【実施例】
【0017】
以下に、搬送設備にかかる実施例について、図面を参照して説明する。
本例の搬送設備1は、ワーク8を搬送するとともに、搬送するワーク8の姿勢を作業用の姿勢に変更可能である。搬送装置1は、
図1に示すように、スライダー2、第1レール3A、第2レール3B及び姿勢変更装置4を備えている。
スライダー2は、ワーク8を保持してスライドするよう構成されている。第1レール3Aは、
図2に示すように、スライダー2が、水平面に対する所定の姿勢である第1スライド姿勢201を形成してスライドするよう構成されている。第2レール3Bは、
図3に示すように、スライダー2が、第1スライド姿勢201とは異なる第2スライド姿勢202を形成してスライドするよう構成されている。姿勢変更装置4は、第1レール3Aと第2レール3Bとの間のスペースに配設されている。
【0018】
姿勢変更装置4には、
図5に示すように、スライダー2を第1スライド姿勢201とする第1レール姿勢401と、
図6に示すように、スライダー2を第2スライド姿勢202とする第2レール姿勢402と、に切り替わる姿勢変更レール41が設けられている。搬送設備1においては、
図4に示すように、姿勢変更装置4の姿勢変更レール41が第1レール姿勢401にあるとき、第1レール3Aから姿勢変更レール41にスライダー2がスライド可能であり、姿勢変更装置4の姿勢変更レール41が第2レール姿勢402にあるとき、姿勢変更レール41から第2レール3Bにスライダー2がスライド可能である。
【0019】
以下に、本例の搬送設備1について、
図1〜
図6を参照して詳説する。
本例のワーク8は自動車用部品としての前輪駆動用自動変速機のケースであり、本例の搬送設備1は、前輪駆動用自動変速機を生産するための工場内の生産ラインにおいて使用される。工場内には、前輪駆動用自動変速機の加工、組付、検査等の作業を行う各種機械5が配設されており、搬送設備1は、ワーク8としての前輪駆動用自動変速機のケースを各種機械5に搬送するよう構成されている。各種機械5は、搬送設備1における第1レール3A又は第2レール3Bに配置されたスライダー2上のケースに対して加工、組付、検査等の作業を行う。なお、スライダー2上のケースに対しては、各種機械5以外に作業者が作業を行うこともできる。なお、
図1においては、第1レール3Aにおいて、各種機械5がワーク8に対して組付等を行う場合を示す。第2レール3Bにおいても、各種機械5がワーク8に対して組付等を行ってもよい。
【0020】
図2、
図3に示すように、ワーク8は、パレット7上に保持されており、パレット7とともに搬送設備1において搬送される。ワーク8としての前輪駆動用自動変速機のケースには、エンジン合わせ面側に位置するケース正面81、ケース正面81とは反対側に位置するケース背面82、ケース正面81及びケース背面82以外の残りの複数のケース側面83が形成されている。ワーク8としてのケースは、ケース背面82がパレット7と対向する状態でパレット7に保持されている。スライダー2の第1スライド姿勢201においては、ケース正面81が鉛直上方向Fに向けられ、スライダー2の第2スライド姿勢202においては、複数のケース側面83のいずれかが鉛直上方向Fに向けられる。
【0021】
第1レール3Aは、スライダー2を上方(鉛直上方向F)に配置してスライドさせる状態で形成されており、第2レール3Bは、スライダー2を側方に配置してスライドさせる状態で形成されている。スライダー2には、第1レール3A及び第2レール3Bにおける各レール部31に対して転がり接触するローラ(カムフォロア等)22が設けられている。第1レール3A及び第2レール3Bには、スライダー2をスライドさせるための駆動機構が設けられている。駆動機構は、レールの形成方向において循環するチェーンと、チェーンを掛け渡すスプロケットと、スプロケットを回転させるモータと、チェーンに所定の間隔で設けられ、スライダー2を係止して押し出すための係止部とを有している。そして、モータによってチェーンが循環する際に、各係止部がスライダー2をそれぞれ係止して、第1レール3A又は第2レール3Bに対して各スライダー2をスライドさせることができる。
【0022】
図2、
図3に示すように、スライダー2には、そのスライド方向Sに対して直交する方向に向けられた回動中心軸線C1の回りにワーク8を回動させるための回動ジョイント21が設けられている。回動ジョイント21は、ラジアル荷重及びスラスト荷重を受けることができるベアリングによって構成されている。ワーク8が保持されるパレット7は、回動ジョイント21を介してスライダー2に取り付けられている。パレット7を介してスライダー2に保持されたワーク8のケース背面82は、回動ジョイント21の回動中心軸線C1に対して垂直な状態でスライダー2の側に向けられている。
第2レール3Bに配置されたスライダー2上のワーク8は、回動ジョイント21を回動させることにより、複数のケース側面83のうちの特定のケース側面83を鉛直上方向Fに向けることができる。パレット7又はスライダー2には、パレット7が回動ジョイント21を介してスライダー2に対して回動しないようにするためのロック部が設けられている。
【0023】
図5、
図6に示すように、姿勢変更レール41は、姿勢変更装置4において、水平方向に向けられたスライダー2のスライド方向Sに平行な回動中心軸線C2の回りに回動するよう構成されている。姿勢変更レール41の回動中心軸線C2は、ワーク8、パレット7、回動ジョイント21及びスライダー2を含む範囲内を通って設定されている。本例の姿勢変更レール41の回動中心軸線C2は、ワーク8及びパレット7を含む範囲内を通って設定されている。そして、姿勢変更レール41、スライダー2、回動ジョイント21、パレット7及びワーク8を含む回動対象40の全体における重心位置は、ワーク8及びパレット7を含む範囲内にあり、回動中心軸線C2は重心位置の近傍にある。これにより、姿勢変更装置4は、回動対象40の全体を、その重心位置の近傍を中心に回動させることができる。これにより、少ない動力で回動対象40の姿勢を変更することができる。
