特許第6287730号(P6287730)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6287730
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】物品保管設備
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/137 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
   B65G1/137 A
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-197408(P2014-197408)
(22)【出願日】2014年9月26日
(65)【公開番号】特開2016-69104(P2016-69104A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2016年11月28日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 納品日 平成26年3月26日 納品場所 成田国際空港株式会社(千葉県成田市成田国際空港内(成田市古込字古込1−1)) [刊行物等] 発行者名 株式会社ダイフク 広報部 刊行物名 DAIFUKU NEWS 号数 209 発行年月 平成26年8月
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】松本 浩一
【審査官】 中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−151315(JP,A)
【文献】 特開2000−085923(JP,A)
【文献】 特開平08−077278(JP,A)
【文献】 特開平09−048508(JP,A)
【文献】 特開2002−002911(JP,A)
【文献】 特開2005−206268(JP,A)
【文献】 特開平05−008808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/137
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の物品を保管する保管部と、
前記保管部に対して物品を入庫及び出庫する入出庫装置と、
前記保管部に保管される物品の入庫時及び在庫数を管理して、入庫要求及び出庫要求に基づいて前記入出庫装置の入庫作動及び出庫作動を制御する管理制御部と、を備え、
前記管理制御部は、前記保管部から物品を出庫するにあたり前記保管部に最小在庫数の物品を保管しておくように前記入出庫装置の出庫作動を制御するように構成された物品保管設備であって、
前記保管部には、複数の物品を保管する保管領域として第1保管領域及び第2保管領域の少なくとも二つの異なる保管領域が設定され、
前記第1保管領域の許容在庫数は、前記最小在庫数より大きく、
前記管理制御部は、前記入庫要求に基づいて前記保管部に物品を入庫する場合に、前記第1保管領域の在庫数が前記最小在庫数より多くなることを許容する形態で物品を入庫するように、前記入出庫装置の入庫作動を制御するように構成され、かつ、前記出庫要求に基づいて前記保管部から物品を出庫する場合において前記第1保管領域の在庫数が前記最小在庫数より多いときは、前記保管部に保管されている物品から前記第1保管領域に保管されている物品のうち入庫時が新しい順に前記最小在庫数の物品を除いた、残りの物品から出庫するように前記入出庫装置の出庫作動を制御するように構成されている物品保管設備。
【請求項2】
前記管理制御部は、前記入庫要求に基づいて前記保管部に物品を入庫する場合に、前記第1保管領域の在庫数が前記許容在庫数以下でかつ前記最小在庫数より大きい値に設定された最大在庫数に達するまで前記第1保管領域に優先して入庫するべく、前記入出庫装置の入庫作動を制御するように構成されている請求項1に記載の物品保管設備。
【請求項3】
前記保管部は、複数の種別の物品を保管し、
前記複数の種別の物品の夫々について前記最小在庫数及び前記最大在庫数が設定され、
前記第1保管領域が前記複数の種別により共用され、
前記複数の種別の夫々についての前記最大在庫数の合計が前記第1保管領域の前記許容在庫数以下になるように前記複数の種別の夫々についての前記最大在庫数が設定されている請求項2に記載の物品保管設備。
【請求項4】
前記管理制御部は、前記出庫要求として非常時に発生される非常出庫要求に基づいて前記保管部から物品を出庫する場合は、前記第1保管領域の在庫数が前記最小在庫数より少なくなることを許容する形態で物品を出庫するように、前記入出庫装置の入庫作動を制御するように構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の物品保管設備。
【請求項5】
前記保管部は、少なくとも一つ以上の物品を収納する収納部が上下方向に複数段且つ棚横幅方向に複数列配置された物品収納棚にて構成され、
前記物品収納棚における最下段の収納部から設定段数までの複数段に属する複数の前記収納部が前記第1保管領域に設定され、
前記物品収納棚における前記第1保管領域に属さない複数の前記収納部が前記第2保管領域に設定されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の物品保管設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の物品を保管する保管部と、前記保管部に対して物品を入庫及び出庫する入出庫装置と、前記保管部に保管される物品の入庫時及び在庫数を管理して、入庫要求及び出庫要求に基づいて前記入出庫装置の入庫作動及び出庫作動を制御する管理制御部と、を備え、前記管理制御部は、前記保管部から物品を出庫するにあたり前記保管部に最小在庫数の物品を保管しておくように前記入出庫装置の出庫作動を制御するように構成された物品保管設備に関する。
【背景技術】
【0002】
このような物品保管設備に関連する従来技術として、特許文献1には、入出庫装置により保管部に入庫された物品の在庫数が最低在庫数となるように在庫数を確保する点が記載されている。特許文献1の物品保管設備では、保管部には複数の種別の物品が保管され、ある種別の在庫数が当該種別の最小在庫数に達していない場合に、不足分の空き容量を確保するように他の種別の入庫を制限するようになっている。
