(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された用紙搬送機構に用いられるロール紙は、コンパクトで収納効率が高いが、その反面、ロール状に巻かれているため用紙部分に巻き癖(カール)がついてしまう。これにより、所定の長さに切断したレシート等が丸まってしまい、扱いにくく、見栄えが悪くなってしまう場合がある。このため、例えば、店舗等に設置される、クレジット決済用のレシートを発行するプリンタの場合には、客がレシートにサインをしやすいように、丸まってしまったレシートを店員が縦方向に半分に折って引っ張るなどして巻き癖を直してから、レシートを客に手渡すなどといった手間がかけられている。また、ロール紙は、ロール状に巻かれた用紙部分全てに一定の強さの巻き癖がついているわけではなく、ロール径によって巻き癖の強さが変化し、ロール径が小さくなるほど巻き癖が強くなる。このため、一定の力で巻き癖を矯正するだけでは、巻き癖の強さによって、矯正が不十分になったり、逆に、反対のカール(逆カール)がついてしまう場合がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、ロール紙から引き出された用紙部分の巻き癖を、巻き癖の強さに応じて矯正することができる用紙搬送機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を解決する本発明の用紙搬送機構は
、
長尺の用紙の一方側の面を内側にし他方側の面を外側にしてロール状に巻かれたロール紙から用紙部分を搬送方向に搬送する用紙搬送機構において、
前記ロール紙の外周面に当接し、該ロール紙を下方から支持する支持部と、
通過する前記用紙部分の前記他方側の面に接し、該用紙部分の巻き癖を矯正するしごき部と、
前記用紙部分を前記一方側から押さえ、前記しごき部で該用紙部分を屈曲させる第1押え部と、
前記支持部に支持されている前記ロール紙の前記外周面に当接し該ロール紙のロール径の変化に追従して動作するアームとを備え、
前記第1押え部は、前記ロール径が上限設定値より大きい期間では、前記アームの動作に関わらず前記用紙部分に非接触な状態で停止しており、該ロール径が該上限設定値未満の少なくとも一部の期間では、前記ロール径が小さくなるにつれて前記しごき部で屈曲した状態の該用紙部分の内角の大きさも小さくなるように、該用紙部分に接触した状態で前記一方側から前記他方側に向かって、該アームに連動して移動するものであることを特徴とする。
また、第1の用紙搬送機構は、長尺の用紙の一方側の面を内側にし他方側の面を外側にしてロール状に巻かれたロール紙から用紙部分を搬送する用紙搬送機構において、
通過する前記用紙部分の前記他方側の面に接し、該用紙部分の巻き癖を矯正するしごき部と、
前記用紙部分を前記一方側から押さえ、前記しごき部で該用紙部分を屈曲させる押え部と、
前記ロール紙の外周面に当接し該ロール紙のロール径の変化に追従して動作するアームとを備え、
前記押え部は、前記アームが動作している期間のうちの少なくとも一部の期間で、前記
ロール径が小さくなるにつれて前記しごき部で屈曲した状態の用紙部分の内角の大きさも小さくなるように、前記一方側から前記他方側に向かって、該アームに連動して移動するものであることを特徴とする。
【0007】
ここで、内角とは、前記用紙部分の、前記しごき部よりも上流側となる前記他方側の面と、該用紙部分の、該しごき部よりも下流側となる該他方側の面とで挟まれた角度である。また、前記アームは、前記ロール径が所定範囲の径である場合に限って、前記ロール紙の外周面に当接し前記ロール径の変化に追従して動作するものであってもよい。例えば、前記アームは、前記ロール径が所定の径よりも小さくなると、動作を停止するものであってもよい。
【0008】
第1の用紙搬送機構では、前記用紙部分が、前記押え部によって前記一方側から押さえられながら前記しごき部によってしごかれる。前記押え部は、前記アームに連動して、前記ロール径が小さくなるにつれて前記内角の大きさが小さくなるように移動する。ここで、前記しごき部によってしごかれ、該用紙部分の巻き癖が矯正される力は、前記内角が小さくなるほど強くなる。以下、前記しごき部によって前記用紙部分をしごき、該用紙部分の巻き癖を矯正する力を、矯正力と称することがある。
第1の用紙搬送機構によれば、前記ロール径が小さくなり巻き癖が強くなるにつれて、前記内角を小さくし、前記矯正力を強くすることができる。これにより、前記用紙部分を巻き癖の強さに応じて矯正することができる。
【0009】
また、
第1の用紙搬送機構において、前記押え部は、前記ロール径が上限設定値より大きい期間および該上限設定値より小さい下限設定値未満の期間では停止したものであり、該ロール径が該上限設定値以下であって且つ該下限設定値以上の期間では、該アームに連動して移動するものであることが好ましい。
【0010】
前記ロール径が大きいほど巻き癖が弱くなるため、所定のロール径より大きくなると矯正する必要がないほど巻き癖が弱くなる場合がある。このため、例えば、矯正する必要があるロール径の上限を前記上限設定値に設定することで、該ロール径が該上限設定値より大きい期間では、前記押え部の移動を停止させ、前記用紙部分に必要以上に矯正力を付与しない態様とすることもできる。また、前記ロール径が小さくなるほど巻き癖が強くなるが、前記押え部を移動させ、前記内角を小さくしすぎると、用紙部分にかかる摩擦負荷が過大になる等の問題が生じる場合がある。このため、前記下限設定値を定め、前記ロール径が該下限設定値未満になると前記押え部の移動を停止させ、該ロール径が該下限値未満になっても一定の矯正力を付与する態様としてもよい。こうすることで、用紙部分に過大な摩擦負荷がかかってしまう等の問題を防止することができる。また、用紙部分に必要以上に矯正力を与えてしまい、用紙部分に逆カールが発生してしまうことも防ぐことができる。
