(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一カルシウム除去工程は、水酸化ナトリウムを添加することで、混合処理水のpHを8.5以上9.5以下に調整し、炭酸カルシウムを析出分離してカルシウムを除去する処理を行った後の混合処理水に残存して含まれるカルシウム濃度を10mg/L以上50mg/L以下とするように、炭酸源の添加量の調整を行うこととする請求項1に記載の副生塩の製造方法。
第二カルシウム除去工程は、水酸化ナトリウムを添加することで、濃縮混合処理水のpHを10.5以上11.5以下に調整することとする請求項1又は請求項2に記載の副生塩の製造方法。
炭酸源は、二酸化炭素含有ガス、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムのいずれか一つであることとする請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載の副生塩の製造方法。
【背景技術】
【0002】
廃棄物ガス化炉などにより廃棄物をガス化して発生するガスに含まれる塩化水素を除去するために、水酸化ナトリウムを含む洗浄水により該ガスを洗浄して塩化水素を中和するガス洗浄が知られている。この場合、ガス洗浄後の洗浄処理水には塩化水素と水酸化ナトリウムの反応生成物である塩化ナトリウムを主成分とする塩が副生塩として含まれており、この副生塩を工業用原料や凍結防止剤の原料などとして使用することが試みられている。
【0003】
特許文献1に記載の廃棄物からの混合塩製造方法では、ガス化溶融炉で廃棄物を熱分解・ガス化して発生したガスは、酸洗浄され、次いでアルカリ洗浄され、該ガスに含まれる塩化水素ガスなどの酸性ガスが中和除去されて精製ガスとされ、洗浄後の酸洗浄処理水とアルカリ洗浄処理水の混合処理水から塩化ナトリウムが生成し、該塩化ナトリウムを含む混合処理水が水処理装置から塩製造装置に送られて、副生塩が製造される。
【0004】
廃棄物にフッ素が含まれていると、製造された副生塩にフッ素が含まれてこれが不純物となり、副生塩を工業用原料などとして使用する際に支障が生じる。そのため、副生塩に含まれるフッ素濃度を小さくする検討がなされ、特許文献2に記載の廃棄物処理方法では、フッ素を含む廃棄物を熱分解・ガス化し発生したガスを改質し、改質ガスを洗浄した洗浄処理水にカルシウム化合物を添加しフッ化カルシウムを析出分離してフッ素を除去して、フッ素の少ない副生塩を得ることとしている。
【0005】
特許文献2はその
図2に示されているように、洗浄処理水からのフッ素除去工程において、副生塩に含まれるフッ素を極力低減するために、改質ガスを洗浄した酸洗浄処理水とアルカリ洗浄処理水とを混合した混合処理水に塩化カルシウムを添加し、混合処理水に含まれるフッ素との反応によりフッ化カルシウムを析出させ分離除去する。このフッ素除去工程で、混合処理水中のフッ素量に対して過剰なカルシウム量となるように塩化カルシウムを添加しフッ化カルシウムを析出させ分離除去する。一方、最終的に製造される副生塩に含まれるカルシウムを極力低減するために、カルシウム・マグネシウム除去工程において混合処理水に炭酸源を十分に添加しカルシウムとの反応により炭酸カルシウムを析出させカルシウムを分離除去し、さらに、フッ素除去工程では十分に沈殿除去できず残存するフッ化カルシウム微粒子を炭酸カルシウム粒子と共沈させ除去している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2の
図2に示されている方法を実施する際に、副生塩を工業原料等に用いるときに不純物となるカルシウムを極力低減するために、カルシウム除去工程において混合処理水に炭酸源を多量に添加すると炭酸カルシウムの析出が多くなりカルシウムの除去は促進されるが、前段のフッ素除去工程で沈殿除去しきれなかった残存フッ素と反応しフッ化カルシウムを生成するためのカルシウム量が不足することとなり、このカルシウムの不足分を補うために前段のフッ素除去工程で添加する塩化カルシウム量を過剰に多くする必要が生じ、塩化カルシウム使用量が増加してしまうという問題が生じる。そのため、塩化カルシウム使用量の増大がない、さらに望ましくは、塩化カルシウムを添加する必要のないフッ素の少ない副生塩の製造方法が要望されている。