物品保管設備で保管する物品の属性によっては、保管部に最小在庫数の物品を保管しておくことが求められる場合がある。例えば、ある突発的な事象が発生した場合に設定数量の物品(例えば、設備資材や緊急食糧など)を出荷することができるように、保管部に緊急用に最小在庫数の物品を保管しておく物品保管設備がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−151315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように保管部に緊急用に最小在庫数の物品を保管しておく物品保管設備においては、日常的に入出庫される物品が保管される保管領域と、緊急用に最小在庫数だけ確保しておくべき物品が保管される保管領域とが、別の保管領域に設定された場合、緊急事態が長期間にわたって発生しないと、緊急用に最小在庫数の物品を確保している保管領域からの物品の出庫が長期間行われないことになる。そのため、保管期間の長期化に伴い最小在庫数の物品の品質が劣化することになり、緊急用の最小在庫数の物品のうち一部又は全部を出庫した場合に、品質が劣化した物品が出庫されることになり、出庫後の物品の使用に支障をきたす恐れがある。
【0005】
そこで、最小在庫数の物品を保管しつつ、それらの物品が経年劣化することを防止できる物品保管設備が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る物品保管設備の特徴構成は、複数の物品を保管する保管部と、前記保管部に対して物品を入庫及び出庫する入出庫装置と、前記保管部に保管される物品の入庫時及び在庫数を管理して、入庫要求及び出庫要求に基づいて前記入出庫装置の入庫作動及び出庫作動を制御する管理制御部と、を備え、前記管理制御部は、前記保管部から物品を出庫するにあたり前記保管部に最小在庫数の物品を保管しておくように前記入出庫装置の出庫作動を制御するように構成された物品保管設備において、
前記保管部には、複数の物品を保管する保管領域として第1保管領域及び第2保管領域の少なくとも二つの異なる保管領域が設定され、前記第1保管領域の許容在庫数は、前記最小在庫数より大きく、前記管理制御部は、前記入庫要求に基づいて前記保管部に物品を入庫する場合に、前記第1保管領域の在庫数が前記最小在庫数より多くなることを許容する形態で物品を入庫するように、前記入出庫装置の入庫作動を制御するように構成され、かつ、前記出庫要求に基づいて前記保管部から物品を出庫する場合において前記第1保管領域の在庫数が前記最小在庫数より多いときは、前記保管部に保管されている物品から前記第1保管領域に保管されている物品のうち入庫時が新しい順に前記最小在庫数の物品を除いた、残りの物品から出庫するように前記入出庫装置の出庫作動を制御するように構成されている点にある。
【0007】
本特徴構成によれば、入庫要求に基づいて物品を保管部に入庫するにあたり、第1保管領域の在庫数が最小在庫数より多くなるように入出庫装置により物品を入庫することで、第1保管領域の在庫数を最小在庫数より多くすることができる。
出庫要求に基づいて物品を保管部から出庫する場合に、第1保管領域の在庫数が最小在庫数より多いときは、保管部に保管されている物品から第1保管領域に保管されている物品のうち入庫時が新しい順に最小在庫数の物品を除いた、残りの物品(出庫可能物品)から出庫するので、保管部に対する入出庫が繰り返されることで、第1保管領域に保管されている物品の在庫数が最小在庫数を下回らない範囲で、保管部に保管されている物品の入出庫が実現する。また、保管部に対する入出庫が繰り返されるに伴って、第1保管領域に保管されている物品のうち出庫時に最小在庫数として確保される物品は新しいものに変わっていくことになる。したがって、保管部における第1保管領域に保管されている最小在庫数の物品が長期間保管され続けて経年劣化することを防止できる。
なお、保管部に保管されている物品から第1保管領域に保管されている物品のうち入庫時が新しい順に最小在庫数の物品を除いた、残りの物品(出庫可能物品)から出庫する場合、入庫時が古い物品から順に出庫するのが好ましい。これにより、第1保管領域に保管されている物品の在庫数が最小在庫数を下回らない範囲で、保管部に保管されている物品の先入れ先出しが実現する。
また、保管部に保管されている物品から第1保管領域に保管されている物品のうち入庫時が新しい順に最小在庫数の物品を除いた、残りの物品(出庫可能物品)から出庫する場合、第1保管領域に保管されている物品を少なくとも1つ出庫するようすることが好ましい。これにより、出庫要求があれば第1保管領域から少なくとも1つの物品が確実に出庫されるので、第2保管領域に保管されている物品も含めた出庫可能物品から物品を出庫する場合に比べて、第1保管領域に保管されている物品の先入れ先出しが促進される。さらに、第1保管領域から少なくとも一つ以上の物品を出庫する場合、第1保管領域に保管されている物品のうち入庫時が古い物品から順に出庫することが好ましい。入庫時が古い順に出庫することにより、第1保管領域に保管されている物品のうち最も入庫時の古いものから順に出庫されることになるため、第1保管領域における物品の先入れ先出しが確実に行われる。
そして、保管部に保管されている物品から第1保管領域に保管されている物品のうち入庫時が新しい順に最小在庫数の物品を除いた、残りの物品(出庫可能物品)から出庫されるので、出庫要求に係る数量の物品を出庫しても、第1保管領域に最小在庫数の物品を確保しておくことができる。
このように、本特徴構成によれば、最小在庫数の物品を保管部に保管しつつ、それらの物品が経年劣化することを防止できる。
第1保管領域及び第2保管領域は、保管部において空間的に連続している必要はなく、保管部において複数個所に分散した領域部分の集合で構成されていてもよい。
【0008】
ここで、前記管理制御部は、前記入庫要求に基づいて前記保管部に物品を入庫する場合に、前記第1保管領域の在庫数が前記許容在庫数以下でかつ前記最小在庫数より大きい値に設定された最大在庫数に達するまで前記第1保管領域に優先して入庫するべく、前記入出庫装置の入庫作動を制御するように構成されていると好適である。
【0009】
この構成によれば、保管部から物品を出庫する場合において第1保管領域の在庫数が最小在庫数より多い状態を積極的に現出させることができ、出庫要求に係る数量の物品を出庫する場合に第1保管領域から物品が出庫される頻度を向上することができる。これにより、第1保管領域に保管されている物品の先入れ先出しが促進される。
【0010】
また、前記保管部は、複数の種別の物品を保管し、前記複数の種別の物品の夫々について前記最小在庫数及び前記最大在庫数が設定され、前記第1保管領域が前記複数の種別により共用され、前記複数の種別の夫々についての前記最大在庫数の合計が前記第1保管領域の前記許容在庫数以下になるように前記複数の種別の夫々についての前記最大在庫数が設定されていると好適である。
【0011】
