(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のフード跳ね上げ装置では、フードパネルの後端を押し上げた後、下降しないように、押し上げた状態を維持する必要があり、別途、ストッパ等が必要となり、嵩張ることとなっていた。また、フードパネルの後端に、フードパネルを開閉するヒンジ機構が配設される場合、そのヒンジ機構が剛性を有して構成されていれば、ヒンジ機構の配設部位に対して上方から押圧力が作用する際、緩衝作用を発揮し難いという課題もあった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、押し上げたフードパネルが円滑に緩衝作用を発揮でき、かつ、コンパクトに構成できるフード跳ね上げ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るフード跳ね上げ装置では、車両のフードパネルの前端側を上昇させて前記フードパネルを開く構成とするヒンジ機構
と、
内蔵したガス発生器から発生する作動用ガスにより作動されるアクチュエータと、
それぞれ、両端の一方を先端として他方を元部とする二つのリンク片と、
を備えるフード跳ね上げ装置であり、
前記ヒンジ機構が、
前記フードパネルの後端側に配設されるとともに、
前記フードパネルの後端の下面側に配設されるフード側ベースと、
前記フードパネルの下方の車体側に固定される車体側ベースと、
前記フード側ベースと前記車体側ベースとに軸支されるヒンジアームと、
を備えて、
前記フードパネルの開き時の回転中心が、前記ヒンジアームと前記車体側ベースとの軸支部位とし、
二つの前記リンク片の一方が、先端を、前記フード側ベースに軸支させたフード側リンク片とし、
二つの前記リンク片の他方が、先端を、前記ヒンジアームに軸支させたアーム側リンク片とし、
前記アクチュエータが、
リング側部と非リンク側部とを備えて、
作動時に、前記リンク側部を
前記非リンク側部から押し出
すとともに、
前記リンク側部の先端に、前記フード側リンク片と前記アーム側リンク片とのそれぞれの元部側を、軸支さ
せ、かつ、
前記アクチュエータが、
作動時
に、前記リンク側部を押し出して、前記フード側リンク片と前記アーム側リンク片との元部側の交差角を広げ、前記フード側ベースを前記車体側ベース側から押し上げ
るフード跳ね上げ装置であって、
前記アクチュエータが、作動完了時に、前記フード側リンク片と前記アーム側リンク片とのそれぞれの元部側の元側軸支部を、前記フード側リンク片と前記アーム側リンク片とのそれぞれの先端側の先側軸支部相互の間で、死点を越えた位置で停止させるように、作動ストロークを設定され、
前記フード側リンク片と前記アーム側リンク片とが、前記アクチュエータの作動完了後の前記フードパネル後端への上方からの押圧力の作用時に、塑性変形しつつ、前記フードパネル後端を前記車体側ベース側へ接近可能に、構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るフード跳ね上げ装置では、作動時、アクチュエータが、ガス発生器の作動により発生した作動用ガスによって、リンク側部を押し出すことから、リンク側部の先端に共に軸支されたフード側リンク片とアーム側リンク片との元側軸支部相互も押し出されて、フード側リンク片とアーム側リンク片との相互の交差角が拡開するように広がり、フード側ベースを車体側ベースから押し上げて、フードパネルの後端を押し上げる(跳ね上げる)ことができる。そしてさらに、アクチュエータの作動完了時の作動ストロークは、フード側リンク片とアーム側リンク片との相互の元側軸支部を、フード側リンク片とアーム側リンク片とのそれぞれの先端側の先側軸支部相互の間で、死点を越えた位置で停止させるように、設定されており、アクチュエータが作動を完了させれば、アクチュエータの作動用ガスの圧力により、リンク側部が押し戻されないことと相俟って、フード側リンク片とアーム側リンク片とは、フードパネルの重量が加わっても、死点を乗り越えて、作動当初の位置側に戻らない。そのため、嵩張るようなストッパ等を設けずに、コンパクトな構成として、フードパネルの後端は、アクチュエータの作動後において、押し上げられた状態を維持される。