【0008】
また、カルシウム除去工程において炭酸源を多量に添加すると、次の反応式に見られるように、混合処理水に残存するフッ化カルシウムが炭酸源により分解されてフッ素が生成されてしまい、その結果、フッ素を除去することができないという問題が生じる。
CaF
2+CO
32−→CaCO
3+2F
-
【0009】
このような事情に鑑みて、本発明は、フッ素を含む廃棄物のガス化により生成される塩化水素とフッ素を含むガスを、水酸化ナトリウムを含む洗浄水で洗浄処理することにより洗浄処理水として得られる塩水に対して、塩化カルシウムを添加せずに、該塩水からフッ素の少ない副生塩を製造する副生塩の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者等は、フッ素を含む廃棄物のガス化により生成されたガスを、冷却・酸洗浄した酸洗浄処理水にはカルシウムが存在することに着目し、この酸洗浄処理水中のカルシウムとアルカリ洗浄処理水に含まれるフッ素との反応により、酸洗浄処理水とアルカリ処理水との混合処理水でフッ化カルシウムを析出させ分離除去して該混合処理水からフッ素を除去し、塩化カルシウムを添加せずにフッ素の少ない副生塩を製造する方法を導き出した。
【0011】
本発明に係る副生塩の製造方法は、フッ素を含む廃棄物のガス化により生成される塩化水素とフッ素を含むガスを酸洗浄水、水酸化ナトリウムを含むアルカリ洗浄水で順次洗浄する洗浄処理に供した酸洗浄処理水とアルカリ洗浄処理水とを混合した混合処理水から副生塩を製造する。
【0012】
かかる副生塩の製造方法において、本発明では、混合処理水に水酸化ナトリウムを添加して、該混合処理水中のフッ素とカルシウムとを反応させフッ化カルシウムを析出して該フッ化カルシウムを分離除去し、フッ素を除去するフッ素除去工程と、フッ素除去工程でフッ化カルシウムを除去した混合処理水に水酸化ナトリウムと炭酸源を添加して炭酸カルシウムを析出して該炭酸カルシウムを分離除去し、カルシウムを除去する第一カルシウム除去工程と、第一カルシウム除去工程で炭酸カルシウムを除去した混合処理水から水分を低減して濃縮混合処理水を生成する濃縮工程と、濃縮混合処理水に水酸化ナトリウムと炭酸源を添加してさらに炭酸カルシウムを析出して該炭酸カルシウムを分離除去し、カルシウムを除去する第二カルシウム除去工程とを有することを特徴としている。
【0013】
このような工程を経ることとした本発明によると、廃棄物のガス化により生じた塩化水素やフッ素を含むガスを洗浄処理してカルシウムを含む酸洗浄処理水とフッ素を含むアルカリ洗浄処理水の混合処理水は、フッ素除去工程で水酸化ナトリウムの添加により、フッ化カルシウムを析出し、このフッ化カルシウムが分離除去される。このフッ化カルシウムが除去された後の混合処理水は、次に第一カルシウム除去工程にて、水酸化ナトリウムと炭酸源の添加を受けて、炭酸カルシウムを析出し、これが分離除去される。しかる後、混合処理水は濃縮工程で水分が低減されて濃縮され、第二カルシウム工程へもたらされる。第二カルシウム工程では、濃縮された混合処理水は水酸化ナトリウムと炭酸源が添加されて、さらに炭酸カルシウムを析出して、これが分離除去されることでカルシウムが除去される。
【0014】
かかる工程を経る過程にて、カルシウムとフッ素との反応により析出するフッ化カルシウムは微粒子であるので、速やかに沈殿させ分離除去することが困難であり、フッ素除去工程でフッ化カルシウムを析出し或る程度は分離できるが、十分に除去できずに洗浄処理水にはフッ化カルシウム微粒子が残存してしまう。このように、フッ素除去工程の後にフッ化カルシウム微粒子が残存しカルシウムを含む洗浄処理水に、第一カルシウム除去工程と第二カルシウム除去工程で、炭酸源を添加し炭酸カルシウム粒子を析出させ分離除去するとともに、フッ化カルシウム微粒子を炭酸カルシウム粒子により共沈させ分離除去することができる。
