップ212の決定を行っていない電気自動車12が存在する場合には、上記ステップ212へ戻り、当該電気自動車12に対して充電スケジュール及び力率の決定を行う。上記ステップ124で取得した全ての電気自動車12に対して、上記ステップ212の決定を行った場合には、処理ルーチンを終了する。
【0113】
上記ステップ116は、
図16に示す処理ルーチンにより実現される。
【0114】
ステップ220では、各時刻tの電力料金の実績値A’(t)を取得する。
【0115】
そして、ステップ222において、「接続終了予定時刻」を経過した電気自動車12について、接続開始時刻から「接続終了予定時刻」までの時間で、充電量Qを充電した場合、結果的に最も安くなったであろう時間帯の単価を積算したものを、当該電気自動車12のユーザに対して請求する支払金額として計算し、処理ルーチンを終了する。
【0116】
以上説明したように、第2の実施の形態の充電制御システムによれば、電気自動車の各々から受け付けた接続終了予定時刻及び支払い希望金額と、グローバル規模の各時刻の電力価格とに基づいて、各時刻の潮流計算の結果に基づいて求められる、配電系統の安定状態を保ったまま、より多くの電力を発電装置から配電系統に取り入れるために各時刻に必要な無効電力を、配電網に接続されている電気自動車から供給させ、かつ、電気自動車の各々の接続終了予定時刻及び支払い希望金額を満たすように、電気自動車の各々に対して、充電スケジュール及び各時刻の力率を決定することにより、無効電力制御装置を設置することなく、無効電力を有効に活用して、配電系統の安定状態を保ったまま、より多くの電力を発電装置から配電系統に取り入れることができる。
【0117】
また、電気自動車を配電網に接続し続けることがユーザにとっての利益となる仕組みを構築することができる。
【0118】
なお、上記各実施の形態では、バッテリー装置として、電気自動車を配電網に接続する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ハイブリッド自動車を配電網に接続するようにしてもよい。また、電気自動車やハイブリッド自動車以外であっても、バッテリー装置と充電制御装置があればよい。例えば、家庭用NASバッテリー(ナトリウム・硫黄電池)などの定置バッテリーや、電気自動車やハイブリッド自動車の交換用バッテリー、カーディーラーが顧客から回収した中古バッテリーを、充電制御装置を介して配電網に接続するようにしてもよい。また、レンタカー事業者で貸し出されずに待機中の電気自動車、ハイブリッド自動車や、交換バッテリーを、充電制御装置を介して配電網に接続するようにしてもよい。また、電気自動車充電ステーション事業者が持つ予備バッテリーを、充電制御装置を介して配電網に接続するようにしてもよい。
【0119】
また、配電網に接続されている電気自動車から、無効電力を供給する場合を例に説明したが、電気自動車から更に有効電力を配電網に供給するようにしてもよい。例えば、電気自動車を所有するユーザの意向によっては、緊急時に電力を放出するようにしてもよい。「緊急時」とは、近傍の電力市場で、消費電力が急増し、一時的に電力不足になっている状態のことである。この場合、ユーザは「緊急時に放出しても良い電力量」と、「そのときの受け取り価格」と、「オプション料金」を申告する。「オプション料金」とは、緊急時に供える約束をすることに対する受け取り対価である。「緊急時に放出しても良い電力量」の変わりに、「緊急時でも最低限残したい電力量」を申告しても良い。
【0120】
また、充電制御監視サーバは、自然エネルギー発電機を有する顧客について、「位置」、「売却希望電気料金」を取得するようにしてもよい。この場合、日射量又は風量の予測結果に基づいて、自然エネルギー発電量の予測を行い、自然エネルギー発電機を有する顧客が時刻tに供給可能な有効電力と、必要な無効電力を推定する。また、電気自動車を所有する顧客と、自然エネルギー発電機を有する顧客が近い位置(同じ配電フィーダ線など)に存在するとき、電気自動車を所有する顧客にとって、電力市場から電力を調達するより、自然エネルギー発電機を有する顧客から調達したほうが有利である状況が発生する可能性があるため、近くに存在する自然エネルギー発電機を考慮して、電気自動車に対する充電スケジュール及び力率を決定してもよい。