【0008】
そして、フードパネルのヒンジ機構付近に、上方から歩行者等の保護対象物が落下して押圧力が作用しても、フード側リンク片とアーム側リンク片とが、フードパネル後端を車体側ベース側へ接近させるように、塑性変形することから、その保護対象物の運動エネルギーを吸収することができて、保護対象物に作用するフードパネル側からの反力を抑制でき、フードパネルが、円滑に緩衝作用を発揮して、反力(衝撃)を緩和して保護対象物を受け止めることができる。
【0009】
勿論、フードパネルは、押し上げられていれば、その下方に変形スペースが確保されており、ヒンジ機構の配設部位から外れた位置に保護対象物が当たっても、フードパネル自体が下方へ凹むように変形できて、円滑に緩衝作用を発揮できる。
【0010】
また、本発明に係るフード跳ね上げ装置では、フード側リンク片とアーム側リンク片とを略直線状に配置させた死点を越えて作動完了となり、作動完了直前のフードパネルの後端の上昇速度は、作動当初に比べて、低下する構成となっていることから、フードパネルは、上昇完了位置付近で、最上昇位置から反動により下降するような挙動、すなわち、揺動運動が防止され、上昇完了位置への配置直後に保護対象物を受け止めても、静止状態で、その保護対象物を受け止めることができて、安定した緩衝作用を発揮できる。
【0011】
さらに、本発明に係るフード跳ね上げ装置では、アクチュエータが、ガス発生器から発生した作動用ガスによりリンク側部を押し出す構成であり、ガス発生器から作動用ガスが発生しなくなった後は、リンク側部を戻すことが可能となって、押し上げたフードパネルを元の位置に下降させることができ、作動後の視界の妨げを防止できる。
【0012】
したがって、本発明に係るフード跳ね上げ装置では、押し上げたフードパネルが円滑に安定した緩衝作用を発揮できるとともに、コンパクトに構成でき、さらに、作動後、容易にフードパネルを元の位置に戻すこともできる。
【0013】
そして、本発明に係るフード跳ね上げ装置では、前記アクチュエータ
の前記非リンク側部が、前記リンク側部から離れた端部側を、前記ヒンジアームに軸支さ
せていることが望ましい。
【0014】
このような構成では、フード跳ね上げ装置の駆動機構を構成するアクチュエータとトグル機構の二つのリンク片(フード側リンク片とアーム側リンク片)とを、ヒンジ機構を構成するフード側ベースとヒンジアームとの2部品だけに対して、軸支させるだけで構成できることから、一層、コンパクトに構成できるとともに、駆動機構の組付作業を容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のフード跳ね上げ装置Uは、
図1〜3に示すように、車両Vにおけるフードパネル10の後端10c側の左右に配設され、ヒンジ機構11と、駆動機構20と、を備えて構成される。
【0017】
なお、本明細書では、特に断らない限り、前後と上下の方向は、それぞれ、車両V(
図1参照)の前後と上下の方向に一致し、左右の方向は、車両Vから前方側を見た際の左右の方向に一致させている。
【0018】
また、実施形態の場合、車両Vのフロントバンパ5には、
図1に示すように、保護対象物としての歩行者との衝突を検知若しくは予測可能なセンサ6が、配設されており、センサ6からの信号を入力させている図示しない制御回路が、センサ6からの信号に基づいて車両Vと歩行者との衝突を検知した際に、フード跳ね上げ装置Uが作動されることとなる。
【0019】
フードパネル10は、