この構成によれば、複数の種別の夫々についての最大在庫数の合計が第1保管領域の許容在庫数以下であるから、第1保管領域を複数の種別の間で適切に共有でき、複数種別の夫々について最小在庫数以上最大在庫数以下の数量の範囲で在庫を確保できる。
そして、複数種別の物品の夫々について、保管部から物品を出庫する場合には、第1保管領域に保管されている物品のうち入庫時が新しい順に最小在庫数の物品を除いた残りの物品から物品が出庫されるので、複数種別の夫々において、特定の物品が保管部に長期間保管され続けて経年劣化することを防止できる。
このように、複数の種別のそれぞれについて最小在庫数の物品を確保しつつそれらの物品が経年劣化することを防止できる。
【0012】
また、前記管理制御部は、前記出庫要求として非常時に発生される非常出庫要求に基づいて前記保管部から物品を出庫する場合は、前記第1保管領域の在庫数が前記最小在庫数より少なくなることを許容する形態で物品を出庫するように、前記入出庫装置の入庫作動を制御するように構成されていると好適である。
【0013】
この構成によれば、非常時には、第1保管領域における物品が最小在庫数になることが許容されるので、例えば、第1保管領域に保管されている物品のうち入庫時が新しい順に最小在庫数の物品を除いた残りの物品の在庫数及び第2保管領域の在庫数が少ない場合等、通常の出庫要求であれば当該出庫要求に係る数量の物品を出庫することができない在庫状態であっても、非常出庫要求に基づいて、当該出庫要求に係る数量の物品を保管部から適切に出庫できる。
このように、非常時には第1保管領域についての出庫制限を緩和することで、非常出庫要求が発生した場合には、欠品を生じさせることなく適切に対応できる。
【0014】
また、前記保管部は少なくとも一つ以上の物品を収納する収納部が上下方向に複数段且つ棚横幅方向に複数列配置された物品収納棚にて構成され、前記物品収納棚における最下段の収納部から設定段数までの複数段に属する複数の前記収納部が前記第1保管領域に設定され、前記物品収納棚における前記第1保管領域に属さない複数の前記収納部が前記第2保管領域に設定されていると好適である。
【0015】
この構成によれば、第1保管領域は、物品収納棚の最下段を含む下方に位置する複数段の収納部に設定されるため、第1保管領域は床面に近くに配置される。したがって、入出庫装置が作動しない場合でも、床面を移動する作業者の人手により第1保管領域に保管されている物品を出庫することができる。そのため、例えば、緊急時であるにもかかわらず停電や故障が原因で入出庫装置が動作しない場合でも、第1保管領域に収納されている最小在庫数の物品を保管部から取り出すことができる。
なお、第2保管領域を構成する複数の収納部のうちの一部又は全部が、物品収納棚における最下段の収納部から設定段数までの複数段に属する複数の前記収納部に設定されていてもよい。また、複数の収納部の夫々は、一つの物品を収納するものでもよいし、複数の物品を収納するものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】灯器保管設備の要部平面図
図2】灯器保管設備の要部側面図
図3】複数の保管領域の設定例を示す図
図4】在庫情報記憶部に記憶される情報を示す表
図5】灯器がコンテナに混載された様子を示す図
図6】制御ブロック図
図7】灯器情報記憶部に記憶される情報を示す表
図8】入出庫に伴う第1種灯器の在庫数の変化を示す図
図9】保管部への入庫制御のフローチャート
図10】保管部からの出庫制御のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る物品保管設備の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態に係る物品保管設備は、空港の滑走路周辺に設置される灯器を保管する灯器保管設備である。滑走路周辺に設置される灯器には複数の種別があり、種別ごとに設置個数が異なる。これらの灯器は定期的に(例えば、毎日)交換される。交換時に回収された灯器は灯器保管設備に搬入され、洗浄・劣化部品の交換・光軸等の調整といった保守作業が施され、滑走路周辺における灯器の交換時には、保守済みの灯器が設置される。また、複数の種別のうち滑走路への灯器の設置にあたって欠くことができない種別、つまり、緊急時を含め如何なる場合であっても設置が必須となる重要な灯器は、緊急灯器として他の通常灯器と区別して管理される。
【0018】
図1及び図2に示すように、灯器保管設備は、建屋に設けられた吹抜け空間Tに複数の種別の灯器Lを保管する保管部1が設けられている。保管部1は、複数の対(本実施形態では2対)を為す状態で複数(本実施形態では4つ)の物品収納棚2が配置されている。物品収納棚2においては、灯器Lを収納する収納部3が上下方向に複数段且つ棚横幅方向に複数列配置されている。
【0019】
本実施形態では、保管部1に保管される灯器Lとして、図7に示すように第1種灯器L1〜第20種灯器L20までの20種類の灯器Lがあり、同一種別の灯器Lが各種別毎に設定された混載許容数以下でコンテナ4に収容された状態(図5参照)で保管部1の4つの物品収納棚2における収納部3に保管される。このように、保管部1は、少なくとも一つ以上の灯器Lを収納する収納部3が上下方向に複数段且つ棚横幅方向に複数列配置された物品収納棚2の複数にて構成されている。本実施形態では、各収納部3が保管部1の管理単位となっており、後述する収納部番地が登録されている。
【0020】
各対の物品収納棚2の間に形成される棚間通路には、スタッカークレーン5が設置されている。灯器保管設備における各階(本実施形態では1階〜3階)には、スタッカークレーン5との間でコンテナ4を授受自在な入出庫コンベヤ6や、入出庫コンベヤ6の搬送経路上流側や下流側に設けられるラインコンベヤ7が設けられている。スタッカークレーン5は、昇降マスト5aに沿って昇降自在な昇降台5bに移載装置5c(例えば、スライドフォーク装置により構成される)を備え、走行台車5dの棚間通路における走行及び昇降台5bの昇降マスト5aに沿う昇降により、コンテナ4を搬送する。入出庫コンベヤ6やラインコンベヤ7は、電動駆動ローラを備えた電動ローラコンベヤや駆動ローラを備えないフリーローラコンベヤ等により構成されている。入出庫コンベヤ6及びラインコンベヤ7は、コンテナ4を載置搬送するとともに搬送経路上にコンテナ4を一時的に保管するラインバッファとしても機能する。
【0021】
このような構成により、灯器保管設備における各階において、4つの物品収納棚2における各収納部3へのコンテナ4(灯器L)の入庫及び出庫が、2台のスタッカークレーン5と複数の入出庫コンベヤ6及びラインコンベヤ7による入庫作動及び出庫作動により可能となっている。つまり、灯器保管設備には、保管部1に対して灯器Lを入庫及び出庫する入出庫装置としてスタッカークレーン5並びに入出庫コンベヤ6及びラインコンベヤ7が備えられている。