【0011】
さらに、
第1の用紙搬送機構において、前記押え部は、前記ロール径が前記上限設定値未満の接触設定値以下であって且つ前記下限設定値以上の期間を前記一部の期間として、前記ロール径が小さくなるにつれて前記内角の大きさも小さくなるように前記一方側から前記他方側に向けて移動するものであってもよい。
【0012】
こうすることで、前記ロール径が前記接触設定値より大きく前記上限設定値以下の期間(以下、不変期間と称する。)では、前記押え部は、前記アームに連動して移動するが、該押え部が移動しても前記内角の大きさは変わらない。すなわち、上記不変期間では、前記押え部は、前記内角の大きさが小さくなるように移動することはない。
【0013】
ここで、前記用紙部分の搬送が停止している待機状態では、該用紙部分が前記しごき部に接触しており、この状態が続くと該用紙部分における該しごき部に接触している箇所に屈曲癖がついてしまう場合がある。
【0014】
そこで、
第1の
用紙搬送
機構において、前記しごき部の、前記用紙部分を基準にして該しごき部とは反対側に設けられた、該用紙部分の一部を収容可能な収容領域と、
前記用紙部分を搬送方向の下流側にバックフィードさせ前記収容領域に該用紙部分をループ化させるバックフィード手段とを備えた態様としてもよい。
【0015】
前記バックフィード手段によって、前記収容領域に前記用紙部分をループ化させることで、該用紙部分にかかるテンションが開放され、該用紙部分が前記しごき部から離れるため、前記待機状態が続いても該用紙部分に屈曲癖がついてしまうことを防止できる。
【0016】
ここで、前記用紙部分に付与される矯正力の強さは、前記用紙部分を搬送する搬送速度によって異なり、この搬送速度を遅くするほど相対的に矯正力が強くなる。
【0017】
そこで、
第1の搬送装置において、前記用紙部分を搬送する搬送手段と、
前記ロール紙のロール径を検知する検知手段と、
前記搬送手段が前記用紙部分を搬送する搬送速度を前記検知手段で検知した前記ロール径に基づき制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記ロール径が所定の大きさよりも小さくなると前記搬送速度を遅くするものであってもよい。
【0018】
前記制御手段は、前記ロール径が小さくなるにつれて、前記搬送速度を連続的に遅くするものであってもよいし、該搬送速度を段階的に遅くするものであってもよい。
【0019】
前記ロール径が所定の大きさよりも小さくなり巻き癖が強くなると前記搬送速度を遅くすることによって、前記用紙部分に付与される矯正力を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の用紙搬送機構によれば、ロール紙から引き出された用紙部分の巻き癖を、巻き癖の強さに応じて矯正することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明の用紙搬送機構は、ロール紙から用紙部分を搬送する様々な機器に適用することができ、プリンタやファクシミリ装置はもちろん、印字や印刷等の機能を備えない機器にも適用することができる。初めに、本発明の用紙搬送機構の概念を
図1および
図2を用いて説明する。
【0023】
図1は、ロール紙から引き出された用紙部分の巻き癖(カール)を説明するための図であり、
図2は、本発明の用紙搬送機構10における、用紙部分Pの巻き癖を矯正する技術思想を概念的に示す図である。
【0024】
図1(a)に示すように、ロール紙Rは、長尺の用紙の一方側の面を内側にし、他方側の面を外側にして、ロール状に巻かれたものである。以下、用紙あるいは用紙部分Pの一方側の面を内面Piと称することがあり、他方側の面を外面Poと称することがある。ロール状に巻かれた用紙部分Pには巻き癖がつき、ロール紙Rから引き出され、図の矢印で示すように、所定の長さに切断された用紙部分Pは、内面Pi側を内側にして丸まってしまう。また、
図1(b)に示すように、ロール紙Rのロール径が小さくなると巻き癖が強くなり、切断された用紙部分Pが丸まる程度も大きくなる。
【0025】
図2に示すように、本発明の用紙搬送機構10は、しごき部S、上流側押え部F1、下流側押え部F2、アーム部材6を備えるものである。また、
図2では、細い直線の矢印で搬送方向を示すように、ロール紙Rから左斜め上方に用紙部分Pが搬送される。用紙部分Pが搬送される搬送経路には、搬送方向上流側から、上流側押え部F1、しごき部Sおよび下流側押え部F2が記載順に配置されている。しごき部Sは、用紙部分Pの外面Poに接している。以下、内面Pi側を一方側と称することがあり、外面Po側を他方側と称することがある。上流側押え部F1は、しごき部Sよりも搬送方向上流側に配置され、用紙部分Pを一方側から押さえるものである。また、下流側押え部F2は、しごき部Sよりも搬送方向下流側に配置され、用紙部分Pを一方側から押さえるものである。上流側押え部F1および下流側押え部F2は、本発明における押え部の一例に相当する。また、本発明における押え部は、上流側押え部F1および下流側押え部F2のうちのいずれか一方によって構成してもよい。
【0026】
アーム部材6は、ロール紙Rのロール径の変化に追従して動作するものである。アーム部材6が動作する態様は限定されるものではないが、
図2では、一端側がロール紙Rの外周面R1に当接し、円弧状の矢印で示すように、ロール径が小さくなるにつれて一端側が下方に回動する態様を例示している。上流側押え部F1は、不図示の連動機構によってアーム部材6の動作に連動するものであり、ロール紙Rのロール径が小さくなるにつれてアーム部材6が回動すると、上流側押え部F1は、アーム部材6に連動して一方側から他方側に向かって移動する。なお、上流側押え部F1に代えて、下流側押え部F2をアーム部材6に連動させる態様としてもよいし、上流側押え部F1と下流側押え部F2の双方をアーム部材6に連動させる態様としてもよい。