図1,2に示すように、車両VにおけるエンジンルームERの上方を覆うように配設されるもので、左右方向の両縁10d,10e側における後端10c近傍に配置されるヒンジ機構11により、車両Vの車体(ボディ)1側に対して、前開きで開閉可能に連結されている。フードパネル10は、鋼、アルミニウム合金等からなる板金製として、上面側のアウタパネル10aと、下面側に位置してアウタパネル10aより強度を向上させたインナパネル10bと、から構成されている。フードパネル10は、歩行者を受け止めた際に、歩行者の運動エネルギー(衝撃エネルギー)を吸収できるように、塑性変形可能に構成されている。そして、実施形態では、車両Vと歩行者との衝突時に、フード跳ね上げ装置Uが作動されて、
図3に示すように、上昇したフードパネル10の後端10cと、エンジンルームERと、の間に、変形スペースSを形成できることから、曲げ塑性変形時の塑性変形量を増大させることができ、フードパネル10は、歩行者の運動エネルギー(衝撃エネルギー)を多く吸収することができる。
【0020】
ヒンジ機構11は、フードパネル10の左縁10dと右縁10eとの後端10c側に、それぞれ、配設される。なお、左右のヒンジ機構11は、左右対称形として配設されている。そして、各ヒンジ機構11は、フードパネル10の後端10cの下方におけるボディ1側に固定される車体側(ボディ側)ベース12と、フードパネル10の後端10cの下面側に配置されるフード側ベース15と、車体側ベース12とフード側ベース15とに軸支されるヒンジアーム14と、を備えて構成される。これらのヒンジ機構11の車体側ベース12、ヒンジアーム14、及び、フード側ベース15は、剛性を有した鋼等の金属材料から形成されている。
【0021】
車体側ベース12は、ボディ1側のフードリッジリインホース2に連結された取付フランジ2aに、固定されている。そして、ヒンジ機構11は、フードパネル10の通常使用の開き時に、ヒンジアーム14の車体側ベース12側となる元部端(後端)14b側の軸支部位13を回転中心として開く構成としている(
図2の二点鎖線参照)。
【0022】
ヒンジアーム14は、元部端14bから下方に凹むように湾曲して前方の先端(前端)14a側に延びるように配設されている。そして、元部端14bが、軸支部位を構成する支持軸13を利用して車体側ベース12に連結され、この支持軸13を回転中心として、ヒンジアーム14は、回動可能とし、また、先端14a側も、支持軸16を利用して、フード側ベース15の前端15a側に連結され、この支持軸16を回転中心として、ヒンジアーム14は、回動可能である。左右の支持軸13,16は、それぞれ、軸方向を、車両Vの左右方向に沿わせるように、配設されている。
【0023】
但し、通常使用時には、ヒンジアーム14がフード側ベース15に対して回動しないように、ヒンジアーム14とフード側ベース15とを連結するように、回動規制機構としてのシェアピン18がヒンジアーム14とフード側ベース15とに貫通して固着されている。そのため、フードパネル10は、通常使用の開閉時、支持軸13の部位を回転中心として、開閉することとなる。すなわち、フードパネル10を開く際には、
図2の実線から二点鎖線に示すように、左右の支持軸13を回転中心として、各ヒンジアーム14の前端(先端)14a側とともに、フードパネル10の前端10f側が上昇することとなって、フードパネル10を前開きで開くことができ、そして、前端10f側を下せば、支持軸13を回転中心として回転して、フードパネル10が閉じることとなる。
【0024】
回動規制機構としてのシェアピン18は、駆動機構20の後述するアクチュエータ41の作動時には、フード側ベース15が押し上げられ、剪断されることから、ヒンジアーム14とフード側ベース15とは、支持軸16を回動中心として相互に回動できることとなる。
【0025】
なお、フードパネル10の前端10f側には、公知のフードロック機構8が配設されている。フードロック機構8は、フードパネル10の前端10f下面に固定されるロックストライカ8aと、ボディ1側に配設されてロックストライカ8aを係止するラッチ8bと、を備えて構成される。ラッチ8bは、図示しないレバーを操作しなければ、係止したロックストライカ8aを係止解除できないように構成されており、フードパネル10の後端10cの上昇時でも、フードパネル10の前端10fは、ロックストライカ8aを係止するラッチ8bにより、ボディ1側から離れるように上昇しない。