【0022】
図1では、1階における入出庫コンベヤ6及びラインコンベヤ7の配置が示されている。各コンベヤ上に示された白抜き矢印は保管部1に入庫されるコンテナ4の流れの概略を示しており、黒塗り矢印は保管部1から出庫されるコンテナ4の流れの概略を示している。滑走路周辺から回収された灯器Lは、灯器保管設備の搬入口で洗浄された後、作業者により種別毎にコンテナ4に収容される。灯器Lを収容したコンテナ4は、1階におけるラインコンベヤ7としての搬入用コンベヤ7aの搬送始点に投入され、中継ラインコンベヤ7bによる搬送・分岐を経て、入出庫コンベヤ6にて搬送され、スタッカークレーン5に引き渡されて保管部1に入庫される。
【0023】
保管部1に入庫された灯器Lは、図2に示すように、灯器保管設備から最終的に搬出されるまでに、劣化部品の交換等の作業のために2階の整備室に出庫され、必要な検査及び部品の交換が済んだ灯器Lは、2階から再び保管部1に入庫される。そして、光軸等の調整の作業のために3階の配光室に出庫され、光軸等の調整が済んだ灯器Lは、3階から再び保管部1に入庫される。こうして灯器Lは、設置基準を満たす灯器Lとして保管部1に保管されることになる。
【0024】
設置基準を満たす保守済みの灯器Lは、出庫要求に基づき保管部1からスタッカークレーン5、入出庫コンベヤ6、中継ラインコンベヤ7bにより順次搬送され、搬出口に設けられたストレージコンベヤ7dまで搬出用コンベヤ7cにて搬出される。搬出口では、滑走路周辺の設置箇所まで運搬すべく、運搬車両に積み込まれる。なお、入出庫コンベヤ6として中継ラインコンベヤ7bに接続されずに直接に搬出用コンベヤ7cに接続されているものがあり、この入出庫コンベヤ6を利用することで灯器Lの出庫リードタイムを短縮できる。
【0025】
コンテナ4に収容された状態での灯器Lの保管部1に対するこのような入庫及び出庫は、在庫管理装置C(図6参照)により管理される。在庫管理装置Cは、図4に示すように、各階でのラインコンベヤ7への投入の際に読み取られる灯器Lの種別情報及びその灯器Lを収容するコンテナ4の識別情報を、当該コンテナ4を入庫する収納部3として選択した入庫先の収納部3の位置情報である収納部番地及び入庫時(本実施形態では入庫日)とを関連付けて在庫情報記憶部D1に記憶させる。
【0026】
本実施形態では、一つの物品収納棚2は16ベイ×37レベル=592の収納部3を備えており、保管部1は、592×4=2368の収納部3を備えている。そこで、収納部3の収納部番地は、図4に示すように、4つの物品収納棚2を特定する「01」〜「04」のバンク番号と、物品収納棚2における棚間通路長手方向の位置を特定する「01」〜「16」のベイ番号と、物品収納棚2における高さ方向の位置すなわち段を特定する「01」〜「37」のレベル番号と、の3つの変数の組み合わせにより特定される値としている。
【0027】
また、本実施形態では、灯器Lの種別情報として、各灯器Lには当該灯器Lの種別である第1種〜第20種に対応した固有の「01」〜「20」の灯器ID(図4参照)がバーコードにより付されており、コンテナ4の識別情報として、各コンテナ4には、当該コンテナ4に固有の「0001」〜「3000」までの容器ID(図4参照)がバーコードにより付されている。このような識別情報の管理は、バーコードによるシステムでなくても、例えば、RFIDタグとそれを読み取るタグリーダとを用いたIDタグシステムで実現してもよい。
【0028】
図7に示すように、本実施形態では、20種の灯器Lのうち、第1種灯器L1〜第5種灯器L5が緊急時でも設置が必須となる緊急灯器であり、第6種灯器L6〜第20種灯器L20が通常灯器である。このような灯器Lの種別に基づく「緊急灯器」と「通常灯器」との区分情報や、各灯器Lの保管にあたって必要となる各種のパラメータは、灯器Lの種別に関連付けて、灯器情報記憶部D2に記憶されている。
【0029】
図6に示すように、在庫管理装置Cは、灯器識別部C1、容器識別部C2、入庫日設定部C3、灯器区分判別部C4、入庫先決定部C5、出庫元決定部C6、搬送指令部C7といった各機能部を、プロセッサーやメモリー等のハードウェアにより実行されるソフトウェアとして備えている。在庫管理装置Cには、上述の在庫情報記憶部D1及び灯器情報記憶部D2との間で情報の読み出し及び書き込みが可能な状態で接続されるとともに、バーコードリーダ8のほか、入庫要求部9が発する入庫要求や、計画出庫要求部10及び緊急出庫要求部11が発する出庫要求といった各種の入力情報を受信できるように各種の機器に接続されている。
【0030】
コンテナ4に収容された灯器Lを入庫するにあたり、作業者が当該コンテナ4に収容されている全ての灯器Lの夫々をバーコードリーダ8で読み込ませることで、在庫管理装置Cは、読み込んだ灯器IDの個数、灯器ID及び容器ID、入庫先決定部C5が決定した入庫先の収納部3の収納部番地、及び、入庫日設定部C3が設定する入庫日といった各種の入庫情報を当該入庫対象のコンテナ4に関連付けて在庫情報記憶部D1に記憶することで、保管部1に保管される灯器Lの入庫時及び在庫数並びに保管位置を管理している。
【0031】
在庫管理装置Cの搬送指令部C7が生成する搬送指令(入庫用搬送指令及び出庫用搬送指令)は、搬送制御装置Hに伝達され、搬送制御装置Hは、その搬送指令に基づいてスタッカークレーン5並びに入出庫コンベヤ6及びラインコンベヤ7のコンテナ4(灯器L)の搬送作動を制御する。すなわち、ある種別の灯器Lの入庫要求があると、搬送制御装置Hは、当該入庫要求に基づいて在庫管理装置Cの入庫先決定部C5が決定した入庫先の収納部3へ、当該種別の灯器Lが収容された入庫対象のコンテナ4を搬入口から搬送するべく、当該入庫要求に基づいて搬送指令部C7が出力する入庫用搬送指令に従って、ラインコンベヤ7及び入出庫コンベヤ6並びにスタッカークレーン5の搬送作動を制御する。また、ある種別の灯器Lの出庫要求があると、搬送制御装置Hは、当該出庫要求に基づいて在庫管理装置Cの出庫元決定部C6が決定した出庫元の収納部3から、当該種別の灯器Lが収容された出庫対象のコンテナ4を搬出口に搬送するべく、当該出庫要求に基づいて搬送指令部C7が出力する出庫用搬送指令に従って、ラインコンベヤ7及び入出庫コンベヤ6並びにスタッカークレーン5の搬送作動を制御する。
【0032】
このように、在庫管理装置C及び搬送制御装置Hは、保管部1に保管される灯器Lの入庫時及び在庫数を管理して、入庫要求及び出庫要求に基づいて入出庫装置の入庫作動及び出庫作動を制御するので、在庫管理装置C及び搬送制御装置Hが本発明の管理制御装置の機能を担っている。