【0015】
このようにして、フッ素を含む廃棄物のガス化により生成されたガスを、冷却・酸洗浄した酸洗浄処理水にはカルシウムが存在しているので、このカルシウムとアルカリ洗浄処理水に含まれるフッ素との反応によりフッ化カルシウムを析出させ分離除去して混合洗浄処理水からフッ素を除去し、塩化カルシウムを添加せずにフッ素の少ない副生塩を製造することができるようになる。
【0016】
本発明において、第一カルシウム除去工程は、水酸化ナトリウムを添加することで、混合処理水のpHを8.5以上9.5以下に調整し、炭酸カルシウムを析出分離してカルシウムを除去する処理を行った後の混合処理水に残存して含まれるカルシウム濃度を10mg/L以上50mg/L以下とするように、炭酸源の添加量の調整を行うことが好ましい。
【0017】
混合処理水のpHが下限値の8.5より低いと炭酸カルシウムの析出が困難であり、上限値の9.5より高いと析出しているフッ化カルシウムが分解されてしまうので好ましくない。また、洗浄処理水に残存して含まれるカルシウム濃度が下限値の10mg/Lより低いと、第二カルシウム除去工程で炭酸カルシウムの析出が困難であり、上限値の50mg/Lより高いと第二カルシウム除去工程で炭酸源を多く添加する必要があり、炭酸源により析出しているフッ化カルシウムが分解されてしまうので好ましくない。
【0018】
このようにpHが調整された混合洗浄処理水にカルシウムを上述の所定濃度範囲で残存させるように添加する炭酸源量を調整して、カルシウム濃度を所定濃度範囲に調整することにより、残存するフッ素と反応してフッ化カルシウムを析出するカルシウムを炭酸源を添加した混合処理水中に存在させることができ、濃縮工程により濃度を高くした濃縮混合処理水に、第二カルシウム除去工程において炭酸源を添加し炭酸カルシウム粒子を析出させ、フッ化カルシウム微粒子を炭酸カルシウム粒子により共沈させ除去することが効率よくでき、副生塩に含まれるフッ素濃度を極めて低い濃度にまで低減することができる。
【0019】
第一カルシウム除去工程では、混合処理水にカルシウムを所定濃度範囲で残存させるように添加する炭酸源量を調整するので、炭酸源を過剰に添加することがないため、混合洗浄水に残存するフッ化カルシウムが炭酸源により分解され、フッ素が生成されてしまうことを防止できる。
【0020】
本発明において、第二カルシウム除去工程は、水酸化ナトリウムを添加することで、濃縮混合処理水のpHを10.5以上11.5以下に調整することが好ましい。
【0021】
酸洗浄水には、廃棄物に含まれる珪素(Si)とフッ素とカリウム又はナトリウムとが反応して生成したケイフッ化塩(K
2(SiF
6)、Na
2(SiF
6))が含まれており、混合処理水に含まれるこれらのケイフッ化塩を第二カルシウム除去工程で除去する。濃縮混合処理水のpHを10.5以上11.5以下の高pHとすることにより、ケイフッ化塩を次の反応式のように分解し、さらにカルシウムと反応させ、フッ化カルシウムCaF
2を生成して炭酸カルシウム粒子により共沈させ除去する。
【0022】
Na
2(SiF
6)+2H
2O→6HF+SiO
2
HF+Ca
+→2H
++CaF
2
K
2(SiF
6)も同様に分解する。
【0023】
濃縮混合処理水のpHが下限値の10.5より低いとケイフッ化塩の分解が困難であり、上限値の11.5より高いと析出しているフッ化カルシウムが分解されるので好ましくない。
【0024】
本発明において、炭酸源は、CO
3を供給するものであり、二酸化炭素含有ガス、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムのいずれか一つとすることができる。また、二酸化炭素含有ガスとして燃焼炉、焼却炉から排出される二酸化炭素含有排ガスを用いてもよく、排ガスを有効利用でき、処理コストを低減できる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明では、フッ素を含む廃棄物のガス化により生成される塩化水素とフッ素を含むガスを酸洗浄した酸洗浄処理水とアルカリ洗浄したアルカリ洗浄処理水の混合処理水としての塩水を、フッ素除去工程、第一カルシウム除去工程、濃縮工程そして第二カルシウム除去工程を経て処理され、処理に際し、炭酸源と水酸化ナトリウムの添加を受けることとしたので、従来のように混合処理水に塩化カルシウムを添加せずともフッ素の少ない副生塩を製造することができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面にもとづいて、本発明に係る副生塩の製造方法の実施形態を説明する。