【0026】
ちなみに、フード跳ね上げ装置Uの作動時、フードパネル10の前端10fは、ロックストライカ8aを係止するラッチ8bにより、ボディ1側から離れるように上昇しないことから、フード側ベース15には、ヒンジアーム14の先端14aにおける支持軸16のずれ移動を許容できるように、凹溝15cが形成されている。
【0027】
駆動機構20は、アクチュエータ41と、トグル機構22を構成する二つのリンク片23,29と、を備えて構成されている。アクチュエータ41は、後述するように、内蔵したガス発生器80から発生する作動用ガスGにより、リンク側部41aを非リンク側部41bから押し出す構成としている(
図2,3)。
【0028】
リンク片23,29は、軸支具(軸支ピン)36を利用して、リンク側部41aに対して、元部25,32側を軸支させている。そして、リンク片23は、アーム側リンク片として、リンク側部41aに軸支させた元側軸支部25aから離れた先端部24を、ヒンジアーム14の前後方向の中間部位より元部端14b側の部位に対し、軸支具(軸支ピン)27を利用して、軸支させている。リンク片29は、フード側リンク片として、リンク側部41aに軸支させた元側軸支部32aから離れた先端部30を、フード側ベース15の後端15bに対し、軸支具(軸支ピン)34を利用して、軸支させている。
【0029】
アクチュエータ41の作動前には、
図2に示すように、トグル機構22のリンク片23,29は、リンク側部41aに軸支させた元側軸支部25a,32aから後方に向かって、ヒンジアーム14やフード側ベース15に軸支させた先側軸支部24a,30aを配置させており、さらに、先側軸支部24a,30aと元側軸支部25a,32aとをそれぞれ結ぶ直線LA,LFとの交差角θ0を、鋭角として、配設されている。実施形態の場合、交差角θ0は約50°としている。
【0030】
そして、アクチュエータ41の作動時には、押し出されるリンク側部41aにより、フード側リンク片29とアーム側リンク片23とが拡開するように、それぞれの元部32,25側の元側軸支部32a,25aが、後方に押し出されて、フード側ベース15を車体側ベース12側から押し上げることとなる。さらに、実施形態の場合、アクチュエータ41の作動完了時には、フード側リンク片29とアーム側リンク片23とは、それぞれの先端側の先側軸支部30a,24a相互の間で、死点DP(元側軸支部32a,25aと先側軸支部30a,24aとが一直線に並ぶ状態となる元側軸支部32a,25aの配置位置)を越えた位置で停止させるように、すなわち、先側軸支部30a,24a相互を結ぶ直線より、元側軸支部32a,25aを後方に配置させて、停止される構成としている。実施形態の場合、元側軸支部25a,32aは、先側軸支部24a,30aと元側軸支部25a,32aとをそれぞれ結ぶ直線LA,LFとの交差角θ1を、180°を越えた約200°とする位置に、配置される。
【0031】
また、フード側リンク片29とアーム側リンク片23とは、
図4,5に示すように、塑性変形可能な鋼等の金属板から形成されている。
【0032】
アクチュエータ41は、
図6,7に示すように、作動時に作動用ガスGを発生させるガス発生器80と、ガス発生器80を収納して保持する収納側部42と、ガス発生器80から発生する作動用ガスGに押圧されて、収納側部42から離れるように相対的に前進移動して、アクチュエータ41を伸長させる受圧側部62と、を備えて構成される。
【0033】
実施形態の場合、収納側部42が、元部44側の連結部45をリンク片23,29と連結させることから、リンク側部(押出側部あるいは相対移動側部とも言える)41aを構成し、受圧側部62が、非リンク側部(相対固定側部とも言える)41bを構成している。
【0034】