【0033】
灯器Lを入庫する場合の作業者の動作の概要を説明すると次の通りである。図示は省略するが各階のラインコンベヤ7におけるコンテナ4の投入箇所にはバーコードリーダ8が設置されており、入庫対象のコンテナ4に付されたバーコードをバーコードリーダ8に読み取らせ、読み取りが完了したら、投入箇所に設けられている端末装置が備える容器情報読込完了ボタンを押下する。続いて、このコンテナ4に収容する予定の灯器Lに付されたバーコードをバーコードリーダ8に読み取らせ、読み取りが終わったものから順次コンテナ4に収容する。この作業を当該コンテナ4に混載する予定の全ての灯器L(混載許容数より少ない場合もある。)について繰り返し、当該コンテナ4に混載される全ての灯器Lのバーコードの読込及びコンテナ4への収容が完了したら、投入箇所に設けられている端末装置が備える入庫設定完了ボタンを押下する。
【0034】
作業者がコンテナ4及び灯器Lのバーコードを読み込ませると、在庫管理装置Cの灯器識別部C1が機能して、灯器Lのバーコード情報から当該灯器Lが第1種灯器L1〜第20種灯器L20のうちいずれの種別の灯器Lであるかを識別し、容器識別部C2が機能して、コンテナ4のバーコード情報から仕切数の違いによるコンテナ種別を判別する。混載予定の灯器Lに付されたバーコードを順次読み込むとき、最初に読み込んだ灯器Lの灯器IDについての混載許容数が、容器識別部C2により判別されたコンテナ4の仕切数と一致しない場合にはエラー情報を通知することで、コンテナ4に収容される灯器Lの混載数が不適切となることを防止できる。また、直前に読み込んだ灯器Lの灯器IDと異なる灯器IDである場合にエラー情報を通知するようにすると、コンテナ4に異なる種別の灯器Lが誤って収容された状態で保管部1に保管さることを防止できる。
【0035】
作業者が入庫設定完了ボタンを押下することで、入庫要求が発生する。すなわち、入庫設定完了ボタンが入庫要求部9として機能する。なお、入庫設定完了ボタンに限らず、音声その他による入力装置により入庫要求部9を実現してもよい。入庫要求が発生すると、入庫日設定部C3、灯器区分判別部C4、及び、入庫先決定部C5が機能する。ただし、灯器区分判別部C4は、設置基準を満たす灯器Lについての入庫要求、つまり、3階からの入庫要求があった場合にだけ機能する。
【0036】
入庫要求としては、洗浄工程後の灯器Lを保管部1に入庫するために1階の搬入口から発せられる入庫要求と、検査及び必要な部品交換後の灯器Lを保管部1に入庫するために2階の整備室から発せられる入庫要求と、光軸調整後の灯器L(設置基準を満たす灯器L)を保管部1に入庫するために3階の配光室から発せられる入庫要求とが存在するが、本発明は、3階の配光室から発せられる入庫要求についての入庫制御に対して適用されている。
【0037】
また、本実施形態に係る灯器保管設備においては、出庫要求としては、洗浄工程後に保管部1に保管されている灯器Lを2階の整備室へ出庫するために整備室から発せられる出庫要求と、検査及び必要な部品交換を行った後に保管部1に保管されている灯器Lを3階の配光室へ出庫するために配光室から発せられる出庫要求と、光軸調整等を行った後に保管部1に保管されている設置基準を満たす灯器Lを1階の搬出口へ出庫するために搬出口から発せられる出庫要求とが存在するが、1階の搬出口から発せられる出庫要求についての出庫制御に対して本発明が適用されている。
【0038】
このように、本実施形態の灯器保管設備では、保管部1には、保守済みで設置基準を満たして搬出口へ搬出できる灯器Lのみならず、保守対象の灯器Lについても同時に保管されており、保管部1に対する入出庫が行われるが、設置基準を満たしている灯器Lについての入庫要求及び出庫要求が発生した場合の、緊急灯器である第1種灯器L1〜第5種灯器L5に関する入庫制御及び出庫制御において本発明が適用されているので、以下では、保守済みの灯器Lについての入庫要求及び出庫要求が発生した場合、つまり、3階の配光室からの入庫要求及び1階の搬出口からの出庫要求が発生した場合の在庫管理装置C及び搬送制御装置Hの制御動作について説明する。まず、3階の配光室からの入庫要求が発生した場合の在庫管理装置C及び搬送制御装置Hの入庫制御について説明する。
【0039】
入庫要求が発生すると入庫日設定部C3が機能することで、在庫管理装置Cが内臓する時計から入庫要求が発生した日時を入庫時として取得する。なお、入庫日設定部C3が入庫時を取得するタイミングは、実際のコンテナ4が収納部3に入庫されたタイミング等別のタイミングで取得してもよい。
【0040】
入庫要求が発生すると灯器区分判別部C4が機能することで、入庫対象の灯器Lの灯器ID及び灯器情報記憶部D2に記憶されている灯器Lの区分情報に基づき、当該灯器Lの灯器区分が判別される。例えば、入庫対象の灯器Lが第2種灯器L2である場合、バーコードリーダ8で読み取られる灯器IDは「02」であるから、図7に示されているように、当該第2種灯器L2の区分は「緊急灯器」と判別される。また、入庫対象の灯器Lが第15種灯器L15である場合、バーコードリーダ8で読み取られる灯器IDは「15」であるから、図7に示されているように、当該第15種灯器L15の区分は「普通灯器」と判別される。判別結果は在庫管理装置Cが備える記憶部に保持される。すなわち、現在処理中の入庫対象の灯器Lについての緊急灯器区分フラグを用いて、入庫対象の灯器Lが緊急灯器であれば緊急灯器区分フラグを立てておく、というようにして判別結果が一時的に保持される。
【0041】
図3に示すように、保管部1には、複数の灯器Lを保管する保管領域として第1ゾーンZ1及び第2ゾーンZ2の二つの異なる保管領域(本発明の第1保管領域及び第2保管領域)が設定されている。第2ゾーンZ2に属する収納部3の一部を、例えば、特定の種別の灯器Lを保管する領域として別の保管領域に設定してもよい。第1ゾーンZ1は、緊急灯器である第1種灯器L1〜第5種灯器L5の5つの種別により共用され、これらの複数の種別の夫々について第1ゾーンZ1に在庫として確保すべき最小在庫数、及び、第1ゾーンZ1に保管できる在庫数の限度である最大在庫数が設定されている。
【0042】
緊急灯器の区分に属する灯器Lつまり第1種灯器L1〜第5種灯器L5の5種の灯器Lについては、少なくとも最小在庫数は第1ゾーンZ1に属する収納部3において保管するようになっている。そして、当該種別の灯器Lの在庫数が増えてきても、各種別について設定されている最大在庫数を限度として保管し、それ以上の灯器Lは第2ゾーンZ2に属する収納部3において保管するようになっている。
【0043】