【0028】
図1は、本実施形態に係る副生塩の製造方法の工程を示すブロック図である。
【0029】
図1には、外部から供給されたフッ素を含む廃棄物を熱分解・部分酸化させることによりガス化して生成したガス化ガス(粗ガス)を酸洗浄水及びアルカリ洗浄水によって洗浄して精製ガスを生成するガス精製工程Iと、該ガス精製工程で使用された洗浄処理水から副生塩を製造する副生塩製造工程IIとが示されている。本実施形態に係る副生塩の製造方法は、上記副生塩製造工程IIにより構成されている。
【0030】
[ガス化ガス]
フッ素を含む廃棄物を熱分解・部分酸化させることによりガス化して生成したガス化ガスには、水素、一酸化炭素、炭化水素の可燃ガス、硫化水素(H
2S)、塩化水素(HCl)、フッ化水素(HF)、金属類、廃棄物の灰成分に由来するカルシウム(Ca)、珪素(Si)等が含まれている。
【0031】
[ガス精製工程]
上記ガス精製工程Iは、上記ガス化ガスを酸洗浄水により冷却そして洗浄する冷却・酸洗浄工程11と、該冷却・酸洗浄工程11からのガス化ガスをアルカリ洗浄水により洗浄するアルカリ洗浄工程12と、該アルカリ洗浄工程12からのガス化ガスに脱硫液による脱硫処理を施す脱硫工程13と、水分を除去する除湿工程14とを有しており、これらの工程で、ガス化ガスは次のごとく処理されて精製ガスとなる。
【0032】
<冷却・酸洗浄工程>
冷却・酸洗浄工程11は、ガス化ガスにpH2〜6の酸洗浄水を噴霧するなどして接触させ、該ガス化ガスを冷却および洗浄する冷却・酸洗浄を行い、ガス化ガス中の金属類、そしてカルシウム、珪素を酸洗浄水に溶解あるいは捕捉させて、該ガス化ガス中から除去し、洗浄後の酸洗浄処理水にこの除去成分を溶解含有せしめる。
【0033】
冷却・酸洗浄工程でのガス洗浄に使用された酸洗浄処理水は回収され、再度、該冷却・酸洗浄工程に供給されることにより該酸洗浄水として循環使用されている。上記ガス洗浄に使用された酸洗浄処理水には、ガス化ガスから除去した上記除去成分が蓄積される。該酸洗浄処理水は一部が抜き出されて副生塩製造工程IIへ送られ、後述するように、中和処理そして副生塩製造処理が行われる。
【0034】
<アルカリ洗浄工程>
アルカリ洗浄工程12は、上記冷却・酸洗浄工程11で冷却・酸洗浄されたガス化ガスにアルカリ洗浄水を噴霧するなどして接触させ、該ガス化ガスを洗浄するアルカリ洗浄を行い、該ガス化ガス中の塩化水素(HCl)、フッ化水素(HF)をアルカリ洗浄水に溶解させて該ガス化ガスから除去し、洗浄後のアルカリ洗浄処理水にこの除去成分を溶解含有せしめる。
【0035】
アルカリ洗浄工程12でのガス洗浄に使用されたアルカリ洗浄処理水は回収され、再度、該アルカリ洗浄工程12に供給されることによりアルカリ洗浄水として循環使用されている。上記アルカリ洗浄工程12で供給されるアルカリ洗浄水は、好ましい形態として、ガス化ガスの洗浄に先立ち水酸化ナトリウム(NaOH)が添加されることによりpHが7〜8.5に調整されている。また、上記アルカリ洗浄工程でのガス洗浄に使用されたアルカリ洗浄処理水には、ガス化ガスから除去した塩化水素(HCl)が水酸化ナトリウムと反応して生成された塩化ナトリウム(NaCl)と、フッ化水素(HF)が水酸化ナトリウムと反応して生成されたフッ化ナトリウム(NaF)がそれぞれ溶解して蓄積される。アルカリ洗浄処理水は一部が抜き出されて副生塩製造工程IIへ送られ、後述するように、副生塩製造処理が行われる。
【0036】
<脱硫工程>