【0024】
姿勢変更装置4は、90°以上の角度を有して下方から側方に円弧状に形成されたガイドレール部42と、ガイドレール部42に沿って転がり接触しながら移動可能なスライド部43と、スライド部43を駆動する駆動部44とを有している。姿勢変更レール41は、スライド部43に取り付けられている。本例の駆動部44は、シリンダーによって構成されている。
姿勢変更装置4は、回動対象40に加わる重力の方向とは反対方向に回動対象40にバランス力を与える重力バランサー45が設けられている。重力バランサー45は、バランスウェイトによって構成されており、バランスウェイトに取り付けられた線材は、スライド部43に取り付けられている。
【0025】
図5に示すように、姿勢変更装置4が第1レール姿勢401を形成するときには、スライド部43及び姿勢変更レール41がガイドレール部42の下方に位置し、
図6に示すように、姿勢変更装置4が第2レール姿勢402を形成するときには、スライド部43及び姿勢変更レール41がガイドレール部42の側方に位置する。そして、駆動部44によって回動対象40をガイドレール部42の下方から側方へ持ち上げるときには、重力バランサー45によるバランス力を、回動対象40を持ち上げる方向に作用させることができる。
【0026】
ワーク8が搭載された各スライダー2においては、第2レール3Bを通過した後には、ワーク8が保持されたパレット7がスライダー2から離される。そして、ワーク8が保持されたパレット7は、搬出用パレットに積載されて搬出される。一方、スライダー2は、第1レール3Aに再び循環され、ワーク8が搭載された他のパレット7が取り付けられて繰り返し使用される。
【0027】
次に、本例の搬送設備1の動作及びその作用効果について説明する。
本例の搬送設備1は、ワーク8のケース正面81に対する作業を可能にする第1レール3Aと、ワーク8のケース側面83に対する作業を可能にする第2レール3Bとを備えている。また、第1レール3Aと第2レール3Bとの間のスペースには、姿勢変更レール41を有する姿勢変更装置4が配設されている。そして、搬送設備1は、ワーク8のケース正面81及びケース側面83に対する作業を、連続した搬送ラインにおいて行うことができるようにしている。
【0028】
図2に示すように、第1レール3Aにおいては、ワーク8を保持するパレット7が回動ジョイント21を介してスライダー2に取り付けられる。第1レール3Aにおいては、ワーク8が搭載された複数のスライダー2が順次流れ、第1レール3Aに対向して配設された機械5等によって、鉛直上方向Fから各ワーク8のケース正面81に対して順次作業が行われる。
【0029】
次いで、
図4、
図5に示すように、姿勢変更装置4の姿勢変更レール41が第1レール姿勢401を形成し、姿勢変更レール41の姿勢が第1レール3Aの姿勢に合わされて、姿勢変更レール41が第1レール3Aに接続される。そして、第1レール3Aを通過した、ワーク8が搭載されたスライダー2が、姿勢変更レール41へ受け渡される。
次いで、
図6に示すように、姿勢変更装置4においては、駆動部44によって、スライド部43がガイドレール部42の下方から側方へ移動され、ワーク8が搭載されたスライダー2が姿勢変更レール41に配置された状態で、姿勢変更レール41が第2レール姿勢402に変更される。このとき、姿勢変更レール41の姿勢が第2レール3Bの姿勢に合わされて、姿勢変更レール41が第2レール3Bに接続される。また、スライダー2に搭載されたワーク8のケース側面83が鉛直上方向Fに向けられる。そして、姿勢変更レール41が第2レール姿勢402にある状態において、ワーク8が搭載されたスライダー2が姿勢変更レール41から第2レール3Bに受け渡される。
【0030】
次いで、
図3に示すように、第2レール3Bに配置されたスライダー2においては、回動ジョイント21によってワーク8が保持されたパレット7を回動させて、ワーク8における複数のケース側面83のうちのいずれかのケース側面83が鉛直上方向Fに向けられる。そして、第2レール3Bにおいては、ワーク8が搭載された複数のスライダー2が順次流れ、第2レール3Bに対向して配設された機械等によって、鉛直上方向Fから各ケース側面83に順次作業が行われる。
【0031】
このように、本例の搬送設備1においては、スライダー2に保持されたワーク8のケース正面81及び複数のケース側面83への作業を可能にする第1レール3A及び第2レール3Bの他に、姿勢変更レール41が設けられた姿勢変更装置4を用いる。また、搬送設備1においては、スライダー2に保持されたワーク8の姿勢を変更する構造が、姿勢変更装置4に集約されている。そして、第1レール3A及び第2レール3Bに対して複数のスライダー2をスライドさせ、複数のスライダー2にそれぞれ保持されたワーク8に作業を行う際に、スライダー2ごとに姿勢を変更する装置を設ける必要がない。
【0032】
また、機械5又は作業者が作業を行うためのワーク8の姿勢は、スライダー2とは別の姿勢変更装置4によって、ワーク8が保持されたスライダー2が配置された姿勢変更レール41の全体を回動させて変更することができる。そのため、スライダー2の構造を極めて簡単にすることができ、スライダー2の小型化を図ることができる。また、搬送設備1全体の構造を簡単にすることができ、その低コスト化を図ることができる。
【0033】
それ故、本例の搬送設備1によれば、複数の異なる姿勢のワーク8に対する作業を、簡単な設備によって容易に行うことができる。