【0027】
用紙部分Pは、しごき部S、上流側押え部F1および下流側押え部F2によって、しごき部Sに接触する部分で所定角度に屈曲する。この屈曲する角度は、本発明における内角に相当し、用紙部分Pの、しごき部Sよりも上流側となる他方側の面と、用紙部分Pの、しごき部Sよりも下流側となる他方側の面とで挟まれた角度である。以下、本発明における内角に相当する角度をしごき角αと称する。用紙部分Pがしごき角αに屈曲した状態でしごき部Sを通過すると、しごき部Sによって用紙部分Pがしごかれ、用紙部分Pの巻き癖を矯正することができる。しごき部Sにしごかれることによって用紙部分Pに付与される矯正力は、しごき角αによって異なり、しごき角αが小さくなるにつれて矯正力は大きくなる。
【0028】
図2の二点鎖線で示すように、ロール紙Rのロール径が小さくなりアーム部材6が動作すると、上流側押え部F1は、不図示の連動機構によりアーム部材6に連動して一方側から他方側に向かって移動する。これにより、二点鎖線で示すように、しごき角αが小さくなり、矯正力を大きくすることができる。また、アーム部材6に連動して、下流側押え部F2を一方側から他方側に向かって移動させ、一点鎖線で示すようにしごき角αを小さくしてもよく、上流側押え部F1と下流側押え部F2の双方を一方側から他方側に向かって移動させ、二点鎖線および一点鎖線で示すようにしごき角αをより小さくしてもよい。さらに、しごき部Sを他方側から一方側に向けて付勢し、ロール紙Rのロール径が小さくなり、用紙部分Pが搬送方向に引っ張られた際に用紙部分Pにかかる搬送方向のテンションも小さくなると、しごき部Sが一方側に移動する態様を採用してもよい。これによって、破線で示すようにロール紙Rのロール径が小さくなるにつれてしごき角αをさらに小さくすることもできる。これらによって、ロール径が小さくなり用紙部分Pの巻き癖が強くなるほど、しごき角αを小さくすることで矯正力を大きくすることができ、用紙部分Pの巻き癖の強さに応じて矯正力を調整することができる。すなわち、上流側押え部F1および下流側押え部F2の少なくとも一方は、ロール紙Rのロール径が小さくなるにつれてしごき角も小さくなるように、一方側から他方側に向かって、アーム部材6に連動して移動するものである。
【0029】
また、しごき部Sが円弧状のものである場合には、しごき部Sの半径の大きさによっても矯正力は異なり、しごき部Sの半径が小さくなるにつれて矯正力は大きくなる。さらに、用紙部分Pを搬送する速度(搬送速度)によっても、矯正力は異なり、搬送速度が遅くなるにつれて矯正力は大きくなる。これらのため、上述したしごき角αの調整と併せて、しごき部Sの半径の大きさの設定や、搬送速度の調整を組み合わせることによって、矯正力を調整することもできる。以下、
図1および
図2を用いて説明した本発明の概念を元に、本発明をプリンタに適用した一実施形態を説明する。
【0030】
図3(a)は、本発明の一実施形態であるプリンタ1を、正面右斜め上方から見た斜視図であり、同図(b)は、同図(a)に示すプリンタ1を、背面左斜め上方から見た斜視図である。プリンタ1は、例えば、本体ケース、リヤーカバーおよびフロントカバーからなる筐体で覆われているが、
図3では、筐体を省略した内部構造を示している。
図4(a)は、
図3(a)に示すプリンタ1のA−A断面図であり、
図4(b)は、
図3(b)に示すプリンタ1のB−B断面図である。
【0031】
図3および
図4に示すプリンタ1は、長尺の感熱式の用紙がロール状に巻かれたロール紙Rを収容し、収容したロール紙Rの用紙部分を下側から引き出しながらその用紙に印字を行い、印字された用紙を切断するサーマルプリンタである。
図3(a)および
図4(a)では、ロール紙Rを収納した状態を示し、
図3(b)および
図4(b)では、ロール紙Rを取り外した状態を示している。また、
図3(a)および
図4(a)では、左斜め下方が前(正面側)であり、右斜め上方が後ろ(背面側)である。
図3(b)および
図4(b)では、左斜め上方が前(正面側)であり、右斜め下方が後ろ(背面側)である。以下、各部品がプリンタ1に組み付けらた状態を基準にして前後左右などの方向を用いることがある。
【0032】
図3および
図4に示すように、プリンタ1は、ペーパーホルダ2と、プラテンホルダ3を備えている。ペーパーホルダ2は、ロール紙Rを収容する収容部21を有するものであり、収容部21は、ロール紙Rを支持する支持部211と、一対の側壁部212,212を有している。また、ペーパーホルダ2には、印字ヘッド22が設けられている。プラテンホルダ3は、不図示のリヤーカバーの一部を構成するものであり、プラテンホルダ3には、
図4に示すように、プラテンローラ31、上流側ガイド部材32、下流側ガイド部材33およびアーム部材6が取り付けられている。本実施形態のプリンタ1では、不図示のリヤーカバーを開けた状態で、収容部21にロール紙Rをセットする。
図3(a)および
図4(a)では、ロール紙Rから引き出された用紙部分Pを破線で示しており、
図4(a)における、ロール紙Rから引き出された用紙部分Pの先端までの経路が用紙搬送経路になり、収容部21から用紙部分Pの先端に向かう方向が、本発明における搬送方向に相当する。なお、用紙部分Pの先端部分付近には、不図示の、リヤーカバーとフロントカバーによって形成される用紙排出口が形成されている。すなわち、ロール紙Rから用紙排出口までの経路が用紙搬送経路になり、収容部21から用紙排出口に向かう方向が、本発明における搬送方向に相当する。
【0033】