脱硫工程13は、アルカリ洗浄工程12で洗浄されたガス化ガスに鉄キレート剤(鉄キレート錯体)を含む脱硫液を接触させ、該ガス化ガスから硫化水素(H
2S)を除去する。そして、硫化水素が除去されたガス化ガスは精製ガスとして該脱硫工程13から送り出される。脱硫液として鉄キレート剤を使用する脱硫方法は公知であるので、ここでは説明を省略する。本実施形態では、鉄キレート剤を用いて脱硫することとしたが、脱硫方法はこれに限られず、例えば、ナフトキノンスルホン酸ナトリウムを用いる脱硫、ピクリン酸を用いる脱硫、タカハックス、フマックスロダックスなどの方法を適用することができる。
【0037】
<除湿工程>
脱硫工程13で硫化水素が除去されたガス化ガスは、除湿工程14にて水分を除去され、精製ガスとして送り出される。
【0038】
このように、上記ガス化ガスは、上記冷却・酸洗浄工程11、アルカリ洗浄工程12、脱硫工程13そして除湿工程14を経て精製される。精製されたガス化ガスは燃料用ガスなどとして利用される。
【0039】
[副生塩製造工程]
次に、上述のガス精製工程Iにてガスの洗浄に使用された酸洗浄処理水およびアルカリ洗浄処理水から副生塩を製造するための副生塩製造工程IIについて説明する。
【0040】
ガス化ガスの洗浄に使用された酸洗浄処理水およびアルカリ洗浄処理水には、該ガス化ガスから除去した成分が蓄積されており、上記副生塩製造工程IIは上記酸洗浄処理水およびアルカリ洗浄処理水から、ガス化ガスから除去した成分のうち副生塩の不純物となる成分を除去して副生塩を製造する。
【0041】
副生塩製造工程IIは、後述の酸洗浄処理水の固液分離工程21、混合工程22、フッ素除去工程23、第一カルシウム除去工程24、濃縮工程25、第二カルシウム除去工程26、晶析工程27及び脱水工程28を順に有している。以下、各工程について説明する。
【0042】
<酸洗浄処理水の固液分離工程>
酸洗浄処理水の固液分離工程21では、冷却・酸洗浄工程11でガス化ガスの洗浄に使用された酸洗浄処理水に含まれるダスト等固形物を固液分離し、残部の酸洗浄処理水を混合工程22へ供給する。固液分離装置21の形態は特に制限を受けるものではなく、比重沈降分離装置、遠心分離装置、ろ過装置、精密ろ過膜装置、限外ろ過膜装置などを用いた膜分離装置とすることができる。また、後述の工程で用いる固液分離装置についても同様である。
【0043】
<混合工程>
混合工程22では、上記固液分離工程21で固液分離処理された酸洗浄処理水と、ガス精製工程Iのアルカリ洗浄工程12で一部抜き出されたアルカリ洗浄処理水とを混合して混合処理水とする。該酸洗浄処理水には、金属類、カルシウムシウムなどの不純物成分が蓄積されている。また、酸洗浄処理水には、廃棄物に含まれる珪素(Si)とフッ素とカリウム又はナトリウムとが反応して生成したケイフッ化塩(K
2(SiF
6)、Na
2(SiF
6))が含まれている。
【0044】
また、上記アルカリ洗浄処理水には塩化ナトリウム、フッ素が蓄積されている。該混合処理水は副生塩である塩化ナトリウムを主成分とし、金属類、カルシウム、フッ素、ケイフッ化塩などの不純物成分も含んでいる。本実施形態では、以下の工程で該不純物成分が分離除去されることにより、塩化ナトリウムの純度を高める副生塩の製造処理が行われる。
【0045】
<フッ素除去工程>
フッ素除去工程23では、該フッ素除去工程23のための反応槽(図示せず)にて、pHの低い混合処理水に水酸化ナトリウム(NaOH)を添加しpHを5〜7に調整して、アルカリ洗浄処理水に含まれるフッ素と、酸洗浄処理水に含まれるカルシウムとの反応によりフッ化カルシウムが生成され析出される。そして、フッ素除去工程23のための固液分離装置(図示せず)にて上記フッ化カルシウムが固形分として分離除去される。該固形分が分離された混合処理水は次段の第一カルシウム除去工程24へ供給される。析出したフッ化カルシウムは微粒子であるため、沈殿除去に時間がかり、固液分離装置にて完全には分離除去されず、混合処理水に残存するが、後述する第一及び第二カルシウム除去工程にて析出させる炭酸カルシウムと共沈させることにより、分離除去を十分に行う。また、フッ化カルシウムの析出に到らずフッ素として残存するものもあるが、後述する第一及び第二カルシウム除去工程にてフッ化カルシウムとして析出させ炭酸カルシウムと共沈させて、分離除去し、フッ素の除去を確実に行う。