入庫要求が発生すると入庫先決定部C5が機能することで、入庫対象の灯器Lの灯器区分に基づいて、保管部1の空き収納部3の中から入庫対象の灯器Lの入庫先の収納部3が選択される。入庫対象の灯器Lが緊急灯器である場合、つまり、入庫対象の灯器Lの種別が第1種灯器L1〜第5種灯器L5のいずれかである場合は、第1ゾーンZ1に属する収納部3に優先して入庫され、第1ゾーンZ1における当該種別の在庫数が最大在庫数に達した後は、第2ゾーンZ2に属する収納部3に入庫される。入庫対象の灯器Lの種別の区分が通常灯器であれば、原則として第2ゾーンZ2に属する収納部3に入庫される。このような入庫先の収納部3の振り分けは、3階の配光室からの設置基準を満たす灯器Lについての入庫要求が発生した場合に行われるのであって、1階や2階から発生する設置基準を未だ満たしていない灯器Lについての入庫要求が発生した場合は、原則として第2ゾーンZ2に属する空き収納部3が選択される。
【0044】
このように、在庫管理装置Cは、入庫要求に基づいて保管部1に緊急灯器である灯器Lを入庫する場合に、第1ゾーンZ1の在庫数が最小在庫数より多くなることを許容する形態で灯器Lを入庫するように、スタッカークレーン5並びに入出庫コンベヤ6及びラインコンベヤ7の入庫作動を制御する。具体的には、在庫管理装置Cは、入庫要求に基づいて保管部1に灯器Lを入庫する場合に、第1ゾーンZ1の在庫数が許容在庫数以下でかつ最小在庫数により大きい値に設定された最大在庫数に達するまで第1ゾーンZ1に優先して入庫するべく、入出庫装置(スタッカークレーン5並びに入出庫コンベヤ6及びラインコンベヤ7)の入庫作動を制御する。
【0045】
緊急灯器である第1種灯器L1〜第5種灯器L5の夫々についての最大在庫数の合計が第1ゾーンZ1の許容在庫数以下になるように5種の緊急灯器の夫々についての最大在庫数が設定されている。当然、第1ゾーンZ1の許容在庫数は、緊急灯器である各種別の夫々の最小在庫数より大きい。
【0046】
本実施形態では、図3に示すように、物品収納棚2における最下段の収納部3から設定段数として4段までの複数段(4段)に属する複数の収納部3が第1ゾーンZ1に設定され、物品収納棚2における第1ゾーンZ1に属さない複数の収納部3が第2ゾーンZ2に設定されている。具体的には、保管部1における4つの物品収納棚2のレベル番号「01」〜「04」の4つのレベルに属する、256(16ベイ×4レベル×4バンク)個の収納部3が第1ゾーンZ1に設定されている。入庫先決定部C5が機能することで、緊急灯器である第1種灯器L1〜第5種灯器L5の灯器Lは、第1ゾーンZ1に属する256個の収納部3から優先的に入庫先が選択される。
【0047】
第1ゾーンZ1をこのようにレベル番号「01」〜「04」の床面に近い高さの低い収納部3に設定することで、地震による停電や故障等により入出庫装置が作動しない場合でも、床面を移動する作業者の人手により第1ゾーンZ1に保管されている灯器Lを出庫することができる。そのため、例えば、緊急時であるにもかかわらず停電や故障が原因で入出庫装置が動作しない場合でも、第1ゾーンZ1に収納されている最小在庫数の灯器Lを保管部1から取り出すことができる。
【0048】
5種の緊急灯器の夫々の最大在庫数は、図7に示すように設定されており、第1種灯器L1は最大で80個まで、第2種灯器L2は最大で70個まで、第3種灯器L3は最大で50個まで、第4種灯器L4は最大で30個まで、第5種灯器L5は最大で25個までが第1ゾーンZ1の収納部3に保管できるようになっている。これらの最大在庫数の合計は255個であるから、第1ゾーンZ1の許容在庫数である256個以下となっている。
【0049】
なお、最大在庫数の設定は、第1ゾーンZ1に保管されるコンテナ4に対する灯器Lの収容効率が最低の場合、つまり、第1ゾーンZ1に保管される全てのコンテナ4にただ1個の灯器Lを収容した場合を想定して設定されているが、実際には一つのコンテナ4に同種別の複数の灯器Lが混載されるため、第1ゾーンZ1における第1種灯器L1〜第5種灯器L5の在庫数の夫々がいずれもが最大在庫数に達していても、占有される収納部3は、これらの合計より少なくなっている。
【0050】
次に、1階の搬出口からの出庫要求が発生した場合の在庫管理装置C及び搬送制御装置Hの出庫制御について説明する。作業者が、1階の搬出口に設けられた図外の端末が備える計画出庫ボタンを押下することで、出庫要求が発生する。すなわち、計画出庫ボタンが計画出庫要求部10として機能する。本実施形態における計画出庫要求部10からの出庫要求では、第1種灯器L1〜第20種灯器L20の全ての種別の灯器について図7に示す計画出庫数だけ出庫が要求される。
【0051】
出庫要求が発生すると、図7で示すように灯器種別毎に予め設定されている計画出庫数の灯器Lを搬出口に出庫するべく、在庫管理装置Cは出庫制御を開始する。在庫管理装置Cは、当該出庫要求に基づいて保管部1から緊急灯器である第1種灯器L1〜第5種灯器L5を計画出庫数だけ出庫する場合において第1ゾーンZ1の在庫数が最小在庫数より多いときは、保管部1に保管されている灯器Lから第1ゾーンZ1に保管されている灯器Lのうち入庫日が新しい順に最小在庫数の灯器Lを除いた、残りの灯器L(計画出庫可能灯器)から、灯器Lを出庫するようにスタッカークレーン5並びに入出庫コンベヤ6及びラインコンベヤ7の出庫作動を制御する。これにより、緊急灯器については第1ゾーンZ1に最小在庫数以上の在庫が確保できるようになっている。
【0052】
出庫要求が発生すると、当該出庫要求で出庫対象となっている灯器種別ごとに在庫管理装置Cの出庫元決定部C6が機能する。すなわち、在庫管理装置Cは、在庫情報記憶部D1に記憶されている在庫情報を参照し、出庫対象の灯器Lの灯器区分が緊急灯器(第1種灯器L1〜第5種灯器L5)である場合は、保管部1に保管されている当該種別の灯器Lから第1ゾーンZ1に保管されている在庫のうち入庫日が新しい順に最小在庫数の灯器Lを除いた、残りの灯器Lから、入庫日が古いものから順に極力多くの灯器Lを出庫するように出庫元の収納部3を決定している。なお、出庫要求で要求される出庫数の灯器Lを入庫日の古い順で選択する場合、出庫要求で要求される出庫数を超える最小数量のコンテナ4を出庫対象のコンテナ4として選択され、これらのコンテナ4を保管している収納部3が出庫元の収納部3として選択される。
【0053】
このように、在庫管理装置Cは、出庫要求に基づいて保管部1に緊急灯器である第1種灯器L1〜第5種灯器L5を出庫するにあたり、保管部1に最小在庫数の灯器Lを保管しておくようにスタッカークレーン5並びに入出庫コンベヤ6及びラインコンベヤ7の出庫作動を制御する。
【0054】