図4(a)に示すように、収容部21よりも搬送方向下流側部分には、
図2に示すしごき部Sを有するデカール部材5が設けられている。
図4(a)および同図(b)に示すように、デカール部材5は、左右方向に延在し、ペーパーホルダ2に固定されたベース部51と、このベース部51から上方に突出したリブ52を有している。このリブ52は、ベース部51と同様に左右方向に延在したものであり、
図4(b)に示すように、ベース部51とリブ52には、左右方向に所定の間隔をあけて補強部521が設けられている。また、リブ52の先端部分にしごき部Sが設けられている。
【0034】
プラテンローラ31は、左右方向に延在したものであり、印字ヘッド22に対して対向配置されている。また、プラテンローラ31には、不図示の搬送モータによって発生した回転力をプラテンローラ31に伝えるためのプラテンギヤ311が設けられている。さらに、プラテンローラ31および印字ヘッド22の搬送方向下流側には、
図5を用いて後述する、カッタユニット23および固定刃35が設けられている。
【0035】
本実施形態のプリンタ1では、不図示のリヤーカバーを開けた状態で収容部21にロール紙Rをセットした後、リヤーカバーを閉める前に、ロール紙Rの用紙部分Pの先端部をプリンタ1外部に引き出しておく。この状態でリヤーカバーを閉めると、プラテンローラ31が、印字ヘッド22に適宜な圧力で接触する。これにより、ロール紙Rから引き出された用紙部分Pがプラテンローラ31と印字ヘッド22によって挟み込まれる。挟み込まれた用紙部分Pは、プラテンローラ31が回転することによって、プラテンローラ31と印字ヘッド22との摩擦作用により搬送方向に搬送される。なお、本実施形態では、プラテンローラ31を逆転させることによって、用紙部分Pを搬送方向上流側にバックフィードさせることもできる。また、印字ヘッド22によって、用紙部分Pに印字が施され、カッタユニット23(
図5等参照)が駆動して用紙部分Pが所定長さに切断される。
【0036】
プラテンローラ31の搬送方向上流側には、下流側ガイド部材33が設けられている。この下流側ガイド部材33は、
図2に示す下流側押え部F2を有するものであり、本実施形態では、下流側ガイド部材33は、プラテンホルダ3に固定されている。下流側ガイド部材33の搬送方向上流側には、上流側ガイド部材32が設けられている。この上流側ガイド部材32は、
図2に示す上流側押え部F1を有するものである。上流側ガイド部材32は、左右方向に延在した軸体34に回動自在に取り付けられている。これにより、上流側ガイド部材32は、軸体34を中心にして回動可能である。また、軸体34には、アーム部材6も回動可能に取り付けられている。アーム部材6は、前後方向に円弧状に湾曲し表面に格子状の補強リブが設けられた板状のものであり、軸体34に取付けられた一端側に対し、他端側部分には、接触ローラ61が設けられている。また、軸体34には、軸体34にそれぞれ挿通された状態で左右方向に並べて配置された3つのトーションばねが設けられている。これら3つのトーションばねのうち、左右方向中央に配置されたトーションばねを第1トーションばね341と称し、左右方向両側に配置された2つのトーションばねそれぞれを第2トーションばね342と称する。上流側ガイド部材32は、左側から見た場合に、第1トーションばね341によって軸体34を中心に反時計回りに付勢されている。すなわち、上流側押え部F1が、
図2における一方側に向けて付勢されている。これにより、上流側押え部F1は、用紙部分Pから離れる方向に付勢されている。一方、アーム部材6は、左側から見た場合に、2つの第2トーションばね342によって軸体34を中心に時計回りに付勢され、接触ローラ61がロール紙Rの外周面R1に当接している。アーム部材6は、ロール紙Rのロール径が変化しても接触ローラ61がロール紙Rの外周面R1に当接した状態が保たれ、ロール紙Rのロール径の変化に追従して、左側から見てアーム部材6が時計回りに回動する。
【0037】
図5は、ロール紙Rのロール径の変化に伴いアーム部材6が時計回りに回動する様子を説明するための図であり、
図5では、しごき角αは変化していない。また、
図6は、ロール紙Rのロール径が変化することによって用紙部分Pのしごき角αが変化する様子を説明するための図である。
図5および
図6では、
図4(a)に示すプリンタ1を左側から見た様子を示している。以下、上流側ガイド部材32およびアーム部材6の回動方向と付勢方向については、左側から見た方向を基準にして説明する。また、
図5および
図6では、ロール紙Rのロール径が小さくなっていく様子を段階的に示し、用紙部分Pは、プリンタ1の部材と区別しやすいように破線で示している。なお、
図5および
図6では、プラテンローラ31と印字ヘッド22の搬送方向下流側に設けられた、カッタユニット23および固定刃35を示している。なお、カッタユニット23は、可動刃231を有し、この可動刃231を固定刃35に対して往復動させるものである。
【0038】
ロール紙Rから引き出された用紙部分Pが、プラテンローラ31と印字ヘッド22によって挟み込まれた後、カッタユニット23によって切断され、不図示の用紙排出口から排出されるまでが用紙部分Pの搬送経路になり、ロール紙Rから用紙排出口に向かう方向が搬送方向になる。前述したように、ロール紙Rのロール径が小さくなるにつれてアーム部材6が軸体34を軸として時計回りに回動していくと、やがてアーム部材6が上流側ガイド部材32に係合し、さらにアーム部材6が時計回りに回動すると、上流側ガイド部材32はアーム部材6に連動して、第1トーションばね341(
図4等参照)の付勢力に抗して時計回りに回動する。
【0039】
図5(a)では、アーム部材6が上流側ガイド部材32に係合する前の様子を円で囲んで拡大して示し、