【0046】
フッ素除去工程23にて、酸洗浄処理水に含まれるカルシウムイオンと、アルカリ洗浄処理水のフッ素とが反応しフッ化カルシウムが生成されるが、外部からの塩化カルシウムの添加によるカルシウム量の増加に依ることなく、酸洗浄処理水に含まれるカルシウム量で、混合処理水中のフッ素と反応させフッ化カルシウムを生成し析出し分離する。後述する第一及び第二カルシウム除去工程において炭酸カルシウムを析出させるとともに、フッ化カルシウム微粒子を共沈させ分離することにより、フッ化カルシウム析出によるフッ素除去を促進させるため、酸洗浄処理水に含まれるカルシウム量で十分にフッ化カルシウムを析出させフッ素を除去することができる。
【0047】
外部から塩化カルシウムを添加する必要がないため、フッ素除去のためのコストを低減することができる。
【0048】
フッ素除去工程23においては、混合処理水から亜鉛・鉛等の金属類も除去される。フッ素除去工程23では、該フッ素除去工程23のための反応槽(図示せず)にて、混合処理水に水酸化ナトリウムを添加しpHを5〜7に調整して、混合処理水中の亜鉛イオン、鉛イオンが水酸化物すなわち水酸化亜鉛(Zn(OH)
2)および水酸化鉛(Pb(OH)
2)として析出される。そして、フッ素除去工程23のための固液分離装置(図示せず)にてこれらの水酸化物も固形分として分離除去される。
【0049】
<第一カルシウム除去工程>
第一カルシウム除去工程24では、該第一カルシウム除去工程24のための反応槽(図示せず)にて、フッ素除去工程23から供給される混合処理水に、炭酸源として二酸化炭素(CO
2)を含む排ガス、炭酸ナトリウム(Na
2CO
3)及び炭酸水素ナトリウム(NaHCO
3)のいずれかを添加して、さらに水酸化ナトリウム(NaOH)を添加して、好ましくは、混合処理水のpHを8.5〜9.5に調整して、混合処理水中に含まれているカルシウムを炭酸カルシウム(CaCO
3)として析出する。また、フッ素除去工程23で析出し残存するフッ化カルシウム微粒子を炭酸カルシウム粒子と共沈させる。そして、第一カルシウム除去工程24のための固液分離装置(図示せず)にて炭酸カルシウムとフッ化カルシウムが固形分として分離除去される。該固形分が除去された混合処理水は次の濃縮工程25に供給される。
【0050】
第一カルシウム除去工程24において、混合処理水のpHを8.5以上9.5以下に調整し、炭酸カルシウムを析出分離しカルシウムを除去する処理を行った後の混合処理水に残存して含まれるカルシウム濃度を10mg/L以上50mg/L以下とするように添加する炭酸源量を調整するのが好ましい。
【0051】
混合処理水のpHが下限値の8.5より低いと炭酸カルシウムの析出が困難であり、上限値の9.5より高いと析出しているフッ化カルシウムが分解されるので好ましくない。また、混合処理水に残存して含まれるカルシウム濃度が下限値の10mg/Lより低いと、第二カルシウム除去工程で炭酸カルシウムの析出が困難であり、上限値の50mg/Lより高いと第二カルシウム除去工程26で炭酸源を多く添加する必要があり、炭酸源により析出しているフッ化カルシウムが分解されるので好ましくない。混合処理水に残存して含まれるカルシウム濃度を例えばICP発光分光分析法により測定して、混合処理水に残存して含まれるカルシウム濃度が所定範囲となるように、添加する炭酸源量を調整する。
【0052】