ガス発生器80は、作動時に、図示しない所定の火薬を点火させ、火薬自体の燃焼により、あるいは、さらに火薬に着火されるガス発生剤の燃焼により、作動用ガスGを発生させるスクイブやマイクロガスジェネレータ等が使用されており、作動用ガスGを吐出する先端80aから離れた元部側に、図示しない制御回路からの点火信号(作動信号)を入力させる入力用部材としてのリード線80cが、接続されている。そして、ガス発生器80は、図示しない制御回路からの点火信号を入力すると、内蔵されている火薬に点火して燃焼させ、さらに適宜、ガス発生剤も燃焼させて、燃焼ガスを発生させ、その燃焼ガスを作動用ガスGとして、先端80aから吐出させて受圧側部62の天井壁部63へ供給する。また、実施形態の場合、ガス発生器80は、リード線80cを突出させた状態で、収納側部42のインナケース47内に収納されるように、ポリアミド等からなる合成樹脂製の樹脂部82と一体成形される組付体85として構成され、そして、組付体85として、インナケース47に収納される構成としている。そしてさらに、実施形態では、リード線80cのインナケース47から突出する元部端側の開口47cは、リード線80cの周囲を塞ぐように、合成樹脂材料からなるシール材87が充填されて、防水性が確保されている。
【0035】
なお、組付体85は、インナケース47(収納側部42)の元部端44a側の開口47cから挿入させて、ガス発生器80の鍔部80bを、インナケース47の後述する段差51に当て、そして、略円環状の止め具55により抜け止めされて、収納側部42(インナケース47)に収納保持されている。なお、止め具55は、インナケース47に開口している組付孔53に嵌め込まれて固定される。また、シール材87は、止め具55を組付孔53に嵌めた後、型成形により、開口47cに充填され、そして、固化されて配設されている。
【0036】
アクチュエータ41の収納側部42は、略円筒状の鋼等からなる金属製のインナケース(筒状部材)47から形成されて、先端側(
図6,7に示す上端側)に作動用ガスGを流出させるために円形に開口した開口端43を備え、開口端43から離れた元部44側にガス発生器80を配設させるとともに、元部端44a側を、リンク片23,29の元側軸支部25a,32aに、連結させている。リンク片23,29に連結される連結部45は、連結孔部45aを備えて構成され、そして、連結孔部45aに挿入される軸支具(軸支ピン)36を利用して、リンク片23,25の元側軸支部25a,32aに対して、回動自在に連結されている。なお、連結孔部45aは、実施形態の場合、組付体85を収納保持(抜け止め)するためのインナケース47の組付孔53に固定された止め具55の内周側の貫通孔を、利用している。
【0037】
収納側部42を構成するインナケース47は、外周面47aの先端(開口端43)側に、フランジ部48を突出させ、内周面47bの元部44側に、開口端43側に向かって内径を狭める段差51を設けて構成されている。段差51には、既述したように、樹脂部82で被覆されたガス発生器80の鍔部80bが当接されている。
【0038】
フランジ部48には、外周面に、環状溝49が配設されている。環状溝49には、受圧側部62の相対的な前進移動時のガスシール性を確保するためのゴム製の円環状のシール材(パッキン・Oリング)57が嵌め込まれている。
【0039】
なお、外周面47aから突出するフランジ部48の段差面は、アクチュエータ41の作動時に、相対移動する受圧側部62の端末部64a側を止める受圧側部62の抜け止め用の規制面48aとなり、アクチュエータ41の作動時における受圧側部62の作動ストロークSL(リンク側部41aの作動ストロークSLでもある)を制限することとなる。そのため、フランジ部48は、受圧側部62の相対前進移動時のストッパとしての機能を果たす。なお、アクチュエータ41が、受圧側部62を相対的に前進移動させれば、換言すれば、非リンク側部41bとしての受圧側部62からのリンク側部41aとしての収納側部42が、作動ストロークSL分、押し出されれば、
図3に示すように、リンク片23,29は、死点DPを越えた位置に、元側軸支部25a,32aを配置させて、停止することとなる。
【0040】