図5(b)では、アーム部材6が上流側ガイド部材32に係合した様子を円で囲んで拡大して示している。
図5(a)および同図(b)で円で囲んで示すように、上流側ガイド部材32は、軸体34側に被係合部321を有し、アーム部材6は、上流側ガイド部材32の被係合部321に係合する係合部62を有している。また、上流側ガイド部材32の前側部分にはストッパ323が設けられている。
【0040】
図5(a)では、ロール紙Rのロール径が最大の場合の様子を示し、この状態では、アーム部材6の係合部62は、上流側ガイド部材32の被係合部321に係合していない。このため、上流側ガイド部材32は、第1トーションばね341(
図4参照)によって反時計回りに付勢され、第1押え部F1が用紙部分Pから離間した状態になっている。これにより、ロール紙Rから引き出された用紙部分Pは、デカール部材5のしごき部Sで屈曲し、下流側ガイド部材33の第2押え部F2によって一方側から押さえられた後、プラテンローラ31と印字ヘッド22によって挟み込まれている。ここで、用紙部分Pのしごき角α1は、110度〜120度程度が好ましい範囲である。しごき角α1が120度を超えると、矯正力が不十分になってしまう傾向があり、しごき角α1が110度未満になると、矯正力が強くなりすぎて逆カールが生じてしまうといった問題が生じてしまう傾向がある。なお、
図5および
図6では、模式的に示しており、図に示すしごき角αの角度は、本発明における好ましい角度に必ずしも一致していない。この状態で、用紙部分Pが搬送方向に搬送されると、しごき部Sによって、しごき角α1に応じた矯正力が用紙部分Pに付与される。
【0041】
ロール紙Rのロール径が小さくなるにつれてアーム部材6が時計回りに回動していくと、
図5(b)に示すように、アーム部材6の係合部62は、上流側ガイド部材32の被係合部321に係合する。以下、
図5(b)に示す、アーム部材6の係合部62が、上流側ガイド部材32の被係合部321に係合した時点におけるロール紙Rのロール径を、上限設定値と称する。ロール径が上限設定値になっても、第1押え部F1が用紙部分Pから離間した状態が継続する。
【0042】
さらにロール紙Rのロール径が小さくなると、アーム部材6がさらに時計回りに回動し、このアーム部材6に係合した上流側ガイド部材32も、アーム部材6に連動して時計回りに回動する。これにより、
図6(a)に示すように、上流側ガイド部材32の第1押え部F1が、用紙部分Pの内面Piに接触する。以下、
図6(a)に示す、上流側ガイド部材32の第1押え部F1が、用紙部分Pの内面Piに接触した時点におけるロール紙Rのロール径を、接触設定値と称する。
【0043】
ロール紙Rは、ロール径が小さくなっていくと収容部21の支持部211の傾斜等によって位置がやや変化するが、
図5(a)に示す、ロール径が最大の状態から、
図6(a)に示す接触設定値までの期間では、しごき角α1は略一定で変わらない。しかしながら、ロール径が最大の状態と、ロール径が上限設定値の状態においては、上流側ガイド部材32の第1押え部F1が、用紙部分Pの内面Piに接触しておらず、用紙部分Pは、下流側ガイド部材33の第2押え部F2と、デカール部材5のしごき部Sとの二点で支持されている。一方、ロール径が接触設定値の状態では、上流側ガイド部材32の第1押え部F1が、用紙部分Pの内面Piに接触し、用紙部分Pは、下流側ガイド部材33の第2押え部F2と、デカール部材5のしごき部Sと、上流側ガイド部材32の第1押え部F1の三点で支持されている。このため、しごき角α1の大きさは変わらなくても、用紙部分Pを二点で支持する、ロール径が最大の状態およびロール径が上限設定値の状態に比べて、用紙部分Pを三点で支持する、ロール径が接触設定値の状態の方が、矯正力が強くなる。このように、本実施形態においては、しごき角αの大きさの変化による矯正力の調整の他に、用紙部分Pを支持する支点数を変えることによっても矯正力を調整することができる。さらに、
図5(b)に示す、アーム部材6と上流側ガイド部材32が係合した状態から、
図6(a)に示す、上流側ガイド部材32の第1押え部F1が、用紙部分Pの内面Piに接触する状態までの間に、ある程度の遊びが設けられている。このため、アーム部材6と上流側ガイド部材32が係合する位置が多少ばらついても、上流側ガイド部材32の第1押え部F1が、用紙部分Pの内面Piに接触する位置、即ちしごき開始位置を狙った角度に設定することが容易になる。
【0044】
また、用紙部分Pは、ロール径が大きいほど巻き癖が弱くなるため、所定のロール径より大きいとそれほど矯正する必要がない場合がある。このため、矯正する必要が生じるロール径の上限を、例えば上限設定値として設定し、ロール径が上限設定値より大きい期間では、第1押え部F1の移動を停止させ、ロール径が小さくなっても上限設定値に達するまでは用紙部分Pに付与する矯正力を強くしない態様とすることもできる。
【0045】
さらにロール紙Rのロール径が小さくなると、アーム部材6に連動して上流側ガイド部材32も時計回りに回動し、上流側ガイド部材32の第1押え部F1によって用紙部分Pの内面Piが押えられる。すなわち、用紙部分Pが、第1押え部F1によって、一方側(
図2参照)から押えられる。これにより、しごき角αが小さくなり、しごき部Sによって用紙部分Pに付与される矯正力が強くなる。
【0046】
さらにまたロール紙Rのロール径が小さくなると、アーム部材6に連動して上流側ガイド部材32も時計回りに回動することで、しごき角αが小さくなっていく。やがて、
図6(b)に示すように、上流側ガイド部材32のストッパ323が、下流側ガイド部材33に当接し、上流側ガイド部材32とアーム部材6の回動が停止する。以下、
図6(b)に示す、下流側ガイド部材33に当接し、上流側ガイド部材32とアーム部材6の回動が停止した時点におけるロール紙Rのロール径を、下限設定値と称する。