このように混合処理水にカルシウムを所定濃度範囲で残存させるように添加する炭酸源量を調整して、第一カルシウム除去工程24で、混合処理水に残存して含まれるカルシウム濃度を調整することにより、フッ素除去工程23で除去しきれずに残存するフッ素と反応してフッ化カルシウムを析出するためのカルシウムを混合処理水中に存在させることができる。濃縮工程25により濃度が高められた濃縮混合処理水に、第二カルシウム除去工程26において炭酸源を添加し、炭酸カルシウム粒子を析出させ、沈殿せず残存していたフッ化カルシウム微粒子と、この工程で析出したフッ化カルシウム微粒子とを炭酸カルシウム粒子により共沈させ除去することが効率よくでき、副生塩に含まれるフッ素濃度を極力低減することができる。炭酸源として二酸化炭素を含む排ガスを用いることにより、炭酸源を供給する費用を低くすることができる。二酸化炭素を含む排ガスとして、廃棄物ガス化炉で生成したガス化ガスを燃焼した排ガス、焼却炉排ガスを用いることができる。
【0053】
<濃縮工程>
濃縮工程25では、混合処理水を加熱して水分を蒸発させて濃縮することにより濃縮混合処理水を生成する。上記濃縮混合処理水は次の第二カルシウム除去工程26に供給される。濃縮することにより第一カルシウム除去工程24の処理後の混合処理水に残存するカルシウムとフッ素の濃度を高め、第二カルシウム除去工程26での炭酸カルシウムとフッ化カルシウムの析出を促進させる。濃縮方法としては、多重効用缶により混合処理水を加熱して水分を蒸発させる方法、逆浸透膜、電気透析などを用いることができる。
【0054】
混合処理水にアンモニウムイオンが含まれている場合には、真空蒸発によりアンモニアを除去する、いわゆるストリッピングを行うことが好ましい。
【0055】
<第二カルシウム除去工程>
第二カルシウム除去工程26では、該第二カルシウム除去工程26のための反応槽(図示せず)にて、濃縮工程25から供給される濃縮混合処理水に炭酸源として二酸化炭素を含む排ガス、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムのいずれかを添加して、さらに水酸化ナトリウムを添加して濃縮混合処理水のpHを10.5〜11.5に調整して、濃縮混合処理水中に含まれているカルシウムを炭酸カルシウム(CaCO
3)として析出する。また、フッ素除去工程23で析出し残存するフッ化カルシウム微粒子と、残存していたフッ素とカルシウムとの反応によりこの工程で析出したフッ化カルシウム微粒子とを炭酸カルシウム粒子と共沈させる。そして、第二カルシウム除去工程26のための固液分離装置(図示せず)にて炭酸カルシウムとフッ化カルシウムが固形分として分離除去される。該固形分が除去された濃縮混合処理水は次の晶析工程27に供給される。
【0056】
第一カルシウム除去工程24と第二カルシウム除去工程26において、フッ素除去工程23で析出し残存するフッ化カルシウム微粒子を炭酸カルシウム粒子と共沈させ、固形分として分離除去することにより、フッ化カルシウム析出によるフッ素除去を促進させるため、酸洗浄処理水に含まれるカルシウム量で十分にフッ化カルシウムを析出させフッ素を除去することができる。そのため、外部から塩化カルシウムを添加する必要がないため、フッ素除去のためのコストを低減することができる。
【0057】
第一カルシウム除去工程24からの混合処理水が濃縮工程25で濃縮されて濃縮混合処理水にされることにより、該濃縮混合処理水中のカルシウム濃度が高くなるので、第二カルシウム除去工程26にて炭酸カルシウムが十分に析出して、濃縮混合処理水中に残存していたカルシウムを除去することができる。また、フッ化カルシウム濃度も高くなるので、炭酸カルシウムとの共沈が促進され効率よく除去される。
【0058】
第二カルシウム除去工程26において、濃縮混合処理水のpHを10.5以上11.5以下に調整することが好ましい。酸洗浄処理水には、廃棄物に含まれていた珪素(Si)とフッ素とカリウム又はナトリウムとが反応して生成したケイフッ化塩(K
2(SiF
6)、Na
2(SiF
6))が含まれており、混合処理水に含まれるこれらのケイフッ化塩を第二カルシウム除去工程26で除去する。濃縮混合処理水のpHを10.5以上11.5以下の高いpH値とすることにより、ケイフッ化塩を次式のように分解し、さらにカルシウムと反応させ、フッ化カルシウムCaF
2を生成して炭酸カルシウム粒子により共沈させ除去する。
【0059】
Na
2(SiF
6)+2H
2O→6HF+SiO
2
HF+Ca
+→2H
++CaF
2
K
2(SiF
6)も同様に分解する。