また、インナケース47には、既述したように、止め具55を嵌め込んで固定できるように、元部端44a側に、アクチュエータ41の軸心Cと直交する組付孔53が、形成されている。
【0041】
アクチュエータ41の受圧側部62は、鋼等の金属製として、収納側部42の開口端43側を覆う天井壁部63と、天井壁部63の外周縁から、少なくとも、ガス発生器80の配置位置の元部44側までの収納側部42の外周を覆うように、受圧側部62の相対的な後退側、すなわち、
図6,7の下方側、に延びる略円筒状の周壁部64と、を備えて構成されている。
【0042】
天井壁部63には、丸穴状の連結孔部72aを有して、ヒンジアーム14に連結される連結部72が、開口端43と離れた上面側に配設されている。この連結部72は、連結孔部72aに挿入される軸支具(軸支ピン)38を利用して、ヒンジアーム14の前端14aの近傍部位に対し、回動自在に連結されている。
【0043】
周壁部64は、天井壁部63から離れる端末部64aのリングホルダ70付近までの内周面64bを、収納側部42の外周面側のシール材57と摺動可能として、ガスシール性を確保して前進移動できるように、アクチュエータ41の軸心C(すなわち、受圧側部62の相対的な移動中心軸C)と同心的に、平滑な円形の弧面状に構成されている。
【0044】
また、周壁部64の端末部64aの端縁64ae側には、リングホルダ70が配設されている。リングホルダ70は、鋼等の金属製の略円筒状部材として、周壁部64の端末部64aの内周側にかしめて固定されており、内周面71を、軸心Cと同心とした平滑な円形弧面状として、構成されている。リングホルダ70は、受圧側部62の相対的な前進移動完了時には、収納側部42のストッパとしてのフランジ部48の規制面48aに、当接するように設定されている。そして、内周面71は、収納側部42の外周面47aに摺動可能として、軸心Cに沿う受圧側部62の相対移動を案内する。
【0045】
実施形態のフード跳ね上げ装置Uでは、アクチュエータ41が作動すれば、ガス発生器80が作動用ガスGを発生させ、その作動用ガスGの押圧力によって、
図3の二点鎖線から実線に示すように、アクチュエータ41のリンク側部41aとしての収納側部42が非リンク側部41bとしての受圧側部62から離れるように押し出されて、アクチュエータ41が伸長する。そのため、リンク側部41aの先端側の連結部45に共に軸支されたフード側リンク片29とアーム側リンク片23との元側軸支部32a,25a相互も押し出されて、フード側リンク片29とアーム側リンク片23との相互の交差角θ0が拡開するように広がり、フード跳ね上げ装置Uは、フード側ベース15を車体側ベース12から押し上げて、フードパネル10の後端10cを押し上げる(跳ね上げる)ことができる。
【0046】
そしてさらに、アクチュエータ41の作動完了時の作動ストロークSLは、フード側リンク片29とアーム側リンク片23との相互の元側軸支部32a,25aを、フード側リンク片29とアーム側リンク片23とのそれぞれの先端側の先側軸支部30a,24a相互の間で、死点DPを越えた位置で停止させるように、設定されている。そのため、アクチュエータ41が作動を完了させれば、アクチュエータ41の作動用ガスGの圧力により、リンク側部41aが押し戻されないことと相俟って、フード側リンク片29とアーム側リンク片23とは、フードパネル10の重量が加わっても、死点DPを乗り越えて、作動当初の位置側に戻らない。そのため、嵩張るようなストッパ等を設けずに、コンパクトな構成として、アクチュエータ41の作動後において、フードパネル10の後端10cは、押し上げられた状態を維持される。
【0047】
そして、フードパネル10のヒンジ機構11付近に、上方から歩行者等の保護対象物が落下して押圧力Fが作用しても、フード側リンク片29とアーム側リンク片23とが、
図4の二点鎖線から実線に示したり、