図6(a)に示す接触設定値から、
図6(b)に示す下限設定値までの期間では、ロール径が小さくなるにつれてしごき角α1からしごき角α2まで小さくなり、この結果、しごき部Sによって用紙部分Pに付与される矯正力は大きくなる。ここで、用紙部分Pのしごき角α2は、80度〜90度程度が好ましい範囲である。しごき角α2が90度を超えると、矯正力が不十分になってしまう場合があり、しごき角α2が80度未満になると、矯正力が強くなりすぎてしまう場合がある。
【0047】
下流側ガイド部材33は、プラテンホルダ3(
図4参照)に固定されたものであるため、上流側ガイド部材32とアーム部材6は下流側ガイド部材33に阻止されて、
図6(b)に示す状態よりも時計方向に回動することはない。このため、下限設定値の状態におけるしごき角α2が最も小さくなり、
図6(c)に示すように、下限設定値からロール紙Rのロール径がさらに小さくなっても、しごき角α2の大きさは変わらない。すなわち、
図6(b)に示す下限設定値未満の期間では、しごき角α2が変化せず、この結果、しごき部Sによって用紙部分Pに付与される矯正力も一定になる。用紙部分Pは、ロール径が小さくなるほど巻き癖が強くなるが、しごき角αを小さくしすぎると、用紙部分Pにかかる摩擦負荷が過大になる等の問題が生じる場合がある。また、必要以上に矯正力が付与されてしまい、用紙部分Pに逆カールが発生してしまう場合がある。本実施形態では、下限設定値を定め、ロール径が下限設定値以下になると第1押え部F1の移動を停止させることで、用紙部分Pに過大な摩擦負荷がかかってしまう等の問題を防止し、逆カールの発生も抑制している。なお、しごき角αは、用紙の腰や厚さ、坪量、あるいは温度や湿度等の環境条件などによって調整すればよい。
【0048】
本実施形態のプリンタ1においては、用紙部分Pの搬送、用紙部分Pへの印字等は、マイクロコンピュータで構成されるプリンタ制御部70によって制御される。
【0049】
図7は、
図3に示すプリンタ1の回路構成を表すブロック図である。
【0050】
図3に示すプリンタ1の内部には、
図6に示すようにプリンタ制御部70が設けられている。プリンタ制御部70には、プラテン制御回路74、印字ヘッド制御回路75、カッタ制御回路76およびロール径センサ77それぞれが接続されている。プリンタ制御部70は、CPU71、RAM72およびROM73を備えている。ROM73には、プラテン制御回路74を制御するプラテン制御プログラム、印字ヘッド制御回路75を制御する印字ヘッド制御プログラム、カッタ制御回路76を制御するカッタ制御プログラム等の各種プログラムが記憶されている。また、ROM73には、ロール紙Rのロール径とプラテンローラ31における正転方向の回転速度との対応データが記憶されている。この対応データは、あらかじめ試験的に、ロール紙Rのロール径に対するプラテンローラ31の回転速度を求め、ロール紙Rのロール径とプラテンローラ31の回転速度とが一対一で定められたものである。対応データは、例えば、ロール紙Rのロール径が小さくなると、プラテンローラ31における正転方向の回転速度が低下し、用紙部分Pの搬送速度が遅くなるように設定されている。なお、ロール紙Rのロール径とプラテンローラ31の回転速度との関係が数式で求められる場合には、ロール紙Rのロール径に基づき、プラテンローラ31の回転速度を計算によって求めてもよい。
【0051】
プラテン制御回路74は、プラテンローラ31を回転させる不図示の搬送モータに接続している。印字ヘッド制御回路75は、
図5に示す印字ヘッド22に接続し、カッタ制御回路76は、同じく
図5に示すカッタユニット23に接続している。
【0052】
プラテン制御回路74は、プラテン制御プログラムに基づくCPU71の制御に従って、搬送モータを駆動させ、搬送モータを正転または逆転させる。搬送モータが正転すると、プラテンローラ31も正転し、これにより、用紙部分Pが、搬送方向に搬送される。一方、搬送モータが逆転すると、プラテンローラ31も逆転し、これにより、用紙部分Pが、搬送方向とは逆方向にバックフィードされる。
【0053】
印字ヘッド制御回路75は、印字ヘッド制御プログラムに基づくCPU71の制御に従って、印字ヘッド22に用紙部分Pへの印字動作を行わせるものである。印字ヘッド22は、CPU71の制御に従って複数の発熱素子を選択的に発熱させることで、発熱素子に接した用紙部分Pに印字を施すものである。
【0054】
カッタ制御回路76は、カッタ制御プログラムに基づくCPU71の制御に従って、カッタユニット23の可動刃231を駆動させるものである。可動刃231が駆動すると、可動刃231と固定刃35によって用紙部分Pが切断される。
【0055】
ロール径センサ77は、ロール紙Rのロール径を検出するものである。本実施形態では、ロール径センサ77として、
図3に示す、収容部21の側壁部212に設けた、不図示の反射型センサを用いている。なお、反射型センサに代えて、機械式のスイッチ等を用いてもよい。
【0056】
次いで、
図7に示すプリンタ制御部70によって行われるメインプログラムの動作を説明する。
【0057】
このメインプログラムは、プリンタ1の電源投入によってスタートする。初めに、プリンタ制御部70のCPU71は、印字指令が発生したと判定すると、搬送モータを駆動しプラテンローラ31の回転を開始するとともに印字ヘッド22によって用紙部分Pへの印字を開始する。プラテンローラ31が回転すると、用紙部分Pは搬送方向に搬送され、しごき部Sによってしごかれることで巻き癖が矯正される。ここで前述したように、ロール紙Rのロール径が、