1階の搬出口に設けられた図外の端末が備える緊急出庫ボタンを、作業者が緊急時に押下することで、緊急出庫要求(本発明の非常出庫要求に相当)が発生する。すなわち、緊急出庫ボタンが緊急出庫要求部11として機能する。緊急出庫ボタンが押下される緊急時とは、例えば、航空機が滑走路に胴体着陸等の緊急着陸をする場合である。緊急着陸が発生した場合、その着陸時に損傷する灯器Lを交換することになるが、空港機能の迅速な回復のために少なくとも緊急灯器である第1種灯器L1〜第5種灯器L5については夫々の計画出庫数の出庫を済ませ準備しておく必要がある。本実施形態では、緊急出庫要求であっても、計画出庫要求と同じく、灯器ID「01」〜「20」の全ての種別の灯器Lが出庫対象となっている。
【0055】
緊急出庫要求が発生すると、在庫管理装置Cは、当該緊急出庫要求に基づいて保管部1から緊急灯器である第1種灯器L1〜第5種灯器L5を出庫する場合は、第1ゾーンZ1の在庫数が最小在庫数より少なくなることを許容する形態で5種の緊急灯器(第1種灯器L1〜第5種灯器L5)を出庫するように、スタッカークレーン5並びに入出庫コンベヤ6及びラインコンベヤ7の作動を制御する。
【0056】
以下に、上述した灯器識別部C1、容器識別部C2、入庫日設定部C3、灯器区分判別部C4、入庫先決定部C5、出庫元決定部C6、搬送指令部C7により実現する在庫管理装置Cの入庫制御及び出庫制御における制御動作について図9及び図10のフローチャートに沿って説明する。なお、入庫制御は入庫対象の1個のコンテナ4についての処理であり、出庫制御は、出庫対象の1個又は複数のコンテナ4についての処理である。
【0057】
まず、3階の配光室からの入庫要求が発生した場合の入庫制御について、図9のフローチャートを参照して説明する。入庫要求部9で入庫要求が発生するまで、ステップ#S1で待機状態である。作業者が入庫設定完了ボタンを押下することで、ある種別の灯器Lを収容した一つのコンテナ4についての入庫要求が発生すると、ステップ#S2へ移行し、入庫設定作業によりバーコードリーダ8で読み取られた灯器Lのバーコード情報と灯器情報記憶部D2に記憶されている灯器区分情報に基づき、当該灯器Lが緊急灯器か通常灯器か判別する。
【0058】
入庫対象の灯器Lが緊急灯器であればステップ#S3に移行し、通常灯器であればステップ#S5に移行する。緊急灯器である場合、ステップ#S3で、在庫情報記憶部D1の情報に基づいて当該種別の灯器Lの第1ゾーンZ1における在庫数が既に最大在庫数に達しているかが判断される。最大在庫数に達していなければ、ステップ#S4へ移行し、第1ゾーンZ1に属する収納部3について設定検索条件に従って入庫先の空きの収納部3を一つ検索し、見つかった収納部3を入庫先の収納部3として引き当てる。
【0059】
なお、空きの収納部3を検索する場合の設定検索条件は、検索の対象となるゾーンの収納部3のレベル番号の小さいものから順につまり第1ゾーンZ1で空き収納部3を検索する場合であれば最下段の収納3部から順に、ベイ番号の小さいものから順につまり手前のベイから、同じレベル番号・ベイ番号の奇数・偶数バンクの空き収納部3を探し、空きがなければ順次ベイ番号を増やしていく。ベイ番号が最大値16に達した時点でレベル番号を1つ上げて同様にベイ番号の小さいものからベイ方向に空棚を探していく。
【0060】
ステップ#S2で入庫対象の灯器Lが通常灯器であった場合や、ステップ#S3で、第1ゾーンZ1における在庫数が最大在庫数に達している場合は、ステップ#S5へ移行し、第2ゾーンZ2に属する収納部3について設定検索条件に従って入庫先の空きの収納部3を一つ検索し、見つかった収納部3を入庫先の収納部3として引き当てる。
【0061】
ステップ#S4やステップ#S5で入庫先の収納部3が決定したら、ステップ#S6へ移行し、入庫対象の灯器Lの灯器IDと、コンテナ4の容器IDと、入庫日と、入庫先の収納部番地とを関連付けて在庫情報記憶部D1に記憶する。こうして、入庫対象の灯器Lの在庫情報が記憶されたら、当該入庫先の収納部3を搬送先とする入庫用搬送指令を搬送制御装置Hに指令する。これにより、入庫対象の灯器Lを収容したコンテナ4が、ラインコンベヤ7及び入出庫コンベヤ6並びにスタッカークレーン5と中継搬送されて、指定された収納部番地の収納部3に保管される。
【0062】
次に、1階の搬出口からの出庫要求が発生した場合の出庫制御について、図10のフローチャートを参照して説明する。
計画出庫要求部10や緊急出庫要求部11で1階の搬出口からの出庫要求が発生するまで、ステップ#R1で待機状態である。作業者が計画出庫ボタンを押下することで計画出庫要求が発生するか、作業者が緊急出庫ボタンを押下することで緊急出庫要求が発生すると、それらの出庫要求に応じて予め設定された複数の種別の夫々についての指定された数量の灯器Lを出庫するべく、出庫制御が開始される。図10のフローチャートは、出庫要求で出庫対象とされる20種の灯器Lのうち、ある種別の灯器Lについての処理を示している。なお、出庫制御で出庫される灯器Lは、コンテナ4を単位として出庫されるため、出庫要求で要求されている個数より多くの灯器Lが出庫される場合がある。
【0063】
出庫要求が発生すると、ステップ#R2へ移行し、出庫対象の灯器Lの灯器区分が判別される。出庫対象の灯器Lが通常灯器である場合は、ステップ#R6へ移行する。出庫対象の灯器Lが緊急灯器である場合は、ステップ#R3へ移行する。
【0064】
ステップ#R3では、第1ゾーンZ1における当該緊急灯器の在庫数として最小在庫数を確保するべく、第1ゾーンZ1における当該種別の灯器Lを対象に、入庫日が新しいものから順に最小在庫数を確保できるまで、収納部3のうち出庫引き当てを禁止する出庫禁止収納部を設定する。ステップ#R4で、出庫対象の当該種別の灯器Lの保管部1における在庫として最小在庫数を確保するために、第1ゾーンZ1において最小在庫数相当の出庫禁止収納部が確保できていれば、ステップ#R6へ移行する。第1ゾーンZ1において最小在庫数相当の出庫禁止収納部が確保できていなければ、ステップ#R5で第2ゾーンZ2にも出庫禁止収納部を拡張設定する。つまり、第2ゾーンZ2の灯器Lを対象として入庫日が新しいものから順に、第1ゾーンZ1で設定した出庫禁止収納部の数との合計が最小在庫数相当になるまで、出庫禁止収納部を設定する。
【0065】
第1ゾーンZ1において、又は、第1ゾーンZ1及び第2ゾーンZ2において、最小在庫数相当の出庫禁止収納部が確保できたら、ステップ#R6で、保管部1における収納部3のうち、出庫禁止収納部に設定されていない収納部3に収納されている灯器Lを対象として、入庫日が古いものから順に出庫数量以上となるようにコンテナ4を選択する。
【0066】
ステップ#R7で、出庫対象として選択済みの容器に収容されている灯器Lの総数が出庫数量に足りたかどうかがチェックされる。足りていれば、ステップ#R12へ移行する。出庫数量に足りていない場合、ステップ#R8に移行する。