図5のA,Bに示すように、フードパネル10の後端10cを車体側ベース12側へ接近させるように、座屈や曲げ等を生じさせて塑性変形することから、その保護対象物の運動エネルギーを吸収することができて、保護対象物に作用するフードパネル10側からの反力を抑制でき、フードパネル10が、円滑に緩衝作用を発揮して、反力(衝撃)を緩和して保護対象物を受け止めることができる。
【0048】
勿論、フードパネル10は、押し上げられていれば、その下方に変形スペースSが確保されており、ヒンジ機構11の配設部位から外れた位置に保護対象物が当たっても、フードパネル10自体が下方へ凹むように変形できて、円滑に緩衝作用を発揮できる。
【0049】
また、実施形態のフード跳ね上げ装置Uでは、フード側リンク片29とアーム側リンク片23とを略直線状に配置させた死点DPを越えて作動完了となり、作動完了直前のフードパネル10の後端10cの上昇速度は、作動当初に比べて、低下する構成となっていることから、フードパネル10は、上昇完了位置付近で、最上昇位置から反動により下降するような挙動、すなわち、揺動運動が防止され、上昇完了位置への配置直後に保護対象物を受け止めても、静止状態で、その保護対象物を受け止めることができて、安定した緩衝作用を発揮できる。
【0050】
さらに、実施形態のフード跳ね上げ装置Uでは、アクチュエータ41が、ガス発生器80から発生した作動用ガスGによりリンク側部41aを押し出す構成であり、ガス発生器80から作動用ガスGが発生しなくなった後は、リンク側部41aを戻すことが可能となって、押し上げたフードパネル10を元の位置に下降させることができ、作動後の視界の妨げを防止できる。
【0051】
したがって、実施形態のフード跳ね上げ装置Uでは、押し上げたフードパネル10が円滑に安定した緩衝作用を発揮できるとともに、コンパクトに構成でき、さらに、作動後、容易にフードパネル10を元の位置に戻すこともできる。
【0052】
なお、実施形態では、アクチュエータ41の作動完了後のリンク片23,29の交差角θ1を、約200°としたが、作動完了後のリンク片23,29の交差角θ1は、小さすぎては、死点DPを越えて戻る虞れがあり、また、大きすぎては、上昇させたフードパネル10の後端10cを下げてしまうことから、185〜245°の範囲内とすることが望ましい。
【0053】
さらに、実施形態のフード跳ね上げ装置Uでは、アクチュエータ41が、押し出すリンク側部41a(収納側部42)から離れた非リンク側部41bとしての受圧側部62の端部側の連結部72を、ヒンジアーム14に軸支させて、配設されている。
【0054】
そのため、実施形態のフード跳ね上げ装置Uでは、駆動機構20を構成するアクチュエータ41とトグル機構22の二つのリンク片(フード側リンク片29とアーム側リンク片23)とを、ヒンジ機構11を構成するフード側ベース15とヒンジアーム14との2部品だけに対して、軸支させるだけで構成できることから、一層、コンパクトに構成できるとともに、駆動機構20の組付作業を容易に行うことができる。
【0055】
なお、実施形態では、アクチュエータ41のリンク側部41aから離れた非リンク側部41bの端部側を、ヒンジアーム14に軸支させた場合を示したが、
図8,9に示す変形例のフード跳ね上げ装置UAのように、アクチュエータ41Aの非リンク側部41bを、ヒンジ機構11Aの車体側ベース12A側に軸支させてもよい。
【0056】
ちなみに、この構成の場合には、フード側ベース15Aに軸支されるフード側リンク片29Aとヒンジアーム14Aに軸支されるアーム側リンク片23Aとは、作動前の状態で、リンク側部41aと連結される元側軸支部32a,25aから、フード側ベース15Aやヒンジアーム14Aに軸支させる先側軸支部30a,24aに向かう方向を、前方として、構成されている。そして、アクチュエータ41Aの作動完了時には、フード側リンク片29Aとアーム側リンク片23Aとのそれぞれの元部側の元側軸支部32a,25aが、フード側リンク片29Aとアーム側リンク片23Aとのそれぞれの先端側の先側軸支部30a,24a相互の間で、死点DPを越えた位置で停止させるように、構成されており、このように構成してもよい。勿論、これらのトグル機構22Aのフード側リンク片29Aとアーム側リンク片23Aとは、塑性変形可能な金属板などから形成されている。