図6(a)に示す接触設定値以下であり、同図(b)に示す下限設定値以上の期間では、ロール径が小さくなり用紙部分Pの巻き癖が強くなるほどしごき角αが小さくなり、これによって矯正力が強くなる。さらに、本実施形態では、CPU71は、ロール径センサ77によって測定したロール紙Rのロール径に基づき、プラテンローラ31の回転が、対応データで決定される回転速度になるように搬送モータを駆動する。これにより、ロール紙Rのロール径が小さくなり用紙部分Pの巻き癖が強くなるほど、搬送速度を遅くして矯正力を強くしている。これらしごき角と搬送速度の調整によって、用紙部分Pの巻き癖の強さに応じて矯正力を調整することができる。
【0058】
印字ヘッド22による印字が終了した後、CPU71は、用紙部分Pの搬送を停止する。次いで、CPU71は、カッタユニット23の可動刃231を駆動させる。これにより、用紙部分Pは、所定長に切断される。用紙部分Pの搬送が終了してから次の用紙部分Pの搬送が所定時間実施されない場合には、CPU71は、搬送モータを駆動しプラテンローラ31を逆転させることによって用紙部分Pをバックフィードさせる。なお、CPU71は、用紙部分Pの切断を実施する都度、用紙部分Pをバックフィードさせてもよい。
【0059】
図8(a)は、
図6(b)の円で囲んだA部を拡大して示す図であり、
図8(b)は、同図(a)に示す用紙部分をバックフィードさせた様子を示す図である。
【0060】
図8(a)および同図(b)に示すように、デカール部材5におけるしごき部Sの上方、すなわち用紙部分Pを基準にしてしごき部Sとは反対側には、収容領域Aが設けられている。
図8(a)に示す状態から用紙部分Pをバックフィードさせると、同図(b)に示すように、しごき部Sに接触していた部分を含む用紙部分Pが、収容領域Aに弛んで丸まった状態になってループ化する。これにより、用紙部分Pにかかるテンションが開放され、用紙部分Pがしごき部Sから離れるため、待機状態が続いても用紙部分Pに屈曲癖がついてしまうことを防止できる。
【0061】
次いで、これまで説明してきたプリンタ1の変形例について説明する。以下の変形例の説明では、これまで説明してきたプリンタ1との相違点を中心に説明し、これまで説明した構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号を付して説明し、重複する説明は省略することがある。
【0062】
図9および
図10は、
図5および
図6に示すプリンタ1の構成が異なる第1変形例を示す図であり、
図9(a)から
図10(b)にかけてロール紙Rのロール径が徐々に小さくなる様子を示している。
【0063】
図9および
図10に示すように、本変形例では、デカール部材5は、ダンパ53と、しごき部Sを有するシャフト54を有している。また、ダンパ53は、バネ533を備えている。
図9(a)では、ダンパ53とシャフト54を左斜め前方から見た様子を円で囲んで拡大して示している。ダンパ53は、左右方向に長い板状の部材であり、搬送方向下流側(前側)の上端側部分には、その左右方向における、両端部分と中央部分の3箇所にツメ部532が設けられ、これらツメ部532の間にはそれぞれ切欠部531が形成されている。シャフト54は金属製のものであり、本実施形態では、径が約2mmのものを採用している。また、シャフト54における、ツメ部532に対応する箇所には、径を1.7mm程度に絞った縮径部541が形成されている。シャフト54は、その縮径部541がツメ部532にはめ込まれることで、ダンパ53に対して回動自在に取り付けられている。なお、シャフト54は、ダンパ53における左右方向の両端部にEリング等によって固定してもよい。支持部211よりも搬送方向下流側にはダンパ設置部2111が設けられ、ダンパ53は、搬送方向上流側の端部が、紙面と直交する方向に延在した不図示のヒンジ部材によってダンパ設置部2111に取り付けられたものである。これにより、ダンパ53は、ダンパ設置部2111に回動自在に設けられている。また、ダンパ設置部2111よりも搬送方向下流側にバネ収容部2112が設けられ、このバネ収容部2112にバネ533が収容されている。ダンパ53は、バネ533によって一方側(
図2参照)に向けて付勢され、これによってしごき部Sを有するシャフト54も一方側(
図2参照)に向けて付勢されている。用紙部分Pが搬送方向に搬送されると、用紙部分Pにかかる搬送方向のテンションの強さに応じて、ダンパ53は沈み込む。すなわち、ロール径が大きく、用紙部分Pにかかる搬送方向のテンションが強い場合には、ダンパ53が大きく沈み込む一方、ロール径が小さくなり、用紙部分Pにかかる搬送方向のテンションが弱くなるにつれて、ダンパ53の沈み込む量が減少する。これによって、ロール径の大きさに応じてしごき角αの大きさを調整することができる。さらに、ロール紙Rのロール径が大きい場合や搬送初動時の搬送負荷が軽減され、プラテンローラ31や駆動系部品の劣化損傷、搬送モータにかかる負荷等を軽減することができる。また、シャフト54は、ダンパ53に対して回転自在であるため、シャフト54の摩耗を抑えることができるとともに、用紙部分Pの摩擦負荷を軽減することもできる。
【0064】
さらに、本変形例では、左側の側壁部212の上端部分には、センサ用の基板2121が設けられ、この基板2121に2つのロール径センサ77,77が設けられている。基板2121は、ロール径センサ77,77が、側壁部212よりも左右方向における外側に位置するように側壁部212に取り付けられている。これにより、ロール径センサ77,77と、ロール紙Rとの干渉が防止される。これらロール径センサ77,77は、透過型センサで構成され、アーム部材6の右側縁部には、ロール径センサ77,77における、投光器と受光器との間を遮蔽可能な遮蔽板63が設けられている。
【0065】