【0067】
ステップ#R8では、今般の出庫要求が、計画出庫要求であるか、緊急出庫要求であるか、判別される。この判別は、出庫要求が発生した時点で在庫管理装置Cの記憶部に出庫要求種別を記憶しておき、記憶された出庫要求種別情報に基づいて判別される。今般の出庫要求が計画出庫要求である場合は、ステップ#R9へ移行し、欠品情報をディスプレイ等に表示する等して作業員に報知する。
【0068】
今般の出庫要求が緊急出庫要求である場合は、ステップ#R10へ移行し、禁止収納部として設定されている収納部3についての禁止設定を解除する。ステップ#R11で、第1ゾーンZ1に保管されている灯器Lのうち、禁止収納部であったがために選択されていない収納部3に収納されている灯器Lを対象に、入庫日が古いものから順に不足数量を満足するように容器が選択される。
【0069】
このように、1階の搬出口からの出庫要求が緊急出庫要求である場合は、ステップ#R8で分岐するが、緊急時に発生する緊急出庫要求に基づく出庫制御では、第1ゾーンZ1の在庫が最小在庫数を下回ることを許容して、緊急時には第1ゾーンZ1の在庫数を最小在庫数より減らしてでも、緊急灯器である第1種灯器L1〜第5種灯器L5の迅速な出庫と欠品を防止している。緊急出庫要求であっても通常灯器についての処置は計画出庫要求での通常灯器の処理と同じである。
【0070】
このようにして、出庫対処の灯器Lを収容するコンテナ4が選択されると、ステップ#R12で、処理対象の種別について、選択した灯器Lが収容されたコンテナ4が収納されている収納部3から当該コンテナ4を搬出口に出庫する出庫用搬送指令が出力される。
【0071】
以上説明したような図10のフローチャートで示された処理が、出庫対象の全ての種別について処理され、各種別についての出庫用搬送指令が指令されたら、当該出庫要求についての出庫制御が終了する。
【0072】
第1種灯器L1を例に、保管部1における在庫の変動について説明する。第1種灯器L1は、図7に示すように、最小在庫数が「50」、最大在庫数が「80」となっている。そのため、第1ゾーンZ1における第1種灯器L1の在庫数は、図8に示すように、「50」と「80」との間で変動するようになっている。また、第1種灯器L1の計画出庫数は「40」であるので、計画出庫要求に基づいて「40」個の第1種灯器L1が出庫される。しかしながら、第1ゾーンZ1における在庫数は最大で「80」であるため、第1ゾーンZ1の在庫から「40」個を出庫してしまうと、第1ゾーンZ1の在庫が「40」となり最小在庫数が「50」を下回ってしまう。そこで、計画出庫要求による「40」個の出庫数量のうち、第1ゾーンZ1における最小在庫数である「50」を確保した残りの在庫から出庫するとともに、計画出庫要求による「40」個の出庫数量に対して不足する分は、第2ゾーンZ2の在庫から出庫する。このように計画出庫要求により「40」個の第1種灯器L1を保管部1から出庫する場合、第1ゾーンZ1からの出庫と第2ゾーンZ2からの出庫との双方により保管部1から必要数の第1種灯器L1を出庫している。これにより、第1ゾーンZ1における第1種灯器L1の在庫として最小在庫数である「50」を確保できる。なお、第1ゾーンZ1からの出庫と第2ゾーンZ2からの出庫のいずれにおいても入庫時の古いものから順に在庫が出庫されるので、第1ゾーンZ1において確保される在庫が経年劣化することも防止できる。図7においては、第1種灯器L1の合計在庫数が「100」を超えていないが、第2ゾーンZ2における在庫数が多い場合は、合計在庫数が「100」を超える場合もある。
【0073】
以上説明したように、3階の配光室からの入庫要求に伴う入庫制御が、保守作業の進捗に伴って分散的に行われ、1階の搬出口からの計画出庫要求に伴う出庫制御が、定期的にかつ集中的に行われる。そのため、保管部1に対する灯器Lの入庫や保管部1からの灯器Lの出庫により保管部1における灯器Lの在庫は変動する。本実施形態の灯器保管設備では、緊急灯器である第1種灯器L1〜第5種灯器L5のいずれについても、最小在庫数の在庫が経年劣化を回避する形態で第1ゾーンZ1に保管されているので、緊急事態が突然発生しても、複数種の緊急灯器の全ての種別について経年劣化していない必要数の在庫を適切に出庫できる。しかも、第1ゾーンZ1を保管部1の高さの低い領域に設定しているため、停電や搬送装置の故障等のために、保管部1に対する灯器Lの入出庫が自動で行えなくなっても、作業員の手作業により緊急灯器を保管部1から取り出すことができ、災害等が発生した非常時における不都合が低減される。
【0074】
〔別の実施形態〕
以上、発明者によってなされた発明を発明の実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。以下、本発明の別実施形態を例示する。
【0075】
(1)滑走路が複数存在する場合は、計画出庫要求や緊急出庫要求は滑走路単位で必要となる種別及び個数の灯器の出庫を要求するものとなり、これらの出庫要求に基づく出庫制御では、滑走路に応じた種別及び個数の灯器が出庫されることになる。
【0076】
(2)上記実施形態では、保管部に保管される物品が、空港の滑走路周辺に設置される灯器であるものを例示したが、本発明の物品としては、これに限らず、例えば、備蓄が必要で経年劣化の防止が必要なものであればよい。例えば、使用期限や賞味期限あるものとして医薬品や備蓄食品などが考えれる。
【0077】
(3)上記実施形態では、第1ゾーンZ1を保管部1の床面に近い領域に設定するものを例示したが、第1ゾーンZ1は、保管部1における任意の領域に設定しできる。例えば、緊急灯器を2階に出庫するような設備であれば、第1ゾーンZ1は、2階のフロアの高さに対応した領域を設定してもよい。また、緊急出庫要求に基づく緊急灯器の出庫作業の時間短縮を図るのであれば、第1ゾーンZ1を入出庫口に近い領域に設置してもよい。
【0078】
(4)上記実施形態では、保管部が物品収納棚であるものを例示したが、保管部は物品が保管できるものであればよい。例えば、床面に沿って広がる平置き倉庫であってもよい。また、棚や倉庫の設置箇所は地上に限らず地下であってもよい。
【0079】
(5)上記実施形態では、保管部の管理単位である収納部において複数の物品(灯器L)を収容する容器(コンテナ4)を保管するようにしているが、保管部の管理単位で一つの物品を保管してもよい。
【符号の説明】
【0080】
H、C :管理制御部
Z1 :第1保管領域
Z2 :第2保管領域
1 :保管部
2 :物品収納棚
3 :収納部
5、6、7 :入出庫装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10