【0057】
また、図例のアクチュエータ41Aは、実施形態のアクチュエータ41の逆の仕様として、図示しないガス発生器を収納した収納側部42Aが、非リンク側部41bを構成して、軸支具38を利用して、連結部45Aを車体側ベース12Aに連結させ、作動用ガスに押圧される押圧側部62Aが、リンク側部41aを構成し、軸支具36を利用して、連結部72Aをリンク片23A,29Aに連結させる構成としている。
【0058】
なお、車体側ベース12Aには、アクチュエータ41Aの連結部45Aを軸支する軸支具38が、フードパネル10の通常使用時の開閉時、支持軸13回りで回動できるように、軸支具38の回動を許容する凹溝12aが、形成されている。
【0059】
ちなみに、フードパネル10の通常使用時における支持軸13回りでの回動を許容できるように、軸支具38の移動を許容する凹溝を設ければ、アクチュエータ41Aの連結部45Aは、ヒンジ機構11Aの車体側ベース12Aで無く、他のボディ1側の部位に、軸支させてもよい。
【0060】
また、実施形態では、アクチュエータ41の非リンク側部41bを、ヒンジアーム14に軸支させた場合を示したが、
図10,11に示す変形例のフード跳ね上げ装置UBのように、アクチュエータ41Bの非リンク側部41bを、フードパネル10側のフード側ベース15Bに軸支させてもよい。なお、この構成の場合には、トグル機構22Bのフード側リンク片29Bとアーム側リンク片23Bとは、実施形態と同様に、作動前の状態で、リンク側部41aとしての収納側部42の連結部45Bと連結される元側軸支部32a,25aから、ヒンジ機構11Bのフード側ベース15Bやヒンジアーム14Bに軸支させる先側軸支部30a,24aに向かう方向を、後方として、構成されている。そして、アクチュエータ41Bの作動完了時には、フード側リンク片29Bとアーム側リンク片23Bとのそれぞれの元部側の元側軸支部32a,25aが、フード側リンク片29Bとアーム側リンク片23Bとのそれぞれの先端側の先側軸支部30a,24a相互の間で、死点DPを越えた位置で停止させるように、構成されており、このように構成してもよい。勿論、これらのフード側リンク片29Bとアーム側リンク片23Bとは、塑性変形可能な金属板などから形成されている。
【0061】
なお、フード跳ね上げ装置UBでは、アクチュエータ41Bの非リンク側部41bの受圧側部62Bにおける連結部72Bを、フード側ベース15Bに軸支させた場合を示したが、ヒンジ機構11Bから離れたフードパネル10の他の部位に、軸支させてもよい。
【0062】
また、実施形態や変形例では、フードパネル10の通常使用の開閉時に、支持軸16を回動中心としたヒンジアーム14,14A,14Bの回動を規制するように、回動規制機構としてのシェアピン18を、ヒンジアーム14,14A,14Bとフード側ベース15,15A,15Bとを連結するように、貫通させて配設したが、このような回動規制機構としてのシェアピンは、支持軸16を回転中心としたヒンジアーム14,14A,14Bの回動を規制できれば、他のリンク片23,23A,23B,29,29A,29Bとそれらと重なる部位に、貫通させるように配設させてもよく。さらに、シェアピンでなくとも、アクチュエータの作動時には、支持軸16回りのヒンジアームの回転を規制しない状態として、軸支具(支持軸)16,34,36,38付近の回動部位の摩擦抵抗を利用したり、あるいは、軸支具(支持軸)16,34,36,38付近の対応する部位相互を係合解除可能に係合する係合部を、利用して構成しても良い。
【0063】
さらに、アクチュエータ41自体に、作動時以外に、リンク側部41aの押し出しを防止するように、係合解除可能にEリングを設けて、リンク側部41aを非リンク側部41bに対して相対的に係止させたり、あるいは、端縁64ae付近に、受圧側部62と収納側部42とを接着させる接着剤89(
図6の二点鎖線参照)を設けてもよい。