図9(a)は、ロール紙Rのロール径が最大の場合の様子を示しており、上流側ガイド部材32の上流側押え部F1は、用紙部分Pに接触していない。さらに、用紙部分Pが搬送方向に搬送されると、ロール紙Rの重量によるバックテンションで、用紙部分Pに搬送方向のテンションが強くかかるためダンパ53は大きく沈み込み、しごき角αが大きくなる。この結果、用紙部分Pに付与される矯正力は小さくなる。また、ロール径センサ77は、2つとも遮蔽板63を検出しておらず、用紙部分Pの搬送速度も変化しない。
【0066】
図9(b)に示すように、ロール紙Rのロール径が小さくなっていくと、アーム部材6が上流側ガイド部材32と係合する。これにより上流側ガイド部材32がアーム部材6に連動し、上流側ガイド部材32の第1押え部F1が用紙部分Pの内面Piに接触する。用紙部分Pが搬送方向に搬送されると、ロール紙Rのロール径が小さくなった分、
図9(a)に示す状態に比べて、用紙部分Pにかかる搬送方向のテンションが弱まり、ダンパ53が沈み込む量が減少する。その結果、
図9(a)に示す状態に比べて、しごき角αが小さくなり、用紙部分Pに付与される矯正力が強くなる。また、アーム部材6の遮蔽板63は、一方側のロール径センサ77の検知領域を遮蔽した状態になっている。
図9(b)では、アーム部材6の遮蔽板63が、一方側のロール径センサ77の検知領域を遮蔽した様子を、左斜め後方から見た斜視図を円で囲んで示している。一方側のロール径センサ77が遮蔽板63によって遮蔽されることにより、一方側のロール径センサ77が検知状態になり、用紙部分Pの搬送速度をやや遅くして、用紙部分Pに付与される矯正力をやや強めている。
【0067】
図10(a)に示すように、ロール紙Rのロール径がさらに小さくなると、上流側ガイド部材32の第1押え部F1が用紙部分Pの内面Piを一方側(
図2参照)から押え、それに加えて、用紙部分Pが搬送される際にダンパ53が沈み込む量もより減少する。その結果、
図9(b)に示す状態に比べて、しごき角αが小さくなり、用紙部分Pに付与される矯正力が強くなる。なお、一方側のロール径センサ77のみが検知した状態に変化はないため、用紙部分Pの搬送速度は変わらない。
【0068】
図10(b)に示すように、ロール紙Rのロール径がまたさらに小さくなると、上流側ガイド部材32の第1押え部F1が用紙部分Pの内面Piを一方側(
図2参照)から押える量が増加し、上流側ガイド部材32のストッパ323が下流側ガイド部材33に当接する。また、用紙部分Pが搬送される際にダンパ53が沈み込む量もさらに減少するため、しごき角αがより小さくなり、
図10(a)に示す状態に比べて矯正力が強くなる。また、アーム部材6の遮蔽板63は、2つのロール径センサ77,77の検知領域を遮蔽し、両方のロール径センサ77が検知状態になっている。このため、用紙部分Pの搬送速度をさらに遅くし、用紙部分Pに付与される矯正力をさらに強めている。なお、本変形例では、2個のロール径センサ77を用いて用紙部分Pの搬送速度を3通りに変化させているが、1個のロール径センサ77を用いて搬送速度を2通りに変化させてもよいし、3個以上のロール径センサ77を用いて搬送速度を4通り以上に変化させてもよい。
【0069】
図11は、
図9および
図10に示すバネ収容部2112の構成が異なる第2変形例を示す図である。
【0070】
図11(a)に示すように、第2変形例のバネ収容部2112は、壁部2112aと、バネ受け底部2112bを有している。バネ受け底部2112bは、バネ533を受ける部分であり、紙面と直交する方向に延在したヒンジ部材2112cによって壁部2112aの下端部分に回動自在に取り付けられている。
図11(b)に示すように、本変形例では、ヒンジ部材2112cを軸にして、バネ受け底部2112bの搬送方向上流側の部分を、図に円弧状の太い矢印で示すように時計回りに回動させることができる。これにより、バネ533の下端部の位置が下方に移動しバネ533が伸びるため、バネ533の付勢力が弱まり、ダンパ53が沈み込みやすくなる。この結果、用紙部分Pにかかる搬送方向のテンションが同じ強さであってもしごき角αが大きくなり、矯正力を弱めることができる。本変形例では、
図11(a)に示す状態のしごき角αが90度程度であるのに対し、同図(b)に示す状態のしごき角αが115度程度に大きくなっている。このように、本変形例では、ロール紙Rのロール径の大きさによる矯正力の調整と併せて、バネ533の下端部の位置を下方に移動させることで、用紙の紙厚(厚紙か薄紙か)や紙種、あるいは温度や湿度等の使用環境による巻き癖の度合い等により、矯正力をより細かく調整することができる。なお、バネ受け底部2112bの回動は、手動レバー等を設け手動で行ってもよいし、ソレノイド等によって回動させる態様を採用することもできる。
【0071】
以上説明したように本実施形態の用紙搬送機構10およびプリンタ1によれば、ロール紙から引き出された用紙部分の巻き癖を、巻き癖の強さに応じて矯正することができる。
【0072】
本発明は上述の実施の形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、本実施形態では、ロール紙Rの下側から用紙部分Pを引き出す態様を例に挙げて説明しているが、ロール紙Rの上側から用紙部分Pを引き出し、例えば、下方に向けてしごき部Sを付勢する態様を採用してもよい。また、本実施形態では、上流側押え部F1と下流側押え部F2を備えた態様を例に挙げて説明したが、いずれか一方のみを備える態様としてもよい。また、上流側押え部F1と下流側押え部F2も、しごき部Sと同様に、回転自在なシャフトによって構成してもよい。
【0073】
なお、以上説明した各実施形態や各変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を、他の実施形態や他の変形例に適用してもよい。