【0060】
濃縮混合処理水のpHが下限値10.5より低いとケイフッ化塩の分解が困難であり、上限値の11.5より高いと析出しているフッ化カルシウムが分解されるので好ましくない。
【0061】
第二カルシウム除去工程26において、混合処理水に添加する炭酸源として炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムのいずれかのようにナトリウム塩を添加することにより、副生塩の主成分であるNaCl以外の成分を少なくすることができ、純度の高い副生塩を製造することができる。
【0062】
<晶析工程>
晶析工程27では、濃縮混合処理水を蒸発缶によって蒸発濃縮するか、冷却することにより、該濃縮混合処理水中に溶解している塩の濃度を飽和溶解度以上に高くして塩結晶を析出させ、塩化ナトリウムを晶析させて塩スラリーとして取り出す。該塩スラリーは次の脱水工程28に供給される。既述したフッ素、カルシウムの不純物成分の大部分は、フッ素除去工程23と第一カルシウム除去工程24と第二カルシウム除去工程26とで除去されているが、晶析工程27を経ることにより残存する不純物を分離して、純度の高い塩化ナトリウムを得ることができる。
【0063】
<脱水工程>
脱水工程28では、上記晶析工程27にて晶析した塩を含む塩スラリーから脱水して塩化ナトリウム濃度の高い副生塩を得る。脱水工程28のための脱水装置(図示せず)としては回分式の固液分離装置を用いることが好ましく、遠心分離機、真空ろ過機等を用いることができる。
【実施例】
【0064】
次に、本発明の実施例を比較例とともに示すことにする。
【0065】
<比較例>
フッ素除去工程→カルシウム除去工程
フッ素を含む廃棄物をガス化溶融炉でガス化し、ガス化ガスをpH2〜3の酸洗浄水で急冷・酸洗浄し、さらにpH7.6のアルカリ洗浄水でアルカリ洗浄した。混合工程にて、酸洗浄処理水とアルカリ洗浄処理水とを混合した。混合処理水中のカルシウム濃度は約120mg/L(約3mol-Ca/L)であり、フッ素濃度は約230mg/L(約12mol-F/L)であった。
【0066】
フッ素除去工程にて混合処理水に水酸化ナトリウムを添加しpHを5〜7に調整しフッ化カルシウムを分離除去した。カルシウム除去工程にて、二酸化炭素を含む排ガスを混合処理水に吹き込み、混合処理水のpHを10に調整し炭酸カルシウムを沈殿させ固液分離して混合処理水からカルシウムを除去した。カルシウムを除去した混合処理水を多重効用缶で濃縮し、濃縮混合処理水を蒸発型晶析装置に装入し、晶析によって得られた塩スラリー液を脱水機に装入・脱液し副生塩を製造した。得られた副生塩の10mass%水溶液のフッ素濃度は150 mg/Lであり、フッ素を十分に低減することができなかった。
【0067】
<実施例>
フッ素除去工程→第一カルシウム除去工程→濃縮工程→第二カルシウム除去工程
フッ素を含む廃棄物をガス化溶融炉でガス化し、ガス化ガスをpH2〜3の酸洗浄水で急冷・酸洗浄し、さらにpH7.6のアルカリ洗浄水でアルカリ洗浄を施した。混合工程にて、酸洗浄処理水とアルカリ洗浄処理水とを混合した。混合処理水中のカルシウム濃度は約120mg/L(約3mol-Ca/L)であり、フッ素濃度は約230mg/L(約12mol-F/L)であった。
【0068】
フッ素除去工程にて混合処理水に水酸化ナトリウムを添加しpHを5〜7に調整しフッ化カルシウムを分離除去した。第一カルシウム除去工程にて、二酸化炭素を含む排ガスを混合処理水に吹き込み、混合処理水のpHを9に調整し炭酸カルシウムを沈殿させ固液分離して混合処理水からカルシウムを除去した。吹き込む二酸化炭素を含む排ガス量を調整し得られた混合処理水のカルシウム濃度を15mg/Lとした。カルシウムを除去した混合処理水を多重効用缶で濃縮し、濃縮洗浄水に炭酸ナトリウムを添加し炭酸カルシウムを沈殿させ固液分離し、蒸発型晶析装置に装入し、晶析によって得られた塩スラリー液を脱水機に装入・脱液し副生塩を製造した。得られた副生塩の10mass%水溶液のフッ素濃度は2 mg/Lであり、フッ素を十分に低減することができた。